特許第6170782号(P6170782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6170782粉粒体の供給システム、及び粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170782
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】粉粒体の供給システム、及び粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 65/40 20060101AFI20170713BHJP
   F23K 3/02 20060101ALI20170713BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20170713BHJP
   B65G 65/42 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   B65G65/40 C
   F23K3/02 A
   F23N5/00 L
   B65G65/42 C
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-177446(P2013-177446)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-44680(P2015-44680A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 洋文
(72)【発明者】
【氏名】関合 孝朗
(72)【発明者】
【氏名】上川 由貴
(72)【発明者】
【氏名】三宅 盛士
(72)【発明者】
【氏名】馬場 彰
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−249231(JP,A)
【文献】 特開平08−133474(JP,A)
【文献】 特開2011−025982(JP,A)
【文献】 特開2004−137051(JP,A)
【文献】 特開平09−272904(JP,A)
【文献】 実開平02−119433(JP,U)
【文献】 特開2012−078018(JP,A)
【文献】 特開平11−165791(JP,A)
【文献】 特開2010−237893(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/007025(WO,A1)
【文献】 米国特許第05735439(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/40
B65G 65/42
F23K 3/02
F23N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多種の粉粒体を貯蔵するホッパと、ホッパの上部から粉粒体をホッパ内に供給する受け入れコンベアと、ホッパの下部からホッパ内に貯蔵した粉粒体をホッパの外部に取り出すフィーダとを備えた粉粒体の供給システムであって、
前記ホッパ内に貯蔵した粉粒体の圧力、流速、または摩擦力のうち、少なくとも1つを計測する第1の計測部を該ホッパに設け、
前記ホッパ内に貯蔵した粉粒体に気流を噴出し、又は振動を与えて粉粒体の流動性を高める流動化促進部を該ホッパに設け、
前記受け入れコンベア又はフィーダでの粉粒体の流量を調整すると共に、前記流動化促進部を駆動する制御部を設けた粉粒体の供給システムにおいて、
第1の計測部で計測された粉粒体の圧力、流速、または摩擦力の少なくとも1つの計測信号に基づいて前記ホッパ内の粉粒体の流動状況を診断する診断装置を設けると共に、ホッパ内の粉粒体の流動状況の状態を、少なくとも正常状態と、正常以外の状態とに分類する診断手段を該診断装置に備え、
前記診断装置に備えた該診断手段によって該粉粒体の流動状況が正常以外の状態と診断された場合に、該診断手段から前記制御部に指令信号を出力して受け入れコンベア及びフィーダで操作される粉粒体の流量を調整して、前記ホッパ内の粉粒体の流動状況を正常状態となるように制御するように構成したことを特徴とする粉粒体の供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の粉粒体の供給システムにおいて、
前記診断装置に備えた該診断手段によって該粉粒体の流動状況が該当する状態が正常以外の状態と診断された場合に、前記正常以外の状態を、予兆状態、異常状態、又は新規状態に分類して、これらの分類された予兆状態、異常状態、又は新規状態に応じて該診断手段から前記制御部に指令信号を出力し、この制御部によって前記受け入れコンベア及びフィーダで操作される粉粒体の流量を調整すると共に、前記流動化促進部による促進強度を調節して、前記ホッパ内の粉粒体の流動状況を正常状態となるように制御するように構成したことを特徴とする粉粒体の供給システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粉粒体の供給システムにおいて、
前記流動化促進部で発生した気体の噴出圧力、又は振動の強さを測定する第2の計測部を該ホッパに設け、
前記診断装置に備えた前記診断手段によってホッパ内の粉粒体の流動状況が正常以外の状態であると診断された場合に、前記第1の計測部で計測された粉粒体の圧力、流速、または摩擦力の少なくとも1つを計測した前記計測信号に加えて、流動化促進部で発生した気体の噴出圧力、又は振動の強さを計測した前記第2の計測部の計測信号に基づいて、前記診断手段によってホッパ内の粉粒体の流動状況を再度診断して前記ホッパ内の粉粒体の流動状況が該当する状態の分類を実施することを特徴とする粉粒体の供給システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粉粒体の供給システムにおいて、
前記診断装置に、ホッパ内の粉粒体の動きや粉粒体の分布を計算する数値計算部を設け、
前記数値計算部は、簡易的なモデルと詳細なモデルの有する複数の数値計算部から構成して、前記診断手段による診断結果に応じて簡易的なモデルと詳細なモデルを有する数値計算部を使い分けて使用することを特徴とする粉粒体の供給システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粉粒体の供給システムにおいて、
前記流動化促進部として、振動を発生させる方式を適用し、第2の計測部として、振動強さを測定する測定器を用いることを特徴とする粉粒体の供給システム。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粉粒体の供給システムにおいて、
前記流動化促進部としてホッパ内に気体を噴出させる方式を適用し、第2の計測部として、前記流動化促進部の気体の噴出圧力を測定する測定器を用いることを特徴とする粉粒体の供給システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置であって、前記粉粒体の供給システムは、粉粒体を保管する粉粒体の貯蔵部の下流に、粉砕機と、粉砕機の下流で粉砕された粉粒体を気流搬送する粉体搬送管と、粉体搬送管に接続し火炉内に粉粒体を噴出するバーナと、火炉空間に設置された伝熱管からなる燃焼装置であって、計算部で計算した粉粒体の種類と比率に基づいて、粉砕機の粉砕加圧圧力、粉砕速度、分級器回転数、導入空気量、温度を変更する制御部を有することを特徴とする粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置であって、前記粉粒体の供給システムは、粉粒体を保管する粉粒体の貯蔵部の下流に、粉砕機と、粉砕機の下流で粉砕された粉粒体を気流搬送する粉体搬送管と、粉体搬送管に接続し火炉内に粉粒体を噴出するバーナと、火炉空間に設置された伝熱管からなる燃焼装置であって、計算部で計算した粉粒体の種類と比率に基づいて、バーナに供給する空気量を変更する制御部を有することを特徴とする粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多種の粉粒体を利用する粉粒体の供給システムと、粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置に関するものであり、特に、粉粒体の供給システムの内部における粉粒体の流動状況を診断して供給システム出口での粉粒体の性状を予測する粉粒体の供給システムと、この粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置に係るものである。
【0002】
粉粒体の供給システムと、この粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置に係る本発明の主な適用先として、石炭とバイオマス燃料のように異なる種類の粉粒体を貯蔵して供給する粉粒体の供給システム、及びこのような粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置である固体燃料を使用するボイラが考えられる。
【背景技術】
【0003】
発電用のボイラでは、ボイラから排出する二酸化炭素量の削減のため、化石燃料に代わり木材や農業廃棄物のように植物由来の成分を燃料とする、いわゆるバイオマスの利用が拡大している。
【0004】
バイオマスをボイラの燃料として利用すると、バイオマスを燃焼して排出した二酸化炭素は再び植物に吸収され、地球上で循環することで大気中の二酸化炭素の濃度を増やさないものとみなされる。このため、一般に燃料としてバイオマスの混焼率を高めることが求められる。
【0005】
化石燃料を燃焼させるボイラを用いた燃焼装置では、化石燃料を粉粒体状にした燃料を貯蔵ホッパ(以下、ホッパと記す)に供給し、この貯蔵ホッパから粉砕機を介して粉粒体状にした化石燃料をボイラのバーナに供給し、ボイラ内で燃焼させる方法が一般的である。
【0006】
上記した方法では、ホッパと粉砕機、バーナからなる機器グループを複数有し、これらの機器グループの稼働数を増減することでボイラの燃焼負荷を調整する。
【0007】
この燃焼装置においてバイオマス燃料を利用する1つの利用形態に、一部の機器グループにバイオマス燃料を供給し、その他の機器グループに石炭を供給する方法がある。
【0008】
バイオマス燃料を供給する機器グループの数を増減させてバイオマス燃料を供給する機器グループの運転負荷を調整することで、燃焼装置でのバイオマス利用率(混焼率)を調整する。
【0009】
この方法では、バイオマス燃料と石炭が粉砕機やバーナに個別に供給されるので、それぞれの燃料に適した運転条件を粉砕機やバーナ等の機器グループに与えることができる。運転条件の例としては、粉砕機に与える粉砕条件やバーナへの空気量条件がある。
【0010】
上記の利用形態では、燃焼装置に供給されるバイオマス燃料が少ない場合に、通常、バイオマス燃料を使用している機器グループにて、バイオマス燃料から石炭の使用に切り替えることで、燃焼装置の燃焼負荷を維持することができる。
【0011】
また、燃焼装置に供給されるバイオマス燃料が多くなれば、石炭からバイオマス燃料の使用に切り替えることで、燃焼装置でのバイオマス利用率を高めることができる。
【0012】
燃焼装置に供給される燃料として、バイオマス燃料から石炭の使用に切り替える場合、ホッパ(粉粒体貯蔵部)にはバイオマス燃料の上部に石炭が供給される。また、石炭からバイオマス燃料に切り替える場合、ホッパには石炭の上部にバイオマス燃料が供給される。
【0013】
ホッパ下部から排出される燃料がバイオマス燃料から石炭、または石炭からバイオマス燃料に切り替わる際、ホッパの下流側の粉砕機やバーナは、それぞれの粉粒体の性状に合わせて運転させる必要がある。
【0014】
この運転条件の変更には準備時間が必要であるので、ホッパから排出される粉粒体の性状を事前に予測することが望ましい。また、理想的にはバイオマス燃料と石炭の切り替えの場合、両者が混合していると粉砕機での粉砕が難しいことから、両者が混合している状態が短いことが理想的である。
【0015】
上述した理想的なホッパ内の粉粒体の流れを実現するには、ホッパ内の粉粒体が均等にホッパの排出口へ向かって流れる、いわゆるマスフローの状態を形成することが望ましい。
【0016】
このマスフローの状態では、ホッパ内の粉粒体が均等速度でホッパの排出口に向って流れることで、ホッパに投入した順に粉粒体がホッパの排出口から排出される。ホッパから排出される粉粒体の性状予測は容易であり、両者が混合している状態も短い。
【0017】
しかし、粉粒体は粒度や比重、摩擦係数により流動性が異なる。例えば一般に比重が大きい石炭は流動性が高くて排出が早く、比重の小さいバイオマス燃料は流動性が低くて排出が遅くなる。
【0018】
このため、ホッパに貯蔵した固体燃料は貯蔵した順にホッパの排出口から排出されるとは限らない。例えば、バイオマス燃料、石炭の順にホッパに貯蔵した場合では、石炭が排出口に到達するのが早く、粉粒体の一部分だけがホッパの排出口から排出され、長時間排出されない粉粒体が生じるいわゆるファンネルフローの状態が生じやすい。
【0019】
このファンネルフローの状態では、ホッパ内の粉粒体が異なる速度で流れるため、ホッパの排出口から排出される粉粒体の性状予測はマスフローの場合に比べて難しく、両者が混合している状態も長い。
【0020】
また、ファンネルフローの状態では長時間、ホッパから排出されない粉粒体が生じるのでその固着や変質により、ホッパの排出不良の原因となる。特に、ホッパ内に流動性の異なる粉粒体が同時に存在する場合に上記の排出不良やファンネルフローの状態を形成しやすい。
【0021】
ホッパ内でマスフローの流れを形成し、ホッパから排出される粉粒体の性状予測を容易にする技術が望まれる。特に、粉粒体のホッパ内での固着やファンネルフローが形成されると、その状態から正常なマスフローの状態に復旧するのは容易でない。
【0022】
このため、ホッパ内の粉粒体の流れを診断し、固着やファンネルフローのような異常状態になる前の粉粒体の流れの部分的な不均一のような微小な異常状態(以下、予兆状態と記す)の段階で検知し、正常なマスフローの状態に復旧する技術が望まれる。
【0023】
ホッパから排出される粉粒体の性状を予測する技術として、特開平9−272904号公報は、数値解析によりホッパ内の粉粒体の挙動を把握する技術を開示している。この技術は主に高炉での粉粒体の挙動把握を対象としたものであり、粉粒体のシミュレーション技術を利用して貯蔵部での粉粒体の挙動を予測し、貯蔵部下部での粉粒体の性状を把握するものである。
【0024】
粉粒体の固着やファンネルフローを避ける技術として、特開平11−165791号公報に開示した技術がある。この技術ではホッパ内にガスを供給することで粉粒体の流動性を高めて、粉粒体を正常に排出させ易くするものである。
【0025】
プラントの状態を診断する技術の一例として、特開2010−237893号公報には、プラントの計測信号のデータベースを利用し、プラントが正常時と異常時のデータをカテゴリーに分離し、現在のプラントの計測信号がどのカテゴリーに分類されるかプラントの運転状態を診断する技術を開示している。
【0026】
また、国際公開WO2012−073289号公報には、プラントの計測信号のデータベースを利用し、プラントが正常状態と異常状態に、又はプラントが正常状態から異常状態に至る途中のプラントの予兆状態を検知する診断装置に関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開平9−272904号公報
【特許文献2】特開平11−165791号公報
【特許文献3】特開2010−237893号公報
【特許文献4】国際公開WO2012−073289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
プラントの状態を診断する技術として、特開2010−237893号公報に開示された方法では、プラントに異常が発生したことを判定している。しかしながら、プラントが異常状態となった際にプラントの異常状態を検知してプラントを正常状態に戻す方法については何等提示されていない。
【0029】
また、国際公開WO2012−073289号公報に開示された技術においても、診断装置によって計測信号からプラントが正常状態と正常以外の状態に分類しているが、診断装置で検知したプラントが正常以外の状態から正常状態に戻す方法については何等提示されていない。
【0030】
本発明の目的は、ホッパ内の粉粒体の流動状況を診断し、粉粒体の流動状況が正常状態以外の状態の場合に、ホッパ内での粉粒体の流動状況がホッパ内の全体で排出口へ向かう流れがほぼ均等に生じる、いわゆるマスフローの状態となる正常状態に復旧するようにした粉粒体の供給システム、及びこの粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の粉粒体の供給システムは、多種の粉粒体を貯蔵するホッパと、ホッパの上部から粉粒体をホッパ内に供給する受け入れコンベアと、ホッパの下部からホッパ内に貯蔵した粉粒体をホッパの外部に取り出すフィーダとを備えた粉粒体の供給システムであって、前記ホッパ内に貯蔵した粉粒体の圧力、流速、または摩擦力のうち、少なくとも1つを計測する第1の計測部を該ホッパに設け、前記ホッパ内に貯蔵した粉粒体に気流を噴出し、又は振動を与えて粉粒体の流動性を高める流動化促進部を該ホッパに設け、前記受け入れコンベア又はフィーダでの粉粒体の流量を調整すると共に、前記流動化促進部を駆動する制御部を設けた粉粒体の供給システムにおいて、第1の計測部で計測された粉粒体の圧力、流速、または摩擦力の少なくとも1つの計測信号に基づいて前記ホッパ内の粉粒体の流動状況を診断する診断装置を設けると共に、ホッパ内の粉粒体の流動状況の状態を、少なくとも正常状態と、正常以外の状態とに分類する診断手段を診断装置に備え、前記診断装置に備えた該診断手段によって該粉粒体の流動状況が正常以外の状態と診断された場合に、該診断手段から前記制御部に指令信号を出力して受け入れコンベア及びフィーダで操作される粉粒体の流量を調整して、前記ホッパ内の粉粒体の流動状況を正常状態となるように制御するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ホッパ内の粉粒体の流動状況を診断し、粉粒体の流動状況が正常状態以外の状態の場合に、ホッパ内での粉粒体の流動状況がホッパ内の全体で排出口へ向かう流れがほぼ均等に生じる、いわゆるマスフローの状態となる正常状態に復旧するようにした粉粒体の供給システム、及びこの粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1実施例である粉粒体の供給システムの概略構成を示す模式図。
図2図1に示した本実施例の粉粒体の供給システムの診断装置10を構成する学習手段22に設置した分類部30におけるデータ分類処理の順序を示す説明図。
図3図1に示した本実施例の粉粒体の供給システムの診断装置10を構成する学習手段22に設置した分類部30におけるデータ分類処理の概要を具体的に説明する例として、X、Y2種類の入力データに新たに入力データを与えてデータ分類した場合の説明図。
図4(A)】第1実施例の粉粒体の供給システムにおける正常状態のホッパ内の粉粒体の流れを示す模式図。
図4(B)】図4(A)に示した第1実施例である粉粒体の供給システムにおける正常状態のホッパ内の粉粒体の圧力と時刻との関係を示す特性図。
図5(A)】第1実施例の粉粒体の供給システムにおける予兆状態のホッパ内の粉粒体の流れを示す模式図。
図5(B)】図5(A)に示した第1実施例である粉粒体の供給システムにおける予兆状態のホッパ内の粉粒体の圧力と時刻との関係を示す特性図。
図6(A)】第1実施例の粉粒体の供給システムにおける異常状態のホッパ内の粉粒体の流れを示す模式図。
図6(B)】図6(A)に示した第1実施例である粉粒体の供給システムにおける異常状態のホッパ内の粉粒体の圧力と時刻との関係を示す特性図。
図7】第1実施例である粉粒体の供給システムにおける診断装置で診断したホッパ内の粉粒体の流れの状況に対して複数の状態に分類した診断の一例を説明する模式図。
図8】本発明の第2実施例である粉粒体の供給システムの概略構成を示す模式図。
図9】本発明の第3実施例である粉粒体の供給システムの模式図。
図10図6に示した本発明の第2実施例の粉粒体の供給システムにおける数値解析の予測方法の流れを示すフローチャート。
図11】本発明の第4実施例である粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置の概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施例である粉粒体の供給システムについて図面を引用して以下に説明する。
【実施例1】
【0035】
図1に本発明の第1実施例である粉粒体の供給システムの概略構成を示す。図1に示した本実施例である粉粒体の供給システムでは、下流側が燃焼装置(図示せず)に接続する固体燃料の供給システムを例にとって示しているが、他の粉粒体の供給設備であっても構わない。
【0036】
図1に示した本実施例の粉粒体の供給システムにおいて、上流側の外部からバイオマス燃料100、石炭101の粉粒体、又はバイオマス燃料100と石炭101が混合した状態の粉粒体を貯蔵設備に供給する供給部となる受け入れコンベア1と、受け入れコンベア1から移送された粉粒体を貯蔵する貯蔵部となるホッパ2と、粉粒体を貯蔵したホッパ2から粉粒体を外部に取り出す排出部となるホッパ出口の排出フィーダ3と、排出フィーダ3によって外部に取り出した粉粒体を移送する搬送コンベア4の順に、粉粒体の固体燃料が移送される。
【0037】
受け入れコンベア1は移送する粉粒体の重量を計測する重量計測部5を内部に備えており、前記重量計測部5では該重量計測部5で計測した粉粒体の重量と、受け入れコンベア1の移動速度との関係から前記受け入れコンベア1によってホッパ2に移送する粉粒体の供給量を計測するように構成されている。
【0038】
また、排出フィーダ3によってホッパ2から外部に取り出した粉粒体を移送する搬送コンベア4には第2の重量計測部6を内部に備えており、前記重量計測部6では該重量計測部6で計測した粉粒体の重量と、搬送コンベア4の移動速度との関係から前記排出フィーダ3から前記搬送コンベア4によって外部に排出する粉粒体の排出量を計測するように構成されている。
【0039】
前記搬送コンベア4によって外部に排出される粉粒体の排出量の計測は、排出フィーダ3に、粉粒体の排出量を計測する機能を持たせるように構成することも可能である。
【0040】
ホッパ2の壁面にはホッパ2内に貯蔵されたバイオマス燃料100、石炭101の粉粒体、又はバイオマス燃料100と石炭101が混合した状態の粉粒体の圧力、流速、または摩擦力のうちの何れか1つ、もしくは複数のものを計測する第1の計測部7を備えている。
【0041】
図1に示した本実施例の粉粒体の供給システムでは、この第1の計測部7をホッパ2の壁面に1台設けた例を示しているが、この第1の計測部7をホッパ2の壁面に複数台設けるようにしても良い。
【0042】
第1の計測部7をホッパ2の壁面に複数台設けた場合には、これらの第1の計測部7に隣接するホッパ2内の粉粒体の状態をより把握し易くなる。
【0043】
ホッパ2の壁面に設ける第1の計測部7の台数が少ない場合は、図1の本実施例の粉粒体の供給システムに示したように、第1の計測部7は排出フィーダ3の近傍となるホッパ2の壁面に設置するようにした方が良い。
【0044】
この場合、第1の計測部7によって、例えば、ホッパ2の内部に貯蔵された粉粒体の圧力変動を計測すると、ホッパ2の壁面に設けた前記第1の計測部7の設置位置よりも高さ方向が高い上方の部分の粉粒体の圧力が前記第1の計測部7に作用するので、ホッパ2内の粉粒体の全体的な流動状況を把握し易い。
【0045】
更にホッパ2の壁面には、粉粒体をホッパ2内で流動化させる流動化促進器8を設けている。この流動化促進器8は振動を発生させる方式や、ホッパ2内に気体を噴出してホッパ2と粉粒体との間や、貯蔵された粉粒体の間に気体層を一時的に形成することで、粉粒体の流動化を促進するものである。
【0046】
図1に示した本実施例の粉粒体の供給システムでは、流動化促進器8をホッパ2の壁面に1台設けた例を示しているが、この流動化促進器8をホッパ2の壁面に複数台設けるようにしても良い。
【0047】
流動化促進器8をホッパ2の壁面に複数台設けた場合には、これらの複数の流動化促進器8の設置によってホッパ2内で粉粒体の流動化を促進する箇所が複数個所となるので、粉粒体の流動化が容易となる。
【0048】
図1に示した本実施例の粉粒体の供給システムでは、流動化促進器8として振動を発生させる方式を適用し、第2の計測部として流動化促進器8で発生した振動の強さを測定する第2の計測部9を前記流動化促進器8の近傍となるホッパ2の壁面に設置している。
【0049】
そして流動化促進器8としてホッパ2内の粉粒体に気体を噴出させる方式を適用した場合には、気体の噴出で生じる振動を測定する計測部や、気体の噴出圧力を測定する計測部に、前記第2の計測部として第2の計測部9をホッパ2の壁面に設置することが望ましい。
【0050】
前記流動化促進器8を設置するホッパ2の壁面の位置は、図1の本実施例の粉粒体の供給システムに示したように、ホッパ2の形状が矩形状から四角錐に移行してホッパ2の横断面積が大きく変化し、ホッパ2の内部の粉粒体の流れがよどみ易い部分の近傍に設けることが望ましい。
【0051】
図1に示した本実施例の粉粒体の供給システムにおいては、診断装置10を設置しており、ホッパ2に貯蔵されたバイオマス燃料100、石炭101の粉粒体、又はバイオマス燃料100と石炭101が混合した状態のホッパ2内の粉粒体の圧力、流速、または摩擦力のうちの何れか1つ、もしくは複数のものを計測する第1の計測部7で得られた計測信号を前記診断装置10に信号線を介して入力させる。
【0052】
また、流動化促進器8で発生した振動の強さを測定する第2の計測部9で得られた計測信号も前記診断装置10に信号線を介して入力させる。
【0053】
前記診断装置10は該診断装置10で診断した結果を表示する表示部11及び該診断装置10で粉粒体の流動状況を診断して分類した分類の状態に基づいて粉粒体の供給システムを制御する制御部12と接続している。
【0054】
表示部11では前記診断装置10での診断結果や制御部12から得られる粉粒体の供給システムの運転情報をオペレータに表示する。
【0055】
また、制御部12では、本実施例の粉粒体の供給システムを構成する受け入れコンベア1や、排出フィーダ3、搬送コンベア4の動作を制御する他、搬送コンベア4の下流に接続する機器(図示せず)に動作状況を伝達することもできる。
【0056】
次に本実施例の粉粒体の供給システムにおける前記診断装置10の構成と作用について説明すると、前記診断装置10には計測信号を受領する外部入力インタフェース20、計測信号を保存する計測信号データベース21、粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態を学習して診断モデルを構築する学習手段22、診断モデルを保存する診断モデルデータベース23、計測信号と診断モデルを元に粉粒体の供給システムの状態を診断する診断手段24、診断結果を外部に送信する外部出力インタフェース25がそれぞれ備えられている。
【0057】
前記外部入力インタフェース20は、粉粒体の供給システムで計測された各種の計測信号を受領する他、一般にキーボードやマウスで構成される外部入力装置26で操作する外部入力信号を取り込む。
【0058】
前記計測信号データベース21は、粉粒体の供給システムで計測された各種の計測信号を保存して蓄積するものである。
【0059】
前記学習手段22は過去の計測信号を蓄積した計測信号データベース21に基づいて粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態を、例えば、圧力振幅(粉粒体が流動する圧力変動)と周波数(粉粒体が流動する圧力変動の周波数)との関係から模擬したモデルとして、正常モデル、予兆モデル、異常モデルをそれぞれ作成するものである。
【0060】
前記診断手段24は、学習手段22で作成した前記各モデルと、本実施例の粉粒体の供給システムで計測された粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態についての現在の計測信号のデータを比較して、本実施例の粉粒体の供給システムで計測された粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態についての現在の計測信号が、正常モデル、予兆モデル、異常モデルのどのモデルに属するかを判定し、それぞれ属するモデルに対応させて、正常状態、予兆状態、異常状態と分類する分類機能を有しているものである。
【0061】
そして前記診断手段24による診断では、粉粒体の供給システムで計測された粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態の現在の計測信号が、正常モデル、予兆モデル、又は異常モデルの何れに属するのかを診断し、或いは正常モデル、予兆モデル、異常モデルの何れのモデルにも属さない場合は新規状態と診断する。
【0062】
前記外部出力インタフェース25は、前記診断手段24による診断結果を表示部11に出力する。なお、本実施例の粉粒体の供給システムにおける前記診断装置10では、計測信号データベース21、学習手段22、診断モデルデータベース23と診断手段24を診断装置10の内部に備えた例を示すが、これらの一部を外部に配置し、データのみ送受信するように構成することも可能である。
【0063】
次に、本実施例の粉粒体の供給システムにおける診断装置10の動作について説明する。前記診断装置10では学習手段22を備えた学習モードと、診断手段24を備えた診断モードの2種類を有している。
【0064】
これらの2つのモードのうち、学習手段22を備えた学習モードでは学習手段22を動作させて診断モデルを構築し、この診断モデルを診断モデルデータベース23に保管する。
【0065】
診断手段24を備えた診断モードでは診断手段24を動作させて粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態についての現在の計測信号に対する診断を実施し、外部出力インタフェース25を介して診断結果を表示部11に出力する。
【0066】
これらの学習モードと診断モードは外部入力装置26より前記診断装置10に対して任意に指定できる。
【0067】
同時に学習モードと診断モードの両方を動作させ、粉粒体の供給システムにおける計測データを取得すると診断モデルを直ぐに更新することもできる。この場合、診断モデルは最新の状態を維持できる。
【0068】
一方、粉粒体の供給システムが使用されていない場合に診断モデルを更新することもできる。この場合、診断手段24が動作していないので、学習手段22の計算負荷を大きくとることができる。
【0069】
本実施例の粉粒体の供給システムにおける前記診断装置10は、学習モードと診断モードを使用することで、計測信号データベース21に蓄積した過去の計測信号に基づいて、本実施例である粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態を診断するための正常モデル、予兆モデル、異常モデルの各モデルを構築するとともに、本実施例の粉粒体の供給システムで計測されたホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態についての現在の計測信号が、正常モデル、予兆モデル、異常モデルのいずれかに属するのか、若しくはどのモデルにも属さない新規状態かを分類する。すなわち、本実施例の粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態が正常な状態なのか、それ以外の状態なのかが検知できることになる。
【0070】
次に本実施例の粉粒体の供給システムにおける前記診断装置10での粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態を分類する分類動作について以下に説明する。
【0071】
前記診断装置10に備えた学習手段22は、分類部30、期間決定部31、及びモデル構築部32から構成されている。
【0072】
分類部30では、計測信号データベース21に蓄積された粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態についての過去の計測信号を、類似性を持つデータの纏まりに分類し、その分類結果を期間決定部31に出力する。
【0073】
期間決定部31では、計測信号データベース21に蓄積された粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態を、過去の計測信号と、前記分類部30による分類結果を用いて前記計測信号の傾向の違いを評価し、これらの計測信号のデータを正常状態、予兆状態、異常状態のいずれかに分けて分類する。
【0074】
モデル構築部32では、前記期間決定部31によって分けられた粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態に関して、前述の正常状態、予兆状態、異常状態について、それぞれ正常モデル、予兆モデル、異常モデルを作成する。
【0075】
本実施例の粉粒体の供給システムにおける前記診断装置10では、データ分類に適用共鳴理論(Adaptive Resonance Theory、以下ARTと記す)を適用した場合について述べる。なお、データ分類には他にベクトル量子化等のクラスタリング手法も適用できる。
【0076】
図2図1に示した本実施例の粉粒体の供給システムの診断装置10を構成する学習手段22に設置した分類部30におけるデータ分類処理の順序を示す説明図である。
【0077】
また、図3図1に示した本実施例の粉粒体の供給システムの診断装置10を構成する学習手段22に設置した分類部30におけるデータ分類処理の概要を具体的に説明する例として、X、Y2種類の入力データに新たに入力データを与えてデータ分類した場合の説明図である。
【0078】
図2に示すように、本実施例の粉粒体の供給システムの診断装置10を構成する学習手段22に設置した分類部30は、前処理装置101とARTモジュール102から構成する。
【0079】
前処理装置101では計測信号(計測値)を正規化し、ARTモジュール102の入力データに変換する。具体的には下記の(1)式及び(2)式の処理を行うものである。
【0080】
例えば、あるN個のn番目の計測値X(n)、N個のデータの最大、最小をMAX_X、MIN_Xとした場合の正規化データNX(n)は、次の(1)式で表わすことができる。
【0081】
NX(n)=α+(1−α)×(X(n)MIN_X)/(MAX_XMIN_X)・・・・(1)
ここで、αは0≦α<0.5の定数であり、データは(1)式により[α、1−α]の範囲に正規化される。次に、正規化したデータの補数CNX(n)を次の(2)式で計算する。
【0082】
CNX(n)=1−NX(n)・・・・(2)
この正規化データNX(n)とデータの補数CNX(n)を、ARTモジュール102に入力する。
【0083】
次に、図2に示したARTモジュール102は、F0レイヤー103、F1レイヤー104、F2レイヤー105、と呼ばれる処理階層及び選択サブシステム106を備えており、以下の5つの処理を実施する。1)データの正規化とノイズ除去、2)カテゴリー候補の選択、3)選択カテゴリーの妥当性判断、4)新規カテゴリー生成時の対応、5)重み係数の更新。
【0084】
前記した5つの処理の概要を以下の処理1〜5にそれぞれ示す。
【0085】
処理1:データの正規化
F0レイヤー103において、入力ベクトルの大きさが1になるように正規化する。また、ノイズを除去する。
【0086】
図3には、今までの処理結果を表す多数の点に加え、新たに2個のデータ点A、Bを追加した場合を示す。
【0087】
処理2:カテゴリー候補の選択
F1レイヤー104において、入力データと重み係数WJとの比較によりカテゴリー候補を選択する。即ち、前記計測信号である入力データが正常モデル、予兆モデル、異常モデルの何れに属するのかカテゴリー候補を選択する。
【0088】
図3では、今までの処理結果を示す多数の点は、カテゴリーA〜Dの4つのカテゴリーに分類される。
【0089】
重み係数WJは、図3においてカテゴリー毎の平均値と適用距離(図3では点を囲む実線で示す)に相当すると考えることができる。
【0090】
処理3:選択カテゴリーの妥当性判断
カテゴリーの妥当性をパラメータρとの比較で評価する。カテゴリーの妥当性が妥当と判断されれば、入力データをそのカテゴリーに分類し、処理5と進む。
【0091】
また、カテゴリーの妥当性が妥当と判断されない場合は、処理2に戻り、他のカテゴリーからふさわしいカテゴリー候補を選択する。
【0092】
なお、パラメータρはビジランスパラメータと呼び、ρの値を小さくすると分類が粗く、大きくすると分類が細かくなる。
【0093】
図3の場合、処理2にて点AをカテゴリーAと選択し、点Aから重み係数WJ(A)までの距離Laとパラメータρを比較した場合、La>ρとなり、カテゴリーの妥当性を妥当と判断せずに処理2に戻る。
【0094】
次に処理2にて点AをカテゴリーCと選択し、点Aから重み係数WJ(A)までの距離Lcとパラメータρを比較した場合、Lc≦ρとなり、カテゴリーの妥当性を妥当と判断し、点AをカテゴリーCに含めることになる。
【0095】
処理4:新規カテゴリー生成時の対応
処理2、3にて、全ての既存カテゴリーがリセットされた場合、入力データに新規カテゴリーをあてがう。このとき、新規カテゴリーに対応する新しい重み係数を生成する。
【0096】
図3の点Bの場合、パラメータρに対して全ての既存カテゴリー―A〜Dの範囲に入らない。このため処理4を適用して新規カテゴリーEを生成し、新規カテゴリーの位置を示す重み係数と適用範囲(点B廻りの点線)を生成する。
【0097】
処理5:重み係数の更新
入力データがカテゴリーJに分類されると、カテゴリーJに対応する重み係数WJ(new)は、過去の重み係数WJ(old)及び入力データPやその派生データを用いて次の(3)式で更新される。
【0098】
WJ(new)=Kw×p+(1−Kw)×WJ(old)・・・・(3)
ここで、Kwは学習率パラメータで0から1の範囲の値である。
【0099】
図3の点Aの場合、既存カテゴリーCと選択することによって、既存のデータに加えてCが加わったことで平均値と距離が変化し、図3に示したように、カテゴリーCの適用範囲は実線から点線に変わる。
【0100】
前記診断装置10の分類部30にてARTモジュールを用いたデータ分類の特徴は、処理4において、新規カテゴリーを生成し、対応する新しい重み係数を生成する点にある。過去に学習したカテゴリーに分類する他、新たなカテゴリーを生成できる利点がある。
【0101】
本発明の第1実施例である粉粒体の供給システムにおいては、診断装置10の学習手段22に備えた分類部30によって、本実施例の粉粒体の供給システムで計測された粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態を、現在の計測信号のデータに基づいて、正常状態、予兆状態、異常状態、新規状態の4項目のカテゴリーに分類する。
【0102】
本発明の第1実施例である粉粒体の供給システムにおいては、診断装置10に備えた診断手段24によって、分類部30で分類した前記4項目のカテゴリーに分類と、診断モデルデータベース23に蓄積されたデータとを比較して、本実施例の粉粒体の供給システムで計測された粉粒体の供給システムにおけるホッパ2内の粉粒体の流動状況の状態が正常状態以外のカテゴリーと診断した場合に、前記診断手段24による診断結果を制御部12に出力して、前記制御部12から前記粉粒体の供給システムにおける供給部となる受け入れコンベア1及び排出部となる排出フィーダ3、及び/或いは、流動化促進器8に操作信号を出力して、前記受け入れコンベア1や排出フィーダ3における粉粒体の流量を調整させるように構成している。
【0103】
また、前記制御部12から粉粒体を流動化させるためにホッパ2に設けられた流動化促進器8を動作させて、粉粒体の流動化促進の強度を変化させるように構成している。
【0104】
そして本発明の第1実施例である粉粒体の供給システムの診断装置10に備えた診断手段24及び制御部12によって、本実施例の粉粒体の供給システムで計測されたホッパ2内の粉粒体の流動状況についての現在の計測信号を前記の各カテゴリーに分類して予兆状態を識別することで、異常状態に移行する前に正常状態に戻す動作を加えることが可能となる。
【0105】
即ち、粉粒体の供給システムにおいては、粉粒体のホッパ2内での流動状況が、正常状態のマスフローの状態から、異常状態のファンネルフローの状態になる際に、先ずはホッパ2内の粉粒体の流れが不均一になる。
【0106】
そこで、ホッパ2内の粉粒体の流れが不均一になる場合のホッパ2内の圧力変動や流速変動、または摩擦力の変化を、ホッパ2に設けた第1の計測部7で計測し、この第1の計測部7で計測した粉粒体の前記計測信号に基づいて前記診断装置10の診断手段24で予兆状態として捉えて制御部12を操作することによって、例えば、ホッパ2に設けた流動化促進器8を動作させることで、ホッパ2内の粉粒体の不均一な流れを均一な流れにして、正常状態であるマスフローの状態に戻すことが可能となる。
【0107】
他方、予兆状態を捉えることができず、異常状態であるファンネルフローの状態の場合には、ホッパ2内の粉粒体は既に粉粒体の固着や圧密などの変質が生じているため、粉粒体の流動化促進には予兆状態の場合に比べて多量のエネルギーを必要とし、容易ではない。
【0108】
そこで、上記した本発明の第1実施例である粉粒体の供給システムによれば、本実施例の粉粒体の供給システムにおける第1の計測部7で計測したホッパ2内の粉粒体の流動状況に対する現在の計測信号に基づいて、診断装置10の診断手段24によってホッパ2内の粉粒体の流動状況が、予兆状態のカテゴリーや、分類不可となる新規状態のカテゴリー−と診断された場合に、診断手段24から制御部12に指令信号を出力して前記制御部12から粉粒体の供給システムにおける前記供給部となる受け入れコンベア1や、排出部となるホッパ出口の排出フィーダ3による粉粒体の流量を調整し、ホッパ2に設けた粉粒体の流動化促進器8を動作させることによって、異常状態のカテゴリーの場合に比べて少ない操作量やエネルギーにてホッパ2内の粉粒体の流動状況を正常状態に戻すことができる。
【0109】
また、本発明の第1実施例である粉粒体の供給システムにおける別の実施形態として、本実施例の粉粒体の供給システムで計測されたホッパ2内の粉粒体の流動状況についての現在の計測信号が、診断装置10の診断手段24によってカテゴリー分類結果で正常状態以外であると診断された場合に、新たな計測データとなる本実施例の粉粒体の供給システムで計測された粉粒体の現在の計測信号を診断装置10に取り込み、カテゴリー分類を再度実施するようにしても良い。
【0110】
この新たな計測データの一例として、図1に示された本実施例の粉粒体の供給システムで計測されたホッパ2内の粉粒体の流動状況に対する第2の計測部9の計測信号がある。
【0111】
この第2の計測部9は流動化促進器8の動作により得られる計測信号であり、診断装置10での診断結果が正常状態以外と診断された場合に得られる計測信号である。
【0112】
よって、この計測信号を加えて診断装置10に取り込み、診断手段24によってカテゴリー分類をし直すことで、より精度の高い診断が可能となる。
【0113】
また、診断装置10の診断手段24によって診断結果が正常状態と判断される場合は、少ない計測信号でカテゴリー分類しているので、診断装置10に加わる計算負荷は少なくなる。
【0114】
次に本実施例の粉粒体の供給システムにおいて、ホッパ2内での粉粒体の流動状況が異なる状況を、図4図6に示した例を引用して説明する。ここでは、ホッパ2内の下部に粉粒体としてバイオマス燃料100を有する状態で、ホッパ2内のバイオマス燃料100の上部に異なる燃料種、例えば石炭101を投入した場合を例にとって説明する。
【0115】
図4(A)は、ホッパ2内での粉粒体の流動状況が正常状態であるホッパ2内の粉粒体の流れを示し、図4(B)は、前記図4(A)でホッパ2内での粉粒体の流動状況が正常状態である場合に、ホッパ2に設置した第1の計測部7で計測したホッパ2内の粉粒体の圧力、流速、または摩擦力のうち、例えば、粉粒体の圧力を検出した圧力波形を時刻の経過とともに示している。
【0116】
また、図5(A)は、ホッパ2内での粉粒体の流動状況が予兆状態であるホッパ2内の粉粒体の流れを示し、図5(B)は、前記図5(A)でホッパ2内での粉粒体の流動状況が予兆状態である場合に、ホッパ2に設置した第1の計測部7で計測したホッパ2内の粉粒体の圧力、流速、または摩擦力のうち、例えば、粉粒体の圧力を検出した圧力波形を時刻の経過とともに示している。
【0117】
さらに、図6(A)は、ホッパ2内での粉粒体の流動状況が異常状態であるホッパ2内の粉粒体の流れを示し、図6(B)は、前記図6(A)でホッパ2内での粉粒体の流動状況が異常状態である場合に、ホッパ2に設置した第1の計測部7で計測したホッパ2内の粉粒体の圧力、流速、または摩擦力のうち、例えば、粉粒体の圧力を検出した圧力波形を時刻の経過とともに示している。
【0118】
また、図7は、本実施例の粉粒体の供給システムにおいて、ホッパ2に設置した第1の計測部7で計測したホッパ2内の粉粒体の圧力、流速、または摩擦力のうち、例えば、粉粒体の圧力を検出した圧力波形から前記診断装置10にてこの圧力波形から圧力変動幅、周波数を取り出して分類した結果を示す一例である。
【0119】
本実施例の粉粒体の供給システムにおける前記診断装置10の診断手段24によってホッパ2内での粉粒体の流動状況が正常状態34と判断された状態にある場合には、ホッパ2内の粉粒体はホッパ2の最下部にある排出フィーダ3に向って一定の速度で流れる。この状態は一般にマスフローの状態という。
【0120】
このホッパ2内での粉粒体の流動状況が正常状態34にある場合には、粉粒体がホッパ2の最下部にある排出フィーダ3に向って移動することで、ホッパ2の内部に形成される空隙がある程度大きくになると、空隙の上部の粉粒体が前記空隙部に流れ込むことを繰り返すことから、ホッパ2内の粉粒体の圧力を検出した圧力波形は、図4(B)に示した圧力波形のように、周期的な増減を繰り返す。
【0121】
このため、ホッパ2内での粉粒体の流動状況が正常状態34にある場合は、この後に述べるホッパ2内での粉粒体の流動状況が異常状態35の場合となる図6(B)に示した圧力波形に比べて、圧力波形の圧力変動幅は比較的小さく、周波数は比較的高くなる。
【0122】
ホッパ2内での粉粒体の流動状況が異常状態35の場合、ホッパ2内の粉粒体は、ホッパ2内の各部分で異なる速度で流れる。
【0123】
一般にホッパ2内の壁面近傍の粉粒体の流速が低く、時にはホッパ2内の壁面近傍で粉粒体が流れないホッパ2内の壁面に固着した固着33の状態となる。
【0124】
このため、図6(A)に示すようにホッパ2の壁面から離れたホッパ2の中央部で粉粒体の流速が早まる、いわゆるファンネルフローの状態となる。
【0125】
ファンネルフローの場合、ホッパ2内の粉粒体の流れが一様で無いため、ホッパ2から排出される粉粒体の性状予測はマスフローの場合に比べて難しい。また先にホッパ2内に投入した粉粒体のバイオマス燃料100と、後からホッパ2内に投入した粉粒体の石炭101のうち、後から投入した石炭101が先に投入したバイオマス燃料100がなくなる前にホッパ2の最下部にある排出フィーダ3に到着し、バイオマス燃料100と石炭101との両者が混合して排出フィーダ3から排出される時間が長くなる。
【0126】
また、ファンネルフローの状態では長時間、ホッパ2から外部に排出されない粉粒体が生じるので、粉粒体の固着33や変質により、ホッパ2から粉粒体を排出する排出不良の原因となる。
【0127】
このファンネルフローの状態では、ホッパ2の壁面近傍では粉粒体の小刻みな移動が少なく、ホッパ2内の中央部の粉粒体の流れに従って崩落する粉粒体の大きな移動が生じる。
【0128】
このため、ホッパ2に設置した第1の計測部7で計測したホッパ2内の粉粒体の圧力を検出した圧力波形の圧力変動幅は比較的大きく、周波数は低くなる。
【0129】
ホッパ2内での粉粒体の流動状況が予兆状態36、37とは、ホッパ2内での粉粒体の流動状況が前述の正常状態34から異常状態35になる途中経過である。
【0130】
このホッパ2内での粉粒体の流動状況が予兆状態36、37となる場合には、ホッパ2内の一部分で粉粒体の流動性が低下し、その部分での粉粒体の流速が他の部分での粉粒体の流速に比べて遅くなる。
【0131】
よって、ホッパ2内での粉粒体の流動状況が予兆状態36、37となる状態が持続すると、摩擦抵抗により周囲の粉粒体の流動性も悪化し、ホッパ2内の広い範囲で粉粒体の流動性が悪化し、粉粒体の流動状況が異常状態35となる状況に繋がる。
【0132】
このホッパ2内での粉粒体の流動状況が予兆状態36、37となる場合に、例えば、ホッパ2内での粉粒体の流動状況が正常状態34の場合の粉粒体の小刻みな移動と、流動性が悪い部分での粉粒体の大きな移動が重なる2種類の圧力波形が重なる例がある。
【0133】
また、図示しないが、診断装置10の診断手段24によって、ホッパ2内での粉粒体の流動状況が新規状態と診断される場合は、今までに診断装置10の診断手段24が経験していない状況であると分類された場合である。
【0134】
この場合、診断装置10の診断手段24が経験していないだけなので、正常状態34、異常状態35、予兆状態36、37のうちの何れかに属する状況であるとも考えられるが、一般には正常状態34以外の状態である可能性が高い。
【0135】
図7では、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が、正常状態34、予兆状態36、37、異常状態35のうちの何れの状況であるかについて、ホッパ2に設置した第1の計測部7で計測したホッパ2内の粉粒体の圧力を検出した圧力波形に基づいて、圧力波形の変動幅である圧力振幅を縦軸に、圧力波形の周波数を横軸にとり、診断装置10の診断手段24による診断によって、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が正常状態34、予兆状態36、37、或いは異常状態34の何れに属しているのかを分類して示している。
【0136】
図7に示したように、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が正常状態34に属する場合は、圧力波形の圧力変動幅は比較的小さく、周波数は比較的に高い。
【0137】
そして、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が異常状態35に属する場合は、圧力波形の圧力変動幅は比較的大きく、周波数は低い。
【0138】
また、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が予兆状態36、37に属する場合は、圧力波形の圧力変動幅及び周波数は、正常状態34と異常状態35との両者の中間的な状態となる。
【0139】
このことから、本実施例の粉粒体の供給システムにおける前記診断装置10によってホッパ2に設置した第1の計測部7で計測したホッパ2内の粉粒体の圧力、流速、または摩擦力のいずれかを検出した検出値に基づいて、例えば、本実施例の粉粒体の供給システムにおける前記診断装置10の診断手段24では、粉粒体の圧力を検出した圧力波形から前記診断手段24によってホッパ2内の粉粒体の流動状況が正常状態34、予兆状態36、37、或いは異常状態34の何れに属しているのかを分類することが可能となる。
【0140】
特に、本実施例の粉粒体の供給システムにおいて、前記診断装置10の診断手段24でホッパ2内の粉粒体の流動状況を診断して分類することによって、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が予兆段階や今まで経験していない状態である新規状態と診断された場合には、前記診断装置10の診断手段24から制御部12に指令信号を出力して、該制御部12からの操作信号により本実施例の粉粒体の供給システムにおける供給部となる受け入れコンベア1や、排出部となるホッパ出口の排出フィーダ3での粉粒体の流量をそれぞれ調整し、ホッパ2に設置した流動化促進器8を動作させることで、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が異常状態の場合に比べて少ない操作量やエネルギーにてホッパ2内の粉粒体の流動状況を正常状態に戻すことが可能となる。
【0141】
本実施例によれば、ホッパ内の粉粒体の流動状況を診断し、粉粒体の流動状況が正常状態以外の状態の場合に、ホッパ内での粉粒体の流動状況がホッパ内の全体で排出口へ向かう流れがほぼ均等に生じる、いわゆるマスフローの状態となる正常状態に復旧するようにした粉粒体の供給システム、及びこの粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置が実現できる。
【実施例2】
【0142】
図8に本発明の第2実施例である粉粒体の供給システムの概略構成を示す模式図を示す。図8に示した本発明の第2実施例である粉粒体の供給システムでは、図1に示した第1実施例である粉粒体の供給システムと基本的な構成は同じであるので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ説明する。
【0143】
図8に示した本実施例の粉粒体の供給システムの模式図では、図1に示した第1実施例の粉粒体の供給システムにおける診断装置10を変形した構成となっており、診断装置10は学習手段22Aと診断手段24A、及び学習手段22Bと診断手段24Bをそれぞれ備えた構成である。
【0144】
このうち、学習手段22Aと診断手段24Aは、ホッパ2に貯蔵された粉粒体の圧力、流速、または摩擦力のうちの何れか1つ、もしくは複数のものを計測する第1の計測部7で得られた計測信号に基づき、前記診断手段24Aによって前記診断モデルデータベース23に保存された診断モデルと比較、参照することによって、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が正常状態か、或いは、正常以外の状態かを診断するものである。
【0145】
一方、学習手段22Bと診断手段24Bは、前記学習手段22Aと診断手段24Aによってホッパ2内の粉粒体の流動状況が正常以外の状態と診断された場合に、第1の計測部7の計測信号に、流動化促進器8で発生した振動の強さを測定する第2の計測部9で得られた計測信号を加えた計測信号に基づいて、前記学習手段22Bと診断手段24Bによって、ホッパ2内の粉粒体の流動状況に対するカテゴリー分類を再度、実施する。
【0146】
即ち、本実施例の粉粒体の供給システムにおける診断装置10の診断手段24Aで、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が正常状態と、正常以外の状態とに区分し、正常以外の状態の場合に流動化促進部8を動作させる。
【0147】
このとき、第2の計測部9によって流動化促進器8の動作によって発生した振動の強さを計測した計測信号が得られる。
【0148】
前記第2の計測部9によって計測した流動化促進器8の動作で発生した振動の強さの計測信号を、前記第1の計測部7で得られた粉粒体の圧力、流速、または摩擦力の少なくとも1つを計測した前記計測信号に加えて、カテゴリー分類を学習手段22Bで再度、実施し、診断手段24Bでホッパ2内の粉粒体の流動状況を再度、診断してカテゴリー分類を実施することで、ホッパ2内の粉粒体の流動状況に対して、より精度の高い診断が可能となる。
【0149】
また、診断装置10の診断手段24Aによるホッパ2内の粉粒体の流動状況に対する診断によるカテゴリー分類の実施結果が正常状態の場合は、少ない計測信号でカテゴリー分類しているので、診断装置10に加わる計算負荷は少ない。
【0150】
なお、図8に示した本実施例の粉粒体の供給システムでは、説明のため学習手段と診断手段を複数設けた場合を示したが、その違いは使用する計測信号の数を変えるだけである。このため単一の学習手段と診断手段を用いるようにすることも可能である。
【0151】
本実施例によれば、ホッパ内の粉粒体の流動状況を診断し、粉粒体の流動状況が正常状態以外の状態の場合に、ホッパ内での粉粒体の流動状況がホッパ内の全体で排出口へ向かう流れがほぼ均等に生じる、いわゆるマスフローの状態となる正常状態に復旧するようにした粉粒体の供給システム、及びこの粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置が実現できる。
【実施例3】
【0152】
図9に本発明の第3実施例である粉粒体の供給システムの概略構成を示す模式図を示す。図9に示した本発明の第3実施例である粉粒体の供給システムでは、図1に示した第1実施例である粉粒体の供給システムと基本的な構成は同じであるので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ説明する。
【0153】
図9に示した本実施例の粉粒体の供給システムでは、下流側が燃焼装置(図示せず)に接続する固体燃料の供給システムを例に示すが、他の粉粒体資材の供給設備でも構わない。
【0154】
本実施例の粉粒体の供給システムは、ホッパ2内の粉粒体の動きや分布を計算する数値計算部40とその入出力部39を有し、この数値計算部40にはホッパ2内の粉粒体の動きや分布を計算するために使用する簡易的なモデルと、詳細なモデルの少なくとも2つ以上のモデルを備えている。
【0155】
図9に示す本実施例の粉粒体の供給システムでは、診断装置10と制御部12との間で入出力部39を介してデータをやりとりする数値計算部40に、簡易的なモデルを有する数値計算部40Aと、詳細なモデルを有する数値計算部40Bを備えている。
【0156】
本実施例の粉粒体の供給システムでは、第1実施例の粉粒体の供給システムで示した診断装置10の診断手段24による診断結果として、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が正常状態であると判断された場合は、簡易的なモデルを用いた数値計算部40Aを使用し、この数値計算部40Aの演算によって粉粒体の供給システム出口での粉粒体の種類と比率を予測する。
【0157】
一方、診断装置10の診断手段24による診断結果として、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が正常以外の状態、例えば異常状態と判断された場合は、詳細なモデルを用いた数値計算部40Bを使用し、この数値計算部40Bの演算によって粉粒体の供給システム出口での粉粒体の種類と比率を予測する。
【0158】
図10は、図9に示した本実施例の粉粒体の供給システムにおける数値計算部40にて処理手順を示すフローチャートである。
【0159】
図9に示した本実施例の粉粒体の供給システムは2種類の数値計算部40A、40Bを有するが、使用する計算内容(モデル)が異なるだけで計算の手順は同じであることから図10のフローチャートは両者に適用される。
【0160】
図10に示したフローチャートにおいて、入力部41は本実施例である粉粒体の供給システムの受け入れコンベア1に設けた重量計測部5で測定した粉粒体の重量や、粉粒体の体積、色等の情報を元に粉粒体の性状を判別し、その結果を入力する。なお、入力部41で得た情報は入力設定部42となる外部入力装置26によって人手で情報の設定や修正をすることも可能である。
【0161】
また、この入力部41では、受け入れコンベア1でホッパ2に投入する粉粒体のスケジュールが事前に判ればその情報も入力する。
【0162】
入力部41で与えられた粉粒体の性状は、事前に計算パラメータを格納した情報格納部44の情報と情報照合部43で照合した上で計算部45に与えられ、粉粒体の分布の数値シミュレーションを行う。
【0163】
計算部45では計算パラメータを元に粉粒体の分布を数値シュミレーションし、その演算結果である数値シミュレーション結果46を出力する。数値シミュレーション結果46の出力は、後述する補正部47で補正後、表示部11に本実施例である粉粒体の供給システムの供給システム出口のフィーダ3での粉粒体の種類と比率の予測結果を表示する。
【0164】
計算部45の計算方法の一例として、簡易的な方法の例と詳細なモデルを用いた方法の例を下記に示す。
【0165】
計算部45の計算方法において、簡易的なモデルを用いた数値計算としては、簡易的なモデルを有する数値計算部40Aにおける簡易的な方法として、例えば、ホッパの空間体積と入力部41や入力設定部42で与えた投入量、排出フィーダ3での排出速度を元に、ホッパを高さ方向に1次元的に分割し、上部から下部に流れるとして計算する方法がある。
【0166】
一方、詳細なモデルを用いた数値計算としては、詳細なモデルを有する数値計算部40Bにおける詳細な方法として、例えば、粒子間個々の運動方程式を立て、連立方程式として計算し、粒子の挙動を計算する方法(粒子要素法)がある。
【0167】
また、計算時間を短縮し、実用的な時間で計算結果を得る方法としてSmoothed Particle要素法や粉体オートマトン法がある。
【0168】
Smoothed Particle要素法では粉粒体の多数の粒子を含む粉体要素を定義し、その粉体要素の運動をラグランジュ的に追跡する方法である。
【0169】
この方法では定義した粉体要素に対し、異なる粉体要素や壁面、粉体要素内での個々の粒子の運動をモデル化し、質量、運動量の保存式を立て、計算する。この方法では粉粒体の集合単位で計算するため、個々の粉粒体の連立方程式を計算する粒子要素法に比べて計算時間が短くなる。
【0170】
また、粉体オートマトン法では予めホッパ2内を格子状に分割し、分割したセル内への粒子の流入や排出を、対象のセルと境界を接するセルの状態との相関関係により判定する方法である。
【0171】
例えば、当該セルから下方向の境界セルへの移動の場合、下方向のセルに粉粒体が無いか、また周囲セルの粉粒体や壁面との摩擦力、粉粒体自体の重力を元に判定する。セル毎に順次判定をすることで粉粒体の移動を計算する。
【0172】
この方法では周囲セルとの関係のみで移動を計算することができるため、連立方程式を計算する粒子要素法に比べて計算時間が短くなる。
【0173】
次に補正部47の補正の役割について説明する。
【0174】
通常、詳細なモデルを用いれば補正部47で補正する必要の無いものと考えられるが、数値計算では入力データによりその精度が左右される。このため、補正部47で実際の計測値を確認し、計算結果を修正した方がより精度が高まる。
【0175】
例えば、上記に示す詳細なモデルを用いた数値計算では、粉粒体やその集合体の比重、粒子や壁面との摩擦力係数、投入時の粒子径や空隙率に代表される計算パラメータが必要である。この計算パラメータは代表値またはその分布を情報格納部44に格納して使用するが、実際の粉粒体の性状を代表することが困難であり、これが詳細なモデルを用いた数値計算の結果が実際に対し誤差を生じる1つの要因となる。
【0176】
このため、粉粒体の圧力、流速、または摩擦力のうちの何れか1つ、もしくは複数のものを計測する第1の計測部7や、流動化促進器8で発生した振動の強さを測定する第2の計測部9で計測した計測値を元に、数値計算と実際の粉粒体の挙動との誤差を低減し、実用的な予測を可能とすることが望ましい。
【0177】
計測値の例として、粉粒体の重量や動きからもたらされる壁面圧力とその変動を圧力センサや歪ゲージで検出する方法がある。また粉粒体の流動方向や摩擦力の検知する方法としては、壁面に沿った板と壁面との間での引っ張り力を歪ゲージで検出する方法がある。
【0178】
何れの場合も、ホッパ2の壁面に沿って第1の計測部7や第2の計測部9を設置することが望ましく、ホッパ2の粉粒体内に第1の計測部7や第2の計測部9を突出させて設置する場合は、摩耗を考慮して突出長さを短くし、或いは耐摩耗材で第1の計測部7や第2の計測部9を構成することが望ましい。
【0179】
また、ホッパ2の粉粒体内に第1の計測部7や第2の計測部9を突出させると、粉粒体の固着を促進させる面があるので、第1の計測部7や第2の計測部9に振動を定期的に加える等の措置をすることが望ましい。
【0180】
上記の構成において、第2実施例である粉粒体の供給システムの特徴は、ホッパ2内の粉粒体の流動状況に対する診断装置10の診断手段24による診断結果に応じて、数値計算部40の数値計算に用いるモデルを、簡易的なモデルと詳細なモデルとに切り替えて使用するように構成したことにある。
【0181】
例えば、診断装置10による診断結果で、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が正常状態と判断された場合は、簡易的なモデルを用いた数値計算部40Aを使用して、粉粒体の供給システム出口での粉粒体の種類と比率を予測する。
【0182】
一方、診断装置10の診断手段24による診断結果で、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が正常以外の状態、例えば異常状態と判断した場合は、詳細なモデルを用いた数値計算部40Bを使用して、粉粒体の供給システム出口での粉粒体の種類と比率を予測する。
【0183】
診断装置10の診断手段24による診断結果で、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が正常状態に分類されると診断された場合は、一般に、ホッパ2の全体で排出口へ向かう流れが均等に生じる、いわゆるマスフローの状態である。この場合、ホッパ2内の流れを高さ方向に1次元で表す簡易なモデルも使用可能である。
【0184】
粉粒体の供給システム出口での粉粒体の種類と比率を予測する数値計算部40の数値計算に用いるモデルとして簡易なモデルを用いた数値計算部40Aを使用することで、数値計算部40の数値計算の負荷や上述の測定での数値解析の補正にかかる計測負荷を低減できる。
【0185】
一方、診断装置10の診断手段24による診断結果で、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が異常状態に分類される場合は、一般に、ホッパ2内の一部でのみ粉粒体が排出口に向う流れが出来、不均一に流れるファンネルフローの状態である。
【0186】
この場合、固着や圧密などの粉粒体の動きを把握する必要があり、数値計算部40の数値計算に用いるモデルとして3次元の粉粒体の動きを表す詳細なモデルが必要となる。
【0187】
診断装置10の診断手段24による診断結果で、ホッパ2内の粉粒体の流動状況が予兆状態や、新規状態、異常状態のいずれかに分類される場合は、数値計算部40の数値計算に用いるモデルとして詳細なモデルを用いた数値計算部40Bを使用して粉粒体の流れの数値解析を行うことにより、ホッパ2(粉粒体貯蔵部)出口での粉粒体の性状を詳細に予測できる。
【0188】
そして、その粉粒体の性状の詳細な予測結果を元に本実施例の粉粒体の供給システムの供給部となる受け入れコンベア1や、排出部となるホッパ出口の排出フィーダ3での粉粒体の流量を調整し、或いはホッパ2に設けた粉粒体の流動化促進器8を動作させることによって、異常状態のカテゴリーの場合に比べて少ない操作量やエネルギーにてホッパ2内の粉粒体の流動状況を正常状態に戻すことができる。
【0189】
本実施例によれば、ホッパ内の粉粒体の流動状況を診断し、粉粒体の流動状況が正常状態以外の状態の場合に、ホッパ内での粉粒体の流動状況がホッパ内の全体で排出口へ向かう流れがほぼ均等に生じる、いわゆるマスフローの状態となる正常状態に復旧するようにした粉粒体の供給システム、及びこの粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置が実現できる。
【実施例4】
【0190】
図11に本発明の第4実施例である粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置の概略構成である模式図を示す。図11に示した本発明の第4実施例である粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置において、粉粒体の供給システムは図9に示した第3実施例である粉粒体の供給システムと基本的な構成は同じであるので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ説明する。
【0191】
図11に示した本発明の第4実施例である粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置の火炉において、本実施例における粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置は、粉粒体の供給システムに加えて、更に下記した構成を備えている。
【0192】
即ち、本実施例である粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置では、ホッパ2から燃焼装置の火炉50に供給される燃料である粉粒体(バイオマス燃料100、石炭101、及び両者の混合物)は、搬送コンベア4から粉砕機51に投入されて粉砕された後に、バーナ52を介して火炉50内に噴出して燃焼する。
【0193】
火炉50には燃料である粉粒体とともに、燃焼用空気が火炉50に設けたバーナ52と、その上部に設置した空気投入口53から火炉50内に投入される。
【0194】
本実施例の燃焼装置における粉粒体の供給システムに備えられた制御部12は、図9及び図10に示した第3実施例である粉粒体の供給システムにおける診断装置10に設けた数値計算部40と同様に演算して、数値シミュレーションとその補正によって粉粒体の供給システムにおける出口での粉粒体の種類と比率を予測することで、前記制御部12から粉砕機51及び送風機54の稼働をそれぞれ操作する制御器55に指令信号を出力して前記粉砕機51及び送風機54の稼働状況を調節し、貯蔵部であるホッパ2の下流に設置した前記粉砕機51における粉砕加圧圧力、粉砕速度、分級器回転数、導入空気量、温度等の粉砕条件を変更可能となるように構成している。
【0195】
例えば粉砕機51については、異なる種類の粉粒体、例えばバイオマス燃料100と石炭101が混合した状態の場合、バイオマス燃料100又は石炭101の何れか片方の性状に合わせた粉砕条件だと、粉粒体の滑りや噛み込み、過大粉砕負荷や過小粉砕負荷による異常振動が生じる可能性が高まる。
【0196】
本実施例の粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置では、前述のように数値シミュレーションとその補正によって粉粒体の供給システムにおける出口での粉粒体の種類と比率を予測することで、バイオマス燃料100、石炭101の粉粒体、又はバイオマス燃料100と石炭101が混合した状態の粉粒体が粉砕機51に入る前にその性状の変化を事前に予測し、事前に粉粒体に適した粉砕条件を制御器55に指示することができる。このため、粉砕機51の粉砕条件を調整し、燃料性状の変動に伴う粉砕動力の変動やそれに伴う燃焼状態の変動を抑え、燃焼装置の経済性の低下を抑制できる。
【0197】
また、本実施例の粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置では、前述のように数値シミュレーションとその補正によって粉粒体の供給システムにおける出口での粉粒体の種類と比率を予測することで、バイオマス燃料100、石炭101の粉粒体、又はバイオマス燃料100と石炭101が混合した状態の粉粒体が火炉50に入る前にその性状の変化を事前に予測し、事前に火炉50に入る粉粒体に適した燃焼条件を制御器55に指示することができる。
【0198】
このため、バーナ52や空気投入口53の空気量条件を調整し、燃料性状の変動に伴う燃焼状態の変動を抑え、燃焼装置の経済性の低下を抑制できる。
【0199】
燃焼状態の変動の例と本実施例適用の効果として、例えば、燃焼装置の火炉50に設置したバーナ52に供給する空気量を変更することにより、バーナ52の保炎状態を最適化し、安定した火炎を得ることが挙げられる。
【0200】
また、粉砕条件が低下し、燃焼状態も低下することが見込まれる場合は、事前に油等の助燃装置を火炉50に設置しておいて燃焼させるようにすれば、本実施例である粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置を安定に稼働することが可能となる。
【0201】
本実施例によれば、ホッパ内の粉粒体の流動状況を診断し、粉粒体の流動状況が正常状態以外の状態の場合に、ホッパ内での粉粒体の流動状況がホッパ内の全体で排出口へ向かう流れがほぼ均等に生じる、いわゆるマスフローの状態となる正常状態に復旧するようにした粉粒体の供給システム、及びこの粉粒体の供給システムを備えた燃焼装置が実現できる。
【符号の説明】
【0202】
1:受け入れコンベア、2:ホッパ、3:排出フィーダ、4:搬送コンベア、5:重量計測部、6:第2の重量計測部、7:第1の計測部、8:流動化促進器、9:第2の計測部、10:制御装置、11:表示部、12:制御部、20:外部入力インタフェース、21:計測信号データベース、22:学習手段、23:診断モデルデータベース、24:診断手段、25:外部出力インタフェース、26:外部入力装置、30:分類部、31:期間決定部、32:モデル構築部、33:固着、39:入出力部、40:数値計算部、40A:数値計算部、40B:数値計算部、50:火炉、51:粉砕機、52:バーナ、53:空気投入口、54:送風機、55:制御器、100:バイオマス燃料、101:石炭。
図1
図2
図3
図4(A)】
図4(B)】
図5(A)】
図5(B)】
図6(A)】
図6(B)】
図7
図8
図9
図10
図11