(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A及びA’が、RE、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、鉛、及びセリウム;好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、鉛、セリウム、プラセオジム及びテルビウムからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のエアーブリージングカソード。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソード、特に金属空気電池において使用されるエアーブリージングカソードに関する。
【0002】
エネルギー貯蔵は、特に輸送分野では、なおも21世紀における主要な技術課題の一つである。リチウムイオン電池技術は、携帯機器に電力を供給する重要な役割を果たしてきた。しかし、携帯用途用の最も先進的なリチウムイオン電池でさえ、その実用容量の限界に達してきており、輸送のための要件を満たしていない。多くの異なる電池システムがあるが、その理論エネルギー密度が低いために電気自動車(EV)市場ではあまり魅力がないものになっており、それら全てが大きな技術的課題を有している。金属空気電池、特にリチウム空気電池は、実用的な再充電式電池のために可能な最も高いエネルギー密度を達成する見込みがある。リチウムの原子質量のみを考慮すると、およそ13000Wh/kgの理論比エネルギーが計算でき、これはガソリンの理論エネルギー密度(13200Wh/kg)に類似する。酸素、電解質及び他のセル成分の重量を含むより実際的な計算は、現在と近い将来のリチウムイオン電池技術と比較して3−5倍の比容量の改善が、リチウム空気電池システムにおいて達成可能であることをなお示している。
【0003】
リチウム空気電池は、リチウム含有アノード、電解質及びエアーブリージングカソードを本質的に含む。リチウムはアノードで酸化されてリチウムイオンと電子を生じる。電子は外部回路を通って流れ、リチウムイオンは電解質を通ってカソードに移動し、そこで、酸素が還元されてリチウム酸化物、例えばLi
2O
2が生成される。電池は外部電位を印加することによって再充電される;リチウム金属はアノード上に鍍金され、酸素がカソードで生成される。リチウム空気電池は、使用される電解質の種類に応じて、4つの異なるアーキテクチャ:非プロトン性、水性、混合非プロトン性/水性及びソリッドステートに分類することができる。
【0004】
非プロトン性のセルデザインは、リチウムイオン塩を溶媒和することが可能な任意の液体有機電解質(例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiN(SO
2CF
3)
2及びLiSO
3CF
3)を使用するが、典型的にはカーボネート、エーテル及びエステルから構成されている。非プロトン性の電解質を使用する利点は、電解質との更なる反応からリチウム金属を保護する界面がアノードと電解質との間に自然に形成されることである。典型的には液体電解質が充填された多孔質セパレータが、アノードとカソードの間の物理的接触と短絡を防止するために使用される。固体高分子電解質を使用することもでき、その場合、リチウム塩が、陽イオンを溶媒和することができるポリマーマトリックス中に分散される。このようなポリマーはまたプリフォームされ、ついでリチウム含有電解質で膨潤されて導電性が改善され、又は液体電解質もしくは他の可塑剤と組み合わされてゲル−ポリマー電解質が形成されうる。ポリマーが十分に堅牢な場合、多孔質セパレータは必要ではないが、補強材料、例えば米国特許第6254978号、欧州特許出願公開第0814897号及び米国特許第6110330号に記載されているPTFEのようなフルオロポリマーあるいはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はPEEKもしくはポリエチレンのような代替材料の微孔性ウェブ又は繊維をポリマー/ゲル中に導入することができる。これらの様々な非プロトン性電解質をまた電極構造に導入して、イオン伝導性を改善してもよい。非プロトン性電解質の使用に伴う問題は、カソードで生成されるリチウム酸化物が、非プロトン性電解質に一般に不溶性で、カソード/電解質界面に沿って、リチウム酸化物のビルドアップを生じることである。これは、非プロトン性セル中のカソードの目詰まりや体積膨張の傾向を高め、それが導電性を低下させ、経時的に電池性能を低下させうる。
【0005】
水性セルデザインは、例えば水性水酸化リチウム(アルカリ)のような、水に溶解したリチウム塩の組合わせである電解質を使用する。水性電解質もまた酸性でありうる。カソードの目詰まりの問題は、カソードで形成されるリチウム酸化物が水溶性であり、水性リチウム空気電池がその性能を経時的に維持することを可能にするので、回避される。水性セルはまた非プロトン性電解質を使用する電池よりも高い実用放電電位を有している。しかし、主要な問題は、リチウムが水と激しく反応するので、固体電解質界面がリチウム金属と水性電解質との間に必要とされることである。固体電解質界面はリチウムイオン伝導性であることが必要であるが、現在使用されているセラミックやガラスは低い伝導性を示すに過ぎない。
【0006】
混合セルデザインは、アノードに隣接した非プロトン性電解質とカソードに隣接した水性電解質を使用し、二つの異なる電解質はリチウムイオン伝導性膜により分離されている。
【0007】
ソリッドステートデザインは、非プロトン性又は水性電解質が使用される場合、アノードとカソードでの問題を克服するので、魅力的に見える。アノードとカソードは固体材料によって分離される。そのような材料は、リチウム−アルミニウム−チタン−ホスフェート(LATP)、リチウム−アルミニウム−ゲルマニウム−ホスフェート(LAGP)、及びシリカドープ型、ガーネット型構造を持つセラミック酸化物、例えばリチウム−ランタン−M酸化物(M=Zr、Nb、Ta等)、ペロブスカイト、例えばリチウム−ランタン−チタネート及びNASICON型構造を含む他の骨格酸化物(例えばNa
3Zr
2PSi
2O
12)を含む。ソリッドステートデザインの主な欠点は、ガラス−セラミック電解質の低い導電率である。
【0008】
非プロトン性電解質を使用することは、現在、実質的に高いセル容量をもたらすので、上に概説された欠点にもかかわらず、今日では好ましい。
【0009】
リチウム空気電池の理論エネルギー密度は5000Wh/kgを超えるが、これまでに得られた実際の値は、この理論値をかなり下回る。リチウム空気電池の性能限界が空気カソードに関連していることは一般に認められている。カソード反応はセルエネルギーの大部分を提供するが、セル電圧降下の大部分がまたカソードで起こる。カソードでは、三相界面がLi
+イオン/O
2/e
−間で必要とされる。リチウム酸化物は、カソード反応の結果として形成され、非プロトン性電解質系では、これらの酸化物は不溶性である。これらの不溶性酸化物がカソードの表面にバリアを形成し、カソード孔構造をブロックし、Li
+イオンとO
2が反応部位に到達することが妨げられ、よって放電を永久に終了させると考えられる。これらの酸化物は、反応速度をまた制限し放電電圧を低下させるカソードと比較して電気伝導性をまた低下させた。
【0010】
現在のリチウム空気電池の更なる問題は、そのようなセルが大きな過電圧を示すこと、つまり、電池を再充電するのに必要な電圧が電池を放電するために必要な電圧よりもかなり高いことである。これは、およそ60−70%の低サイクルエネルギー効率をもたらす;実行可能な電池では90%を超えるサイクルエネルギー効率が望ましい。
【0011】
金属空気電池、特にリチウム空気電池に使用される改良されたエアーブリージングカソードを提供し、特に再充電時に低い過電圧を示し放電時に高い電圧を示す改良されたエアーブリージングカソードを提供することが本発明の目的である。従って、本発明は、
(i)導電性の集電体と
(ii)金属イオン伝導性媒体と
を含む、金属空気電池での使用に適した、エアーブリージングカソードにおいて、式
(AA’)
a(BB’)
bO
c
(上式中、
A及びA’は同じか又は異なっており、RE(ここで、REはイットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムから選択される)、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、インジウム、タリウム、スズ、鉛、アンチモン及びビスマスからなる群から選択され;
Bは、Ru、Ir、Os、Rh、Ti、Sn、Ge、Mn、Nb、Ta、Mo、W、Zr及びPbからなる群から選択され;
B’は存在しないか、あるいはRu、Ir、Os、Rh、Ca、Mg、In、Tl、Sn、Pb、Sb、Bi、Ge、Nb、Ta、W、Mo、Zr又はRE(ここで、REは上に記載の通りである)からなる群から選択され;
cは3から11であり;
(a+b):cの原子比は1:1から1:2であり;
a:bの原子比は1:1.5から1.5:1である)
の金属酸化物を更に含むことを特徴とするカソードを提供する。
【0012】
幾つかの実施態様では、リチウムがAとA’のための適した元素のリストから除外されることが好ましい場合がある。幾つかの実施態様では、Nb、Ta、Mo、W及びZrが、Bに適した元素のリストから除外されることが好ましい場合がある。幾つかの実施態様では、Nb、Ta、Mo、W及びZrがB’に適した元素のリストから除外されることが好ましい場合がある。
好ましくは、A及びA’の少なくとも一つはアルカリ金属、アルカリ土類金属又はREである。より好ましくは、Aはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、A’はアルカリ土類金属又はREである。更により好ましくは、Aはアルカリ金属であり、A’はアルカリ土類金属又はREである。
【0013】
適切には、A及びA’は、RE、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、鉛及びセリウム;好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、鉛、セリウム、プラセオジム及びテルビウムからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、リチウム、マグネシウム、及び/又は鉛がA及びA’に適した元素のリストから除外されることが好ましい場合がある。
A及びA’が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウム及びセリウムから選択されることが特に好適である。例えば、Aがナトリウム及びカリウム(最も好ましくはナトリウム)から選択され得、A’がカルシウム及びセリウムから選択され得る。
【0014】
適切には、Bは、Ru、Ir、Os、Rh及びTi;好ましくはRu、Ir及びTiからなる群から選択される。
適切には、B’は、Ru、Ir、Os、Rh、Ca、Mg、RE、In、Tl、Sn、Pb、Sb、Bi及びGe;好ましくはRu、Ir、Ca、Mg、RE、In、Tl、Sn、Pb、Sb、Bi及びGeからなる群から選択される。幾つかの好ましい実施態様では、B’は存在しない。
【0015】
cは3から11である。(a+b):cの原子比が既知であるので、(a+b)の値を決定することができる。同様に、a:bの原子比と(a+b)の値が既知なので、aとbの値を決定することができる。
【0016】
金属酸化物は、結晶質、非晶質又はそれらの混合物でありうる。
【0017】
本発明の第一の実施態様では、カソードは、式(AA’)
a(BB’)O
cの金属酸化物を含む。この式において、A、A’、B及びB’は上で定義した通りであり;aは0.66から1.5であり、bは1であり、cは3から5である。これらの金属酸化物は、Structural Inorganic Chemistry:5版, Wells, A. F., Oxford University Press, 1984 (1991再版)に記載されているような、ペロブスカイト型構造を有している。ペロブスカイト型構造を有する金属酸化物の具体例としては、限定されないが、RERuO
3;SrRuO
3;PbRuO
3;REIrO
3;CaIrO
3;BaIrO
3;PbIrO
3;SrIrO
3;KIrO
3;SrM
0.5Ir
0.5O
3(ここで、MはCa、Mg又はRE(ここで REは上で定義された通りである)である)を含む。
【0018】
本発明の第二の実施態様では、カソードは、式(AA’)
a(BB’)
2O
cの金属酸化物を含む。この式において、A、A’、B及びB’は上で定義した通りであり、aは1.33から3であり、bは2であり、cは3から10、好ましくは6から7である。これらの金属酸化物は、Structural Inorganic Chemistry:5版, Wells, A. F., Oxford University Press, 1984 (1991再版)に記載されているような、パイロクロア型構造を有している。パイロクロア型構造を有する金属酸化物の具体例としては、限定されないが、RE
2Ru
2O
7;RE
2Ir
2O
7;Bi
2Ir
2O
7;Pb
2Ir
2O
7;Ca
2Ir
2O
7(ここで、REは上で定義された通りである)を含む。
【0019】
本発明の第三の実施態様では、カソードは、式(A
0.33A’
0.66)
2(BB’)
2O
cの金属酸化物を含む。この式において、AはNaであり;A’はREであり、BはTi、Sn、Ge、Ru、Mn、Ir、Os又はPbであり;B’は存在しないかあるいはTi、Sn、Ge、Ru、Mn、Ir、Os又はPbであり;aは2であり、bは2であり、cは6から7である。これらの金属酸化物もまた上記のようなパイロクロア型構造を有する。
【0020】
本発明の第四の実施態様では、カソードは式(AA’)
a(BB’)
3O
cの化合物を含む。この式において、A、A’、B及びB’は上で定義した通りであり;aは2から4.5であり、bは3であり、cは10から11である。これらの金属酸化物は、Structural Inorganic Chemistry:5版, Wells, A. F., Oxford University Press, 1984 (1991再版)に空間群Pn3を持つ立方型として記載されているような、KSbO
3型構造を有している。KSbO
3型構造を有する金属酸化物の具体例としては、限定されないが、K
3Ir
3O
9;Sr
2Ir
3O
9;Ba
2Ir
3O
9;La
3Ir
3O
11を含む。
【0021】
上に列挙したこれら組成物の幾つかでは、構造中の酸素化学量論量を低減する酸素空孔が存在している場合がある。同様に、一又は複数の第一金属部位(又はA、A’部位)の幾つかは空のまま残される場合があり、構造中の第一金属(又はA、A’金属)の化学量論を低減させる。更に、幾つかの例では、水分子が、幾つかの空の部位を占め、水和もしくは部分的に水和した金属酸化物が得られることが知られている。
【0022】
本発明のエアーブリージングカソードの金属酸化物の特定の組成においては、
AがNaであり;
A’がREであり;
BがTi、Sn、Ge、Ru、Mn、Ir、Os、Ta、Nb、Mo、W、Zr又はPbであり;
B’は存在しないか、あるいはTi、Sn、Ge、Ru、Mn、Ir、Os、Ta、Nb、Mo、W、Zr又はPbであり;
aが2であり;
bが2であり;
cが6から7である。
Bは好ましくはTi、Sn、Ge、Ru、Mn、Ir、Os又はPbでありうる。B’は好ましくはTi、Sn、Ge、Ru、Mn、Ir、Os又はPbでありうる。
【0023】
本発明のエアーブリージングカソードの金属酸化物の特に更に好ましい組成においては、
AはLi、Na又はK、好ましくはNa又はKであり;
A’はアルカリ土類元素又はRE、好ましくはカルシウム又はセリウムであり;
BはTi、Sn、Ge、Ru、Mn、Ir、Os、Ta、Nb、Mo、W、Zr又はPbであり;
B’は存在しないかあるいはTi、Sn、Ge、Ru、Mn、Ir、Os、Ta、Nb、Mo、W、Zr又はPbである。
【0024】
この好ましい組成では、好ましくはaは2であり、bは2であり、cは6から7である。a、b及びcに対するこれらの好ましい値はまたここに記載の他の組成に対しても好ましい場合がある。Bは好ましくはTi、Sn、Ge、Ru、Mn、Ir、Os又はPbでありうる。B’は好ましくはTi、Sn、Ge、Ru、Mn、Ir、Os又はPbでありうる。
【0025】
金属酸化物は、金属空気電池の再充電を触媒することを支援し、また金属空気電池の放電を支援しうる。
【0026】
好ましくは、金属酸化物の比表面積(BET)は20m
2/gより大きく、好ましくは50m
2/gより大きい。BET法による比表面積の決定は次の方法によって実施される:脱気して清浄な固体表面を形成した後に窒素吸着等温線が得られ、吸着されたガスの量が一定温度(通常は1大気圧でのその沸点における液体窒素のもの)でガス圧の関数として測定される。ついで、1/[V
a((P
0/P)−1)]対P/P
0のプロット(ここで、V
aは圧力Pにおいて吸着されたガスの量であり、P
0はガスの飽和圧力である)を0.05から0.3(又はしばしば0.2と低い範囲)の範囲のP/P
0値に対して作成する。プロットに直線を適合させて、切片1/V
mCと傾き(C−1)/V
mCから単層体積(V
m)を得る(ここで、Cは定数)。サンプルの表面積は単一の吸着質分子が占める面積を修正することによって単層体積から決定することができる。更なる詳細は‘Analytical Methods in Fine Particle Technology’, Paul A. Webb 及びClyde Orr, Micromeritics Instruments Corporation 1997に見いだすことができる。
【0027】
金属酸化物は、固相合成、熱水合成、噴霧熱分解、火炎噴霧熱分解及びある場合には共沈を含む様々な経路によって作製することができる。直接の固相合成経路は空気中で酸化物及び/又は炭酸塩の化学量論的混合物を高温に、典型的には>800℃に加熱することを含む。熱水合成は適当な出発塩と必要に応じての酸化剤の混合物を適切な密封容器中でより穏やかな温度(典型的には200−250℃)で加熱することを含む。この方法は固相経路によって調製されたものよりも更に大なる表面積(つまり小さい結晶サイズ)を材料に与える。
【0028】
金属酸化物の充填量及びカソードの厚みは特に限定されず、金属空気電池に使用される操作条件とカソードの多孔度に依存して変化するであろう。金属酸化物の充填量は、0.003mg/cm
2と15mg/cm
2の間、適切には0.005mg/cm
2と5mg/cm
2の間、好ましくは0.005mg/cm
2と1mg/cm
2の間で変わりうる。
【0029】
本発明のエアーブリージングカソード内の導電性集電体は、空気/酸素がそれを通って拡散することを可能にすべきであり、当業者に知られた任意の好適な集電体でありうる。適切な導電性集電体の例は、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、チタン又はニッケルのような金属製の、メッシュ又はグリッドを含む。導電性集電体は、空気/酸素が流通可能な一方の面に設けられた流路を有するグラファイト板でありうる。導電性集電体はまたその一面に塗布されたガス拡散層を含んでいてもよい。典型的なガス拡散層は、適切には一般的な不織炭素繊維ガス拡散基材、例えば剛性シート炭素繊維紙(例えば日本の東レから入手可能なTGP−Hシリーズ)、又はロールグッド(roll-good)炭素繊維紙(例えばドイツのFreudenberg FCCT KGから入手可能なH2315系シリーズ;ドイツのSGL Technologies GmbHから入手可能なSigracet(登録商標)シリーズ;米国のBallard Material Productsから入手可能なAvCarb(登録商標)シリーズ;又は台湾のCeTech株式会社から入手可能なN0Sシリーズ)、又は織物炭素繊維クロス基材(例えばイタリアのSAATI Group,S.p.A.から入手可能な炭素布のSCCGシリーズ;又は台湾のCeTech株式会社から入手可能なW0Sシリーズ)に基づく。
【0030】
本発明の一実施態様では、エアーブリージングカソードは更に多孔質導電性材料を含む。本発明のエアーブリージングカソードにおける多孔質導電性材料は、それが多孔性で導電性である限り、特に限定されない。例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;例えば天然グラファイト等のグラファイト;導電性繊維、例えば炭素繊維及び金属繊維、銅、銀、ニッケル又はアルミニウムなどの金属の粉末;カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブのアレイ;有機導電性材料、例えばポリフェニレン誘導体、ポリピロール及びポリアニリン、及びポリビニルピロリドン及びポリアクリロニトリルのようなひとたび炭化されると導電性である材料;あるいはこれらの一又は複数の混合物を含む。高表面積及び細孔体積が大きい理論容量につながるが、小さな気孔率は電解質/O
2に近付けないか、又は放電反応中に急速にブロックされうる;従って、メソ細孔領域(すなわち2から50nmの間)の気孔率を有する材料が有益である。多孔質導電性材料は、エアーブリージングカソード中に金属酸化物及び多孔性導電性材料の全重量に基づいて1から99wt%の充填量で、適切には50から99wt%、好ましくは70から95wt%で存在する。金属酸化物は、エアーブリージングカソードの多孔質導電性材料上に担持されるか又は多孔質導電性材料と非常に密に混合されうる。
【0031】
本発明の一実施態様では、多孔質導電性材料は酸素還元活性を有しており、カソードにおいて酸素を還元するのに役立つであろう。このような材料の例は、高表面積炭素、例えばスーパーP(TIMCAL)、XC−72R(CABOT)ケッチェンEC300J(Akzo Nobel)及びグラファイト化又は官能化カーボン担体を含む。後述されるように、この実施態様のエアーブリージングカソードは、場合によっては更なる酸素還元触媒を含んでいてもよい。
【0032】
金属酸化物は、金属酸化物及び多孔質導電性材料の全重量に基づいて1から99wt%、適切には1から50wt%、好ましくは5から30wt%の充填量で、エアーブリージングカソード中に適切に存在する。
【0033】
本発明の更なる実施態様では、エアーブリージングカソードは酸素還元触媒を更に含む。本発明のエアーブリージングカソードでの使用に適した酸素還元触媒の例は、当業者に知られており、限定されるものではないが、無機酸化物(例えばMnO
2、TiO
2、Co
3O
4、Fe
3O
4、NiFe
2O
4)、ペロブスカイト、貴金属触媒を含む。酸素還元触媒は、場合によっては炭素又は他の担体のような高表面積担体材料に担持され、「担体」自体もまた酸素還元反応に対して活性を有しうる。担体は本発明のエアーブリージングカソードにおける多孔質導電性材料であってもよい。
【0034】
本発明のエアーブリージングカソード中の金属イオン伝導性媒体は、良好なリチウムイオン移動性、O
2アクセス及び導電性が維持されるようにカソード全体にわたって分散させられている先に記載された液体又は固体電解質材料の任意のものでありうる。適切には、金属イオン伝導性媒体はリチウムイオン伝導性である。例えば、リチウム塩が適切な非プロトン性液体、水又は固体電解質材料、例えば固体高分子電解質又は固体ガラスセラミック材料に溶解/分散させられる。適切なリチウム塩は、限定されるものではないが、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiBETI)、リチウム4−5−ジシアノ−2−トリフルオロメチルイミダゾール(LiTDI)を含む。適切な非プロトン性液体は、限定されるものではないが、カーボネート(例えばプロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート(EC))又はエーテル/グリム(例えばジメチルエーテル(DME)及びテトラグリム)又はイオン性液体(例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(EMITFSI)、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PP13−TFSI))を含む。適切な固体高分子電解質材料は、限定されるものではないが、ポリマー鎖中に陽イオンを溶媒和する酸素、窒素、フッ素又は硫黄ドナー原子を含みうるポリマー、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアミン及びポリスルフィド又は他のポリマー、例えばポリフッ化ビニリデンPVDF又はポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−HFP)のような共重合体を含む。ゲル−ポリマー電解質は、また、これらの液体電解質と固体ポリマー成分を組み合わせ、及び/又は可塑剤(例えばPC、エチレンカーボネート、ポリ(エチレングリコール)を含むボレート誘導体B−PEG)をポリマーに添加することによって製造されうる。金属イオン伝導性媒体は、金属酸化物及び多孔質導電性材料の全重量に基づいて、10−800wt%、適切には100−400wt%の充填量でエアーブリージングカソード中に存在する。本発明者等は、本発明のエアーブリージングカソードが、金属イオン伝導性媒体が非プロトン性液体である場合に良好に機能することを見出した。しかしながら、幾つかの好ましい実施態様では、固体電解質を用いることができる。
【0035】
本発明のエアーブリージングカソードは結合剤(バインダー)をまた含みうる。結合剤は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン(PTFE−HFP)共重合体、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体又はそれらの混合物からなる群から選択されうる。特定の例としては、PVDF、PVDF−HFP及び過フッ素化スルホン酸(例えばナフィオン)及びリチウム交換PFSAsが含まれる。結合剤は、金属酸化物及び多孔質導電性材料の全重量に対して10−100wt%の充填量でエアーブリージングカソード中に存在しうる。
【0036】
本発明のエアーブリージングカソードは、金属イオン伝導性媒体と金属酸化物を適当な極性溶媒(例えば、アセトン、NMP、DEK、DMSO、水、アルコール、エーテル及びグリコールエーテル及び有機カーボネート)中で混合し、自立フィルムとしてキャスティングするか又は導電性集電体上にコーティングすることによって、作製されうる。存在する場合、多孔質導電性材料、酸素還元触媒及び/又は結合剤はまた極性溶媒と共に混合される。自立フィルムのキャスティング又は導電性集電体上へのコーティングは、K−バーコーティング、ドクターブレード、スクリーン印刷、スプレー、又はブラシコーティング又はディップコーティングによって実施することができる。一実施態様では、自立フィルムは転写剥離基材、例えばPTFE、又はガラスシート上に先ずキャスティングされ、その後、引き続いてホットプレス又はコールドプレスを介して積層することにより導電性集電体上に移され固定される。エアーブリージングカソード層はまた上述のものを含む様々な技術によって、固体ポリマー又は他の固体電解質層上に直接塗布されてもよい。エアーブリージングカソードはまたポリマー、ガラス又はセラミック製自立フィルムのような、固体Li伝導性電解質上に直接キャスティングされ又はコーティングされてもよい。
【0037】
あるいは、本発明のエアーブリージングカソードは、金属酸化物を適当な極性溶媒(例えば、アセトン、NMP、DEK、DMSO、水、アルコール、エーテル及びグリコールエーテル及び有機カーボネート)中で混合し、自立フィルムとしてキャスティングするか又は導電性集電体上にコーティングすることによって、作製されうる。存在する場合、多孔質導電性材料、酸素還元触媒及び/又は結合剤はまた極性溶媒と共に混合される。ついで、金属イオン伝導性媒体が、自立フィルム又はコーティング中に含浸するように自立フィルム又はコーティング上に塗布される。ついで、自立フィルムは、上述の方法によって、集電体に移される。
【0038】
本発明の更なる態様は、本発明に係るエアーブリージングカソードと、アノードと、アノードとカソードを分離する電解質とを含む金属空気電池を提供する。
【0039】
アノードは、活性なアノード材料とアノード集電体を有するアノード層を備えている。活性なアノード材料は、好適には、金属イオンを吸蔵し放出することができる金属元素を含む。金属元素の例は、限定されるものではないが、アルカリ金属(例えばNa、Li、K)、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca)、両性金属(例えばZn、Al、Si)及び遷移金属(例えばFe、Sn、Ti、Nb、W)を含む。好ましくは、金属元素はアルカリ金属、特にリチウムである。金属元素は、金属、合金(例えばスズ又はケイ素とのもの)、酸化物、窒化物、硫化物、炭化物、又は例えば炭素、ケイ素等との層間生成物として、存在する。好ましくは、金属元素は金属として存在する。リチウムイオン電池技術に一般的に使用される他の材料、例えばLi
5Ti
4O
12、シリコン、グラファイト、カーボンナノチューブ、リチウム金属又はリチウム金属合金もまた使用することができる。アノード集電体は、材料が導電性であれば特に限定されるものではない。例としては、金属、合金、カーボン等を含み得、ホイル、メッシュ、格子等の形態であり得る。適切なアノード集電体は当業者に知られているであろう。
【0040】
電解質は、非プロトン性、水性、混合物又は固体であり得、金属イオンを伝導する能力を有する限り、如何なる材料であってもよい。
【0041】
一実施態様では、電解質は非プロトン性であり、リチウム塩は適切な非プロトン性液体に溶解される。適切なリチウム塩は、限定されるものではないが、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiBETI)、リチウム4−5−ジシアノ−2−トリフルオロメチルイミダゾール(LiTDI)を含む。適切な非プロトン性液体は、限定されるものではないが、カーボネート(例えばプロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート(EC))又はエーテル/グリム(例えばジメチルエーテル(DME)及びテトラグリム)又はイオン性液体(例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(EMITFSI)、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PP13−TFSI))を含む。
【0042】
更なる実施態様では、電解質は水性液体、例えば水性水酸化リチウムである。あるいは、水性電解質は酸性である。水性電解質が使用される場合、固体電解質界面が、水性電解質とアノードの反応を防ぐためにアノードと電解質との間に必要とされる。
【0043】
非プロトン性又は水性電解質のような液体電解質が使用される場合、電気的短絡を防止するために、多孔質セパレータがアノードとカソードとの間に必要とされ、金属空気電池は、多孔質セパレータに液体電解質が含浸されている構成とされる。セパレータ材料の例は、ポリエチレン(例えば発泡ポリテトラフルオロエチレン)、ポリプロピレン、織布又は不織布又はガラス繊維、又は複合/多層構造のようなこれらの又は他の成分の組み合わせの多孔質フィルムを含む。
【0044】
更に別の実施態様では、電解質は、固体又はゲルである。例えば、電解質は溶解又は分散したリチウム塩を有する固体高分子材料であってもよい。例えば、リチウム塩、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiBETI)、リチウム4−5−ジシアノ−2−トリフルオロメチルイミダゾール(LiTDI)が、ポリマー鎖中に陽イオンを溶媒和する酸素、窒素、フッ素又は硫黄ドナー原子を含むポリマー、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアミン及びポリスルフィド又は他のポリマー、例えばポリフッ化ビニリデンPVDF又はポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−HFP)のような共重合体中に溶解/分散させられる。ついで、ポリマー溶液/分散液がキャスティングされてアノードとカソードの間に存在する電解質膜が形成される。本発明での使用に適したゲル電解質の例としては、限定されるものではないが、ポリマー、例えばポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(エチレングリコール)又はポリアクリロニトリル;アミノ酸誘導体;又はサッカリド、例えばソルビトール誘導体で、上述のリチウム塩を含む電解質溶液を含むものからなるゲル電解質が含まれる。ポリマー/ゲルが十分に堅牢ならば多孔質セパレータは必要とされないが、補強材料、例えば米国特許第6254978号、欧州特許出願公開第0814897号及び米国特許第6110330号に記載されたPTFEのようなフルオロポリマー、又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、あるいは代替材料、例えばPEEKもしくはポリエチレンの微孔性ウェブ又は繊維が、ポリマー/ゲル中に導入されてもよい。
【0045】
更に別の実施態様では、電解質は、固体ガラスセラミック材料、例えばリチウム−アルミニウム−チタン−ホスフェート(LATP)、リチウム−アルミニウム−ゲルマニウム−ホスフェート(LAGP)及びシリカドープ型、ガーネット型構造のセラミック酸化物、例えばリチウム−ランタン−M酸化物(M=Zr、Nb、Ta等)、ペロブスカイト、例えばリチウム−ランタン−チタネート及び他の骨格酸化物、例えばNASICON型構造(例えばNa
3Zr
2PSi
2O
12)である。
【0046】
本発明者等は、本発明のエアーブリージングカソードが、金属イオン伝導性媒体が非プロトン性液体である場合に良好に機能することを見出した。しかしながら、幾つかの好ましい実施態様では、固体電解質を用いることができる。
【0047】
金属空気電池は、当業者に知られている技術によって構築することができる。
本発明の金属空気電池は、携帯用、定置又は輸送用途に使用することができる。
【0048】
以下、本発明は、例示であって限定するものではないことが意図される実施例によって更に説明される。実施例は以下の添付図面を参照しながら説明される。