特許第6170838号(P6170838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170838
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】癌処置用ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20170713BHJP
   A61K 38/08 20060101ALI20170713BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170713BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20170713BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20170713BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20170713BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20170713BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20170713BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   C07K7/06ZNA
   A61K38/08
   A61P35/00
   A61P9/10
   A61P19/02
   A61P17/06
   A61P3/04
   A61P25/28
   A61P27/06
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-545367(P2013-545367)
(86)(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公表番号】特表2014-501746(P2014-501746A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2011073606
(87)【国際公開番号】WO2012085096
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年12月17日
(31)【優先権主張番号】10196278.5
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12/974,958
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512317032
【氏名又は名称】ジーン シグナル インターナショナル ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】アル−ムハンマド,サルマン
(72)【発明者】
【氏名】コリン,シルビ
【審査官】 田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第00/075167(WO,A1)
【文献】 特表平11−500601(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/035003(WO,A1)
【文献】 米国特許第05801149(US,A)
【文献】 The Journal of Biological Chemistry,1992年,Vol.267,No.36,pp.25958-25966
【文献】 The EMBO Journal ,1994年,Vol.13,No.10,pp.2313-2321
【文献】 BUNNEY TOM D,PHOSPHOINOSITIDE SIGNALLING IN CANCER : BEYOND PI3K AND PTEN,NATURE REVIEWS,2010年 5月,V10 N5,P342-352
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N15/00−15/90
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列番号37のアミノ酸配列からなる、ペプチド。
【請求項2】
列番号37又は配列番号38のアミノ酸配列からなるペプチドを含む、薬学的組成物。
【請求項3】
癌を処置するための請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
血管新生関連疾患を処置するための請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記血管新生関連疾患が、眼の新生血管疾患、アテローム性動脈硬化、関節炎、乾癬、肥満、およびアルツハイマー病を含む群から選択される、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記眼の新生血管疾患が、静脈うっ血性網膜症、糖尿病網膜症、未熟児網膜症、網膜静脈閉塞症、老人性黄斑変性、角膜血管新生、および新生血管緑内障を含む群から選択される、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の細胞傷害性薬物、化学療法薬剤または抗癌剤をさらに含む、請求項3に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド、このペプチドを含む組成物、ならびに癌の処置のためのその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮細胞成長因子(EGF)およびインスリンなどの多くの成長因子およびホルモンは、細胞表面チロシンキナーゼ受容体の相互作用を介したシグナルを媒介する。リガンド結合により開始する膜を通過する細胞外シグナルの伝達は、細胞内の標的生化学経路を最終的に制御する複合シグナリング事象の増殖を引き起こす。
【0003】
ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3Ks)は、ホルモンおよび成長因子受容体の細胞質ドメインならびに癌遺伝子産物に関連して発見されたヘテロ二量体脂質キナーゼの広範囲にわたるファミリーを意味する。これらの受容体の下流のエフェクターとして作用するPI3Ksは、受容体の刺激を補充し、かつイノシトールのリン酸化誘導体産物を介した第2のメッセンジャーシグナリング経路の活性化を媒介する(Fry,Biochim. Biophys. Acta.,1994,1226:237−268)。
【0004】
クラスIPI3Ksは、85kDaの調節サブユニット(p85)および110kDaの触媒サブユニット(p110)を含むSH2ドメインから構成され、イノシトール環のD3の位置でホスホチジルイノシトールのリン酸化を触媒する(Cantley,Science 296:1655−1657 (2002)、 Carpenter and Cantley,Curr. Opin. Cell Biol.,8:153−8 (1996))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PI3Ksは、細胞伝達、有糸分裂誘発、タンパク質輸送、細胞生存および増殖、DNA合成、アポトーシス、神経突起成長ならびにインシュリン促進グルコース輸送(Fry,Biochim. Biophys. Acta.,1994,1226,237−268参照)を媒介する成長因子を含む幅広い生物学的影響において中心的役割を果たす。多くの異なるシグナリング経路は、これらの無数の事象を直接制御するというよりも、活性複合体を標的とするなどのより一般的であり、促進性のあるシグナリング経路を提供することを示唆する。
【0006】
PI3Ksシグナリング中に含まれるタンパク質の阻害剤は、処置薬として提案されてきた。このような阻害剤の例は、ワートマニン、デメトキシビリジン、クエルセチンおよびLY294002を含む。これら阻害剤は、まずこのp110サブユニットを標的とし、かつ臨床試験での使用を限定する毒性および短い半減期を表す。
【0007】
これらの阻害剤に対する代替的な試みが、siRNAによるp85の特異的阻害などのRNA干渉により重要な経路タンパク質の発現を特異的に阻害してきた。
【0008】
本発明の目的は、PI3Ksシグナリングの阻害剤の発見であった。好ましくは、この阻害剤は、以下の、siRNAより高い安定性、細胞浸透/拡散の利点を有し、siRNAより長い半減期を有する。
【0009】
驚くべきことに、この発明者は、生体内で癌を低減することのできる以下に定義されるリン酸化YXモチーフを有するペプチドを発見した。
【0010】
モチーフYMXMの中のホスホチロシン残基を有する配列は、SH2ドメインに結合することが知られている。p85は、2つのSH2ドメインを有することが記述され、かつモチーフYMXMの中のホスホチロシン残基とこれら2つのSH2ドメインとの結合が、PtdIns(3)、PtdIns(3,4)PおよびPtdIns (3,4,5)Pを生成するホスファチジルイノシトール(PtdIns)のリン酸化触媒を引き起こすp85およびp110を活性化させることが記述される。
【0011】
リン酸化YMXMモチーフを含む合成ペプチドで、生体外でPI3Kを活性する技術が知られている(White et al. 1994 The Journal of Biological Chemistry 269 (7):1−4)。PI3Kシグナリングの活性化は、癌の発達に関連することが知られており、したがって当業者は、癌処置の際にPI3Kシグナリングを活性化するペプチドを使用して導入を行わない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの目的は、リン酸化pYXモチーフを含むペプチドである(SEQ ID NO(配列番号)1)。
式中、各Xは、独立してMまたはNleであり、Xは、いずれかのアミノ酸であり、
このペプチドは、4〜50のアミノ酸を含み、
このペプチドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号41、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60,配列番号61、配列番号62、配列番号63または配列番号64ではない。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸を含み、かつ、リン酸化GpYXFXSモチーフ(配列番号15)を含み、各Xは独立してMまたはNleである。
【0014】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸を含み、かつ、リン酸化EpYXNXDモチーフ(配列番号19)を含み、各Xは独立してMまたはNleである。
【0015】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸を含み、かつ、リン酸化GpYXPXSモチーフ(配列番号14)を含み、各Xは独立してMまたはNleである。
【0016】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸を含み、かつ、リン酸化DpYXFXSモチーフ(配列番号16)を含み、各Xは独立してMまたはNleである。
【0017】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸を含み、かつ、リン酸化GpYXMXSモチーフ(配列番号17)を含み、各Xは独立してMまたはNleである。
【0018】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸を含み、かつ、リン酸化DpYXNXSモチーフ(配列番号18)を含み、各Xは独立してMまたはNleである。
【0019】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸を含み、かつ、リン酸化DpYXTXQモチーフ(配列番号20)を含み、各Xは独立してMまたはNleである。
【0020】
本発明の別の目的は、リン酸化pYXモチーフ(配列番号1)を含む4〜5のアミノ酸のペプチドを含む医薬組成物であり、各Xは独立してMまたはNleであり、Xは、いずれかのアミノ酸である。
【0021】
本発明の1つの実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸およびリン酸化GpYXSモチーフ(配列番号33)を含み、各Xは独立してMまたはNleであり、XはP、F、またはMである。
【0022】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸およびリン酸化DpYXSモチーフ(配列番号34)を含み、各Xは独立してMまたはNleであり、XはPまたはNである。
【0023】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸およびリン酸化EpYXNXDモチーフ(配列番号35)を含み、各Xは独立してMまたはNleである。
【0024】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸およびリン酸化DpYXTXQモチーフ(配列番号36)を含み、各Xは独立してMまたはNleである。
【0025】
本発明の別の目的は、癌を処置するための上述の薬学的組成物である。
【0026】
本発明の別の目的は、血管形成関連疾患を処置するための上述の医薬組成物である。
【0027】
本発明の別の目的は、少なくとも1種の細胞傷害性薬物、化学療法薬剤または抗癌剤をさらに含む上述の医薬組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】生体外の血管新生アッセイの各画像(18時間後に撮影された画像)である。
図2】IRS−1による酵素PI−3Kの制御サブユニット(p85)の動員上のチロシンリン酸化および非リン酸化ペプチドの影響を表す。
図3】(A)は、mTorの活性上のGS−0およびGS−1の影響を表し、(B)はmTorの活性上のGS−0およびGS−2の影響を表す。
図4】8mg/kgのGS−0または8mg/kgのGS−1において、ビヒクルで処理されたマウス関連NCI−H460腫瘍の平均腫瘍量曲線である。
図5】8mg/kgのGS−0または8mg/kgのGS−2において、ビヒクルで処理されたマウス関連NCI−H460腫瘍の平均腫瘍量曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
本明細書で使用されるように、用語「ペプチド」は、2つのアミノ酸から50のアミノ酸のアミノ酸配列を意味する。好ましくは、このペプチドは、3〜45のアミノ酸、より好ましくは、3〜40のアミノ酸、さらに好ましくは4〜30のアミノ酸を含む。特に好ましい実施形態は、5〜15のアミノ酸または5〜10のアミノ酸などの、4〜20のアミノ酸を含むペプチドを含む。本明細書に使用されるように、「アミノ酸」は、当業者によく知られている完全な名称、それらアミノ酸の3つの文字のコード、またはそれらアミノ酸の1つの文字のコードにより表される。ペプチドのアミノ酸残基は、以下の、フェニルアラニンはPheまたはF、ロイシンはLeuまたはL、イソロイシンはIleまたはI、メチオニンはMetまたはM、バリンはVaIまたはV、セリンはSerまたはS、プロリンはProまたはP、スレオニンはThrまたはT、アラニンはAlaまたはA、チロシンはTyrまたはY、ヒスチジンはHisまたはH、グルタミンはGlnまたはQ、アスパラギンはAsnまたはN、リシンはLysまたはK、アスパラギン酸はAspまたはD、グルタミン酸はGluまたはE、システインはCysまたはC、トリプトファンはTrpまたはW、アルギニンはArgまたはR、およびグリシンはGlyまたはGの通り、省略される。用語「アミノ酸」は、天然アミノ酸および合成アミノ酸の両方、ならびにDアミノ酸およびLアミノ酸の両方を含む。「標準アミノ酸(Standard amino acid)」または「天然に存在するアミノ酸」は、天然に存在するペプチド中に見出された一般的な20の標準L−アミノ酸のいずれかを意味する。「非標準アミノ酸残基」は、天然のペプチド源から合成して調製するまたは由来することに関係のない標準アミノ酸以外のいずれかのアミノ酸を意味する。たとえば、ナフチルアミンは、合成を容易にするためトリプトファンに置換することができる。置換することのできる他の合成アミノ酸は、限定するものではないが、L−ヒドロキシプロピル、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニル、L−α−ヒドロキシリシルおよびD−α−メチルアラニル、L−α−メチルアラニルなどのα−アミノ酸、β−アミノ酸類、ならびにイソキノリルを含む。
【0030】
本明細書に使用される「アミノ酸」は、同様に、限定するものではないが、塩、(アミド類などの)アミノ酸誘導体および置換基を含む、化学的に修飾されたアミノ酸をも含む。本発明のペプチド内に含まれ、かつ特にカルボキシまたはアミノ末端のアミノ酸は、活性に逆影響することなくペプチドの循環半減期を変化することのできる他の化学基とのメチル化、アミド化、アセチル化または置換により修飾することができる。さらに、ジスルフィド結合は、本明細書のペプチド中に存在しても、またしなくてもよい。
【0031】
本発明のペプチドは、天然の標準アミノ酸類または非標準アミノ酸類を含んでもよい。ペプチド模倣薬は、以下の修飾、i)1つ以上のペプチド−C(O)NR−結合(接続)が、−CH−カルバメート結合(−CHOC(O)NR−)、ホスホン酸結合、−CH2−スルホンアミド(−CH2−S(O)2NR−)結合、尿素(−NHC(O)NH−)結合、−CH−二級アミン結合などの非ぺプチジル結合またはアルキル化ペプチジル結合(−C(O)NR−)により置換されたペプチドであって、このRは、C−Cアルキルである、ペプチド修飾と、ii)N末端が、−NRR基、−NRC(O)R基、−NRC(O)OR基、−NRS(O)R基、−NHC(O)NHR基に誘導化され、このRおよびRは、水素またはRおよびRが両方水素ではない条件でC−Cアルキルであるペプチド修飾と、iii)C末端が、C(O)Rに誘導化され、Rが、C−Cアルコキシおよび−NR4〜なる群から選択され、RおよびRが、独立して、水素およびC−Cアルキルからなる群から選択される修飾と、を有するペプチドを含む。
【0032】
本明細書に使用されている用語「保存アミノ酸の置換」は、以下の5つ、すなわち、
I.Ala、Ser、Thr、Pro、Glyである微小の、脂肪性、非極性またはわずかに極性の残基と、
II.Asp、Asn、Glu、Glnの極性、負電荷の残基およびこれらのアミド類と、
III.His、Arg、Lysの極性、正電荷残基と、
IV.Met、Leu、Ile、Val、Cysの、大型の脂肪性、非極性残基
V.Phe、Tyr、Trpの大型の芳香族残基と、
の群のうちの1つの中の交換(exchange)アミノ酸残基として定義される。
【0033】
本明細書で使用される用語「処置する」は、特定の障害または条件の予防法、もしくは特定の障害または条件に関連する兆候の軽減、および/またはこの兆候の除去および防止を含む。「予防的」処置は、ある疾患の兆候を表さないまたは、この疾患に関連する病態を発達させるリスクを減少させる目的で、疾患の早期兆候のみを表す対象へ投与する処置である。この「治療的」処置は、これらの兆候を減少させるまたは除去する目的のための病態の兆候を表す対象へと投与する処置である。化合物の「薬学的有効量」は、この化合物が投与される対象に有効であるよう十分に提供される化合物の量である。
本発明
【0034】
本発明の一目的は、リン酸化pYXモチーフ(配列番号1)を含む。
【0035】
本発明によると、チロシンYはリン酸化(pY)である。
【0036】
本発明によると、リン酸化pYXモチーフ中の各アミノ酸Xは、独立して、M(メチオニン)またはNle(ノルロイシン)に対応する。したがって、本発明のペプチドは、リン酸化pYMXMモチーフ、pYMXNleモチーフ、pYNleXMモチーフ、またはpYNleXNleモチーフを含む。好ましくは、Y+1位置のXは、独立して、MまたはNleであり、かつY+3位置のXは、Mである。
【0037】
本発明により、リン酸化pYXモチーフ中のアミノ酸Xは、いずれかのアミノ酸に対応し、好ましくは、天然に存在するいずれかのアミノ酸に対応する。好ましくは、Xは、P、M、N、T、KおよびFからなる群から選択される。より好ましくは、Xは、F、N、およびTからなる群から選択される。
【0038】
本発明の1つの実施形態において、このペプチドは、DDGpYMPMSPGV(配列番号2)、NGDpYMPMSPGV(配列番号3)、PNGpYMMMSPSG(配列番号4)、TGDpYMNMSPVG(配列番号5)、SEEpYMNMDLGP(配列番号6)、KKHTDDGpYMPMSPGVA(配列番号7)、RKGNGDGpYMPMSPKSV(配列番号8)、KKRVDPNGpYMMMSPSGS(配列番号9)、KKKLPATGDpYMNMSPVGD(SEQ IDNO:10)、KKGSEEpYMNMDLGPGR(配列番号11)、KKSRGDpYMTMQIG(配列番号12)、KKSRGNpYMTMQIG(配列番号13)、EEEYMpPMEDLY (配列番号29)、DGGpYMDMSKDE(配列番号30)、KKKEEEEEEpYMPMEDL(配列番号31)、KKSRGDpYNleTMQIG(配列番号32)、TDDGpYMPMSPGV(配列番号41)、DPNGpYMMMSPSG(配列番号43)、GNGDpYMPMSPKS(配列番号44)、RENEpYMPMAPQIH(配列番号45)、EEEEpYMPMEDLYL(配列番号46)、TDDGpYMPMSPGVA(配列番号47)、GNGDpYMPMSPKSV(配列番号48)、SDGGpYMDMSKDES(配列番号49)、RDGpYMTMQIG(配列番号50)、IDVpYMIMVK(配列番号51)、DGGpYMDMSKDE(配列番号52)、HSDpYMNMTPR(配列番号53)、NGDpYMPMSPKS(配列番号54)、GDpYMPMSPKS(配列番号55)、DpYMPMSPKS(配列番号56)、pYMPMSPKS(配列番号57)、pYMPMSP(配列番号58)、pYMPMS(配列番号59)、pYMPM(配列番号60)、pYMPMSPAS(配列番号61)、pYMPMSAKS(配列番号62)、pYMPMAPKS(配列番号63)またはpYMAMSPKS( 配列番号64)ではない。
【0039】
本発明の1つの実施形態において、このペプチドは、GNGDpYMPMDPKS(配列番号42)ではない。
【0040】
本発明の1つの実施形態において、このペプチドは、4〜50のアミノ酸を含む。
【0041】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、4〜40のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、4〜30のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、5〜25のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、5〜20のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、5〜18のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、5〜15のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、5か14のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、5〜13のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、5〜12のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、5〜11のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、5〜10のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、5〜9のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、5〜8のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、5〜7のアミノ酸を含む。本発明の別の実施形態において、このペプチドは、6のアミノ酸を含む。
【0042】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、5〜50のアミノ酸、5〜40のアミノ酸、5〜30のアミノ酸、5〜25のアミノ酸、5〜20のアミノ酸、5〜18のアミノ酸、5〜15のアミノ酸、5〜14のアミノ酸、5〜13のアミノ酸、5〜12のアミノ酸、5〜11のアミノ酸、5〜10のアミノ酸、5〜9のアミノ酸、5〜8のアミノ酸、5〜7のアミノ酸、6のアミノ酸からなる、あるいは実質的にこれらからなる。
【0043】
本発明の1つの実施形態において、このペプチドは、50、40、30、20のアミノ酸の長さ、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6のアミノ酸の長さを有し、かつリン酸化GpYXPXSモチーフ(配列番号14)を含み、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0044】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、50、40、30、20のアミノ酸の長さを有し、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6のアミノ酸の長さを有し、かつリン酸化GpYXFXSモチーフ(配列番号15)を含み、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0045】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、50、40、30、20のアミノ酸の長さ、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6のアミノ酸の長さを有し、かつリン酸化GpYXMXSモチーフ(配列番号17)であり、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0046】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、50、40、30、20のアミノ酸の長さ、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6のアミノ酸の長さを有し、かつリン酸化DpYXNXSモチーフ(配列番号18)であり、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0047】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、50、40、30、20のアミノ酸の長さ、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6のアミノ酸の長さを有し、かつリン酸化EpYXNXDモチーフ(配列番号19)であり、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0048】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、50、40、30、20のアミノ酸の長さ、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6のアミノ酸の長さを有し、かつリン酸化DpYXTXQモチーフ(配列番号20)であり、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0049】
本発明の1つの実施形態において、このペプチドは、PDSSTLHTDDGpYXPXSPGVAPVPSGRKGSG(配列番号21)またはリン酸化pYXPXモチーフを含む20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、または6のアミノ酸断片であり、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0050】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、PDSSTLHTDDGpYXFXSPGVAPVPSGRKGSG(配列番号22)またはリン酸化pYXFXモチーフを含む20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、または6のアミノ酸断片であり、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0051】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、PVPSGRKGSGDpYXPXSPKSVSAPQQIINPI(配列番号23)またはリン酸化pYXPXモチーフを含む20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、または6のアミノ酸断片であり、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0052】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、RRHPQRVDPNGpYXMXSPSGGCSPDIGGGPS(配列番号24)またはリン酸化pYXMXモチーフを含む20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、または6のアミノ酸断片であり、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0053】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、SGGKLLPCTGDpYXNXSPVGDSNTSSPSDCY (配列番号25)またはリン酸化pYXNXモチーフを含む20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、または6のアミノ酸断片であり、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0054】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、PREEETGTEEpYXKXDLGPGRRAAWQESTGV(配列番号26)またはリン酸化pYXKXモチーフを含む20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、または6のアミノ酸断片であり、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0055】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、PREEETGTEEpYXNXDLGPGRRAAWQESTGV(配列番号27)またはリン酸化pYXNXモチーフを含む20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、または6のアミノ酸断片であり、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0056】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、AVPSSRGDpYXTXQMSCPRQSYVDTSPAAPV(配列番号28)またはリン酸化pYXTXモチーフを含む20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、または6のアミノ酸断片であり、各Xは、独立してMまたはNleである。
【0057】
当業者によく知られている化学合成または酵素を使用する合成により合成的に本明細書に記述されるペプチドを作製することができる。代替的に、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を、タンパク質発言ベクター内へ導入し、適切な宿主生物(たとえば、バクテリアまたは昆虫細胞など)中に作製し、その後精製する。追加的なポリペプチド(タグ)を、ペプチドを精製しまたは識別する目的で添加することができる。タンパク質タグは、たとえば、ポリペプチドをマトリックスへと高い親和性で吸収させ、かつその後に、いずれかの重要な範囲へ溶出する複合体なしにマトリックスを適切なバッファーで厳密に洗浄させ、かつ実質的に吸収した複合体を選択的に溶出させる。当業者に知られているタンパク質タグの例は、(His)タグ、aMycタグ、FLAGタグ、ヘマグルチニンタグ、グルタチオントランスフェラーゼ(GST)タグ、親和性のあるキチン結合を有するインテインタグ、またはマルトース−結合タンパク質(MBP)タグである。これらのタンパク質タグを、N−末端、C−末端および/または内部に位置することができる。
【0058】
本発明の1つの目的は、上述されるペプチドであり、このペプチドは修飾される。
【0059】
本明細書中に提供されるペプチドを当業者によく知られている方法により修飾することができる。
【0060】
たとえば、このペプチドを、1つ以上のリン酸塩、酢酸塩などの官能基、または多様な脂質および糖の添加により修飾することができる。本発明のペプチドは、同様に、ペプチド誘導体として存在することができる。この用語「ペプチド誘導体」は、アミノ基(−NH−)を有する化合物を意味し、より詳細には、ペプチド結合を意味する。ペプチドは、置換されたアミド類とみなされてもよい。アミド基のように、このペプチド結合は、共鳴安定化の高い度合を示す。このペプチド中のC−N単結合は、概して約40%の二重結合性を有し、かつC=O二重結合は、約40%の単結合性を有する。「保護基」は、保護されていない官能基を含む(タンパク質分解などの)望ましくない反応を防ぐ基である。アミノ保護基の特定の例は、ホルミル、トリフルオロアセチル、ベンジルオキシカルボニル、(オルト−またはパラ−)クロロベンジルオキシカルボニルおよび(オルト−またはパラ−)ブロモベンジルオキシカルボニルなどの置換型ベンジルオキシカルボニル、ならびにt−ブトキシカルボニルおよびt−アミルオキシカルボニル(amiloxycarbonyl)などの脂肪性オキシカルボニルを含む。このアミノ酸のカルボキシル基を、エステル基内への転換を介して保護することができる。このエステル基は、ベンジルエステル、メトキシベンジルエステルなどの置換型ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル、シクロヘプチルエステル、またはt−ブチルエステルなどのアルキルエステルを含む。保護基の必要がない場合であっても、ニトロもしくはトシル、メトキリベンゼンスルホニルまたはメチレンスルホニル(mesitylenesulfonyl)などのアリールスルホニルによりこのグアニジノ部を保護することができる。イミダゾールの保護基は、トシル、ベンジルおよびジニトロフェニルである。トリプトファンのインドール基を、ホルミルにより保護してもまた保護しなくてもよい。
【0061】
これらペプチドの修飾において、特にこれらの生体内での生存を改善することを目的とする。1つの型の修飾は、ポリエチレングリコール(PEG)のNまたはC末端への添加である。PEGは、水との高い溶解度、溶液中の高移動度、および低免疫原性などの、ペプチドを理想のキャリヤとする多くの特性を有することが当業者に知られている。この修飾は、同様に、エキソペプチダーゼからのペプチドをも保護し、したがって、生体内で全体の安定性を増加させる。
【0062】
エンドペプチターゼまたはエキソペプチダーゼによるペプチドの分解に現在使用される他の修飾は、アセチル化またはグリコシル化などのN−末端修飾、ペプチドの特定の部位の天然ではないアミノ酸(β―アミノおよびα―トリフルオロメチルアミノ酸)のアミド化および使用などのC−末端修飾を含む。
【0063】
ペプチドの分子の寸法を増加させる別の代替的方法は、ヒトγイムノグロブリンのFcドメインに対するペプチドの遺伝的融合またはアルブミンへのペプチドの融合である。
【0064】
本発明の別の目的は、薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わされた本明細書に上述される少なくとも1つのペプチドを含む薬学的組成物であり、このペプチドは、リン酸化pYXモチーフ(配列番号1)を含み、各Xは、独立してMまたはNleであり、Xは、いずれかのアミノ酸であり、好ましくは、天然に存在するいずれかのアミノ酸である。
【0065】
用語「薬学的に許容可能な」は、過度の毒性がなく、哺乳類に対して投与されてもよい化合物および組成物を意味する。したがって、「薬学的に許容可能な賦形剤」は、動物、好ましくはヒトに投与される場合に、有害な、アレルギー性、または他の有害な反応を生成しない賦形剤である。この薬学的に許容可能な賦形剤は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。ヒトへの投与の場合の調製は、FDAの生物局の基準で要求される、無菌性、発熱性、総括的安全性および純度の基準と合致するべきである。
【0066】
適切な賦形剤は、水、生理食塩水、リンガー液、ブドウ糖溶液およびエタノール、グルコース、スクロース、デキストラン、マンノース、マニトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール(PEG)、リン酸塩、酢酸塩、ゼラチン、コラーゲン、Carbopol(登録商標)、植物油などの溶液を含む。たとえば、BHA、BHT、クエン酸、アスコルビン酸、テトラサイクリンなどの適切な保存剤、安定剤、酸化防止剤、抗菌剤および緩衝剤を追加的に含んでもよい。
【0067】
本明細書の組成物に使用されてもよい薬学的に許容可能な賦形剤の別の例は、限定するものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、置換型植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩またはプロタミン、硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、蜜蝋、ポリエチレン‐ポリオキシプロピレン‐ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂などの塩または電解質を含む。
【0068】
1つの実施形態において、本発明の組成物は、界面活性剤(たとえば、ヒドロキシプロピルセルロース)、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体性ポリエチレングリコールなど)を含む溶媒および分散媒などのキャリヤ、それらとのの適切な混合物、たとえば、ピーナッツ油およびごま油などの植物油、糖または塩化ナトリウムなどの等張剤、たとえば、レシチンなどのコーティング剤、たとえば、ステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収遅延剤、たとえば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムクロロブタノール、チメロサールなどの保存剤、たとえば、ホウ酸、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの緩衝液、たとえば、デキストラン40、デキストラン70、ブドウ糖、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムなどの等張化剤、たとえば、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ尿素などの酸化防止剤および保存剤、たとえば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロクサマー282、およびチロキサポールなどの非イオン性湿潤剤および非イオン性清澄剤、たとえば、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース(ydroxmethylpropylcellulose)、ラノリン、メチルセルロース、ワセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなどの粘度変性剤などのいくつかの賦形剤を含んでいてもよい。
【0069】
1つの実施形態において、この組成物は薬学的に許容可能な塩のペプチドを含んでもよい。
【0070】
薬学的に許容可能な塩の例は、無機塩基を有する塩、有機塩を有する塩、無機酸を有する塩、有機酸を有する塩、塩基性アミノ酸または酸性アミノ酸などを有する塩を含む。無機塩を有する塩の例は、ナトリウム塩、およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、ならびにアンモニウム塩を含む。有機塩基を有する塩の例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、およびN,N’−ジベンジルエチレンジアミンを有する塩を含む。無機酸を有する塩の例は、塩酸、ホウ酸、硝酸、硫酸、およびリン酸を有する塩を含む。有機酸を含む塩の例は、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp−トルエンスルホン酸を有する塩を含む。塩基性アミノ酸を有する塩の例は、アルギニン、リシンおよびオルニチンを有する塩を含む。産生アミノ酸を有する塩の例は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を有する塩を含む。適切な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,p 1418,1985に開示され、その全開示が、本明細書に参照により組み込まれる。
【0071】
本発明の1つの実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸およびリン酸化GpYXSモチーフ(配列番号33)を含み、各Xは独立して、MまたはNleであり、Xは、P、F、またはMである。
【0072】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸およびリン酸化DpYXSモチーフ(配列番号34)を含み、各Xは独立して、MまたはNleであり、Xは、PまたはNである。
【0073】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸およびリン酸化EpYXNXDモチーフ(配列番号35)を含み、各Xは独立して、MまたはNleである。
【0074】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、6〜20のアミノ酸およびリン酸化DpYXTXQモチーフ(配列番号36)を含み、各Xは独立して、MまたはNleである。
【0075】
本発明の別の目的は、癌を処置または癌処置に使用される上述のペプチドまたは上述の薬学的組成物である。
【0076】
本発明の別の目的は、癌を処置する方法であり、薬学的に有効な量の本発明のペプチドの少なくとも1つを必要に応じて対象に投与することを含む方法である。
【0077】
本発明により、この対象は、いずれかの動物、好ましくはヒトである。
【0078】
「薬学的に有効な用量または量」は、望ましい生物学的結果となる十分な値の用量を意味する。この結果は、ある疾患の兆候、症状、または原因の軽減または生物学的系の他の望ましい変化であり得る。好ましくは、この用量または量は、癌細胞を死滅させることにより癌の状態を軽減させるのに十分であり、癌の成長および/または転移を阻害する結果となるために十分な量を意味する。
【0079】
本発明のペプチド、組成物、および方法により処置される癌は、限定するものではないが、
心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫および奇形腫;
肺:非小細胞肺癌、気管支原性肺癌(扁平細胞、未分化微小細胞(undifferentiated small cell)、未分化大細胞、腺癌)、肺胞性(細気管支)細胞腫、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫様の過誤腫(chondromatosis hamartoma)、中皮腫;
胃腸管系:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(細胞腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(腺管癌ductal、腺癌、膵島細胞腺腫、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍)、小腸造影(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫)、結腸、結腸直腸、直腸;
泌尿生殖路:腎臓(腺癌、Wihn腫瘍(Wihn’s tumor)[腎芽腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胚性癌腫、奇形腫、絨毛癌、肉腫、間細胞腫、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);
肝臓:肝細胞腫(肝細胞癌)、胆管細胞癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;
骨:骨肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫、多発性骨髄腫、悪性骨巨細胞腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨症(osteocartilaginous exostoses))、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨腫および巨細胞腫;
神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形神経膠芽腫、乏突起神経膠腫、シュワン腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);
婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(子宮頸癌、前腫瘍性子宮頸部形成異常)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、ムチン性嚢胞腺癌、分類不能癌]、悪性顆粒膜/莢膜細胞腫(granuEosa−thecal cell tumors)、セルトリー・ライデッグ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫m)、腟(腎明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状横紋筋肉腫[胎児型横紋筋肉腫]、卵管[細胞腫]);
血液学的:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンスリンパ腫[悪性リンパ腫];
皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、黒子性異形成母斑(moles dysplastic nevi)、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;および
副腎:神経芽細胞腫を含む。
【0080】
本発明のペプチド、組成物および方法により処置される癌は、限定するものではないが、乳癌、前立腺癌、結腸癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、脳の癌、精巣癌、胃癌、膵臓癌、皮膚癌、小腸癌、大腸癌、咽頭癌、頭頸部癌、口腔癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、腎臓癌、甲状腺癌および血液性癌を含む。
【0081】
本発明のペプチド、組成物および方法により処置される癌は、乳癌、前立腺癌、結腸癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌および非小細胞肺癌を含んでもよい。
【0082】
本発明のペプチド、組成物および方法により処置される癌は、乳癌、結腸癌、(結腸直腸癌)、および肺癌(非小細胞肺癌)を含んでもよい。
【0083】
本発明のペプチド、組成物および方法により処置される癌は、リンパ腫または白血病を含んでもよい。
【0084】
本発明のペプチド、組成物および方法により処置される癌は乳癌、膀胱癌、結腸癌、口腔腫瘍、進行性腫瘍、ヘアリーセル白血病、黒色腫、進行行性頸部腫瘍(advanced head and neck)、転移性腎細胞癌、非ホジキンスリンパ腫,転移性乳癌、乳腺癌、進行性黒色腫、膵臓、胃、神経膠芽腫、肺、卵巣、非小細胞肺癌、前立腺、小細胞肺癌、腎細胞癌、多様な固形腫瘍、多発性骨髄腫、転移性前立腺癌、悪性神経膠腫、腎癌、リンパ腫、不応性転移性疾患、難治多発性骨髄腫(refractory multiple myeloma)、子宮頸癌、カポジ肉腫、反復性未分化神経膠腫(recurrent anaplastic glioma)、および転移性結腸癌などの血管形成関連疾患を含んでも良い。
【0085】
本発明のペプチド、組成物および方法は、腫瘍細胞の転移の疾患をも防ぎ、または減少させる。
【0086】
さらに本発明の範囲内に含まれるものは、血管形成疾患に関連する疾患を処置または予防する方法であり、本発明のペプチドの薬学的有効量を処理するような必要のある対象へ投与することを含む。
【0087】
血管形成関連疾患は、新生血管疾患(たとえば、静脈うっ血性網膜症、糖尿病網膜症、未熟児網膜症(網膜静脈閉塞症、老人性黄斑変性、角膜血管新生、新生血管緑内障)、アテローム性動脈硬化、関節炎、乾癬、肥満およびアルツハイマー病を含む。
【0088】
さらに本発明の範囲内に含まれるものは、再狭窄、炎症、自己免疫疾患およびアレルギー/喘息などの過剰増殖性障害を処置または防止する方法であり、本発明の薬学的有効量のペプチドの処理を必要とするような対象に投与することを含む。
【0089】
本発明により、本発明のペプチドは、傾向的、局所的、または、皮下注射、経皮吸収または筋肉内注射、物質徐放貯蔵部の埋め込み(implantation of sustained release depots)、静脈内注射、鼻腔内投与などを含む、非経口的方法により投与されてもよい。
【0090】
本発明の1つの実施形態において、本発明のペプチドは、眼球内に投与されてもよい。本明細書に使用される「眼球内に」は、眼球内の投与経路によりという意味を有する。1つの実施形態において、眼球内の投与経路は、目の内部に投与するものであり、好ましくは、目の後嚢部内へ、より好ましくは、硝子体内へ投与するものである。好ましい眼球内経路は、硝子体内注射である。本明細書に使用される、「目の内側」は、限定するものではないが、眼球内に見出されるいずれかの機能的(例えば、視覚のための)または構造的組織または眼球内部を部分的にまたは完全に整列させる組織または細胞相を含む。領域の特定の例は、前眼房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、網膜黄斑、および網膜ならびに後眼部の領域または部位を血管新生するまたは神経支配する血管および神経を含む。
【0091】
本発明の1つの実施形態において、本発明のペプチドは、たとえば、本発明のペプチドまたは組成物を含む点眼用溶液の点眼投与または眼の洗浄などの目への局所的な投与により投与されてもよい。
【0092】
本発明により、本発明のペプチドを含む組成物は、水性溶液、乳濁液、クリーム、軟膏、懸濁液、ゲル、リポソーム懸濁液などであってもよい。
【0093】
本発明によりこのペプチドは、この組成物のミリリットルまたはグラムあたり約0.0001〜500mg、好ましくは、この組成物のミリリットルまたはグラムあたり約0.001〜50mg、より好ましくはこの組成物のミリリットルまたはグラムあたり約0.01〜5mg、さらに好ましくはこの組成物のミリリットルまたはグラムあたり約0.1g〜1mgの量の本発明のペプチドを含む。
【0094】
本発明により、この組成物は、組成物の総容積の約0.01重量%〜90重量%、好ましくは、約0.1重量%〜10重量%、より好ましくは約1〜5重量%の量の本発明のペプチドを含む。
【0095】
本発明の別の実施形態において、本発明の少なくとも1つのペプチドを含む組成物は、少なくとも1種の細胞傷害性薬物、化学療法剤または抗癌剤をさらに含んでもよい。
【0096】
本発明の別の実施形態において、本発明の少なくとも1つのペプチドを含む組成物は、細胞傷害性薬物、化学療法剤または抗癌剤の少なくとも1つと組み合わせて使用してもよい。
【0097】
抗癌剤の例は、限定するものではないがたとえば、シクロホスファミド(CTX;e.g. CYTOXAN(登録商標))、クロラムブシル(CHL;e.g. LEUKERAN(登録商標))、シスプラチンc(CisP;e.g. PLATINOL(登録商標))、オキサリプラチン(e.g. ELOXATIN(商標))、ブスルファン(e.g. MYLERAN(登録商標))、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾトシン、トリエチレンメラミン(TEM),mitomycin Cなどのアルキル化作用を有するアルキル化剤(複数可)、たとえば、メトトレキサート(MTX)、エトポシド(VP16;e.g. VEPESID(登録商標))、6−メルカプトプリン(6MP)、6−チオグアニン(thiocguanine)(6TG)、シタラビン(Ara−C)、5−フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン(e.g. XELODA(登録商標))、ダカルバジン(DTIC)などの代謝抵抗物質、たとえば、アクチノマイシン D、ドキソルビシン(DXR;e.g. ADRIAMYCIN(登録商標))、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンなどの抗菌剤、たとえば、たとえば、ビンクリスチン(VCR)およびビンブラスチンなどのビンカアルカロイド類、ならびに、たとえば、パクリタキセル(e.g. TAXOL(登録商標))およびパクリタキセル誘導体などの他の抗腫瘍剤、細胞分裂阻害剤、デキサメタゾン(DEX;e.g. DECADRON(登録商標))などのグルココルチコイド、およびたとえばプレドニゾンなどの副腎皮質ステロイド、たとえばヒドロキシ尿素などのヌクレオシド酵素阻害剤、たとえば、アスパラギナーゼなどのアミノ酸枯渇酵素(amino acid depleting enzymes)、ロイコボリン、フォリン酸、ラルチトレキセド、および他のフォリン酸誘導体および類似の多様な抗腫瘍剤を含む。また、
以下の薬剤、アミホスチン(e.g. ETHYOL(登録商標)),ダクチノマイシン、メクロレタミン((ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、ロムスチン(lornustine)(CCNU)、ドキソルビシンリポ(doxorubicin lipo)(e.g. DOXIL(登録商標))、ゲムシタビン(e.g. GEMZAR(登録商標))、リポダウノルビシン塩酸塩(daunorubicin lipo)(e.g. DAUNOXOME(登録商標))、プロカルバジン、マイトマイシン、ドセタキセル(e.g.TAXOTERE(登録商標))、アルデスロイキン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、10−ヒドロキシ 7−エチルl−カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンα、インターフェロンβ、ミトキサントロン、トポテカン、リュープロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペグアスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、またはクロラムブシルも、同様に追加的に使用されてもよい。
【0098】
化学療法的レジメンにおける上述の細胞傷害性薬物、化学療法剤および他の抗癌剤の使用は、一般的に、癌利用技術において特徴づけられる。これらを本明細書で使用するにあたり、毒性を管理し、かついくらか調節して投与経路および用量を制御するため、同一の考察下で使用した。一般的なこの細胞傷害性薬物の有効な用量は、製造者により推奨される範囲内であり得、かつ、動物モデルにおける生体外反応(複数可)により示され、最大約1桁の大きさの濃度または量にまで低減することができる。したがって、この実際の用量は、内科医の判断、患者の状態、および初代悪性培養細胞または抗癌剤を投与された組織試料(histocultured tissue sample)の生体外反応の反応性または適切な動物モデルにおいて得られた反応性に基づく処置法の有効性に依存するものである。
【0099】
本発明は、以下の実験の詳細からよりよく理解されるものである。しかしながら、開示される特定の方法および結果が、以下に続く請求項をより完全に開示するための本発明の単なる例示であり、いずれの方法も限定する意図を持たないことが、当業者に理解される。
【実施例】
【0100】
実施例1
材料および方法。
材料
EGM−2MV培地は、Lonza(Verviers,Belgium)製である。カルシウム―マグネシウムのないPBS、トリプシン―EDTA(バーセネート液)は、Eurobio(Les Ulis,France)で調製された。マトリゲルは、Becton Dickinson(Le Pont de Claix, France)から購入した。細菌用LB培地、Thermoscriptおよび高忠実度のPlatinum HIFI酵素を、Invitrogen(Cergy Pontoise,France)から得た。Rneasyミニキット、QiaquickおよびQiaprepミニプレップを、ロシュ・アプライド・サイエンスのQiagen(Courtaboeuf,France)から得た。GeneCustにより、化学的修飾としてN−末端のアセチル化およびC−末端のアミド化を有するよう化学的にペプチドを合成した。すべてのペプチドは、HPLC−精製ステップを対象とし、少なくとも95%の純度を有する凍結乾燥した粉末として準備された。
【0101】
方法
血管新生アッセイ
ヒト微小血管内皮細胞(HMEC)の血管新生をAl−Mahmood et al(2009,JPET,2009;58:933)により開示されるマトリゲルアッセイを使用して生体外で導入した。本方法は、内皮細胞の分化に基づき、マトリゲルマトリックス上に毛管構造を形成する。マトリゲルは、調製されたEHSマウス腫瘍であり、このことは、IV型コラーゲン、エンタクチン、プロテオヘパラン硫酸、および他の成長因子を含む基底膜タンパク質の複合混合物を表す。
【0102】
短時間に、250μlのマトリゲルを24ウェル培養プレートに移し、37℃で30分間インキュベートし、マトリックス溶液を凝固させる。完全なEGM−2MV増殖培地において増殖させたHMECをトリプシンにより収集し、同一の増殖培地において懸濁し、70 000個の細胞を含む500μlを、ペプチドが存在する、またはペプチドが存在しない各ウェル中の凝固させたマトリゲルの上に添加した。37℃で18〜24時間、5%のCOを含む加湿された大気中に維持した。内皮チューブ形成を倒立光学顕微鏡下で発見し、かつ撮影した。
【0103】
増殖アッセイ
5000のHMEC[5000細胞/増殖培地(ml)]を96−ウェル細胞培養グレードμプレート(100μ/ウェル)中に播種し、37℃で42時間、指示される最終濃度の指示されるペプチドとインキュベートした。この細胞増殖を、メチルチアゾールテトラゾリウム(MTT)を使用して測定した。MTT(シグマ)を、5mg/mlでPBS中に溶解し、この溶液を(0.22μmで)濾過し、かつ10μlを96ウェルμプレートの各ウェルに添加した。37℃のインキュベートから3時間後、この上清を廃棄し、各ウェルに100μlのDMSOを添加することにより溶解した。570℃での光学密度を、KC4(Bio−Tek,Colmar France)に連結したμQuantμリーダーを使用して測定し、この細胞増殖の阻害を、(最大の増殖反応を表す処置していないHUVECのウェルから得られたOD)対照と比較して測定した。このブランクとしてのウェルのOD値(細胞のないウェルから得られるOD値)を引いてこのODを計測し、対照(最大増殖反応、すなわち100%を表す処置していないHUVECのウェルから得られたOD)と比較して細胞増殖の阻害を計測した。
【0104】
タンパク質定量
血清欠乏性HMECを、異なる濃度のペプチドと、37℃で24時間インキュベートし、6時間5%のCO下においた。氷冷したPBSで3回洗浄した後、細胞をタンパク質抽出バッファー(PEB)(pH 7.5の20mM Tris−HCl、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1% トリトン、25mM ピロリン酸ナトリウム、1mM β−グリセロ−リン酸塩、1mM NaVo、1μg/mlロイペプチン(leupeptine)、1μM PMSF)で懸濁した。このタンパク質含有物をブラッドフォード法により測定した。
【0105】
細胞処置および免疫沈降法
EGM−2MV(80%のコンフルエンス)において増殖したヒトECを本発明のペプチドまたはビヒクルと、指定された時間、インキュベートし、冷却されたPBSにおいて3回洗浄し、4度で30分間インキュベートすることにより、直接、氷冷した溶解バッファー(pH 7.5の10mM Tris、150mM NaCl、1mM PMSF、0.5μg/ml ロイペプチン,1μg/ml ペプスタチンAおよび1μg/ml アプロチニン)中に溶解した。細胞溶解物を104gで10分間スピン(遠心)し、不溶性物質を廃棄し、かつ上清をブラッドフォード法により測定したタンパク質含有物を調整した。25μlのタンパク質Gプラスアガロースビーズ(Santa Cruz)で細胞溶解物(1ml)を30分間プレクリアし、その後、タンパク質に2μgの示された抗体を添加し、1時間インキュベートした。この免疫複合体を、タンパク質アガロースビーズでプルダウンし、このビーズを溶解バッファーで3回洗浄した。この免疫沈降物を還元条件下でNuPAGE(登録商標)4−12%ビス―トリスゲル電気泳動により分離した。この膜を0.1%のv/v Tween−20を含む5%(w/v)脱脂乳で1時間ブロッキングした。この膜を、示された第1の抗体で2時間インキュベートした後、3回洗浄し、適切なHRP−接合型第2の抗体でインキュベートし、強化した化学発光、ECL plus (GE Healthcare,Velizy,France)により明らかにした。
【0106】
結果
以下のペプチドを検出した。
・GpYMFMS GS−1 (配列番号37)
・EpYMNMD GS−2 (配列番号38)
・DpYMTMQ GS−3 (配列番号39)
・NYICMG GS−0 (対照としてチロシン非リン酸化ペプチドを使用した) (配列番号40)
【0107】
生体外上での本発明によりリン酸化pYXモチーフを有するペプチドの影響
設計されたチロシンリン酸化および非リン酸化ペプチドを、生体外の血管新生上での影響を試験した。各ペプチドのHMECおよび500μg/mlの最終濃度を使用して生体外血管新生アッセイの結果を、図1に表示した。これらの結果において、対照として使用したチロシン非リン酸化ペプチドGS−0は、生体外血管新生阻害活性を有さなかったかつ/または無視できるほど小さいものであったことを示した(図1)。同様に、同一の図中に表示される結果において、チロシンリン酸化微小ペプチドGS−1、GS−2、およびGS−3は、生体外血管新生阻害活性を有することを示した。
【0108】
p85関連上のIRS−1に対するペプチドの影響
IRS−1のチロシンリン酸化が、酵素PI−3Kの調節サブユニット(p85)への会合(association)を引き起こし、かつこの事象が、この後の重要な酵素活性を増加させることが広く認められているように、IRS−1による酵素PI−3Kの調節サブユニット(p85)の動員におけるチロシンリン酸化および非リン酸化ペプチドの影響を見出した。そのため、ヒト微小血管内皮細胞(HMEC)を、チロシンリン酸化および非リン酸化ペプチド(最終濃度が、500μg/mlのペプチド)とインキュベートし、続いて細胞を溶解させ、タンパク質IRS−1を免疫沈降した。この免疫沈降物を、SDS−PAGEに分解し、タンパク質を膜に移し、この膜を、抗−p85 PI3Kモノクローナル抗体で免疫ブロットした。
【0109】
図2に表示された結果において、対照として使用したチロシン非リン酸化ペプチドGS−0がIRS−1により酵素PI3Kの調節サブユニット(p85)の動員上の影響がないかつ/または無視できるほど小さいことを示す。同様に、同一の図に示された結果において、チロシンリン酸化GS−2が、IRS−1により酵素PI3Kの調節サブユニット(p85)の動員上で適度な阻害効果を有し、かつチロシンリン酸化ペプチドGS−1が、IRS−1により酵素PI3Kの調節サブユニット(p85)の動員上で非常に強い阻害効果を有することを示す。
【0110】
HMEC中のmTOR上のペプチドの影響
GS−0およびGS−1とのインキュベートの後のHMEC中のmTORの状態を調査した。HMEC(ビヒクル)が、mTORの重要なレベルを持つという結果を示した(図3AおよびB、抗―mTor抗体、Ozyme2971(Ser2448))。ペプチドGS−0とインキュベートしたGS−0HMEC細胞系は、インキュベートした細胞として、等量のmTORを有する。対照的に、GS−1およびGS−2とそれぞれインキュベートしたHMEC細胞系は、ビヒクルまたはGS−0とインキュベートしたHMECと比較してより少ない量のmTORを有する。
実施例2
【0111】
方法
細胞培養
H460細胞系は、ヒト非小細胞肺癌(NSCL)と適合する細胞(学)を有する。細胞を、5%のCOを含む加湿した37℃の大気中において、10%のFCSを含むMEM培地中で増殖させた。マイコプラズマがないことを、PCRマイコプラズマ検出キット(タカラ)を使用して確認した。
【0112】
ヌードマウスの腫瘍異種移植片および処置
すべての実験は、Genopole’s institutional animal care and use committeeにより概説され、すべての実験を会の動物ケアのガイドラインに従って実行した。生後5〜6週間の雌のBALB/c nu/nuマウス(n=30)を使用した。この動物を、12時間光を当て、12時間暗闇に置くスケジュールで、層流キャビネット内で病原体フリーの条件下で飼育し、オートクレーブした標準的な固形飼料および水を自由に与えた。このNCI−H460ヒトNSCL細胞系を、American Type Culture Collection (ATCC)から獲得し、細胞を、1μMのピルビン酸ナトリウムを追加したRPMI1640培地において増殖した。(200μlのHBSS中10細胞の)腫瘍細胞を、マウスの側腹部に皮下注射した。移植後、腫瘍量をノギス(Vernier calliper)により測定し、Balsari A et al. (Balsari A et al. (2004) Eur J Cancer 40:1275−1281)に記述されるよう測定した。約150mmの腫瘍量がこの動物に無作為に存在し、かつ、この動物を5つの動物の5つのグループに分けた。対照マウス(グループ1)に、毎日ビヒクル(10%のDMSOを含む緩衝生理食塩水)を腹腔内に注射した。GS−0をビヒクル内に溶解し、かつ(グループ2)に毎日(12回)腹腔内に注射した。GS−1をビヒクル内に溶解し、かつ(グループ3)に毎日(12回)腹腔内に注射した。腫瘍量および体重を処置期間(12日)中、1日おきに測定した。
【0113】
ペプチドの調製および希釈
対象ペプチドGS−0と同様に、GS−1を、DMSO中に可溶化し、この結果として得られる溶液を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で10倍に希釈し、10mlのDMSOを含むPBS1mlあたり1mgの濃度にした。この濃度で、すべてのペプチドがPBS中10%のDMSO中に可溶となった。
【0114】
結果
NCI−H40を有するマウスの平均体重および毒性の課題
体重管理および毒性の結果を、表1に示す。このビヒクルでは、マウスの行動に影響がなく、体重増加は標準的であり、どの動物も早期に死亡しなかった。8mg/kgの用量で試験物質GS−0およびGS−1で処置した過程の間、これらのマウスに毒性および体重の減少が見られなかった。
【表1】
【0115】
生体外腫瘍増殖
平均腫瘍量の結果を、図4および表2に示す。ビヒクル、GS−0およびGS−1で処置したマウスの平均腫瘍量の時間ごとの進化に関して、処置期間(12日)中、3つのグループの動物の間に、統計的にみて重要な差異があったことを示した。処置の終わりには、ビヒクルおよびGS−0で処置されたグループの平均腫瘍量は、お互いに、統計学的に差(p>0.05)がない1165.64+769.22(n=5)および1114.83+534.50(n=5)mmであり、このことは、腫瘍NCI−H460の生体内増殖上で重要な影響がない(p>0.05)ことを示す。
【0116】
マウスの平均腫瘍量の時間ごとの進化に関して、GS−1で処置したマウスが、処置期間(12日)において、ビヒクルおよびGS−0で処置したマウスと統計学的に異なる平均腫瘍量を有することを示した(図4および表2)。グループ1、ビヒクル処置動物(1165.64+769.22mm;n=5)と比較して、GS−1(234.98+69.22mm;n=5)で処置したグループの動物において、平均腫瘍量が非常に低減した。このビヒクルで処置したグループおよびGS−1で処置したグループの間の差異は、推計的有意性(p=0.0004)に達した。GS−1(234.98+69.22mm;n=5)で処置したグループおよびGS−0(1114.83+534.50mm;n=5)で処置したグループの間の差異は、同様に、統計学的に異なり(p<0.05)、このことは、ペプチドGS−1が、腫瘍NCI−H460の生体内増殖において非常に重要かつ有力な影響(p=0.0004)を有することを示す。したがって、ペプチドGS−1の有力な生体内抗腫瘍活性で、12日間連続で8mg/kgのGS−1を毎日注射することが、生体内の腫瘍増殖を約80%阻害することが認識されることを示す。
【表2】
結果として、ペプチドGS−1で、生体内のNCI−H460に対して統計的に重要かつ有力な抗腫瘍活性を示す。
実施例3
【0117】
方法
細胞培養
H460細胞系は、ヒト非小細胞肺癌(NSCL) と適合する細胞(学)を有する。この細胞を、5%のCOを含む加湿した37℃の大気中において、10%のFCSを含むMEM培地中で増殖させた。マイコプラズマがないことを、PCRマイコプラズマ検出キット(タカラ)を使用して確認した。
【0118】
ヌードマウスの腫瘍異種移植片および処置
すべての実験は、Genopole’s institutional animal care and use committeeにより概説され、すべての実験を会の動物ケアのガイドラインに従って実行した。生後5〜6週間の雌のBALB/c nu/nuマウス(n=30)を使用した。この動物を、12時間光を当て、12時間暗闇に置くスケジュールで、層流キャビネット内で病原体フリーの条件下で飼育し、オートクレーブした標準的な固形飼料および水を自由に与えた。このNCI−H460ヒトNSCL細胞系を、American Type Culture Collection (ATCC)から獲得し、細胞を、1μMのピルビン酸ナトリウムを追加したRPMI1640培地において増殖した。(200μlのHBSS中10細胞の)腫瘍細胞を、マウスの側腹部に皮下注射した。移植後、腫瘍量をノギス(Vernier calliper)により測定し、Balsari A et al. (Balsari A et al. (2004) Eur J Cancer 40:1275−1281)に記述されるよう測定した。約150mmの腫瘍量がこの動物に無作為に存在し、かつ、この動物を5つの動物の5つのグループに分けた。対照マウス(グループ1)に、毎日ビヒクル(10%のDMSOを含む緩衝生理食塩水)を腹腔内に注射した。GS−0をビヒクル内に溶解し、かつ(グループ2)に毎日(12回)腹腔内に注射した。GS−2をビヒクル内に溶解し、かつ(グループ3)に毎日(12回)腹腔内に注射した。腫瘍量および体重を処置期間(12日)中、1日おきに測定した。
【0119】
ペプチドの調製および希釈
対象ペプチドGS−0と同様に、GS−2を、DMSO中に可溶化し、この結果として得られる溶液を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で10倍に希釈し、10mlのDMSOを含むPBS1mlあたり1mgの濃度にした。この濃度で、すべてのペプチドがPBS中10%のDMSO中に可溶となった。
【0120】
結果
NCI−H40を有するマウスの平均体重および毒性の課題
体重管理および毒性の結果を、表3に示す。このビヒクルでは、マウスの行動に影響がなく、体重増加は標準的であり、かつどの動物も早期に死亡しなかった。8mg/kgの用量で試験物質GS−0およびGS−2で処置した過程の間、これらのマウスに毒性および体重の減少が見られなかった。
【表3】
【0121】
生体内腫瘍増殖
この平均腫瘍量の結果を図5および表4に示す。ビヒクル、GS−0およびGS−2で処置したマウスの平均腫瘍量の時間ごとの進化に関して、処置期間(12日)中、3つのグループの動物の間に、統計的にみて重要な差異があったことを示した。処置の終わりの時点では、ビヒクルおよびGS−0で処置されたグループの平均腫瘍量は、お互いに、統計学的に差(p>0.05)がない、1165.64+769.22(n=5)および1114.83+534.50(n=5)mmであり、このことは、腫瘍NCI−460の生体内の増殖に重要な影響がない(p>0.05)ことを示す。
【0122】
同様に、マウスの平均腫瘍量の時間ごとの進化に関して、GS−2で処置したマウスが、処置期間(12日)において、ビヒクルおよびGS−0で処置したマウスと統計学的に異なる平均腫瘍量を有することを示した(図4および表2)。グループ1、ビヒクル処置動物(1165.64+769.22mm;n=5)と比較して、GS−2(297.28+142.67mm;n=5)で処置したグループの動物において、平均腫瘍量が非常に低減した。このビヒクルで処置したグループおよびGS−1で処置したグループの間の差異は、推計的有意性(p=0.0065)に達した。GS−2(297.28+142.67mm;n=5)で処置したグループおよびGS−0(1114.83+534.50mm;n=5)で処置したグループの間の差異は、同様に、統計学的に異なり(p<0.05)、このことは、ペプチドGS−2が、腫瘍NCI−H460の生体内増殖において非常に重要かつ有力な影響(p=0.0065)を有することを示す。したがって、ペプチドGS−1の有力な生体内抗腫瘍活性で、12日間連続で8mg/kgのGS−2を毎日注射することが、生体内の腫瘍増殖を約80%阻害することが認識されることを示す。
【表4】
結果として、ペプチドGS−2で、生体内のNCI−H460に対して統計的に重要かつ有力な抗腫瘍活性を示す。

図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]