特許第6170803号(P6170803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170803
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】照明付き杖
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20170713BHJP
   A45B 3/04 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   G01R19/00 B
   A45B3/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-216448(P2013-216448)
(22)【出願日】2013年10月17日
(65)【公開番号】特開2015-78917(P2015-78917A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010032
【氏名又は名称】フランスベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】小谷 勲
【審査官】 小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−107946(JP,A)
【文献】 特開2012−125387(JP,A)
【文献】 特開2002−267697(JP,A)
【文献】 特開2004−221043(JP,A)
【文献】 特開2008−302006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
A45B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧変動が生じる電池を動作用電源として備えその電池の電力により動作する発光手段として互いに発光色が異なる第1および第2発光ダイオードを有しかつ点灯/消灯スイッチを有する照明付き杖であって、
前記電池の電圧Eを入力とし、その入力電圧Eより低い値の基準電圧Erefを出力するとともに上限が2mA程度の微弱電流を出力する基準電圧ICと前記電池の電圧Eを分圧により電圧Edとして出力するとともに、前記電池の電圧変動に伴う出力電圧Edの最大値Edmaxが前記基準電圧Erefと同じ値となるように分圧比が設定された分圧手段と前記分圧手段の出力電圧Edを前記基準電圧Erefに基づいてアナログ/ディジタル変換し、このアナログ/ディジタル変換により得た値を前記電池の電圧変動の最大値Emaxと前記基準電圧Erefの値との比“Emax/Eref”で補正し、この補正により得た値を前記電池の電圧Eの値として捕らえる演算手段と;を含む電圧監視装置と、
前記点灯/消灯スイッチのオン時、前記捕らえた電圧Eの値が所定値E2未満でない場合、前記照明付き杖の周りを照明するべく前記第1発光ダイオードをオンする第1の制御手段と、
前記点灯/消灯スイッチのオン時、前記捕らえた電圧Eの値が設定値E1以上かつ前記所定値E2未満の場合、前記照明付き杖の周りを照明するべく前記第1発光ダイオードをオンし、かつ前記電池の残量が半分であることを報知するべく一定時間だけ前記第2発光ダイオードを断続的にオンする第2の制御手段と、
前記点灯/消灯スイッチのオン時、前記捕らえた電圧Eの値が前記設定値E1未満の場合、前記電池の残量が不足気味であることを報知するべく前記第1発光ダイオードを断続的にオンしその第1発光ダイオードのオフ時のみ前記第2発光ダイオードをオンする第3の制御手段と、
前記第1発光ダイオードの断続的なオンに際し、その第1発光ダイオードのオン時の動作電流を同第1発光ダイオードの定格電流より小さい電流に設定する第4の制御手段と、
を備えることを特徴とする照明付き杖
【請求項2】
前記照明付き杖は、円筒状の支柱部、その支柱部の上端に設けた把手部、前記支柱部の下部に設けた照明部、および前記支柱部の下端に設けた石突き部を有し、
前記支柱部は、前記電圧監視装置と前記第1,第2,第3および第4の制御手段を収容しており
前記照明部は、前記第1および第2発光ダイオードを含み、これら発光ダイオードの光を前記支柱部の周りに透過する、
ことを特徴とする請求項1記載の照明付き杖
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変動が生じる電池を動作用電源として備える照明付き杖に関する。
【背景技術】
【0002】
電池を動作用電源として備える機器に搭載されるマイクロプロセッサは、電源である電池の電圧が変動する中でも、動作可能な変動範囲内であれば、一応はプロセッサとして機能しうる。
【0003】
しかしながら、マイクロプロセッサに内蔵されたA/D変換器は、電圧が変動する電源系では、全く機能しえない。内蔵A/D変換器は、変動することの決して無い基準電圧源を必要とし、且つプロセッサの電源電圧以下であることが必要である。
【0004】
電源電圧が一定のシステムでは、プロセッサ内蔵A/D変換器の基準電圧は、一般的に、電源電圧と等しい値として使用する。ところが、電池を動作用電源として備える機器に搭載されるマイクロプロセッサの場合、電源電圧の変動が避けられないことから、そのような一般的な使用方法は採用できない。
【0005】
仮に、プロセッサ内蔵A/D変換器の基準電圧を電源電圧(電池の電圧)と等しくして、回路構成した場合を考える。この時、例えば10bitA/D変換器を搭載し、電源電圧が+4.2V〜+2.5Vの範囲で変化する場合、アナログ入力値の中間値は次のようになる。
電源電圧値=+4.2Vの場合、中間値は+2.1Vである。この中間値+2.1Vの2値化データは、$1FFである。電源電圧値=+3.0Vの場合、中間値は+1.5Vである。この中間値+1.5Vの2値化データも、同じく$1FFである。
【0006】
互いに異なる中間値であるにもかかわらず、2値化データは同じ$1FFとなる。実際のアナログ入力値は定まることなく無限に近い組み合わせが存在することから、結果としてA/D変換器として機能しない。
【0007】
ところで、電池を動作用電源として備える機器の内部において、電源電圧の値がいくつであるか知りたい要求は多い。
【0008】
上述の電源電圧を基準電圧に採用すれば、電源電圧のディジタル変換値は、内蔵A/D変換器が10bitである場合に、常に最大値である$3FFとなって、真値を得ることができない。
【0009】
この課題に対応する為、通常、内蔵A/D変換器を使用するマイクロプロセッサは、電池電源から、電圧変換回路であるDC-DCコンバータを使い、一度、固定電圧系を構成して、この固定電圧電源の中で、プロセッサを扱う。
【0010】
DC-DCコンバータで電圧変換される電圧値は、回路用途やシステムに応じ、バッテリ電圧より高め、あるいは低めに設定される。低め設定の場合には、三端子レギュレータを用いて降圧する場合もある。
【0011】
しかしながら、三端子レギュレータは、降圧分を単純熱変換する為、効率が悪い。一方、DC-DCコンバータも100%の効率は有り得ず、電池電力を無駄に消費することになる。
【0012】
電池電源システムにあっては、電池が持っている電力を無駄なく最高効率下で構成することが競われるものである。でなければ、頻繁に電池交換や充電が必要になるからである。
【0013】
当然ながら、電圧変換回路は、特に効率が良いDC-DCコンバータ回路では、コストが相当大きくなる上、実装面積も必要となる。
【0014】
三端子レギュレータは、先の如く、電池電力の消費が大きい上に、応分の発熱を伴い排熱構造が必要で扱いが面倒である。
【0015】
なお、電圧変動が生じる電池を動作用電源として備える機器として、歩行者の身体を支えて歩行を支援するとともに、照明用のライトを備えた杖が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−302006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
電圧変動が生じる電池を動作用電源として備える機器では、電池の残量が少なくなると、機器の動作に支障を与える。例えば照明付き杖の場合、電池の残量が少なくなると、ランプの光量が低下して十分な照明ができなくなる。歩行の途中で電池切れとなって、ランプが消灯することもある。
【0018】
本発明の目的は、電圧変動が生じる電池の電圧をその電池の電力をできるだけ消費することなく精度よく検出できる電圧監視装置を備えた照明付き杖を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の照明付き杖は、電圧変動が生じる電池を動作用電源として備えその電池の電力により動作する発光手段として互いに発光色が異なる第1および第2発光ダイオードを有しかつ点灯/消灯スイッチを有する照明付き杖であって、前記電池の電圧Eを入力とし、その入力電圧Eより低い値の基準電圧Erefを出力するとともに上限が2mA程度の微弱電流を出力する基準電圧ICと前記電池の電圧Eを分圧により電圧Edとして出力するとともに、前記電池の電圧変動に伴う出力電圧Edの最大値Edmaxが前記基準電圧Erefと同じ値となるように分圧比が設定された分圧手段と前記分圧手段の出力電圧Edを前記基準電圧Erefに基づいてアナログ/ディジタル変換し、このアナログ/ディジタル変換により得た値を前記電池の電圧変動の最大値Emaxと前記基準電圧Erefの値との比“Emax/Eref”で補正し、この補正により得た値を前記電池の電圧Eの値として捕らえる演算手段と;を含む電圧監視装置と、点灯/消灯スイッチのオン時、前記捕らえた電圧Eの値が所定値E2未満でない場合、前記照明付き杖の周りを照明するべく前記第1発光ダイオードをオンする第1の制御手段と、点灯/消灯スイッチのオン時、前記捕らえた電圧Eの値が設定値E1以上かつ前記所定値E2未満の場合、前記照明付き杖の周りを照明するべく前記第1発光ダイオードをオンし、かつ前記電池の残量が半分であることを報知するべく一定時間だけ前記第2発光ダイオードを断続的にオンする第2の制御手段と、点灯/消灯スイッチのオン時、前記捕らえた電圧Eの値が前記設定値E1未満の場合、前記電池の残量が不足気味であることを報知するべく前記第1発光ダイオードを断続的にオンしその第1発光ダイオードのオフ時のみ前記第2発光ダイオードをオンする第3の制御手段と、前記第1発光ダイオードの断続的なオンに際し、その第1発光ダイオードのオン時の動作電流を同第1発光ダイオードの定格電流より小さい電流に設定する第4の制御手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態の全体的な構成を示す図。
図2】一実施形態の照明部の構成を断面して示す図。
図3図2のA−A線に沿う断面を示す図。
図4】一実施形態の制御回路を示すブロック図。
図5図4の制御回路におけるマイクロプロセッサおよびその周辺部の構成を示す図。
図6】一実施形態の制御を示すフローチャート。
図7】一実施形態の各発光ダイオードのオン,オフを示すタイムチャート。
図8】一実施形態のプリント回路基板およびそのプリント回路基板に搭載される部品の外観を示す図。
図9】一実施形態の制御回路の変形例の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1において、1は杖本体で、軽量のアルミニウムや炭素繊維で円筒状に形成された支柱部2、この支柱部2の上端に装着された木製の把手部3、支柱部2の下端に取付けられた樹脂製の石突き部4を有する。支柱部2は、引出しと収納が自在な長さ調節用の脚部2aを下端側に有するとともに、その脚部2aとの境界部に固定用ねじ2bを有する。固定用ねじ2bを緩めることで脚部2aの伸縮が可能となり、固定用ねじ2bを締めることで脚部2aの伸縮位置を固定することができる。石突き部4は脚部2aの先端にあって、歩行面に突いたときの衝撃を吸収する。
【0022】
支柱部2の脚部2aは、無色透明の光透過性部材で円筒状に形成された照明部5を脚部2aの一部として含む。照明部5の内周面は、図2に断面を示すように、支柱部2の軸方向に沿って上方側内周面5aと下方側内周面5bとに分かれる。
【0023】
照明部5内の上方部に、脚部2aの内周面にプリント回路基板8が嵌合保持される。このプリント回路基板8の下面側に、発光手段たとえば発光ダイオード(LED:第1発光手段)51および発光ダイオード(LED:第2発光手段)52が下向き状態で配置される。発光ダイオード51は、白色(クールホワイトともいう)または昼光色(ウオームホワイトともいう)の光を発するもので、照明用の主灯として機能する。発光ダイオード51は、青色乃至緑色の光を発するもので、補助灯として機能する。
【0024】
照明部5の上方側内周面5aは、図2のA−A線に沿う断面である図3に示すように、発光ダイオード51,52の光を支柱部2の周方向(軸方向と直交する方向)に拡大して拡散する光学屈折形状たとえばシリンドリカルレンズ形の曲面形状を、周方向に順に配列してなる。発光ダイオード51,52から発せられてこのシリンドリカルレンズ形の曲面形状に入る光は、支柱部2の周方向に拡大されて照明部5を透過し、支柱部2の軸方向においてはほとんど拡大(屈折)されないまま照明部5を透過する。つまり、支柱部2が地面に直立した状態にあるとき、照明部5から発せられた光は図1に二点鎖線で示すように石突き部4中心の所定範囲に拡がって地面を照らすだけで、上方には拡がって他者の眼を眩ますことがない。いわゆる防眩効果である。
【0025】
照明部5の下方側内周面5bは、光学屈折形状を持たない単純な曲面であり、上方の発光ダイオード51,52から届く光の多くを下方へと全反射する。これも防眩のためである。ただ、照明部5の素材が透明なので、照明部5の内部がこんもりと明るく見える。
【0026】
支柱部2と把手部3との境界部に、ベルト6を介して手持ち用のストラップ7が取付けられる。そして、支柱部2におけるベルト6の近傍に、発光ダイオード51のオンとオフを指定するための押釦操作式の点灯/消灯スイッチ11、後述する電池の充電状態を報知する発光体たとえば発光ダイオード12、およびプラグ挿入型の充電用端子(DCジャックともいう)13が軸方向に並んで配置される。点灯/消灯スイッチ11は、押圧ごとにオンとオフを繰返すもので、押釦式に限らず、オルタネート型のスライドスイッチでもよい。充電用端子13には、杖本体1の付属品として用意されている充電器(ACアダプタともいう)の充電プラグが挿入接続される。充電器は、商用交流電源の電圧を充電用の所定レベルの直流電圧に変換して出力する。
【0027】
このような構成の杖本体1において、発光ダイオード51,52を駆動制御するための制御回路が支柱部2に収容される。この制御回路を図4に示す。
【0028】
充電用端子13に、保護回路21を介して充電制御回路22が接続される。保護回路21は、充電用端子13からの入力電圧に対して過電圧保護、低電圧保護、逆接保護などを行うもので、電流ヒューズ61、逆接続保護回路62、過電圧保護回路63、ロードスイッチ回路64を有する。家庭内に多数の充電用ACアダプタが存在することが一般化している現状では、当該照明付き杖に付属のもの以外が使用されること可能性があることに対処し、これら過電圧保護、低電圧保護、逆接保護を採用している。
【0029】
電流ヒューズ61は、負荷側の故障によって過大電流が流れた場合に通電路を遮断する。逆接続保護回路62は、電圧の極性(正極と負極の関係)が杖本体1に付属の充電器とは異なるタイプの様々な充電用ACアダプタが流通していることに対処したもので、杖本体1に付属の充電器とは異なる極性の入力電圧があった場合にそれを逆接続として検出する。過電圧保護回路63は、定格電圧より高い入力電圧を過電圧として検出する。ロードスイッチ回路64は、逆接続保護回路62が逆接続を検出した場合、および逆接続保護回路62が過電圧を検出した場合に、後段の充電制御回路22に対する通電路を遮断する。
【0030】
充電制御回路22は、充電用端子13から保護回路21を介して入力される直流電圧を定電流定電圧(CCCV)方式により1セルの充電式のリチウムイオン電池23に充電するとともに、その充電状態を付属の上記発光ダイオード12によって報知する。発光ダイオード12は、例えば赤色の光を発するもので、リチウムイオン電池23に充電電圧が供給されている場合に点灯する。
【0031】
リチウムイオン電池23は、発光ダイオード51,52を駆動するための直流電圧(駆動用電力)Eを出力する。このリチウムイオン電池23の正側端子と負側端子との間に駆動制御部24が接続され、その駆動制御部24に発光ダイオード51,52が接続される。リチウムイオン電池23は、過充電保護、過放電保護、過電流保護、異常高温保護などの各種保護回路及びリリースベントを有し、保護回路21の機能が失われた場合であっても、異常高温、膨張、破裂、爆発、発火から回避できる。
【0032】
駆動制御部24は、リチウムイオン電池23の電圧Eにより発光ダイオード51,52を駆動制御するもので、演算手段としてマイクロプロセッサ70を有するとともに、負荷切断回路71、電流ヒューズ72、基準電圧IC73、ロードスイッチ回路74、主LED駆動回路75、補助LED駆動回路76を有する。
【0033】
負荷切断回路71は、充電用端子13に対する充電プラグの挿入接続を充電用端子13の第3接点の出力に基づいて検知し、充電プラグの非挿入接続時はリチウムイオン電池23から当該駆動制御部24への通電路を形成するが、充電プラグの挿入接続時はリチウムイオン電池23から当該駆動制御部24への通電路を遮断する。電流ヒューズ72は、負荷側の故障によって過大電流が流れた場合に通電路を遮断する。
【0034】
基準電圧IC73は、リチウムイオン電池23の電圧Eを入力とし、その入力電圧Eより低い値の基準電圧Erefを出力する低消費電力型の基準電圧源である。リチウムイオン電池23の電圧Eの変動範囲は、例えば+4.2V〜+2.72Vである。すなわち、基準電圧IC73は、電池電圧Eの変動範囲の下限値+2.72Vより低い例えば+2.5Vの基準電圧Erefを精度よく維持して出力する半導体集積回路であり、上限が2mA程度の微弱電流を出力するもので、一般的な電圧変換回路であるDC-DCコンバータや三端子レギュレータとは異なる。DC-DCコンバータの場合、変換効率を良くしようとするとコストの上昇や実装面積の拡大を招いてしまう。三端子レギュレータは、入力電圧を降圧して出力するもので、降圧分が単純に熱変換してしまうため効率が悪く、電力を無駄に消費してしまう。これらDC-DCコンバータや三端子レギュレータに比べ、基準電圧IC73は、低コスト、小形で省スペース、しかも消費電力が小さくてリチウムイオン電池23に負担をかけないという特徴を持つ。
【0035】
ロードスイッチ回路74は、リチウムイオン電池23から負荷切断回路71および電流ヒューズ72を経て主LED駆動回路75および補助LED駆動回路76に至る通電路に介在し、その通電路をマイクロプロセッサ70からの指令に応じて開閉する。
【0036】
主LED駆動回路75は、ロードスイッチ回路74を介して入力される電池電圧Eにより、かつマイクロプロセッサ70からの指令に応じて、発光ダイオード51を駆動する。補助LED駆動回路76は、ロードスイッチ回路74を介して入力される電池電圧Eにより、かつマイクロプロセッサ70からの指令に応じて、発光ダイオード52を駆動する。
【0037】
マイクロプロセッサ70およびその周辺部の構成を図5に示す。
すなわち、負荷切断回路71および電流ヒューズ72を経た電池電圧Eが、マイクロプロセッサ70および基準電圧IC73のそれぞれ電源端子に印加されるとともに、抵抗器R1,R2の直列回路に印加される。そして、マイクロプロセッサ70の基準電圧端子に、基準電圧IC73の基準電圧Erefが入力される。
【0038】
抵抗器R1,R2の直列回路は、電池電圧Eを抵抗分割により分圧して出力する分圧器(分圧手段)であり、抵抗器R2に生じる電圧Edを出力する。この出力電圧Edがマイクロプロセッサ70の監視電圧端子に入力される。とくに、抵抗器R1,R2については、リチウムイオン電池23の電圧変動に伴う出力電圧Edの最大値Edmaxが基準電圧Erefと同じ値となるように分圧比が設定されている。
【0039】
マイクロプロセッサ70は、主要な機能として次の(1)〜(6)の手段を有する。
(1)分圧器からの入力電圧Edを基準電圧Erefに基づいてアナログ/ディジタル(A/D)変換するアナログ/ディジタル変換手段。
【0040】
(2)アナログ/ディジタル変換により得た値をリチウムイオン電池23の電圧変動の最大値Emaxと基準電圧Erefの値との比“Emax/Eref”で補正する補正手段。リチウムイオン電池23の電圧Eの変動範囲は上記したように例えば+4.2V〜+2.72Vであり、その+4.2Vにマージンを持たせた+4.5Vを最大値Emax(定数)として定義し、+2.72Vにマージンを持たせた+2.7Vを最小値Emin(定数)として定義している。
【0041】
(3)点灯/消灯スイッチ11のオン時、上記補正により得られる値をリチウムイオン電池23の電圧Eの値(リチウムイオン電池23の残量)として捕らえる検出手段。
【0042】
(4)上記捕えた電池電圧Eの値が設定値E1以上の場合、リチウムイオン電池23の残量が十分であるとの判断の下に、主灯である発光ダイオード51を定格電流でオンし、補助灯である発光ダイオード52をオフする第1制御手段。
【0043】
(5)上記捕えた電池電圧Eの値が設定値E1未満の場合、リチウムイオン電池23の残量が不足気味であるとの判断の下に、その旨を発光ダイオード51,52の所定の発光パターンにより報知する。具体的には、発光ダイオード51を断続的にオンし、その発光ダイオード51のオフ時のみ発光ダイオード52をオンする。なお、発光ダイオード51,52の動作電流のうち、少なくとも発光ダイオード51のオン時の動作電流については、消費電力の低減のため、定格電流より小さい値に設定する。
【0044】
(6)上記捕らえた電池電圧Eの値が所定値E2(>設定値E1)未満の場合に、その旨を発光ダイオード52の所定の発光パターンにより所定時間だけ報知する第3制御手段。
【0045】
つぎに、駆動制御部24が実行する制御を図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
点灯/消灯スイッチ11のオン時(ステップ101のYES)、駆動制御部24は、リチウムイオン電池23の電圧Eをリチウムイオン電池23の残量として検出する(ステップ102)。続いて、駆動制御部24は、検出電圧Eが設定値E1(例えば3.4V)以上であるか否かを判定する(ステップ103)。検出電圧Eが設定値E1以上の場合、駆動制御部24は、リチウムイオン電池23の残量が照明に十分な例えば40%以上であるとの判断の下に、検出電圧Eが所定値E2(>設定値E1)未満であるか否かを判定する(ステップ104)。
【0047】
検出電圧Eと所定値E2未満の場合(ステップ104のYES)、駆動制御部24は、リチウムイオン電池23の残量が50%未満であるとの判断の下に、タイムカウントtを開始する(ステップ105)。続いて、駆動制御部24は、主灯である白色または昼光色の発光ダイオード51をオン(点灯)し、これにより支柱部2の周りの足元を照明するとともに、補助灯である青色乃至緑色の発光ダイオード52を断続的にオンし、これによりリチウムイオン電池23の残量が半分であることを報知する(ステップ106)。発光ダイオード52の断続的なオンは、例えば1秒間のオンと例えば5秒間のオフの繰返しである。
【0048】
点灯/消灯スイッチ11のオン時に青色乃至緑色の発光ダイオード52が点滅することにより、使用者は、内蔵のリチウムイオン電池23の残量が50%未満に減っていて、そろそろ充電が必要であることを的確に認識する。
【0049】
タイムカウントtが一定時間ts例えば5秒間に達したとき(ステップ107のYES)、駆動制御部24は、タイムカウントtをクリアするとともに(ステップ108)、発光ダイオード52の断続的なオンを停止して発光ダイオード51のオン(点灯)のみを継続する(ステップ109)。つまり、リチウムイオン電池23の残量が半分に減ったことの報知が終了し、白色または昼光色の光による足元の照明が継続する。
【0050】
ステップ104の判定において、検出電圧Eが所定値E2未満でない場合(ステップ104のNO)、駆動制御部24は、リチウムイオン電池23の残量が50%以上であるとの判断の下に、発光ダイオード52を点滅することなく、発光ダイオード51をオン(点灯)して支柱部2の周りの足元を照明する(ステップ109)。
【0051】
ところで、ステップ103の判定において、検出電圧Eが設定値E1未満の場合(ステップ103のNO)、駆動制御部24は、リチウムイオン電池23の残量が不足気味であるとの判断の下に、その旨を発光ダイオード51,52の所定の発光パターンにより報知する(ステップ110)。すなわち、駆動制御部24は、図7のタイムチャートに示すように、発光ダイオード51を断続的にオンし、その発光ダイオード51のオフ時のみ発光ダイオード52をオンする。つまり、発光ダイオード51,52を交互にオンする。発光ダイオード51のオン期間t1として例えば5秒間を設定し、発光ダイオード51のオフ期間t2として例えば0.5秒間を設定する。
【0052】
発光ダイオード51と発光ダイオード52が交互に点灯することにより、使用者は、内蔵のリチウムイオン電池23の残量が照明に不十分な状態にあることを的確に認識できる。これを認識した使用者は、すぐに帰宅するなどして充電器の充電プラグを充電用端子13に挿入接続し、電池切れとなる前にリチウムイオン電池23を充電することができる。あるいは、すぐに点灯/消灯スイッチ11をオフして電池切れを防ぐなどの適切な処置をとることができる。
【0053】
また、発光ダイオード51の断続的なオンに際し、駆動制御部24は、消費電力の低減ひいてはリチウムイオン電池23を長持ちさせるため、発光ダイオード51のオン時の動作電流をその発光ダイオード51の定格電流より小さい電流たとえば定格電流の半分に設定する。補助灯である発光ダイオード52のオン時の動作電流については、定格電流でも、定格電流より小さい値でも、どちらでもよい。仮に、補助灯である発光ダイオード52の電流容量が主灯である発光ダイオード51の電流容量よりも小さい場合には、消費電力のことよりも報知の確実性を確保するべく、発光ダイオード52の動作電流を定格電流とする。
【0054】
点灯/消灯スイッチ11がオフされた場合(ステップ101のNO)、駆動制御部24は、発光ダイオード51,52を共にオフ(消灯)する(ステップ111)。
【0055】
以上のように、照明部5から光を発することにより、歩行者の存在を周囲の人に的確に知らせることができる。歩行者が転倒した場合は、それを周囲の人に迅速に気づかせることができる。とくに、リチウムイオン電池23の残量が不足気味となった場合はその旨を照明用の主灯である発光ダイオード51そのものを用いた発光パターンの変化によって報知するので、照明された足元に視線を向けて歩く使用者に対し、照明の変化つまり残量不足を容易かつ迅速に気づかせることができる。
【0056】
発光ダイオード51のオン期間t1である5秒間、発光ダイオード51のオフ期間t2である0.5秒間は、点灯時間を使用者にできるだけ長く感じさせつつ、消灯時間の存在を使用者に確実に認識させることが可能な時間配分である。消灯の存在が照明機能の低下とならない。逆に、2〜3秒ごとの速い点滅は見る者に不快感を与える可能性があるので、そのような速い点滅は採用しない。
発光ダイオード51のオフ期間t2では通常の照明の色とは異なる色の発光ダイオード52がオンするので、単に発光ダイオード51をオフだけの場合よりも、残量不足の注意の喚起が増強される。しかも、発光ダイオード51,52のいずれか一方が必ず点灯した状態となるので、照明作用そのものは途切れずに継続する。
【0057】
なお、マイクロプロセッサ70は、点灯/消灯スイッチ11のオフ時、スリープモードとなって待機電力を削減する。これにより、リチウムイオン電池23の電力消費ができるだけ低減される。
【0058】
[マイクロプロセッサ70およびその周辺部について]
図5において、マイクロプロセッサ70は、動作可能電源電圧範囲が+5.5V〜+2.0V、内蔵A/D変換器は10bitである。
【0059】
基準電圧IC73の基準電圧Erefは、電池電圧Eの変動範囲の最小値Eminよりも低い値でなければならない。例えば、電池電圧Eの変動範囲が+4.2V〜+2.72Vである場合、その変動範囲の最小値Eminである+2.72Vよりも低い+2.5Vを基準電圧Erefとして定めている。
【0060】
抵抗器R1,R2の直列回路からなる分圧器の出力電圧Edの最大値Edmaxは、基準電圧IC73の基準電圧Erefと等しくなければならない。アナログ/ディジタル変換すべき電圧Edmaxの最大値は、基準電圧Erefと等しいとき、最大ディジタル値となるからである。この条件を満たすべく、抵抗器R1,R2による分圧比を選定している。
【0061】
電池電圧E、その電池電圧Eの変動範囲の最大値Emax、基準電圧Eref、電圧Edには、次の関係が成り立つ。
Emax:Eref=E:Ed
Eref・E=Emax・Ed
E=(Emax/Eref)・Ed
最大値Emaxを+4.5Vと定義しているので、最大値Emaxと基準電圧Erefの値との比“Emax/Eref”=+4.5V/+2.5V=1.8となる。この1.8が定数として内部メモリに記憶されている。この定数を用いることにより、E=1.8・Edとなる。
【0062】
したがって、分圧器からの入力電圧Edを基準電圧Erefに基づいてアナログ/ディジタル(A/D)変換し、このアナログ/ディジタル変換により得た値を最大値Emaxと基準電圧Erefの値との比“Emax/Eref=1.8”で補正することにより、電池電圧Eの値を捕らえることができる。
【0063】
具体的には、マイクロプロセッサ70の内蔵A/D変換器のディジタル変換後のデータのbit数が、10bitであるとする。この場合のA/D変換器の分解能は、2^10=1024となる。
【0064】
電池電圧Eの最大値Emax=4.5Vであるので、A/D変換後のディジタル値の10進数表記での値は、1023(d)である。
【0065】
電池電圧EとA/D変換器への入力電圧Edは、比例する。
【0066】
このことから、判定値として見つけたい電池電圧Eが例えば3.8Vの時のA/D変換後のディジタル値Exは、次の単純な比例式から、
4.5V:1023(d)=3.8V:Ex
Ex=863(d)となる。
【0067】
比例式計算からの少数点以下の値を持つ正の実数となるが、小数点以下を切り上げて正の整数でまるめ処理する。
【0068】
特別に高精度を要しないアプリケーションでは、浮動少数点での計算を必要としない。つまり、低価格であるローエンドマイクロプロセッサでも実用的な、電池電圧Eを求めることが可能である。また、変換後のディジタル値Exから、容易に電池電圧Eは、上記関係式から求めることができる。
【0069】
以上のように、マイクロプロセッサ70、基準電圧IC73、抵抗器R1,R2の直列回路からなる分圧器を用いて電池電圧Eを検出することにより、電圧変動が生じるリチウムイオン電池23を動作用電源として備える照明付き杖であっても、リチウムイオン電池23の電圧Eをそのリチウムイオン電池23の電力をできるだけ消費することなく精度よく検出できる。
【0070】
なお、高精度を必要とする電池電圧あるいは周辺アナログ値の計測には、外付け基準電圧源の精度が影響し、外付け分圧抵抗の精度が影響し、内臓基準電圧源を使う場合にはその精度が影響する。したがって、(生産)冶具を構築して、電池電圧に相当する数点の電圧をマイクロプロセッサに与え、その時のA/D変換器の変換値を冶具で取得し、正しい値とのずれを補正するテーブルをマイクロプロセッサの不揮発メモリに蓄え、この変換テーブルから補正・精度向上を図ることができる。
【0071】
一方、抵抗器R1,R2による分圧比の選定に際し、抵抗器R1,R2の抵抗値をr1、r2とすると、E=1.8・Edの派生式としてEd=(1/1.8)・Eが得られる。そして、Ed=[r2/(r1+r2)]・Eの条件から、r2/(r1+r2)=1/1.8が得られる。
【0072】
これから、r2=r1/0.8の条件を満たす抵抗値を選定できる。加えて、信号源の出力抵抗は10kΩ程度がマイクロプロセッサ仕様から要求されていることから、r1=5.1kΩ、r2=6.375kΩと決定する。尚、6.375kΩのE-96系列抵抗で近い値として、6.34kΩと決定する。
【0073】
マイクロプロセッサの中には、内蔵基準電圧源を搭載したものがある。この場合、基準電圧IC73の代わりに、内蔵基準電圧源の出力電圧を基準電圧Erefとして用いることにより、電池電圧Eの値を捕らえることが可能である。この場合、基準電圧精度に注意が必要であるが、外部基準電圧回路が不要となるので、コストをより低減できる。
【0074】
[マイクロプロセッサ70による発光ダイオード点滅状態移行時の点滅乱れ防止について]
電池電圧Eの残量低下が一旦検出されて発光ダイオード51,52が連続点灯状態から点滅状態に移行したとき、その点滅に伴って電池電圧Eが僅かに上昇と下降を繰り返し、その電圧変動の影響で残量低下の検出と非検出が交互に繰返されるいわゆるチャタリングを生じることがある。このチャタリングを防ぐべく、電池電圧Eの値が例えば0.2秒毎に10回連続して設定値E1未満となった場合に、それを残量低下として検出する。
【0075】
リチウムイオン電池23の電圧Eが設定値E1未満の所定値まで過放電した場合には、2つの発光ダイオード51,52を互いに同じタイミングでオン,オフする。この場合、オンとオフの切換時の電圧変動幅が大きめとなるので、発光ダイオード51,52がオフからオンに立ち上がる瞬間の約0.5秒間に取得した検出電圧値は無効化する。これにより、過放電判定の誤動作を防止する。
【0076】
[プリント回路基板および部品について]
図4の制御回路は、図8に示すプリント回路基板30に搭載される。プリント回路基板30は、支柱部2の軸方向に沿って延びる細長形状を有し、支柱部2の端部の開口から挿入されて支柱部2内の上部に固定される。
プリント回路基板30は、主に実装高さの高い部品が配置される一方面(実装面ともいう)30a、および主に実装高さの低い部品が配置される他方面(半田面ともいう)30bを有する。また、プリント回路基板30は、矩形形状の開口31を幅方向中央部に有する。開口31は、一方面30a側から他方面30b側へ臨む状態にリチウムイオン電池23の周面の一部を受けて同リチウムイオン電池23を保持する。
【0077】
一方面30aに配置される部品は、その一方面30aから他方面30bへ脚が貫通する挿入型実装部品(DIP;Dual Inline Package)である。すなわち、一方面30aの一端と開口31との間の領域に、挿入型実装部品である点灯/消灯スイッチ11、発光ダイオード12、充電用端子13、基板側コネクタ32が取付けられる。充電用端子13の取付け位置には、充電用端子13の一部が嵌合する開口36が形成されている。プリント回路基板30が支柱部2に挿入されて支柱部2内の上部に固定されるのに伴い、点灯/消灯スイッチ11、発光ダイオード12、および充電用端子13が支柱部2に予め形成されている開口を介して支柱部2の外面側に露出する。
【0078】
他方面30bに配置される部品は、他方面30bに脚が載るライトアングルコネクタ、コイル、ICチップ等の表面実装部品(SMD;Surface Mount Device)である。これら表面実装部品のうち、比較的に背の高い部品は、円筒状の支柱部2へ納める際にぶつからないよう、支柱部2の径方向における中央側に寄った位置に取付けられる。
【0079】
リチウムイオン電池23は、支柱部2の軸方向に沿って延びる筒形である。また、リチウムイオン電池23は、軸方向端部から導出されたリード線34、およびそのリード線34の先端に取付けられた電池側コネクタ33を備える。リチウムイオン電池23が開口31にセットされた状態で、電池側コネクタ33が基板側コネクタ32に挿入接続される。
【0080】
[変形例]
上記実施形態では、照明付き杖のリチウムイオン電池23の電圧監視を例に説明したが、電圧変動が生じる電池を搭載した機器であれば、照明付き杖に限らず、他の機器にも同様に実施可能である。電池についても、リチウムイオン電池に限らず、種々の電池への対応が可能である。
【0081】
上記実施形態では、押圧ごとにオンとオフを繰返す押釦式の点灯/消灯スイッチ11を用いたが、押圧時のみみ導通するモーメンタリー型の点灯/消灯スイッチ11を用いてもよい。モーメンタリー型の場合には、チャタリング防止ソフト制御を行えば、スイッチ回路自体にチャタリング防止回路を設ける必要が無く部品点数を減らすことが可能である。この場合には、ソフトウェアでは、一般的に接点が接続した瞬間と離れた瞬間のチャタリング期間を除去つまり無視し、且つ1秒乃至2秒程度のスイッチ押下(つまり導通)時間が必要となるので、長押し操作となる。
【0082】
また、上記実施形態では、マイクロプロセッサを有する制御回路について説明したが、図9に示すように、マイクロプロセッサを持たない構成の制御回路を用いてもよい。
【0083】
この場合、保護回路21は、電流ヒューズ61、逆接続保護回路62、過電圧保護回路63、ロードスイッチ回路64のほかに、低電圧ロックアウト回路65を有する。電流ヒューズ61、逆接続保護回路62、過電圧保護回路63については、上記実施形態と同じものなので、その説明は省略する。低電圧ロックアウト回路65は、入力電圧が定格電圧を下回る異常を検出するとともに、異常充電動作を検出する。ロードスイッチ回路64は、逆接続保護回路62が逆接続を検出した場合、逆接続保護回路62が過電圧を検出した場合、低電圧ロックアウト回路65が異常を検出した場合に、後段の充電制御回路22に対する通電路を遮断する。
【0084】
点灯/消灯スイッチ11は、駆動制御部24における負荷切断回路71と電流ヒューズ72との間の通電路に挿入接続される。駆動制御部24は、負荷切断回路71、電流ヒューズ72、主LED駆動回路75、補助LED駆動回路76のほかに、基準電圧IC91、過放電検知用比較回路92、ロードスイッチ回路93、基準電圧IC94、電池残量減検知用比較回路95、ラッチ回路96、リセットIC97、LED点滅タイミング生成回路98、減光制御回路99を有する。負荷切断回路71、電流ヒューズ72、主LED駆動回路75、補助LED駆動回路76については、上記実施形態と同じものなので、その説明は省略する。
【0085】
基準電圧IC91は、設定値E1未満の所定値に対応する過放電検知用の基準電圧を出力する。過放電検知用比較回路92は、電池電圧Eと基準電圧IC91からの基準電圧とを比較し、電池電圧Eが基準電圧未満の場合にリチウムイオン電池23が過放電であると判定する。ロードスイッチ回路93は、過放電検知用比較回路92が過放電を判定した場合に、後段への通電を遮断する。
【0086】
基準電圧IC94は、設定値E1に対応する残量減検知用の基準電圧を出力する。電池残量減検知用比較回路95は、電池電圧Eと基準電圧IC94からの基準電圧とを比較し、電池電圧Eが基準電圧未満の場合にリチウムイオン電池23が残量不足であると判定する。ラッチ回路96は、電池残量減検知用比較回路95が残量不足を判定した場合に、その判定結果を保持する。リセットIC97は、点灯/消灯スイッチ11のオンによる通電開始時(点灯初期時)にラッチ回路96の内容をリセットして初期化する。
【0087】
LED点滅タイミング生成回路98は、ラッチ回路96が残量不足の判定結果を保持している場合に、発光ダイオード51,52をオン,オフするためのオン,オフ指令信号を出力する。減光制御回路99は、ラッチ回路96が残量不足の判定結果を保持している場合に、主灯である発光ダイオード51の発光量を半分程度に減光させるための指令信号を出力する。
【0088】
電池電圧Eの残量低下が一旦検出されて発光ダイオード51,52が連続点灯状態から点滅状態に移行したとき、その点滅に伴って電池電圧Eが僅かに上昇と下降を繰り返し、その電圧変動の影響で残量低下の検出と非検出が交互に繰返されるいわゆるチャタリングを生じることがある。このチャタリングを防ぐべく、ラッチ回路96を採用している。
【0089】
その他、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1…杖本体、2…支柱部、3…把手部、4…石突き部、5…照明部、8…プリント回路基板、11…点灯/消灯スイッチ、12…発光ダイオード(発光体)、13…充電用端子、21…保護回路、22…充電制御回路、23…リチウムイオン電池、24…駆動制御部、70…マイクロプロセッサ(演算手段)、73…基準電圧IC、R1,R2…抵抗器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9