特許第6171337号(P6171337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6171337
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】高光沢織物
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/00 20060101AFI20170724BHJP
   D06C 15/00 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   D03D15/00 Z
   D06C15/00
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-283935(P2012-283935)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-125703(P2014-125703A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 隆行
(72)【発明者】
【氏名】林 隆二
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−339640(JP,A)
【文献】 特開2008−231626(JP,A)
【文献】 特開2011−069033(JP,A)
【文献】 特開2004−339672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00−27/18
D06B1/00−23/30
D06C3/00−29/00
D06G1/00−5/00
D06H1/00−7/24
D06J1/00−1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも経糸が60dtex以下の中空マルチフィラメントからなり、緯糸が経糸よりも繊度が小さいマルチフィラメントからなるカバーファクターが1000以上3000以下の平織物であり、かつ、カレンダー加工がなされ、鏡面光沢度が50%以上であることを特徴とする高光沢織物。
【請求項2】
前記経糸が中空のマルチフィラメントであり、かつ、前記緯糸は中実のマルチフィラメントであることを特徴とする請求項1記載の高光沢織物。
【請求項3】
前記中空マルチフィラメントの中空部が円形であり、かつ中空率が10〜40%であることを特徴とする請求項1または2に記載に記載の高光沢織物。
【請求項4】
前記中空マルチフィラメントが、ポリアミド樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高光沢織物。
【請求項5】
前記中空糸がカレンダー加工により変形し、扁平になっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高光沢織物。
【請求項6】
前記中空マルチフィラメントの強度が5.5cN/デシテックス以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高光沢織物。
【請求項7】
表面粗さがタテ方向およびヨコ方向のいずれもが0.9マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高光沢織物。
【請求項8】
シングルタング法による引裂強力として、経糸切断方向の引裂強力と緯糸切断方向の引裂強力のいずれかが10N以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の高光沢織物。
【請求項9】
厚さが0.05mm以下であり、かつ通気度が0.1cc/cm・s以上、1.0cc/cm・s以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の高光沢織物
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載の高光沢織物を使用したことを特徴とする衣料。
【請求項11】
該衣料がダウン、詰め綿ジャケットまたはウインドブレーカーであることを特徴とする請求項10記載の衣料。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の高光沢織物を使用したことを特徴とする資材。
【請求項13】
前記資材が、布団側地、傘地、テントまたは鞄地であることを特徴とする請求項12に記載の資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、これまでにない透明感のある上質な光沢を有する美しい外観と衣料用や資材用途など広範囲に好適なソフトな風合いと強度を持った織物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度薄地織物にカレンダー加工を施した光沢素材が人気を博し、これまで主流であったダウンジャケットやウインドブレーカー等のスポーツ用途だけでなく、婦人衣料やカジュアル素材、また、カバンや傘などの資材にも使用され、用途が拡大している。
ここで用いられるカレンダー加工とは、布帛を熱ロールで挟みながら、加熱/高圧下でプレスして布帛表面の目を潰し、光沢を付与するものである。しかしながら、これら従来のものは、特に“イヤビカリ”と呼ばれる、金属調のギラギラしたものや、“キラツキ”と呼ばれる見る角度によって光沢にムラがあるものなどであり、光沢感の審美性が欠如しているという問題があった。また、高い光沢を得ようとして、カレンダー加工の加熱温度や圧力を高くすると、風合いが硬くなり、着用感の悪化やシャカシャカした衣擦れ音、皺が発生しやすい、引裂強力の低下等の実用上の問題が発生していた。
【0003】
また、中空糸を使用した織物をカレンダー加工することにより、軽量化と低通気度化を両立する発明(特許文献1〜3)が既に公知となっているが、光沢度向上の検討はなされておらず、これまで透明感のある上質な光沢を得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−034670
【特許文献2】特開2004−339640
【特許文献3】特開2005−133253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、上質な光沢を有する美しい外観と衣料用や資材用途など広範囲に好適なソフトな風合いと強度を持った高光沢織物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、下記の構成からなる。すなわち、
(1)少なくとも経糸が60dtex以下の中空マルチフィラメントからなり、緯糸が経糸よりも繊度が小さいマルチフィラメントからなるカバーファクターが1000以上3000以下の平織物であり、かつ、カレンダー加工がなされ、鏡面光沢度が50%以上であることを特徴とする高光沢織物。
(2)前記経糸が中空のマルチフィラメントであり、かつ、前記緯糸は中実のマルチフィラメントであることを特徴とする(1)に記載の高光沢織物。
(3)前記中空マルチフィラメントの中空部が円形であり、かつ中空率が10〜40%であることを特徴とする(1)または(2)に記載に記載の高光沢織物。
(4)前記中空マルチフィラメントが、ポリアミド樹脂からなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の高光沢織物。
(5)前記中空糸がカレンダー加工により変形し、扁平になっていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の高光沢織物。
(6)前記中空マルチフィラメントの強度が5.5cN/デシテックス以上であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の高光沢織物。
(7)表面粗さがタテ方向およびヨコ方向のいずれもが0.9マイクロメートル以下であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の高光沢織物。
(8)シングルタング法による引裂強力として、経糸切断方向の引裂強力と緯糸切断方向の引裂強力のいずれかが10N以上であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の高光沢織物。
(9)厚さが0.05mm以下であり、かつ通気度が0.1cc/cm・s以上、1.0cc/cm・s以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の高光沢織物。
10)(1)〜()のいずれかに記載の高光沢織物を使用したことを特徴とする衣料。
11)該衣料がダウン、詰め綿ジャケットまたはウインドブレーカーであることを特徴とする(10)に記載の衣料。
12)(1)〜(9)のいずれかに記載の高光沢織物を使用したことを特徴とする資材。
13)前記資材が、布団側地、傘地、テントまたは鞄地であることを特徴とする(12)に記載の資材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、これまでにない透明感のある上質な光沢を有する美しい外観と衣料用や資材用途など広範囲に好適なソフトな風合いと強度を持った織物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
【0009】
本発明の織物は、これまでにない透明感のある上質な光沢を有する美しいソフトな風合いと強度を持った薄地織物であり、これまで薄地織物が使用されてきたダウンまたは詰め綿ジャケットやウインドブレーカー等の衣料や布団側地、傘地、テント、鞄地等の資材に好適に用いることができる。
本発明の織物は、少なくとも経糸は60dtex以下の中空のマルチフィラメントであり、緯糸は、経糸よりも繊度が小さいマルチフィラメントであり、カバーファクターが1000以上3000以下の平織物であることが必要である。この織物をカレンダー加工することにより、鏡面光沢度が50%以上の透明感のある上質な光沢が得られる。経糸に中空糸を使用すると、中空糸の繊維長さ方向がカレンダー加工の加工方向と同じであることから、繊維の断面がつぶれ易く、より平滑な織物にすることができる。また、緯糸の繊度が経糸より小さいことにより、織物の経糸クリンプが小さくなり、カレンダーロールの応力に対する経糸の動きや変形が少ないので、カレンダーロールの圧量が織物に、より均一にかかると考えられる。一方、緯糸の繊度が経糸と同等または大きいとカレンダー加工の効果が均一に得られず、鏡面光沢度が低下する可能性が高い。経糸の繊度が60dtexを超えると織物が重くなる上に、風合いも硬くなりやすく、ダウンまたは詰め綿ジャケットやウインドブレーカー等の衣料や布団側地、傘地、テント、鞄地等の資材として不適となる。
カバーファクターが1000未満であるとカレンダー加工を施しても、十分な低通気度が得られず、目的の衣料や資材の用途に使用できない。また、カバーファクターが3000を超えると、重量が重くなり、目的の衣料や資材の用途に適さなくなる。
カレンダー加工は、織物の両面、または片面のいずれでもよく、カレンダー加工を行う回数も、目標の光沢や風合い、設備の能力に応じて、適宜選択すればよい。ナイロン繊維織物のカレンダー加工の場合は、熱カレンダーを行うとよい。加工条件は、加熱ロール温度160℃以上210℃以下、加熱ロール荷重98kN以上490kN以下、布走行速度10〜30m/minの範囲で適宜設定すればよいが、加熱ロール温度は、190℃以上がより好ましい。
また、本発明の織物の経糸に使用する中空マルチフィラメントは、中空部が円形であり、かつ中空率が10〜40%であることが好ましい。中空率が円形であるとカレンダー加工で中空の断面が均一に潰れることにより、織物の平滑性が高く、高い光沢が得られる。しかし、中空率が10%未満になると糸断面の潰れる比率が小さいため、織物構造が緻密になりにくく、表面の平滑性も得られにくく、カレンダーの効果を十分に得られない可能性がある。また、中空率が40%を超えると、糸強度が弱くなり、原糸や織物を生産する時の工程通過性が低下するとともに、目的の用途に使用するのに十分な布帛強度が得られない場合がある。また、相対的に糸が太くなるので、剛性が高く、織物風合いも硬くなってしまう可能性がある。
また、本発明の中空マルチフィラメントは、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ乳酸やこれらの共重合物などのポリエステル類やナイロン6(N6)やナイロン6,6(N66)および共重合ナイロンなどのポリアミド類、あるいはこれらの混合物などを使用することができる。薄地織物は、強度と柔らかさが要求されることから、ポリアミド樹脂からなるN6やN66のナイロン繊維マルチフィラメントを用いることが好ましい。また、ナイロン繊維は一般的なポリエステル繊維と比べて結晶度が低いため、より透明感のある光沢が得やすく、好適である。
また、本発明に使用する中空マルチフィラメントの強度が5.5cN/デシテックス以上であることが好ましい。原糸強度が高いと布帛強度が高くなるだけでなく、工程通過性もよくなり、生産性も向上する。
また、本発明の織物は、表面粗さがタテ方向およびヨコ方向のいずれもが0.9マイクロメートル以下であることが好ましい。表面の平滑性は、光沢度に影響するだけでなく、表面の平滑性が高いと、織物の滑りがよく、使用時にシャカシャカした衣擦れ音が発生しにくく、衣料とした場合、脱着し易く、着用感にも優れる
本発明の薄地織物は、衣料や資材に使用するため、引裂強力が高いことが好ましい。好ましい引裂き強力の目安は、シングルタング法による引裂強力として、経糸切断方向の引裂き強力(経引裂強力)と緯糸切断方向の引裂き強力(緯引裂強力)のいずれかが10N以上であることである。織物の経または緯引裂強力が10Nを越えることで充分な布帛強力を得ることができる。
【0010】
本発明の織物は、厚さが0.05mm以下であり、かつ通気度が0.1cc/cm・s以上、1.0cc/cm・s以下であることが好ましい。厚さが0.05mmを越えると、織物剛性が高く、ソフトな風合いが得にくくなる傾向がある。また、ダウンまたは詰め綿ジャケットやウインドブレーカーの衣料や布団側地、傘地、テント、鞄地等の資材に使用する際、ダウン抜けや防風、防水性能が求められるため、1.0cc/cm・s以下であることが好ましい。また、ダウンまたは詰め綿の側地に使用する際の収納性向上やテントや鞄地で使用する時の結露防止を目的に通気度が0.1cc/cm・s以上であることが好ましい。また、上記の通気度を達成するために、樹脂コーティングしてもよい。ただし、樹脂コーティングにより、光沢が損なわれるので、カレンダー加工を施した面と反対側に樹脂コーティングすることが好ましい。織物両面にカレンダー加工した場合は、縫製品として使用する際に見えない面にコーティングすることが好ましい。コーティング樹脂や加工方法は特に限定されるものでなく、使用目的に応じた透湿防水等の機能性やコストに応じて、アクリル樹脂やウレタン樹脂、シリコン樹脂等の樹脂をナイフコーターやバックロールコーター等を用いて加工する方法を適宜選択すればよい。
また、本発明の織物を製造する際は、織物を染色した後に撥水加工やカレンダー加工することが好ましい。染色前に撥水加工を行うと、染色性を阻害する可能性が高いためである。また、染色や撥水加工で織物の目ズレや糸が動き、光沢が低下する可能性が高いため、カレンダー加工を染色や撥水加工の後に行うことが好ましい。
【実施例】
【0011】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例における糸特性および織物特性は次の方法により求めたものである。
(1)繊度(見かけ繊度)
JIS−L−10013:2010 8.3.1に規定されている正量繊度(A法)に準拠する。
(2)繊維の中空率
繊維の横断面写真から、中空部の断面積と繊維外周内の断面積とを求め、次式により算出する。
中空率( % )=(中空部の断面積/繊維外周内の断面積)×100
(3)繊維の強度
オリエンテック社製の「テンシロン」を用いて測定する。初加重として糸条繊度の1 / 30のグラム数の荷重を加え、糸長50cm 、引張速度50cm/minの条件で測定し、最高強力を求める。
(4)カバーファクター
本発明のカバーファクターは、以下の式で求めた値であり、経緯それぞれのカバーファクターの和を意味する。
(経糸繊度(dtex)1/2×経糸密度(本/2.54cm))+(緯糸繊度(dtex)1/2×緯糸密度(本/2.54cm))
(5)光沢度
光沢計として三次元変角光度計GP−200(村上色彩技術研究所(製))を用いて、鏡面光沢度を測定した。鏡面光沢度が高いほど、光沢が優れていることを示す。測定方法は以下のとおりである。
【0012】
布帛のサンプル(30cm角)を3枚採取し、上記光沢計を用い、3枚についての鏡面光沢度(%)を求めた。測定条件は入射角45°、反射角45°、回転角度0〜360°で測定を行った。鏡面光沢度は、0〜360°の平均、最大、最小値を比較した。
また、鏡面光沢度は高い値ほど光沢が強いことを示す。
(6)光沢の審美性
光沢の審美性について、金属調のギラギラしたものや、“キラツキ”と呼ばれる見る角度による光沢のムラがなく、均一な光沢を、透明感が高く、光沢感の審美性に優れる状態とする。
【0013】
評価は、5名の評価者で下記の官能評価を以下の3段階評価を行い、最も多かった回答をその織物の光沢の透明感とした。
【0014】
◎は、透明感が高く、光沢の審美性が極めて良好。
○は、透明感が高く、光沢の審美性が良好。
△は、従来品と同等で、光沢の審美性は普通。
(7)表面粗さ
KES カトウテック FB−4を用いて測定した。
(8)引裂強力
JIS L 1096:2010 8.17.1 引裂強さA−1法(シングルタング法)による。
(9)通気度
JIS L 1096:2010 8.26.1に規定されている通気性A法(フラジール形法)に準拠する。
(10)厚さ
ダイヤルシックネスゲージ“PEACOCK” (厚み測定器)0.01mmタイプH型(測定子サイズφ10mmフラット)を用いて測定した。測定値は、目盛り(0.01mm)の10分の1まで読み取り、n=5回の平均値を織物の厚さとする。
実施例1
<製織>
中空部形状が円形で中空率20%の22dtex−12フィラメントのナイロン6繊維(強度5.8cN/デシテックス)を経糸に使用し、緯糸に丸断面(中実)の17dtex−7フィラメントのナイロン6繊維(強度6.7cN/デシテックス)を使用して、ウォータージェットルームにより、平組織で、織上密度を経178本/2.54cm 、緯180本/2.54cmとなるように製織した。
<染色・加工>
上記の製織で得られたナイロン6 繊維の生機を、苛性ソーダ(NaOH)を含む溶液でオープンソーパーにより精練し、シリンダー乾燥機にて乾燥し、次いで1 7 0 ℃ にてプレセット、ジッガー染色機にて染色し、フッ素系樹脂化合物を浸漬(パディング法) 、乾燥(120℃) 、仕上げセット(175℃ )した。次に加熱ロール表面温度190 ℃ 、加熱ロール加重1 4 7 k N 、布走行速度2 0m/minでカレンダー加工を実施した。得られた織物は、経密度189本/2.54cm、緯密度184本/2.54cmであり、経方向のカバーファクターが886、緯方向のカバーファクターが758、経・緯のカバーファクターの和が1,644であった。また、表面粗さは、タテ方向0.441ミクロンメートル、ヨコ方向0.830ミクロンメートル、シングルタング法による経引裂強力10.1 N 、緯引裂強力7.4N、目付30.4g/m、厚さ0.045mm、通気度0.9cc/cm・sであった。
<光沢度・光沢の審美性>
鏡面光沢度は平均69.3%、最大69.9% 最小68.9%であり、非常に高い光沢度が得られた。また、光沢の審美性は、◎であった。
比較例1
<製織>
実施例1と同じ中空部形状が円形で中空率20%の22dtex−12フィラメントのナイロン6繊維を経糸および緯糸に使用し、ウォータージェットルームにより、平組織で、織上密度を経186本/2.54cm 、緯150本/2.54cmとなるように製織した。
< 染色・加工>
上記の製織で得られたナイロン6 繊維の生機を、実施例1と同じ加工(精練、プレセット、染色、フッ素樹脂加工、仕上セット、カレンダー加工)を同じ条件で行った。得られた織物は、経密度199本/2.54cm 、緯密度152本/2.54cmであり 、経方向のカバーファクターが933 、緯方向のカバーファクターが712、経・緯のカバーファクターの和が1,645であった。また、表面粗さは、タテ方向0.410ミクロンメートル、ヨコ方向0.575ミクロンメートル、シングルタング法による引裂強力は、経引裂強力10.9N 、緯引裂強力9.7N、目付32.1g/m、厚さ0.045mm、通気度0.5cc/cm・sであった。
<光沢・光沢の審美性>
鏡面光沢度は平均33.1%、最大33.2% 最小32.8%であり、実施例1ほどの高い光沢度が得られなかった。ただし、光沢の審美性は、○であった。
比較例2
<製織>
実施例1と同じ中空部形状が円形で中空率20%の22dtex−12フィラメントのナイロン6繊維を経糸に、緯糸に丸断面(中実)の33dtex−26フィラメントのナイロン6繊維(強度6.8cN/デシテックス)を使用して、ウォータージェットルームにより、平組織で、織上密度を経178本/2.54cm 、緯140本/2.54cmとなるように製織した。
< 染色・加工>
上記の製織で得られたナイロン6 繊維の生機を、実施例1と同じ加工(精練、プレセット、染色、フッ素樹脂加工、仕上セット、カレンダー加工)を同じ条件で行った。得られた織物は、経密度194本/2.54cm 、緯密度140本/2.54cmであり 、経方向のカバーファクターが909 、緯方向のカバーファクターが804、経・緯のカバーファクターの和が1,713であった。また、表面粗さは、タテ方向0.261ミクロンメートル、ヨコ方向0.710ミクロンメートル、シングルタング法による引裂強力は、経引裂強力9.6N 、緯引裂強力14.9N、目付38.4g/m、厚さ0.055mm、通気度0.3cc/cm・sであった。
<光沢・光沢の審美性>
鏡面光沢度は平均44.1%、最大44.4% 最小43.7%であり、実施例1ほどの高い光沢度が得られなかった。ただし、光沢の審美性は、○であった。
比較例3
<製織>
経糸に実施例2と同じ丸断面(中実)の33dtex−26フィラメントのナイロン6繊維を使用し、緯糸に実施例1と同じ中空部形状が円形で中空率20%の22dtex−12フィラメントのナイロン6繊維を使用して、ウォータージェットルームにより、平組織で、織上密度を経149本/2.54cm 、緯149本/2.54cm となるように製織した。
<染色・加工>
上記の製織で得られたナイロン6 繊維の生機を、実施例1と同じ加工(精練、プレセット、染色、フッ素樹脂加工、仕上セット、カレンダー加工)を同じ条件で行った。得られた織物は、経密度159本/2.54cm、緯密度152本/2.54cmであり 、経方向のカバーファクターが913 、緯方向のカバーファクターが712、経・緯のカバーファクターの和が1,625であった。また、表面粗さは、タテ方向0.235ミクロンメートル、ヨコ方向1.610ミクロンメートル、シングルタング法による引裂強力は、経引裂強力9.2N 、緯引裂強力4.5N、目付35.1g/m、厚さ0.060mm、通気度0.5cc/cm・sであった。
<光沢・光沢の審美性>
鏡面光沢度は平均28.9%、最大30.3% 最小27.8%であり、高い鏡面光沢度が得られず、比較例2よりも鏡面光沢度が低くなった。また、光沢の審美性は、△であった。
比較例4
<製織>
実施例2と同じ丸断面(中実)の33dtex−26フィラメントのナイロン6繊維を経糸と緯糸に使用して、ウォータージェットルームにより、平組織で、織上密度を経155本/2.54cm 、緯145本/2.54cm となるように製織した。
< 染色・加工> 上記の製織で得られたナイロン6 繊維の生機を、実施例1と同じ加工(精練、プレセット、染色、フッ素樹脂加工、仕上セット、カレンダー加工)を同じ条件で行った。得られた織物は、経密度160本/2.54cm 、緯密度145本/2.54cmであり 、経方向のカバーファクターが919 、緯方向のカバーファクターが832、経・緯のカバーファクターの和が1,751であった。また、表面粗さは、タテ方向0.450ミクロンメートル、ヨコ方向1.675ミクロンメートル、シングルタング法による引裂強力は、経引裂強力11.8N 、緯引裂強力11.2N、目付44.5g/m、厚さ0.065mm、通気度0.5cc/cm・sであった。
<光沢・光沢の審美性>
鏡面光沢度は平均19.8%、最大20.0% 最小19.8%であり、光沢度は低かった。また、光沢の審美性は、△であった。
【0015】
実施例1、および比較例1〜4の仕様および評価結果をまとめて表1に示す。表1で示すように、本発明で得られる実施例1の鏡面光沢度は50%以上であり、比較例1〜4と比較して1.5倍以上の高い光沢を達成した。
【0016】
【表1】