(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ダイカスト装置と、前記ダイカスト装置に反応性ガスを供給する反応性ガス供給装置とを備えた無孔性ダイカストシステムを用いた無孔性ダイカスト製品の製造方法であって、
前記ダイカスト装置の固定金型および可動金型によりキャビティが規定されるように型締めを行う工程(A)と、
前記キャビティに連通する射出スリーブに溶湯を注入する工程(B)と、
前記射出スリーブ内に、前記反応性ガス供給装置により反応性ガスを供給する工程(C)と、
前記射出スリーブから前記キャビティに前記溶湯を射出する工程(D)と、
を包含し、
前記工程(C)の前に、前記反応性ガス供給装置のガス供給源から前記ダイカスト装置へのガス流路の途中に設けられた容積室内の圧力が前記ダイカスト装置側の圧力よりも高い所定の圧力になるように、前記ガス供給源から前記容積室に前記反応性ガスを供給する工程(E)をさらに包含し、
前記工程(C)において、前記容積室と前記ダイカスト装置側との差圧を利用して前記容積室から前記ダイカスト装置に前記反応性ガスが供給され、
前記工程(E)は、前記ガス流路において前記容積室の前段に設けられた第1バルブが開き、且つ、前記ガス流路において前記容積室の後段に設けられた第2バルブが閉じている状態において行われ、
前記工程(C)は、前記第1バルブが閉じ、且つ、前記第2バルブが開いている状態において行われ、
前記工程(C)は、前記第1バルブが開いている状態では行われない無孔性ダイカスト製品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無孔性ダイカスト法では、適量の反応性ガスを短時間で(例えば10L以上/秒)金型内に供給することが好ましく、そのためには、反応性ガスの供給を、積算流量計を用いて正確に制御する必要がある。しかしながら、一般的な積算流量計では、上記のような流量を短時間で計測できるものはない(スキャンタイムが長く、計測できる最大流量も少ない)。そのため、現状では、金型内に適量の反応性ガスを短時間で精度良く繰り返し供給することができず、そのことがサイクルタイムを短縮できない原因となっている。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダイカスト装置に適量の反応性ガスを短時間で精度良く繰り返し供給することができる反応性ガス供給装置、無孔性ダイカストシステムおよび無孔性ダイカスト製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による反応性ガス供給装置は、ダイカスト装置に反応性ガスを供給する反応性ガス供給装置であって、ガス供給源と、前記ガス供給源から前記ダイカスト装置への前記反応性ガスの供給を制御する制御部と、前記ガス供給源から前記ダイカスト装置へのガス流路の途中に設けられ、所定の容積を有する容積室と、前記容積室内の圧力を検出する圧力センサと、前記ガス流路において前記容積室の前段に設けられた第1バルブと、前記ガス流路において前記容積室の後段に設けられた第2バルブと、を備え、前記制御部は、前記圧力センサによって検出された前記容積室内の圧力に基づいて前記第1バルブおよび前記第2バルブの開閉状態を調整することによって、前記ガス供給源から前記容積室を経由した前記ダイカスト装置への前記反応性ガスの供給を制御する。
【0007】
ある実施形態において、本発明による反応性ガス供給装置は、前記第1バルブが開き、且つ、前記第2バルブが閉じている状態において、前記容積室内の圧力が、前記ダイカスト装置側の圧力よりも高い所定の圧力になるまで前記ガス供給源から前記容積室への前記反応性ガスの供給を行い、その後、前記第1バルブが閉じ、且つ、前記第2バルブが開いている状態において、前記容積室と前記ダイカスト装置側との差圧を利用して前記容積室から前記ダイカスト装置への前記反応性ガスの供給を行い得る。
【0008】
ある実施形態において、前記反応性ガスは酸素ガスである。
【0009】
本発明による無孔性ダイカストシステムは、固定金型および可動金型と、前記固定金型および前記可動金型により規定されるキャビティに連通する射出スリーブとを有するダイカスト装置と、前記ダイカスト装置に反応性ガスを供給する、上述した構成を有する反応性ガス供給装置と、を備える。
【0010】
ある実施形態において、前記制御部は、前記射出スリーブへの溶湯の注入が完了した後に前記ダイカスト装置への前記反応性ガスの供給が開始されるように制御を行う。
【0011】
本発明による無孔性ダイカスト製品の製造方法は、ダイカスト装置と、前記ダイカスト装置に反応性ガスを供給する反応性ガス供給装置とを備えた無孔性ダイカストシステムを用いた無孔性ダイカスト製品の製造方法であって、前記ダイカスト装置の固定金型および可動金型によりキャビティが規定されるように型締めを行う工程(A)と、前記キャビティに連通する射出スリーブに溶湯を注入する工程(B)と、前記射出スリーブ内に、前記反応性ガス供給装置により反応性ガスを供給する工程(C)と、前記射出スリーブから前記キャビティに前記溶湯を射出する工程(D)と、を包含し、前記工程(C)の前に、前記反応性ガス供給装置のガス供給源から前記ダイカスト装置へのガス流路の途中に設けられた容積室内の圧力が前記ダイカスト装置側の圧力よりも高い所定の圧力になるように、前記ガス供給源から前記容積室に前記反応性ガスを供給する工程(E)をさらに包含し、前記工程(C)において、前記容積室と前記ダイカスト装置側との差圧を利用して前記容積室から前記ダイカスト装置に前記反応性ガスが供給される。
【0012】
ある実施形態において、前記工程(C)は、前記工程(B)の後に行われる。
【0013】
ある実施形態において、前記工程(E)は、前記ガス流路において前記容積室の前段に設けられた第1バルブが開き、且つ、前記ガス流路において前記容積室の後段に設けられた第2バルブが閉じている状態において行われ、前記工程(C)は、前記第1バルブが閉じ、且つ、前記第2バルブが開いている状態において行われる。
【0014】
ある実施形態において、前記反応性ガスは酸素ガスである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ダイカスト装置に適量の反応性ガスを短時間で精度良く繰り返し供給することができる反応性ガス供給装置、無孔性ダイカストシステムおよび無孔性ダイカスト製品の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1に、本実施形態における無孔性ダイカストシステム100を示す。無孔性ダイカストシステム100は、
図1に示すように、ダイカスト装置10と、ダイカスト装置10に反応性ガスを供給する反応性ガス供給装置20とを備える。ダイカスト装置10に供給される反応性ガスは、典型的には、酸素(O
2)ガスである。ただし、反応性ガスはこれに限定されるものではない。
【0019】
反応性ガス供給装置20は、ガス供給源21、制御部22および容積室23を備える。本実施形態における反応性ガス供給装置20は、さらに、圧力センサ24、第1バルブ25および第2バルブ26を備える。
【0020】
ガス供給源21は、例えば、反応性ガスが貯蔵されたガスボンベである。
【0021】
制御部22は、ガス供給源21からダイカスト装置10への反応性ガスの供給を制御する。制御部22は、例えば、シーケンサまたはPLC(Programmable Logic Controller)と呼ばれるコントローラにより構成される。
【0022】
容積室23は、ガス供給源21からダイカスト装置10へのガス流路の途中に設けられており、所定の容積を有する。容積室23の容積は、典型的には、5L〜15L程度である。容積室23は、例えば、ガス流路を規定する配管とは別個に用意されたタンク(容器)である。
【0023】
圧力センサ24は、容積室23内の圧力を検出する。圧力センサ24としては、公知の種々のタイプの圧力検出素子を用いることができる。
【0024】
第1バルブ25は、ガス流路において容積室23の前段に設けられている。これに対し、第2バルブ26は、ガス流路において容積室23の後段に設けられている。第1バルブ25および第2バルブ26のそれぞれとして、例えば電磁弁を好適に用いることができる。
【0025】
制御部22は、具体的には、圧力センサ24によって検出された容積室23内の圧力に基づいて第1バルブ25および第2バルブ26の開閉状態を調整することによって、ガス供給源21から容積室23を経由したダイカスト装置10への反応性ガスの供給を制御する。
【0026】
図2(a)および(b)に、ダイカスト装置10の具体的な構成の一例を示す。
図2(a)は、ダイカスト装置10の型開きされた状態を模式的に示す図であり、
図2(b)は、ダイカスト装置10の型締めされた状態を模式的に示す図である。
【0027】
ダイカスト装置10は、
図2(a)および(b)に示すように、固定金型11および可動金型12と、射出スリーブ13とを有する。
図2(b)に示すように、型締め状態において固定金型11と可動金型12との間に形成される空間が、キャビティ10cである。射出スリーブ13は、固定金型11および可動金型12により規定されるこのキャビティ10cに連通している。射出スリーブ13の一部には、溶湯を注入するための開口部(注湯口)13aが形成されている。ダイカスト装置10は、さらに、注湯口13aから射出スリーブ13内に注入された溶湯を射出するためのプランジャ14を有する。
【0028】
上述したように、本実施形態における反応性ガス供給装置20は、ガス流路の途中に設けられた所定の容積を有する容積室23を備える。このことにより、後述するような差圧を利用した反応性ガスの供給を行うことが可能になる。そのため、本実施形態の反応性ガス供給装置20は、ダイカスト装置10に適量の反応性ガスを短時間で精度良く繰り返し供給することができる。以下、反応性ガス供給装置20による、差圧を利用した反応性ガスの供給(以下では「差圧充填」とも呼ぶ)の仕方を具体的に説明する。
【0029】
差圧充填を行うに際しては、反応性ガス供給装置20は、まず、第1バルブ25が開き、且つ、第2バルブ26が閉じている状態において、容積室23内の圧力P
1が、ダイカスト装置10側の圧力P
2よりも高い所定の圧力P’になるまでガス供給源21から容積室23への反応性ガスの供給を行う。そしてその後、反応性ガス供給装置20は、第1バルブ25が閉じ、且つ、第2バルブ26が開いている状態において、容積室23とダイカスト装置10側との差圧を利用して容積室23からダイカスト装置10への反応性ガスの供給を行う。容積室23の容量をVとすると、このとき、ダイカスト装置10へは、容量Vと圧力差(P’−P
2)との積に対応した量の反応性ガスが供給されることになる。
【0030】
図3に、上述した差圧充填の一例を示す。まず、
図3の上段に示すように、容量10Lの容積室23内の圧力P
1が0.3MPaになったときの容積室23内の反応性ガスの量は、30NL相当である。また、このとき、第1バルブ25および第2バルブ26はいずれも閉じている。
【0031】
次に、
図3の中段に示すように、第1バルブ25を開き、容積室23内の圧力P
1が0.5MPaになるまで反応性ガスの供給を続け、容積室23へのガスチャージを行う。容積室23内の圧力P
1が0.5MPaになったときの容積室23内の反応性ガスの量は、50NL相当である。また、このとき、第2バルブ26は閉じているので、ダイカスト装置10側の圧力P
2は容積室23内の圧力P
1よりも低い。
【0032】
その後、
図3の下段に示すように、第1バルブ25を閉じるとともに第2バルブ26を開き、差圧を利用して容積室23からダイカスト装置10側への反応性ガスの供給を行う。反応性ガスの供給は、容積室23内の圧力P
1が0.3MPaになるまで続けられる。容積室23内の圧力P
1が0.3MPaになったときの容積室23内の反応性ガスの量は、30NL相当であるので、容積室23からダイカスト装置10側へ供給された反応性ガスの量は、約20Lである。差圧を利用した反応性ガスの供給は、比較的短時間(例えば1秒)で行うことができる。なお、反応性ガスの供給量は、容量Vと圧力差(P’−P
2)との積に厳密には一致しないことも考えられるが、その場合には、容量Vと圧力差(P’−P
2)との積に所定の補正係数(例えばここでは0.95)を乗じた値を、反応性ガスの供給量として見積もればよい。補正係数は、ダイカスト装置10の配管の残圧や大気圧などによる実量差を考慮して決定される。
【0033】
上述したことからわかるように、本実施形態の反応性ガス供給装置20では、容積室23を利用した差圧充填により、ダイカスト装置10に適量の反応性ガスを短時間で精度良く繰り返し供給することができる。
【0034】
後述するように、制御部22は、射出スリーブ13への溶湯の注入が完了した後に差圧充填(差圧を利用したダイカスト装置10への反応性ガスの供給)が開始されるように制御を行うことが好ましい。このような制御により、サイクルタイムのいっそうの短縮を図ることができる。
【0035】
本実施形態における無孔性ダイカストシステム100は、例えば、アルミニウム合金製の無孔性ダイカスト製品の製造に好適に用いられる。勿論、本実施形態における無孔性ダイカストシステム100は、他の金属材料からなる無孔性ダイカスト製品の製造に用いられてもよい。
【0036】
続いて、
図4および
図5を参照しながら、本実施形態における無孔性ダイカストシステム100を用いた無孔性ダイカスト製品の製造方法を説明する。
図4(a)〜(f)は、本実施形態の製造方法を模式的に示す工程断面図であり、
図5は、本実施形態の製造方法のフローチャートである。
【0037】
図4(a)は、型開きされた状態のダイカスト装置10を示しており、ダイカスト装置10は、既に説明したように、固定金型11、可動金型12、射出スリーブ13およびプランジャ14を有する。
【0038】
まず、
図4(b)に示すように、ダイカスト装置10の固定金型11および可動金型12によりキャビティが規定されるように型締めを行い、その後、射出スリーブ13内に、反応性ガス供給装置20により反応性ガスrgを供給する。より具体的には、まず、型締めを開始し(ステップS1)、次に、プランジャ14を前進させて中間位置(注湯口13aを塞ぐ位置)で停止させる(ステップS2)。続いて、可動金型12が固定金型11にタッチすると(ステップS3)、差圧充填を開始し(ステップS4)、完了させる(ステップS5)。ここで、差圧充填とは、既に説明したように、容積室23とダイカスト装置10側との差圧を利用した容積室23からダイカスト装置10への反応性ガスrgの供給である。差圧充填は、第1バルブ25が閉じ、且つ、第2バルブ26が開いている状態において行われる。差圧充填により、射出スリーブ13内およびキャビティ10c内は、高濃度の反応性ガス雰囲気となる。また、このとき、キャビティ10c内に存在していた低濃度の反応性ガスrgは、
図4(b)に示すように、チルベントcvから排出される。
【0039】
次に、
図4(c)に示すように、キャビティ10cに連通する射出スリーブ13に溶湯mmを注入する。より具体的には、まず、プランジャ14を後退させ(ステップS6)、その後、注湯口13aから溶湯mmの注入を行う(ステップS7)。
【0040】
続いて、
図4(d)、(e)および(f)に順次示すように、射出スリーブ13からキャビティ10cに溶湯mmを射出する。より具体的には、まず、
図4(d)に示すように、プランジャ14を低速で前進させることにより低速で溶湯mmの射出を行い(ステップS8)、続いて、
図4(e)および(f)に示すように、プランジャ14の前進を高速に切り替えて高速で溶湯mmの射出を行う(ステップS9)。
【0041】
次に、ガスチャージを開始し(ステップS10)、完了させる(ステップS11)。ここで、ガスチャージとは、既に説明したように、容積室23内の圧力P
1がダイカスト装置10側の圧力P
2よりも高い所定の圧力P’になるように、ガス供給源21から容積室23に反応性ガスrgを供給することである。ガスチャージは、第1バルブ25が開き、且つ、第2バルブ26が閉じている状態において行われる。
【0042】
その後、型開きが行われて製品の取り出しが行われる。そして、上記の工程が繰り返し行われる。
【0043】
上述したようにして、無孔性ダイカスト製品の製造を繰り返し行うことができる。本実施形態における無孔性ダイカスト製品の製造方法では、射出スリーブ13内に反応性ガス供給装置20により反応性ガスを供給する工程が、上述したような差圧充填により行われるので、ダイカスト装置10に適量の反応性ガスを短時間で精度良く繰り返し供給することが可能となる。そのため、サイクルタイムを短縮することができる。また、使用する反応性ガスの量を減らすことができるので、そのことによって製造コストを低減させることもできる。
【0044】
なお、
図4および
図5を参照しながら説明した例(以下では「フロー(i)」とも呼ぶ)。では、差圧充填が射出スリーブ13に溶湯mmを注入する工程の前に行われるが、差圧充填を、射出スリーブ13に溶湯mmを注入する工程の後に行ってもよい。以下、このような例(以下では「フロー(ii)」とも呼ぶ。)を、
図6および
図7を参照しながら説明する。
図6(a)〜(e)は、本実施形態の製造方法を模式的に示す工程断面図であり、
図7は、本実施形態の製造方法のフローチャートである。
図6(a)は、型開きされた状態のダイカスト装置10を示している。
【0045】
まず、
図6(b)に示すように、ダイカスト装置10の固定金型11および可動金型12によりキャビティが規定されるように型締めを行い、その後、キャビティ10cに連通する射出スリーブ13に溶湯mmを注入する。より具体的には、まず、型締めを開始し(ステップS21)、次に、可動金型12が固定金型11にタッチすると、注湯口13aから溶湯mmの注入を行う(ステップS22)。
【0046】
次に、
図6(c)に示すように、射出スリーブ13内に、反応性ガス供給装置20により反応性ガスrgを供給する。より具体的には、まず、プランジャ14を差圧充填開始位置(注湯口13aを塞ぐ位置)まで前進させ(ステップS23)、続いて、差圧充填を開始し(ステップS24)、完了させる(ステップS25)。
【0047】
続いて、
図6(d)および(e)に順次示すように、射出スリーブ13からキャビティ10cに溶湯mmを射出する。より具体的には、まず、プランジャ14を低速で前進させることにより低速で溶湯mmの射出を行い(ステップS26)、続いて、
図6(d)および(e)に示すように、プランジャ14の前進を高速に切り替えて高速で溶湯mmの射出を行う(ステップS27)。この過程で、キャビティ10c内に存在していた低濃度の反応性ガスrgは、
図6(c)および(d)に示すように、チルベントcvから排出される。
【0048】
次に、ガスチャージを開始し(ステップS28)、完了させる(ステップS29)。
【0049】
その後、型開きが行われて製品の取り出しが行われる。そして、上記の工程が繰り返し行われる。
【0050】
このようにしても、ダイカスト製品の製造を繰り返し行うことができる。
図6および
図7を参照しながら説明した例では、差圧充填は、射出スリーブ13に溶湯mmを注入する工程の後に行われる。この場合、中間位置に停止していたプランジャ14を後退させる工程を省略することができるので、サイクルタイムのいっそうの短縮が可能になる。差圧充填とフロー(ii)とを組み合わせて用いると、サイクルタイムのうちの反応性ガス供給に要する時間を、従来の製造方法(反応性ガスの供給に差圧充填を利用しない)に比べ、例えば約85%(例えば8.5秒から1.3秒に)短縮することができる。また、フロー(i)では、注湯時に反応性ガスrgが溶湯と反応することにより、射出スリーブ13内の反応性ガスrgの濃度が低下することがある。これに対し、フロー(ii)では、溶湯と反応性ガスrgが接触する時間を短くすることができるので、上述したような反応性ガスrgの濃度低下を抑制することができる。なお、差圧充填を利用しない従来の反応性ガスrgの供給方法では、フロー(ii)を採用することは難しい。従来の方法では、射出スリーブ13内への反応性ガスrgの供給を短時間で行うことが難しいので、溶湯の温度が低下しすぎてしまうおそれがあるからである。これに対し、本実施形態のように差圧充填を利用すると、短時間で反応性ガスrgの供給を行うことができるので、フロー(ii)を好適に用いることができる。
【0051】
また、上述したフロー(i)および(ii)では、ダイカスト装置10への反応性ガスの供給は、射出スリーブ13側から行われるが(
図4(b)および
図6(c)参照)、チルベントcv側にバルブを設け、そちら側(チルベント側)から反応性ガスの供給を行ってもよい。
【0052】
続いて、本実施形態の製造方法により実際にダイカスト製品を製造し、その評価を行った結果を説明する。
【0053】
下記表1に、本実施形態の製造方法により製造したダイカスト部品(実施例1〜4)について、そのガス含有量(cc/製品100g)およびサイクルタイム(秒)を示す。なお、実施例1〜4のダイカスト部品を製造する際には、上述したフロー(ii)を採用した。また、ガス含有量の測定は、市販のガス分析装置により行った。さらに、表1には、キャビティ内の空気を反応性ガスで置換せずに製造した比較例1および2と、反応性ガスの供給を従来の方法で(つまり差圧充填を利用せずに)行って製造した比較例3および4についても、そのガス含有量およびサイクルタイムを示している。
【0055】
表1からわかるように、比較例1および2では、サイクルタイムは29.5秒と短いものの、ガス含有量が多い。また、比較例3および4では、ガス含有量は少ないものの、サイクルタイムが38.0秒と長い(比較例1および2よりも8.5秒長い)。
【0056】
これに対し、実施例1〜4では、ガス含有量が少なく、且つ、サイクルタイムも30.8秒と短い。このように、実施例1〜4では、比較例3および4に比べてサイクルタイムが7.2秒短縮されており、反応性ガスによる置換を行わない比較例1および2とほぼ同等のサイクルタイムが実現されている。
【0057】
下記表2に、本実施形態の製造方法により製造した別のダイカスト部品(実施例5〜10)について、そのガス含有量(cc/製品100g)およびサイクルタイム(秒)を示す。なお、実施例5〜8のダイカスト部品を製造する際には、上述したフロー(i)を採用し、実施例9および10のダイカスト部品を製造する際には、上述したフロー(ii)を採用した。さらに、表2には、キャビティ内の空気を反応性ガスで置換せずに製造した比較例5と、反応性ガスの供給を従来の方法で(つまり差圧充填を利用せず)行って製造した比較例6および7についても、そのガス含有量およびサイクルタイムを示している。
【0059】
表2からわかるように、比較例5では、サイクルタイムは25.5秒と短いものの、ガス含有量が多い。また、比較例6および7では、ガス含有量は少ないものの、サイクルタイムが32.5秒と長い(比較例5よりも7.0秒長い)。
【0060】
これに対し、実施例5〜8では、ガス含有量が少なく、且つ、サイクルタイムも29.2秒と短い。このように、実施例5〜8では、比較例6および7に比べてサイクルタイムが3.3秒短縮されている。また、実施例9および10でも、ガス含有量が少なく、且つ、サイクルタイムは27.0秒とさらに短い。このように、実施例9および10では、比較例6および7に比べてサイクルタイムが5.5秒短縮されている。また、上記の結果からわかるように、フロー(ii)の採用により、フロー(i)の採用した場合よりもいっそうサイクルタイムを短縮し得ることがわかる。