(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施形態(実施例)のうちの2例について図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態1によりこの発明が限定されるものではない。
図6〜
図8において、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。この明細書において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用灯具を車両に搭載した際の前、後、上、下、左、右である。
図3、
図5、
図9のレンズの断面図においては、光路を明確にするためにハッチングを省略してある。
【0013】
(実施形態1の構成の説明)
図1〜
図8は、この発明にかかる車両用灯具の実施形態1を示す。以下、この実施形態1にかかる車両用灯具の構成について説明する。図中、符号1L、1Rは、この実施形態1にかかる車両用灯具(たとえば、車両用前照灯、ロービーム用ヘッドランプなど)である。前記車両用灯具1L、1Rは、車両の前部の左右両端部に搭載されている。前記車両用灯具1L、1Rは、左側通行用の車両用灯具である。従って、走行車線側が左側であり、対向車線側が右側である。
【0014】
(ランプユニットの説明)
前記車両用灯具1L、1Rは、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、レンズ2、4、5と、半導体型光源3と、ヒートシンク部材(図示せず)と、図示しない取付部材(ホルダおよびレンズホルダなど)と、を備えるものである。
【0015】
前記レンズ2、4、5および前記半導体型光源3および前記ヒートシンク部材および前記取付部材は、ランプユニットを構成する。前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズは、灯室(図示せず)を画成する。前記ランプユニットは、前記灯室内に配置されていて、かつ、上下方向用光軸調整機構(図示せず)および左右方向用光軸調整機構(図示せず)を介して前記ランプハウジングに取り付けられている。なお、前記灯室内には、前記ランプユニット以外のランプユニット、たとえば、フォグランプ、ハイビーム用ヘッドランプ、ローハイ用ヘッドランプ、ターンシグナルランプ、クリアランスランプ、デイタイムランニングランプ、コーナーリングランプなどが配置されている場合がある。
【0016】
(半導体型光源3の説明)
前記半導体型光源3は、
図1、
図2に示すように、この例では、たとえば、LED、OELまたはOLED(有機EL)などの自発光半導体型光源である。前記半導体型光源3は、発光チップ(LEDチップ)30を封止樹脂部材で封止したパッケージ(LEDパッケージ)から構成されている。前記パッケージは、基板(図示せず)に実装されている。前記基板に取り付けられているコネクタ(図示せず)を介して前記発光チップ30には、電源(バッテリー)からの電流が供給される。前記半導体型光源3は、前記ヒートシンク部材に取り付けられている。
【0017】
前記発光チップ30は、平面矩形形状(平面長方形状)をなす。すなわち、4個の正方形のチップをX軸方向(水平方向)に配列してなるものである。なお、2個もしくは3個もしくは5個以上の正方形のチップ、あるいは、1個の長方形のチップ、あるいは、1個の正方形のチップ、を使用しても良い。前記発光チップ30の正面この例では長方形の正面が発光面31をなす。前記発光面31は、基準光軸(前記車両用灯具1L、1Rの基準光軸、前記レンズ2、4、5の基準光軸、基準軸)Zの前側に向いている。前記発光チップ30の前記発光面31の中心Oは、前記レンズ2、4、5の基準焦点Fもしくはその近傍に位置し、かつ、前記基準光軸Z上もしくはその近傍に位置する。
【0018】
図2において、X、Y、Zは、直交座標(X−Y−Z直交座標系)を構成する。X軸は、前記発光チップ30の前記発光面31の中心Oを通る左右方向の水平軸であって、この実施形態1において、左側が+方向であり、右側が−方向である。また、Y軸は、前記発光チップ30の前記発光面31の中心Oを通る上下方向の鉛直軸であって、この実施形態1において、上側が+方向であり、下側が−方向である。さらに、Z軸は、前記発光チップ30の前記発光面31の中心Oを通る法線(垂線)、すなわち、前記X軸および前記Y軸と直交する前後方向の軸(前記基準光軸Z)であって、この実施形態1において、前側が+方向であり、後側が−方向である。
【0019】
(レンズ2、4、5の説明)
前記レンズ2、4、5は、
図1、
図3、
図5に示すように、主レンズ部2と、補助レンズ部4と、フランジ部5と、から構成されている。前記レンズ2、4、5は、たとえば、PC材、PMMA材、PCO材などの樹脂製のレンズ(樹脂により一体に成形されているレンズ)からなるものである。すなわち、前記半導体型光源3から放射される光は、高い熱を持たないので、前記レンズ2、4、5として樹脂製のレンズを使用することができる。
【0020】
(主レンズ部2の説明)
前記主レンズ部2は、1個の入射面20と、複数個この例では5個の出射面、すなわち、第1出射面21、第2出射面22、第3出射面23、第4出射面24、第5出射面25(以下、「出射面21〜25」と記載する場合がある)と、から構成されている。前記主レンズ部2は、前記取付部材を介して前記ヒートシンク部材に、前記半導体型光源3と対向するように、取り付けられている。この例において、前記主レンズ部2の中心(図示せず)は、前記発光チップ30の前記発光面31の中心O(前記X軸、前記基準光軸Z)に対して、下に位置する。なお、前記主レンズ部2の中心と前記発光チップ30の前記発光面31の中心Oとを一致もしくはほぼ一致させても良いし、前記主レンズ部2の中心を前記発光チップ30の前記発光面31の中心Oに対して、上に位置させても良い。前記主レンズ部2は、前記基準光軸Zおよび前記基準焦点Fを有する。
【0021】
(入射面20の説明)
1個の前記入射面20は、前記半導体型光源3と対向する面であって、この例では2次曲面または複合2次曲面または自由曲面により連続的に形成されている。前記入射面20は、前記半導体型光源3からの光(直射光)を前記主レンズ部2中に入射させる。
【0022】
(出射面21〜25の説明)
前記出射面21〜25は、前記半導体型光源3と対向する面と反対側の面であって、この例では自由曲面または複合2次曲面または2次曲面からそれぞれ独立して形成されている。
【0023】
前記出射面21〜25は、全体が2本の水平分割段差面2U、2Dにより、上段と中段と下段とに分割されていて、かつ、中段が2本の垂直分割段差面2L、2Rにより、左側(走行車線側)と中間と右側(対向車線側)とに分割されている。すなわち、合計5個に分割されている。
【0024】
前記上段の出射面21は、前記中段の出射面22、23、24より、後側に凹んでいる。前記中段の出射面22、23、24は、前記下段の出射面25より、後側に凹んでいる。前記中間の中段の出射面23は、前記左右両側の中段の出射面22、24より、後側に凹んでいる。
【0025】
前記上段の出射面21は、スクリーンの上下の垂直線VU−VDに対して左右対称もしくはほぼ左右対称の拡散配光パターンとしての第1配光パターンP1(
図7(A)を参照)を出射する。
【0026】
前記右側の中段の出射面22は、右側の下水平カットオフラインCL1を有する拡散配光パターンとしての第2配光パターンP2(
図7(B)を参照)を照射する。
【0027】
前記中間の中段の出射面23は、右側の下水平カットオフラインCL1、中間の斜めカットオフラインCL2、左側の上水平カットオフラインCL3を有する集光配光パターンとしての第3配光パターンP3(
図7(C)を参照)を照射する。
【0028】
前記左側の中段の出射面24は、左側の上水平カットオフラインCL3を有する拡散配光パターンとしての第4配光パターンP4(
図7(D)を参照)を照射する。
【0029】
前記下段の出射面25は、スクリーンの上下の垂直線VU−VDに対して左右対称もしくはほぼ左右対称の拡散配光パターンとしての第5配光パターンP5(
図7(E)を参照)を出射する。前記下段の出射面25は、非球面の凸面をなす。
【0030】
前記の5個の配光パターンP1〜P5が重畳されることにより、
図8に示す下水平カットオフラインCL1、斜めカットオフラインCL2、上水平カットオフラインCL3を有するロービーム配光パターンLPが形成される。
【0031】
(補助レンズ部4の説明)
前記主レンズ部2の下辺には、補助レンズ部4が一体に設けられている。前記補助レンズ部4は、入射面40と、全反射面41と、出射面42と、から構成されている。前記補助レンズ部4は、
図3に示すように、前記半導体型光源3からの光L1を前記入射面40から入射して、その入射光L2を前記全反射面41で全反射させ、その全反射光L3を前記出射面42から出射させ、その出射光L4により、
図6(A)、
図7(F)、
図8に示すオーバーヘッドサイン配光パターンP6として照射する。
【0032】
前記補助レンズ部4により形成される前記オーバーヘッドサイン配光パターンP6は、前記主レンズ部2により形成されるロービーム配光パターンLPの主配光パターンに対する補助配光パターンである。
【0033】
図5(A)に示すように、前記補助レンズ部4の前記出射面42の上側の部分は、前記出射光L4を上向きの出射光L4OUとして前記オーバーヘッドサイン配光パターンP6の上側の部分に照射するものである。また、前記補助レンズ部4の前記出射面42の下側の部分は、前記出射光L4を下向きの出射光L4ODとして前記オーバーヘッドサイン配光パターンP6の下側の部分に照射するものである。
【0034】
前記補助レンズ部4の前記入射面40、前記全反射面41、前記出射面42は、樹脂の成形時において、ヒケが発生する。すなわち、前記ヒケにより、前記入射面40、前記全反射面41、前記出射面42は、
図5(A)中の二点鎖線にて示す状態から
図5(A)中の実線に示す状態に凹んで変形する。
【0035】
前記入射面40および前記全反射面41および前記出射面42は、それぞれ、自由曲面から構成されている。前記出射面42は、非球面の凸面をなす。非球面の凸面をなす前記出射面42の湾曲方向(円弧方向、凸方向)と、前記主レンズ部2の非球面の凸面をなす前記下段の出射面25の湾曲方向(円弧方向、凸方向)とは、同方向(前方向)である。これにより、前記補助レンズ部4が前記主レンズ部2に対して目立たず、見栄えが向上される。これに対して、特許文献1の車両用灯具においては、凸レンズの凸面の出射面の湾曲方向(円弧方向)と付加レンズの凹凸面の出射面の湾曲方向(円弧方向)とは、逆方向である。
【0036】
(補助レンズ部4の造形の説明)
以下、前記補助レンズ部4の造形について説明する。まずは、前記オーバーヘッドサイン配光パターンP6が形成されるように、前記入射面40および前記全反射面41および前記出射面42がそれぞれ配光設計される。前記の配光設計の段階においては、
図3中の太い実線にて示すように、前記入射面40および前記全反射面41および前記出射面42は、相互に、かつ、前記主レンズ部2の前記入射面20および前記下段の出射面25と接続されていない。このために、前記の配光設計の段階においては、前記補助レンズ部4を造形することができない。
【0037】
つぎには、前記主レンズ部2の前記入射面20と前記補助レンズ部4の前記入射面40とを第1接続面61により接続する。前記補助レンズ部4の前記入射面40と前記補助レンズ部4の前記全反射面41とを第2接続面62により接続する。前記補助レンズ部4の前記全反射面41と前記補助レンズ部4の前記出射面42とを前記フランジ部5もしくは接続面(図示せず)により接続する。前記補助レンズ部4の前記出射面42と前記主レンズ部2の前記下段の出射面25とを段部26および第3接続面63により接続する。この結果、前記補助レンズ部4を造形することができる。なお、図において、前記段部26および前記第3接続面63は、実際のものよりも大きく図示されている。
【0038】
前記段部26は、前記基準光軸Zと平行もしくはほぼ平行をなす。前記段部26により、
図3に示すように、前記補助レンズ部4の前記出射面42の肉厚を薄くすることができる。すなわち、
図3中の破線にて示す前記出射面42を、
図3中の太い実線にて示す前記出射面42まで、後退させることができる。
【0039】
前記第3接続面63は、前記基準光軸Zと垂直もしくはほぼ垂直をなす。前記第3接続面63により、
図3に示すように、前記出射面42から出射される前記出射光L4が前記段部26から前記主レンズ部2中に入射するのを防ぐことができる。すなわち、前記第3接続面63を設けない場合においては、前記出射面42から出射される前記出射光L4が前記段部26から前記主レンズ部2中に入射する場合がある。ところが、前記第3接続面63を設けることにより、前記出射面42から出射される前記出射光L4が前記段部26から前記主レンズ部2中に入射するのを防ぐことができる。
【0040】
前記主レンズ部2の前記下段の出射面25と前記補助レンズ部4の前記出射面42との間に設けられている前記段部26および前記第3接続面63は、前記主レンズ部2の前記下段の出射面25からの出射光の進路、および、前記補助レンズ部4の前記出射面42からの出射光の進路を確保するものである。
【0041】
前記主レンズ部2の前記下段の出射面25と前記段部26との境界は、前記ロービーム配光パターンLPの前記第5配光パターンP5を形成する配光制御された光を出射させる境界である。前記補助レンズ部4の前記出射面42と前記第3接続面63との境界は、前記オーバーヘッドサイン配光パターンP6を形成する配光制御された光を出射させる境界である。
【0042】
(フランジ部5の説明)
前記主レンズ部2および前記補助レンズ部4の周囲には、フランジ部5が一体に設けられている。前記フランジ部5は、前記取付部材に取り付けるためのものである。前記フランジ部5を介して前記主レンズ部2および前記補助レンズ部4は、前記取付部材に取り付けられる。
【0043】
(実施形態1の作用の説明)
この実施形態1にかかる車両用灯具1L、1Rは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0044】
半導体型光源3を点灯する。すると、半導体型光源3の発光面31からの光の大部分は、主レンズ部2の1個の入射面20から主レンズ部2中に屈折して入射する。このとき、入射光は、入射面20において配光制御される。その入射光は、主レンズ部2の5個の出射面21〜25から外部にそれぞれ屈折して出射する。このとき、出射光は、出射面21〜25において配光制御される。その出射光は、5個の配光パターンP1〜P5として車両の前方に照射される。
【0045】
すなわち、上段の出射面21からは、
図7(A)に示す第1配光パターンP1として車両の前方に照射される。右側の中段の出射面22からは、
図7(B) に示す下水平カットオフラインCL1を有する第2配光パターンP2として車両の前方に照射される。中間の中段の出射面23からは、
図7(C) に示す下水平カットオフラインCL1、斜めカットオフラインCL2、上水平カットオフラインCL3を有する第3配光パターンP3として車両の前方に照射される。左側の中段の出射面24からは、
図7(D)に示す上水平カットオフラインCL3を有する第4配光パターンP4として車両の前方に照射される。下段の出射面25からは、
図7(E) に示す第5配光パターンP5として車両の前方に照射される。
【0046】
前記の5個の配光パターンP1〜P5が重畳されることにより、
図8に示す下水平カットオフラインCL1、斜めカットオフラインCL2、上水平カットオフラインCL3を有するロービーム配光パターンLPが形成される。ここで、第1配光パターンP1および第5配光パターンP5の上縁は、下水平カットオフラインCL1、斜めカットオフラインCL2、上水平カットオフラインCL3より若干下側に位置する。
【0047】
一方、半導体型光源3からの光の一部L1は、補助レンズ部4の入射面40から補助レンズ部4中に屈折して入射する。このとき、入射光L2は、入射面40において配光制御される。その入射光L2は、補助レンズ部4の全反射面41で全反射する。このとき、全反射光L3は、全反射面41において配光制御される。その全反射光L3は、補助レンズ部4の出射面42から外部に屈折して出射する。このとき、出射光L4は、出射面42において配光制御される。その出射光L4は、
図7(F)、
図8に示すオーバーヘッドサイン配光パターンP6として車両の前上方に照射される。
【0048】
(実施形態1の効果の説明)
この実施形態1にかかる車両用灯具1L、1Rは、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0049】
この実施形態1にかかる車両用灯具1L、1Rは、主レンズ部2の下段の出射面25と補助レンズ部4の出射面42との間に設けられている段部26および第3接続面63により、主レンズ部2の下段の出射面25からの出射光の進路、および、補助レンズ部4の出射面42からの出射光の進路が確保される。すなわち、主レンズ部2から出射する出射光の光路が補助レンズ部4により妨げられたり、あるいは、補助レンズ部4から出射する出射光の光路が主レンズ部2により妨げられたりする場合がない。この結果、ロービーム配光パターンLPの第5配光パターンP5、および、オーバーヘッドサイン配光パターンP6を光損失が無く効率良く確実に形成することができる。
【0050】
しかも、この実施形態1にかかる車両用灯具1L、1Rは、主レンズ部2の下段の出射面25と段部26との境界が、ロービーム配光パターンLPの第5配光パターンP5を形成する配光制御された光を出射させる境界であり、補助レンズ部4の出射面42と第3接続面63との境界が、オーバーヘッドサイン配光パターンP6を形成する配光制御された光を出射させる境界である。すなわち、段部26および第3接続面63には、ロービーム配光パターンLPの第5配光パターンP5を形成する配光制御された光およびオーバーヘッドサイン配光パターンP6を形成する配光制御された光が入らない。したがって、配光制御された光が段部26および第3接続面63から外部に出射するようなことがないので、ロービーム配光パターンLPの第5配光パターンP5およびオーバーヘッドサイン配光パターンP6の形成に何ら影響を与えるようなことがない。なお、段部26および第3接続面63には、配光制御されていない光(迷光)が入って、その段部26および第3接続面63から外部に出射する場合がある。この場合においても、ロービーム配光パターンLPの第5配光パターンP5およびオーバーヘッドサイン配光パターンP6の形成に何ら影響を与えるようなことがない。
【0051】
この実施形態1にかかる車両用灯具1L、1Rは、
図5(A)に示すように、補助レンズ部4の出射面42の上側の部分が、出射光L4を上向きの出射光L4OUとしてオーバーヘッドサイン配光パターンP6の上側の部分に照射し、補助レンズ部4の出射面42の下側の部分が、出射光L4を下向きの出射光L4ODとしてオーバーヘッドサイン配光パターンP6の下側の部分に照射するものである。
【0052】
このために、補助レンズ部4の入射面40、全反射面41、出射面42においてヒケが発生したとしても、補助レンズ部4の出射面42の上側の部分は、上向きの出射光L4OUを、ヒケが発生する前の二点鎖線矢印に示す出射光に対して、ヒケが発生した後の実線矢印に示す出射光のように、上に広げて照射する。すなわち、補助レンズ部4の出射面42の上側の部分は、上向きの出射光L4OUを狙った
図6(B)に示すオーバーヘッドサイン配光パターンP7の上側の部分よりも上に照射する。
【0053】
また、補助レンズ部4の出射面42の下側の部分は、下向きの出射光L4ODを、ヒケが発生する前の二点鎖線矢印に示す出射光に対して、ヒケが発生した後の実線矢印に示す出射光のように、下に広げて照射する。すなわち、補助レンズ部4の出射面42の下側の部分は、下向きの出射光L4ODを狙った
図6(B)に示すオーバーヘッドサイン配光パターンP7の下側の部分よりも下に照射する。
【0054】
この結果、
図6(B)に示す上下に広げた配光で配光設計されているオーバーヘッドサイン配光パターンP7を、
図6(A)に示すオーバーヘッドサイン配光パターンP6としてさらに上下に広げる。このために、グレアを確実に防ぐことができる。このように、ヒケによる影響を極力抑制することができる。しかも、補助レンズ部4は、製造上のロバストを向上させた配光設計を行うことでレンズ2、4、5の生産性が向上する。
【0055】
ここで、
図5(B)に示すように、補助レンズ部4の出射面42の上側の部分が、出射光L4を下向きの出射光L4XDとしてオーバーヘッドサイン配光パターンP6の下側の部分に照射し、補助レンズ部4の出射面42の下側の部分が、出射光L4を上向きの出射光L4XUとしてオーバーヘッドサイン配光パターンP6の上側の部分に照射する場合について説明する。
【0056】
この場合においては、ヒケが発生すると、補助レンズ部4の出射面42の上側の部分は、下向きの出射光L4XDを、ヒケが発生する前の二点鎖線矢印に示す出射光に対して、ヒケが発生した後の実線矢印に示す出射光のように、上に向けて照射することとなる。すなわち、補助レンズ部4の出射面42の上側の部分は、下向きの出射光L4XDを狙った
図6(B)に示すオーバーヘッドサイン配光パターンP7の下側の部分よりも上に照射する。
【0057】
また、補助レンズ部4の出射面42の下側の部分は、上向きの出射光L4XUを、ヒケが発生する前の二点鎖線矢印に示す出射光に対して、ヒケが発生した後の実線矢印に示す出射光のように、下に向けて照射することとなる。すなわち、補助レンズ部4の出射面42の下側の部分は、上向きの出射光L4XUを狙った
図6(B)に示すオーバーヘッドサイン配光パターンP7の上側の部分よりも下に照射する。
【0058】
この結果、
図6(B)に示す上下に広げた配光で配光設計されているオーバーヘッドサイン配光パターンP7を、
図6(C)に示すオーバーヘッドサイン配光パターンP8として上下に狭める。このために、グレアを発生する場合がある。このように、ヒケによる影響を受ける場合がある。
【0059】
これに対して、この実施形態1にかかる車両用灯具1L、1Rは、
図5(A)に示すように、補助レンズ部4の出射面42の上側の部分が、出射光L4を上向きの出射光L4OUとしてオーバーヘッドサイン配光パターンP6の上側の部分に照射し、補助レンズ部4の出射面42の下側の部分が、出射光L4を下向きの出射光L4ODとしてオーバーヘッドサイン配光パターンP6の下側の部分に照射するものである。この結果、グレアを確実に防ぐことができ、ヒケによる影響を極力抑制することができる。
【0060】
この実施形態1にかかる車両用灯具1L、1Rは、補助レンズ部4の出射面42が、基準光軸Zと平行もしくはほぼ平行な段部26を介して主レンズ部2の下段の出射面25と接続されている。このために、
図3に示すように、補助レンズ部4の出射面42の肉厚を薄くすることができる。すなわち、
図3中の破線にて示す出射面42を、
図3中の太い実線にて示す出射面42まで、後退させることができる。これにより、補助レンズ部4の入射面40、全反射面41、出射面42におけるヒケによる変形量(凹み量)を小さくすることができ、ヒケによる影響を極力抑制することができる。
【0061】
この実施形態1にかかる車両用灯具1L、1Rは、補助レンズ部4の出射面42が、基準光軸Zと垂直もしくはほぼ垂直な第3接続面63を介して段部26と接続されている。このために、
図3に示すように、第3接続面63により、出射面42から出射される出射光L4が段部26から主レンズ部2中に入射するのを防ぐことができる。
【0062】
この実施形態1における車両用灯具1L、1Rは、非球面の凸面をなす補助レンズ部4の出射面42の湾曲方向と、主レンズ部2の非球面の凸面をなす下段の出射面25の湾曲方向とは、同方向である。これにより、補助レンズ部4を主レンズ部2に対して小型化することができる。この結果、これにより、補助レンズ部4の入射面40、全反射面41、出射面42におけるヒケによる変形量(凹み量)を小さくすることができ、ヒケによる影響を極力抑制することができる。
【0063】
しかも、補助レンズ部4を主レンズ部2に対して小型化することができるので、目立たず、見栄えが向上される。その上、補助レンズ部4の出射面42の湾曲方向と主レンズ部2の下段の出射面25の湾曲方向とが同方向となり、見栄えが向上する。すなわち、特許文献1のように、凸レンズの出射面の湾曲方向と付加レンズの出射面の湾曲方向とが異なって、見栄えが問題となる場合がある。これに対して、この実施形態1における車両用灯具1L、1Rは、補助レンズ部4の出射面42の湾曲方向と主レンズ部2の下段の出射面25の湾曲方向とが同方向となり、見栄えが向上する。
【0064】
(実施形態2の構成作用効果の説明)
図9は、この発明にかかる車両用灯具の実施形態2を示す。以下、この実施形態2にかかる車両用灯具について説明する。図中、
図1〜
図8と同符号は、同一のものを示す。
【0065】
前記の実施形態1における車両用灯具1L、1Rは、主レンズ部2の下段の出射面25と補助レンズ部4の出射面42との間に段部26および第3接続面63を設けるものである。この実施形態2にかかる車両用灯具は、主レンズ部2の下段の出射面25(
図9中の太い実線にて示す)と補助レンズ部4の出射面42(同じく、
図9中の太い実線にて示す)との間に接続面64(
図9中の通常の太さの実線にて示す)を設けるものである。この接続面64は、主レンズ部2の下段の出射面25および補助レンズ部4の出射面42に対して、凹曲面をなす。このために、主レンズ部2の下段の出射面25と補助レンズ部4の出射面42との境界線(
図1中の破線にて示す)は、前記の実施形態1における車両用灯具1L、1Rと比較して、見え難くなる。もしくは、見えない。
【0066】
この実施形態2にかかる車両用灯具は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態1における車両用灯具1L、1Rとほぼ同様の作用効果を達成することができる。特に、この実施形態2にかかる車両用灯具は、主レンズ部2の下段の出射面25と補助レンズ部4の出射面42との間に小さな凹曲面の接続面64を設けたので、主レンズ部2の下段の出射面25と補助レンズ部4の出射面42との境界線が見え難くなり、もしくは、見えなくなる。これにより、主レンズ部2と補助レンズ部4との一体感が得られて、見栄えが向上される。
【0067】
(実施形態1、2以外の例の説明)
この実施形態1、2においては、車両用前照灯、ロービーム用ヘッドランプについて説明するものである。ところが、この発明においては、車両用前照灯、ロービーム用ヘッドランプ以外の車両用灯具たとえばフォグランプ、ハイビーム用ヘッドランプなどであっても良い。
【0068】
また、この実施形態1、2においては、出射面21〜25を5個に分割するものである。ところが、この発明においては、出射面を分割せずに1つの面に構成しても良い。
【0069】
さらに、この実施形態1、2においては、中段の出射面22、23、24が3個に分割されている場合について説明するものである。ところが、この発明においては、中段の出射面を1個の無分割の場合、もしくは、2個、4個以上の分割の場合であっても良い。この場合において、出射面の個数が多くなると、配光制御が行い易くなるが、その反面、半導体型光源3からの光の損失が多くなる。また、出射面の個数が少なくなると、半導体型光源3からの光の損失を少なく抑制することができるが、その反面、配光制御が難しくなる。このために、半導体型光源3からの光の損失と配光制御との兼ね合いで、出射面の個数を調整する。
【0070】
さらにまた、この実施形態1、2においては、主レンズ部2の下辺に補助レンズ部4を設けて、オーバーヘッドサイン配光パターンP6を形成するものである。ところが、この発明においては、主レンズ部2の周辺(上辺、左辺、右辺など)に補助レンズ部を設けて、オーバーヘッドサイン配光パターンP6以外の補助配光パターンを形成するようにしても良い。また、複数個の補助レンズ部を設けて、複数個の補助配光パターンを形成しても良い。
【0071】
さらにまた、この実施形態1、2においては、主レンズ部2の下段の出射面25と補助レンズ部4の出射面42との間に、段部26および第3接続面63、あるいは、凹曲面の接続面64を設けるものである。ところが、この発明においては、主レンズ部の出射面と補助レンズ部の出射面との間に、段部26および第3接続面63、あるいは、凹曲面の接続面64以外の接続面、たとえば、凸曲面の接続面、平面の接続面、1つの接続面、複数の接続面などを設けても良い。