(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面に絵柄が表示された絵柄シートの上に前記絵柄を透視可能な透視部と前記絵柄を隠蔽可能な隠蔽部とを交互に配列したフィルムが配置され、前記フィルムの上に前記絵柄を視認可能な窓部を備えた窓付シートが配置され、予め設定した相対変位方向に前記フィルムと前記絵柄シートとを相対的に変位させることで前記窓部から視認される前記絵柄を可変表示する絵柄可変表示体を、複数重ねて形成した絵柄可変表示冊子において、
前記絵柄可変表示体は、
前記窓付シートの前記相対変位方向に沿った方向に位置する端部に対し、前記相対変位方向と交差する方向に延在する第1の折り曲げ部で折り曲げ可能な状態で連結し、前記窓付シートと前記絵柄シートとの間を前記フィルムに向けて延在する2以上の凸部を備えるカバーシートと、
前記凸部に対し前記相対変位方向と交差する方向に延在する第2の折り曲げ部で折り曲げ可能な状態で連結し、前記窓付シートと前記絵柄シートとの間を前記フィルムに向けて延在し、延在方向端部を前記フィルムに固定したフィルム作動ガイド片と、をさらに備え、
前記第2の折り曲げ部は、前記カバーシートを開いた状態で前記第1の折り曲げ部に対し前記フィルム側にずらして配置されており、
前記各絵柄可変表示体の前記凸部は、隣り合う他の前記絵柄可変表示体の前記凸部とは、前記絵柄可変表示体の重なり方向から見て、互いにずらして配置されていることを特徴とする絵柄可変表示冊子。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る絵柄可変表示冊子100の構造について説明する。
図1は、絵柄可変表示冊子100を閉じた状態を示す斜視図である。絵柄可変表示冊子100は、
図1に示すように、表紙101と、背表紙102と、裏表紙103と、絵柄可変表示体部104とを備えている。ここで、表紙101、背表紙102及び裏表紙103は、従来技術に係る冊子に備わる表紙、背表紙及び裏表紙と同様に、例えば厚手の紙、合成紙、プラスチックシート等で形成されたものである。よって、本実施形態では、表紙101、背表紙102及び裏表紙103の構造についての詳細な説明は省略し、絵柄可変表示体部104の構造についてのみ説明する。
【0019】
絵柄可変表示体部104は、絵柄可変表示体1と絵柄可変表示体2が交互に複数重なって構成されたものである。ここで、絵柄可変表示体1と絵柄可変表示体2の構造を比較すると、両表示体の構造は略同じであるが、絵柄可変表示体1に備わる凸部62aは、隣り合う絵柄可変表示体2の凸部62bとは、絵柄可変表示体1、2の重なり方向から見て、互いにずらして配置されている点で異なる。そこで、まず、絵柄可変表示体1の構造について
図2〜6を参照しつつ説明する。
【0020】
(絵柄可変表示体1の構造)
図2は、絵柄可変表示体1を見開いた状態における平面図(a)及び底面図(b)である。また、
図3は、絵柄可変表示体1を閉じた状態における平面図である。また、
図4は、絵柄可変表示体1を見開いた状態(a)及び閉じた状態(b)における断面図である。なお、
図4(a)は、
図2(a)のA−A線における断面図であり、
図4(b)は、
図3のB−B線における断面図である。
【0021】
本実施形態に係る絵柄可変表示体1は、
図2〜
図4に示すように、カバーシート3と、台紙4と、可変絵柄表示部5とを備えている。ここで、カバーシート3は、内面シート50と、外面シート60とを備えたシートである。また、台紙4は、窓付シート40と、裏面シート10とを備えた台紙である。また、可変絵柄表示部5は、絵柄シート20と、フィルム30と、フィルム作動ガイド片70とを備えた表示部である。
さらに、絵柄可変表示体1は、折り曲げ部(第1の折り曲げ部)6と、折り曲げ部(第2の折り曲げ部)8とを備えている。ここで、折り曲げ部6は、カバーシート3と台紙4とを折曲自在に連結する折り曲げ部である。また、折り曲げ部8は、フィルム作動ガイド片70とカバーシート3とを折曲自在に連結する折り曲げ部である。
【0022】
絵柄可変表示体1は、折り曲げ部6を軸にしてカバーシート3を開閉させることで、フィルム作動ガイド片70及びフィルム30を摺動させて絵柄を可変表示する表示体である。以下、この絵柄可変表示体1を構成する、裏面シート10、絵柄シート20、フィルム30、窓付シート40、内面シート50、外面シート60及びフィルム作動ガイド片70の構造の詳細について、主に
図5及び
図6を参照しつつ説明する。
【0023】
(裏面シート10)
図5(a)は、本実施形態に係る裏面シート10の形状を示した平面図である。
図5(a)に示すように、裏面シート10は、平面視で略四角形をした部品である。
裏面シート10は、その中央部に一対の押圧部材12を備えている。各押圧部材12は、裏面シート10の中央部に設けられた一対の折返し片13を折り曲げ線14の位置で折り曲げることで形成された部材であって、図面上下方向に延びた部材である。この押圧部材12は、裏面シート10の折り曲げによって生ずる弾性的な反発力を利用して、絵柄シート20及びフィルム30を窓付シート20に向けて弾性的に押圧するものである。なお、各折返し片13は、裏面シート10の中央部に設けた折り曲げ線14を底辺とする等脚台形を構成するように、裏面シート10に切り込み15を入れることで形成されたものである。また、
図5(a)では、押圧部材12は、紙面の手前側に向かって立ち上がった状態が示されている。
【0024】
裏面シート10は、その一部を矩形状に切り欠いた切り欠き部16と、各切り欠き部16の各端部から図面左右方向に延びる上下一対の切り込み17とを図面右側の端部に備えている。この切り欠き部16及び切り込み17は、フィルム作動ガイド片70がカバーシート3の開閉操作に連動して摺動する際にその動きを阻害しないために設けられたものである。
なお、裏面シート10は、従来技術に係る同種の絵柄可変表示体の場合と同様に、例えばカード紙または板紙等の厚手の紙や、合成紙、プラスチックシート等で形成されたものである。
【0025】
本実施形態では、裏面シート10に押圧部材12を2つ形成した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、押圧部材12の数を1つとしてもよいし、3つ以上としてもよい。また、本実施形態では、各折返し片13の形状を、折り曲げ線14を底辺とする等脚台形とした場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、折り曲げ線14を底辺とする半円形としてもよい。また、本実施形態では、図面上下方向に延びた押圧部材12について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、押圧部材12は図面左右方向に延びていてもよい。
【0026】
(絵柄シート20)
上述の裏面シート10上には、絵柄シート20が上述の押圧部材12で支持された状態で固定されている。
図5(b)は、本実施形態に係る絵柄シート20の形状を示した平面図である。
図5(b)に示すように、絵柄シート20は、平面視で四角形をした部品である。絵柄シート20の図面上下方向の長さは、裏面シート10の図面上下方向の長さよりも短い。また、絵柄シート20の図面左右方向の長さは、裏面シート10の図面左右方向の長さよりも短い。
【0027】
絵柄シート20の面20aには、複合の細線で構成された絵柄(以下、「複合細線絵柄」ともいう。)23が表示されている。この複合細線絵柄23は、複数種類の原画のそれぞれに由来する細線絵柄を一定の順序で配列して構成したものである。以下、この複合細線絵柄23の具体例として、図形「×」、図形「○」及び図形「□」をそれぞれ原画とした場合の複合細線絵柄について簡単に説明する。
【0028】
原画「×」、「○」、「□」のそれぞれを所定の絵柄幅に分割したものを各原画の細線絵柄とし、原画「×」の細線絵柄23aについては、左端側から1番目、4番目、7番目、‥‥を選択する。また、原画「○」の細線絵柄23bについては、左端側から2番目、5番目、8番目、‥‥を選択する。また、原画「□」の細線絵柄23cについては、左端側から3番目、6番目、9番目、‥‥を選択する。そして、「×」の1番目、「○」の2番目、「□」の3番目、「○」の4番目、「×」の5番目、「□」の6番目、‥‥というように、3種類の原画「○」、「×」、「□」のそれぞれに由来する細線絵柄23a〜23cを一定の順序で配列することで複合細線絵柄23が構成される。
【0029】
このようにして構成された複合細線絵柄23は、例えば通常の印刷法(具体的には、電子写真法やインクジェット法)を用いて絵柄シート20上に印刷されている。
なお、絵柄シート20は、裏面シート10と同様の材質で形成されたものである。つまり、絵柄シート20は、従来技術に係る同種の絵柄可変表示体の場合と同様に、例えばカード紙または板紙等の厚手の紙や、合成紙、プラスチックシート等で形成されたものである。
本実施形態では、3枚の原画を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではない。2枚以上の原画を用いれば、可変絵柄を表示することができる。
【0030】
(フィルム30)
上述の絵柄シート20の面20a上には、フィルム30が摺動可能に配置されている。より詳しくは、フィルム30は、予め設定した相対変位方向にフィルム30と絵柄シート20とを相対的に変位可能に絵柄シート20の面20a上に配置されている。
図5(c)は、本実施形態に係るフィルム30の形状を示した平面図である。
図5(c)に示すように、フィルム30は、平面視で四角形をした部品である。フィルム30の図面上下方向の長さは、裏面シート10の図面上下方向の長さによりも短く、絵柄シート20の図面上下方向の長さによりも長い。また、フィルム30の図面左右方向の長さは、裏面シート10の図面左右方向の長さによりも短く、絵柄シート20に表示された複合細線絵柄23の図面左右方向の長さにフィルム30が摺動する距離を加えた長さよりも長い。ここで「フィルム30が摺動する距離」とは、後述する「長さL1と長さL2との差の2倍の長さ」を意味する。
【0031】
フィルム30には、上述の細線絵柄23a〜23cを透視可能な透視部32と、細線絵柄23a〜23cを隠蔽可能な隠蔽部33とが、細線絵柄23a〜23cの配列方向と同一方向(つまり、図面左右方向)に交互に隣接して配列されている。ここで、透視部32は、例えば平面視で矩形状、帯状、線状をしており、上述の細線絵柄23a〜23cの幅(図面左右方向における長さ)と等しい幅を有している。また、隠蔽部33は、例えば平面視で矩形状、帯状、線状をしており、細線絵柄23a〜23cの幅を「原画数−1」倍した値と略等しい幅を有している。具体的には、本実施形態では、上述のように原画数を「3」としている。このため、隠蔽部33は、細線絵柄23a〜23cの幅を2倍した値と略等しい幅を有している。
なお、フィルム30は、従来技術に係る同種の絵柄可変表示体の場合と同様に、例えば透明なプラスチックフィルムの表面に不透明な印刷インキで隠蔽部33を印刷して形成したものである。
【0032】
また、フィルム30は、図面左右両側に上下一対の係止爪34をそれぞれ備えている。この係止爪34は、フィルム30の一部に切り込み35を入れて形成されたものである。各係止爪34を形成する切り込み35の形状は、透視部32と隠蔽部33との配列方向に垂直な方向に対向して突出した形状をしており、例えば半円形状である。この係止爪34は、絵柄シート20を係止するための爪である。このため、対向する係止爪34同士は、絵柄シート20の図面上下方向の長さに相当する間隔をおいて配置されている。この係止爪34を設けることで、フィルム30を絵柄シート20に対して図面左右方向に摺動させたときに、フィルム30が絵柄シート20に対して斜め方向に曲がることなく正確に図面左右方向に摺動する。これにより、常に鮮明な可変絵柄の表示が可能となる。
【0033】
また、各係止爪34を形成する切り込み35の両端部には、フィルム30の摺動方向(図面左右方向)に沿った直線状の切り込み36が形成されている。この切り込み36は、係止爪34とフィルム30本体とで絵柄シート20を挟持する際に、その挟持性を高めるためのものである。
なお、
図5(c)には、4つの切り込み35が例示されているが、各切り込み35の形状は略同じである。また、同図には、8つの切り込み36が例示されているが、各切り込み36の形状は略同じである。このため、図面左上に示した切り込み35(係止爪34)及び切り込み36についてのみ符号を付し、その他の切り込み35(係止爪34)及び切り込み36については符号を省略している。また、フィルム30の図面右側の端部には、フィルム作動ガイド片70と接合する領域(接合領域)37が破線で示されている。
【0034】
本実施形態では、フィルム30に係止爪34を二対備えた場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上下一対からなる係止爪34としてもよい。また、本実施形態では、係止爪34の形状を半円形状とした場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、係止爪34の形状を三角形状としてもよい。
【0035】
(窓付シート40)
上述のフィルム30上には窓付シート40が配置されている。
図6(a)は、本実施形態に係る窓付シート40の形状を示した平面図である。窓付シート40は、その中央部に可変絵柄を表示するための(可変絵柄を視認可能な)窓部42を備えた部品であって、裏面シート10と略同形同大の部品である。窓部42の図面上下方向、図面左右方向の長さは、絵柄シート20及びフィルム30の図面上下方向、図面左右方向の長さよりもそれぞれ短い。
【0036】
窓付シート40の面40aには、例えば窓部42内に表示される可変絵柄と関連した背景絵柄(図示せず)が表示されている。この背景絵柄は、例えば従来技術に係る印刷手法を用いて印刷されたものである。
なお、窓付シート40は、裏面シート10や絵柄シート20と同様の材質で形成されたものである。つまり、この窓付シート40は、従来技術に係る同種の絵柄可変表示体の場合と同様に、例えばカード紙または板紙等の厚手の紙や、合成紙、プラスチックシート等で形成されたものである。また、窓付シート40と裏面シート10とは、その向かい合う面の上下両側の端部で接合している。
【0037】
(内面シート50)
図2に示すように、上述の窓付シート40の図面右側の端部に対し、フィルム30の摺動方向と交差する方向(例えば直交する方向)に延在する折り曲げ部6で折り曲げ可能な状態で内面シート50が連結されている。これにより、内面シート50(カバーシート3)は、折り曲げ部6を軸として紙面の垂直方向に揺動可能となっている。
図6(b)は、本実施形態に係る内面シート50の形状を示した平面図である。内面シート50は、
図6(b)に示すように平面視で四角形をした部品であって、裏面シート10及び窓付シート40と略同形同大である。なお、
図6(b)に示された「L2」は、内面シート50の図面左右方向の長さを意味するものである。
【0038】
内面シート50の面50aには、例えば窓部42内に表示された可変絵柄や窓付シート40の面40aに描かれた背景絵柄と関連した背景絵柄(図示せず)が描かれている。この背景絵柄は、例えば従来技術に係る印刷手法を用いて印刷されたものである。
なお、内面シート50は、上述の裏面シート10や絵柄シート20と同様の材質で形成されたものである。つまり、この内面シート50は、従来技術に係る同種の絵柄可変表示体の場合と同様に、例えばカード紙または板紙等の厚手の紙や、合成紙、プラスチックシート等で形成されたものである。
【0039】
(外面シート60及びフィルム作動ガイド片70)
上述の内面シート50の裏面(面50aの反対側の面)には、外面シート60が配置されており、この外面シート60と内面シート50とでカバーシート3が形成されている。
図6(c)は、本実施形態に係る外面シート60及びフィルム作動ガイド片70の形状を示した平面図である。外面シート60は、
図6(c)に示すように平面視で略四角形をした部品である。外面シート60の図面左右方向の長さL1は、内面シート50の図面左右方向の長さL2よりも長い。ここで、長さL1と長さL2との差(L1−L2)の2倍の長さが、フィルム作動ガイド片70(またはフィルム30)の摺動距離となる。
【0040】
外面シート60は、図面左側の端部に3つの凸部62aを備えている。より詳しくは、外面シート60の図面上下方向の中心を通る仮想直線Cの上側領域に2つの凸部62aが配置されており、仮想直線Cの下側領域に1つの凸部62aが配置されている。各凸部62aは、略同形同大であり、図面上下方向に等間隔で配置されている。そして、凸部62a同士の間隔は、各凸部62aの図面上下方向の長さよりも長い。この凸部62aは、カバーシート3を開いた状態では窓付シート40とフィルム30との間をフィルム30に向けて延在している(
図2参照)。また、この凸部62aは、カバーシート3を閉じた状態では窓付シート40から離れる方向に(
図3では図面右側に向かって)折り曲げ部6から突出している。
【0041】
図6(c)に示すように、外面シート60の図面左端には、フィルム作動ガイド片70が配置されている。このフィルム作動ガイド片70は、折り曲げ部8を軸として紙面の垂直方向に揺動可能に形成されている。換言すると、フィルム作動ガイド片70は、各凸部62aに対しフィルム30の摺動方向と交差する方向に延在する折り曲げ部8で折り曲げ可能な状態で連結している。また、フィルム作動ガイド片70は、窓付シート40と絵柄シート20との間をフィルム30に向けて延在しており、その延在方向に位置する端部はフィルム30に固定されている(
図1、2参照)。
【0042】
フィルム作動ガイド片70は、
図6(c)に示すように平面視で略四角形をした部品である。フィルム作動ガイド片70の図面上下方向の長さは、裏面シート10の切り欠き部16の図面上下方向の長さよりも短い。フィルム作動ガイド片70は、図面右側の端部に3つの凸部71aを備えており、図面左側の端部に1つの切り欠き部72を備えている。各凸部71aは、略同形同大であり、図面右方向に向かって突出している。また、各凸部71aは図面上下方向に等間隔で配置されており、凸部71a同士の間隔は、各凸部71aの図面上下方向の長さと略同じである。この凸部71aと上述の凸部62aとによって、外面シート60とフィルム作動ガイド片70との間には矩形状をした2つの開口部73aが形成されている。
【0043】
このフィルム作動ガイド片70は、フィルム30の接合領域37と接合している。このため、フィルム作動ガイド片70が摺動すると、それに連動してフィルム30も摺動する。なお、この外面シート60及びフィルム作動ガイド片70は、上述の裏面シート10や絵柄シート20と同様の材質で形成されたものである。つまり、外面シート60及びフィルム作動ガイド片70は、従来技術に係る同種の絵柄可変表示体の場合と同様に、例えばカード紙または板紙等の厚手の紙や、合成紙、プラスチックシート等で形成されたものである。
【0044】
本実施形態では、凸部62a及び凸部71aが図面上側の領域に偏って配置されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、凸部62a及び凸部71aを図面下側の領域に偏らせて配置してもよい。また、本実施形態では、凸部62a及び凸部71aを3つ備えた場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、凸部62a及び凸部71aの数を1または2としてもよいし、4以上としてもよい。
【0045】
(絵柄可変表示体1の動作)
以下のようにして構成されている絵柄可変表示体1の動作について、
図2〜
図4を参照しつつ説明する。
上述のように、外面シート60の長さL1は、内面シート50の長さL2よりも長くなっている。このため、
図2〜4に示すように、折り曲げ部8は、カバーシート3が開いた状態では折り曲げ部6よりも図面左側(つまり、フィルム30側)に位置し、カバーシート3が閉じた状態では折り曲げ部6よりも図面右側(つまり、折り曲げ部6に対してフィルム30とは反対側)に位置している。このように、折り曲げ部6を軸としてカバーシート3を開閉させると、折り曲げ部8は図面左右方向に移動する。その結果、折り曲げ部8を軸としてフィルム作動ガイド片70は図面左右方向に摺動し、それに連動するフィルム30も摺動する。より詳しくは、カバーシート3を開くと、折り曲げ部8は図面右側から図面左側に向かって移動するので、フィルム作動ガイド片70は図面左方向に摺動する。これに連動して絵柄シート20上のフィルム30も図面左方向に摺動する。
【0046】
フィルム30の摺動距離が、複合細線絵柄23を構成する個々の細線絵柄の幅(細線絵柄幅)に等しくなると、フィルム30の透視部32に表示されていた文字「×」の絵柄に代わって、文字「×」の絵柄を構成する細線絵柄23aの左側に隣接する細線絵柄23cによって構成される文字「□」の絵柄が表示されるようになる。更に細線絵柄幅に相当する距離だけ摺動させると、文字「□」の絵柄に変わって文字「○」の絵柄が表示され、更に細線絵柄幅に相当する距離だけ摺動させると、再び文字「×」の絵柄が表示され、以後この繰り返しとなる。
【0047】
一方、カバーシート3を閉じると、折り曲げ部8は図面左側から図面右側に向かって移動するので、フィルム作動ガイド片70は図面右方向に摺動する。これに連動して絵柄シート20上のフィルム30も図面右方向に摺動する。このため、カバーシート3を閉じる場合にはカバーシート3を開く場合とは逆に、文字「×」の絵柄から文字「○」の絵柄へ、文字「○」の絵柄から文字「□」の絵柄へ、文字「□」の絵柄から文字「×」の絵柄へ、という順で表示される絵柄が順次切り替わる。
【0048】
(ブランクシート)
上述の絵柄可変表示体1では、裏面シート10、絵柄シート20、窓付シート40、内面シート50及びフィルム作動ガイド片70を備えた外面シート60は、それぞれ別体のシートによって構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、これらのシートの中から選ばれる任意のシートが互いに連続した1枚のブランクシートから構成されていてもよい。
【0049】
絵柄可変表示体1は、上述の構成部品が互いに連続して構成された1枚のブランクシート80と、フィルム30とで構成されたものであってもよい。以下、この1枚のブランクシート80と、フィルム30とを用いた絵柄可変表示体1の組み立て手順について説明する。なお、
図7〜
図9において、上述した構成部品と同じ構成部品には、同一の番号を付している。
【0050】
図7は、フィルム作動ガイド片70、外面シート60、内面シート50、窓付シート40、裏面シート10及び絵柄シート20が互いに連続して配置されたブランクシート80の一例を示す展開図であって、(a)は平面図を示し、(b)は底面図を示している。なお、
図7(a)、(b)において、「破線」は「谷折り」を意味するものであり、「一点鎖線」は「山折り」を意味するものである。
【0051】
図7(a)、(b)に示すように、このブランクシート80は、フィルム作動ガイド片70、外面シート60、内面シート50、窓付シート40、裏面シート10及び絵柄シート20をこの順に、それぞれの間に折り曲げ線61、51、41、11、21を介して一列に連結して構成されたシートである。そして、内面シート50の面50a及び窓付シート40の面40aには背景絵柄(図示せず)が表示されており、絵柄シート20の面20aには複合細線絵柄23が表示されている。
【0052】
(組立手順)
以下、このブランクシート80とフィルム30とを用いた絵柄可変表示体1の組み立て手順について、
図8及び
図9を参照しつつ説明する。
図8及び
図9は、本実施形態に係る絵柄可変表示体1の組み立て手順を説明する図である。
まず、
図8(a)に示すように、ブランクシート80を、折り曲げ線61、51、41、11、21の各位置で山折りまたは谷折りする。
次に、ブランクシート80の裏面シート10に形成された折返し片13を折り曲げ線14の位置で折り曲げて、
図8(a)に示すように、押圧部材12を形成する。
次に、
図8(a)に示すように、絵柄シート20の複合細線絵柄23が表示された面20a上にフィルム30を載置する。
【0053】
次に、
図8(b)に示すように、フィルム30を載置した絵柄シート20を、絵柄シート20と裏面シート10との間にある折り曲げ線21の位置で折り返して、その絵柄シート20を裏面シート10の面10b上に重ねる。この際、絵柄シート20は、押圧部材12によって支持される。
次に、
図8(b)に示すように、外面シート60を、外面シート60と内面シート50との間にある折り曲げ線51の位置で折り返して、外面シート60の面60bと内面シート50の面50bとを接合する。これによって、
図9(a)に示すように、外面シート60と内面シート50とが一体化して、カバーシート3が形成される。
【0054】
次に、
図9(b)に示すように、窓付シート40を、窓付シート40と裏面シート10との間にある折り曲げ線11の位置で折り返して、窓付シート40をフィルム30上に重ねる。この際、フィルム作動ガイド片70を、フィルム作動ガイド片70と外面シート60との間にある折り曲げ線61(折り曲げ部8)の位置で折り返して、窓付シート40とフィルム30とで挟むように配置する。そして、フィルム作動ガイド片70の面70aとフィルム30の面30aとを接合領域37で接合する。また、窓付シート40の面40bと裏面シート10の面10bとを上下両側の端部において接合する。
最後に、カバーシート3を、内面シート50と窓付シート40との間にある折り曲げ線41の位置で折り返して、内面シート50の面50aを窓付シート40の面40a上に重ねる。
【0055】
このようにして、一枚のブランクシート80とフィルム30とから絵柄可変表示体1を組み立てる。なお、
図9(c)は、上記手順を経て組み立てられた絵柄可変表示体1のカバーシート3を開いた状態を示すものである。
本実施形態では、各構成部品を折り曲げる順序について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、内面シート50と外面シート60とでカバーシート3を形成し、絵柄可変表示体1の組み立ての最後にフィルム30を絵柄シート20の面20a上に載置してもよい。
【0056】
(絵柄可変表示体2の構造)
次に、本実施形態に係る絵柄可変表示冊子100を構成する絵柄可変表示体2の構造について、
図10を参照しつつ簡単に説明する。
【0057】
図10は、絵柄可変表示体2を構成するブランクシート81の展開図である。このブランクシート81は、絵柄可変表示体1を構成するブランクシート80と比較して、凸部62b及び凸部71bの相対的な位置のみが異なっており、それ以外は同じ構造をしている。より詳しくは、ブランクシート81は、各シートの連結方向(つまり、図面左右方向)に延びる仮想直線(図示せず)を軸にしてブランクシート80を反転させた構造(つまり、線対称をした構造)をしている。このため、ブランクシート81とブランクシート80とを重ねた場合、ブランクシート81に備わる凸部62bはブランクシート80に備わる開口部73aの上に配置される。つまり、ブランクシート81に備わる凸部62bと、ブランクシート80に備わる凸部62aとは平面視で重ならない位置関係にある。
【0058】
ブランクシート81の組み立て手順は、ブランクシート80の組み立て手順と同じである。よって、ここではその説明を省略する。なお、ブランクシート81から組み立てられた絵柄可変表示体2は
図11に示されている。
【0059】
(絵柄可変表示体部104の構造)
図11は、絵柄可変表示体1と絵柄可変表示体2の外観を示す斜視図であって、絵柄可変表示体2と絵柄可変表示体1とを交互に重ねた状態を示す斜視図である。
図11に示すように、絵柄可変表示体1と絵柄可変表示体2とを、それぞれ折り曲げ部6を同じ方向に向けて揃えて重ねても、絵柄可変表示体1の凸部62aと絵柄可変表示体2の凸部62bとは平面視で重ならない。より詳しくは、絵柄可変表示体1と絵柄可変表示体2とを重ねた場合、絵柄可変表示体の重なり方向から見て、凸部62aと凸部62bとは互いにずらして配置されている。
【0060】
以上のようにして、絵柄可変表示体1と絵柄可変表示体2とが交互に重なって絵柄可変表示体部104が形成されている。この絵柄可変表示体部104に、表紙101、背表紙102及び裏表紙103を取り付けることで、絵柄可変表示冊子100が形成されている。
なお、本実施形態では、ブランクシート80とブランクシート81との形状を線対称とした場合について説明したが、ブランクシート80とブランクシート81との形状はこれに限定されるものではない。ブランクシート80とブランクシート81との形状は、凸部62aと凸部62bが互いに重なり合わない形状であればよく、必ずしも線対称である必要はない。
【0061】
(効果)
(1)本実施形態に係る絵柄可変表示冊子100は、絵柄可変表示体1と絵柄可変表示体2とを備えており、絵柄可変表示体1と絵柄可変表示体2のそれぞれは、細線絵柄23a〜23cの配列方向に沿った方向に位置する窓付シート40の端部に対し、折り曲げ部6で折り曲げ可能な状態で連結したカバーシート3を備えている。また、絵柄可変表示冊子100は、このカバーシート3に対し、折り曲げ部6で折り曲げ可能な状態で連結し、窓付シート40と絵柄シート20との間をフィルム30に向けて延在し、その延在方向に位置する端部をフィルム30に固定したフィルム作動ガイド片70を備えている。そして、この折り曲げ部8は、カバーシート3を開いた状態で折り曲げ部6に対しカバーシート3側にずらして配置されている。
【0062】
このため、折り曲げ部6を軸としてカバーシート3を開閉させると、折り曲げ部8を軸としてフィルム作動ガイド片70は、細線絵柄23a〜23cの配列方向に沿った方向に摺動する。フィルム作動ガイド片70はフィルム30に固定されているため、フィルム作動ガイド片70の摺動に連動してフィルム30も摺動する。
このように、本実施形態に係る絵柄可変表示冊子100であれば、可変絵柄の表示時にはフィルム30が摺動し、絵柄シート20は固定されたままとなっている(つまり、絵柄の可変表示時に絵柄シート20は摺動しない)。よって、可変絵柄の表示時における可変絵柄と背景絵柄との間に生ずる絵柄のずれを防止することができる。ゆえに、可変絵柄と背景絵柄との意匠的一体感を高めることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る絵柄可変表示冊子100を構成する絵柄可変表示体1と絵柄可変表示体2のぞれぞれは、窓付シート40と内面シート50とが折り曲げ部6を介して連結しているため、窓付シート40と内面シート50と間に隙間を有しない。
このため、本実施形態に係る絵柄可変表示冊子100であれば、従来技術に係る絵柄可変表示体と比較して、窓付シート40に描かれた背景絵柄と内面シート50に描かれた背景絵柄との意匠的一体感を高めることができる。
【0064】
さらに、本実施形態に係る絵柄可変表示冊子100を構成する絵柄可変表示体1の凸部62aは、絵柄可変表示体2の凸部62bとは、絵柄可変表示体1、2の重なり方向から見て、互いにずらして配置されている。
このため、本実施形態に係る絵柄可変表示冊子100であれば、凸部62同士(凸部62aと凸部62b)を互いにずらして配置しなかった場合と比較して、絵柄可変表示冊子100を開いた場合に隣り合う絵柄可変表示体の凸部62同士が干渉する程度を低減することができる。よって、凸部62同士が干渉することで生ずる凸部62の破損を低減することができ、絵柄可変表示冊子100の耐久性を高めることができる。
【0065】
(2)本実施形態に係る絵柄可変表示冊子100に備わるカバーシート3は、内面シート50と外面シート60とで構成している。そして、フィルム作動ガイド片70は、折り曲げ部8を介して外面シート60に連結されている。
このため、折り曲げ部8とフィルム作動ガイド片70とを備えた摺動機構の組み立てが容易となる。よって、絵柄可変表示体1及び絵柄可変表示体2の組み立ても容易となり、組み立て作業の効率を高めることができる。
【0066】
(3)本実施形態に係る絵柄可変表示冊子100に備わるフィルム30は、絵柄シート20を挟持するための係止爪34を備えている。
このため、フィルム30を摺動させたときに、フィルム30が絵柄シート20に対して斜め方向に曲がることなく、正確に細線絵柄23の配列方向に沿った方向に摺動させることができる。これにより、常に鮮明な可変絵柄の表示が可能となる。
【0067】
(4)本実施形態に係る絵柄可変表示冊子100を構成する絵柄可変表示体1と絵柄可変表示体2のぞれぞれは、一枚のブランクシート80、81とフィルム30とから形成されている。
このため、フィルム30を除き、全ての構成部品が単一の材料を用いた単一の印刷・打抜工程により製造できる。また、それらが一方向に連続した帯状体をなしているので、製造効率や材料の利用効率を高くすることができる。さらに、各構成部品の外形やそれらの間の折り曲げ線11、21、41、51、61の位置、形状が単一の打ち抜き工程(筋押し工程を含む)で形成できる。
【0068】
したがって、本実施形態に係る絵柄可変表示冊子100であれば、組立時に各構成部品の位置合わせに特別な工夫を要さずとも各構成部品の組立精度が高く、安定して高精度で動作する絵柄可変表示体1と絵柄可変表示体2とを容易に得ることができる。
また、窓付シート40の面40a及び内面シート50の面50aに可変絵柄と関連した背景絵柄を印刷する場合には、その絵柄の印刷と複合細線絵柄23の印刷とを同一工程で行うことができる。このため、位置合わせ精度が高く、特に、窓付シート40の面40aに印刷された背景絵柄と、複合細線絵柄23とが互いに関連する場合には、位置ずれによる違和感のない意匠性に優れた製品を容易に得ることができる。