【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した錘の落下運動を利用する動荷重試験装置では、スレッドに衝突した停止材が抜ける際の抵抗力がそのまま停止力となる。よって、必要な加速度を得るためには、停止材の長さや本数、配置によって調整されていた。このように、実験の結果得られる加速度波形を前述した理想波形に近づけるには、停止材の長さや本数、配置に関する条件出しが重要となる。
【0008】
ところで、停止材は使い捨ての消耗品であり、無くなれば新たに購入するものである。ここで同じ規格の停止材を購入したとしても、その度に通常は生産ロットが違うため、実際の強度には微妙な変化が生じていた。これにより、条件出しを同一としても停止材の強度差異の影響により、実際に得られる加速度波形の形状が異なることがある。よって、停止材の実際の強度は停止材の条件出しを行う上で重要となるが、停止材の購入時に添付されているMILシートだけで判断するのは困難であった。
【0009】
そのため、停止材の条件出しを行う場合には、動荷重試験装置をそのまま利用した試験を実施し、加速させたスレッドを停止材に衝突させることで得られる波形の値から実際の強度を計測していた。かかる試験は大掛かりとなり、多くの時間と多額の費用が発生するという問題があった。また、実際に動荷重試験装置を動かさなくてはいけないため、繰り返し何度も試験を行うことは困難であり、1回の試験だけで得られた値は信憑性に乏しかった。これにより、実際の動荷重試験の結果に関する精度も低下する虞があった。
【0010】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、動荷重試験装置で利用する停止材の強度評価を行う上で、動荷重試験装置を利用した大掛かりな試験を行うことなく、既存の引張試験機を利用した簡易な準備で正確な強度評価を行うことを可能とし、準備時間やコストを大幅に削減することができると共に、評価回数も短時間で数多くできることにより、実際の動荷重試験による誤差も低減することができる停止材の強度評価治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]衝突時に負荷される動荷重を再現する動荷重試験装置(10)で使用する線状の停止材(40)について、その強度を既存の引張試験機(120)で予め測定する際に、前記動荷重試験装置(10)における停止材(40)の配置を再現するために用いる強度評価治具(100)であって、
前記動荷重試験装置(10)は、供試体を搭載したスレッド(20)を所定速度まで加速させた後、該スレッド(20)を複数の停止材(40)に順次衝突させて急停止させることにより、前記スレッド(20)に動荷重を付与するものであり、
前記停止材(40)は、前記スレッド(20)の前方に対向する水平な両側方向に延び、かつ前後に複数並べて配置され、両端がそれぞれ掛止された状態から離脱可能であり、前記スレッド(20)の前方が順次衝突した際に、その衝撃力を吸収しながら塑性変形しつつ両端が掛止された状態から離脱する状態に配置され、
前記引張試験機(120)は、固定側の掴み具(121)と、これに対向して近接ないし離隔可能な移動側の掴み具(122)とにより、試験体の両端をそれぞれ把持した状態で、移動側の掴み具(122)を固定側の掴み具(121)に対して離隔させることにより、試験体に引張荷重を付与するものであり、
前記固定側の掴み具(121)で一端側が把持される基体(101)を備え、該基体(101)に前記停止材(40)の一端を前記動荷重試験装置(10)における配置と同じ状態に掛止する係止部(111,112)が設けられ、該係止部(111,112)に前記停止材(40)の一端を掛止し、かつ前記基体(101)の一端側を前記固定側の掴み具(121)で把持すると共に、前記停止材(40)の他端を前記移動側の掴み具(122)で把持した状態で用いることを特徴とする停止材(40)の強度評価治具(100)。
【0012】
[2]前記係止部(111,112)は、前記基体(101)の正面壁(102)に一対のローラー(111,112)を回転可能に軸支して成り、各ローラー(111,112)は、前記基体(101)の正面壁(102)上で引張荷重の付与方向に互いに前記停止材(40)の少なくとも直径分の距離を隔てて配置され、
前記停止材(40)は、その軸心が引張荷重の付与方向に伸ばされ、一端が前記各ローラー(111,112)間に巻き付くと共に、所定長さ分だけ外側のローラー(112)より伸び出る状態に掛止されることを特徴とする前記[1]に記載の停止材(40)の強度評価治具(100)。
【0013】
[3]前記基体(101)の正面壁(102)上に、前記停止材(40)に引張荷重が付与された際に、塑性変形しつつ各ローラー(111,112)間から離脱する停止材(40)の一端の挙動を所定範囲内に規制するためのガイド(113)を突設したことを特徴とする前記[1]または[2]に記載の停止材(40)の強度評価治具(100)。
【0014】
[4]前記基体(101)は、前記正面壁(102)の両側で引張荷重の付与方向と平行に延びる両側壁(103,104)を備え、該両側壁(103,104)の少なくとも一方に、前記停止材(40)に引張荷重が付与された際に、塑性変形しつつ各ローラー(111,112)間から離脱する停止材(40)の一端が挿通可能なスリット(104a)を設けたことを特徴とする前記[1],[2]または[3]に記載の停止材(40)の強度評価治具(100)。
【0015】
[5]前記基体(101)の正面壁(102)上に、前記停止材(40)の少なくとも直径分だけ間隔を空けて覆う蓋板(114)を被せることを特徴とする前記[1],[2],[3]または[4]に記載の停止材(40)の強度評価治具(100)。
【0016】
[6]前記蓋板(114)の一部に、前記停止材(40)の一端の挙動を外部より観察可能な開口部(116a,116b)を設けたことを特徴とする前記[5]に記載の停止材(40)の強度評価治具(100)。
【0017】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前提となる動荷重試験装置(10)について概説すれば、動荷重試験を行うには、供試体を搭載したスレッド(20)を所定速度まで加速させる。ここで所定速度は、動荷重試験において要求される最大衝撃力等を元にして予め算出する。そして、前記スレッド(20)が所定速度に達した後、該スレッド(20)を複数の停止材(40)に順次衝突させて急停止させることにより、スレッド(20)に所望の条件を満たす動荷重を付与する。
【0018】
複数の停止材(40)は、スレッド(20)の前方が対向する水平な両側方向に沿って延ばし、かつ前後に複数並べて配置させる。ここで各停止材(40)は、両端がそれぞれ掛止された状態から離脱可能に配置され、スレッド(20)の前方が順次衝突した際に、その衝撃力を吸収しながら塑性変形しつつ両端が掛止された状態から離脱する。この離脱時の抵抗力が停止力に置き換えられて、スレッド(20)が進行するにつれ接触する停止材(40)の本数が増え、停止力が増大していく。
【0019】
停止機構により付与された動荷重の経時的な変化は、例えば解析装置により加速度波形としてグラフ化される。かかる加速度波形を、予め規定された理想波形に如何に近づけるかが重要となる。停止材(40)の本数や長さによって、得られる加速度波形の形状が調整されるが、停止材(40)は使い捨ての消耗品であり、新たに購入した停止材(40)を使用する場合には、たとえ同じ規格であっても、生産ロットが違うと実際の強度が異なるため、予め停止材(40)の強度を測定しておく必要があった。
【0020】
かかる停止材(40)の強度測定に際して、従来は動荷重試験装置(10)そのものを使って試験を実施し、その結果得られた波形の値から強度を計測していたが、本発明ではこのような大掛かりな試験を実施することはない。すなわち、前記[1]に記載の強度評価治具(100)を用いることにより、既存の小型な引張試験機(120)による引張試験を行うだけで、簡易かつ正確な停止材(40)の強度評価を容易に行うことができる。
【0021】
引張試験機(120)は、固定側の掴み具(121)と、これに対向して近接ないし離隔可能な移動側の掴み具(122)とにより、試験体の両端をそれぞれ把持した状態で、移動側の掴み具(122)を固定側の掴み具(121)に対して離隔させることにより、試験体に引張荷重を付与する。かかる引張試験機(120)自体の構成は公知であり、前述の動荷重試験装置(10)に比較すると規模も小さく構成も簡易である。
【0022】
そして、強度評価治具(100)は、前記引張試験機(120)の固定側の掴み具(121)で一端側が把持される基体(101)を備え、該基体(101)に前記停止材(40)の一端を前記動荷重試験装置(10)における配置と同じ状態に掛止する係止部(111,112)が設けられている。この係止部(111,112)により、前記動荷重試験装置(10)の試験時における停止材(40)の実際の配置を再現することができる。
【0023】
すなわち、係止部(111,112)に停止材(40)の一端を掛止し、かつ基体(101)の一端側を固定側の掴み具(121)で把持すると共に、停止材(40)の他端を移動側の掴み具(122)で把持した状態で、通常の引張試験を行う。これにより、動荷重試験装置(10)による試験と同じ条件で停止材(40)の強度を計測することができる。
【0024】
前記[2]に記載の強度評価治具(100)によれば、係止部(111,112)は、基体(101)の正面壁(102)に一対のローラー(111,112)を回転可能に軸支して成り、各ローラー(111,112)は、基体(101)の正面壁(102)上で引張荷重の付与方向に互いに停止材(40)の少なくとも直径分の距離を隔てて配置されている。
【0025】
そして、停止材(40)は、その軸心が引張荷重の付与方向に伸ばされ、一端が各ローラー(111,112)間に巻き付くと共に、所定長さ分だけ外側のローラー(112)より伸び出る状態に掛止される。かかる状態は、動荷重試験装置(10)による試験時の配置と同じとなる。
【0026】
前記[3]に記載の強度評価治具(100)によれば、基体(101)の正面壁(102)上に、停止材(40)に引張荷重が付与された際に、塑性変形しつつ各ローラー(111,112)間から離脱する停止材(40)の一端の挙動を所定範囲内に規制するためのガイド(113)を突設した。これにより、停止材(40)の不必要な動きを抑えることができる。
【0027】
前記[4]に記載の強度評価治具(100)によれば、基体(101)は、引張荷重の付与方向と平行に延びる両側壁(103,104)を備え、両側壁(103,104)の少なくとも一方に、停止材(40)に引張荷重が付与された際に、塑性変形しつつ各ローラー(111,112)間から離脱する停止材(40)の一端が挿通可能なスリット(104a)を設けた。これにより、停止材(40)の挙動による側壁(103,104)との干渉を回避することができる。
【0028】
前記[5]に記載の強度評価治具(100)によれば、基体(101)の正面壁(102)上に、停止材(40)の少なくとも直径分だけ間隔を空けて覆う蓋板(114)を被せる。これにより、停止材(40)が各ローラー(111,112)間から離脱する前に、ローラー(111,112)の上端から外れてしまう事態を防止することができる。
【0029】
前記[6]に記載の強度評価治具(100)によれば、蓋板(114)の一部に、停止材(40)の一端の挙動を外部より観察可能な開口部(116a,116b)を設けた。これにより、基体(101)の正面側が蓋板(114)で覆われても、その内側の停止材(40)の挙動を確認することができる。