(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエチレン樹脂を含む鞘部及び該ポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分を含む芯部を有し、表面に親水化剤の付着した芯鞘型複合繊維を含む構成繊維の交点が熱融着した熱融着部を備える吸収性物品用の不織布であって、
前記芯鞘型複合繊維は、加熱によってその長さが伸びる熱伸長性複合繊維を含み、
前記親水化剤は、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が20を超える多価アルコール脂肪酸エステルを、該親水化剤の全質量に対して20質量%以下の割合で含み、
前記不織布の厚み方向及び平面方向の少なくとも何れか一方向に親水度勾配を有している吸収性物品用の不織布。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の不織布を、その好ましい実施形態に基づき説明する。 本実施形態の不織布は、ポリエチレン樹脂を含む鞘部及び該ポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分を含む芯部を有し、表面に親水化剤の付着した芯鞘型複合繊維を含む構成繊維の交点が熱融着した熱融着部を備える不織布である。
熱融着性の芯鞘型複合繊維は、同芯タイプの芯鞘型でも偏芯タイプの芯鞘型でも、サイド・バイ・サイド型でも良く、同芯タイプの芯鞘型であることが好ましい。
【0012】
熱融着性の芯鞘型複合繊維としては、例えば、特開2010−168715号公報に記載の「ポリエチレン樹脂を含む鞘部及び該ポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分からなる芯部を有する芯鞘型複合繊維(以下、この繊維を芯鞘型複合繊維Pという)」が挙げられる。芯鞘型複合繊維Pの鞘部を構成するポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられ、密度が0.935〜0.965g/cm
3である高密度ポリエチレンであることが好ましい。芯鞘型複合繊維Pの鞘部を構成する樹脂成分は、ポリエチレン樹脂単独であることが好ましいが、他の樹脂をブレンドすることもできる。ブレンドする他の樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。但し、鞘部を構成する樹脂成分は、鞘部の樹脂成分中の50質量%以上が、特に70〜100質量%がポリエチレン樹脂であることが好ましい。また、芯鞘型複合繊維Pの鞘部を構成するポリエチレン樹脂は、結晶子サイズが100〜200Åであることが好ましく、115〜180Åであることがより好ましい。
【0013】
芯鞘型複合繊維Pの鞘部は、熱融着性の芯鞘型複合繊維に熱融着性を付与するとともに、熱処理時に、前述した親水化剤を内部に取り込む役割を担う。他方、芯部は、熱融着性の芯鞘型複合繊維に強度を付与する部分である。芯鞘型複合繊維Pの芯部を構成する樹脂成分としては、鞘部の構成樹脂であるポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分を特に制限なく用いることができる。芯部を構成する樹脂成分としては、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂を除く)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂等が挙げられる。更に、ポリアミド系重合体や前述した樹脂成分の2種以上の共重合体なども使用することができる。複数種類の樹脂をブレンドして使用することもでき、その場合、芯部の融点は、融点が最も高い樹脂の融点とする。
親水化剤を付着させる熱融着性の芯鞘型複合繊維は、芯部を構成する樹脂成分の融点と鞘部を構成する樹脂成分との融点の差(前者−後者)は、20℃以上であることが、不織布の製造が容易となることから好ましく、また150℃以内であることが好ましい。芯部を構成する樹脂成分が複数種類の樹脂のブレンドである場合の融点は、融点が最も高い樹脂の融点とする。
【0014】
親水化剤を付着させる熱融着性の芯鞘型複合繊維は、加熱によってその長さが伸びる熱伸長性複合繊維を含んでいる。ここで、「加熱によってその長さが伸びる熱伸長性複合繊維」とは、加熱によって更に長さが伸びるものに限られず、不織布の状態では、加熱によって既にその長さが伸びた状態となっているものを含む意味である。熱伸長性複合繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して自発的に伸びる繊維が挙げられる。熱伸長性複合繊維は、不織布中において、加熱によってその長さが伸長した状態、及び/又は、加熱によって伸長可能な状態で存在している。熱伸長性複合繊維は、加熱時に、表面の親水化剤が内部に取り込まれやすく、繊維やそれを用いて製造した不織布等に、加熱処理によって親水度の大きく異なる複数の部分を形成し易くなる。
【0015】
好ましい熱伸長性複合繊維は、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する、ポリエチレン樹脂を含む第2樹脂成分とを有しており、第1樹脂成分は、第2樹脂成分より高い融点を有している。第1樹脂成分は該繊維の熱伸長性を発現する成分であり、第2樹脂成分は熱融着性を発現する成分である。
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の融点は、示差走査型熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC6200)を用い、細かく裁断した繊維試料(サンプル重量2mg)の熱分析を昇温速度10℃/minで行い、各樹脂の融解ピーク温度を測定し、その融解ピーク温度で定義される。第2樹脂成分の融点がこの方法で明確に測定できない場合、その樹脂を「融点を持たない樹脂」と定義する。この場合、第2樹脂成分の分子の流動が始まる温度として、繊維の融着点強度が計測できる程度に第2樹脂成分が融着する温度を軟化点とし、これを融点の代わりに用いる。
【0016】
熱伸長性複合繊維における第1樹脂成分の好ましい配向指数は、用いる樹脂により自ずと異なるが、例えばポリプロピレン樹脂の場合は、配向指数が60%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下であり、更に好ましくは25%以下である。第1樹脂成分がポリエステルの場合は、配向指数が25%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下であり、更に好ましくは10%以下である。一方、第2樹脂成分は、その配向指数が5%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上であり、更に好ましくは30%以上である。配向指数は、繊維を構成する樹脂の高分子鎖の配向の程度の指標となるものである。そして、第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数がそれぞれ前記の値であることによって、熱伸長性複合繊維は、加熱によって伸長するようになる。
【0017】
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数は、特開2010−168715号公報の段落〔0027〕〜〔0029〕に記載の方法によって求められる。また、熱伸長性複合繊維における各樹脂成分が前記のような配向指数を達成する方法は、特開2010−168715号公報の段落〔0033〕〜〔0036〕に記載されている。
【0018】
熱伸長性複合繊維は、第1樹脂成分の融点よりも低い温度において熱によって伸長可能になっている。そして熱伸長性複合繊維は、第2樹脂成分の融点(融点を持たない樹脂の場合は軟化点)より10℃高い温度での熱伸長率が0.5〜20%であることが好ましく、より好ましくは3.0〜20%、更に好ましくは5.0〜20%である。このような熱伸長率の繊維を含む不織布は、該繊維の伸長によって嵩高くなり、あるいは立体的な外観を呈する。繊維の熱伸長率は、特開2010−168715号公報の段落〔0031〕〜〔0032〕に記載の方法によって求められる。
【0019】
熱伸長性複合繊維における第1樹脂成分と第2樹脂成分との比率(質量比)は10:90〜90:10%、特に20:80〜80:20%、とりわけ50:50〜70:30%であることが好ましい。熱伸長性複合繊維の繊維長は、不織布の製造方法に応じて適切な長さのものが用いられる。不織布を例えば後述するようにカード法で製造する場合には、繊維長を30〜70mm程度とすることが好ましい。
【0020】
熱伸長性複合繊維の繊維径は、不織布の具体的な用途に応じ適切に選択される。不織布を吸収性物品の表面シート等の吸収性物品の構成部材として用いる場合には、10〜35μm、特に15〜30μmのものを用いることが好ましい。
次に述べる熱融着繊維の繊維径についても同様である。なお、前記の繊維径とは不織布を実際に使用するときの繊維径のことであり、熱伸長性複合繊維の場合には、伸長によってその繊維径が小さくなった時の繊維径を指す。
【0021】
熱伸長性複合繊維としては、上述の熱伸長性複合繊維のほかに、特許第4131852号公報、特開2005−350836号公報、特開2007−303035号公報、特開2007−204899号公報、特開2007−204901号公報及び特開2007−204902号公報等に記載の繊維を用いることもできる。
【0022】
本実施形態の不織布を構成する構成繊維は、熱融着性の前記芯鞘型複合繊維の他に、非熱伸長性繊維、熱収縮繊維、立体捲縮繊維、潜在捲縮繊維、中空繊維等の熱融着性繊維を含んで混綿されていてもよい。例えば、非熱伸長性繊維は、高融点成分と低融点成分とを含み、低融点成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して存在している二成分系の複合繊維である。複合繊維(非熱伸長性繊維)の形態には芯鞘型やサイド・バイ・サイド型などの様々な形態があり、いずれの形態であっても用いることが出来る。熱融着性の複合繊維は原料の段階で延伸処理が施されている。ここで言う延伸処理とは、延伸倍率2〜6倍程度の延伸操作のことである。熱伸長性複合繊維と非熱伸長性繊維との混合割合は、質量比で、前者:後者が1:9〜9:1が好ましく、より好ましくは4:6〜6:4の割合で混合することである。これにより熱風で不織布の嵩を回復させることがより容易になり、それぞれの繊維を単独で用いるよりも、肌触りとドライ性の良好な不織布とすることができる。
【0023】
繊維表面に付着させる親水化剤は、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が20を超える多価アルコール脂肪酸エステル(以下、「成分A」ともいう。)を、該親水化剤の全質量に対して20質量%以下の割合で含んでいる。ここで「付加モル数が20を超える」とは、該多価アルコール脂肪酸エステル1分子中での付加モル数の合計が20よりも大きいことを意味する。多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)は、加熱時により繊維に取り込まれやすく、繊維の親水度をより低下させる観点から、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が20を超えることが好ましく、該付加モル数が40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、取扱い等の観点から該付加モル数は、100以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましい。多価アルコール脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が8〜22であることが好ましい。
【0024】
多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)は、その主成分が、疎水鎖を大きくして疎水性を高めるときに、分子の形状を直線状に大きくするのでなく、3次元的に大きくすることで、繊維中へ取り込まれやすい形状にさせる観点から、3価以上のアルコールであり、その全てがエステル化されていることが好ましい。ここで、主成分とは、多価アルコール脂肪酸エステルの中で最も多い成分のことであり、50質量%以上含まれていることが好ましい。また、全てがエステル化されているとは、アルコール成分のエステル化率が90%以上であることを指す。3価のアルコールとしてはグリセリン、4価のアルコールとしてはエリスリトール、5価のアルコールとしてはキシリトール等が挙げられる。特に、多価アルコール脂肪酸エステルは、その主成分が、3価のアルコールであるグリセリン脂肪酸エステルであり、その全てがエステル化されていることが好ましい。
【0025】
ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が20を超えるグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が25のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(花王株式会社製の製品名「エマノーンCH−25」、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が40のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(花王株式会社製の製品名「エマノーンCH−40」、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が60のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(花王株式会社製の製品名「エマノーンCH−60(K)」等が挙げられる。
【0026】
多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)は、上述したように、親水化剤の全質量に対して含有量が20質量%以下であり、適度な親水度の領域で大きな親水度勾配を実現し、液残り量を最少にする観点から、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。尚、前記含有量の下限値としては、1質量%以上であることが好ましい。
【0027】
親水化剤は、多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)に加え、不織布への加工性を高め、加熱時に繊維への取り込まれやすさを高めることで、より効率的に繊維の親水度を低下させる観点から、アルキルリン酸エステル(以下、「成分B」ともいう。)、下記の一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤(以下、「成分C」ともいう。)を含んでいることが好ましい。
【化2】
(式中、Zはエステル基、アミド基、アミン基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を表わし、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数2〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わし、Xは―SO
3M、―OSO
3M又は―COOMを表わし、MはH、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表わす。)
【0028】
アルキルリン酸エステル(成分B)は、原綿のカード通過性やウエブの均一性などの特性を改良し、これによって不織布の生産性と品質低下を防止する目的として、親水化剤に配合される。
アルキルリン酸エステル(成分B)の具体例としては、ステアリルリン酸エステル、ミリスチルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル、パルミチルリン酸エステルなどの飽和の炭素鎖を持つものや、オレイルリン酸エステル、パルミトレイルリン酸エステルなどの不飽和の炭素鎖及び、これらの炭素鎖に側鎖を有するものが挙げられる。より好ましくは、炭素鎖が16〜18のモノ又はジアルキルリン酸エステルの完全中和または部分中和塩である。なお、アルキルリン酸エステルの塩としては、Naやカリウムなどのアルカリ金属、アンモニア、各種アミン類などが挙げられる。
また、アルキルリン酸エステル(成分B)は、一種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
アルキルリン酸エステル(成分B)は、親水化剤の全質量に対して含有量が、カード通過性やウエブの均一性などの観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、熱処理により多価アルコール脂肪酸エステルによる繊維の疎水化を妨げない観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下であり、具体的には、好ましくは5〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。
【0030】
下記の一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤(成分C)は、前記アルキルリン酸エステルは含まない成分を指す。また、アニオン界面活性剤(成分C)は、一種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【化3】
(式中、Zはエステル基、アミド基、アミン基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を表わし、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数2〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わし、Xは―SO
3M、―OSO
3M又は―COOMを表わし、MはH、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表わす。)
【0031】
一般式(1)中のXが―SO
3M、すなわち親水基がスルホン酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホン酸又はそれらの塩を挙げることができる。ジアルキルスルホン酸の具体例としては、ジオクタデシルスルホコハク酸、ジデシルスルホコハク酸、ジトリデシルスルホコハク酸、ジ2‐エチルヘキシルスルホコハク酸などの、ジアルキルスルホコハク酸、ジアルキルスルホグルタル酸などのジカルボン酸をエステル化し、ジエステルのアルファ位をスルホン化した化合物や、2-スルホテトラデカン酸 1-エチルエステル(またはアミド)ナトリウム塩や、2-スルホヘキサデカン酸 1-エチルエステル(またはアミド)ナトリウム塩などの飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸エステル(またはアミド)のα位をスルホン化したアルファスルホ脂肪酸アルキルエステル(またはアミド)や、炭化水素鎖の内部オレフィンや不飽和脂肪酸の内部オレフィンをスルホン化することで得られるジアルキルアルケンスルホン酸などを挙げることができる。ジアルキルスルホン酸の2鎖のアルキル基それぞれの炭素数は、4〜14個、特に、6〜10個であることが好ましい。
【0032】
親水基がスルホン酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、より具体的には下記のアニオン界面活性剤をあげることができる。
【0034】
一般式(1)中のXが―OSO
3M、すなわち親水基が硫酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、ジアルキル硫酸エステルを挙げることができ、その具体例としては、2‐エチルヘキシル硫酸ナトリウム塩や、2-ヘキシルデシル硫酸ナトリウム塩などの分岐鎖を有するアルコールを硫酸化した化合物や、硫酸ポリオキシエチレン2‐ヘキシルデシルや硫酸ポリオキシエチレン2−ヘキシルデシルなどの分岐鎖を有するアルコールと硫酸基の間にPOE鎖を導入したような化合物や、12‐サルフェートステアリン酸 1‐メチルエステル(またはアミド)3‐サルフェートへキサン酸 1-メチルエステル(またはアミド)などのヒドロキシ脂肪酸エステル(またはアミド)を硫酸化した化合物などを挙げることができる。
【0035】
親水基が硫酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、より具体的には下記のアニオン界面活性剤をあげることができる。
【0037】
一般式(1)中のXが―COOM、すなわち親水基がカルボン酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、ジアルキルカルボン酸を挙げることができ、その具体例としては、11‐エトキシヘプタデカンカルボン酸ナトリウム塩や2‐エトキシペンタカルボン酸ナトリウム塩などのヒドロキシ脂肪酸のヒドロキシ部分をアルコキシ化し、脂肪酸部分をナトリウム化した化合物や、サルコシンやグリシンなどのアミノ酸のアミノ基にアルコキシ化したヒドロキシ脂肪酸クロリドを反応させ、アミノ酸部のカルボン酸をナトリウム化させた化合物や、アルギニン酸のアミノ基に脂肪酸クロリドを反応させて得られる化合物などを挙げることが出来る。
【0038】
親水基がカルボン酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、より具体的には下記のアニオン界面活性剤をあげることができる。
【化7】
【0039】
親水化剤として、一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤(成分C)と、前述した多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)が配合された親水化剤を用いることにより、親水化剤で処理された熱融着性の芯鞘型複合繊維は、熱処理により親水度が低下しやすい繊維となる。この理由は、多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)が、特に2鎖以上のアルキル鎖を有するアニオン界面活性剤の繊維内部への浸透を促進するため、繊維表面の親水度が熱処理によって低下しやすいからである。このことは、POEの付加モル数が20を超える多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)が、構造的には疎水基に比べて親水基が嵩高いために、親水基を外側に向けやすく、PE内部に入る際の浸透を妨げる要因となるが、親水基に対して疎水基が嵩高いアニオン界面活性剤(成分C)を配合することにより、アニオン界面活性剤が疎水基をPE側に向けた形で多価アルコール脂肪酸エステルの親水基を取り囲み、PEに対してより馴染みやすくなり、多価アルコール脂肪酸エステルの繊維内部への浸透を促進するためと推定される。
【0040】
一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤(成分C)は、熱処理による親水度の変化を大きくする観点から、親水化剤の全質量に対して含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、親水度が高くなりすぎると、液を持ち易くなりドライ性を損なう観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは13質量%以下であり、具体的には、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは5〜13質量%である。
【0041】
親水化剤における多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)と、前記一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤(成分C)との含有比率は、質量比で、好ましくは4:1〜1:4、より好ましくは2:1〜1:2である。
また、親水化剤における多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)と、アルキルリン酸エステル(成分B)との含有比率は、質量比で、好ましくは2:1〜1:5、より好ましくは1:1〜1:3である。
【0042】
本発明で用いる親水化剤は、上述した多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)、アルキルリン酸エステル(成分B)及び一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤(成分C)に加えて、他の成分を含んでいても良い。該他の成分としては、アニオン性、カチオン性、両性イオン性及びノニオン性の界面活性剤等を用いることができる。
【0043】
アニオン性の界面活性剤の例としては、アルキルホスフェートナトリウム塩、アルキルエーテルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホネートナトリウム塩、アルキルスルホネートナトリウム塩、アルキルサルフェートナトリウム塩、セカンダリーアルキルサルフェートナトリウム塩等が挙げられる(いずれのアルキルも炭素数6以上22以下、特に8以上22以下が好ましい)。これらは、ナトリウム塩に代えてカリウム塩等の他のアルカリ金属塩を用いることもできる。
【0044】
カチオン性の界面活性剤の例としては、アルキル(又はアルケニル)トリメチルアンモニウムハライド、ジアルキル(又はアルケニル)ジメチルアンモニウムハライド、アルキル(又はアルケニル)ピリジニウムハライド等が挙げられ、これらの化合物は、炭素数6以上18以下のアルキル基又はアルケニル基を有するものが好ましい。上記ハライド化合物におけるハロゲンとしては、塩素、臭素等が挙げられる。
【0045】
両性イオン性の界面活性剤の例としては、アルキル(炭素数1〜30)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)アミドアルキル(炭素数1〜4)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)ジヒドロキシアルキル(炭素数1〜30)ベタイン、スルフォベタイン型両性界面活性剤等のベタイン型両性イオン性界面活性剤や、アラニン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノプロピオン酸型、アルキル(炭素数1〜30)イミノジプロピオン酸型等]両性界面活性剤、アルキルベタイン等のグリシン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノ酢酸型等]両性界面活性剤などのアミノ酸型両性界面活性剤、アルキル(炭素数1〜30)タウリン型などのアミノスルホン酸型両性界面活性剤が挙げられる。
【0046】
本発明の親水化剤は、変性シリコーン等の膠着防止剤等の処理剤を添加してもよい。
【0047】
熱融着性の芯鞘型複合繊維は、親水化剤が付着していることによって、付着させる前に比して、繊維の表面の親水度が高められている。
親水化剤の付着量は、親水化剤を除く熱融着性の芯鞘型複合繊維の全質量に対する割合が、繊維の親水度を高める観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.1〜1.5質量%であり、より好ましくは0.2〜1.0質量%である。
【0048】
親水化剤を繊維の表面に付着させる方法としては、各種公知の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、スプレーによる塗布、スロットコーターによる塗布、ロール転写による塗布、親水性油剤への浸漬、等が挙げられる。これらの処理は、ウエブ化する前の繊維に対して行っても良いし、繊維を各種の方法でウエブ化した後に行っても良い。親水化剤が表面に付着した繊維は、例えば、熱風送風式の乾燥機により、エチレン樹脂の融点より十分に低い温度(例えば120℃以下)で乾燥される。
【0049】
本発明の不織布は、厚み方向及び平面方向の少なくとも何れか一方向に親水度勾配を有している。詳述すると、表面に親水化剤の付着した芯鞘型複合繊維は、ウエブ或いは不織布の構成繊維として用いられる。また、その製造したウエブ或いは不織布に、積層体の一部の層を構成させることもできる。そして、そのウエブ或いは不織布の製造工程や、ウエブ、不織布或いは積層体の製造後に熱処理することで、所望の部分の親水度を低下させることができる。親水度の低下は、ウエブ或いは不織布の全体の親水度を低下させても良いし、ウエブ或いは不織布の一部を低下させても良い。繊維の太さ(繊度)は、それを用いて製造する不織布の具体的な用途に応じて適切な範囲が選択されるが、柔軟で肌触り等の良い不織布を製造する観点からは、1.0〜10.0dtexが好ましく、2.0〜8.0dtexであることがより好ましい。
【0050】
このように、表面に親水化剤の付着した芯鞘型複合繊維を用いて製造したウエブ或いは不織布に、熱処理を施すことによって、親水度が相互に異なる複数の部分を有する、即ち厚み方向及び平面方向の少なくとも何れか一方向に親水度勾配を有する不織布が得られる。
【0051】
表面に親水化剤の付着した芯鞘型複合繊維は、不織布中から取り出した繊維に対する水の接触角が90度以下であることが好ましい。親水化剤により、表面の親水度をより高めた方が、繊維自体や、それを用いて製造した不織布等に、親水度が大きく異なる複数の領域を形成することが可能となる。同様の観点から、本発明の不織布中から取り出した熱融着性の芯鞘型複合繊維は、水に対する接触角が、好ましくは90度以下、より好ましくは85度以下であり、また、親水度が高すぎると液を持ちやすくなってしまうことから、好ましくは60度以上、より好ましくは65度以上である。また好ましくは65〜85度であり、より好ましくは70〜80度である。親水度が低いことは接触角の増大と同義である。
不織布中から取り出した繊維に対する水の接触角は次の方法で測定される。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角測定には、蒸留水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析や画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に、画像が録画される。録画された映像において、不織布中から取り出した繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維のなす角を算出し、接触角とする。
なお、測定用サンプル(不織布から取り出して得られる繊維)は、
図1(b)に示す凸部の頂部P1、凹部近傍部及び裏面(平坦面)P2における対応部位に位置する繊維を最表層から繊維長1mmで裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持し、該繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。前述の各部位において、N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を各々の接触角と定義する。
【0052】
図1(a)及び
図1(b)は、本発明の不織布の一実施形態である不織布10を示す図であり、表面に親水化剤の付着した芯鞘型複合繊維(熱伸長性複合繊維)を用いてウエブを形成した後、該ウエブの一部の親水度を低下させて得られたものである。前記芯鞘型複合繊維(熱伸長性複合繊維)からからウエブを得る方法としては、カード法、エアレイド法、スパンボンド法等の各種公知の方法を用いることができるが、
図2に示すように、カード機11を用いる方法(カード法)が好ましい。
図1(a)及び
図1(b)に示す不織布は、
図2に示すように、熱により親水度が低下する前記芯鞘型複合繊維(熱伸長性複合繊維)の短繊維集合体を原材料として、カード機11を用いてウエブ12を形成し、該ウエブ12を一対のロール14,15を備えたエンボス装置13に導入してエンボス加工を行い、エンボス加工後のウエブ16に、エアスルー方式による熱風処理装置17により熱処理を施して得られたものである。
エンボス加工に用いた一対のロールは、一方は、格子状パターンのエンボス用凸部が周面に形成されたエンボスロール14であり、他方は、平滑な周面を有し、該エンボスロールに対向配置されたフラットロール15である。エンボス加工は、ウエブを、エンボスロール14の凸部とフラットロール15の平滑な周面との間で加圧し圧縮することにより行う。これにより、エンボス加工により形成された厚みの薄い部分(エンボス部)18と、それ以外の厚みの厚い部分19とを有する不織布が得られる。
【0053】
本発明の不織布を製造する一実施態様においては、このようにして不織布10を製造するときのエンボス加工の際に、ウエブ12に加える温度を、熱融着性の芯鞘型複合繊維の前記鞘部を構成するポリエチレン樹脂の融点以下に抑えておき、それに続く、熱風処理時に、該ポリエチレン樹脂の融点以上で芯部の樹脂成分の融点以下の温度を加える。熱風処理時には、主として、エンボスにより圧密化された部分(エンボス部)は、熱風の通過量がほとんど無いか、あっても少なく、エンボス部以外の厚みの厚い部分ほど熱風が通過し易いため、親水度が低下する。
これにより、エンボス加工により形成された厚みの薄い部分18及び/又はその周辺部が親水部となり、それ以外の厚みの厚い部分19に近くなるに従い、相対的に疎水性になり、最も厚みの厚い部分近傍が極大の疎水性を示す部分となっている親水度勾配のある不織布が得られる。また、前記熱風処理により、エンボス部以外の部分の鞘部の溶融が進行し、繊維の交点が熱融着して、熱融着部を有する強度のある不織布が得られる。
【0054】
図1(a)及び
図1(b)に示す不織布10は、単層構造をしている。不織布10は、その片面が凹凸形状を有する凹凸面10bとなっており、他面が、平坦であるか又は前記凹凸面に比して凹凸の程度が小さい平坦面10aとなっている。
不織布10における厚みの厚い部分19と厚みの薄い部分18とは、不織布10の凹凸面10bに、凸部119と凹部118を形成している。凹部118は、互いに平行に延びる第1の線状凹部118aと、互いに平行に延びる第2の線状凹部118bとを有しており、第1の線状凹部118aと第2の線状凹部118bとが所定の角度をなして交差している。凸部119は、凹部118に囲まれた菱形状の閉鎖領域内に形成されている。
【0055】
厚みの厚い部分の頂部P1は、厚みの厚い部分19によって不織布の凹凸面10bに形成される凸部119の頂部P1である。厚みの厚い部分19の頂部P1に比して、厚みの薄い部分18又はその近傍部P3の親水度が高いことが、凹凸面10b側から液が入った場合に、平坦面10a側に液が抜けやすく、不織布10中の液残りが少なくなる点から好ましい。また、厚みの厚い部分19の頂部P1から厚みの薄い部分(エンボス部)18又はその近傍部P3に向かって漸次親水度が高くなっていることが好ましい。
【0056】
不織布10の凹凸面10bは、エンボス加工時にエンボスロール14側に向けられ、且つエア−スルー方式で熱風処理を行う際に、ネット面(通気性の支持体)とは反対側に向けられ、熱風を直接吹き付ける側の面である。従って、不織布の構成繊維に熱伸長性複合繊維を用いた場合、その熱伸長性複合繊維は、平坦面10aよりも凹凸面10bにおいて大きく伸長する。そのため、熱伸長性複合繊維は、凹凸面10bの表面における繊維径より、平坦面10aの表面における繊維径が大きくなる。また、厚みの厚い部分19における親水度は、凹凸面10b側が平坦面10a側に比して低くなる。
【0057】
本実施形態の不織布10の製造方法において、エンボス加工時にウエブに加える温度は、エンボス部及び/又はその近傍部(周辺部)における親水度の変化を抑制する観点から、前記鞘部を構成するポリエチレン樹脂の融点より20℃低い温度以上で、かつ芯部を構成する樹脂成分の融点未満であることが好ましい。他方、熱風処理時に加える温度は、親水度の変化を確実に生じさせる観点から、前記ポリエチレン樹脂の融点より10℃低い温度以上、特に前記ポリエチレン樹脂の融点以上、さらには、前記ポリエチレン樹脂の融点+5℃以上であることが好ましい。
親水化剤の付着した熱融着性の芯鞘型複合繊維を用いて製造した不織布によれば、複雑な装置や特別な装置を要さずに、親水度が大きく異なる複数の部位を有する不織布を製造することができ、得られた不織布は、例えば、生理用ナプキン、パンティライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面材として用いたときに、肌触りがよく、表面に液残りが生じにくく、表面に液流れが生じにくく、良好な吸収性能を示す。
【0058】
親水化剤の付着した熱融着性の芯鞘型複合繊維を含むウエブは、親水度が、熱処理により低下する。本発明の不織布における親水部や親水度の高い部分は、熱処理により親水度を低下させた部分との比較において、親水度が高ければ良い。また、疎水部や疎水性の部分は、熱処理により親水度を低下させる前、あるいは親水度を低下させない部分との比較において親水度が低下した部分であれば良い。親水度の低下は、熱処理前との比較において親水度を低下させる処理であれば良い。親水度の低下は接触角の増大と同義である。ここでいう親水度が低下したとは、接触角の差が、2度以上であることをいい、2.5度以上であることが好ましく、3度以上であることがさらに好ましく、5度以上であることがことさら好ましい。また、10度以下であることが好ましく、8度以下であることがより好ましく、7度以下であることがことさら好ましい。
【0059】
本発明の不織布は、部分的に親水度を低下させた後、2次加工で立体的にしてもよく、さらに、一部分だけ、親水化処理を行うなどの追加工は適宜行っても良い。また、本発明の不織布は、その厚み方向又は平面方向の一方に親水度勾配を有していてもよく、厚み方向及び平面方向の何れの方向にも親水度勾配を有していてもよい。
【0060】
本発明に係る不織布は、一部が親水度、他の一部が疎水性又は親水度低下部等の親水度勾配を有することを活かして、種々の分野に適用できる。例えば生理用ナプキン、パンティライナー、使い捨ておむつ、失禁パッドなどの身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品における表面シート、セカンドシート(表面シートと吸収体との間に配されるシート)、裏面シート、防漏シート、あるいは対人用清拭シート、スキンケア用シート、さらには対物用のワイパーなどとして好適に用いられる。
【0061】
不織布の製造に用いるウエブ或いは不織布の坪量は、目的とする不織布の具体的な用途に応じて適切な範囲が選択される。最終的に得られる不織布の坪量は、10〜80g/m
2、特に15〜60g/m
2であることが好ましい。
【0062】
不織布10は、これを例えば吸収性物品の表面シートとして用いる場合には、その坪量が10〜80g/m
2、特に15〜60g/m
2であることが好ましい。同様の用途に用いる場合、不織布10における凸部119(厚みの厚い部分19)の厚みは、熱風による嵩回復後の状態において0.5〜3mm、特に0.7〜3mmであることが好ましい。一方、凹部118(厚みの薄い部分18)の厚みは0.01〜0.4、特に0.02〜0.2mmであることが好ましい。なお凹部118の厚みは、熱風の吹き付けの前後において実質的に変化はない。凸部119及び凹部118の厚みは、不織布10の縦断面を観察することによって測定される。まず、不織布を100mm×100mmの大きさに裁断し測定片を採取する。その測定片の上に12.5g(直径56.4mm)のプレートを載置し、49Paの荷重を加える。この状態下に不織布の縦断面をマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX−900)で観察し、凸部119及び凹部118の厚みを測定する。なお、不織布に凸部(厚みの厚い部分)及び凹部(厚みの薄い部分)が形成されている場合、「不織布の厚み」とは、凸部(厚みの厚い部分)の厚みのことをいう。
【0063】
不織布10における凹部118と凸部119との面積比は、エンボス化率(エンボス面積率、すなわち不織布10全体に対する凹部の面積の合計の比率)で表され、不織布10の嵩高感や強度に影響を与える。これらの観点から、不織布10におけるエンボス化率は、5〜35%、特に10〜25%であることが好ましい。エンボス化率は、以下の方法によって測定される。まずマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX−900)を用いて不織布10の表面拡大写真を得、この表面拡大写真にスケールを合わせ、測定部の全体面積Tにおける、エンボス部分の寸法を測定し、エンボス部面積Uを算出する。
エンボス化率は、計算式(U/T)×100、によって算出することができる。
【0064】
身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。本発明に係る不織布を表面シートとして用いた場合の吸収体及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。
例えば吸収体としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸収性ポリマーを保持させたものを、ティッシュペーパーや不織布等の被覆シートで被覆してなるものを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【0065】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されない。
例えば、不織布にエンボス部を形成する場合のエンボス部の形成パターンは、格子状に代えて、多列のストライプ状、ドット状、市松模様状、スパイラル状等任意のパターンとすることができる。ドット状とする場合の個々の点の形状としては、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、ハート型、任意の形状とすることができる。また正方形若しくは長方形の格子状や、亀甲模様をなす形状を採用してもよい。
また、
図2に示す不織布の製造方法において、エンボス加工を施す際にエンボスロール及び/又はフラットロールを加熱し、エンボス部及び/又はその周辺の親水度が低下した不織布を製造することもできる。また、本発明の不織布を、おむつやナプキン、ワイパー、その他の製品に用いる場合において、製造の前、製造の途中、及び製品の形にした後のいずれの時点でも、所望の部分に熱を加えて、本発明の不織布の一部または全部について親水度を低下させることができ、または撥水性にすることもできる。
【0066】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の不織布を開示する。
【0067】
<1>
ポリエチレン樹脂を含む鞘部及び該ポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分を含む芯部を有し、表面に親水化剤の付着した芯鞘型複合繊維を含む構成繊維の交点が熱融着した熱融着部を備える不織布であって、
前記芯鞘型複合繊維は、加熱によってその長さが伸びる熱伸長性複合繊維を含み、
前記親水化剤は、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が20を超える多価アルコール脂肪酸エステルを、該親水化剤の全質量に対して20質量%以下の割合で含み、
前記不織布の厚み方向及び平面方向の少なくとも何れか一方向に親水度勾配を有している不織布。
【0068】
<2>
前記多価アルコール脂肪酸エステルの主成分が、3価以上のアルコールであり、その全てがエステル化されている前記<1>に記載の不織布。
<3>
前記多価アルコール脂肪酸エステルの主成分が、グリセリン脂肪酸エステルであり、その全てがエステル化されている前記<1>又は<2>に記載の不織布。
<4>
多価アルコール脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が8〜22である前記<1>〜<3>の何れか1に記載の不織布。
<5>
前記多価アルコール脂肪酸エステルは、前記親水化剤の全質量に対して15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、該多価アルコール脂肪酸エステルの含有量の下限値は、1質量%以上であることが好ましい前記<1>〜<4>の何れか1に記載の不織布。
<6>
前記親水化剤は、前記多価アルコール脂肪酸エステルに加え、アルキルリン酸エステル、下記の一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤を含む前記<1>〜<5>の何れか1に記載の不織布。
【化8】
(式中、Zはエステル基、アミド基、アミン基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を表わし、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数2〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わし、Xは―SO
3M、―OSO
3M又は―COOMを表わし、MはH、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表わす。)
<7>
前記アルキルリン酸エステルが、炭素鎖が16〜18のモノ又はジアルキルリン酸エステルの完全中和または部分中和塩である前記<1>〜<6>の何れか1に記載の不織布。
<8>
前記アルキルリン酸エステルは、親水化剤の全質量に対して含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である前記<1>〜<7>の何れか1に記載の不織布。
【0069】
<9>
前記アニオン界面活性剤がジアルキルスルホン酸又はそれらの塩である前記<1>〜<8>の何れか1に記載の不織布。
<10>
前記ジアルキルスルホン酸の2鎖のアルキル基それぞれの炭素数は、4〜14個、好ましくは6〜10個である前記<1>〜<9>の何れか1に記載の不織布。
<11>
前記アニオン界面活性剤は、親水化剤の全質量に対して含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは13質量%以下である前記<1>〜<10>の何れか1に記載の不織布。
<12>
前記多価アルコール脂肪酸エステルと前記アニオン界面活性剤との含有比率(前者:後者)が、質量比で4:1〜1:4である前記<1>〜<11>の何れか1に記載の不織布。
<13>
前記多価アルコール脂肪酸エステルと前記アニオン界面活性剤との含有比率(前者:後者)が、質量比で2:1〜1:2である前記<1>〜<12>の何れか1に記載の不織布。
<14>
前記親水化剤における前記多価アルコール脂肪酸エステルと、前記アルキルリン酸エステルとの含有比率は、質量比で、好ましくは2:1〜1:5、より好ましくは1:1〜1:3である前記<1>〜<13>の何れか1に記載の不織布。
<15>
前記多価アルコール脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が40以上、より好ましくは45以上である前記<1>〜<14>の何れか1に記載の不織布。
<16>
前記多価アルコール脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が100以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましい前記<1>〜<15>の何れか1に記載の不織布。
<17>
前記親水化剤の芯鞘型複合繊維への付着量は、該親水化剤を除く芯鞘型複合繊維の全質量に対する割合が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.1〜1.5質量%であり、より好ましくは0.2〜1.0質量%である前記<1>〜<16>の何れか1に記載の不織布。
【0070】
<18>
前記芯鞘型複合繊維は、同芯タイプの芯鞘型である前記<1>〜<17>の何れか1に記載の不織布。
<19>
前記芯鞘型複合繊維の鞘部を構成するポリエチレン樹脂は、密度が0.935〜0.965g/cm
3である高密度ポリエチレンである前記<1>〜<18>の何れか1に記載の不織布。
<20>
前記芯鞘型複合繊維の鞘部を構成するポリエチレン樹脂は、結晶子サイズが100〜200Åであることが好ましく、115〜180Åであることがより好ましい前記<1>〜<19>の何れか1に記載の不織布。
<21>
前記親水化剤を付着させる前記芯鞘型複合繊維は、芯部を構成する樹脂成分の融点と鞘部を構成する樹脂成分との融点の差(前者−後者)が、20℃以上150℃以内である前記<1>〜<20>の何れか1に記載の不織布。
<22>
前記熱伸長性複合繊維は、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する第2樹脂成分とを有しており、
前記熱伸長性複合繊維は、前記第1樹脂成分の融点よりも低い温度において熱によって伸長可能になっており、
前記熱伸長性複合繊維は、前記第2樹脂成分の融点(融点を持たない樹脂の場合は軟化点)より10℃高い温度での熱伸長率が0.5〜20%であることが好ましく、より好ましくは3〜20%、更に好ましくは5.0〜20%である前記<1>〜<21>の何れか1に記載の不織布。
<23>
前記熱伸長性複合繊維の繊維径は、10〜35μm、好ましくは15〜30μmである前記<1>〜<22>の何れか1に記載の不織布。
<24>
前記不織布は更に非熱伸長性繊維を含み、
前記熱伸長性複合繊維と前記非熱伸長性繊維との混合割合は、質量比で、前者:後者が1:9〜9:1が好ましく、より好ましくは4:6〜6:4である前記<1>〜<23>の何れか1に記載の不織布。
<25>
前記不織布中から取り出した前記芯鞘型複合繊維は、水に対する接触角が、好ましくは90度以下、より好ましくは85度以下であり、また、好ましくは60度以上、より好ましくは65度以上である前記<1>〜<24>の何れか1に記載の不織布。
<26>
前記不織布は厚みの薄い部分と、厚みの厚い部分とを有し、
前記厚みの厚い部分の頂部に比して、前記厚みの薄い部分又はその近傍部の親水度が高い前記<1>〜<25>の何れか1に記載の不織布。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0072】
〔実施例1〕
(1)熱で親水度が低下する繊維の製造
・熱融着性繊維である、芯部がポリプロピレン樹脂、鞘部がポリエチレン樹脂からなる熱伸長性複合繊維を、下記組成の親水化剤(油剤)に浸漬した。浸漬後に、乾燥させて、親水化剤が付着した熱伸長性複合繊維を得た。繊維に対する油剤付着量は0.39質量%であった。
・熱融着性繊維である、芯部がポリエステル樹脂、鞘部がポリエチレン樹脂からなる非熱伸長性繊維を、下記組成の親水化剤(油剤)に浸漬した。浸漬後に、乾燥させて、親水化剤が付着した非熱伸長性繊維を得た。繊維に対する油剤付着量は0.47質量%であった。
【0073】
(2)親水化剤の組成
・3価のアルコールであるグリセリン脂肪酸エステルであり、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が25のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油〔前記多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)、花王株式会社製の製品名「エマノーンCH−25」〕:10.0質量%(親水化剤中の成分Aの含有割合が上記の値となるように、「エマノーンCH−25」を添加した。)
・アルキルリン酸エステルカリウム塩〔前記アルキルリン酸エステル(成分B)、花王株式会社製、「グリッパー4131」の水酸化カリウム中和物〕:22.5質量%
・ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩〔前記一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤(成分C)、花王株式会社製、「ペレックスOT-P」〕:9.0質量%
・アルキル(ステアリル)ベタイン〔前記成分A〜前記成分C以外の成分、花王株式会社製、「アンヒトール86B」〕:13.5質量%
・ポリオキシエチレンアルキルアミド〔前記成分A〜前記成分C以外の成分、川研ファインケミカルズ製、アミゾールSDE〕:27.0質量%
・ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、変性シリコーン〔前記成分A〜前記成分C以外の成分以外の成分、信越化学工業株式会社製、X−22-4515〕:18.0質量%
【0074】
(3)不織布の製造
親水化剤が付着した熱伸長性複合繊維と、親水化剤が付着した非熱伸長性繊維とを1:1で混綿したものを用い、
図2に示す方法により不織布を製造した。具体的な製造方法は次のとおりである。先ず、カード機を用いて形成したウエブにエンボス加工を施した。エンボス加工は、格子状のエンボス部が形成され且つエンボス部(圧縮部)の面積率が22%となるように行った。エンボス加工の加工温度は、110℃であった。次にエアスルー加工を行った。エアスルー加工は、エンボス加工におけるエンボス面側から熱風を吹き付ける熱処理を1回行った。エアスルー加工の熱処理温度は、136℃とした。
得られた不織布は、
図1に示すように、厚みの薄い部分(エンボス部)18とそれ以外の厚みの厚い部分19とを有し、片面が凸部119と凹部118とを有する起伏の大きい凹凸面10b、もう片面が、ほぼ平坦な平坦面10aとなっていた。
【0075】
〔実施例2〕
親水化剤の組成における前記多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)を、3価のアルコールであるグリセリン脂肪酸エステルであり、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が40のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油〔前記多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)、花王株式会社製の製品名「エマノーンCH−40」〕に変更し、親水化剤が付着した熱伸長性複合繊維に対する油剤付着量が0.41質量%であった以外は、実施例1と同様の表1に記載の割合にして、実施例2の不織布を得た。
【0076】
〔実施例3〕
親水化剤の組成における前記多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)を、3価のアルコールであるグリセリン脂肪酸エステルであり、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が60のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油〔前記多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)、花王株式会社製の製品名「エマノーンCH−60」〕に変更し、親水化剤が付着した熱伸長性複合繊維に対する油剤付着量が0.42質量%であった以外は、実施例1と同様の表1に記載の割合にして、実施例3の不織布を得た。
【0077】
〔実施例4〕
親水化剤の各成分の配合割合を、表1に記載の割合に変更した以外は実施例3と同様にして、実施例4の不織布を得た。
【0078】
〔比較例1〕
親水化剤の成分における前記多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)を含有させず、その他の成分の含有割合を、表1に記載の割合に変更し、該親水化剤が付着した熱伸長性複合繊維に対する油剤付着量が0.40質量%であった以外は実施例1と同様にして、比較例1の不織布を得た。
【0079】
〔比較例2〕
親水化剤の組成における前記多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)を、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が4のポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート〔花王株式会社製の製品名「レオドールTW−S106V」〕に変更し、その他の成分の含有割合を、表1に記載の割合に変更し、該親水化剤が付着した熱伸長性複合繊維に対する油剤付着量が0.37質量%であった以外は実施例1と同様にして、比較例2の不織布を得た。
【0080】
〔比較例3〕
親水化剤の組成における前記多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)を、ポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が20のポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート〔花王株式会社製の製品名「レオドールTW−S120V」〕に変更し、その他の成分の含有割合を、表1に記載の割合に変更し、該親水化剤が付着した熱伸長性複合繊維に対する油剤付着量が0.39質量%であった以外は実施例1と同様にして、比較例3の不織布を得た。
【0081】
〔親水化剤の付着量の測定方法〕
親水化剤の付着量は、迅速残脂抽出機を用いて測定した。繊維2gを測り、下部に小さな孔のあいた所定の容器に入れた。その後、フタで繊維を押さえることで、繊維を容器の下部に押し込み、そこへ10ccのエタノール/メタノール(1:1)混合の溶液を投入し、10分間静置した後にもう一度フタをのせて、強くおしつけることで繊維に含まれているエタノール/メタノール成分を絞り、秤量皿に液を入れた。秤量皿を熱することで溶媒を飛ばし、秤量皿の元の重さから、加熱後の重量を測ることで親水化剤の付着量を測定した。N=3測定し、その平均を油剤付着量とした。
【0082】
〔評価〕
〔接触角〕
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた不織布について、不織布中から取り出した繊維に対する水の接触角を測定した。それらの結果を表1に示した。実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた不織布については、不織布中から取り出した繊維に対する水の接触角は、特開2010−168715号公報の段落〔0057〕に記載の方法により測定した。
すなわち、測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角測定には、蒸留水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、不織布中から取り出した繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に、画像が録画される。録画された映像において、不織布中から取り出した繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維のなす角を算出し、接触角とする。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を各々の接触角と定義する。
また、各不織布の「凸部頂部P1」及び「裏面P2」から熱伸長性複合繊維及び非熱伸長性繊維をそれぞれ下記の方法で採取し、採取した各熱伸長性複合繊維及び各非熱伸長性繊維に対する水の接触角を同様の方法により測定した。
【0083】
〔熱伸長性複合繊維及び非熱伸長性繊維の採取方法〕
混綿された不織布中から、精密はさみとピンセットを用いて、不織布の最表層部分からそれぞれの繊維を繊維長1mmで裁断し、不織布から取り出した。
【0084】
表1中の「接触角」の欄の「凸部頂部P1」は、凹凸面10bの凸部119の頂部P1(厚みの厚い部分の頂部)、「裏面P2」は、平坦面10aにおける凸部の頂部P1に対応する部位P2における不織布中から取り出した繊維の蒸留水との接触角の測定結果である。
【0085】
〔表面材液残り量〕
花王株式会社の市販の生理用ナプキン(商品名「ロリエさらさらクッション肌きれい吸収」)から表面シートを取り除き、その代わりに、実施例1〜4及び比較例1〜3の各不織布を積層し、その周囲を固定して評価用の生理用ナプキンを得た。各不織布は、裏面P2側を吸収体側に向けて配置した。
前記生理用ナプキンの表面上に、内径1cmの透過孔を有するアクリル板を重ねて、該ナプキンに100Paの一定荷重を掛ける。斯かる荷重下において、該アクリル板の透過孔から脱繊維馬血6.0gを流し込む。前記馬血を流し込んでから60秒後にアクリル板を取り除き、次いで、該不織布の重量(W2)を測定し、予め測定しておいた、馬血を流し込む前の不織布の重量(W1)との差(W2−W1)を算出する。以上の操作を3回行い、3回の平均値を液残り量(mg)とする。液残り量は、装着者の肌がどの程度濡れるかの指標となるものであり、液残り量が少ないほど程、良い結果である。それらの結果を表1に示した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示す結果から、前記多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)を配合した実施例1〜4においては、前記(A)成分を配合していない比較例1〜3に比して、凸部頂部P1における熱伸長性複合繊維と裏面P2における熱伸長性複合繊維との間の親水度の差が、大きくなっていることが判る。また、表1に示す液残り量の評価結果から、実施例1〜4で得られた大きな親水度勾配を有する不織布を、表面シートに用いることによって、比較例1〜3で得られた親水度勾配が相対的に小さい不織布を用いた場合に比して、表面シートの表面の液残りが少なくなり、吸収性が向上したことが判る。
【0088】
また、表1に示す結果から、前記多価アルコール脂肪酸エステル(成分A)を配合した実施例1〜3においては、前記(A)成分におけるポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が20よりも大きくなれば、それに伴って、凸部頂部P1における熱伸長性複合繊維と裏面P2における熱伸長性複合繊維との間の親水度の差が、大きくなっていることが判る。また、表1に示す液残り量の評価結果から、実施例1〜3で得られた親水度勾配を有する不織布を、表面シートに用いることによって、前記(A)成分におけるポリオキシエチレン(POE)の付加モル数が20よりも大きくなれば、それに伴って、表面シートの表面の液残りが少なくなり、吸収性が向上したことが判る。