(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電気化学反応性を低減した前記ゾーンは、該ゾーン内のカソード孔隙のイオン伝導性の低減又は排除によって特徴付けられることを特徴とする請求項3に記載の電気化学セル。
前記電気化学活性を低減した前記複数のゾーンは、前記容器に前記電極アセンブリを配置する前にそれぞれのゾーンにおいて前記カソードを放電させることによって生成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
前記電気化学活性を低減した前記複数のゾーンは、前記容器に前記電極アセンブリを配置する前に該ゾーン内のイオン伝導性を前記カソード混合物から遮断することによって生成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
前記電気化学活性を低減した前記複数のゾーンは、前記容器に前記電極アセンブリを配置する前に該ゾーンにおけるカソード活物質の量を低減することによって生成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
前記電気化学活性を低減した前記複数のゾーンは、前記カソード内に変化を生じさせるイニシエータを活用することによって生成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
前記電気化学活性を低減した前記ゾーンは、i)前記アノード、前記カソード、及び前記セパレータの結合厚みよりも大きい厚み、又はii)両側面上の前記コーティング及び前記集電体を含む該カソードの厚みの少なくとも2倍の厚みを有するスペーサを前記端末側終端に近くで該アノードと前記個々のカソードストリップの間に与えることによって生成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
前記電気化学活性を低減した前記ゾーンは、前記セルが放電する時に前記端末側終端での電極積み重ね圧力を軽減することによって生成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
1次バッテリは、様々な消費者デバイスのための費用効果の高い使い捨て携帯用電源であるが、少数の標準化されたセルサイズ(例えば、AA又はAAA)及び特定の公称電圧(典型的に1.5V)のみが典型的に利用されている。消費者は、現在利用可能な充電式(すなわち、2次)バッテリに比べてその利便性、信頼性、持続的な保管寿命、及びより廉価な単価のために1次バッテリを使用することを好み、かつ選択することが多い。
【0003】
デジタルスチルカメラのような多くの電子デバイスは、比較的高電力の作動要件で設計される。しかし、過去使用された1次バッテリ化学材料(例えば、カーボン亜鉛、アルカリなど)の多くは、こうした高電力用途に理想的には適していない。更に、特定の公称電圧の必要性は、可能な電気化学材料の選択を有意に制限し、一方で標準化されたセルサイズは、活物質、安全デバイス、及び消費者製品に典型的に要求される類似の要素及び特徴部に利用可能な全体的利用可能内部容積を制限する。より低い公称電圧のセルは、それらが個別又は一組で与えられてデバイス製造業者により多くの設計選択肢及び多様性を与えることができるので好ましい。1次バッテリを使用するようにデバイスを設計することは、2次システムと比較した有意なコスト優位性も提示する。すなわち、アルカリ又はリチウム−二硫化鉄のシステムのような1.5V1次システムは、より高電圧及び/又は充電式バッテリよりも優位なものになる傾向がある。
【0004】
1.5V電気化学システムの間であっても(例えば、アルカリ対リチウム−二硫化鉄など)、設計上の考慮事項は大きく異なる。例えば、アルカリシステム及びオキシ水酸化ニッケルシステムは、気体膨張及び/又は漏れの傾向を有する水性かつ高腐食性の電解質に依存する。これらの問題は、内部材料の選択及び/又は容器及び閉鎖部との適合性の面で非水システムに比べて非常に異なる手法をもたらす。充電式1.5Vシステムにおいては(リチウム−二硫化鉄システムは、消費者ベースの充電式システムに適するとは現在考えられていないことに注意されたい)、様々な高度に特殊化した構成要素と電気化学及び/又は電解質組成物とがリチウムイオン充電/放電サイクルに適合するように使用される。ここで、こうした高コスト構成要素は、2次システムが典型的にはそれらの1次バッテリ均等物よりも高い小売価格で販売されるために重要な設計上の懸念ではない。最終的に、放電機構、セル設計、及び安全性考察は、全般的にみて1次及び2次バッテリシステム間、更に1次システム間でも重要ではなく又は適用不能なものであり、セル設計及び材料選択などを採用又は交換することは困難である。
【0005】
例えば、1.5Vリチウム−二硫化鉄1次バッテリにおいて、アノード(これは、その全長に沿って延びる組み込んだ集電体を持たない)内の不連続性は、バッテリの全体の予想容量の損失をもたらす場合がある。従って、米国特許公開第2010/0228518号明細書及び第2010/0310910号明細書に説明されているように、こうした「アノード不連続性」に対処してそれを排除するための様々な機構が提案されている。対照的に、3.0ボルトのリチウム−二酸化マンガン1次バッテリにおいて、米国特許第5,965,290号明細書及び第6,391,488号明細書に説明されているように、アノード不連続部は、安全機能として作用するようにセル設計内に意図的に加工することができる(すなわち、バッテリ端末に接続されているアノードの部分がアノードの残りから切り離され、バッテリが強制放電条件を受けた場合の短絡を回避する)。従って、バッテリ材料及び設計は、その特定のバッテリシステムの関連内だけで考えるべきである
【0006】
リチウム−二硫化鉄セルは、高電力デバイスに対して明白な利点を有するが(アルカリ1次セルに比べて)、セル設計はまた、使用される材料のコストと、必要な安全デバイスの組み込みと、セル設計の全般的信頼性及び容量との間の均衡も取る必要がある。安全デバイスは、通常は、通気機構とポジティブ熱回路(PTC)のような熱作動式「シャットダウン」要素とを含み、信頼性に対する改善は、内部短絡の防止、及び電極、特にアノードの一体性(上述したような)の維持に主に着目される。しかし、これらの安全性及び信頼性要素は、内部容積を占有し、及び/又はセル内部抵抗、効率、及び放電容量に対して逆効果である可能性がある設計原理を必要する。
【0007】
リチウム−二硫化鉄システムに独特の別の課題は、その反応最終生成物が最初の投入物よりも実質的に大きい容積を占有するという事実に関連し、これは、バッテリ放電時の電極アセンブリの膨張をもたらす。次に、この膨張は、セル容器の不要な膨らみ(あるいは、極端な場合は割れ)を引き起こす可能性がある。電極スタック内の増大した力は、バッテリによって実際に供給される容量を低減するセパレータが阻害される及び/又はアノードが分離することをもたらす場合もある。特に、膨張する二硫化鉄カソードによって生じる半径方向圧力により、セル設計者は、ジェリーロール全体が圧縮される時に不活性リードが受ける可能性がある影響を最小にするために、アノードリードをジェリーロールの最外側又は最内側の巻回上に優先的に位置付けるように強いられている。
【0008】
これらの問題を扱うための以前の手段は、セルハウジング及びセル内の不活性構成要素のためのより強力な(多くの場合により厚い)材料の使用を含む。しかし、より厚い不活物質は、利用可能な内部容積を制限し、より厚くてより頑丈な電極は、ジェリーロール内に収容する巻回をより少なくし、その結果、電極間の表面積をより小さくし、より高いドレインレートでのバッテリ性能を比較的低下させる。
【0009】
最適な内部容積の利用率と満足できるLiFeS
2セル容量/性能との間に適切な均衡を取るために、いくつかの手法が取られている。例えば、米国特許第4,379,815号明細書に開示された膨張によって生じた問題の可能な解決法は、パイライトに1つ又はそれよりも多くの他の活物質(CuO、Bi
2O
3、Pb
2Bi
2O
5、P
3O
4、CoS
2のような)を混合することにより、カソード拡張とアノード収縮を均衡させることであるが、これらの添加材料は、セルの放電特性に悪影響を与える可能性があり、セル全体の容量及び効率が低下する場合もある。LiFeS
2セルでの放電容量を改善する他の手段は、米国特許公開第20050112462号明細書及び第20050233214号明細書に開示されているようなより薄いセパレータ及び/又は特定のカソード被覆混合物及びコーティング技術の使用か、又は米国特許第6,849,360号明細書及び第7,157,185号明細書に開示されているような界面投入材料の調節を通じたものを考えている。ある程度、これらの解決法の一部は、バッテリ内の活物質によって占有することができる容積を削除し、これらの解決法は、必ずしもバッテリの全体放電容量を改善しないと考えられる。
【0010】
最終的に、容量に対する改善は、基本的にしっかりしたバッテリ設計を表すものである。すなわち、より大きな容量を送出するためには、リチウム−二硫化鉄バッテリの放電において作用する半径方向拡張力及び他の力学に対して周到な配慮が与えられるべきである。例えば、設計が、アノード又はカソード集電体での不適切な厚みを提供すると、放電中の半径方向力は、一方又は両方の電極での不連続部を引き起こすような程度までジェリーロールを圧縮する場合があり、この不連続部が発生した状態で、バッテリは、活物質が全て放電されたか否かに関わらず、容量の送出を停止すると考えられる。同様の状況は、空隙容積(カソードコーティング及び全体としてのセルの内部における)、バッテリ全体を通じた電気接続、セパレータ、及びバッテリのための閉鎖/通気機構などに関しても発生する。従って、LiFeS
2セルの容量は、特に、セル設計者が標準サイズ(すなわち、固定容積)の消費者バッテリ(例えば、AA又はFR6、AAA又はFR03など)の使用に制限される時に、セル設計の全般的な実現性及びロバスト性に対する重要な測定基準である。
【0011】
バッテリ設計のための事実上の測定基準として機能する容量に対する当然の帰結として、当業者は、設計選択、かつ特に特定の構成要素の選択が、リチウム−二硫化鉄バッテリシステムの全体的な関連性に配慮して行われるものでなければならないことを認めるであろう。特定の組成物は、セル内の他の構成要素及び組成物に対して意外な、予期しない、又は意図しない影響を有する場合がある。同様に、標準サイズのバッテリにおいて、特定の要素の選択は、そうでなければ他の要素に利用できたかもしれない容器内の容積を占有する。従って、設計選択のこの相互依存性は、容量におけるいずれの増加も、特に他の点でバッテリの安全性又は性能に悪影響を与えない増加は、より多くの活物質を添加する単純な行為を遥かに超えるものであることを必然的に意味する。同様に、溶媒、溶質、結合剤、導体、及びポリマーなどのような不活性構成要素の選択は、必然的に状況の緊急性との関連で行わなければならず、可能性の広範なリストから単一の項目を分離することは、それ自体では技術者がその特定の組合せで使用することを考えるための十分な理由ではない。
【0012】
バッテリの実際の放電又は使用を模擬する試験は、セル設計の評価に特に関連性を有する。典型的には、これらの模擬使用試験は、バッテリ出力電圧が最終「カットオフ電圧」よりも低下するまで連続又は所定サイクル(例えば、設定された分単位の時間の放電に続く設定された分単位の時間の休止間隔)で指定放電条件(例えば、200mAの一定負荷)の下でバッテリを放電させることを伴う。本明細書で用いる時に、放電と休止間隔のサイクルを伴う試験は、以下では一般的に間欠ドレインレート試験と呼ぶ。明らかに、いずれの模擬使用試験でも、放電条件、放電と休止間隔(用いる場合)に対する期間、及びカットオフ電圧を指定することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、リチウム−二硫化鉄電気化学セルのための複数の実施形態、並びにそれを製造して放電させる方法を含む。各場合に、本発明は、バッテリの放電容量を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、電気化学セルに関する実施形態は、次の要素のいずれか1つ又は組合せを含むことができる。
・容器、
・有機非水電解質、
・セパレータと、基本的にリチウム又はリチウム合金のストリップから構成されるアノードと、渦巻き型電極アセンブリの最外側面上で配向された端末エッジを有する集電体の両側面上に配置された活物質を有するカソードとを有する渦巻き型電極アセンブリ、
・i)両側面上のコーティング及び集電体を含むカソードの厚みの少なくとも2倍か、又はii)アノード、カソード、及びセパレータの結合厚みよりも大きい厚みを有して端末エッジの近くに又は少なくとも部分的にその下に位置するスペーサ、
・基本的にリチウム又はリチウム合金のストリップから構成されるアノードと、金属集電体の両側面上に配置された二硫化鉄又は二酸化マンガンを含有する活物質を含む多孔質カソードと、アノードとカソードの間に配置されたセパレータとを有する電極アセンブリ、
・電極アセンブリの最外側面内のカソードの近くに位置決めされたエッジ効果を排除するための手段、
・エッジ効果を排除するための手段が、カソードの端末エッジで軸線方向ストリップに沿ってカソードコーティング上又はそこに配置された遅延剤を含むこと、
・エッジ効果を排除するための手段が、カソードの端末エッジで軸線方向ストリップに沿ってカソードコーティング内に配置された孔隙遮断物質を含むこと、
・セルが、界面アノード均衡不足を有し、アノードとカソードが、セパレータ及び任意的不活性構成要素を除く電極アセンブリの最外側面の50%未満がアソードによって覆われるように螺旋状に巻かれること、
・スペーサが、複数の部材を含むこと、
・部材が、互いの上に積み重ねられること、
・部材が、カソードの端末エッジと一致する軸線に沿って位置合わせされること、
・スペーサが、エラストマー材料を含むこと、
・セル、アノード、及びカソードが、カソード外側ラップを有するように螺旋状に巻かれること、
・カソードが、渦巻き型電極アセンブリの最外側面上のその端末エッジに沿ったカソード全体を通して電気化学反応性を低減したゾーンを含むこと、
・電気化学反応性を低減したゾーンが、ゾーン内のカソード孔隙のイオン伝導性の低減又は排除によって特徴付けられること、及び/又は
・電気化学反応性を低減したゾーンが、i)両側面上のコーティング及び集電体を含むカソードの厚みの少なくとも2倍か、又はii)アノード、カソード、及びセパレータの結合厚みよりも大きい厚みを有して、カソードの端末エッジの近くでアノードとカソードの間に挿入されたスペーサによって生成されること。
【0016】
同じようにして、バッテリの間欠放電時に早期電圧降下が発生しないカソード外側ラップバッテリを製造する方法は、以下の段階のいずれか1つ又はその組合せを含むことができる。
・二硫化鉄を含むカソード混合物を固体ホイル集電体の両側面上に連続的に被覆し、引き続き集電体の少なくとも一方の側面上に電気化学活性を低減した複数のゾーンを生成する段階、
・被覆したカソードを個々のストリップに切断し、電気化学活性を低減したゾーンが各個々のカソードの端末側終端に位置決めされるように複数の個々のカソードを生成する段階、
・セパレータと、基本的にリチウム又はリチウム合金から構成されて集電体を含まないアノードとを与える段階、
・セパレータ及び任意的不活性構成要素を除く電極アセンブリの最外側面の50%未満が、アノードによって被覆され、かつ電気化学活性を低減したゾーンが、電極アセンブリの最外側面に沿って位置するように、アノードと、個々のカソードストリップと、セパレータとを螺旋状に巻き付けて電極アセンブリにする段階、
・電極アセンブリを導電容器に配置し、非水電解質を容器に導入し、容器を閉鎖する段階、
・電気化学活性を低減したゾーンが、電極アセンブリを容器に配置する前に無質量ゾーンを生成することによって生成されること、
・無質量ゾーンが、カソード混合物を被覆する前に集電体に犠牲基板を与え、次にカソード混合物を被覆した後に犠牲基板を除去することによって生成されること、
・無質量ゾーンが、カソードが個々のストリップに切断される時にカソードコーティングを物理的に除去することによって生成されること、
・電気化学活性を低減したゾーンが、電極アセンブリを容器に配置する前にゾーンにおいてカソードを放電させることによって生成されること、
・電気化学活性を低減したゾーンが、電極アセンブリを容器に配置する前にゾーン内のカソード混合物をイオン伝導性から隔離することによって生成されること、
・電気化学活性を低減したゾーンが、電極アセンブリを容器に配置する前にゾーンにおいてカソード活物質の量を低減することによって生成されること、
・カソード活物質の量が、カソードコーティングの厚みを低減することによって低減されること、
・電気化学活性を低減したゾーンが、カソード内の変化を誘起するイニシエータを利用することによって生成されること、
・イニシエータが、放射線、電磁放射線、又は光源から選択されること、
・カソード混合物が、イニシエータと又はそれに反応する化学物質を含むこと、
・電気化学活性を低減したゾーンが、i)両側面上のコーティング及び集電体を含むカソードの厚みの少なくとも2倍か、又はii)アノード、カソード、及びセパレータの結合厚みよりも大きい厚みを有して端末側終端の近くでアノードと個々のカソードストリップとの間にあるスペーサを与えることによって生成されること、
・電気化学活性を低減したゾーンが、セルが放電する時に端末側終端での電極スタック圧力を軽減することによって生成されること、及び/又は
・アノードが、1.0未満の界面理論アノード対カソード投入容量比を生成する量で与えられること。
【0017】
同様に、カソードが集電体の両側面上に連続的に被覆されたリチウム−二硫化鉄円筒形電気化学セルの放電容量を改善する方法は、以下の段階のいずれか1つ又はその組合せを含むことができる。
・リチウム−二硫化鉄電気化学セルに界面アノード均衡不足とカソード外側ラップとを有する渦巻き型電極アセンブリを与える段階、
・カソードストリップの端末側終端で電気化学活性を低減した局所区域を生成し、電気化学活性を低減した局所区域を最外側面に沿ってアノードの近くに位置決めする段階、及び/又は
・セルを放電させる段階。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明で使用される時の下記の用語は、別途明記されない限り、本発明の開示全体を通じて以下のように定義され使用される。
【0020】
周囲温度又は室温−約20℃から約25℃であり、別途明記されない限り、全ての実施例、データ、並びに他の性能及び製造情報は、周囲温度かつ典型的に大気条件の下で行われた。
【0021】
アノード−負極、より具体的には、リチウム−二硫化鉄セルでの1次電気化学活物質として機能し、好ましくは集電体なしに形成され、基本的にリチウム及び/又はリチウムベース合金(すなわち、少なくとも90重量%のリチウムを含有する合金)の薄いストリップ。
【0022】
容量−特定の組の条件(例えば、ドレインレート、温度など)で単一電極又はセル全体によって供給される容量、ミリアンペア時(mAh)又はミリワット時(mWh)又はデジタルスチルカメラ試験での撮影画像の数又は分単位の時間で典型的に表現される。
【0023】
カソード−正極であり、より具体的には、リチウム二硫化鉄セルにおいて、これは、主電気化学活物質として二硫化鉄を含み、好ましくは1つ又はそれよりも多くの流動性、ポリマー性、及び/又は導電性の添加物と共に混合され、かつ固体の金属ホイル集電体上に被覆される。
【0024】
セルハウジング−完全に機能するバッテリを構成する全て内部に封入された安全デバイスを含む電極アセンブリと、不活性構成要素と、接続材料とを物理的に包み込む構造体であり、典型的に、これらは、容器(カップの形状に形成され、「缶」とも称される)と閉鎖部(容器の開口部の上に取り付けられ、電解質の流出及び水分/大気の流入を阻止するための通気及び密封機構を典型的に含む)とを含み、状況に応じて缶又は容器の用語と交換可能に使用することができる。
【0025】
円筒形セルサイズ−その直径よりも大きい高さを有する円形状の筒を有するあらゆるセルハウジングであり、この定義は、ボタンセル、ミニチュアセル、又は実験のための「ホッケーパック」セルを具体的に排除する。
【0026】
電気化学活物質−セルの放電反応の一部であり、かつセル放電容量に寄与する1つ又はそれよりも多くの化合物であるが、不純物及び材料に固有の少量の他の構成成分を含む、
【0027】
FR6又はAAサイズセル−2000年11月以後に「International Electrochemical Commission」によって公開された国際標準IEC−60086−1を参照すると、約50.5mmの最大外側高さと約14.5mmの最大外径とを有する円筒形セルサイズのリチウム二硫化鉄バッテリ。
【0028】
FR03又はAAAサイズセル−2000年11月以後に「International Electrochemical Commission」によって公開された国際標準IEC−60086−1を参照すると、約44.5mmの最大外側高さと約10.5mmの最大外径とを有する円筒形セルサイズのリチウム二硫化鉄バッテリ。
【0029】
「ジェリーロール」(又は「渦巻き型」)電極アセンブリ−アノード及びカソードのストリップが、適切なポリマーセパレータと共にそれらの長さ又は幅に沿って例えばマンドレル又は中央コアへ巻き付けられることによって結合されてアセンブリになる。
【0030】
パイライト−電気化学セル用途のための二硫化鉄の好ましい鉱物形態であって、約95重量%又はそれよりも多くの電気化学的に活性な二硫化鉄を典型的に含有し、電気化学活物質の化学量論組成に対する天然又は意図的な変動を包含し(すなわち、少量の他の硫化鉄及び/又はドープ金属硫化物が存在する場合がある)、残りが不純物及び/又は電気化学不活性化学種を表し、状況に応じて、パイライトは、二硫化鉄と交換可能に用いることができる。
【0031】
基本的なセル設計に関して、本発明は、
図1を参照してより良く理解されると考えられる。
図1において、セル10は、FR6(AA)型円筒形LiFeS
2バッテリセルの一実施形態であるが、本発明は、FR03(AAA)又は他の円筒形セルに対して同等な適用可能性を有するはずである。セル10は、一実施形態において、密封底部とセルカバー14及びガスケット16で密封される開放上端とを有する缶12の形態での容器を含むハウジングを有する。缶12は、ガスケット16及びカバー14を支持するために上端付近のビード又は縮小直径ステップを有する。ガスケット16は、缶12とカバー14の間に圧縮され、アノード又は負極18、カソード又は正極20、及び電解質がセル10内部に密封される。
【0032】
アノード18、カソード20、及びセパレータ26は、一緒に螺旋状に巻かれて電極アセンブリとされる。カソード20は、電極アセンブリの上端から延びて接触バネ24を用いてカバー14の内面に接続される金属集電体22を有する。アノード18は、金属リード(又はタブ)36によって缶12の内面に電気的に接続される。リード36はアノード18に固定され、電極アセンブリの底部から延び、この底部にわたって折り畳まれ、かつ電極アセンブリの側面に沿って上昇する。リード36は、缶12の側壁の内面に加圧接触する。電極アセンブリが巻かれた後、このアセンブリは、製造工程内の工具によって挿入前に保持することができ、又は材料(例えば、セパレータ又はポリマーフィルム外側ラップ38)の外端を例えばヒートシール、接着、又はテーピングによって留めることができる。
【0033】
一実施形態において、絶縁コーン46が電極アセンブリの上部の周囲部分の周りに設けられてカソード集電体22の缶12への接触が防止され、カソード20の底縁と缶12の底部との接触は、内側に折り畳まれたセパレータ26の延長部と缶12の底部に配置された電気絶縁底部ディスク44とによって防止される。
【0034】
一実施形態において、セル10は、分離した正端末カバー40を有し、このカバーは、缶12の内側に圧着した上縁とガスケット16とによって所定の位置に保持される。缶12は、負接触端末として機能する。接着ラベル48のような絶縁性ジャケットを缶12の側壁に付加することができる。
【0035】
一実施形態において、端末カバー40の周囲フランジとセルカバー14の間には、不正な電気状態の下で電流の流れを実質的に制限する正温度係数(PTC)デバイス42が配置される。別の実施形態において、セル10は、圧力除去通気も含む。セルカバー14は、ウェル28の底部に通気ホール30を有する内向き突出の中央通気ウェル28を含む開口を有する。開口は、通気ボール32と、通気ウェル28の垂直壁と通気ボール32の周囲の間に圧縮される薄壁熱可塑性ブッシング34とによって密封される。セル内部圧力が所定のレベルよりも大きい時に、通気ボール32、又は通気ボール32及びブッシング34の両方が開口から押し出され、セル10から加圧気体を放出する。他の実施形態において、圧力除去通気は、米国特許出願公開第20050244706号明細書及び第20080213651号明細書に開示されているように破裂膜によって閉じられた開口とすることができ、又は引き裂き又は他の方法で破断することができ、密封プレート又は容器壁のようなセルの一部分内に通気開口を形成する鋳造溝のような比較的薄い区域とすることができる。
【0036】
一実施形態において、電極アセンブリの側部と缶の側壁の間に配置された電極リード36の端末部分は、缶の側壁との電気的接触を容易にし、缶側壁の方向にリードを付勢するためにバネ様の力を提供するように好ましくは非平面の缶内への電極アセンブリの挿入よりも前の形状を有することができる。セル製造中に、リードの成形された端末部分は、例えば、電極アセンブリの側部の方向に変形することができ、缶内へのその挿入が容易にされ、それに続いてリードの端末部分はその初期の非平面形状の方向に部分的にはね返るが、少なくとも部分的に圧縮されたままとなって缶の側壁の内面に力が印加され、それによって缶との良好な物理的及び電気的接触が行われる。代替的に、この接続及び/又はセル内の他のものは、溶接によっても保つことができる。
【0037】
セル容器は、多くの場合に金属缶であり、
図1での缶のように密封底部を有する。缶材料及び容器壁の厚みは、セル内に使用される活物質と電解質とにある程度依存することになる。一般的な材料の種類は鋼である。例えば、缶は冷間圧延鋼(CRS)で製造することができ、缶の外側を腐食から保護するために少なくとも外側をニッケルでメッキすることができる。一般的に、本発明によるCRS容器は、FR6セルに対して7から10ミル、FR03セルに対して6から9ミルの壁厚を有することができる。メッキの種類は、様々な程度の耐食性を提供し又は望ましい外観を提供するように変えることができる。鋼の種類は、容器が形成される方式にある程度依存することになる。絞り缶のためには、拡散焼鈍された低炭素のアルミニウムキルドSAE1006又は同等の鋼とすることができ、ASTM9−11の粒径及び等軸から僅かに細長い粒形を有する。ステンレス鋼のような他の鋼は、特別な要求を満たすために使用することができる。例えば、缶がカソードと電気的に接触している場合には、ステンレス鋼をカソード及び電解質による腐食に対する改善した耐性のために使用することができる。
【0038】
セルカバーは金属とすることができる。ニッケルメッキ鋼を使用することができるが、特に閉鎖及びカバーがカソードに電気的に接触している時は、ステンレス鋼が多くの場合に望ましい。カバー形状の複雑さも材料選択におけるファクタであると考えられる。セルカバーは、厚い平坦円板のような単純な形状を有することができ、又はセルカバーは、
図1に示すカバーのようなより複雑な形状を有することができる。カバーが
図4におけるものと類似した複雑な形状を有する時に、ASTM8−9粒径を有する304型軟焼鈍ステンレス鋼を使用することができ、望ましい耐食性及び金属成形の容易さを提供する。成形されたカバーは、例えば、ニッケルでメッキすることができ、又はステンレス鋼又は他の公知の金属及びその合金で製造することができる。
【0039】
端末カバーは、周囲環境内の水による腐食に対する良好な耐性、良好な導電性、及び消費者バッテリに対して見る時の見栄えのする外観を有するべきである。端末カバーは、多くの場合に、ニッケルメッキされた冷間圧延鋼から製造され、又はカバーが成形された後にニッケルメッキされる鋼から製造される。端末が圧力除去通気の上に設けられる時に、端末カバーは、セルの排気を容易にするために1つ又はそれよりも多くの孔を一般的に有する。
【0040】
缶と閉鎖/端末カバーの間の密封を完全にするために用いるガスケットは、望ましい密封特性を提供するあらゆる適切な熱可塑性材料で製造することができる。材料選択は、電解質組成にある程度基づいている。適切な材料の例は、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、テトラフルオリド−ペルフルオロアルキルビニルエーテル・コポリマー、ポリブチレンテレフタレート、及びその組合せを含む。好ましいガスケット材料は、ポリプロピレン(例えば、米国デラウェア州ウィルミントン所在の「Basell Polyolefins」が提供するPRO−FAX(登録商標)6524)及びポリフェニレンスルフィド(例えば、米国テキサス州ザウッドランズ所在の「Chevron Phillips」が提供するXTEL(登録商標)XE3035又はXE5030)を含む。少量の他のポリマー、強化のための無機充填剤及び/又は有機化合物もガスケットの主レジンに添加することができる。適切な材料の例は、引用により組み込まれている米国特許公開第20080226982号明細書及び第20050079404号明細書に見出すことができる。
【0041】
ガスケットは、最善の密封を提供するためにシーラントで被覆することができる。エチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)が適切なシーラント材料であるが、他の適切な材料を使用することもできる。
【0042】
アノードは、リチウム金属のストリップを含み、リチウムホイルとも称される。リチウムの組成は変えることができるが、バッテリ等級のリチウムに対しては、純度は常に高い。リチウムは、望ましいセルの電気性能又は取扱いの容易さを提供するために、アルミニウムのような他の金属との合金とすることができるが、それにも関わらずあらゆる合金内のリチウムの量は最大化されなければならず、かつ高温適用(すなわち、純リチウムの融点よりも大きい)として設計された合金は考えられていない。適切なバッテリ等級のリチウム−アルミニウムホイルは、0.5重量パーセントのアルミニウムを含有し、米国ノースカロライナ州キングスマウンテン所在の「Chemetall Foote Corp.」から市販されている。あらゆるこうした合金中の活物質(すなわち、リチウム)の量の最大化に重点をおいた基本的にリチウム又はリチウム合金(例えば、0.5重量%Al及び99+重量%Li)から構成されるアノードが好ましい。
【0043】
図1でのセルにおけるように、リチウムが高い導電率を有するので、個別の集電体(すなわち、集電体がジェリーロール内部に螺旋巻きされるように、その上にアノードが溶接又は被覆される金属ホイル又はアノードの長さの実質的な部分に沿っている導電性ストリップのような導電性部材)は、アノードに対して必要としない。使用する場合、アノード集電体は、銅及び/又はそれらがセルの他の内部構成要素(例えば、電解質)に露出された時に安定である他の適切な高導電性金属で製造することができるが、こうしたアノード集電体によって占められる容積がセルの定格容量にかなりの悪影響を有するので、これは、リチウム−二硫化鉄セルのために理想的ではない。
【0044】
電極の各々とハウジングに近接し又はこれと一体化した各対向する外部バッテリ端末との間には電気接続が保持される。電気リード36は、セル端末のうちの1つへのアノード又は負極を接続する薄い金属ストリップで製造することができる(
図1に示されているFR6セルの場合における缶)。これは、リードの端部をアノードの一部分内に埋め込むか又はリードの端部のような一部分をリチウムホイルの表面上に単にプレスすることによって達成することができる。リチウム又はリチウム合金は、粘着性を有し、リードと電極の間の一般的に少なくとも僅かなかつ十分な圧力又は接触は、構成要素を互いに接着することになる。負極には、ジェリーロール構造に巻かれる前にリードを設けることができる。リードは、適切な溶接によってリチウム及び/又は他の構成要素に接続することができる。
【0045】
リード36を構成する金属ストリップは、リードを通って流れる電流の十分な伝達を可能にするための十分に低い抵抗率(例えば、一般的に15mΩ/cm未満及び好ましくは4.5mΩ/cm未満)を有するニッケル又はニッケルメッキ鋼で多くの場合に製造される。適切な負極リード材料の例は、以下に制限されるものではないが、銅、例えば、銅合金7025(約3%のニッケル、約0.65%のシリコン、及び0.15%のマグネシウムを含み、残りが銅及び少量の不純物である銅、ニッケル合金)、及び銅合金110である銅合金、及びステンレス鋼を含む。リード材料は、非水電解質を含む電気化学セル内でその組成が安定であるように選択されなければならない。
【0046】
カソードは、集電体と1つ又はそれよりも多くの電気化学活物質を典型的に微粒子形態で含む混合物とを含むストリップの形態である。二硫化鉄(FeS
2)が、カソード混合物中の主活物質であり、好ましくはパイライトの形態で与えられる。望ましいセル電気特性及び放電特性に応じて、カソードは少量の1つ又はそれよりも多くの付加的な活物質も含有することができる。この付加的なカソード活物質は、あらゆる適切なカソード活物質とすることができる。例示的には、金属酸化物、Bi
2O
3、C
2F、CF
x、(CF)
n、CoS
2、CuO、CuS、FeS、FeCuS
2、MnO
2、Pb
2Bi
2O
5、及びSを含む。好ましくは、LiFeS
2セルカソードのための活物質は、少なくとも95重量パーセントのFeS
2を含み、かつFeS
2が単独のカソード活物質であることが最も好ましい。少なくとも95重量パーセントFeS
2の純度レベルを有するパイライトは、米国マサチューセッツ州ノースグラフトン所在の「Washington Mills」、オーストリア国ウィーン所在の「Chemical GmbH」、及び米国バージニア州ディルウィン所在の「Kyanite Mining Corp.」から市販されている。ここで注意すべきは、FeS
2の「純度」のこの説明は、パイライトが特定の好ましい鉱物形態のFeS
2であると認識していることであり、かつある状況では、これらの用語は本明細書で同義に用いられている。しかし、パイライトは、頻繁に小レベルの不純物(典型的に酸化珪素)を有し、FeS
2のみがパイライト中で電気化学的に活性であるので、FeS
2のパーセント純度への参照は、パイライトの総量に対して典型的に重量パーセントベースで行われる。従って、他の場合には、適切な文脈で読んだ時にパイライトとFeS
2とは同義でない場合がある。カソードのより網羅的な説明、その配合組成、及びカソードを製造する方法は、以下で与えられる。
【0047】
カソード混合物は、カソード集電体として機能する薄い金属ストリップの片面又は両面上に被覆される。アルミニウムが、典型的に用いられる材料であるが、チタン、銅、鋼、他の金属ホイル、及びそれらの合金も可能である。集電体は、カソード混合物を含むカソードの部分を超えて延びることができる。集電体のこの延長部分は、好ましくはリード及び/又は溶接接触の必要性を排除するバネ又は加圧接触によって正端末に接続する電気リードと接触するための有利な区域を提供することができる。活物質及び電解質のためになるべく大きなセルの内部容積を利用可能にするために、集電体の延長部分の容積を最小に保つことが望ましい。カソードのための典型的なコーティング構成の例は、引用により組み込まれている米国特許公開第20080026293号明細書に見出すことができる。
【0048】
カソードは、セルの正端末に電気的に接続される。これは、
図1に示すように、多くの場合に薄い金属ストリップ又はバネの形態の電気リードを用いて達成することができるが、溶接接続も可能である。使用する場合、このリードは、ニッケルメッキされたステンレス鋼又は他の適切な材料で製造することができる。セルの暴走放電/加熱を防止するための安全機構として標準PTCのような任意的電流制限デバイスが利用される場合には、適切なPTCが米国カリフォルニア州メンロパーク所在の「Tyco Electronics」によって販売されている。典型的な標準PTCデバイスは、ほぼ36mΩ/cmの抵抗を一般的に含む。より低抵抗のデバイスを含む他の代替手段を利用することができ、かつ好ましい場合がある。代替の電流制限デバイスは、引用により組み込まれている米国特許公開第20070275298号明細書及び第20080254343号明細書に見出すことができる。
【0049】
セパレータは、イオン透過性で電気非伝導性である薄い微孔性膜である。それは、セパレータの微孔隙内部に少なくともいくらかの電解質を保持することができる。セパレータは、アノードとカソードの隣接する表面の間に配置され、この電極を互いから電気的に分離する。セパレータの一部分は、内部短絡を防止するために、セル端末と電気的に接触する他の構成要素も絶縁することができる。セパレータのエッジは、少なくとも1つの電極のエッジを多くの場合に超えて延び、アノードとカソードが、それらが完全に互いに位置合わせされていなくても電気的に接触しないことを保証する。しかし、電極を超えて延びるセパレータの量を最小にすることが望ましい。セパレータの適切な種類は、1994年3月1日に付与されて本発明に引用により組み込まれている米国特許第5,290,414号明細書に説明されている。他の好ましいセパレータ特性は、これも本明細書に引用により組み込まれている米国特許公開第20080076022号明細書に説明されている。
【0050】
セパレータは、多くの場合にポリプロピレン、ポリエチレン、又はその両方で製造される。セパレータは、二軸配向微孔性膜の単層とすることができ、又は2つ又はそれよりも多くの層を直交方向に望ましい引張強度を与えるように互いに張り合わせることができる。コストをできるだけ低くするためには単層が好ましい。この膜は、本明細書に開示されたカソード配合組成及び容器での制約に応じて16から25ミクロンの厚みを有するべきである。適切なセパレータは、米国ニューヨーク州マセドニア所在の「Tonen Chemical Corp.」及び米国オレゴン州レバノン所在の「Entek Membranes」から市販されている。
【0051】
非常に少量のみの水(例えば、使用される電解質塩の重量基準で、典型的に2000ppm未満、より好ましくは約500ppm未満)を含有する非水電解質が、本発明のバッテリセルに使用される。この電解質は、1つ又はそれよりも多くの有機溶媒中で解離した1つ又はそれよりも多くのリチウムベース電解質塩を含有する。適切な塩は、臭化リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロ燐酸リチウム、ヘキサフルオロ燐酸カリウム、ヘキサフルオロ砒酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、及び沃化リチウムのうちの1つ又はそれよりも多くを含むが、この塩は、好ましくはI
-(例えば、溶媒配合物中のLiIの解離による)を含む。適切な有機溶媒は、蟻酸メチル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、3,5−ジメチルイソキソザール、n,n−ジメチルホルムアミド、及びエーテル類のうちの1つ又はそれよりも多くを含み、総溶媒の少なくとも50体積%をエーテル類が占めることが、エーテル類の低粘性及び湿潤機能が後述のより厚い電極構造に肯定的な影響を与えると見られる理由で好ましい。好ましいエーテル類は、非環式(例えば、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジ(メトキシエチル)エーテル、トリグライム、テトラグライム、及びエチルエーテル)、及び/又は環式(例えば、1,3−ジオキソラン、テトラハイドロフラン、2−メチルテトラハイドロフラン、及び3−メチル−2−オキザリジノン)とすることができる。1,3−ジオキソラン及び1,2−ジメトキシエタンが好ましい溶媒であり、一方で沃化リチウムが好ましい塩であるが、沃化リチウムは、リチウムトリフラート、リチウムイミド、又は過塩素酸リチウムと組合せで使用することができる。溶媒配合物中に解離したI
-の生成をもたらす添加剤を使用することもでき、重合を妨げる少量の共溶媒のような他の添加剤を最終電解質配合物に望ましい特性を与えるために使用することができる。
【0052】
アノード、カソード、及びセパレータストリップは、電極アセンブリ内で互いに結合される。電極アセンブリは、
図1に示すような渦巻き型設計とすることができ、カソード、セパレータ、アノード、及びセパレータの交互のストリップをマンドレルの周りに巻き付けることによって製造され、巻き付けが完了するとマンドレルは電極アセンブリから引き抜かれる。セパレータの少なくとも1つの層及び/又は電気絶縁フィルム(例えば、ポリプロピレン)の少なくとも1つの層が、電極アセンブリの外側の周りに全面的に巻き付けられる。これは、いくつかの目的に役立つものであり、すなわち、これは、アセンブリを互いに保持することを助け、かつアセンブリの幅又は直径を望ましい寸法に調節するに用いることができる。セパレータ又は他の外側フィルム層の最外側の端部は、接着テープ片を用い又はヒートシールによって保持することができる。
図1に示すように、アノードは、最も外側の電極とすることができ、又はカソードが、最も外側の電極とすることができる。いずれの電極もセル容器と電気的に接触することができるが、特に、電極アセンブリの最外側巻回の極性を缶の極性と適合させることにより、最も外側の電極と容器の側壁との間の内部短絡を回避することができる。
【0053】
セルは、あらゆる適切な処理を用いて閉鎖かつ密封することができる。この処理は、以下に制限されるものではないが、クリンピング、リドローイング、コレッティング、及びその組合せを含む。例えば、
図1のセルに対しては、電極と誘電体コーンが挿入された後、缶内にビードが形成され、ガスケット及びカバーアセンブリ(セルカバー、コンタクトバネ、及び通気ブッシングを含む)が、缶の開放端内に置かれる。ガスケット及びカバーアセンブリがビードの方向に下方に押される時に、セルはビードで支持される。ビードの上の缶の上部の直径は、セグメント化コレットを用いて縮小され、ガスケット及びカバーアセンブリがセル内の所定の位置に保持される。通気ブッシング及びカバー内の開口を通って電解質がセル内に分注された後、通気ボールがブッシング内に挿入され、セルカバー内の開口が密封される。PTCデバイス及び端末カバーがセルカバーを覆ってセルの上に置かれ、缶の先端がクリンピングダイを用いて内側に曲げられ、ガスケット、カバーアセンブリ、PTCデバイス、及び端末カバーが保持され、ガスケットによる缶の開放端の密封が完了する。
【0054】
カソードに関して、カソードは、一般的に、約16から20μmの厚みを有するアルミニウムホイルである金属ホイル集電体上に被覆される。カソードは、コーティングの加工性、導電性、及び全体効率を均衡させるように注意深く選択されなければならないいくつかの材料を含有する混合物として形成される。これらの成分は、トリクロロエチレンのような溶媒の存在下で混合してスラリとされ、次に集電体上に被覆される。コーティング処理の後で、得られるコーティングは、好ましくは乾燥させて高密化され、このコーティングは、二硫化鉄(及びそのドーパント及び不純物)と、粒子状材料をまとめてこの混合物を集電体に接着させる結合剤と、この混合物に改善した導電性を与える金属、グラファイト、及びカーボンブラック粉末のような1つ又はそれよりも多くの導電材料と、ヒュームドシリカ及び/又は過塩基性スルホン酸カルシウムコンプレックスのような様々な加工助剤又は流動助剤とで基本的に構成される。好ましいカソード配合組成は、引用により組み込まれている米国特許公開第20090104520号明細書に開示されている。
【0055】
加えて、本明細書に引用により組み込まれている米国特許第7,157,185号明細書に説明されているように、高レートの用途を対象としたリチウム−二硫化鉄バッテリは、カソードにおける理論界面投入容量をそれと関連するアノードの理論界面投入容量と比較して過剰に与えることによって利益を得ることが確認されている。従って、一実施形態において、本発明のセルは、1.00未満、0.95未満、又は0.90未満の界面アノード対カソード投入比を有する。
【0056】
以下のもの、すなわち、パイライト94重量%から99重量%、導体0.1−3.0重量%、結合剤約0.1−3.0重量%、及び加工助剤約0−1.0重量%は、好ましいカソード配合組成に利用される典型的な材料である。パイライト約95−98重量%、導体約0.5−2.0重量%、結合剤約0.5−2.0重量%、及び加工助剤約0.1−0.5重量%を有するカソード混合物を有することはより望ましい。パイライト約96−97重量%、導体約1.0−2.0重量%、結合剤約1.0−1.5重量%、及び加工助剤約0.3−0.5重量%を有するカソード混合物を有することは更に望ましい。導体は、イリノイ州シカゴ所在の「Superior Graphite」及び/又はオハイオ州ウエストレーク所在のTimcalが提供しているカーボンブラックを含むことができる。結合剤/加工助剤は、テキサス州ヒューストン所在の「Kraton Polymer」が提供するg1651のようなスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)ブロックコポリマーから構成されるポリマー結合剤及びオランダ国ヘーレンフェーン所在のCibaから以前市販されたEFKA(登録商標)6950過塩基性スルホン酸カルシウムコンプレックス又はドイツ国エッセン所在の「Evonik Industries AG」が提供するAEROSIL(登録商標)200ヒュームドシリカを含むことができる。
【0057】
セパレータを穿刺する危険性をできるだけ小さくし及び/又は所定の条件の下でのレート性能を改善するために、小さい粒径を有するカソード材料を用いることも望ましい。例えば、FeS
2は、少なくとも230メッシュ(62μm)又はより細かいスクリーンで篩過することができる。より好ましくは、FeS
2は、10μm又はそれ未満の平均d50粒径を有するように粉砕された又は本明細書に引用により組み込まれている米国特許公開第20050233214号明細書に説明するように処理された媒体とすることができる。
【0058】
カソード混合物は、スリー・ロール・リバース、コンマ・コーティング、又はスロット・ダイ・コーティングのような様々な適切な処理を用いてホイル集電体に付加される。カソード集電体の片面上又はより好ましくは両側面上の無質量ゾーンをカソードの上縁に沿った電気接続(溶接又は加圧接触のいずれか)を容易にするためにコーティング処理に組み込むことができ、これは、各カソードの上縁に沿った長い非コーティング部分に実質的に対応する。あらゆる不要な溶媒を除去する乾燥の後又はそれと同時に、得られたカソードストリップは、カレンダー処理などによって高密化され、正極全体が更に圧縮される。このストリップが、セパレータ及び同様な(必ずしも同一ではないが)サイズのアノードストリップと共に次に螺旋状に巻かれることを考慮すれば、この高密化はジェリーロール電極アセンブリ内の電気化学活物質の充填を最大にするのに役立つ。カソード充填が、カソード集電体の1つの向き(すなわち、片面)で少なくとも混合物28mg/cm
2よりも大きい時に、本発明の一実施形態において特定の利点が明らかにされている。
【0059】
しかし、一部のカソード空隙は、放電中の二硫化鉄の膨張及び有機電解質による二硫化鉄の湿潤を許すのに必要とされるので、カソードは過度に高密化できない。より実用的には、高い密度にコーティングを圧縮するために印加することができる力の量に関しても作動限界があり、かつこうした力によって生じる集電体上の応力は、コーティングの不要な延び及び/又は実際の剥離を引き起こす場合がある。従って、最終高密化カソード内の固体充填率が電気化学反応を進行可能にするのに十分でなければならないことが好ましい。好ましくは、最終固体充填率は、約58%から70%であるが、より高い充填百分率が可能である場合がある。
【0060】
FR6缶のような固定した空間において、電極の厚みは、界面表面積の量に影響を与え、より厚い電極はジェリーロール内のより少ない巻回をもたらす。付加的な処理及び製造の難しさが発生する場合がある例えばカソード混合物配合組成、被覆、及び高密化作業は、カソード厚が増大すると全て影響を受けることになり、電極厚がいずれかに変化する時に次のジェリーロール巻き付けも影響を受ける。その結果、FR6セルにおいてジェリーロール界面積を約185から220cm
2に保つことが好ましい場合があり、これは、アノード厚みの140から180ミクロン、セパレータ厚みの16から25ミクロン、及びカソード厚みの180から220ミクロン(集電体を含む)に対応する。しかし、構成要素の厚み及び/又は巻き付け条件(例えば、マンドレルサイズ、空隙空間など)を変化させることによる別のより低く又はより高い界面表面積の設計が可能である。
【0061】
同じ母集団から選択された実質的に同一のセル設計、電極、及び電解質の配合組成を有する従来技術の渦巻き型リチウム−二硫化鉄バッテリのセットが放電する時に、バッテリは、間欠ドレインレート試験で様々な性能を示すことが多い。この変動性は、ジェリーロールの最外側巻回がアノードよりも多くのカソードを含むバッテリで特に明白に目立っている。こうしたセルは、「カソード外側ラップ」を有するとして説明され、間欠試験でそれらが受ける変動性がなければ、こうしたカソード外側ラップ設計は、「アノード外側ラップ」同等物(すなわち、ジェリーロールの円周に沿った最外側電極が主に又は専らアノードであるもの)と比較して、それらのリチウムのより有効な利用ため有利であると考えられている。
【0062】
カソード外側ラップセル設計の例は、
図2Aでの断面図、すなわち、ジェリーロール19の半径に沿った図に示されており、一方で
図2Aはアノード外側ラップ設計を示している。これらの図の両方で、カソード20は黒でアノード18は白で示されており、セパレータ26は破線として示されている。セルの残り部分(後述のような)は、設計での差異をより良く示すために省略してある。本明細書で用いる時に、カソード外側ラップ設計及びセルは、ジェリーロール内の活物質の最外側円周上の表面積の一部分が、カソードコーティング又は「パターン付き」コーティングが利用される状況で、露出されたカソード集電体のいずれかによってカソードに帰属する(又は最外側円周の50%未満がアノードに帰属する)あらゆるジェリーロール電極アセンブリを含む。アノード外側ラップセルは、その活物質の最外側円周の50%よりも多くがアノードに帰属する電極アセンブリを意味するが、好ましい実施形態において、最外側活物質の実質的に全てがアノードであることになる。セルがアノード外側ラップか又はカソード外側ラップかの識別において、あらゆるセパレータ、リード、絶縁テープ、及び他の不活性構成要素は考慮されず、かつ電極の界面配向は問題とされない。代わりに、ジェリーロールの最外側円周が、露出されるか又は露出されることになるアノード及びカソードの最外側部分に基づいて専ら評価される。また、本明細書で用いられる時に、リードが電極アセンブリとバッテリの端末の間の電気接触を確立している限り、リードは、集電体と比べて個別の構成要素と見なされ、一方で集電体は、電極アセンブリそれ自体内でのみ用いられる(例えば、集電体はリードに電子を伝達する)。
【0063】
いずれの場合でも(すなわち、アノード外側ラップ又はカソード外側ラップ設計)、電極及び特にアノードは、その製造の容易さと、この構成がそのセルの放電全体を通じて最低の可能な内部抵抗を維持する事実との理由により、実質的に均一な厚みを有する。集電体の片面に付加されたカソードコーティングも均一な厚みを有するが、活物質容積を最適化してカソード利用率を改善するために断続的コーティング技術を使用することができる。可変厚み電極は、放電中での全体の界面表面積に対する変化により生じる増大する内部抵抗及び/又は可変厚み電極セル設計の設計及び製造の複雑性の増大のために、少なくともリチウム−二硫化鉄の渦巻き型バッテリに関しては望ましいとは考えられない。実際に、本発明者は、この種類の可変厚み設計を利用するいかなる市販の又は実施可能なFR6又はFR03セルも認識していない。
【0064】
図2Cに見られるように、200mA連続ドレインレート試験で、アノード外側ラップ(A.O.W.)を有するセルは、対応するカソード外側ラップ(C.O.W.)セルよりも小さい放電容量を有する。連続ドレイン試験でのこの性能利点に加えて、カソード外側ラップ設計は、リチウムをより有効に利用し、これは、より経済的であり(リチウムはFR6セル内の最も高価な構成要素の1つであるので)、かつより環境的に有用である(放電済セルに残される全リチウムがより少ないので)。
【0065】
しかし、以下でより詳細に説明するように、バッテリが間欠ドレインレート試験に供された時に、カソード外側ラップの固有の利点は認められない。こうした間欠ドレインレート試験は、それが多くの電子デバイスでの消費者によるバッテリの利用実態を最も密接に模擬するので(すなわち、消費者は、多くの場合にデバイスを連続的でなく的に長期間使用する)極めて適切であると考えられる。アノード外側ラップ設計の性能を満たし又はそれを超える形で間欠試験で一貫して性能を発揮することに対するバッテリ設計の失敗は、カソード外側ラップ設計の広範な採用ためのかなりの阻害ファクタであった。結果として、FR6及びFR06セルのためにはアノード外側ラップが優勢であり、現在、市場で最も広く利用可能なセル設計である。
【0066】
図3Aは、カソード外側ラップを有する一連のFR6セルに関する間欠試験での電圧放電曲線を示している。この特定の間欠試験は、1時間の250mA定電流放電を含み、23時間の休止区間が続き、1.0ボルトのカットオフまで行われる。参照要素Pによって強調されるように、これらのセルに関する個別の電圧プロフィールは、この間欠試験の終わりで発散している。 セルの母集団が様々に低下した容量(予想値に比較して)を与えるこの挙動は、以後「早期電圧降下」と全体的に意味する。同一の材料を有するアノード外側ラップセルは、
図3Bに示す250mA1時間/日の比較プロフィールに見られるように、明らかにいずれの試験でも早期電圧降下を受けていない。カソード外側ラップセルにおける早期電圧降下は、
図4A(カソード外側ラップを示す)及び
図4B(アノード外側ラップ)に示す間欠試験に対して更に有意であり、この場合、セルは、1Aの10秒放電に続く50秒の休止のサイクルで1日に1時間(ここで注意すべきは残りの23時間も休止区間であったことである)1.0カットオフボルトに達するまで放電された。カソード外側ラップ設計を有する市販のFR6の多くも、
図5A(
図4A及び
図4Bのセルに対して上述したものと同じ間欠試験を示す)と
図5B及び
図5C(
図3A及び
図3Bのセルに対して上述したものと同じ間欠試験を示す)とに示す問題領域Pによって明らかなように、同じくこの挙動を示している。バッテリ製造業者の究極の目的及びあらゆるセル設計のための品質の究極の指標が、単一設計に従って製造された全てのバッテリに関する一貫性と信頼性である限り、早期電圧降下は、リチウム−二硫化鉄セルのためのカソード外側ラップの有用性を制限している。
【0067】
この早期電圧降下は、本質的に比較的なものである。早期電圧降下を判断するためには、複数の推定的に同一のセルの電圧放電曲線が比較されなければならない。観察された効果を確認するためには、少なくとも4つのセルが本明細書に説明した間欠試験を受けるべきである。より好ましくは、6よりも多くから10までの個別セルのセットの性能が互いに比較されなければならない。早期電圧降下は、1000分の1のベースでのみ現れる場合があるので、最も好ましくは、実行可能な最大数のバッテリを試験して比較されなければならない。
【0068】
母集団からの2つのセル内の7から10%よりも大きく、又はより断定的には11から15%よりも大きく、かつ最も断定的には16から20%の観測された変動は、そのセル設計に関する早期電圧降下問題を示している。この解析を行う際に、同一条件(例えば、周囲温度、ドレインレート、間欠性(もしあれば)、最終カットオフ電圧、使用される試験デバイスなど)を維持し、並びにセルの母集団が全て同じセル設計及び初期性能特性(例えば、電解質、カソード充填率、リチウム厚み、開路電圧など)を有することを確認する注意が必要である。
【0069】
利用可能なセルの母集団が不十分な場合又は上述の比較試験が断定的でない場合には、早期電圧降下は、同様に構成されて放電したセルの母集団内のリチウム利用率を比較することによって識別することができる。放電後の設定期間内に残ったリチウムの質量における有意な差異(例えば、5%、10%、又は20%)は、早期電圧降下を示すことができる。早期電圧降下の更に別の指標は、個別放電曲線それ自体の形状の単純で定性的な比較であり、セルが早期電圧降下を受けた場合、特にバッテリ寿命の終わりの方向に不規則な矛盾したプロフィールが表示されやすい(
図3Aから
図5Cに見られるように)。最後に、単一セルにおいて、間欠ドレイン試験で実際に与えられた容量で、製造業者が示した容量よりも有意に低い(例えば、約10%)ものは、早期電圧降下問題の形跡とすることができる。
【0070】
早期電圧降下のための先の解決法は、2010年10月14日に出願されて本発明の出願人に譲渡された米国特許出願出願番号第12/904,447号明細書に提案されている。ここでは、小さいリチウムのパッチが、カソードの端末側終端の下で狭い縦軸線に沿ってアノードの厚みを増大させるために提案されている。同様な手法は、米国特許公開第2010/0255357号明細書に見られるように、充電式バッテリに対して提案されており、導電性テープがジェリーロールの外側に沿ってアノード集電体の露出部分に付加され(内部溶接の必要性を排除する)、エラストマー部材がアノード集電体の内向き面に固定される(この内向き面に沿ったアノード材料の厚みを適合させ、それによって充電サイクルの間でこの充電式バッテリが反復的に膨張及び収縮する時の短絡の可能性を排除する)。特に、上述の特許公開での提案は、電気化学反応が発生する界面領域の外側にあるジェリーロールの最外側円周の非コーティング部分へのテープとエラストマー部材の固定を必要とする。
【0071】
本発明者は、カソードの端末側終端が電気化学活性の高い局所領域を生成すると現在判断している。特に、カソード外側ラップセル設計は、アノードと界面的に位置合わせされていないカソードの外側円周を含む。従って、カソード外側ラップの端末エッジで、リチウムイオンは端末エッジの周りを移動して最外側カソードコーティングとの反応を行い、それによってアノードとカソードの端末エッジとの間の境界の縦軸線の全てに沿った電気化学活性の高い領域である「エッジ効果」が生成される。セルがアノードの均衡不足を有する時に(FR6及びFR03バッテリにおいて好ましいように)、このエッジ効果は、この軸線に沿ってアノードを完全に消滅させることができ、かつそうなることになり、間欠負荷条件の下でのアノード不連続性をもたらす。対照的に、アノード外側ラップセル設計には、カソードの実質的に全てが特にアノードリードの場所に関して界面的に位置合わせされているので、この問題は発生しない。
【0072】
放電容量をできるだけ大きくするために完全長のアノード集電体はリチウム−二硫化鉄バッテリ内のアノードには使用されないので、いずれのポイントでのアノードの分断も、アノードタブ/負端末から分断された材料を分離させ、それによって分断部分から典型的に予想される容量が排除される。同様に、半径方向膨張の問題は、アノードタブ/リードの好ましい位置が、ジェリーロールの最外側円周上のアノードの末端にあることを定めているので、ジェリーロール内のどこか他のアノード不連続性は、
図3Aから
図5Cに適合するように、即時かつ永続的な容量低下をもたらすことになる。
【0073】
カソード外側ラップセルの内向き端末エッジに沿ったカソード材料の単なるマスキング又はコーティングは、カソードそれ自体の多孔性のために不十分である。すなわち、カソードの表面だけに配置された絶縁層は、リチウムイオンがアノードとマスキング材料の間の非コーティングエッジ界面で多孔質カソードに入り、次にマスキング材料の下方に拡散してカソード孔隙を通じて被覆カソードと反応することを防止できない。この場合、電気化学活性の高い望ましくない局所領域が、アノードとカソード表面上のマスキング材料のエッジとの間の界面に沿って同じく生成され、カソードの実際の端末エッジが表面を被覆されている場合でもアノード不連続性が生じる。
【0074】
早期電圧降下問題がこのように理解されると、上述の「リチウムパッチ」解決法は、そうでなければ不連続性が発生することになる領域に局所的アノード過均衡を生成することによって機能する。この余分なアノード材料は、アノードとアノードタブ/タブとの間の電気接続の完全状態を維持する。しかし、リチウムの柔軟で接着する性質は、製造スケールでのリチウムパッチの実現を支持できず、かつパッチそれ自体が付加的な原材料コストを生じることになる。また、リチウムパッチによって生じるアノード厚みの変化は、上述のジェリーロールの製造に伴う他の難しさを引き起こす。
【0075】
本発明のそれらの理論によって束縛されることを意図しないが、本発明者は、両面カソードの端末エッジに近いカソードの最外側上のカソードと反応するためにリチウムイオンが移動する必要がある距離を操作することにより、エッジ効果が排除され、カソード外側ラップセル設計におけるアノード不連続性を制御して防止することが可能になると現在考えている。エッジ効果の排除は、以下で詳しく説明するように、様々な方法で達成することができる。以下に説明される特徴を組み込んだ最終製品とセルを製造して使用する方法の両方が本明細書で明示的に考えられている。
【0076】
一実施形態において、ジェリーロールの外側ラップ上の端末エッジで電極の間に位置決めされたスペーサの使用により、間隙が、カソードの端末エッジとアノードの間に生成される。スペーサは、十分なエラストマー性を示すあらゆる低コストインサートを含むが、エラストマーストリップが好ましい。特に、スペーサは、放電するカソードによって加わる半径方向膨張力に耐えるのに十分な柔軟性及び硬さを有するが、バッテリ構成要素との適切な化学的及び電気化学的適合性を示さなければならない。具体的な材料組成には、セパレータ(微孔性及び無孔性の両方)、ガスケット、通気又は密封構成要素のために適切であるとして本明細書で先に識別されたあらゆる材料に加えて、他のクラスの天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエン、ブチルゴム、エチレンプロピレン型ゴム(例えば、EPDM)、ニトリル、ネオプレン、ウレタン、シリコンゴム、フッ素化炭化水素、及びフルオロエラストマーを挙げることができる。
【0077】
スペーサのエラストマー的性質は、バッテリの放電寿命全体を通じて、カソードと端末エッジでの縦軸線に沿った積み重ね圧力を排除することになる。積み重ね圧力のこの低下は、十分な物理的間隙を実質的に生成させ、バッテリに最初に負荷がかけられた時にその軸線に沿ったゾーン内のあらゆる対応する電気化学反応を妨げる。更に、セルが放電している時に、このゾーン内での電気化学反応の非存在性は、カソード膨張を妨げ、それによって電極はその局所的なゾーンでセル放電全体を通じて積み重ね圧力の欠如が発生し続ける。更に、スペーサのエラストマー特性は、ジェリーロールの各部分からの半径方向膨張を吸収して同時に電極の間の間隙をなお維持し、それによって積み重ね圧力を軽減し、バッテリの全放電を通じた非反応ゾーンに沿った間隙一体性が維持される。
【0078】
スペーサの特定の寸法は、セルサイズによって定められることになり、スペーサの長さ及び幅は、アノードの長さ及び幅に対応する。スペーサの厚みは、その幅よりも重要であり、厚みは、スペーサのいずれかの側にある電極の厚み及び充填の関数と見ることができる。例えば、195ミクロン厚のカソード(コーティング及び集電体を含めて)と175ミクロンのアノードとを有するセルにおいて、最適のスペーサは、500から825ミクロンの厚みを有することができ、600、650、700、750、及び800ミクロンのスペーサ厚みが含まれる。代替的に、スペーサ厚みは、カソード厚みの関数として表すことができ、スペーサは、全カソード(コーティング及び集電体を含めて)の厚みの少なくとも2、2.5、又は3倍である厚みを理想的には有する。逆に、スペーサ厚みは、カソードの厚みの4.5、4.25、4.0、又は3.5倍よりも大きくないものでなければならない。スペーサ厚みは、電極スタックの全体の厚み(セパレータ厚みを含めて)の関数として表すことができ、スペーサ厚みは、電極スタックの厚みの1.25から2.05倍、又は電極スタックの厚みの1.40から1.90又は1.50から1.8倍である。これらの示された寸法は、スペーサを巻き付けてアセンブリ内に組み込むの前の個別の構成要素としてみている。
【0079】
スペーサの硬度は、スペーサの弾性エラストマー特性の1つの評価基準である。好ましくは、スペーサは、40から60ジュロメータの硬度を有することになる。スペーサが80ジュロメータよりも大きい硬度定格を有する時に、スペーサは、放電ジェリーロールの半径方向膨張を受ける時に十分な柔軟性を持たない可能性があり、これは、ジェリーロールとスペーサの間の不要な相互作用原因になる場合がある。スペーサが硬すぎると、スペーサは電極及び/又はセパレータと共にピンチポイントを生成する可能性もあり、半径方向膨張によって生じる圧力のために損なわれ、更には分断する場合がある。逆に、スペーサは、ジェリーロール内のその挿入及び巻き付けを可能にするために十分な柔軟性を有するべきである。
【0080】
電解質の選択及びスペーサによるその電解質の吸収は、スペーサの設計に影響を及ぼす場合がある。例えば、より厚いスペーサは、セルが比較的高い導電度の非水電解質を使用する時に必要とされる場合がある(それらは、全て水性アルカリ電解質よりも遥かに導電性が低く、異なる電気化学システム間の比較及び教示が不適切で可能である理由に関する更に別の例として役立つ)。同様に、電解質の吸収に対して不浸透性のスペーサ材料は、より明確化した非反応性間隙を与える。
【0081】
スペーサは、単一の一体型ストリップとして最も有効に与えられるが、共通の軸線に沿って付加された複数の部材の使用によっても同様な望ましい効果を与えることができる。代替的に、スペーサは互いに積み重ねた一連の薄いストリップを含むことができる。いずれの場合でも、最終的な目標は、スペーサの必要な厚みが得られることの保証である。
【0082】
図6Aは、電極がその非巻き付け状態に置かれた時のアノード18及びカソード20に対するスペーサ60の配置を示している。好ましくは、スペーサはカソードの端末エッジに直接に隣接して又はその下に配置される。上述したように、アノードタブ又はリード36は、電極及びセパレータ(
図6には示さず)がコア端部Cに巻かれた時に、得られたジェリーロール電極アセンブリの最外側巻回上にあるように配置される。
【0083】
別の実施形態において、エッジ効果は、上述したように、固体ホイルカソード集電体の両面に連続して被覆されて、次に、ジェリーロール電極アセンブリの外側円周内のカソードの端末エッジに接近した縦方向ストリップ内の片面の電気化学反応性を大幅に低減し、より好ましくは排除することによって除かれる。反応性を排除した面は、次に電極がジェリーロール電極アセンブリに巻かれた時に、最大のアノード利用率を可能にするために、ジェリーロールの外側に好ましくは配向される。
【0084】
カソードの反応性は、いくつかの方法で排除することができる。一実施形態において、カソードを集電体から物理的に取り除くことができ、カソード幅全体に無質量ゾーンがもたらされる(上述したようなセル端末との電気接続性を確立するためのカソード長さに沿って任意的に達成することができる無質量ゾーンと対照的に/それとは異なる)。好ましくは、この除去は、両面被覆カソードの高速製造を可能にするために、連続コーティング操作と別のステップとして行われる。物理的除去は、集電体の被覆混合物を削ぎ落とすことにより、又は他の機械的、超音波、化学的、又は電気化学的手段に従って達成することができる。代替的に、犠牲物質を連続コーティングの前に集電体に付加することができ、その後、犠牲物質が除去され、それによってカソードに小さい空の縦方向ストリップが残される。次に、カソードストックは、端末エッジに反応性排除ゾーンを残すように切断される。
【0085】
別の実施形態において、カソード混合物の物理的除去ステップは、カソードストックの切断と同時に行うことができる。この無質量ゾーン概念の最後の実施形態において、カソードはいくつかの個別のバンドとして連続被覆することができ、次に非コーティングバンドが無質量ゾーンとして機能するように個々のカソードが切断される(カソードは、上側及び底側軸線方向エッジへの至るところで/カソードの全長に沿って被覆される)。あらゆる上述の物理的除去ステップは、間欠「パターンカソード」コーティング技術と比較した多くの利点を有し、それらには、より迅速な処理速度(連続コーティングは間欠コーティングの速度の2倍で進行することができる)及びより単純な製造方法(カソードストックの切断が、間欠パターンに適合するため正確に位置合わせされることを要しない点で)が含まれる。
【0086】
カソードの反応性を排除する別の手段は、カソードの最外側に接近した上述の縦方向ストリップに沿ったカソード混合物のイオン伝導性及び/又は電気化学反応性を実質的に阻止又は絶縁する物質の使用によるものである。一実施形態において、この絶縁は、ポリマー材料のような適切な材料を被覆カソード孔隙に注入して少なくとも部分的に塞ぎ、カソード孔隙を通過する反応物の出入を妨げることによって達成することができる。絶縁のための材料は、カソードストック上に被覆又は印刷することができ、続いて切断され縦方向ストリップが上述したように位置合わせされる。別の実施形態において、ストリップ内の活物質を最終反応生成物と置換するのに望ましい場所のカソード混合物を放電可能にすることができる。この放電操作は、既存の製造工程に、例えば、マスカソードストックを切断する作業の一部として統合することができる。更に別の実施形態において、カソード混合物内に望ましいカソード場所での剥離を発生させるか又は容易にする構成要素を導入することができる。これらの構成要素は、カソード混合物内にコーティング処理の前に含まれることができ、又は切断の前又は後に集電体又は被覆カソードに沿って離間させてスクリーン印刷又は被覆することができる。同様に、重合又は他の種類の化学反応を引き起こすことが公知の構成要素は、カソード孔隙を実質的に絶縁又は塞ぐために使用することができ、それによって望ましい場所での電解質又はリチウムイオンの浸入又は放出が妨げられる。剥離、重合、又は他のコーティング除去が所望される場合、被覆カソード混合物内の構成要素は、その場所がイニシエータに露出された時に望ましい効果を引き起こす。イニシエータは、化学的性質又は物理的性質のものとすることができ、熱、放射線、電磁気、音波又は超音波刺激、化学触媒、及び/又は光(例えば、レーザ光、UV光、IR光など)が含まれ、それによって望ましい場所にのみの電気化学反応性の望ましい低減/排除が誘起又は容易にされる。これらの手法は、本明細書に説明した他の技術のいずれかと組み合わせて達成することができる。
【0087】
カソードの反応性を排除する更に別の手段は、電極が一緒に巻かれる時に上述の縦方向ストリップに沿ってカソード均衡不足の局所領域がその領域内で達成されるポイントまでカソード充填を低減することである。この場合、連続コーティング操作を望ましい縦方向場所で片面にカソードが少なく被覆されるように周期的に変化させることができる。例えば、集電体基材がコーティングデバイスを通過する速度は、カソード充填低減局所部分を生成するために僅かの間周期的に増大させることができ、引き続くカソードの切断は、この低減部分がカソードの最外側端末エッジと一致するように位置合わせされる。コーティング処理及び/又は製造ラインの構成に応じて、カソードコーティングを低減するためのコーティング速度でのこの変化は、集電体の片面又は両面で行うことができる。代替的に、抵抗を増大させる及び/又は実際に与えられるカソード容量を低減する遅延剤をその領域内に意図的に導入することにより(場合によってはその後の印刷又は被覆ステップを通じて)、カソード容量を低減することができる。最終の切断カソードの長さに沿ってカソード充填及び/又はカソード容量を変えるこの方法は、上述の「リチウムパッチ」解決法と対照的であり(すなわち、前者は、その長さに沿って変化する容量/充填を有するカソードを生成し、一方、後者は、その長さに沿って変化する容量を有するアノードを生成する)、有利な態様においては、この実施形態に対して得られたジェリーロール内のアノードは均質な特性を保持する。この手法は、また切断及びコーティング操作に関してより大きい製造公差を可能にすることができ、特にカソードの最外側巻回上に配向した低減充填/容量のゾーンは、セル毎に変えることができ、かつこの方法に従って製造された母集団全体と比較したセルの一般的容量又は性能に悪影響を及ぼすことなく全体の外側円周まで潜在的に占有することができる。上述したように、この実施形態は、本明細書に説明した他の技術と組み合わせることができる。特に、これらの方法に固有のアノードとセパレータとを伴うカソードの必要な切断、位置合わせ、及び巻き付けを含む基礎となる連続被覆作業は、この分野では公知である。
【0088】
上述した無質量、絶縁、又は低減充填ゾーンは、最外側に面するカソード巻き付けの小さな部分の占有を必要とするのみである。このゾーンの最終的なサイズ(すなわち、幅)は、上述のスペーサ実施形態によって必要とされる厚みの説明におけるのと類似の考慮に関連することになり、すなわち、500ミクロン又はそれよりも大きいいずれのゾーンも十分である。対照的に、220ミクロン又はそれ未満であるゾーン/経路長は、早期電圧降下を阻止しないように見える。最後に、ゾーン幅は、電解質の導電性及びバッテリの全サイズ(例えば、AAかAAAかなど)と共に電極の厚み及び充填に関連することになる。ゾーンの好ましい厚みは、少なくとも500ミクロン、少なくとも600ミクロン、かつ少なくとも750ミクロンである。ゾーンの最大幅は、セル内の活物質をできるだけ多くし、かつ特に間欠コーティング操作と比較した製造工程における連続コーティングの上述の利点を維持する要望によって定まることになる。いずれにしても、ゾーンの最大幅は、ジェリーロールの最外側円周よりも小さく、より好ましくは最外側円周の2分の1、4分の1、及び10分の1よりも小さい。代替的に、この領域の最大サイズは、30mm、15mm、又は3mmとすることができる。いずれの場合でも、説明の寸法は、それらがウェブに沿って生成される時に(すなわち、巻き付ける前に)平坦な直線配向にある電極に対して考慮されている。
【0089】
図6Bは、電極がそれらの非巻き付け状態に置かれた時に、アノード18及びカソード20に対する反応性排除ゾーン62の配置を示している。上述したように、アノードタブ又はリード36は、電極とセパレータ(
図6Bに示さず)とがコア端部Cの周りに巻かれた時に得られるジェリーロールの最外側巻回上にあるように配置される。反応性排除ゾーン62は、無質量ゾーン、カソード孔隙の閉塞、又はカソード容量内の局所低減(すなわち、アノード過均衡)の生成によって達成することができ、全て上記で考えられて説明されている。
【0090】
実施形態のいずれにおいても、セルは、界面アノード均衡不足(すなわち、界面的に位置合わせされたアノード及びカソードの電気化学容量がほぼ等しい時又はアノード内の容量がより少ない時)を有し、従って、界面アノード均衡不足は、最も密接にアノード不連続性に関連付けられ、容積及び重量ベースの両方で放電容量の予期しない増大を与える。セルの均衡の計算において、界面アノード対カソード投入容量比は、米国特許第RE41,886号明細書(本明細書に組み込まれている)に開示したように、電極の最初の平坦な直線配向での理論的容量のベースで計算することができる。1.1未満のアノード対カソード比は、局所アノード均衡不足に関する潜在性を示し(製造作業における内在的変動に基づいて)、一方、1.0に等しいか又はそれ未満のアノード対カソード比は、電極/ジェリーロールの全界面電極表面にわたるアノード均衡不足をより断定的に反映する。0.95未満の界面アノード対カソード投入容量比は、一部の実施形態において最も好ましい場合がある。
【0091】
上述の実施形態は、リチウム−二硫化鉄バッテリに関して有用性を有するように特に想定されているが、同じ基本的原理は、リチウムアノードが集電体を有さず、カソードが集電体に被覆又はプレスされてそれが渦巻き型電極アセンブリの最外側円周上に位置する(すなわち、カソード外側ラップ設計)選択された数の1次リチウムバッテリシステムに対して少なくとも制限された適用性を見出すことができる。特に、本明細書に開示するセル設計原理は、リチウム−二酸化マンガンバッテリに適用することができる。しかし、1つの種類のバッテリ化学材料から別のものに一般的又は普遍的に適用する教示に対する上述の注意にはなお注意しなければならず、本明細書における原理のあらゆる更に別の拡張又は適用は検証されなければならない。
【0092】
以下の非限定的な実施例を参照して本発明を以下に説明する。
【実施例1】
【0093】
図7Aは、カソード外側ラップセル設計を有するバッテリのセットに関する放電プロフィールを示している。広範囲にわたる放電キャパシティ(約2500mAhから約3300mAhまでの範囲)は、早期電圧降下を示している。対照的に、
図7Bは、同様に構成されたセルのセットを示し、508ミクロンで40ジュロメータのスペーサが最外側カソードラップの端末エッジの下に付加されている。
図7Cは、同様に構成されたセルを示すが、812ミクロンで60ジュロメータのスペーサが用いられている。後の2つの場合には、全体の放電容量に悪影響を及ぼすことなく、早期電圧降下の発生は実質的に排除され、母集団内の個別セルの間の変動が大幅に低減されている。意義深いことには、250ミクロンで80ジュロメータのスペーサは、
図7Dに示すように、早期電圧降下の重症度を実際に高めている。ここで注意すべきは、
図7Aから
図7Dにおけるセルは、0.9ボルトカットオフ(y軸からx軸の約3分の2だけ延びる水平線として各図に描かれている)に達するまで周囲温度(21℃)で1日に1時間にわたって毎分10秒にわたって1Aのパルスを印加することによって間欠放電されたことである。
【実施例2】
【0094】
図8Aは、0.9ボルトカットオフに達するまで1日に1時間にわたって毎分10秒にわたって1Aのパルスで間欠放電された同様に構成された少なくとも9のセットに関する平均容量を示し、ここで各々のセットにおける電極間隙(すなわち、x軸に沿って表示された「dif path」)がスペーサ又は無質量ゾーンの使用によって変更された。この平均は、各データセットの中央点によって表され、バーは、そのロットに付随するデータに関する95%信頼水準を表している。結果の統計解析は、20、120、及び220ミクロン群は、同質群として扱うことができ、この群が、0.500、1.00、3.00、15.00、及び30.00ミリメートル群によって示された同質群とは95%信頼レベルで異なることを明らかにした。20、120、及び220ミクロンのセットは、端末エッジで積み重ねたセパレータの多重層の使用によって生成された。残りの群は、連続コーティングに続くこのコーティングの示された幅までの物理的除去によって生成された。
図8Bは、いかなる変更もなしに構成された(すなわち、無質量ゾーン又はスペーサのない)セルのセットに関する放電性能を示し、これらのセルは、
図8におけるように間欠的に放電され、母集団内の最高及び最低性能セルは、約3300mAhから2500mAhの範囲のいずれかの容量を有していた(最高性能セルに対して20%超の差であり、従って、早期電圧降下に該当する)。
図8B及び
図8Cは、0.500mm及び1.00マイクロメートル幅の無質量ゾーンを有する
図8Aからのセルのセットの放電性能を示し、早期電圧降下が低減され、又は実質的に排除されている。
【0095】
以上の説明に関して、カソードコーティング内のFeS
2の量は、バッテリの製造の前に混合物を分析することによって判断することができ、又は配合後の鉄含量を測定して鉄の検出されたレベルをカソード内のパイライトの重量パーセントに相関させることによって判断することができる。製造後の鉄含量に関する試験法は、カソードの既知量(面積当たりの質量及び容積に関して)を酸に溶解し、次にその溶解サンプル内の鉄の総量を誘導結合プラズマ発光分光分析法又は原子吸光法のような典型的な定量分析技術を用いて試験することによって行うことができる。この方法に従った公知の被覆カソード配合組成の試験は、鉄の総量がセル内のFeS
2を表すことを検証した(特にカソードコーティングにおけるFeS
2の純度を最大にすることが望ましい範囲で)。ピクノメーターを用いてカソード密度を測定することも可能であるが、ある結合剤は、リチウム−二硫化鉄セルの内部環境に露出された時に容積変化が発生する可能性があり、そのためにこうした方法によって定めた密度は、カソード乾燥混合物密度に到達するために更に調節することを要する場合がある。これらの特性の全ては、セル内のアノード均衡不足を確立するための界面投入容量を判断するために用いることができる。
【0096】
特に、サンプル中のアルミニウムの量に関する類似の方法(例えば、ICP−AES又はAA分光分析法)での試験は、集電体の厚みの計算を可能にすることになる(集電体がアルミニウムの時に)。他の類似の分析技術は、結合剤及び加工助剤などに対する試験にそれらの原子又は分子組成に応じて用いることができ、アノード及び/又はセパレータの分析は、類似の分析及び定量/定性技術を使用することができる。
【0097】
コンピュータ支援トモグラフィ及びX線などのような非破壊画像化技術は、セルの構造の判断(アノード外側ラップ対カソード外側ラップ)、並びに具体的に内部のセル構成要素の存在及び位置を含む本明細書に説明した他の特徴の判断に有用とすることができる。追加的に又は代替的に、実際のセルの分解検査を行うことができる。正規化重量分析、寸法測定、誘導結合プラズマ分光分析、又は気体クロマトグラフィー−マススペクトロスコピーを含む典型的な分析技術も特定のセルの構造及び特徴の判断に情報を与えることができる。
【0098】
バッテリ放電容量に関する重要な測定基準の例は、ANSIデジタルスチルカメラ試験(「DSC試験」)である。DSC試験は、デジタルカメラの電力要求を模擬した間欠ドレインレート試験であり、使用者が写真画像を撮影する間の短期間の高電力要求を必要とし、次に長い非活動期間が取られる。従って、AAサイズバッテリのためのDSC試験は、2秒間1500mWでの放電に続く28秒間650mWでの放電を含み、この30秒サイクルは、毎時5分間にわたって反復され(すなわち、10サイクル/時間)、次に55分間の休止期間(すなわち、0mW)が取られる。各30秒サイクルが、1つのデジタルスチル画像を表すと意図される。この1時間サイクルは、バッテリが1.05未満の出力電圧を最初に記録するまで毎時間反復されるが、セル設計者は、バッテリ放電特性を更に観察するためにこの終点を超えて試験を時に継続することができる。最終性能は、撮影された画像の数又は分単位の時間数を単位として定量化される(すなわち、画像の数は、この試験での分単位の時間数の常に2倍になることになる)。意義深いことに、周期的なこの試験の高電力要件は、それをバッテリ設計に対して最も困難なベンチマークの1つにするものであり、一方、同時にバッテリ消費者のための最も有意義な比較の根拠をもたらす。多くの他の間欠試験がこの分野で公知でありかつ利用されており、米国国家規格協会(「ANSI」)及び国際電気標準会議(「IEC」)などによって指定されたものが含まれる。
【0099】
上述の全体は、特にFR6及びFR03セルに関するものである。しかし、本発明は、側壁高さが容器の直径よりも大きい他の円筒形セルサイズ、他のカソードコーティング方式、及び/又は密封及び/又は圧力放出通気設計を有するセルにも適合させることができる。
【0100】
本発明の特徴及びその利点は、本発明の実施者によって更に評価されるであろう。更に、構成要素のある一定の実施形態及び説明に従って組み立てられたセルの性能が認識されるであろう。開示した概念の教示から逸脱することなく様々な修正及び改善を本発明に対して行うことができることは、本発明の実施者、並びに当業者によって理解されるであろう。与えられる保護の範囲は、特許請求の範囲、並びに法的に許容された解釈の幅によって判断されることになる。