(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
<概要説明>
以下に本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の静圧流体案内装置40を適用した研削盤1の一実施の形態を示している。研削盤1は、砥石台トラバース型研削盤である。
図1は、研削盤1の平面図の例を示し、
図2は、
図1におけるII−II断面図を示している。また、X軸、Y軸、Z軸が記載されている全ての図面において、X軸とY軸とZ軸とは互いに直交しており、Y軸は鉛直上向きを示しており、Z軸とX軸は水平方向を示している。Z軸はワーク回転軸方向を示しており、X軸方向は砥石車15(本発明の工具に相当する)が、ワークW(本発明の工作物に相当する)に切り込む方向を示している。
【0022】
<研削盤1の全体構成>
図1に示すように、研削盤1は、床上に固定されたベッド11と、ベッド11に固定されたワークWを回転可能に両端支持する主軸台12および心押装置13を備える。さらに、研削盤1は、ベッド11上をZ軸方向およびX軸方向に移動可能な砥石台14(本発明の可動体に相当する)と、砥石台14に回転可能に支持される砥石車15と、静圧流体案内装置40(
図2参照)と、主軸台12および砥石車15を駆動させ、かつワークWに対する砥石車15の位置を制御する制御装置18とを備える。
【0023】
研削盤1は、ワーク回転軸WZ回りに回転しているワークWを、砥石車15によって研削する。砥石車15は、略円板形状に形成されている。砥石車15は、砥石回転軸TZ回りに回転し、ワークWに対してZ軸およびX軸方向に相対移動可能に構成されている。なお、ワーク回転軸WZと砥石回転軸TZは、どちらもZ軸と平行である。
【0024】
図1および
図2に示すように、主軸台12は、ベース12aと、主軸ハウジング12bと、主軸12cとを備えている。ベース12aは、ベッド11上に載置されている。主軸ハウジング12bは、ベース12aに対してZ軸方向に往復移動可能に構成されている。主軸12cは、主軸ハウジング12b内でワーク回転軸WZ回りに回転可能に支持されている。また、主軸12cの一端にはセンタ部材12dが設けられている。主軸12cには図示しない駆動モータが設けられており、制御装置18は、センタ部材12dの先端をとおるワーク回転軸WZ回りに主軸12cを、任意の角速度で任意の角度まで回転させることができる。
【0025】
心押装置13は、ベース13aと、心押軸ハウジング13bと、心押軸13cと備えている。ベース13aは、ベッド11上に載置されている。心押軸ハウジング13bは、ベース13aに対してZ軸方向に移動可能に構成されている。心押軸13cは、心押軸ハウジング13b内でワーク回転軸WZ回りに回転可能または回転不能に支持され、主軸12cと同軸に設けられている。そして、ワークWは、センタ部材12dを備えた主軸台12と、センタ部材13dを備えた心押装置13に両端(または両端近傍)が支持されている(センタ部材の代わりにチャックであってもよい)。
【0026】
また、ベッド11には、トラバースベース19(本発明の固定体に相当する)が載置されている。トラバースベース19は、Z軸駆動モータ21にて制御されるボールねじ22の回転角度に応じ、V型ガイド23に沿ってZ軸方向の任意の位置に位置決め制御される。制御装置18は、図略のエンコーダ等の位置検出手段からの信号を検出しながら、Z軸駆動モータ21に制御信号を出力して、トラバースベース19のZ軸方向の位置決めをする。
【0027】
トラバースベース19には、砥石車15を進退させる砥石台14(本発明の可動体に相当する)が載置されている。砥石台14は、X軸駆動モータ25にて制御されるボールねじ30の回転角度に応じ、トラバースベース19の上面に一体的に設けられたガイド16、17に沿ってX軸方向の任意の位置に位置決めされる。制御装置18は、位置検出手段からの信号を検出しながらX軸駆動モータ25に制御信号を出力して、砥石台14(可動体)のX軸方向の位置を位置決めする。
【0028】
また、
図2に示すように、例えば、砥石回転軸TZとワーク回転軸WZは同一水平面上に位置しているとする。この状態で砥石車15をワークWに対して相対的に近づけていき、ワークWと砥石車15とが接触した位置における砥石車15の側の点を加工点とする。そして、研削盤1には、加工点の近傍にクーラントを供給するクーラントノズルが設けられているが、図示省略する。また、
図1及び
図2の例に示す研削盤1では、砥石車15のドレッシングを行うドレッシング手段が、主軸ハウジング12bに取り付けられているが、図示省略する。
【0029】
図1、
図2に示すように、砥石台14(可動体)は、スライドテーブル26と、砥石車15と、砥石軸受27と、砥石駆動モータ28(サーボモータ)と、X軸駆動モータ25等にて構成されている。砥石駆動モータ28の回転動力が、駆動プーリ29、ベルト31、従動プーリ32を介して砥石車15に伝達される。なお、本実施の形態では、砥石台14を砥石駆動モータ28とボールねじ30によって進退させる構造の例を示したが、例えばリニアモータを用いてもよい。砥石台14を進退させる駆動装置は、特に限定されない。
【0030】
<静圧流体案内装置40の構成詳細>
図2に示すように、静圧流体案内装置40は、トラバースベース19(固定体)と、砥石台14(可動体)と、油圧ポンプ33(本発明の流体供給装置に相当する)と、可変絞り24(本発明の絞りに相当する)と、可変絞り24を介して油圧ポンプ33と接続される静圧ポケット34と、油圧ポンプ33と直接接続される油圧ポケット35と、を備えている。油圧ポンプ33は、例えば油等の流体をタンク37から吸入し圧力P(吐出圧)で吐出する。油圧ポンプ33は、常に、一定の圧力で流体を吐出できるよう制御装置18によって制御される。吐出された流体は、静圧流体案内装置40内を循環し、やがてタンク37に回収されるよう図略の回収手段が設けられている。
【0031】
図1、
図2に示すように、トラバースベース19は、上面に、砥石台14をX軸方向に移動させる一対のガイド16、17を備えている。一対のガイド16、17はZ軸方向に距離を隔てて設けられ、それぞれ同じ距離だけX軸方向に延在している。ガイド16は、ガイド17よりも砥石車15(本発明の工具に相当する)に、より近い位置に配置されている。
図2に示すように、ガイド16およびガイド17には、対向する面、即ち反対方向に面する一対の縦案内面16aおよび17aが形成されている。なお、本実施形態においては、縦案内面16aは本発明の一方の縦案内面に相当するとともに、基準面に相当する。また、縦案内面17aは、本発明の他方の縦案内面に相当する。
【0032】
ガイド16の上面には、縦案内面16aと直交する水平案内面16bが形成されている。また、ガイド17の上面には、縦案内面17aと直交する水平案内面17bが形成されている。本実施形態においては、水平案内面16bおよび水平案内面17bは同一高さで形成されている。しかし、これに限らず、異なる高さによって形成されていてもよい。なお、水平案内面16bおよび水平案内面17bのそれぞれの位置は、縦案内面16aおよび縦案内面17aに対してそれぞれ外側にあると定義する。つまり、縦案内面16aと縦案内面17aとの間の中間を中央としたときに、中央から縦案内面16aに向かう方向でかつ縦案内面16aから離間していく側を縦案内面16aに対する外側という。また、中央から縦案内面17aに向かう方向でかつ縦案内面17aから離間していく側を縦案内面17aに対する外側という。
【0033】
砥石台14が備えるスライドテーブル26の下面には、一対の縦スライド面14a1、14a2が設けられている。一対の縦スライド面14a1、14a2は、砥石台14が、トラバースベース19上に載置されたとき、トラバースベース19が備える一対のガイド16、17の縦案内面16a、17aと対向している。縦スライド面14a1は、本発明における一方の縦スライド面に相当し、縦スライド面14a2は、他方の縦スライド面に相当する。また、スライドテーブル26の下面には、一対のガイド16、17の水平案内面16b、17bと対向する一対の水平スライド面14b1、14b2が設けられている。このとき、砥石台14は、トラバースベース19上に単に載置されているため、水平案内面16b、17b上には、砥石台14の自重分の荷重のみが付与されている。
【0034】
基準面となる縦案内面16aと対向する縦スライド面14a1には、凹状に形成された静圧ポケット34が設けられている。静圧ポケット34は、前述したように、可変絞り24を介して油圧ポンプ33と接続されている。可変絞り24は、本実施形態においては、
図3に一例として示すダイヤフラム式の可変絞りである。なお、可変絞りは、これに限らずスプール式のものでもよいし、その他の方式の可変絞りでもよい。
【0035】
図3に示すダイヤフラム式の可変絞り24は、アッパハウジング41と、ロワハウジング42と、ダイヤフラム43と、を備えている。可変絞り24は、流入口24aから供給された流体を、絞りとなる環状部Rを経由させて流出口24bから静圧ポケット34に向けて流出する。流入口24aには、油圧ポンプ33から直接流体が供給されている。そして静圧ポケット34内の流体の圧力が上昇すると、静圧ポケット34内に連通している流出口24b、および流体充填室24cに充填されている流体の圧力が上昇する。そして、ダイヤフラム43を押し上げ、環状部Rの面積が増加して流量が増加する。
【0036】
また、静圧ポケット34内の流体の圧力が減少すると、静圧ポケット34内に連通している流出口24b、および流体充填室24cに充填されている流体の圧力が減少する。そして、ダイヤフラム43が押し下げられ、環状部Rの面積および流量が減少する。このような作用により、縦案内面16aと、静圧ポケット34を備える縦スライド面14a1との間の隙間L1が変動すると、隙間L1の大きさに応じて、可変絞り24内の環状部Rの開口面積が増減し、静圧ポケット34に供給される第一流体圧P1が変動する。このとき、第一流体圧P1を受圧する静圧ポケット34の面積をS1であるとし、よって、第一付勢力F1=P1×S1となる。
【0037】
縦案内面17aと対向する縦スライド面14a2には、油圧ポケット35が設けられている。油圧ポケット35は、前述したように、油圧ポンプ33と直接接続される。つまり、油圧ポケット35には、油圧ポンプ33の吐出圧Pがそのまま付与され、第二流体圧P2となる。第二流体圧P2を受圧する油圧ポケット35の面積をS2であるとし、第二付勢力F2=P2(≒P)×S2となる。そして、本実施形態においては、S2<S1となるよう設定する。
【0038】
また、本実施形態においては、縦方向における油圧ポケット35の中心位置が、縦方向における静圧ポケット34の中心位置よりも上方に位置するよう、油圧ポケット35が、配置されている。なお、油圧ポケット35の中心および静圧ポケット34の中心は、油圧ポケット35および静圧ポケット34が第二流体圧P2および第一流体圧P1を受圧して発生させる第二付勢力F2および第一付勢力F1のそれぞれの荷重重心の高さに一致するものとする。
【0039】
一対の水平スライド面14b1、14b2には、凹状に形成された各水平静圧ポケット36、36がそれぞれ設けられている。各水平静圧ポケット36、36は、可変絞り24を介して油圧ポンプ33と接続されている。油圧ポンプ33が作動していない状態では、砥石台14の自重によって、各水平案内面16b、17b上に、各水平スライド面14b1、14b2がそれぞれ当接し押圧している。油圧ポンプ33を作動させると、各水平静圧ポケット36、36には、油圧ポンプ33から可変絞り24を介して流体が供給される。そして、供給された流体の流体圧によって、各水平静圧ポケット36、36から、各水平案内面16b、17bと、各水平スライド面14b1、14b2との間にそれぞれ流体が噴出し、所定の厚さの流出層を形成する。これにより、各水平案内面16b、17bと、各水平スライド面14b1、14b2と、が非接触状態となり摩擦が低減され良好な摺動状態を得る。
【0040】
<水平方向の釣り合いについての説明>
上記の様に構成された静圧流体案内装置40における砥石台14の水平方向の釣り合いについて説明する。静圧流体案内装置40では、可変絞り24を介して静圧ポケット34に第一流体圧P1が供給され、油圧ポケット35に油圧ポンプ33の吐出圧Pに近似した第二流体圧P2が供給されている。そして、砥石台14がZ軸のいずれかの方向に移動し、やがて、水平方向において釣合い状態となり、第一付勢力F1(P1×S1)=第二付勢力F2(P2×S2)となる。また、これより、第一流体圧P1=第二流体圧P2×(S2/S1)となる。
【0041】
上記について
図4のグラフに基づいて具体的に説明する。
図4のグラフは、横軸において、0から右方向を流体圧、縦軸を隙間Lとしたときの第一流体圧P1および第二流体圧P2の特性を示している。前述したように、グラフをみると、静圧ポケット34に供給される第一流体圧P1は、隙間Lの変動によって大きく変動することが判る。また、油圧ポケット35に供給される第二流体圧P2は、隙間Lの変動による変動量が小さいことが判る。このように、本発明においては、他方の縦案内面17aと他方の縦スライド面14a2との間の隙間L2の変化量に対する第二流体圧P2の変化量は、一方の縦案内面16aと一方の縦スライド面14a1との間の隙間L1の変化量に対する第一流体圧P1の変化量よりも小さくなっている。
【0042】
また、
図4は、横軸において0から左方向を案内剛性Tとし、隙間Lと案内剛性Tとの関係を示している。グラフにおいて、案内剛性Tは左ほど大きくなっている。隙間Lと案内剛性Tとの関係を示す周知の特性Qをみると、隙間Lが小さいとき(領域I)、または、隙間Lが大きいとき(領域III)には、案内剛性Tが小さいことが判る。そこで、本発明においては、隙間L1を、案内剛性Tが他の領域よりも高い領域IIの範囲となるように設定する。そして、その隙間を例えば隙間L1aとする。なお、特性Qについては、周知であるので、詳細な説明は省略する(例えば、実開平2−7931号公報、
図3参照)。
【0043】
このとき、隙間L1aを本発明に係る設定値としたときの第一流体圧P1は、
図4のグラフよりP1aとなる。そして、設定値とした隙間L1aにおける第一流体圧P1aは、そのときの第二流体圧P2a(≒吐出圧P)に対して、一例として例えば1/2であるとする。
【0044】
上記の状態において、第一付勢力F1(=P1×S1)と、第二付勢力F2(=P2×S2)と、を水平方向で釣合わせるためには、第一付勢力F1を発生させる静圧ポケット34の面積S1を、油圧ポケット35の面積S2の1/2にすればよい。これにより、第一付勢力F1と、油圧ポンプ33の吐出圧Pに近似する第二流体圧P2によって発生する第二付勢力F2とが釣り合い、第一流体圧P1aによって隙間L1aが達成される。このとき、隙間L2は、成り行きの大きさである。
【0045】
なお、実際には、まず、油圧ポンプ33の吐出圧Pを、種々の制約条件から決定する。次に、所望の剛性を得るために隙間L1aを設定し、設定した隙間L1a時に第一付勢力F1と、第二付勢力F2とが釣り合うように油圧ポケット35の面積S2と、面積S2に対する静圧ポケット34の面積S1を決定する。また、上記においては、設定値を1点として隙間L1aとした。しかし、これに限らず、油圧ポンプ33の吐出圧Pの変動に基づく第二付勢力F2の変動を考慮して設定値は巾を持たせて設定してもよい。
【0046】
<縦方向の付勢についての説明>
次に、砥石台14への縦方向(下方)の付勢について説明する。前述したように、本実施形態においては、縦方向における油圧ポケット35の中心位置が、縦方向における静圧ポケット34の中心位置よりも上方に位置するよう配置されている。
【0047】
このため、
図2に示すように、砥石台14には、回転モーメントMが発生する。そして、発生した回転モーメントMは、基準面である縦案内面16a側において、砥石台14が有するスライドテーブル26の水平スライド面14b1を、水平案内面16bに押圧させる。これにより、基準面側の水平案内面16bと水平スライド面14b1との間に形成される案内の剛性を向上させることができる。そして、自重のみによってトラバースベース19上に載置される砥石台14を、しっかり保持でき、砥石車15によってワークWの加工が行なわれたときに砥石台14の基準面側の浮き上がりを抑制することができる。これにより、ワークWの加工精度が向上する。
【0048】
<作動についての説明>
次に、作動について
図4に基づいて説明する。説明においては、基準面となる縦案内面16aと縦スライド面14a1との間の隙間L1の設定値を隙間L1aとする。そして、研削盤1の組み付けにおいて、トラバースベース19の上に、砥石台14を載置したとき、縦案内面16aと、縦スライド面14a1との間の隙間L1が隙間L1aより大きな隙間L1bであったとする(
図4グラフ中参照)。また、このとき、縦案内面17aと縦スライド面14a2との間の隙間L2は、L2bであったとする(
図4グラフ中参照)。なお、隙間L1+隙間L2は、常に一定の値となることはいうまでもない。
【0049】
このような状態で、組み付け完成状態となった研削盤1を起動させる。これにより、静圧流体案内装置40も作動され、油圧ポンプ33から、吐出圧Pで流体が吐出される。吐出された流体は、静圧ポケット34および油圧ポケット35に供給される。基準面側の静圧ポケット34には、可変絞り24の作用によって、隙間L1bに応じた第一流体圧P1bが供給される。また、油圧ポケット35には、吐出圧Pに近似した第二流体圧P2bが供給される(
図4グラフ中参照)。このとき、第一流体圧P1bは、S1とS2の面積比(1/2)に応じて、第二流体圧P2bの1/2の大きさがなければ釣合うことはできない。
【0050】
そこで、砥石台14はZ軸方向で、かつ縦案内面16a(基準面)方向に第二付勢力F2によって付勢され移動する。これにより、
図4のグラフ中の矢印Ar1に示すように、隙間L1bは、徐々に小さくなり、第一流体圧P1は、やがて第一流体圧P1aとなる。このとき、第二流体圧P2は、
図4に示すように、あまり変動していないが、隙間L1bが大きくなっていき、第二流体圧P2が第二流体圧P2a(=P1a×2)となる。これによって、第一流体圧P1aによる第一付勢力F1と、第二流体圧P2aによる第二付勢力F2とが釣り合い、基準面側の隙間L1が設定値である隙間L1aとなる。
【0051】
このようにして、研削盤1を起動させることによって、ラフに組み付けつけたトラバースベース19および砥石台14が、所望の組み付け状態に修正される。これにより、砥石車15側にある基準面の案内の剛性を、事前に設定した大きさとすることができる。また、このとき、砥石台14に回転モーメントMが発生し、水平スライド面14b1を、水平案内面16bに押圧させることは前述したとおりである。これにより、基準面側の水平案内面16bと水平スライド面14b1との間に形成される案内の剛性を向上させることができる。
【0052】
なお、上記実施形態においては、砥石台14が有する一対の水平スライド面14b1、14b2に各水平静圧ポケット36、36を備えた。しかし、各水平静圧ポケット36、36を廃止し、水平スライド面14b1、14b2と水平案内面16b、17bとを当接させて摺動させる摺動タイプの案内としてもよい。これによっても、上記実施形態における効果と同様の効果が得られる。
【0053】
また、上記実施形態に対する変形例として、
図5に示すように、ガイド16、17を、静圧ポケット46、47を介して下方から支持する構成としてもよい。これによっても、上記実施形態における効果と同様の効果が得られる。
【0054】
また、上記実施形態においては、可動体には、工具を配置することとし、当該工具は、砥石台14の砥石車15であるとした。しかし、この態様に限らず、可動体には工作物(ワーク)を配置してもよい。そして、当該工作物を、他方の縦案内面17aより基準面側に設けるようにすればよい。これによっても、工作物の良好な加工精度が得られる。
【0055】
<効果について>
上述の説明から明らかなように、本実施形態に係る静圧流体案内装置40は、第一付勢力F1および第二付勢力F2が水平方向において釣合ったときに、基準面である一方の縦案内面16aと一方の縦スライド面14a1との間の隙間L1を、決められた範囲内に設定できる。これにより、静圧流体案内装置40の組み付け時に、基準面(縦案内面16a)と縦スライド面14a1との間の隙間L1にばらつきがあっても、静圧流体案内装置40を作動させることによって、基準面(縦案内面16a)と縦スライド面14a1との間の隙間L1を所望の範囲内にすることができ、良好な案内の剛性を得ることができる。また、組み付けをラフに行なうことができるので、組み付け時の工数を低減させることもできる。
【0056】
また、本実施形態では、静圧ポケット34の面積S1が、油圧ポケット35の面積S2よりも大きく形成される。このため、砥石台14(可動体)がZ軸方向に移動され、第一付勢力F1と第二付勢力F2とが釣合った状態では、第一流体圧P1の大きさは、第二流体圧P2の大きさに対して面積比に応じた小さな圧力とすることができる。このため、静圧ポケット34の面積S1と油圧ポケット35の面積S2との間の面積比を適切に設定することで、第一流体圧P1を、簡易に供給することが可能な圧力に設定できる。これにより、案内の剛性が高くなるような所望の隙間L1を容易に得ることができる。
【0057】
また、本実施形態では、油圧ポケット35には、第二流体圧P2として、油圧ポンプ33(流体供給装置)からの吐出圧Pの流体が供給される。これにより、第二流体圧P2を調整する必要がないので、簡素な制御にできる。また、第二流体圧P2が一定圧であるので、油圧ポンプ33からの供給経路に簡素な構成の可変絞り24を設けるだけで、油圧ポンプ33からの吐出圧Pを減圧させ、容易に面積比(S2/S1)に応じた第一流体圧P1を得ることができる。
【0058】
また、本実施形態では、基準面である縦案内面16aに対向する静圧ポケット34の縦方向における中心位置が油圧ポケット35の縦方向における中心位置より上下方向において低い位置に設けられる。このため、第一流体圧P1および第二流体圧P2がそれぞれ静圧ポケット34および油圧ポケット35に供給されると、砥石台14には、回転モーメントMが発生する。発生した回転モーメントMは、基準面側の砥石台14の水平スライド面14b1を、対向する水平案内面16bに押圧する。これによって、基準面側の水平案内面16bと水平スライド面14b1との間に形成される案内の剛性を向上させることができる。そして、静圧流体案内装置40を研削盤1に適用すると、自重のみによってトラバースベース19(固定体)上に載置される砥石台14(可動体)を、トラバースベース19上にしっかり保持できる。これにより、砥石台14がX軸方向に進み、砥石車15がワークWを研削したときに、加工点に生じるワークWからの反作用力を受けて砥石台14がトラバースベース19から浮き上がることを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、本発明の静圧流体案内装置40が、研削盤1(本発明の工作機械に相当する)に適用されるので、砥石台14(可動体)の基準面側に設けられる砥石車15の加工点が変動する虞は低く、高精度な工作物の加工が可能な研削盤1の提供が可能となる。
【0060】
なお、上記実施形態においては、回転モーメントMを発生させるため、縦方向における油圧ポケット35の中心位置が、縦方向における静圧ポケット34の中心位置よりも上方に位置するよう、油圧ポケット35が、配置された。しかし、この態様に限らず、縦方向における油圧ポケット35の中心と縦方向における静圧ポケット34の中心とを同じ高さに配置してもよい。これによっても、砥石台14のZ軸方向(水平方向)の位置を修正する効果は得られる。
【0061】
<
参考例1>
次に
参考例1について
図6に基づき説明する。
参考例1では、
図6に示すように、第一付勢力F1の分力成分Yaによって砥石台14が下方に付勢されるように、基準面である一方の縦案内面16aaに傾斜つけて形成する。また縦案内面16aaに対抗する縦スライド面14aaにも縦案内面16aaと同じ傾斜つけて形成する。
【0062】
これにより、自重のみによってトラバースベース19上に載置される砥石台14(可動体)の水平スライド面14b1を、対向する水平案内面16b上に押圧させて、基準面側の上下方向の案内剛性Tを向上させ、基準面側の砥石台14の浮き上がりを抑制することができる。
【0063】
<
参考例2>
次に
参考例2について
図7に基づき説明する。
参考例2では、
参考例1に対して第一付勢力F1の分力成分Yaおよび第二付勢力F2の分力成分Ybによって砥石台14が下方に付勢されるように、他方の縦案内面17aaにも傾斜つけて形成する。また、縦案内面17aaに対抗する縦スライド面14bbにも縦案内面16aaと同じ傾斜をつけて形成する。これにより、砥石台14は、一対の水平スライド面14b1、14b2の各水平案内面16b、17bに対する押圧によって、バランス良く案内剛性Tを向上させて砥石台14の浮き上がりを抑制することができる。
【0064】
<変形例3>
次に、変形例3について
図8に基づいて説明する。変形例3では、上記変形例2に対して、ガイド48を追加した形態となっている。ガイド48は、トラバースベース19上に固定されている。
図8において、ガイド48の左右には、縦案内面48a、48bが設けられている。また、縦案内面48a、48bに対向する面には、砥石台14(可動体)が備えるスライドテーブル26に設けられた縦スライド面14d1、14d2が、それぞれ形成されている。そして、縦スライド面14d1に、面積S1の静圧ポケット34が形成され、縦スライド面14d2に面積S2の油圧ポケット35が形成されている。静圧ポケット34は、可変絞り24を介して、油圧ポンプ33と接続されている。また、油圧ポケット35は、油圧ポンプ33と直接接続されている。
【0065】
静圧ポケット34に第一流体圧P1が供給されると、第一付勢圧F1が砥石車15側に向かって発生し、砥石台14(可動体)を付勢する。また、油圧ポケット35に、油圧ポンプ33の吐出圧Pに近似する第二流体圧P2が供給されると、第二付勢圧F2が第一付勢圧F1と対向する方向に向かって発生し、砥石台14(可動体)を付勢する。上記以外は、上記実施形態と同様の構成および作用を有している。このような変形例3によっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0066】
なお、上記実施形態においては、静圧ポケット34、46の面積S1と、油圧ポケット35、47の面積S2とは、S1>S2の関係になるよう設定した。しかし、この態様に限らず、S1=S2としてもよい。この場合には、油圧ポケット35と油圧ポンプ33との間には、レギュレータを介在させ、油圧ポケット35、47に供給する第二流体圧P2が第一流体圧P1と等しくなるよう制御すればよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
また、上記実施形態においては、静圧ポケット34と油圧ポンプ33との間に可変絞り24を設けた。しかし、この態様に限らず、可変絞り24を固定絞りに変更してもよい。これによっても相応の効果は期待できる。
【0068】
また、上記実施形態においては、静圧流体案内装置40を研削盤に適用した。しかし、これに限らず、静圧流体案内装置40を、研削盤以外の工作機械に適用してもよい。例えば、旋盤、フライス盤、ボール盤、及びマシニングセンタ等に適用し、それらの工作機械の工具または工作物を片持ちで支持する各可動体を、静圧流体案内装置40を介して固定体上に支持してもよい。そのとき、可動体においては、基準面側に工具または工作物が配置されるようにすればよい。これによって、可動体の組み付けが短時間で行えるとともに、工作機械を作動させれば、工作精度のよい工作物が得られる。