特許第6170708号(P6170708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170708
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】織物および織物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 3/00 20060101AFI20170713BHJP
   D03D 11/02 20060101ALI20170713BHJP
   D03D 5/00 20060101ALI20170713BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   D03D3/00
   D03D11/02
   D03D5/00 Z
   D03D15/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-77520(P2013-77520)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-201845(P2014-201845A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】500330599
【氏名又は名称】本橋テープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】本橋 真也
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−234446(JP,A)
【文献】 実公昭35−032880(JP,Y1)
【文献】 実開昭49−023104(JP,U)
【文献】 特開平11−241255(JP,A)
【文献】 実開昭57−059883(JP,U)
【文献】 実開昭57−096991(JP,U)
【文献】 実開昭59−123175(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸とを有する一対の織布とが互いに対向した状態で前記緯糸によって連結される織物本体と、前記織物本体の側縁に沿って前記緯糸に所定の間隔を空けて織り込まれる紐と、前記紐が前記緯糸から露出して前記織物本体の側方に湾曲するように緩んだ状態となっている露出部と、前記紐が前記緯糸に織り込まれて前記織物本体に通されている被挿通部とを有し、前記露出部と前記被挿通部とが交互に配置されるように前記織物本体に連結される織物であって、
前記被挿通部が前記織物本体に対し固定手段によって固定されており、
前記固定手段は熱によって融着する融着糸であることを特徴とする織物。
【請求項2】
請求項1に記載した織物の製造方法において、複数本の融着糸を筒状部に挿通することを特徴とする織物の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載した織物の製造方法において、筒状部に挿通した融着糸を染色工程における加熱によって溶かし、前記溶けた融着糸により紐が筒状部に固定されることを特徴とする織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は織物および織物の製造方法に係り、特に織物の側縁から露出する紐を有する織物および織物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経糸と緯糸とを有する織布が互いに対向した状態で緯糸によって連結される織物として、例えば特許文献1、2に記載されるようなものがある。
特許文献1に記載される織物は経糸に金属細線を織り込んで金属探知可能とした機能性を有するものであり、特許文献2に記載される織物は織物本体の側縁に玉条突部が形成された意匠性を有するものである。
【0003】
この種の織物として、織物本体の側縁に沿って緯糸に所定の間隔を空けて織り込まれる紐と、紐が緯糸から露出して織物本体の側方に湾曲するように緩んだ状態となっている露出部と、紐が緯糸に織り込まれて織物本体に通されている被挿通部とを有し、露出部と被挿通部とが交互に配置されるように織物本体に連結されたものがある。
この織物は、紐の露出部に他の紐を通して連結したり、露出部が設けられていることで高い装飾性を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−101757号公報
【特許文献2】特開2003−313763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この織物の紐は単に織物本体の緯糸に所定の間隔を空けて織り込まれたものであるため、露出部が引っ張られると隣接する露出部がその引っ張られている方向に引き寄せられてしまう。そして、各露出部の長さ寸法が不揃いになり、織物の機能性や意匠性が損なわれてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記従来の問題に着目して為されたものであり、露出部が引っ張られても隣接する各露出部の長さ寸法が不揃いとはならず、織物の機能性や意匠性を損なうことがない織物と、その織物の製造方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、経糸と緯糸とを有する一対の織布とが互いに対向した状態で前記緯糸によって連結される織物本体と、前記織物本体の側縁に沿って前記緯糸に所定の間隔を空けて織り込まれる紐と、前記紐が前記緯糸から露出して前記織物本体の側方に湾曲するように緩んだ状態となっている露出部と、前記紐が前記緯糸に織り込まれて前記織物本体に通されている被挿通部とを有し、前記露出部と前記被挿通部とが交互に配置されるように前記織物本体に連結される織物であって、前記被挿通部が前記織物本体に対し固定手段によって固定されており、前記固定手段は熱によって融着する融着糸であることを特徴とする織物である。
【0011】
請求項の発明は、請求項に記載した織物の製造方法において、複数本の融着糸を筒状部に挿通することを特徴とする織物の製造方法である。
【0012】
請求項の発明は、請求項に記載した織物の製造方法において、筒状部に挿通した融着糸を染色工程における加熱によって溶かし、前記溶けた融着糸により紐が筒状部に固定されることを特徴とする織物の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紐の被挿通部が織物本体に対して融着糸によって固定されているため、露出部が引っ張られても隣接する露出部が引き寄せられてしまうことがなく、交互に配置される各露出部の長さ寸法を常に一定の長さ寸法に保つことができる。従って、織物の機能性や意匠性を常に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の織物の実施の形態に係る正面図である。
図2図1の織物の一部拡大図である。
図3図1の織物のA−A断面図とB−B断面図である。
図4図3の織物のC−C断面図である。
図5図3の織物のD−D断面図である。
図6図3の織物のE−E断面図である。
図7図1の織物の製造方法について説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る織物1を図面にしたがって説明する。織物1は袋織された細幅織物である。
符号2は織物本体を示し、織物本体2は経糸3と緯糸5を1目ずつ交互に平織りされ形成された一対の織布7、8とによって構成されている。織物本体2は織布7、8が互いに対向した状態で緯糸5によって連結されている。
織物本体2には、経方向へ延びる7本の連結糸9が織り込まれており、これらの連結糸9は織物本体2の側縁から略等間隔に配置されている。図2、3に示すように、各連結糸9は織物本体2の織布7、8の両方の緯糸5に織り込まれることによって、互いに対向する織布7、8を連結している。これらの連結糸9によって織物本体2が仕切られており、8つの筒状部11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11hが形成されている。
【0016】
図1において左端に位置する筒状部11aと右端に位置する筒状部11hは、一対の織布7、8、緯糸5及び連結糸9によって構成されている。
筒状部11aには紐15が一定の間隔ごとに挿通されている。すなわち、この紐15は緯糸5が12本毎に織り込まれており、筒状部11aに挿通された部分である被挿通部17と、筒状部11aから露出する部分である露出部19が交互に配置されている。これらの露出部19は織物本体2の側方に湾曲するように緩んだ状態となっている。紐15の各露出部19は同じ長さ寸法に揃えられており、ほぼ同じ形状に側方へ湾曲している。
【0017】
筒状部11aには接着剤としての融着糸21(商品名「エルダー」、東レ株式会社製)が挿通されており、後述する加熱により溶けた融着糸21によって紐15の被挿通部17が筒状部11aに固定されている。
筒状部11aを構成する連結糸9、融着糸21とによって紐15の被挿通部17を織物本体2に固定する固定手段が構成されている。
なお、筒状部11hには繊維束23が通されている。
【0018】
本発明の織物1の製造方法について図にしたがって説明する。
図7に示すように、織布7は空間S1において、また織布8は空間S2において形成される。これらの織布7、8はそれぞれ経糸3と緯糸5を平織りすることによって構成される。また、織布7、8は空間S1と空間S2に連続して巾方向に織り込まれる緯糸5によって連結され、袋状の織物本体2が形成される。
図4に示すように、経糸3と同様に空間S1若しくは空間S2には連結糸9が張られた状態で送られる。連結糸9のポジションは緯糸5が空間S1と空間S2を巾方向に一往復する度に空間S1と空間S2との間で交互に変わり、織布7、8の両方の緯糸5に織り込まれる。これにより互いに対向する一対の織布7、8を連結する。
【0019】
図5、7に示すように、空間S1と空間S2の間には2本の融着糸21が張られた状態で通されており、融着糸21は図7において左端に配置されている。これにより、織物本体2が織られて8つの筒状部11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11hが形成されると同時に、融着糸21が筒状部11aに通される。
図6、7に示すように、紐15は空間S1に経糸3と同様に張られており、左端に配置されている。紐15は緯糸5が経糸3に12本織り込まれるたびに空間S1において上下に入れ替えられる。従って、紐15は12本の緯糸5に織り込まれて被挿通部17が形成され、次に12本分の緯糸5に織り込まれないで露出部19が形成され、これが交互に行われる。これにより、緯糸5から露出した露出部19と、緯糸5に織り込まれて筒状部11aに挿通される被挿通部17とが交互に形成されることになる。
【0020】
織り上げられた織物1は、染色の工程へと進む。この染色工程では織物1に100度程度の加熱処理がなされる。この際の加熱によって融着糸21を溶け、この溶けた融着糸21を介して紐15の被挿通部17が筒状部11aに固定される。
染色工程では加熱処理がなされるので、融着糸21を溶かすための新たな工程を設ける必要がない。従って織物1の製造時間が従来より長くなることはない。
【0021】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、本実施の形態の織布7、8は平織で構成されていたが、本発明はこの構成に限られず、綾織や繻子織等で構成してもよい。
また、本実施の形態の紐15は一対の織布7、8を連結している緯糸5に12本の間隔を空けて織り込んでいるが、本発明はこれに限定されず、紐15が緯糸5に織り込まれる間隔は11本以下でも13本以上でもよい。
本実施の形態では、筒状部11aに2本の融着糸21を挿通したが、本発明は3本以上でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
織物の製造業に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0023】
1…織物 2…織物本体
3…経糸 5…緯糸
7、8…織布 9…連結糸
11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h…筒状部
15…紐 17…被挿通部
19…露出部 21…融着糸
23…繊維束 S1、S2…空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7