特許第6171285号(P6171285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6171285
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】マルチトラックレコーダ
(51)【国際特許分類】
   G11B 20/00 20060101AFI20170724BHJP
   G11B 20/10 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   G11B20/00 G
   G11B20/10 E
   G11B20/10 F
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-184375(P2012-184375)
(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公開番号】特開2014-41679(P2014-41679A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003676
【氏名又は名称】ティアック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺井 翔太
【審査官】 梅本 達雄
(56)【参考文献】
【文献】 高橋 信之,Digital Performer 5 for Macintosh 徹底操作ガイド,株式会社リットーミュージック,第1版,pp.122,152-153
【文献】 2488neo DIGITAL PORTASTUDIO 取扱説明書 (D01044501A),[online],2010年 9月14日,p.56,[平成29年1月26日検索]、インターネット,URL,https://tascam.jp/downloads/tascam/4/2488neo_om_va_j.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 20/10 − 20/12
G11B 20/00 − 20/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトラックに音声信号を記録するマルチトラックレコーダであって、
複数のトラックの少なくともいずれかのトラックを2チャンネルで構成し、当該トラックをモノラルとステレオのいずれかのトラックタイプに設定可能な設定手段と、
前記設定手段で設定されたトラックタイプを記憶する記憶手段と、
複製元のトラックに記録された音声信号を複製先のトラックに複製記録する制御手段であって、前記記憶手段に記憶された前記トラックタイプを用いて、複製元のトラックのトラックタイプに応じたトラックを可能な複製先のトラックとして抽出し、選択肢として表示部に表示する制御手段と、
を備えることを特徴とするマルチトラックレコーダ。
【請求項2】
請求項1記載のマルチトラックレコーダにおいて、
前記制御手段は、複製元のトラックがモノラルトラックの場合に、可能な複製先のトラックとしてモノラルトラックを表示し、複製元のトラックがステレオトラックの場合に、可能な複製先のトラックとしてステレオトラック、あるいはモノラルトラックのペアを表示する
ことを特徴とするマルチトラックレコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のトラックに音声信号を記録するマルチトラックレコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のトラックに音声信号を記録するマルチトラックレコーダが知られている。マルチトラックレコーダを用いることで、例えばエレキギターを使ってリズムギターパートをトラック1、リードギターパートをトラック2に記録し、内蔵マイクを使ってボーカル音声をトラック3に記録し、これらをミックスダウンしてステレオ信号を生成して記録する等が可能である。
【0003】
マルチトラックレコーダとしては、できるだけ多くのトラックを備えて音声信号を記録できることが望ましい一方、携帯性を考慮して装置をコンパクト化する場合にはトラック数を限定せざるを得ない状況も生じる。このような場合、トラック数はある一定数、例えば4トラックに限定するとともに、そのうちのいくつかのトラックをモノラルに固定するのではなく、モノラルあるいはステレオのいずれにも設定可能としてユーザの利便性を高めることが考えられる。
【0004】
下記の特許文献1には、マルチトラックレコーダに関するものではないが、記録担体に記録されているデータを記録モードに対応して簡単に編集可能とすることを目的として、記録モードが選択されると、表示部の表示を切り替えて編集機能を選択可能に表示するように構成した光磁気ディスク編集装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−208258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トラック数を一定数に限定するとともに、そのうちのいくつかのトラックをモノラルあるいはステレオのいずれにも設定可能とする構成の場合、処理によってはユーザの操作性が低下する場合が生じ得る。
【0007】
例えば、あるトラックに記録された音声信号を別のトラックに複製(コピー)する場合、複製元のトラックがモノラルトラックであってモノラル信号が記録されているのであれば、複製先のトラックもモノラルトラックでなければならないが、ユーザが所望する複製先のトラックがモノラルではなくステレオに設定されている場合には複製することができず、ユーザは困惑することになる。どのトラックがモノラルあるいはステレオであるかをユーザが正確に把握しておけばよいが、ユーザの負担が増大してしまう。また、音声信号を複製する毎に、どのトラックがモノラルでどのトラックがステレオであるかを専用画面等でその都度確認するのも手間となる。
【0008】
本発明の目的は、複数のトラックの少なくともいずれかのトラックをモノラルあるいはステレオのいずれかに設定可能なマルチトラックレコーダにおいて、あるトラックに記録された音声信号を別のトラックに複製する処理を、簡易にかつ確実に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数のトラックに音声信号を記録するマルチトラックレコーダであって、複数のトラックの少なくともいずれかのトラックを2チャンネルで構成し、当該トラックをモノラルとステレオのいずれかのトラックタイプに設定可能な設定手段と、前記設定手段で設定されたトラックタイプを記憶する記憶手段と、複製元のトラックに記録された音声信号を複製先のトラックに複製記録する制御手段であって、前記記憶手段に記憶された前記トラックタイプを用いて、複製元のトラックのトラックタイプに応じたトラックを可能な複製先のトラックとして抽出し、選択肢として表示部に表示する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の1つの実施形態では、前記制御手段は、複製元のトラックがモノラルトラックの場合に、可能な複製先のトラックとしてモノラルトラックを表示し、複製元のトラックがステレオトラックの場合に、可能な複製先のトラックとしてステレオトラック、あるいはモノラルトラックのペアを表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複製元のトラックのトラックタイプに応じたトラックを、可能な複製先のトラックとして自動的に提示するので、ユーザは、あるトラックに記録された音声信号を別のトラックに複製する処理を簡易にかつ確実に実現することができ、操作性が向上するとともにユーザの負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態におけるマルチトラックレコーダの構成図である。
図2】実施形態におけるマルチトラックレコーダの平面図である。
図3】実施形態におけるマルチトラックレコーダの正面図である。
図4】実施形態におけるマルチトラックレコーダの背面図である。
図5】トラックタイプの設定画面を示す説明図である。
図6】トラック複製(コピーあるいはクローン)時の複製元トラックと複製先トラックを選択する画面の説明図である。
図7】複製元のトラックと複製先のトラックの組み合わせを示す説明図である。
図8】複製元のトラックと複製先のトラックの組み合わせを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1に、本実施形態におけるマルチトラックレコーダ1の構成ブロック図を示す。音声信号入力回路10は、複数の入力ポートを備え、複数の音源(ソース)からの音声信号を入力する。複数の音声信号を例示すると、ギター、ボーカル、ドラム等である。本実施形態では、音声信号入力回路10は、2個の内蔵マイク及び2個の入力ポートを備え、音声信号を入力する。内蔵マイクと入力ポートは相互に切替可能である。音声信号入力回路10から入力された音声信号は、バス16を介してDSP(デジタルシグナルプロセッサ)14に供給される。
【0015】
DSP14は、CPU32の制御の下で、音声信号入力回路10から供給された複数チャンネルの音声信号に対して、各種のデジタル処理、例えばエフェクト処理やイコライジング処理、ミキシング処理を施し、バス18を介してレコーダ34に記録する。レコーダ34の記録媒体は、CD−R/RW、DVD−R/RW等の光ディスクやハードディスク、フラッシュメモリ媒体等である。DSP14の処理には、操作子20の操作に応じて各音声信号のパン(PAN)や音量レベルを調整する処理も含まれる。
【0016】
操作子20は、マルチトラックレコーダ1の操作面に設けられる。操作子20は、各種のキースイッチや選択ボタン、メニューボタン、決定ボタン、パン(PAN)つまみ、レベルつまみ等から構成される。ユーザは、操作子20を操作することで、各音声信号を、複数トラックの少なくとも1つのトラックに割り当てる。操作子20の操作状態は検出回路22で検出される。検出回路22は、バス18を介して操作子20の操作状態検出信号をCPU32に供給する。
【0017】
CPU32は、マルチトラックレコーダの全体を統括制御する。CPU32は、フラッシュROM28に記憶されたプログラムに従い、ワーキングメモリとしてのRAM30を用いて各種処理を実行する。具体的には、検出回路22からの操作状態検出信号に基づいて、複数チャンネルの各音声信号を複数トラックの少なくとのいずれかのトラックに割り当てる。例えば、トラックがトラック1〜トラック4まで存在する場合に、チャンネルAをトラック1に割り当て、チャンネルBをトラック2に割り当て、チャンネルCをトラック4に割り当てる等である。本実施形態において、このような各チャンネルをトラックに割り当てた結果としての、各チャンネルと各トラックとの対応関係を「アサイン情報」と称する。また、CPU32は、各種の情報を表示回路26に供給する。表示回路26は、各種情報を表示部24に表示する。
【0018】
CPU32は、ユーザによる操作子20の操作に応じて各種メニュー画面や設定画面を表示すべく表示回路26に指令し、表示回路26は、CPU32からの情報に応じてメニュー画面や設定画面を表示部24に表示する。メニュー画面には、トラック1〜トラック4のそれぞれのトラックを、モノラルとするかステレオにするかのメニュー画面が含まれる。すなわち、本実施形態では、トラック1〜トラック4の少なくともいずれかは、モノラルにするかステレオにするかを選択可能に構成されており、ユーザは所望のトラックをモノラル、ステレオのいずれかに設定する。本実施形態におけるマルチトラックレコーダは、トラック1及びトラック2はモノラルに固定され、トラック3及びトラック4がモノラルあるいはステレオのいずれかに設定可能であるとする。設定画面には、あるトラックに記録された音声信号を別のトラックに複製する(クローンあるいはコピー)する設定画面が含まれる。ユーザは、設定画面において操作子20を操作することで複製元のトラック及び複製先のトラックを選択する。
【0019】
また、CPU32は、各トラック毎に割り当てられた音声信号のレベルを棒グラフ形式(レベルメータ)で表示すべく表示回路26に指令し、表示回路26は、CPU32からの情報に応じてレベルメータ画像を表示部24に表示する。
【0020】
さらに、CPU32は、検出回路22からの操作状態検出信号に応じ、レコーダ34に記録された音声信号を読み出してDSP14に供給し、DSP14はバス及び音声信号出力回路12を介して音声信号を外部に出力する。音声出力回路12は、アナログ出力ポートやデジタル出力ポート等の各種出力ポートを有する。
【0021】
図2に、本実施形態におけるマルチトラックレコーダ1の平面図を示す。また、図3及び図4に、それぞれマルチトラックレコーダの正面図及び背面図を示す。
【0022】
マルチトラックレコーダ1の操作面には、各種操作子20と、表示部24が設けられる。操作子20として、インプットセッティングキー20a、アサインキー20b、入力チャンネル用レベルつまみ20c、マスターレベルつまみ20d、パン(PAN)つまみ20e、レベルつまみ20f、録音ファンクションキー20g、ホームキー20h、メニューキー20i、データホイール20j、停止キー20k、再生キー20m、録音キー20nが設けられる。
【0023】
インプットセッティングキー20aは、入力ソースを選択するためのキーであり、ユーザはこのキーを操作することで入力ソースを内蔵マイクとするか、あるいは入力ポートとするかを切り替える。
【0024】
アサインキー20bは、トラック1〜トラック4の各トラックに入力音声信号をアサインするためのキーであり、ユーザはこのキーを操作することで各トラックに音声信号を割り当てて録音する。
【0025】
入力チャンネル用レベルつまみ20cは、各入力ソースのレベルを調整するためのつまみであり、ユーザはこのつまみを操作することで各入力ソースのレベルを調整する。例えば、入力ソースを内蔵マイクに設定した場合、このつまみを用いて内蔵マイクから入力される音声信号のレベルを調整する。
【0026】
マスターレベルつまみ20dは、ステレオ出力信号のモニタレベルを調整するためのつまみである。
【0027】
パン(PAN)つまみ20eは、トラック1〜トラック4の各トラックに設けられ、各トラックの音声信号のステレオミックスにおける定位(PAN)を調整するつまみである。
【0028】
レベルつまみ20fは、トラック1〜トラック4の各トラックに設けられ、各トラックの音声信号のレベルを調整する。
【0029】
録音ファンクションキー20gは、トラック1〜トラック4の各トラックに設けられ、ユーザはこのキーを操作することで該当トラックが録音待機状態に移行する。なお、録音待機状態において、再生キー20mと録音キー20nを操作することで、録音待機状態のトラックに音声信号が記録される。
【0030】
ホームキー20hは、表示部24にホーム画面を表示するためのキーである。ホーム画面は、マルチトラックレコーダ1の基本画面であり、マルチトラックレコーダ1の電源をオンした直後に表示される画面である。他の画面を表示中にホームキー20hを操作すると、表示部24にホーム画面が表示される。ホーム画面には、レコーダモータや電源状態、レコーダのトランスポート状態、レコーダのタイムカウンタ、トラック1〜トラック4の状態やレベルメータ、ステレオ出力のレベルメータ等が表示される。
【0031】
メニューキー20iは、表示部24にメニュー画面を表示するためのキーである。メニュー画面には、インフォメーション、トラック編集、データバックアップ、チューナ等が含まれる。トラック編集には、クローントラック、クリーンアウト、サイレンス、カット、オープン等が含まれる。クローントラックは、トラックを複製するメニューであり、クリーンアウトはトラックを削除するメニューであり、サイレンスは部分的に消去するメニューであり、カットは部分的に削除するメニューであり、オープンは無音を挿入するメニューである。
【0032】
データホイール20jは、メニュー操作において、各種パラメータの値を変化させる、あるいは項目を選択するためのホイールである。
【0033】
一方、図3の正面図に示すように、マルチトラックレコーダ1の正面には、左右に内蔵マイク36,38が設けられる。通常、内蔵マイク36,38は、ステレオ録音の際の左右のマイク、すなわち内蔵マイク36をLチャンネル用、内蔵マイク38をRチャンネル用として用いられるが、これに限定されるわけではなく、内蔵マイク36あるいは内蔵マイク38のいずれかのみを用いる、あるいは内蔵マイク36をRチャンネル用、内蔵マイク38をLチャンネル用に用いてもよい。内蔵マイク36,38から入力された音声信号のレベルは、入力チャンネル用レベルつまみ20cで調整される。
【0034】
また、図4の背面図に示すように、マルチトラックレコーダ1の背面には、入力ポート40,42が設けられる。入力ポート40,42から入力された音声信号のレベルも、同様に入力チャンネル用レベルつまみ20cで調整される。
【0035】
ユーザは、これらの操作子20を用いて、所望のチャンネル及びトラックを選択し、音声信号を所望のトラックに割り当てることができる。例えば、チャンネルAとして入力ポート40を選択してギター音声信号を入力し、チャンネルBとして入力ポート42を選択してドラム音声信号を入力し、アサインキー20bを操作して
チャンネルA(ギター音声信号)−トラック1
チャンネルB(ドラム)−トラック2
等とアサインする。アサイン情報は、RAM30に記憶される。また、ユーザは、これらの操作子20を用いて、トラック3及びトラック4に関して、モノラルとするかステレオにするかを切り替えて設定する。例えば、
トラック3−ステレオ
トラック4−モノラル
等である。具体的には、トラック3及びトラック4は、それぞれ2つのチャンネルから構成され、モノラルに設定された場合には2つのチャンネルのいずれか一方のみを有効とし、ステレオに設定された場合には2つのチャンネルのいずれも有効としてLチャンネル及びRチャンネルとする。従って、トラック3をステレオに設定した場合、トラック3にはLチャンネル用音声信号とRチャンネル用音声信号が記録されることになる。
【0036】
次に、本実施形態における、トラック3及びトラック4のモノラル/ステレオの設定と、トラック編集について具体的に説明する。
【0037】
図5に、ユーザがメニューキー20iとデータホイール20jを操作して、トラックタイプを選択した場合に表示部24に表示される画面例を示す。CPU32は、メニューキー20iとデータホイール20jの操作に応じ、トラック3とトラック4のタイプ、すなわちモノラルとするかステレオとするかの設定画面を表示部24に表示する。画面には、トラック3、トラック4それぞれにおいて、モノラルとステレオの選択肢が表示されており、ユーザはデータホイール20jを操作していずれかを選択する。図5では、ユーザがトラック3をステレオ、トラック4をモノラルに設定した場合を示す。トラック3及びトラック4のタイプ情報は、RAM30に記憶される。なお、トラック1及びトラック2は、モノラルで固定であるため、そのタイプ情報をRAM30に記憶しておく必要はないが、トラック1〜トラック4の全てのタイプ情報をまとめてテーブルとしてRAM30に記憶してもよい。モノラルの識別子をM、ステレオの識別子をSとすると、
トラック1:M
トラック2:M
トラック3:S
トラック4:M
等である。
【0038】
図6に、ユーザがメニューキー20iとデータホイール20jを操作して、トラック編集を選択し、さらにクローントラックを選択した場合に表示部24に表示される画面例を示す。CPU32は、メニューキー20iとデータホイール20jの操作に応じ、複製元(SOURCE TRK)のトラックと、複製先(DESTINATION TRK)のトラックの設定画面を表示部24に表示する。画面には、複製元のトラックと、複製先のトラックの選択肢が表示されており、ユーザは所望の複製元のトラックを選択するとともに、所望の複製先のトラックを選択する。
【0039】
この際、CPU32は、RAM30に記憶されたトラック3及びトラック4のタイプ、すなわち、モノラルかステレオかに応じて、選択し得る可能な選択肢のみを自動的に表示する。モノラルトラックに記録された音声信号は、モノラルトラックに複製することができるがステレオトラックに複製することはできない。逆に、ステレオトラックに記録された音声信号は、ステレオトラックに複製することはできるがモノラルトラックに複製することはできない。但し、ステレオトラックに記録された音声信号を、互いにペアとなっている2つのモノラルトラックに複製することは可能である。CPU32は、このように、トラックタイプに応じて複製可能なトラックと複製不可のトラックの組み合わせが存在することに鑑み、複製可能なトラックのみを選択肢として表示部24に表示する。具体的には、CPU32は、複製元のトラックが選択された場合、RAM30に記憶されたトラックのタイプ情報のテーブルにアクセスして複製元のトラックがモノラルかステレオかを判別し、その判別結果に応じて複製先のトラックの選択肢を決定する。複製先のトラックの選択肢を決定するアルゴリズムは以下の通りである。
(1)複製元のトラックがモノラルであれば、複製先のトラックはモノラルである。
(2)複製元のトラックがステレオであれば、複製先のトラックはステレオ、あるいはモノラルのペアである。
(3)複製元のトラックがモノラルのペアであれば、複製先のトラックはステレオである。なお、モノラルのペアを複製先のトラックとして含めてもよい。特にトラック数が多いレコーダの場合、仕様によっては複数のモノラルのペアを作ることが可能であるため有効である。
【0040】
トラック3及びトラック4はモノラルあるいはステレオのいずれかに設定可能であるため、これらの設定状況に応じて複製先のトラックの選択肢が変わり得ることが理解されよう。
【0041】
図7に、トラック3がステレオ、トラック4がモノラルに設定された場合の、複製元のトラックと複製先トラックの可能な組み合わせを示す。
【0042】
複製元のトラック(図では複製元TR)がモノラルのトラック1の場合、複製先のトラック(図では複製先TR)はモノラルでなければならないので、トラック2あるいはトラック4に限定される。CPU32は、複製先のトラックの選択肢として、トラック2あるいはトラック4を表示部24に表示する。トラック1やトラック3は、選択肢として表示しない。ユーザは、トラック2あるいはトラック4のいずれかを選択すればよく、トラック1やトラック3を考慮する必要がなく、ユーザの選択が容易化される。なお、複製元のトラックと複製先のトラックが同一である場合には、複製ができないため、トラック1はもともと表示する意味がないが、トラック1を一応選択肢として表示させ、仮にトラック1が選択された場合に所定のエラー表示を行うことも可能であり、実質的に選択肢から排除する、つまり選択不可とすることと等価である。
【0043】
複製元のトラックがモノラルのトラック2の場合、複製先のトラックはモノラルでなければならないので、トラック1あるいはトラック4に限定される。CPU32は、複製先のトラックの選択肢として、トラック1あるいはトラック4を表示部24に表示する。
【0044】
複製元のトラックがステレオのトラック3の場合、複製先のトラックはステレオでなければならないが、ステレオトラックは他には存在しないので、モノラルのペアトラックのみに限定される。図では、モノラルのペアトラックを1/2で示す。モノラルのペアトラック1/2は、2つのモノラルトラック1,2をステレオトラックとして扱うことを意味する。CPU32は、複製先のトラックの選択肢として、トラック1/2を表示部24に表示する。
【0045】
複製元のトラックがモノラルのトラック4の場合、複製先のトラックはモノラルでなければならないので、トラック1あるいはトラック2に限定される。CPU32は、複製先のトラックの選択肢として、トラック1あるいはトラック2を表示部24に表示する。
【0046】
複製元のトラックがペアトラックのトラック1/2の場合、複製先のトラックはステレオでなければならないので、トラック3に限定される。CPU32は、複製先のトラックの選択肢として、トラック3を表示部24に表示する。
【0047】
図8に、トラック3及びトラック4がともにステレオに設定された場合の、複製元のトラックと複製先のトラックの可能な組み合わせを示す。
【0048】
複製元のトラックがトラック1の場合、複製先のトラックはモノラルでなければならないので、トラック2に限定される。CPU32は、複製先のトラックの選択肢として、トラック2を表示部24に表示する。
【0049】
複製元のトラックがトラック2の場合、複製先のトラックはモノラルでなければならないので、トラック1に限定される。CPU32は、複製先のトラックの選択肢として、トラック1を表示部24に表示する。
【0050】
複製元のトラックがトラック3の場合、複製先のトラックはステレオでなければならないので、トラック4あるいはモノラルのペアトラック1/2に限定される。CPU32は、複製先のトラックの選択肢として、トラック4あるいはペアトラック1/2を表示部24に表示する。
【0051】
複製元のトラックがトラック4の場合、複製先のトラックはステレオでなければならないので、トラック3あるいはモノラルのペアトラック1/2に限定される。CPU32は、複製先のトラックの選択肢として、トラック3あるいはペアトラック1/2を表示部24に表示する。
【0052】
複製元のトラックがペアトラックのトラック1/2の場合、複製先のトラックはステレオでなければならないので、トラック3あるいはトラック4に限定される。CPU32は、複製先のトラックの選択肢として、トラック3あるいはトラック4を表示部24に表示する。
【0053】
なお、図示していないが、トラック3がモノラル、トラック4がステレオに設定された場合の、複製元のトラックと複製先トラックの可能な組み合わせは、図7において、複製先TRの3を4と読み替え、4を3と読み替えればよいことは容易に理解されよう。CPU32は、図7図8に示される組み合わせを規定するテーブルをRAM30に記憶し、このテーブルを参照することで復籍元のトラックに応じた可能な複製先のトラックを選択肢として表示してもよい。
【0054】
このように、本実施形態では、トラック1〜トラック4のタイプをRAM30に記憶し、CPU32は、選択された複製元のトラックのタイプに応じた、複製先の可能なトラックのみを抽出して選択肢としてユーザに自動的に提示するので、ユーザは、トラック1〜トラック4のタイプをその都度確認して可能なトラックを探す手間が省け、迅速かつ確実に複製先のトラックを設定して複製することができる。
【0055】
本実施形態では、トラック1〜トラック4を有するマルチトラックレコーダを例示したが、これに限定されるものではなく、5トラック以上を有するマルチトラックレコーダにも同様に適用できる。
【0056】
また、本実施形態では、トラック3,4のトラックタイプ、あるいはトラック1〜トラック4の全てのトラックタイプをRAM30に記憶しているが、フラッシュROM28等の不揮発性メモリに記憶し、電源をオフした後でもトラックタイプの情報を保持するように構成してもよい。
【0057】
また、本実施形態では、図6に示すように、複製元のトラックの番号と複製先のトラックの番号を表示し、複製元のトラックが選択された場合に、これに応じて複製先のトラックとして選択可能なトラックの番号を選択肢として表示しているが、表示形態はこれに限定されるものではなく、複製先のトラックの番号を一覧表示し、この中で複製元のトラックのトラックタイプに応じて選択し得るトラックの番号のみをハイライト表示して選択可能であることを示してもよい。あるいは、逆に、複製先のトラックとして選択できないトラックの番号に×印等を表示してもよい。要するに、CPU32は、複製元のトラックのトラックタイプに応じ、可能な複製先のトラックをユーザに提示すればよい。
【符号の説明】
【0058】
1 マルチトラックレコーダ、10 音声信号入力回路、12 音声信号出力回路、14 DSP、16,18 バス、20 操作子、22 検出回路、24 表示部、26 表示回路、28 フラッシュROM、30 RAM、32 CPU、34 レコーダ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8