【実施例】
【0033】
以下では、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
【0034】
<装置構成>
先ず、本実施例に係る音響機器のハード構成について、
図1を参照して説明する。ここに
図1は、実施例に係る音響機器のハード構成を示すブロック図である。
【0035】
図1において、本実施例に係る音響機器100は、楽曲データ及び映像データを再生可能な装置として構成されており、大容量ストレージ110、CPU120、画像処理回路130、LCD(Liquid Crystal Monitor)140、ROM150、RAM160、サウンド処理回路170及びスピーカ180を備えて構成されている。
【0036】
大容量ストレージ110は、例えばハードディスク等の記録媒体を含んで構成されており、音響機器100において再生する楽曲データ及び映像データ等を記憶している。
【0037】
CPU120は、音響機器100全体の動作を制御可能なコントローラユニットとして構成されている。
【0038】
画像処理回路130は、映像データを再生するための各種処理を実行可能に構成されており、処理した映像データをLCD140に出力する。LCD140は、画像処理回路130から入力された映像データに応じた映像を表示可能なディスプレイとして構成されている。
【0039】
ROM150及びRAM160は、音響機器100において扱う各種情報を適宜記憶可能に構成された記録媒体であり、記憶した情報を必要に応じて各種部位に出力する。
【0040】
サウンド処理回路170は、楽曲データを再生するための各種処理を実行可能に構成されており、処理した楽曲データをスピーカ180に出力する。スピーカ180は、サウンド処理回路170から入力された楽曲データに応じた音声を出力可能に構成されている。
【0041】
次に、本実施例に係る音響機器のソフト構成について、
図2を参照して説明する。ここに
図2は、実施例に係る音響機器のソフト構成を示す機能ブロック図である。
【0042】
図2において、本実施例に係る音響機器100は、楽曲データ記憶部210、楽曲情報抽出部220、楽曲情報記憶部230及び再生制御部240を備えている。
【0043】
楽曲データ記憶部210は、例えば上述した大容量ストレージ110として構成され、楽曲データを楽曲情報抽出部220及び再生制御部240に出力可能とされている。
【0044】
楽曲情報抽出部220は、楽曲のメタデータ(例えば、再生の長さ等)を抽出する楽曲メタデータ抽出部221、楽曲の小節及び拍位置を検出する楽曲小節・拍位置検出部222、及び楽曲のテンポを検出する楽曲テンポ検出部223を備えている。楽曲情報抽出部220は、楽曲データ記憶部210に記憶されている楽曲データのタグ情報や楽曲解析処理の結果等から楽曲に関する各種データを抽出し、楽曲情報記憶部230へ出力可能とされている。
【0045】
楽曲情報記憶部230は、楽曲のメタデータを記憶する楽曲メタデータ記憶部231、楽曲の小節及び拍位置を記憶する楽曲小節・拍位置記憶部232、及び楽曲のテンポを記憶する楽曲テンポ記憶部233を備えている。楽曲情報記憶部230は、楽曲情報抽出部220で抽出された楽曲に関する各種情報を記憶し、適宜再生制御部240に出力可能とされている。
【0046】
再生制御部240は、再生部241、再生テンポ制御部242、ミキシング処理部243及びエフェクト制御部244を備えている。再生部241は、再生リスト及び再生時間情報を基に楽曲を再生する。再生テンポ制御部242は、必要に応じて、再生テンポの制御を行いながら楽曲を再生する。また、再生楽曲が切り替わる部分では、音楽が途切れることのないように、前曲及び次曲を部分的にミキシングさせながら再生する。ミキシング処理部243は、必要に応じて、前曲及び次曲のテンポ、並びに小節・拍位置が互いに揃うように制御を行う。エフェクト制御部244は、ミックス区間におけるクロスフェード、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等のエフェクト処理を行う。
【0047】
<動作説明>
次に、本実施例に係る音響機器の動作について、複数の実施例を挙げて説明する。なお、以下では、本実施例に係る音響機器の動作のうち、本発明と関連の深いミキシング処理について詳細に説明し、他の一般的な動作については適宜説明を省略するものとする。
【0048】
<第1実施例>
先ず、第1実施例に係る音響機器の動作について、
図3を参照して説明する。ここに
図3は、第1実施例に係る音響機器の動作を示すフローチャートである。なお、以下では、ミキシング処理が実行される2の楽曲のうち、先に再生される楽曲を「前曲」、後に再生される楽曲を「次曲」と称して説明を進める。
【0049】
図3において、本実施例に係る音響機器100の動作時には、先ず前曲の音声データが取得され(ステップS101)、現在の再生位置が次曲とのミックス区間内であるか否かが判定される(ステップS102)。なお、ここでのミックス区間とは、本発明の「ミキシング期間」に対応する区間であり、前曲と次曲とが互いにミックスされる(即ち、ミキシング処理される)区間である。再生位置がミックス区間でない場合には(ステップS102:NO)、ミキシング処理を実行せずに、前曲の音声が出力される(ステップS110)。
【0050】
再生位置がミックス区間である場合(ステップS102:YES)、エフェクト制御部244(
図2参照)により、前曲の音声データの低周波数帯域成分がカットされる(ステップS103)。なお、ここでの低周波数帯域は、リズムを刻むバスドラムに対応する周波数帯域(例えば、100Hz〜200Hz)に設定されている。このため、低周波数帯域成分をカットした音声データは、中高周波数帯域(例えば、200Hz以上)成分のみの音声データとなる。即ち、ここでの処理は、中高周波数帯域成分の抽出と言い換えることもできる。
【0051】
続いて、ミックス区間内の相対位置に応じて前曲の音声データの出力レベルが調整される(ステップS104)。具体的には、前曲及び次曲がクロスフェードによりミックスされるように、ミックス区間内の相対位置が後になるほど、前曲の音声データの出力レベルが小さくされる。なお、上述したように、前曲の音声データは低周波数帯域成分がカットされているため、出力レベルが調整されるのは前曲の中高周波数帯域成分の音声データである。
【0052】
他方で、前曲の再生位置がミックス区間内である場合には、次曲の音声データも取得される(ステップS105)。そして、次曲についてもミックス区間内の相対位置に応じて音声データの出力レベルが調整される(ステップS106)。具体的には、前曲及び次曲がクロスフェードによりミックスされるように、ミックス区間内の相対位置が後になるほど、次曲の音声データの出力レベルが大きくされる。ただし、次曲については、前曲のように低周波数帯域成分がカットされていないため、全ての周波数帯域について出力レベルが調整される。
【0053】
前曲及び次曲の出力レベルが調整されると、前曲及び次曲の音声データが互いにミックスされる(ステップS107)。即ち、前曲の音声データと次曲の音声データとが重畳されて1つの音声データとされる。ミックスされた音声データは、スピーカ180(
図1参照)に出力される(ステップS108)。音声データの出力後は、再生位置が更新され(ステップS109)、ミキシング処理に係る一連の処理が終了する。なお、これら一連の処理は繰り返し実行され、各再生位置についてミキシング処理が順次実行されることになる。
【0054】
次に、上述した本実施例に係るミキシング処理によって出力される音声データについて、
図4を参照して具体的に説明する。ここに
図4は、第1実施例に係る音響機器によるミキシング処理を示す概念図である。
【0055】
図4に示すように、上述したミキシング処理によって出力される音声データは、ミックス区間における前曲の低周波数帯域成分がカットされている。このためミックスされた音声データには、低周波数帯域成分が次曲のものしか含まれていない。
【0056】
ここで、2の楽曲をミックスして出力する場合、ミックス区間において楽曲同士の拍位置のずれが生ずることで、聴き手に違和感を与えてしまうことがある。このような拍位置のずれは、例えば事前に拍位置を検出しておくことで調整することもできるが、完全にずれをなくすことは実践上困難である。そして特に、リズムを刻む低周波数帯域の音データの拍位置のずれは、僅かなずれであっても聴き手に対して大きな違和感を与えてしまうおそれがある。
【0057】
これに対し本実施例では、前曲の中高周波数帯域成分と
次曲の全周波数帯域成分とが互いにミックスされる。従って、2の楽曲の低周波数帯域の音データの拍位置が互いにずれてミックスされることによる違和感の発生を好適に防止することができる。
【0058】
なお、前曲の低周波数帯域成分のカットに代えて、次曲の低周波数帯域成分のカットを実行するようにしてもよい。即ち、ミックスされる2の楽曲のいずれか一方の低周波数帯域成分をカットすれば、上述した効果は発揮される。
【0059】
以上説明したように、第1実施例に係る音響機器100によれば、楽曲をミキシングする際の違和感の発生を防止することが可能である。
【0060】
<第2実施例>
次に、第2実施例に係る音響機器の動作について、
図5を参照して説明する。ここに
図5は、第2実施例に係る音響機器の動作を示すフローチャートである。
【0061】
なお、第2実施例は、上述した第2実施例と比べて一部の動作が異なるのみであり、他の部分については概ね同様である。このため、以下では第1実施例と異なる部分について詳細に説明し、他の重複する部分については、適宜説明を省略するものとする。
【0062】
図5において、第2実施例に係る音響機器100の動作時には、先ず前曲の音声データが取得され(ステップS201)、現在の再生位置が次曲とのミックス区間内であるか否かが判定される(ステップS202)。そして、再生位置がミックス区間でない場合には(ステップS202:NO)、ミキシング処理を実行せずに、前曲の音声が出力される(ステップS211)。一方、再生位置がミックス区間である場合(ステップS202:YES)、前曲の音声データの低周波数帯域成分がカットされ(ステップS203)、ミックス区間内の相対位置に応じて前曲の音声データの出力レベルが調整される(ステップS204)。
【0063】
他方で、前曲の再生位置がミックス区間内である場合には、次曲の音声データも取得される(ステップS205)。ここで第2実施例では特に、取得した次曲の音声データについて、低周波数帯域成分及びそれ以外の成分(即ち、中高周波数帯域成分)が夫々抽出される(ステップS206)。言い換えれば、次曲の音声データが、低周波数帯域成分と中高周波数帯域成分とに分割される。
【0064】
そして、次曲についてもミックス区間内の相対位置に応じて音声データの出力レベルが調整される(ステップS207)。ただし、ここでの出力レベルの調整は、次曲の中高周波数帯域成分に対してのみ実行される。即ち、次曲の低周波数帯域成分の出力レベルは調整されない。
【0065】
前曲及び次曲の出力レベルが調整されると、前曲及び次曲の音声データが互いにミックスされる(ステップS208)。即ち、前曲の音声データと次曲の音声データとが重畳されて1つの音声データとされる。ここで特に、前曲及び次曲の中高周波数帯域成分がクロスフェードによりミックスされる一方で、前曲及び次曲の低周波数帯域成分は再生時間軸上で連結される。即ち、低周波数帯域成分は、重畳部分が存在しないように結合される。
【0066】
ミックスされた音声データは、スピーカ180に出力される(ステップS209)。音声データの出力後は、再生位置が更新され(ステップS210)、ミキシング処理に係る一連の処理が終了する。
【0067】
次に、上述した第2実施例に係るミキシング処理によって出力される音声データについて、
図6を参照して具体的に説明する。ここに
図6は、第2実施例に係る音響機器によるミキシング処理を示す概念図である。
【0068】
図6に示すように、上述したミキシング処理によれば、前曲及び次曲の中高周波数帯域成分がクロスフェードによりミックスされる。一方で、前曲の低周波数帯域成分はミックス区間の開始位置でカットされる。また、次曲の低周波数帯域成分は、出力レベルが調整されないままミックス区間の開始位置から再生される。このため、ミックス後の音声データでは、前曲及び次曲の低周波数帯域成分がミックス区間の開始位置で切り替わる。
【0069】
このようにすれば、2の楽曲の低周波数帯域の音声データの拍位置がずれてミックスされることによる違和感の発生を好適に防止することができると共に、低周波数帯域の音データを途切れることなく再生できる。即ち、第1実施例のように、前曲の低周波数帯域成分のカットに起因して、ミックス区間の開始位置付近において一時的に低周波数帯域の音声が途切れてしまうことを防止できる。ただし、第2実施例では、低周波数帯域成分及び中高周波数帯域成分を別々に処理するため、第1実施例と比べてソフトウェアの計算量が増大してしまう。言い換えれば、第1実施例は、第2実施例と比べてミキシング処理による装置への負担を軽減することができる。
【0070】
なお、上述の第2実施例では、ミックス区間の開始位置で前曲及び次曲の低周波数帯域成分を連結する場合について説明したが、連結位置はミックス区間の終了位置とされてもよい。この場合、次曲の低周波数帯域成分がミックス区間終了位置までカットされ、前曲の低周波数帯域成分がミックス区間の終了位置まで出力される。
【0071】
以上説明したように、第2実施例に係る音響機器100によれば、楽曲の低域周波数帯域成分と中高周波数帯域成分とを互いに異なる方法でミックスさせることにより、違和感の発生を効果的に防止することが可能である。
【0072】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う音響機器及び音響機器の制御方法、並びにプログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。