特許第6171503号(P6171503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6171503
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】音響機器
(51)【国際特許分類】
   G10L 19/00 20130101AFI20170724BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   G10L19/00 312E
   H04R3/00
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-78412(P2013-78412)
(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公開番号】特開2014-202892(P2014-202892A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】710014351
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増田 聖
【審査官】 安田 勇太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−027552(JP,A)
【文献】 特開平11−041689(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/092674(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 19/00 −19/26
H04R 3/00
G10H 1/00 −1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2の楽曲がミキシング期間においてミキシング処理され、連続再生される音響機器であって、
前記2の楽曲のいずれか一方の楽曲の中高周波数帯域の音データを抽出するフィルタ手段と、
前記ミキシング期間において、前記一方の楽曲の前記中高周波数帯域のみの音データと、他方の楽曲の音データとを混合するミキシング手段と、
前記ミキシング手段で混合された音データを出力する出力手段と
を備えることを特徴とする音響機器。
【請求項2】
2の楽曲がミキシング期間においてミキシング処理され、連続再生される音響機器であって、
前記2の楽曲について、中高周波数帯域の音データ及び前記中高周波数帯域より低い帯域である低周波数帯域の音データを夫々抽出するフィルタ手段と
前記ミキシング期間において、前記2の楽曲の前記中高周波数帯域の音データを混合すると共に、前記2の楽曲の前記低周波数帯域の音データを重畳部分が存在しないように再生時間軸上で連結させるミキシング手段と、
前記ミキシング手段で混合された音データを出力する出力手段と
を備えることを特徴とする音響機器。
【請求項3】
前記ミキシング手段は、前記中高周波数帯域の音データをクロスフェードにより混合すると共に、前記低周波数帯域の音データを重畳部分が存在しないように再生時間軸上で連結させることを特徴とする請求項2に記載の音響機器。
【請求項4】
2の楽曲がミキシング期間においてミキシング処理され、連続再生される音響機器の制御方法であって、
前記2の楽曲のいずれか一方の楽曲の中高周波数帯域の音データを抽出するフィルタ工程と、
前記ミキシング期間において、前記一方の楽曲の前記中高周波数帯域のみの音データと、他方の楽曲の音データとを混合するミキシング工程と、
前記ミキシング工程で混合された音データを出力する出力工程と
を備えることを特徴とする音響機器の制御方法。
【請求項5】
2の楽曲がミキシング期間においてミキシング処理され、連続再生されるプログラムであって、
コンピュータを、
前記2の楽曲のいずれか一方の楽曲の中高周波数帯域の音データを抽出するフィルタ手段と、
前記ミキシング期間において、前記一方の楽曲の前記中高周波数帯域のみの音データと、他方の楽曲の音データとを混合するミキシング手段と、
前記ミキシング手段で混合された音データを出力する出力手段
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2の楽曲をミキシング処理して自動連続再生する音響機器及び音響機器の制御方法、並びにプログラムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば複数の楽曲をノンストップで連続再生するために、クロスフェード等のエフェクトを用いてミキシングするという装置が知られている。このような装置では、より自然なミキシングを実現するために、前後の曲で拍位置やテンポを合わせてミキシングを実行するという技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−108132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術を利用したとしても、例えば拍位置の検出精度によっては、実際の拍位置からずれてミキシングされてしまうおそれがあり、完全に拍位置が重なった状態でミキシングを実行することは実践上困難である。即ち、拍位置を調整するだけでは、聴き手に違和感を与えてしまうおそれがあるという技術的問題点が生ずる。特に、リズムを刻む低周波数帯域の音声については、僅かにずれるだけでも違和感を生じさせるおそれがあるため、自然なミキシングが極めて困難である
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、楽曲をミキシングする際の違和感の発生を防止することが可能な音響機器及び音響機器の制御方法、並びにプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の音響機器は上記課題を解決するために、2の楽曲がミキシング期間においてミキシング処理され、連続再生される音響機器であって、前記2の楽曲のいずれか一方の楽曲の中高周波数帯域の音データを抽出するフィルタ手段と、前記ミキシング期間において、前記一方の楽曲の前記中高周波数帯域のみの音データと、他方の楽曲の音データとを混合するミキシング手段と、前記ミキシング手段で混合された音データを出力する出力手段とを備える。
【0006】
本発明の音響機器の制御方法は上記課題を解決するために、2の楽曲がミキシング期間においてミキシング処理され、連続再生される音響機器の制御方法であって、前記2の楽曲のいずれか一方の楽曲の中高周波数帯域の音データを抽出するフィルタ工程と、 前記ミキシング期間において、前記一方の楽曲の前記中高周波数帯域のみの音データと、他方の楽曲の音データとを混合するミキシング工程と、前記ミキシング工程で混合された音データを出力する出力工程とを備える。
【0007】
本発明のプログラムは上記課題を解決するために、2の楽曲がミキシング期間においてミキシング処理され、連続再生されるプログラムであって、コンピュータを、前記2の楽曲のいずれか一方の楽曲の中高周波数帯域の音データを抽出するフィルタ手段と、前記ミキシング期間において、前記一方の楽曲の前記中高周波数帯域のみの音データと、他方の楽曲の音データとを混合するミキシング手段と、前記ミキシング手段で混合された音データを出力する出力手段として機能させる。
【0008】
本発明の作用及び利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例に係る音響機器のハード構成を示すブロック図である。
図2】実施例に係る音響機器のソフト構成を示す機能ブロック図である。
図3】第1実施例に係る音響機器の動作を示すフローチャートである。
図4】第1実施例に係る音響機器によるミキシング処理を示す概念図である。
図5】第2実施例に係る音響機器の動作を示すフローチャートである。
図6】第2実施例に係る音響機器によるミキシング処理を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る音響機器は、2の楽曲のいずれか一方の楽曲の中高周波数帯域の音データを抽出するフィルタ手段と、ミキシング期間において、前記一方の楽曲の前記中高周波数帯域の音データと、他方の楽曲の音データとを混合するミキシング手段と、前記ミキシング手段で混合された音データを出力する出力手段とを備える。
【0011】
本実施形態に係る音響機器は、例えば楽曲再生能力を有するCPU(Central Processing Unit)、及びROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、各種処理回路等を含んで構成される。また、再生する楽曲データや楽曲情報を保存するための大容量ストレージ等を備えて構成されてもよい。
【0012】
本実施形態に係る音響機器の動作時には、2の楽曲がミキシング期間においてミキシング処理され、自動連続再生される。なお、ここでの「ミキシング期間」とは、ミキシング処理を実行すべき期間として設定される期間であり、例えばミキシングされる2の楽曲の共通部分や類似部分に対応する期間として設定される。また、ミキシング期間の長さについては、ユーザによる設定が可能とされてもよい。
【0013】
ここで本実施形態では特に、ミキシングされる2の楽曲のいずれか一方の楽曲について、フィルタ手段により中高周波数帯域の音データが抽出される。なお、ここでの「中高周波数帯域」とは、楽曲のリズムを刻む音データが含まれる低周波数帯域よりも高い周波数帯域として予め設定される帯域であり、例えばバスドラム等に対応する周波数帯域(例えば、100Hz〜200Hz)よりも高い周波数帯域(例えば、200Hzより高い周波数帯域)として設定される。言い換えれば、中高周波数帯域とは、リズムを刻む音データが含まれない周波数帯域であり、抽出される中高周波数帯域の音データは、元の音データからリズム音がカットされた音データとなる。上述した中高周波数帯域の音データの抽出は、一方の楽曲の全部分について実行されず、部分的に(例えばミキシング期間に対応する部分(即ち、ミキシングされる部分)においてのみ)実行されてもよい。
【0014】
抽出された一方の楽曲の中高周波数帯域の音データは、ミキシング手段により、他方の楽曲の音データと混合される。この結果、出力手段から出力される混合後の音データには、2の楽曲の中高周波数帯域の音データが夫々含まれる一方で、中高周波数帯域より低い低周波数帯域の音データについては他方の楽曲のものだけが含まれることになる。
【0015】
ここで、2の楽曲を混合して出力する場合、ミキシング期間において楽曲同士の拍位置のずれが生ずることで、聴き手に違和感を与えてしまうことがある。このような拍位置のずれは、例えば事前に拍位置を検出しておくことで調整することもできるが、完全にずれをなくすことは実践上困難である。そして特に、リズムを刻む低周波数帯域の音データの拍位置のずれは、僅かなずれであっても聴き手に対して大きな違和感を与えてしまうおそれがある。
【0016】
しかるに本実施形態では特に、上述したように、一方の楽曲の中高周波数帯域と他方の楽曲とが混合される。即ち、ミキシング期間において混合される音データは、2の楽曲の低周波数帯域の音データを夫々含むものとはならず、他方の楽曲の低周波数帯域だけを含むものとされる。従って、2の楽曲の低周波数帯域の音データの拍位置がずれて合成されることによる違和感の発生を好適に防止することができる。
【0017】
本実施形態に係る音響機器の一態様では、前記フィルタ手段は、前記2の楽曲について、前記中高周波数帯域の音データ及び前記中高周波数帯域より低い帯域である低周波数帯域の音データを夫々抽出し、前記ミキシング手段は、前記ミキシング期間において、前記2の楽曲の前記中高周波数帯域の音データを混合すると共に、前記2の楽曲の前記低周波数帯域の音データを再生時間軸上で連結させる。
【0018】
この態様によれば、フィルタ手段では、中高周波数帯域の音データに加えて、低周波数帯域の音データが抽出される。また、抽出対象についても、一方の楽曲のみでなく2の楽曲とされる。よって、フィルタ手段では、一方の楽曲の中高周波数帯域の音データ及び低周波数帯域の音データ、並びに他方の楽曲の中高周波数帯域の音データ及び低周波数帯域の音データが夫々抽出される。
【0019】
そして本態様では特に、ミキシング手段により、2の楽曲の中高周波数帯域の音データが混合される。即ち、2の楽曲の中高周波数帯域の音データは、ミキシング期間において少なくとも部分的に重畳するように処理される。一方で、2の楽曲の低周波数帯域の音データは、ミキシング手段により、再生時間軸上で互いに連結される。即ち、上述した中高周波数帯域とは異なり、重畳部分が存在しないように結合される。なお、連結位置は、典型的にはミキシング期間の開始位置や終了位置とされるが、ミキシング期間内であれば特に限定されない。
【0020】
このようなミキシング処理によれば、中高周波数帯域の音データの混合により、自然な楽曲の切り替わりを演出できる。加えて、低周波数帯域の音データの連結により、2の楽曲の低周波数帯域の音データが合成される際の違和感の発生を防止できる。即ち、リズムを刻む低周波数帯域の音データの拍位置がずれた状態で合成されてしまい、聴き手に違和感を与えてしまうことを防止できる。
【0021】
なお、連結位置において低周波数帯域の音データの拍位置が互いに揃うようにすれば、より効果的に違和感の発生を防止できる。また、連結位置をミキシング期間の開始位置や終了位置に合わせることで、連結時の楽曲の切り替わりを気づき難くすることができる。
【0022】
上述した中高周波数帯域及び低周波数域の音データをミキシングする態様では、前記ミキシング手段は、前記中高周波数帯域の音データをクロスフェードにより混合すると共に、前記低周波数帯域の音データを連結させてもよい。
【0023】
この場合、2の楽曲の中高周波数帯域の音データはクロスフェードにより混合される。即ち、ミキシング期間においては、先に再生される曲の音量が徐々に小さくなるようフェードアウトされ、それと同時に、次に再生される曲の音量が徐々に大きくなるようフェードインされる。これにより、更に好適に楽曲の自然な切替えを実現できる。
【0024】
一方、2の楽曲の低周波数帯域の音データは、連結される。即ち、低周波数帯域の音データは、中高周波数帯域のようにクロスフェードによって混合されず、重畳部分が存在しないように結合される。よって、2の楽曲の低周波数帯域の音データが合成される際の違和感の発生を防止できる。
【0025】
なお、低周波数帯域の音データは、フェード(減衰)せずに連結されることが好ましい。即ち、音量に対する処理が行われずに連結されることが好ましい。このように連結すれば、重畳部分が存在しない故に、音量の変化が合成後の音データに大きく影響を与えてしまうという不都合の発生を防止できる。具体的には、中高周波数帯域のクロスフェードのように、フェードアウトされる楽曲の音量の低下をフェードインされる楽曲の音量でカバーすることができないため、音量の変化がユーザに違和感を与え易いという問題を回避できる。
【0026】
本実施形態に係る音響機器の作用及び他の利得については、以下に示す実施例において、より詳細に説明する。
【0027】
本実施形態に係る音響機器の制御方法は、2の楽曲のいずれか一方の楽曲の中高周波数帯域の音データを抽出するフィルタ工程と、ミキシング期間において、前記一方の楽曲の前記中高周波数帯域の音データと、他方の楽曲の音データとを混合するミキシング工程と、前記ミキシング工程で混合された音データを出力する出力工程とを備える。
【0028】
本実施形態に係る音響機器の制御方法によれば、上述した音響機器と同様に、2の楽曲の低周波数帯域の音データの拍位置がずれて合成されることによる違和感の発生を好適に防止することができる。
【0029】
なお、本実施形態に係る音響機器の制御方法においても、上述した音響機器の各種態様と同様の態様を採ることができる。
【0030】
本実施形態に係るプログラムは、コンピュータを、2の楽曲のいずれか一方の楽曲の中高周波数帯域の音データを抽出するフィルタ手段と、ミキシング期間において、前記一方の楽曲の前記中高周波数帯域の音データと、他方の楽曲の音データとを混合するミキシング手段と、前記ミキシング手段で混合された音データを出力する出力手段として機能させる。
【0031】
本実施形態に係るプログラムによれば、上述した音響機器と同様に、2の楽曲の低周波数帯域の音データの拍位置がずれて合成されることによる違和感の発生を好適に防止することができる。
【0032】
なお、本実施形態に係るプログラムにおいても、上述した音響機器の各種態様と同様の態様を採ることができる。
【実施例】
【0033】
以下では、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
【0034】
<装置構成>
先ず、本実施例に係る音響機器のハード構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、実施例に係る音響機器のハード構成を示すブロック図である。
【0035】
図1において、本実施例に係る音響機器100は、楽曲データ及び映像データを再生可能な装置として構成されており、大容量ストレージ110、CPU120、画像処理回路130、LCD(Liquid Crystal Monitor)140、ROM150、RAM160、サウンド処理回路170及びスピーカ180を備えて構成されている。
【0036】
大容量ストレージ110は、例えばハードディスク等の記録媒体を含んで構成されており、音響機器100において再生する楽曲データ及び映像データ等を記憶している。
【0037】
CPU120は、音響機器100全体の動作を制御可能なコントローラユニットとして構成されている。
【0038】
画像処理回路130は、映像データを再生するための各種処理を実行可能に構成されており、処理した映像データをLCD140に出力する。LCD140は、画像処理回路130から入力された映像データに応じた映像を表示可能なディスプレイとして構成されている。
【0039】
ROM150及びRAM160は、音響機器100において扱う各種情報を適宜記憶可能に構成された記録媒体であり、記憶した情報を必要に応じて各種部位に出力する。
【0040】
サウンド処理回路170は、楽曲データを再生するための各種処理を実行可能に構成されており、処理した楽曲データをスピーカ180に出力する。スピーカ180は、サウンド処理回路170から入力された楽曲データに応じた音声を出力可能に構成されている。
【0041】
次に、本実施例に係る音響機器のソフト構成について、図2を参照して説明する。ここに図2は、実施例に係る音響機器のソフト構成を示す機能ブロック図である。
【0042】
図2において、本実施例に係る音響機器100は、楽曲データ記憶部210、楽曲情報抽出部220、楽曲情報記憶部230及び再生制御部240を備えている。
【0043】
楽曲データ記憶部210は、例えば上述した大容量ストレージ110として構成され、楽曲データを楽曲情報抽出部220及び再生制御部240に出力可能とされている。
【0044】
楽曲情報抽出部220は、楽曲のメタデータ(例えば、再生の長さ等)を抽出する楽曲メタデータ抽出部221、楽曲の小節及び拍位置を検出する楽曲小節・拍位置検出部222、及び楽曲のテンポを検出する楽曲テンポ検出部223を備えている。楽曲情報抽出部220は、楽曲データ記憶部210に記憶されている楽曲データのタグ情報や楽曲解析処理の結果等から楽曲に関する各種データを抽出し、楽曲情報記憶部230へ出力可能とされている。
【0045】
楽曲情報記憶部230は、楽曲のメタデータを記憶する楽曲メタデータ記憶部231、楽曲の小節及び拍位置を記憶する楽曲小節・拍位置記憶部232、及び楽曲のテンポを記憶する楽曲テンポ記憶部233を備えている。楽曲情報記憶部230は、楽曲情報抽出部220で抽出された楽曲に関する各種情報を記憶し、適宜再生制御部240に出力可能とされている。
【0046】
再生制御部240は、再生部241、再生テンポ制御部242、ミキシング処理部243及びエフェクト制御部244を備えている。再生部241は、再生リスト及び再生時間情報を基に楽曲を再生する。再生テンポ制御部242は、必要に応じて、再生テンポの制御を行いながら楽曲を再生する。また、再生楽曲が切り替わる部分では、音楽が途切れることのないように、前曲及び次曲を部分的にミキシングさせながら再生する。ミキシング処理部243は、必要に応じて、前曲及び次曲のテンポ、並びに小節・拍位置が互いに揃うように制御を行う。エフェクト制御部244は、ミックス区間におけるクロスフェード、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等のエフェクト処理を行う。
【0047】
<動作説明>
次に、本実施例に係る音響機器の動作について、複数の実施例を挙げて説明する。なお、以下では、本実施例に係る音響機器の動作のうち、本発明と関連の深いミキシング処理について詳細に説明し、他の一般的な動作については適宜説明を省略するものとする。
【0048】
<第1実施例>
先ず、第1実施例に係る音響機器の動作について、図3を参照して説明する。ここに図3は、第1実施例に係る音響機器の動作を示すフローチャートである。なお、以下では、ミキシング処理が実行される2の楽曲のうち、先に再生される楽曲を「前曲」、後に再生される楽曲を「次曲」と称して説明を進める。
【0049】
図3において、本実施例に係る音響機器100の動作時には、先ず前曲の音声データが取得され(ステップS101)、現在の再生位置が次曲とのミックス区間内であるか否かが判定される(ステップS102)。なお、ここでのミックス区間とは、本発明の「ミキシング期間」に対応する区間であり、前曲と次曲とが互いにミックスされる(即ち、ミキシング処理される)区間である。再生位置がミックス区間でない場合には(ステップS102:NO)、ミキシング処理を実行せずに、前曲の音声が出力される(ステップS110)。
【0050】
再生位置がミックス区間である場合(ステップS102:YES)、エフェクト制御部244(図2参照)により、前曲の音声データの低周波数帯域成分がカットされる(ステップS103)。なお、ここでの低周波数帯域は、リズムを刻むバスドラムに対応する周波数帯域(例えば、100Hz〜200Hz)に設定されている。このため、低周波数帯域成分をカットした音声データは、中高周波数帯域(例えば、200Hz以上)成分のみの音声データとなる。即ち、ここでの処理は、中高周波数帯域成分の抽出と言い換えることもできる。
【0051】
続いて、ミックス区間内の相対位置に応じて前曲の音声データの出力レベルが調整される(ステップS104)。具体的には、前曲及び次曲がクロスフェードによりミックスされるように、ミックス区間内の相対位置が後になるほど、前曲の音声データの出力レベルが小さくされる。なお、上述したように、前曲の音声データは低周波数帯域成分がカットされているため、出力レベルが調整されるのは前曲の中高周波数帯域成分の音声データである。
【0052】
他方で、前曲の再生位置がミックス区間内である場合には、次曲の音声データも取得される(ステップS105)。そして、次曲についてもミックス区間内の相対位置に応じて音声データの出力レベルが調整される(ステップS106)。具体的には、前曲及び次曲がクロスフェードによりミックスされるように、ミックス区間内の相対位置が後になるほど、次曲の音声データの出力レベルが大きくされる。ただし、次曲については、前曲のように低周波数帯域成分がカットされていないため、全ての周波数帯域について出力レベルが調整される。
【0053】
前曲及び次曲の出力レベルが調整されると、前曲及び次曲の音声データが互いにミックスされる(ステップS107)。即ち、前曲の音声データと次曲の音声データとが重畳されて1つの音声データとされる。ミックスされた音声データは、スピーカ180(図1参照)に出力される(ステップS108)。音声データの出力後は、再生位置が更新され(ステップS109)、ミキシング処理に係る一連の処理が終了する。なお、これら一連の処理は繰り返し実行され、各再生位置についてミキシング処理が順次実行されることになる。
【0054】
次に、上述した本実施例に係るミキシング処理によって出力される音声データについて、図4を参照して具体的に説明する。ここに図4は、第1実施例に係る音響機器によるミキシング処理を示す概念図である。
【0055】
図4に示すように、上述したミキシング処理によって出力される音声データは、ミックス区間における前曲の低周波数帯域成分がカットされている。このためミックスされた音声データには、低周波数帯域成分が次曲のものしか含まれていない。
【0056】
ここで、2の楽曲をミックスして出力する場合、ミックス区間において楽曲同士の拍位置のずれが生ずることで、聴き手に違和感を与えてしまうことがある。このような拍位置のずれは、例えば事前に拍位置を検出しておくことで調整することもできるが、完全にずれをなくすことは実践上困難である。そして特に、リズムを刻む低周波数帯域の音データの拍位置のずれは、僅かなずれであっても聴き手に対して大きな違和感を与えてしまうおそれがある。
【0057】
これに対し本実施例では、前曲の中高周波数帯域成分と曲の全周波数帯域成分とが互いにミックスされる。従って、2の楽曲の低周波数帯域の音データの拍位置が互いにずれてミックスされることによる違和感の発生を好適に防止することができる。
【0058】
なお、前曲の低周波数帯域成分のカットに代えて、次曲の低周波数帯域成分のカットを実行するようにしてもよい。即ち、ミックスされる2の楽曲のいずれか一方の低周波数帯域成分をカットすれば、上述した効果は発揮される。
【0059】
以上説明したように、第1実施例に係る音響機器100によれば、楽曲をミキシングする際の違和感の発生を防止することが可能である。
【0060】
<第2実施例>
次に、第2実施例に係る音響機器の動作について、図5を参照して説明する。ここに図5は、第2実施例に係る音響機器の動作を示すフローチャートである。
【0061】
なお、第2実施例は、上述した第2実施例と比べて一部の動作が異なるのみであり、他の部分については概ね同様である。このため、以下では第1実施例と異なる部分について詳細に説明し、他の重複する部分については、適宜説明を省略するものとする。
【0062】
図5において、第2実施例に係る音響機器100の動作時には、先ず前曲の音声データが取得され(ステップS201)、現在の再生位置が次曲とのミックス区間内であるか否かが判定される(ステップS202)。そして、再生位置がミックス区間でない場合には(ステップS202:NO)、ミキシング処理を実行せずに、前曲の音声が出力される(ステップS211)。一方、再生位置がミックス区間である場合(ステップS202:YES)、前曲の音声データの低周波数帯域成分がカットされ(ステップS203)、ミックス区間内の相対位置に応じて前曲の音声データの出力レベルが調整される(ステップS204)。
【0063】
他方で、前曲の再生位置がミックス区間内である場合には、次曲の音声データも取得される(ステップS205)。ここで第2実施例では特に、取得した次曲の音声データについて、低周波数帯域成分及びそれ以外の成分(即ち、中高周波数帯域成分)が夫々抽出される(ステップS206)。言い換えれば、次曲の音声データが、低周波数帯域成分と中高周波数帯域成分とに分割される。
【0064】
そして、次曲についてもミックス区間内の相対位置に応じて音声データの出力レベルが調整される(ステップS207)。ただし、ここでの出力レベルの調整は、次曲の中高周波数帯域成分に対してのみ実行される。即ち、次曲の低周波数帯域成分の出力レベルは調整されない。
【0065】
前曲及び次曲の出力レベルが調整されると、前曲及び次曲の音声データが互いにミックスされる(ステップS208)。即ち、前曲の音声データと次曲の音声データとが重畳されて1つの音声データとされる。ここで特に、前曲及び次曲の中高周波数帯域成分がクロスフェードによりミックスされる一方で、前曲及び次曲の低周波数帯域成分は再生時間軸上で連結される。即ち、低周波数帯域成分は、重畳部分が存在しないように結合される。
【0066】
ミックスされた音声データは、スピーカ180に出力される(ステップS209)。音声データの出力後は、再生位置が更新され(ステップS210)、ミキシング処理に係る一連の処理が終了する。
【0067】
次に、上述した第2実施例に係るミキシング処理によって出力される音声データについて、図6を参照して具体的に説明する。ここに図6は、第2実施例に係る音響機器によるミキシング処理を示す概念図である。
【0068】
図6に示すように、上述したミキシング処理によれば、前曲及び次曲の中高周波数帯域成分がクロスフェードによりミックスされる。一方で、前曲の低周波数帯域成分はミックス区間の開始位置でカットされる。また、次曲の低周波数帯域成分は、出力レベルが調整されないままミックス区間の開始位置から再生される。このため、ミックス後の音声データでは、前曲及び次曲の低周波数帯域成分がミックス区間の開始位置で切り替わる。
【0069】
このようにすれば、2の楽曲の低周波数帯域の音声データの拍位置がずれてミックスされることによる違和感の発生を好適に防止することができると共に、低周波数帯域の音データを途切れることなく再生できる。即ち、第1実施例のように、前曲の低周波数帯域成分のカットに起因して、ミックス区間の開始位置付近において一時的に低周波数帯域の音声が途切れてしまうことを防止できる。ただし、第2実施例では、低周波数帯域成分及び中高周波数帯域成分を別々に処理するため、第1実施例と比べてソフトウェアの計算量が増大してしまう。言い換えれば、第1実施例は、第2実施例と比べてミキシング処理による装置への負担を軽減することができる。
【0070】
なお、上述の第2実施例では、ミックス区間の開始位置で前曲及び次曲の低周波数帯域成分を連結する場合について説明したが、連結位置はミックス区間の終了位置とされてもよい。この場合、次曲の低周波数帯域成分がミックス区間終了位置までカットされ、前曲の低周波数帯域成分がミックス区間の終了位置まで出力される。
【0071】
以上説明したように、第2実施例に係る音響機器100によれば、楽曲の低域周波数帯域成分と中高周波数帯域成分とを互いに異なる方法でミックスさせることにより、違和感の発生を効果的に防止することが可能である。
【0072】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う音響機器及び音響機器の制御方法、並びにプログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
100 音響機器
110 大容量ストレージ
120 CPU
130 画像処理回路
140 LCD
150 ROM
160 RAM
170 サウンド処理回路
180 スピーカ
210 楽曲データ記憶部
220 楽曲情報抽出部
221 楽曲メタデータ抽出部
222 楽曲小節・拍位置検出部
223 楽曲テンポ検出部
230 楽曲情報記憶部
231 楽曲メタデータ記憶部
232 楽曲小節・拍位置記憶部
233 楽曲テンポ記憶部
240 再生制御部
241 再生部
242 再生テンポ制御部
243 ミキシング処理部
244 エフェクト制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6