(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170877
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】液面浮遊物回収装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/40 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
C02F1/40 B
C02F1/40 G
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-105828(P2014-105828)
(22)【出願日】2014年5月22日
(65)【公開番号】特開2015-221398(P2015-221398A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2016年3月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・株式会社ワールドケミカルが、北島幸治(神奈川県横浜市青葉区鴨志田町537−7)に、芳賀康一、森洋二、中島利佳が発明した「液面浮遊物回収装置」の内容を記載した書面及び図面を平成26年3月11日に開示し、渡した。
(73)【特許権者】
【識別番号】391001044
【氏名又は名称】株式会社ワールドケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 康一
(72)【発明者】
【氏名】森 洋二
(72)【発明者】
【氏名】中島 利佳
【審査官】
高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−223832(JP,A)
【文献】
特開平08−155440(JP,A)
【文献】
実開平04−026088(JP,U)
【文献】
実開平03−061983(JP,U)
【文献】
特開平11−090425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/40
E02B 15/00 − 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカム・油が混入・浮遊する液層内に配設されるフロート部と、
該フロート部の浮力により前記液層の液面付近に保持されて該液面に浮上するスカム・油を含む液面浮遊物を流入させるゲート部と、
該ゲート部に接続することにより、該ゲート部から流入する液面浮遊物を液層外へ移送する回収管と、
該回収管の移送経路中に配設されるポンプ部と、
該ポンプ部が載置される本体台座部と、
を有して構成される液面浮遊物回収装置において、
該液面浮遊物回収装置は、前記本体台座部が前記液層内に載置される構成の載置型であり、
前記フロート部は、前記ゲート部の周囲近傍に1個又は複数個が配設される構成であると共に、前記ゲート部を浮上支持することにより液面付近に保持するゲート部支持手段を有し、更に、前記ゲート部の周囲近傍を回転することによって該フロート部に接近乃至は接触する位置に浮遊する液面浮遊物を前記ゲート部に掻き寄せる構成であり、
前記フロート部の近傍には、複数個の羽根状部材から成る粉砕羽根部が配設されており、
該粉砕羽根部は、前記フロート部の近傍において前記液層の液面に沿って回動乃至は回転することによって該粉砕羽根部に接近乃至は接触する位置に浮遊する液面浮遊物を粉砕・分離・分断する構成であり、且つ前記フロート部が回転する際に、該フロート部の少なくとも一部が前記粉砕羽根部に接触して該粉砕羽根部を回動乃至は回転させる構成であること、
を特徴とする液面浮遊物回収装置。
【請求項2】
前記フロート部を回転させるモータの如き駆動装置を有しており、該駆動装置は前記本体台座部に直接乃至は間接的に支持され、伝達手段を介して前記フロート部を回転させる構成であることを特徴とする請求項1に記載の液面浮遊物回収装置。
【請求項3】
前記駆動装置が、前記フロート部の回転軸方向上方に配設された構成であることを特徴とする請求項2に記載の液面浮遊物回収装置。
【請求項4】
前記回収管が、前記液層内から液面上へと略垂直に立ち上がる立上部を有し、この立上部に駆動装置支持手段を介して前記駆動装置が支持固定された構成であることを特徴とする請求項2又は3に記載の液面浮遊物回収装置。
【請求項5】
前記粉砕羽根部が、前記液層の液面位置に応じて上下動可能な構成であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液面浮遊物回収装置。
【請求項6】
前記粉砕羽根部が、フロート機能を有することにより前記液層の液面位置に応じて上下動可能な構成であることを特徴とする請求項5に記載の液面浮遊物回収装置。
【請求項7】
前記回収管が、前記液層内から液面上へと略垂直に立ち上がる立上部を有し、この立上部を回動軸部として前記粉砕羽根部が回動乃至は回転する構成であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液面浮遊物回収装置。
【請求項8】
前記回収管には、該回収管を通して液層外に導出されるスカム・油を含む液面浮遊物について、スカム・油を水から分離回収する分離装置が接続されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液面浮遊物回収装置。
【請求項9】
前記液面浮遊物回収装置を前記液層内の隅部近傍乃至は壁面部近傍に配設して稼働させる構成であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液面浮遊物回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液面浮遊物回収装置に関し、詳しくは塗装工場・食品工場・鉄鋼所・火力発電所・水産加工場・機械類工場等における種々処理槽の液面に浮上するスカム・油等の浮遊物を液層内に載置して回収する載置型の回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装工場・食品工場・鉄鋼所・火力発電所・水産加工場・機械類工場等における種々処理槽の液面に浮上するスカム・油等の液面浮遊物を回収する液面浮遊物回収装置(以下、単に回収装置ということもある。)としては、液面付近に浮上保持させたゲート部から液面浮遊物を流入させ、このゲート部に接続した回収管を介して処理槽外に配設した分離装置に回収した液面浮遊物を移送して分離する構成のものを挙げることができる。
【0003】
このような回収装置は、(1)ゲート部と共にポンプ部等を含む回収本体部をメインフロートの浮力によって液層中に浮上した状態で回収を行う構成の浮上型と、(2)液面浮遊物を流入回収するゲート部は液面付近に浮上保持させるが、ポンプ部等の回収本体部は液層内の底部に載置した状態で回収を行う構成の載置型(例えば、特許文献1及び2参照)と、の2種に大別される。
【0004】
上記(2)の載置型の回収装置は、液面付近に浮上保持させるのはゲート部のみであり、ポンプ部等の他の構成部材は浮上させることなく液層内の底部等に載置しておけばよいため、フロート部を小型且つ簡易にできるだけでなくゲート部周りの装置構成をコンパクトにすることが可能であり、狭小処理槽に用いて適切である。
尚、上記(1)の浮上型の回収装置は、ゲート部のみならずポンプ部等の他の液層内に配設される回収本体部の構成部材の略全てを浮上させるためのフロート部(メインフロート)を必要とするため、フロート部が大型化するだけでなく、ゲート部周りの装置構成のコンパクト化が困難である。
【0005】
上記(2)の載置型の回収装置は、ゲート部を浮上支持させるフロート部を小型化できる等のコンパクトな装置構成が可能であることから、ゲート部への液面浮遊物の接近を阻害する構成部材が少なく該ゲート部への液面浮遊物の流入が円滑に行われるので回収効率が高いという利点をも有している。更に、狭小の廃液ピットの処理に用いる際に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−155440号公報
【特許文献2】特許第5147662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1や2に記載のような上記(2)載置型の回収装置では、回収する液面浮遊物が、浮上スカム・高粘度の浮遊油・不純物の含有量の多い廃油・廃水等のように群生化して塊状となった液面浮遊物である場合、塊状となった液面浮遊物がゲート部の縁部に引掛かった状態となって該ゲート部への流入が妨げられて回収率が著しく低下するという問題点を有している。
【0008】
また、上記(2)の載置型の回収装置の場合、該回収装置の載置場所は一般的に液層内の隅部近傍や壁面部近傍であることが多いが、前記したような群生化して塊状となった液面浮遊物の場合、例えば、
図4に示すようにフロートとフロートとの間で塊状となった液面浮遊物がブリッジ状に群生化し易く、ブリッジ状に群生化した液面浮遊物はゲート部にまで移動することなく滞留したまま増殖して回収不能の状態になってしまうという問題点をも有している。即ち、群生化した液面浮遊物の下部を通った液体(水)だけがゲート部に流入することになり、液面浮遊物は回収することができないのである。
【0009】
そこで本発明の課題は、群生化して塊状となり易いスカム・油等の液面浮遊物であっても確実且つ効率的に回収することが可能な載置型の液面浮遊物回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0011】
1.スカム・油が混入・浮遊する液層内に配設されるフロート部と、
該フロート部の浮力により前記液層の液面付近に保持されて該液面に浮上するスカム・油を含む液面浮遊物を流入させるゲート部と、
該ゲート部に接続することにより、該ゲート部から流入する液面浮遊物を液層外へ移送する回収管と、
該回収管の移送経路中に配設されるポンプ部と、
該ポンプ部が載置される本体台座部と、
を有して構成される液面浮遊物回収装置において、
該液面浮遊物回収装置は、
前記本体台座部が前記液層内に載置される構成の載置型であり、
前記フロート部は、前記ゲート部の周囲近傍に1個又は複数個が配設される構成であると共に、前記ゲート部を浮上支持することにより液面付近に保持するゲート部支持手段を有し、更に、前記ゲート部の周囲近傍を回転することによって該フロート部に接近乃至は接触する位置に浮遊する液面浮遊物を前記ゲート部に掻き寄せる構成であり、
前記フロート部の近傍には、複数個の羽根状部材から成る粉砕羽根部が配設されており、
該粉砕羽根部は、前記フロート部の近傍において前記液層の液面に沿って回動乃至は回転することによって該粉砕羽根部に接近乃至は接触する位置に浮遊する液面浮遊物を粉砕・分離・分断する構成であ
り、且つ前記フロート部が回転する際に、該フロート部の少なくとも一部が前記粉砕羽根部に接触して該粉砕羽根部を回動乃至は回転させる構成であること、
を特徴とする液面浮遊物回収装置。
【0012】
2.前記フロート部を回転させるモータの如き駆動装置を有しており、該駆動装置は前記
本体台座部に直接乃至は間接的に支持され、伝達手段を介して前記フロート部を回転させる構成であることを特徴とする上記1に記載の液面浮遊物回収装置。
【0013】
3.前記駆動装置が、前記フロート部の回転軸方向上方に配設された構成であることを特徴とする上記2に記載の液面浮遊物回収装置。
【0014】
4.前記回収管が、前記液層内から液面上へと略垂直に立ち上がる立上部を有し、この立上部に駆動装置支持手段を介して前記駆動装置が支持固定された構成であることを特徴とする上記2又は3に記載の液面浮遊物回収装置。
【0016】
5.前記粉砕羽根部が、前記液層の液面位置に応じて上下動可能な構成であることを特徴とする上記
1〜4のいずれかに記載の液面浮遊物回収装置。
【0017】
6.前記粉砕羽根部が、フロート機能を有することにより前記液層の液面位置に応じて上下動可能な構成であることを特徴とする上記
5に記載の液面浮遊物回収装置。
【0018】
7.前記回収管が、前記液層内から液面上へと略垂直に立ち上がる立上部を有し、この立上部を回動軸部として前記粉砕羽根部が回動乃至は回転する構成であることを特徴とする上記
1〜6のいずれかに記載の液面浮遊物回収装置。
【0019】
8.前記回収管には、該回収管を通して液層外に導出されるスカム・油を含む液面浮遊物について、スカム・油を水から分離回収する分離装置が接続されていることを特徴とする上記
1〜7のいずれかに記載の液面浮遊物回収装置。
【0020】
9.前記液面浮遊物回収装置を前記液層内の隅部近傍乃至は壁面部近傍に配設して稼働させる構成であることを特徴とする上記
1〜8のいずれかに記載の液面浮遊物回収装置。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に示す発明によれば、群生化して塊状となり易いスカム・油等の液面浮遊物であっても確実且つ効率的に回収することが可能な載置型の液面浮遊物回収装置を提供することができる。
【0022】
特に、ゲート部の周囲近傍に配設されるフロート部が掻き寄せ機能を有する構成により、浮き体として容積を有する構成体の回転による掻き寄せのため液面浮遊物のゲート部への掻き寄せ効果が高い。また、ゲート部を液面付近に保持するために浮上支持するフロート部は、ゲート部と共に液面に対する位置が略一定に保たれることになるので、液面及び液面浮遊物に対する掻き寄せ効果・効率が略一定に保たれるため安定した掻き寄せ効果を得ることができる。
【0023】
更に、フロート部の近傍に配設された複数個の粉砕羽根部が液面に沿って回動乃至は回転する構成により、群生化して塊状となり易い液面浮遊物であっても該粉砕羽根部に接近乃至は接触する位置まで浮遊してきた際に前記羽根状突起によって粉砕・分離・分断するので液面浮遊物の群生化及び滞留、更にはブリッジ化を効果的に防ぐことができる。従って、群生化して塊状となり易い液面浮遊物であってもゲート部から確実且つ効率的に回収することが可能となる。
【0024】
この粉砕羽根部における液面浮遊物の粉砕・分離・分断と、前記したフロート部における液面浮遊物の掻き寄せとの相乗効果によって、群生化して塊状となり易いスカム・油等の液面浮遊物であってもブリッジ化及び群生化を確実に抑制することができるので、液面浮遊物を確実且つ効率的に回収することが可能である。
【0025】
請求項2に示す発明によれば、フロート部を回転させる駆動装置の荷重は回収装置の本体部が受け持つ構成により、フロート部はゲート部を液面付近に保持することが容易となる。
【0026】
請求項3に示す発明によれば、フロート部を効率的に回転させることができる。
【0027】
請求項4に示す発明によれば、回収装置の一構成部材である回収管を用いて駆動装置を支持固定することができるので、構成部材の簡素化・コンパクト化が可能である。
【0028】
請求項5に示す発明によれば、粉砕羽根部を回動乃至は回転させるための専用の駆動装置が不要となる。
【0029】
請求項6に示す発明によれば、粉砕羽根部が回動乃至は回転する際に安定した状態で液面に接触させることができるため、液面浮遊物の群生化及び滞留、更にはブリッジ化をより効果的に防ぐことができる。
【0030】
請求項7に示す発明によれば、粉砕羽根部の液面に対する浮上高さ調整が容易である。
【0031】
請求項8に示す発明によれば、回収装置の一構成部材である回収管を回動軸部として利用できるので、構成部材の簡素化・回収装置のコンパクト化が可能である。
【0032】
請求項9に示す発明によれば、液面浮遊物と共にゲート部から流入した水とスカム・油との分離を液層外で直ちに行うことが可能である。
【0033】
請求項10に示す発明によれば、液層内の隅部近傍や壁面部近傍に載置して運用した際に、液層内の隅部の左右両側の壁面部との間で塊状となった液面浮遊物がブリッジ状に群生化した場合であっても、回転するフロート部と回動乃至は回転する粉砕羽根部とによって液面浮遊物を粉砕・分離・分断するので群生化及び滞留、更にはブリッジ化を効果的に防ぐことができる。従って、群生化して塊状となり易い液面浮遊物であってもゲート部から確実且つ効率的に回収することが可能となる。
特に小型容量の廃液ピットにおける液面浮遊物の回収に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係る液面浮遊物回収装置の概略正面図
【
図3】
図1の液面浮遊物回収装置の主要部であるゲート部・フロート部・粉砕羽根部の作用構成を示す要部概略平面図
【
図4】従来の載置型の液面浮遊物回収装置の問題点(ブリッジ状に群生化した液面浮遊物の状態)を説明する概略平面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、添付の図面に従って本発明を詳細に説明する。
【0036】
本発明に係る液面浮遊物回収装置は、塗装工場・工程の塗装廃水の浮上スカム、食品工場等における液層内の浮上スカム・油(例えば、バター・マーガリン・食用油脂・チーズ等)、原油等の流出油、下水処理場のスカム、マシニングセンターのクーラント油、メッキの脱脂工程における浮上油、修理・メンテナンス工場等におけるグリス、鉄鋼所・火力発電所・水産加工場・機械類工場等における種々処理槽の液面に浮上するスカム・油等等の液面浮遊物を回収する装置であり、更に必要に応じ、回収したスカム・油を水から分離する装置であり、
具体的構成としては、例えば、
図1〜
図3に示す実施例では、
スカム・油が混入・浮遊する液層内に配設されるフロート部3と、
該フロート部3の浮力により前記液層の液面付近に保持されて該液面に浮上するスカム・油を含む液面浮遊物を流入させるゲート部2と、
該ゲート部2に接続することにより、該ゲート部2から流入する液面浮遊物を液層外へ移送する回収管5と、
該回収管5の移送経路中に配設されるポンプ部Pと、
を有して構成される液面浮遊物回収装置1において、
該液面浮遊物回収装置1は、その本体部が前記液層内に載置される構成の載置型であり、
前記フロート部3は、前記ゲート部2の周囲近傍に1個又は複数個(本実施例では3個)が配設される構成であると共に、前記ゲート部2を浮上支持することにより液面付近に保持するゲート部支持手段31を有し、更に、前記ゲート部2の周囲近傍を回転することによって該フロート部2に接近乃至は接触する位置に浮遊する液面浮遊物を前記ゲート部2に掻き寄せる構成であり、
前記フロート部3の近傍には、複数個(本実施例では3個)の羽根状部材から成る粉砕羽根部4が配設されており、
該粉砕羽根部4は、前記フロート部3の近傍において前記液層の液面に沿って回動乃至は回転することによって該粉砕羽根部4に接近乃至は接触する位置に浮遊する液面浮遊物を粉砕・分離・分断する構成であること、
を主構成とするものである。
【0037】
以下、本発明の回収装置1、及び各構成部材について実施例に基づき更に説明する。
【0038】
先ず、回収装置1の本体部とは、液層内の底部に載置するための本体台座部11を荷重支持台座とし、この本体台座部11及びこの本体台座部11によって荷重支持される各構成部材の集合体を指すものであり、本実施例では主として、本体台座部11、該本体台座部11に載置するポンプ部P、該ポンプ部Pが接続する回収管5、とから成る集合体である。
【0039】
本発明の回収装置1は、液面付近に保持されるゲート部2から流入回収した液面浮遊物と該液面浮遊物と共に吸引した水等の液体とをポンプ部Pの吸引力によって回収管5を介して液層外に配置された分離装置等の後処理工程に送出する装置である。
【0040】
前記ポンプ部Pは、本実施例では液層内の底部であってゲート部2の下方近接した位置に配設した水中ポンプ構成としているが、本発明は当該位置に限定されず回収管5の移送経路中であればよく、回収管5の始端部分・途中部分・終端部分のいずれかに配設された構成とすることもできるし、液層外の分離装置に自吸式等のポンプPを内蔵又は併設した構成とすることもできる。
【0041】
前記回収管5は、液層内においてゲート部2から回収した液面浮遊物(及び液体)を、液層外へ移送する管部材であり、この種の液面浮遊物回収装置に用いられる公知公用の管体を特別の制限なく用いることができる。本実施例では、回収管5が本体部の一構成部材を成すものとしているため、柔軟性を有するホース部材を用いずに自立可能な硬度を有する合成樹脂製又は金属製等のパイプ部材から形成しており、液層内から液面上へと略垂直に立ち上がる立上部51を有する構成となっている。
【0042】
前記ゲート部2は、液層の液面高さに応じて上下方向に遊動可能に回収管5に接続される構成となっており、本実施例では蛇腹状等の伸縮構成を有する接続伸縮部21を介して回収管5に接続されている。そして、この上下方向に遊動可能なゲート部2は、ゲート部支持手段31を介してフロート部3によって浮上支持されている。
【0043】
尚、前記ゲート部2は、回収する液面浮遊物の種類によっては、その開口上面に放射状フィン状の導入フィン部を設けた構成とすることもできる。かかる構成の場合、ゲート部2から流入回収される液面浮遊物及び液体の流れが該導入フィン部の形状に沿った渦巻き状の回転流となるので、回転流入する液体の中心に排気孔が形成されることによって、この回転流入部分の液による閉塞を防ぐと共にポンプPへの空気の侵入を防ぐことができるため、液体流入時の脈動を防ぐことになり、回収する液面浮遊物の種類に応じて回収効率を向上させることができる。
【0044】
次に、前記フロート部3は、この種の液面浮遊物回収装置のフロート体として公知公用のフロート体の構成(材質・浮力構成・形状等)を特別の制限なく採用することができ、例えば、発泡樹脂や中空樹脂成形体等から形成されることが好ましい。また、その形状は、パドル(櫂)状・屈曲状・湾曲状等のように掬い取るように掻き寄せることによってゲート部2に液面浮遊物を送り込むことができる形状に形成されている。本実施例では、上面視した際に円弧状を描く形状とすることにより、3個のフロート部の中心に位置するゲート部2方向へ液面浮遊物を掻き寄せ易い構成を採用している。
【0045】
また、前記フロート部3は、上記したようにゲート部支持手段31を介してゲート部2を液面付近に保持するように浮上支持するものであり、液面から液面下に保持されるゲート部2の開口上面までの距離は回収する液面浮遊物の種類や粘度等の諸条件によって変わるが、例えば、塗装工場の塗装廃水の浮上スカムや食品工場の浮上スカムのように液面上だけでなく液面下に厚みの半分以上が沈んだ状態で浮遊する液面浮遊物の場合、概ね5〜30mm程度、好ましくは概ね10〜20mm程度、より好ましくは概ね15mm程度である。尚、厚みのある浮上スカムのように、液面からゲート部2の開口上面までの距離より厚さのある液面浮遊部の回収の場合、フロート部3の一回の掻き寄せで全量が回収できなかったとしても、複数回の連続的な掻き寄せによって全量の回収が可能である。
【0046】
更に、前記フロート部3をゲート部2の周囲近傍を回転させる構成としては、本実施例ではモータの如き駆動装置Mによる駆動回転構成を採用している。駆動装置Mは、前記フロート部3の回転軸方向上方に配設されると共に前記本体部に直接乃至は間接的に支持されることが好ましく、本実施例では、駆動装置支持手段7を介して本体部の一構成部材である回収管5の立上部51に支持固定されている。
【0047】
駆動手段Mによる前記フロート部3の回転は、本実施例では3本の棒状部材を有して成る伝達手段6によって行われる構成であり、該伝達手段6はフロート部3に対して回転方向においては固定状態で接続する構成であるが、上下方向においてはフロート部3に対して遊動状態で接続する構成であり、かかる構成によって、液面高さが上下動した場合であってもフロート部3はその浮上位置を前記液面高さに追随した状態で回転することができる。
【0048】
尚、本実施例では、駆動装置Mと伝達手段6との間に、積層状態で接続する上回転接続部61・下回転接続部62を介在させた構成としている。積層する上回転接続部61・下回転接続部62は上面視した際に円形を成す円盤状の板材構成であり、上回転接続部61は駆動装置Mに接続されることにより回転し、下回転接続部62は上回転接続部61の回転によって同期回転することにより、伝達手段6を介してフロート部3を回転させる構成である。
【0049】
上回転接続部61と下回転接続部62との接続は、各々に1個ずつ乃至は複数個ずつの磁石体を配設し、この磁石体同士の磁力による吸引接続によって同期回転する、所謂マグネットカップリング構成とすることが好ましい。磁石体の磁力による吸引接続によって同期回転する構成によれば、例えば、スカム・油以外の異物(例えば、工場等で使用される手袋類や浮力を有する種々道具類等)や固形物等の浮遊物がフロート部3に引っ掛かる等して、該フロート部3の回転が阻害されて停止した場合等に、吸引接続が解除されることによって駆動装置Mのモータの焼付きや破損、或いは伝達手段6等の他の構成部材の損傷を抑制乃至は防止することができる。即ち、フロート部3を停止するような負荷が前記した磁石体の磁力を上回った場合には、上回転接続部61と下回転接続部62との吸引接続が同期回転方向において解除され、上回転接続部61が空転して駆動装置M等の損傷を抑制乃至は防止する構成となっている。そして、前記した負荷が解消される等によって当該負荷が磁石体による磁力を下回っ時点で、再び下回転接続部62が上回転接続部61に磁力によって吸引接続して同期回転を再開することになる。
【0050】
前記フロート部3は本実施例においては3個としているが、本発明は本実施例に限定されず、1個、2個、4個以上のいずれかであってもよい。ゲート部2の安定した浮上保持及び掻き寄せ性の点から本実施例の3個が最も好ましい。
【0051】
前記粉砕羽根部4は、上記したように前記フロート部3の近傍に配設された3個の羽根状部材から成ると共に、前記フロート部3の近傍において前記液層の液面に沿って回動乃至は回転することによって該粉砕羽根部4に接近乃至は接触する位置に浮遊する液面浮遊物を粉砕・分離・分断するものである。
【0052】
また、前記粉砕羽根部4は、本実施例に示すように、前記回収管5の立上部51を回動軸部として回動乃至は回転する構成とすることが好ましい。かかる構成によれば、構成部材の簡素化・回収装置のコンパクト化が可能となる。
【0053】
前記粉砕羽根部4の回動乃至は回転は、専用の駆動装置を用いて行う構成や前記フロート部3の回転に用いる駆動装置Mを用いて行う構成とすることもできるが、好ましくは、本実施例に示すように、前記フロート部3が回転する際に、該フロート部3の少なくとも一部が粉砕羽根部4に接触して該粉砕羽根部4を回動乃至は回転させる構成とすることである。
【0054】
粉砕羽根部4による液面浮遊物の粉砕・分離・分断が確実に行われるためには、液層の液面高さが変化した場合であっても液面位置に応じて上下動可能な構成とすることであり、粉砕羽根部4をフロート機能を有する構成とすることが好ましい。
【0055】
フロート機能を有する粉砕羽根部4としては、この種の液面浮遊物回収装置のフロート体として公知公用のフロート体の構成(材質・浮力構成等)を特別の制限なく採ることができ、例えば、発泡樹脂や中空樹脂成形体等から形成されることが好ましい。また、その形状は前記フロート部3と同様に、パドル(櫂)状・屈曲状・湾曲状等のように掬い取るように掻き寄せることによって液面浮遊物を粉砕・分離・分断することができる形状に形成されていることが好ましく、本実施例では、上面視した際に円弧状を描く形状とすることにより液面浮遊物を粉砕・分離・分断すると共に掻き寄せ易い構成を採用している。
【0056】
前記粉砕羽根部4は本実施例においては3個としているが、本発明は本実施例に限定されず、2個又は4個以上のいずれかであってもよい。フロート部3との接触による効率的な回動乃至は回転や、液面浮遊物の粉砕・分離・分断をより効率性の点から本実施例の3個が最も好ましい。
【0057】
以上の構成を有する本発明の回収装置1によれば、液面上に浮上した油の回収は勿論のこと、液面上から液面下にまで沈んだ状態で浮遊するスカムであっても確実且つ効率的に回収することができる。
【0058】
特に、ゲート部2の周囲近傍を回転する3個のフロート部3によって液面浮遊物をゲート部2に掻き寄せる構成が、ゲート部2を液面付近に保持すると共にフロート部3自体も液面に対する位置が略一定に保たれるため、液面及び液面浮遊物に対する掻き寄せ効果・効率が略一定に保たれるので安定した掻き寄せ効果を得ることができる。
【0059】
また、3個の羽根状部材から成る粉砕羽根部4の回動乃至は回転により、群生化して塊状となり易い液面浮遊物であっても粉砕・分離・分断するため、群生化及び滞留を効果的に防ぐことができるので、液層内の壁面部間でのブリッジ化及び群生化を確実に抑制して確実且つ効率的に回収することが可能となる。
【0060】
更に、本発明の回収装置1によれば、
図3に示すように、上記した粉砕羽根部4による液面浮遊物の粉砕・分離・分断と、フロート部3による掻き寄せと、の相乗効果によって、液面浮遊物の回収効率が従来の回収装置に比して向上するだけでなく、従来の回収装置では回収困難乃至は不可能であってスカムの回収が可能となる。
【0061】
以上の構成によって回収された液面浮遊物は、前述したように回収管5を介して分離装置に送られ、スカム・油は水から分離されることになる。尚、分離装置としては、この種の液面浮遊物の回収装置やその他の油水分離装置に用いられる公知公用の分離装置構成を特別の制限なく用いることができる。
【0062】
載置型の液面浮遊物回収装置は、その使用に際しての種々条件等に応じて液層内の様々な位置に載置されて稼働するが、本発明の載置型の回収装置1では、該回収装置1の載置場所は一般的に液層内の隅部近傍や壁面部近傍であることが好ましい。
かかる載置場所での運用の際、本発明の回収装置1の載置構成としては、前記粉砕羽根部4前記液層内の隅部近傍側乃至は壁面部近傍側に位置し、且つ前記フロート部3が前記液層内の隅部から離れた側乃至は壁面部から離れた側に位置した状態となるように載置して稼働させることが好ましい。
尚、
図2では、狭小の廃液ピット等の小型容量の液層に載置した態様を示し、
図3では、液層内の隅部近傍に前記フロート部3が位置するように載置した態様を各々示している。
【0063】
また、本発明の回収装置1の別なる載置構成としては、前記ゲート部2が前記液層内の隅部近傍側乃至は壁面部近傍側に位置し、且つ前記粉砕羽根部4が前記液層内の隅部から離れた側乃至は壁面部から離れた側に位置した状態となるように載置して稼働させることもできる。本態様の内、前記ゲート部2を液層内の隅部近傍に位置させた場合の態様を壁面部を仮想線(一点鎖線)で表示することにより
図3に示す。
【0064】
上記のように載置した状態で本発明の回収装置1を稼働することによって、液層内の隅部の左右両側の壁面部との間やフロート間で塊状となった液面浮遊物がブリッジ状に群生化した場合であっても、フロート部3の回転と粉砕羽根部4の回動乃至は回転によって浮遊してきた液面浮遊物を粉砕・分離・分断するので群生化及び滞留、更にはブリッジ化を効果的に防ぐことができる。従って、群生化して塊状となり易い液面浮遊物であってもゲート部2から確実且つ効率的に回収することが可能となる。特に小型容量の狭小の廃液ピット(例えば、
図2参照)における液面浮遊物の回収に効果的である。
【符号の説明】
【0065】
1 液面浮遊物回収装置
11 台座部
2 ゲート部
21 接続伸縮部
3 フロート部
31 ゲート部支持手段
4 粉砕羽根部
5 回収管
51 立上部
6 伝達手段
61 上回転接続部
62 下回転接続部
7 駆動装置支持手段
M 駆動装置
P ポンプ部