特許第6170703号(P6170703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6170703ポリスチレン系複合樹脂粒子とその製造方法、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170703
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】ポリスチレン系複合樹脂粒子とその製造方法、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20170713BHJP
   C08J 9/18 20060101ALI20170713BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20170713BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20170713BHJP
   C08F 257/02 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   C08L25/04
   C08J9/18
   C08L23/06
   C08F2/44 C
   C08F257/02
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-73481(P2013-73481)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196444(P2014-196444A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】森島 直也
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−508111(JP,A)
【文献】 特開2011−256244(JP,A)
【文献】 特開2006−083221(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/110337(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/122081(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを質量比50:50〜15:85の割合で含むポリスチレン系複合樹脂粒子であり、
前記ポリスチレン系複合樹脂粒子は、その粒子表層の任意の観察点から得られたTEM画像において、粒子表面からの深さ0.5μm、長さ5μmの範囲に粒子径が0.25〜0.80μmのポリスチレン系樹脂微粒子を含み、前記ポリスチレン系樹脂微粒子の前記範囲に占める面積割合が5〜45%であることを特徴とするポリスチレン系複合樹脂粒子。
【請求項2】
前記ポリスチレン系複合樹脂粒子が、その粒子中央部に前記ポリスチレン系樹脂の海島構造を有する請求項1に記載のポリスチレン系複合樹脂粒子。
【請求項3】
前記ポリスチレン系複合樹脂粒子が、その約1gを130℃のオイルバスで加熱したトルエン100mlで処理したときに、トルエンに不溶なゲル分10〜35質量%を含有する請求項1または2に記載のポリスチレン系複合樹脂粒子。
【請求項4】
前記ポリスチレン系複合樹脂粒子が、0.5〜3.0mmの平均粒子径を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリスチレン系複合樹脂粒子。
【請求項5】
前記ポリスチレン系複合樹脂粒子が、その粒子表面の赤外線吸収スペクトルから得られるポリスチレン系樹脂由来の698cm-1の吸光度(D698)と直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂由来の2850cm-1の吸光度(D2850)との、0.5〜2.5の吸光度比(D698/D2850)を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載のポリスチレン系複合樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のポリスチレン系複合樹脂粒子と、揮発性発泡剤とを含む発泡性粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の発泡性粒子を予備発泡させて得られた発泡粒子。
【請求項8】
前記発泡粒子が、0.012〜0.20g/cm3の嵩密度を有する請求項7に記載の発泡粒子。
【請求項9】
請求項7または8に記載の発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のポリスチレン系複合樹脂粒子の製造方法であって、
性媒体中で、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む混合樹脂の核樹脂粒子に、スチレン系単量体を吸収させた後、前記スチレン系単量体を重合させる工程と、その後にアニールする工程と、更にスチレン系単量体を吸収させながら重合させることにより、ポリスチレン系複合樹脂粒子を得る工程と
を含むことを特徴とするポリスチレン系複合樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系複合樹脂粒子とその製造方法、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体に関する。本発明によれば、発泡成形体の成形サイクルを短縮し得るポリスチレン系複合樹脂粒子を提供できる。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂からなる発泡成形体は、優れた緩衝性及び断熱性を有しかつ成形が容易であることから、包装材や断熱材として多用されている。しかしながら、耐衝撃性や柔軟性が不十分であるため、割れや欠けが発生し易く、例えば精密機器製品の包装等には適さないという問題がある。
一方、ポリオレフィン系樹脂からなる発泡成形体は、耐衝撃性や柔軟性に優れているが、その成形時に大掛かりな設備を必要とする。また、樹脂の性質上、発泡粒子の形態で原料メーカーから成形加工メーカーに輸送しなければならない。そのため、嵩高い発泡粒子を輸送することになり、製造コストが上昇するという問題がある。
【0003】
そこで、上記2つの異なる樹脂の特長を併せもつ、様々なポリスチレン系複合樹脂粒子及びそれらを用いた発泡成形体が提案されている。
例えば、特開2005−97555号公報(特許文献1)には、粒子表層にポリオレフィン系樹脂をリッチに存在させることにより得られる、剛性、耐薬品性及び耐衝撃性に優れたオレフィン改質ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子、その製造方法及び発泡成形体が開示されている。
【0004】
また、特開2006−83221号公報(特許文献2)には、無機核剤を含む無架橋で直鎖状の低密度ポリエチレン系樹脂粒子にスチレン加え、ポリエチレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T+5)〜(T+25)℃でスチレンを重合させることにより得られるスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子が開示されている。
この樹脂粒子は、その表層に0.8μm以下のポリスチレン樹脂粒子が分散された状態で存在し、耐衝撃性等に優れた発泡成形体を得ることができる
【0005】
他方、近年の燃料価格の高騰も相俟って、発泡成形体の優れた性質を維持あるいは向上させつつ、発泡成形体の成形時における省エネルギー化の取り組みもなされている。
例えば、特開2010−209146号公報(特許文献3)には、予備発泡粒子表面の難水溶性無機物(分散剤)を1000ppm以下にすることにより融着性を向上させて、省蒸気(省エネルギー)で発泡成形する技術が開示されている。
【0006】
また、特開2010−270284号公報(特許文献4)には、予備発泡粒子表面の赤外線吸収スペクトルから得られる特定波長の吸光度比を2.5〜11.0の範囲にすることにより融着性を向上させて、省蒸気(省エネルギー)で発泡成形する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−97555号公報
【特許文献2】特開2006−83221号公報
【特許文献3】特開2010−209146号公報
【特許文献4】特開2010−270284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の樹脂粒子は、その表皮層にポリエチレンのようなポリオレフィン成分がリッチに存在し、ポリスチレン成分がほとんど見られない。より具体的には、樹脂粒子の表層深さ1μm以内にポリスチレン系樹脂がほとんど存在せず、樹脂粒子の中央部にリッチに存在する。ポリスチレン系樹脂の発泡剤の保持性が高いことから、樹脂粒子から発泡剤が逸散し難く、このような樹脂粒子は、発泡成形体の成形サイクルの短縮には不利である。
特許文献4にはスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体の表面のポリスチレン系樹脂の存在度合いを高めることで、省蒸気で融着性が良好になることが示されている。
しかしながら、この発泡成形体を得るための樹脂粒子について追試したところ、スチレンを85℃で重合させていることから、その内部は共連続構造となっており、発泡剤を保持し易く、この点からも発泡成形体の成形サイクルの短縮には不利な結果が得られた。
【0009】
そこで、本発明は、上記の課題を解決し、発泡成形体の成形サイクルを短縮し得るポリスチレン系複合樹脂粒子とその製造方法、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、上記の課題を達成するために鋭意検討の結果、特定量のポリスチレン系樹脂を含む直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の混合樹脂の溶融混練物をカットして得られる、特定の粒子径のポリスチレン系樹脂が分散する核樹脂粒子に、スチレンを含浸、重合し、アニール処理工程を経た後、更に重合することにより得られるポリスチレン系複合樹脂粒子は、その表層に特定の粒子径を有するポリスチレン成分が特定の面積割合で存在する、つまり発泡剤を保持するポリスチレン成分の塊りが複合樹脂粒子の表層に存在するため、表層に存在する発泡剤の逸散が促進されて成形サイクルが短縮できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして、本発明によれば、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを質量比50:50〜15:85の割合で含むポリスチレン系複合樹脂粒子であり、
前記ポリスチレン系複合樹脂粒子は、その粒子表層の任意の観察点から得られたTEM画像において、粒子表面からの深さ0.5μm、長さ5μmの範囲に粒子径が0.25〜0.80μmのポリスチレン系樹脂微粒子を含み、前記ポリスチレン系樹脂微粒子の前記範囲に占める面積割合が5〜45%であることを特徴とするポリスチレン系複合樹脂粒子が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、上記のポリスチレン系複合樹脂粒子と、揮発性発泡剤とを含む発泡性粒子が提供される。
更に、本発明によれば、上記の発泡性粒子を予備発泡させて得られた発泡粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記の発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体が提供される。
【0013】
更にまた、本発明によれば、上記のポリスチレン系複合樹脂粒子の製造方法であって、
性媒体中で、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む混合樹脂の核樹脂粒子に、スチレン系単量体を吸収させた後、前記スチレン系単量体を重合させる工程と、その後にアニールする工程と、更にスチレン系単量体を吸収させながら重合させることにより、ポリスチレン系複合樹脂粒子を得る工程と
を含むことを特徴とするポリスチレン系複合樹脂粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発泡成形体の成形サイクルを短縮し得るポリスチレン系複合樹脂粒子とその製造方法、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を提供することができる。
【0015】
また、本発明のポリスチレン系複合樹脂粒子は、
(1)ポリスチレン系複合樹脂粒子が、その粒子中央部にポリスチレン系樹脂の海島構造を有する、
(2)ポリスチレン系複合樹脂粒子が、その約1gを130℃のオイルバスで加熱したトルエン100mlで処理したときに、トルエンに不溶なゲル分10〜35質量%を含有する、
(3)ポリスチレン系複合樹脂粒子が、0.5〜3.0mmの平均粒子径を有する、
(4)ポリスチレン系複合樹脂粒子が、その粒子表面の赤外線吸収スペクトルから得られるポリスチレン系樹脂由来の698cm-1の吸光度(D698)と直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂由来の2850cm-1の吸光度(D2850)との、0.5〜2.5の吸光度比(D698/D2850)を有する、
の少なくとも1つの条件を満足する場合に、上記の優れた効果を更に発揮する。
更に、発泡性粒子において、発泡粒子が、0.012〜0.20g/cm3の嵩密度を有することにより、上記の優れた効果を更に発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の核樹脂粒子のTEM画像である。
図2】実施例1の複合樹脂粒子における(a)粒子表面部及び(b)粒子中央部のTEM画像である。
図3】比較例1の複合樹脂粒子における(a)粒子表面部及び(b)粒子中央部のTEM画像である。
図4】比較例2の複合樹脂粒子における(a)粒子表面部及び(b)粒子中央部のTEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1)ポリスチレン系複合樹脂粒子
本発明のポリスチレン系複合樹脂粒子(以下「複合樹脂粒子」ともいう)は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを質量比50:50〜15:85の割合で含むポリスチレン系複合樹脂粒子であり、前記ポリスチレン系複合樹脂粒子は、その粒子表層の任意の観察点から得られたTEM画像において、粒子表面からの深さ(画像の上下方向)0.5μm、長さ(画像の左右方向)5μmの範囲に粒子径が0.25〜0.80μmのポリスチレン系樹脂微粒子を含み、前記ポリスチレン系樹脂微粒子の前記範囲に占める面積割合が5〜45%であることを特徴とする。
なお、本発明者のTEM画像などの解析評価によれば、特許文献1〜4に記載の樹脂粒子の表層に占めるポリスチレン系樹脂の面積割合は本発明の範囲外である。
【0018】
(a)粒子表層のポリスチレン系樹脂微粒子の粒子径及びその占める面積割合
本発明の複合樹脂粒子は、その粒子表層の任意の観察点から得られたTEM画像において、粒子表面からの深さ0.5μm、長さ5μmの範囲に粒子径が0.25〜0.80μmのポリスチレン系樹脂微粒子を含み、ポリスチレン系樹脂微粒子の前記範囲に占める面積割合が5〜45%である。
ポリスチレン系樹脂微粒子の粒子径は、その微粒子の最長径と最短径の平均値によって求められ、その面積割合は、画像に占める粒子径が0.25〜0.80μmのポリスチレン系樹脂微粒子の面積の合計と前記範囲との割合で求められる。
粒子表層のポリスチレン系樹脂微粒子の粒子径及びポリスチレン系樹脂微粒子の占める面積割合の測定方法については、実施例において詳述する。
【0019】
ポリスチレン系樹脂微粒子の粒子径が0.25μm未満では、圧縮強度に優れた発泡成形体を与えられず、かつその成形サイクルを短縮し得ないことがある。
一方、ポリスチレン系樹脂微粒子の粒子径が0.80μmを超えると、ポリエチレン系樹脂特有の耐薬品性や耐衝撃性を得られないことがある。
【0020】
また、ポリスチレン系樹脂微粒子の占める面積割合が5%未満では、圧縮強度に優れた発泡成形体を与えられず、かつその成形サイクルを短縮し得ないことがある。
一方、ポリスチレン系樹脂微粒子の占める面積割合が45%を超えると、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂特有の耐薬品性や耐衝撃性を得られないことがある。
好ましいポリスチレン系樹脂微粒子の粒子径は、0.25〜0.60μmであり、その占める好ましい面積割合は、5〜30%である。
【0021】
(b)粒子中央部の構造
本発明の複合樹脂粒子は、その粒子中央部にポリスチレン系樹脂の海島構造を有するのが好ましい。
これにより、発泡成形体の成形サイクルを短縮し得る。
粒子中央部とは、粒子中心から半径30%以内の部分を意味する。
本発明における「ポリスチレン系樹脂の海島構造」は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂が略円形および/または不定形の粒状のポリスチレン系樹脂(このポリスチレン系樹脂はいくつかに連結されていても良い)を内包した構造と定義する。
これとは逆に、略円形および/または不定形の粒状であったポリスチレン系樹脂が互いに連結して連続相を形成し、その連続相内に略円形および/または不定形の粒状の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を内包した構造を「共連続構造」と定義する。
粒子中央部の構造の評価方法については、実施例において詳述する。
【0022】
(c)130℃で加熱したトルエンに対して不溶なゲル分の含有率(ゲル分率)
本発明の複合樹脂粒子は、130℃で加熱したトルエンに対して不溶なゲル分10〜35質量%を含有する、より具体的には、複合樹脂粒子の約1gを130℃で加熱したトルエン100mlで処理したときに、トルエンに不溶なゲル分10〜35質量%を含有するのが好ましい。
これにより、複合樹脂粒子を用いて成形された発泡成形体の耐衝撃性が向上する。
ゲル分の含有率が10質量%未満では、発泡成形体の耐衝撃性が低くなり、緩衝材としての耐衝撃性が十分でないことがある。
一方、ゲル分の含有率が35質量%を超えると、発泡性、成形性等の加工性が低下し、高発泡の成形体や外観の良好な成形体が得られないことがある。
より好ましいゲル分の含有率は、15〜30質量%の範囲であり、さらに好ましくは15〜25質量%の範囲である。
ゲル分の含有率の測定方法については、実施例において詳述する。
【0023】
(d)ポリスチレン系樹脂(PS)
ポリスチレン系複合樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体を主成分とする樹脂であれば特に限定されず、スチレン又はスチレン誘導体の単独又は共重合体が挙げられる。
スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらのスチレン系単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
【0024】
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体を併用したものであってもよい。
ビニル系単量体としては、例えば、o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体;(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、多官能性単量体が好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン単位数が4〜16のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンがより好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。尚、単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
また、単量体を併用する場合、その含有量は、スチレン系単量体が主成分となる量(例えば、50質量%以上)になるように設定されることが好ましい。
本発明において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0025】
(e)直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)
ポリスチレン系複合樹脂粒子を構成する直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂としては、密度0.910〜0.925g/cm3の直鎖状ポリエチレン系樹脂であり、具体的には、実施例において用いているような市販品が挙げられる。
【0026】
本発明の複合樹脂粒子は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを質量比50:50〜15:85の割合で含む。
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂と質量比のうち、ポリスチレン系樹脂が50%未満であると、発泡性、成形加工性が不十分になることがある。
一方、ポリスチレン系樹脂が85%以上では、耐衝撃性や柔軟性が不十分になることがある。
【0027】
(f)複合樹脂粒子の粒子径
複合樹脂粒子は、0.5〜3.0mmの平均粒子径を有するのが好ましい。
複合樹脂粒子の平均粒子径が0.5mm未満では、高い発泡性を得られないことがある。
一方、複合樹脂粒子の平均粒子径が3.0mmを超えると、成形加工時の発泡粒子の充填性が不十分になることがある。
より好ましい複合樹脂粒子の平均粒子径は、0.5〜2.0mmである。
【0028】
(2)ポリスチレン系複合樹脂粒子の製造方法
本発明の複合樹脂粒子は、例えば、
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部とポリスチレン系樹脂1〜30質量部とを含む混合樹脂の溶融混練物をカットして、ポリスチレン系樹脂を平均粒子径0.01〜0.60μmで微分散させた核樹脂粒子を得る工程と、
次いで、水性媒体中で、核樹脂粒子に、スチレン系単量体を吸収させた後、スチレン系単量体を重合させる工程(第1重合工程)と、その後に140〜145℃でアニールする工程と、更にスチレン系単量体を吸収させながら重合させることにより、ポリスチレン系複合樹脂粒子を得る工程(第2重合工程)と
を含むことを特徴とするポリスチレン系複合樹脂粒子の製造方法
により製造することができる。
ここで、「微分散」とは、基材中に特定の粒子径の微粒子が分散することを意味する。
【0029】
上記の単量体の重合は、例えば、70〜150℃で、2〜40時間加熱することにより行うことができる。重合は、単量体を核樹脂粒子中に吸収させた後、または単量体を核樹脂粒子に吸収させながら行うことができる。なお、単量体と樹脂の量はほぼ同一である。
【0030】
更には140〜145℃でアニールする工程を含む。
ここでアニールする工程の重要性について詳述する。
前段階で核樹脂粒子100質量部に対し25〜55質量部のスチレン系単量体を吸収させると、スチレン系単量体が単独で重合反応が進む以外に、核樹脂粒子に予め含まれている微分散したポリスチレン系樹脂を起点とした重合反応も同時に進行する。
【0031】
核樹脂粒子内で均一に微分散して予め含まれているポリスチレン系樹脂を起点に重合して生成したポリスチレン系樹脂微粒子のうち、特に核樹脂粒子表層を起点に重合して生成したポリスチレン系樹脂微粒子は、スチレン系単量体が単独で重合して生成したポリスチレン系樹脂よりも、その粒子径が大きいために核樹脂粒子表層に留まりやすい。スチレン系単量体が単独で重合反応により生成したポリスチレン系樹脂微粒子は、これまでの従来技術にも示されているとおり核樹脂粒子に吸収されながら、十分に核樹脂粒子中央部に到達してから重合反応が完了する。
前記アニール処理を行うと、核樹脂粒子表層を起点に重合して生成した粒子径の大きなポリスチレン系樹脂微粒子も、スチレン系単量体が単独で重合反応により生成したポリスチレン系樹脂微粒子と同様に、表層から中央部へ吸収されながら重合反応が完了することを見出した。即ち、一部の比較的大きな粒子径のポリスチレン系樹脂微粒子は表層に留まるが、その他は表層から中央部の方向へ吸収されながら重合反応を完了する。
【0032】
これに対し、アニール工程を行わない場合、核樹脂粒子表層で重合反応が完了するポリスチレン系樹脂微粒子の量が多くなり、最終的に複合樹脂粒子となった際に粒子表層に存在するポリスチレン系樹脂が増加してしまうので耐薬品性、耐衝撃性を損なうことになる。
このようにアニールする工程を含むことで、核樹脂粒子の表層に適量のポリスチレン系樹脂微粒子が形成される起点が生じ、次工程の重合反応により、本発明の特徴である複合樹脂粒子が完成することとなる。即ち、複合樹脂粒子表層の任意の観察点から得られたTEM画像において、深さ0.5μm、長さ5μmの範囲に粒子径が0.25〜0.80μmのポリスチレン系樹脂微粒子を含み、ポリスチレン系樹脂微粒子の前記範囲に占める面積割合が5〜45%となる。その結果として、圧縮強度の向上、及び成形サイクルが短縮する効果を発現させることが可能となる。
【0033】
スチレン系単量体としては、ポリスチレン系複合樹脂粒子の項に例示のものが挙げられる。
その使用量は、核樹脂粒子100質量部に対して、通常100〜667質量部の範囲、好ましくは100〜400質量部の範囲である。
【0034】
また、アニール工程後に重合工程を行って複合樹脂粒子を得た後、又は複合樹脂粒子の生成過程で発泡剤を含浸させる工程を行って、後述する発泡性粒子を得ることもできる。
【0035】
(a)核樹脂粒子(「種粒子」ともいう)
核樹脂粒子は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部とポリスチレン系樹脂1〜30質量部とを含む混合樹脂を溶融混練して得られる、ポリスチレン系樹脂が平均粒子径0.01〜0.60μmで分散する樹脂粒子である。
核樹脂粒子は、例えば、押出機で原料樹脂を溶融混練後、ストランド状に押し出し、所望の粒子径でカットする方法が挙げられる。また、一部又は全部に直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂およびポリスチレン系樹脂回収品を用いることができ、懸濁重合法やカットする方法で得られた粒子をそのまま、又はその粒子に、水性媒体中で、核樹脂の単量体を含浸・重合させることにより得られる粒子であってもよい。
【0036】
核樹脂粒子は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部とポリスチレン系樹脂1〜30質量部とを予め各樹脂成分を混合した後に押出を行うことが好ましい。例えばタンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、Vブレンダー、レーディゲミキサーなどの混合機、配合機に備えられた混合機を用いて混合することができる。
ポリスチレン系樹脂が平均粒子径0.01〜0.60μmで分散するには、例えばダルメージタイプ、マドックタイプ及びミニメルトタイプ等の高分散タイプのスクリューやニーディングディスク等を備えた二軸押出機を用い、押出機ヘッド部の樹脂流路の中心で測定される樹脂温度を270〜320℃、ヘッド部の圧力を15〜25MPaに制御することが好ましい。
【0037】
更には所定の大きさの核樹脂粒子を得るためのダイスは、その樹脂吐出孔の直径は0.2〜1.0mmが好ましく、樹脂流路のランド長はポリスチレン系樹脂の高分散性を維持するために10〜20MPaでダイスの樹脂流路の圧力が保持できるよう2.0〜6.0mmに、押出機から押出されてくる樹脂のダイス入口での樹脂温度は200〜270℃に調整されることが好ましい。
前記スクリュー構造を有する押出機やダイス、押出条件、水中カット条件を組み合わせることで所望の核樹脂粒子が得られる。
また、上記核樹脂粒子は本発明の効果を損なわない限り、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の相容化剤、気泡調整剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤等の添加剤を含有することができる。
【0038】
ポリスチレン系樹脂の粒子径が0.01μm未満では、複合樹脂粒子の表面からの深さ0.5μmに0.25〜0.80μmのポリスチレン系樹脂微粒子が形成されず、圧縮強度の向上、成形サイクル短縮に十分な効果が得られないことがある。
一方、ポリスチレン系樹脂の粒子径が0.60μmを超えると、複合樹脂粒子の表面からの深さ0.5μmに存在するポリスチレン系樹脂微粒子の粒子径が0.25〜0.80μmの範囲を超えてしまい十分な耐薬品性や耐衝撃性の効果が得られないことがある。
複合樹脂粒子内に存在する好ましいポリスチレン系樹脂微粒子の粒子径は、0.25〜0.50μmである。
【0039】
核樹脂粒子の粒子径は、複合樹脂粒子の平均粒子径等に応じて適宜調整でき、好ましい粒子径は、0.4〜1.5mmの範囲であり、より好ましくは0.4〜1.0mmの範囲であり、その平均質量は30〜90mg/100粒である。また、その形状は、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状などが挙げられる。
【0040】
(b)重合開始剤
上記の製造方法で使用する重合開始剤としては、従来からスチレン系単量体の重合に用いられるものであれば、特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらは単独で用いられても、併用されてもよいが、10時間の半減期を得るための分解温度が60〜130℃にある複数種類の重合開始剤を併用することが好ましい。
【0041】
(c)懸濁安定剤
更に、上記の製造方法において、スチレン系単量体の液滴及び核樹脂粒子の分散性を安定させるために懸濁安定剤を用いてもよい。このような懸濁安定剤としては、従来からスチレン系単量体の懸濁重合に用いられているものであれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。
また、難溶性無機化合物を用いる場合には、通常アニオン界面活性剤が併用される。
【0042】
このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0043】
(d)他の成分
尚、複合樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、可塑剤、結合防止剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤等の添加剤を添加してもよい。
【0044】
複合樹脂粒子には、加熱発泡時に用いられる水蒸気の圧力が低くても良好な発泡成形性を維持させるために、1気圧下における沸点が200℃を超える可塑剤を含有させることができる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、グリセリンジアセトモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペート等のアジピン酸エステル、ヤシ油等の可塑剤が挙げられる。
可塑剤の複合樹脂粒子中における含有量は、0.1〜3.0質量%が好ましい。
【0045】
結合防止剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシリコンなどが挙げられる。
気泡調整剤としては、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
架橋剤としては、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサンなどの有機過酸化物などが挙げられる。
充填材としては、合成または天然に産出される二酸化ケイ素などが挙げられる。
【0046】
難燃剤としては、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)などが挙げられる。
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。
滑剤としては、パラフィンワックス、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。
【0047】
着色剤としては、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維などのカーボンブラック、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄などのクロム酸塩、紺青などのフェロシアン化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッドなどの硫化物、鉄黒、紅殻などの酸化物、群青のようなケイ酸塩、酸化チタンなどの無機系の顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾレーキ、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの多環式顔料などの有機系の顔料が挙げられる。
【0048】
融着促進剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイルなどが挙げられる。
【0049】
(e)撹拌
核樹脂粒子、スチレン系モノマー及び、必要に応じて他の分散物及び溶解物を含めた水性媒体1m3を攪拌させるのに要する撹拌所要動力(Pv)が、0.06〜0.8kw/m3となるように調整された攪拌条件が好ましい。撹拌所要動力は、0 .1〜0.5kw/m3であることが好ましい。この撹拌所要動力は、反応容器内の内容物が攪拌により受けた、正味の単位体積当たりのエネルギーに対応する。
【0050】
ここで、撹拌所要動力は下記要領で測定したものをいう。
すなわち、核樹脂粒子、スチレン系モノマー及び必要に応じて他の分散物並びに溶解物を含有する水性媒体を重合装置の重合容器内に供給し、攪拌翼を所定の回転数で回転させて水性媒体を攪拌する。このとき、攪拌翼を回転させるのに必要な回転駆動負荷を電流値A1(アンペア)として計測する。この電流値A1 に実効電圧(ボルト)を乗じた値をP1(ワット)とする。
【0051】
そして、重合装置の攪拌翼を重合容器内が空の状態で、上記と同一回転数で回転させ、攪拌翼を回転させるのに必要な回転駆動負荷を電流値A2(アンペア)として計測する。この電流値A2 に実効電圧(ボルト)を乗じた値をP2(ワット)とし、下記式によって撹拌所要動力を算出できる。なお、V(m3)は、核樹脂粒子、スチレン系モノマー及び必要に応じて他の分散物並びに溶解物を含めた水性媒体全体の体積である。
撹拌所要動力(Pv)=(P1−P2)/V
【0052】
重合容器の形状及び構造としては、従来からスチレン系モノマーの重合に用いられているものであれば、特に限定されない。
また、攪拌翼は、撹拌所要動力を所定の範囲に設定可能であれば、特に限定されない。
具体的には、V型パドル翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、ファードラー翼、プルマージン翼等のパドル翼、タービン翼、ファンタービン翼等のタービン翼、マリンプロペラ翼のようなプロペラ翼等が挙げられる。これら攪拌翼の内、パドル翼が好ましく、V型パドル翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、ファードラー翼、プルマージン翼がより好ましい。攪拌翼は、単段翼であっても多段翼であってもよい。
また、攪拌翼の大きさについても、撹拌所要動力を所定の範囲に設定可能であれば、特に限定されない。
更に、重合容器に邪魔板(バッフル)を設けてもよい。
【0053】
(3)発泡性粒子
発泡性粒子は、複合樹脂粒子と、揮発性発泡剤とを含み、公知の方法により、複合樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させることにより製造できる。
複合樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させる温度としては、低いと、含浸に時間を要し、発泡性粒子の製造効率が低下することがある一方、高いと、発泡性粒子同士の合着が多量に発生することがあるので、50〜130℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。
【0054】
(a)発泡剤
揮発性発泡剤としては、従来からポリスチレン系樹脂の発泡に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、イソブタン、n−ブタン、イソペンタン、n−ペンタン、ネオペンタン等炭素数5以下の脂肪族炭化水素等の揮発性発泡剤が挙げられ、特にブタン系発泡剤、ペンタン系発泡剤が好ましい。尚、ペンタンは可塑剤としての作用も期待できる。
【0055】
揮発性発泡剤の発泡性粒子中における含有量は、通常2〜10質量%の範囲とされ、3〜10質量%の範囲が好ましく、3〜8質量%の範囲が特に好ましい。
揮発性発泡剤の含有量が少なく、例えば2質量%未満では、発泡性粒子から低密度の発泡成形体を得ることができないことがあると共に、型内発泡成形時の二次発泡力を高める効果が得られないために、発泡成形体の外観が低下することがある。一方、揮発性発泡剤の含有量が多く、例えば10質量%を超えると、発泡性粒子を用いた発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなり生産性が低下することがある。
【0056】
(b)発泡助剤
発泡性粒子には、発泡剤と共に発泡助剤を含有させることができる。
発泡助剤としては、従来からポリスチレン系樹脂の発泡に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族有機化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等の1気圧下における沸点が200℃以下の溶剤が挙げられる。
【0057】
発泡助剤の発泡性粒子中における含有量は、通常0.3〜2.5質量%の範囲とされ、0.5〜2質量%の範囲が好ましい。
発泡助剤の含有量が少なく、例えば0.3質量%未満では、ポリスチレン系樹脂の可塑化効果が発現しないことがある。一方、また、発泡助剤の含有量が多く、2.5質量%を超えると、発泡性粒子を発泡させて得られる発泡成形体に収縮や融けが発生して外観が低下する、あるいは発泡性粒子を用いた発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなることがある。
【0058】
(4)発泡粒子(以下「予備発泡粒子」ともいう)
発泡粒子は、公知の方法により、発泡性粒子を所定の嵩密度に予備発泡させることにより得られ、蒸気を導入するバッチ式発泡や連続発泡、加圧下からの放出発泡が挙げられる。
本発明の発泡性粒子は、0.012〜0.20g/cm3の範囲の嵩密度を有するのが好ましい。
発泡性粒子の嵩密度が0.012g/cm3未満では、発泡成形体が収縮しやすく外観を損なうことがある。
一方、発泡性粒子の嵩密度が0.20g/cm3を超えると、発泡成形体として軽量化のメリットが損なわれることがある。
予備発泡においては、必要に応じて発泡する際にスチームと同時に空気を導入してもよい。
【0059】
(5)発泡成形体
発泡成形体は、公知の方法、例えば、発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、再度加熱して発泡粒子を発泡させながら、発泡粒同士を熱融着させることにより得られる。
本発明の発泡成形体は、0.012〜0.20g/cm3の範囲の密度を有するのが好ましい。
発泡成形体の密度が0.012kg/m3未満では、耐衝撃性が十分でないことがある。
一方、発泡成形体の密度が0.20g/cm3を超えると、発泡成形体の重量が増加し、輸送コストが高くなるため好ましくないことがある。
【0060】
本発明によれば、発泡成形体の成形サイクルを短縮することができる。
「成形サイクル」とは、成形機の自動運転が開始され、型が閉となる動作が始まり、発泡粒子が型内に充填され、所望の条件で加熱、冷却が行われ、所定の面圧値になって型が開いて発泡成形体が取り出されるまでの時間を意味する。
【実施例】
【0061】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の例示にすぎず、本発明は以下の実施例のみに限定されない。
実施例および比較例においては、得られた核樹脂粒子、複合樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体を次のようにして評価した。
【0062】
<核樹脂粒子および複合樹脂粒子のポリスチレン系樹脂の分散状態>
核樹脂粒子および複合樹脂粒子から切片を切り出し、その切片をエポキシ樹脂中に包埋後、ウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製、商品名:LEICA UL TRACUT UCT)を用いて超薄切片(厚み70nm)を作成する。
次いで、超薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式:H−7600)にて倍率3500倍(必要に応じて5000倍)で写真撮影を行い、複合樹脂粒子の表面から深さ3μmを含む範囲や複合樹脂粒子の中央部のポリスチレン系樹脂の分散状態、また、核樹脂粒子のポリスチレン系樹脂の分散状態を撮影する。染色剤には四酸化ルテニウムを用いる。
【0063】
TEM画像中の特定領域を構成する成分が「直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」、「ポリスチレン系樹脂」のいずれであるかは、「ポリスチレン系樹脂」の成分が周辺樹脂との兼ね合いでコントラストが変化する場合があるため、その染色状態によるコントラストだけではなく、「オレフィン系樹脂」において観察される特有のラメラ構造も含めて判別する。
【0064】
<核樹脂粒子中のポリスチレン系樹脂微粒子の平均粒子径>
スケールが表示されている上記TEM画像より直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂内に分散されたポリスチレン系樹脂微粒子は略円状、不定形状等であるが、その最長径と最短径を測定し、下式のとおり算出する。
(ポリスチレン系樹脂微粒子の粒子径)=(最長径+最短径)/2(μm)
このポリスチレン系樹脂微粒子の粒子径のうち、任意の20個の平均値をポリスチレン系樹脂微粒子の平均粒子径(μm)とする。
【0065】
<複合樹脂粒子中のポリスチレン系樹脂微粒子の平均粒子径>
前記核樹脂粒子中のポリスチレン系樹脂微粒子の粒子径と同様にして、下式によりポリスチレン系樹脂微粒子の平均粒子径(μm)を求める。
(ポリスチレン系樹脂微粒子の粒子径)=(最長径+最短径)/2(μm)
【0066】
<複合樹脂粒子中の表層ポリスチレン系樹脂微粒子の面積割合>
スケールが表示されている上記TEM画像より、任意の観察点から得られたTEM画像における複合樹脂粒子の表面から深さ(画像の上下方向)0.5μmと長さ(画像の左右方向)5μmの範囲において、0.25μm以上0.80μm以下のポリスチレン系樹脂微粒子の粒子径を算出した。次に下式のとおり表層ポリスチレン系樹脂微粒子の面積割合を算出する。
深さ0.5μm、長さ5μmの範囲における境界線上に、0.25μm以上0.80μm以下のポリスチレン系樹脂微粒子の一部が含まれる場合も、下式の面積に含まれることとする。
(表層ポリスチレン系樹脂微粒子の面積割合)
=(ポリスチレン系樹脂微粒子の面積の合計A)/(面積B)×100(%)
ポリスチレン系樹脂微粒子の面積の合計Aは、粒子径0.25〜0.80μmのポリスチレン系樹脂微粒子(PS微粒子)の面積の合計であり、下式により算出する。
Σ[(0.25〜0.80μmのPS微粒子の粒子径/2)2×3.14](μm2
面積Bは、深さ0.5μm、長さ5μmの範囲の面積、0.5×5(μm2)である。
【0067】
<吸光度比(D698/D2850)>
複合樹脂粒子の表面の吸光度比(D698/D2850)を次の要領で測定する。
なお、赤外吸収スペクトルから得られる各吸光度は、複合樹脂粒子に含まれる各樹脂成分の振動に由来するピークの高さをいう。
無作為に選択した10個の粒子について、赤外分光分析ATR測定法により粒子断面分析を行って赤外吸収スペクトルを得る。この分析では、試料表面から数μm(約2μm)までの深さの範囲の赤外吸収スペクトルが得られる。
各赤外吸収スペクトルから個別の吸光度比(D698/D2850)を算出し、それらの相加平均を吸光度比とする。
吸光度D698およびD2850は、Nicolet社から商品名「フーリエ変換赤外分光分析計 MAGNA560」で販売されている測定装置と、ATRアクセサリーとしてSpectra−Tech社製「サンダードーム」を用いて次の条件で測定する。
【0068】
(測定条件)
高屈折率結晶種:Ge(ゲルマニウム)
入射角:45°±1°
測定領域:4000cm-1〜675cm-1
測定深度の端数依存性:補正せず
反射回数:1回
検出器:DTGS KBr
分解能:4cm-1
積算回数:32回
その他:試料と接触させずに赤外線吸収スペクトルを下記の条件で測定し、測定されたスペクトルをバックグラウンドとする。試料の測定時には、バックグラウンドが測定スペクトルに関与しないように、測定データを処理する。ATR法では、試料と高屈折率結晶の密着度合によって、赤外吸収スペクトルの強度が変化する。そのため、ATRアクセサリーの「サンダードーム」で掛けられる最大荷重を掛けて密着度合をほぼ均一にして測定を行う。
【0069】
(バックグランド測定条件)
モード:透過
ピクセルサイズ:6.25μm
測定領域:4000cm-1〜650cm-1
検出器:MCT
分解能:8cm-1
スキャン/ピクセル:60回
その他:試料近傍の試料のない部分のフッ化バリウム結晶を測定した赤外吸収スペクトルをバックグランドとして測定スペクトルに関与しない処理を実施する。
【0070】
以上の条件で得られた赤外線吸収スペクトルについて、次のようにピーク処理をしてそれぞれの吸光度を求める。
赤外吸収スペクトルから得られる698cm-1での吸光度D698は、スチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、698cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しない。吸光度D698は、2000cm-1と870cm-1を結ぶ直線をベースラインとして、710cm-1と685cm-1間の最大吸光度を意味する。
また、赤外吸収スペクトルから得られる2850cm-1での吸光度D2850は、ポリエチレン系樹脂に含まれる−C−CH2炭化水素のCH2の対称変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、2850cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しない。吸光度D2850は、3125cm-1と2720cm-1を結ぶ直線をベースラインとして、2875cm-1と2800cm-1間の最大吸光度を意味する。
【0071】
吸光度比からポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の組成割合を求める方法としては、ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを所定の組成割合に均一に混合してなる複数種類の標準試料を作製し、各標準試料についてATR法赤外分光分析により粒子表面分析を行なって赤外線吸収スペクトルを得る。得られた赤外吸収スペクトルのそれぞれから吸光度比を算出する。そして、縦軸に組成割合(標準試料中のポリスチレン系樹脂比率(質量%))を、横軸に吸光度比(D698/D2850)をとることで、検量線を描く。この検量線に基づいて、本発明の複合樹脂粒子の吸光度比から、本発明の複合樹脂粒子におけるポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の組成割合を求める。
なお、前記検量線は、下記の式に近似される。
・D698/D2850<1.42の場合
Y=21.112X2
・1.42<(D698/D2850)<8.24の場合
Y=28.415Ln(X2)+20.072
式中、X2=(D698/D2850)、Y=ポリスチレン系樹脂量(%)
【0072】
<複合樹脂粒子のゲル分率>
グラム単位で小数点以下4桁まで測定可能な電子天秤(メトラー社製)を用いて精秤した複合樹脂粒子1gを、トルエン100ml及び沸石約0.4gと共に、容量200mlのナスフラスコに入れ、これを冷却管とつなぎ合わせて130℃のオイルバス中に入れる。次に冷却管に適量の水を流して24時間加熱する。
次いで、フラスコをオイルバスから取り出した後、直ちに80メッシュ(φ0.12mm)の金網を用いて内容物を濾過する。次いで、金網上に残った沸騰トルエンに対する不溶物と沸石とを金網ごと、130℃のオーブン中に1時間静置してトルエンを除去し、さらに2時間、真空乾燥を行う。その後、オーブンから金網ごと金網上に残った固形物と沸石とを取り出し、デシケーター内で約1時間放冷する。次いで金網上に残った固形物と沸石とを金網ごと、その全質量Wt(g)を測定する。
全質量Wt(g)から、予め精秤しておいた沸石の質量Wz(g)と金網の質量Wm(g)を減じて、固形物の質量Ws(g)を算出し、さらに精秤しておいた複合樹脂粒子Wb(g)に対する割合をゲル分率(質量%)として算出する。
ゲル分率(質量%)=(Wt−Wz−Wm)/Wb×100
【0073】
<複合樹脂粒子の平均粒子径>
累積質量分布曲線における累積質量50%の粒子径(メディアン径:d50)を複合樹脂粒子の平均粒子径とする。
具体的には、ロータップ型篩振とう機(株式会社飯田製作所製)を用いて、篩目開き4.00mm、3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mm、0.85mm、0.71mm、0.60mm、0.50mm、0.425mm、0.355mm、0.300mm、0.250mm、0.212mm及び0.180mmのJIS標準篩(JIS Z8801−1:2006)で試料約50gを10分間分級し、篩網上の試料質量を測定する。得られた結果から累積質量分布曲線を作成し、累積質量が50%となる粒子径を平均粒子径(mm)とする。
【0074】
<発泡粒子の嵩密度>
内容積100cm3のメスシリンダーの質量B(g)を測定し、110〜120cm3の発泡粒子を、漏斗を介してメスシリンダー内に自然落下させる。発泡粒子が塊状で漏斗に付着する場合には、ガラス棒でばらばらにする。メスシリンダーに盛り上がった発泡粒子は直定規をメスシリンダーの縁に沿って動かすことによって取り去り、発泡粒子を入れたメスシリンダーの質量A(g)を測定する。下式により発泡粒子の嵩密度を算出する。
嵩密度(g/cm3
=[質量A(g)−質量B(g)]/メスシリンダーの容積(100cm3
【0075】
<発泡成形体の密度>
発泡成形後に得られる発泡成形体の体積Va(cm3)と、その質量W(g)を測定し、下式より発泡成形体の密度を求める。
発泡成形体の密度(g/cm3)=質量W(g)/体積Va(cm3
【0076】
<耐薬品性>
発泡成形体から縦100mm×横100mm×厚み20mmの平面長方形状の板状試験片を3枚切り出し、23±2℃、湿度50±5%の条件で24時間放置する。なお、試験片の上面全面が発泡成形体の表面から形成されるように試験片を発泡成形体から切り出す。
次に、3枚の試験片の上面毎に別々の薬品(ガソリン、灯油、ジブチルフタレート(DBP))1gを均一に塗布し、23±2℃、湿度50±5%の条件で60分放置する。その後、試験片の上面から薬品を拭き取り、試験片の上面を目視観察し、下記の基準に基づいて評価する。
○:良好 変化なし
△:やや悪い 表面軟化
×:悪い 表面陥没(収縮)
【0077】
<発泡成形体の融着率>
縦300mm×横400mm×高さ50mmの直方体形状の発泡成形体の横方向中央部において一方の表面(縦300mm×横400mmの面)に深さ2mmの切り込みを全幅に横切るように入れ、この切り込みを広げる方向に発泡成形体が破断するまで、または両端部が当接するまで折り曲げる。次に破断面を観察し、目視により内部で破断した発泡粒子と界面で剥離した発泡粒子の数を計測する。次いで、内部で破断した発泡粒子と界面で剥離した発泡粒子の合計数に対する内部で破断した発泡粒子の割合を算出し、これを百分率で表して融着率(%)とする。100〜150個の任意の範囲について計測する。
【0078】
<発泡成形体の外観>
発泡成形体の外観を目視観察し、下記の基準で評価する。
すなわち、数値が大きい程、粒子同士の隙間が少ない状態であることを表し、5点満点で表現した3以上を合格とする。
5:粒子同士の隙間が見当たらない
4:部分的に隙間が見られる
3:所々に隙間が見られるが許容レベル
2:隙間が目立つ
1:隙間が目立ち、商品価値がないレベル
【0079】
<発泡成形体の衝撃強度>
発泡成形体から縦215mm×横40mm×厚み20mmの平面長方形状の試験片を切り出す。そして、JIS K7211:1976「硬質プラスチックの落錘衝撃試験方法通則」に準拠して、150mmの間隔を存して配設された一対の支点間に試験片を架設して321gの鋼球を落とし、落球衝撃値、すなわち50%破壊高さ(cm)を下式に基づいて算出する。但し、鋼球の最大高さは120cmとする。
50%破壊高さH50=Hi+d[Σ(i×ni)/N±0.5]
【0080】
式中の記号は下記を意味する。
H50 :50%破壊高さ(cm)
Hi :高さ水準(i)0における試験片の高さ(cm)
試験片が破壊することが予測される高さ
d :試験片の高さを上下させるときの高さ間隔(cm)
i :Hiのときを0とし、1つずつ増減する高さ水準
(i=・・・−3、−2、−1,0,1,2,3、・・・)
ni :各水準において破壊した(又は破壊しなかった)試験片の数
N :破壊した(又は破壊しなかった)試験片の総数(N=Σni)
何れか多い方のデータを使用する
なお、同数の場合はどちらを採用してもよい
±0.5:破壊したデータを使用する時は負を、
破壊しなかったデータを使用する時は正をとる
【0081】
<発泡成形体の圧縮強度>
JIS K7220:2006に準拠して測定する。
発泡成形体を縦50mm×横50mm×厚み25mmに切断加工した試験片を、圧縮速度10mm/分の条件で圧縮し、10%圧縮時の強度(MPa)を測定する。
【0082】
<発泡成形体の曲げ強度>
発泡体の曲げ強度(平均最大曲げ強度)をJIS K7221−2:2006に記載の方法に準拠して測定する。
発泡成形体から縦25mm×横130mm×厚み20mm(片面スキン下側)の直方体形状の試験片を5個切り出し、23℃±2℃、湿度50±5%の条件で24時間放置する。この試験片を曲げ強度測定器(オリエンテック株式会社製、型式:UCT−10T)を用いて、下記の測定条件下で曲げ強度(MPa)を測定する。
【0083】
(測定条件)
試験速度:10mm/分
支点間距離:100mm
たわみ量:50mm
加圧くさび:5R
支持台:5R
【0084】
<成形サイクル>
成形サイクルは、成形機の自動運転が開始され、型が閉となる動作が始まり、発泡粒子が型内に充填され、所望の条件で加熱、冷却が行われ、所定の面圧値になって型が開いて発泡成形体が取出されるまでの時間であり、発泡成形工程において、計時(秒)する。
【0085】
(実施例1)
(核樹脂粒子の作製)
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ハーモレックス NF−444A」)90質量部およびポリスチレン系樹脂(東洋スチレン株式会社製、商品名「トーヨースチロールGP HRM−26」)10質量部を、タンブラーミキサーに投入し、5分間混合した。
次いで、得られた樹脂混合物を、押出機ヘッド部の樹脂流路中心の樹脂温度が280℃になるようシリンダー温度を調整した。四条切欠きスクリューを備えたφ65mm−50mmタンデム型押出機(東芝機械株式会社製、型式:SE−65)に供給して溶融混練し、水中カット方式により造粒した。この時、ヘッド部の圧力は19MPa、ダイス入口の樹脂温度は245℃、ダイスの樹脂流路入口の圧力は15MPaであり、平均0.4mg/個に切断した核樹脂粒子を得た。得られた核樹脂粒子のTEM画像を図1に示す。
【0086】
(複合樹脂粒子の作製)
撹拌装置を備えた内容積100リットルのオートクレーブに、水40kg、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム356g、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ7.0gを加え、撹拌所要動力0.20kw/m3で撹拌して分散用媒体を得、さらに前記核樹脂粒子8.8kgを加え、核樹脂粒子を分散させて懸濁液(分散液)を得た。
次いで、核樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、これに予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド11.0gを溶解させて調製しておいたスチレン4.4kgを30分かけて定量で添加した。その後、撹拌所要動力0.22kw/m3に調整し、分散液の温度を60℃に維持しつつ1時間撹拌することで核樹脂粒子中にスチレンを含浸させた。
次いで、分散液を昇温速度0.78℃/分で加熱し、135℃で2時間保持した。次に0.5℃/分で140℃まで昇温し、2時間アニール処理を行った後、分散液を降温速度0.5℃/分で115℃まで冷却した。
【0087】
次いで、分散液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ11.5gを加え、10分後に、予め重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシベンゾエート109gと気泡調整剤としてのエチレンビスステアリン酸アミド200gとアクリル酸ブチル800gとを溶解させて調製しておいたスチレン26.0kgを4時間かけて定量で添加した。
【0088】
次いで、分散液を115℃で1時間保持し、昇温速度0.66℃/分で140℃まで加熱し、同温度で2時間保持した。その後、分散液を降温速度0.94℃/分で30℃まで冷却した。
オートクレーブから内容物を取り出し、20%塩酸400mlを添加して樹脂粒子の表面に付着したピロリン酸マグネシウムを分解し、洗浄後、内容物を遠心分離機で脱水し、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去して複合樹脂粒子を得た。
得られた複合樹脂粒子についての評価結果を表1及び図2に示す。図2は、得られた複合樹脂粒子における(a)粒子表面部及び(b)粒子中央部のTEM画像である。
【0089】
(発泡性粒子の作製)
次いで、撹拌機付き5Lオートクレーブに、取り出し後の複合樹脂粒子2000gと水2000g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ2.0gを再び投入し、撹拌所要動力0.20kw/m3で撹拌しながら発泡剤としてブタン(イソブタン3:n−ブタン7の比率)624ml(360g)を注入した。その後、70℃に昇温し、4時間撹拌を続けた。その後、常温まで冷却して5Lオートクレーブから取り出し、脱水、乾燥した後に発泡性粒子を得た。
【0090】
(発泡粒子の作製)
次いで、内容積40Lの撹拌機付き予備発泡機に、得られた発泡性粒子を投入し、圧力0.02MPaの蒸気を導入しながら撹拌して発泡性粒子を予備発泡させた。この時、発泡性粒子の投入量を調整し、容積30Lで予備発泡機から取出すことにより、嵩密度0.033g/cm3及び0.020g/cm3の発泡粒子を得た。
【0091】
(発泡成形体の作製)
予備発泡後7日間23℃恒温室に保管し、発泡成形機(株式会社積水工機製作所製、型式:ACE−3SP)の金型内に、前記発泡粒子を充填し、その後、成形型に圧力0.08MPaの蒸気を、金型加熱2秒、一方加熱5秒、逆一方加熱2秒、両面加熱10秒の加熱条件で導入して発泡粒子を発泡させ、水冷10秒後に真空放冷により発泡成形体の面圧値が0.02MPaまで降下した時に型内から取り出し、成形サイクル(秒)を計時した。このようにして、密度0.033g/cm3及び0.020g/cm3の、縦300mm×横400mm×厚み50mmの直方体形状の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体について、物性を測定・評価した。それらの結果を表1に示す。
【0092】
(実施例2)
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ハーモレックス NF−444A」)80質量部、ポリスチレン系樹脂(東洋スチレン株式会社製、商品名「トーヨースチロールGP HRM−26」)20質量部とした以外は実施例1と同様にして核樹脂粒子を得た。
次に、撹拌装置を備えた内容積100リットルのオートクレーブに、水40kg、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム356g、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ7.0gを加え、撹拌所要動力0.20kw/m3で撹拌して分散用媒体を得、さらに前記核樹脂粒子14.8kgを加え、核樹脂粒子を分散させて懸濁液(分散液)を得た。
【0093】
次いで、核樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、これに予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド18.5gを溶解させて調製しておいたスチレン7.4kgを30分かけて定量で添加した。その後、撹拌所要動力0.22kw/m3に調整し、分散液の温度を60℃に維持しつつ1時間撹拌することで核樹脂粒子中にスチレンを含浸させた。
次いで、分散液を昇温速度0.78℃/分で加熱し、135℃で2時間保持した。次に0.5℃/分で140℃まで昇温し、2時間アニール処理を行った後、分散液を降温速度0.5℃/分で115℃まで冷却した。
【0094】
次いで、分散液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ11.5gを加え、10分後に、予め重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシベンゾエート88gと気泡調整剤としてのエチレンビスステアリン酸アミド200gとアクリル酸ブチル600gとを溶解させて調製しておいたスチレン17.2kgを4時間かけて定量で添加した。
これ以降は実施例1と同様にして、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を表1に示す。
【0095】
(実施例3)
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ハーモレックス NF−444A」)70質量部、ポリスチレン系樹脂(東洋スチレン株式会社製、商品名「トーヨースチロールGP HRM−26」)30質量部とした以外は実施例1と同様にして核樹脂粒子を得た。
次に、撹拌装置を備えた内容積100リットルのオートクレーブに、水40kg、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム356g、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ7.0gを加え、撹拌所要動力0.20kw/m3で撹拌して分散用媒体を得、さらに前記核樹脂粒子22.8kgを加え、核樹脂粒子を分散させて懸濁液(分散液)を得た。
【0096】
次いで、核樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、これに予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド24.5gを溶解させて調製しておいたスチレン9.8kgを30分かけて定量で添加した。その後、撹拌所要動力0.22kw/m3に調整し、分散液の温度を60℃に維持しつつ1時間撹拌することで核樹脂粒子中にスチレンを含浸させた。
次いで、分散液を昇温速度0.78℃/分で加熱し、135℃で2時間保持した。次に0.5℃/分で145℃まで昇温し、2時間アニール処理を行った後、分散液を降温速度0.5℃/分で115℃まで冷却した。
【0097】
次いで、分散液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ11.5gを加え、10分後に、予め重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシベンゾエート60gと気泡調整剤としてのエチレンビスステアリン酸アミド200gとアクリル酸ブチル600gとを溶解させて調製しておいたスチレン6.8kgを2時間かけて定量で添加した。
これ以降は実施例1と同様にして、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を表1に示す
【0098】
(比較例1)
複合樹脂粒子の製造において、アニール処理の工程を行わないこと以外は、実施例1と同様にして、核樹脂粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を表1及び図3に示す。図3は、得られた複合樹脂粒子における(a)粒子表面部及び(b)粒子中央部のTEM画像である。
【0099】
(比較例2)
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ハーモレックス NF−444A」)100質量部とすること以外は実施例1と同様にして核樹脂粒子を得た。
次に、撹拌装置を備えた内容積100リットルのオートクレーブに、水40kg、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム356g、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ7.0gを加え、撹拌所要動力0.20kw/m3で撹拌して分散用媒体を得、さらに前記核樹脂粒子12.0kgを加え、核樹脂粒子を分散させて懸濁液(分散液)を得た。
【0100】
次いで、核樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、これに予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド15.0gを溶解させて調製しておいたスチレン6.0kgを30分かけて定量で添加した。その後、撹拌所要動力0.22kw/m3に調整し、分散液の温度を60℃に維持しつつ1時間撹拌することで核樹脂粒子中にスチレンを含浸させた。
次いで、分散液を昇温速度0.78℃/分で加熱し、135℃で2時間保持した。次にアニール処理を行わず、分散液を降温速度0.5℃/分で115℃まで冷却した。
【0101】
次いで、分散液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ11.5gを加え、10分後に、予め重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシベンゾエート98gと気泡調整剤としてのエチレンビスステアリン酸アミド200gとアクリル酸ブチル600gとを溶解させて調製しておいたスチレン21.4kgを4時間かけて定量で添加した。
これ以降は実施例1と同様にして、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を及び図4に示す。図4は、得られた複合樹脂粒子における(a)粒子表面部及び(b)粒子中央部のTEM画像である。
【0102】
(比較例3)
ポリエチレン系樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ノバテックEVA LV−115」)100質量部とし、押出機ヘッド部の樹脂流路中心の樹脂温度を220℃としたこと以外は実施例1と同様にして核樹脂粒子を得た。この時、ヘッド部の圧力は18MPa、ダイス入口の樹脂温度は240℃、ダイスの樹脂流路入口の圧力は16MPaであった
次に、撹拌装置を備えた内容積100リットルのオートクレーブに、水48kg、分散剤としてピロリン酸マグネシウム320g、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ7.7gを加え、撹拌所要動力0.95kw/m3で撹拌して分散用媒体を得、さらに前記核樹脂粒子9.6kgを加え、核樹脂粒子を分散させて懸濁液(分散液)を得た。
【0103】
次いで、スチレン4.8kgに、重合開始剤として過酸化ベンゾイル83.2g、t−ブチルパーオキシベンゾエート192gを溶解させた溶液を添加した。その後、70℃に調節し、30分間維持しつつ撹拌することで核樹脂粒子中にスチレンを含浸させた。
次いで、85℃まで昇温し、スチレン17.6kgを3時間40分かけて定量で添加した。更に125℃まで昇温して30分間維持した。次いで1℃/分で冷却後、オートクレーブから内容物を取り出し、20%塩酸400mlを添加して樹脂粒子の表面に付着したピロリン酸マグネシウムを分解し、洗浄後、内容物を遠心分離機で脱水し、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去して複合樹脂粒子を得た。
これ以降は実施例1と同様にして、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1の結果から、実施例1〜3の複合樹脂粒子は、発泡成形体の成形サイクルを短縮し得ることがわかる。
一方、比較例1〜3の樹脂粒子は、実施例1〜3の複合樹脂粒子に劣ることがわかる。
図1
図2
図3
図4