(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記凹部に囲まれる部分又は上記凸部の平面視形状は、上記自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の平面視形状に対する占有率が10%以上90%以下となる形状を有する請求項1に記載のステント加工治具。
上記凹部に囲まれる部分又は上記凸部の平面視形状は、上記自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の平面視形状に対応する形状又は該対応する形状を縮小した形状を有する請求項2に記載のステント加工治具。
上記対応する形状又は該対応する形状を縮小した形状は、上記自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の平面視形状に対する占有率が50%以上90%以下となる形状を有する請求項3に記載のステント加工治具。
上記小平面視形状は、上記自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の平面視形状に対する占有率が10%以上50%未満となる形状を有する請求項5に記載のステント加工治具。
上記拡径後の基体のストラット又はストラット間の隙間を、基体の外周側から周方向に沿って順次、部分的に上記ステント加工治具の上記凹部又は上記凸部に嵌め込ませることにより、上記ストラットの位置を順次矯正させる請求項10又は11に記載の自己拡張型ステントの製造方法。
上記マンドレルを基体とともに回転させ、かつ、上記マンドレルの軸心と上記ステント加工治具とを相対移動させることで、上記ストラットの位置を順次矯正させる請求項13に記載の自己拡張型ステントの製造方法。
【背景技術】
【0002】
ステントは、生体内の血管や消化管などの内腔を有する管に形成された狭窄部を拡張し、血液や消化物などが通過する経路を確保するために広く使用されている。公知であるステントは2種類存在し、1つは従来のバルーンカテーテルを用いて圧力流体によって拡張されたバルーンが、その拡張力によってステントを拡張するバルーン拡張型ステント(balloon-expandable stent)である。もう1つにはステント自体が形状記憶合金等によって形成された拡張能力を持つ自己拡張型ステント(self-expandable stent)である。
【0003】
このうち自己拡張型ステント(以下、特に断らない限り、単に「ステント」と称する。)の場合、そのほとんどが形状記憶合金から構成されることが多く、製造工程において拡径後の形状を記憶させ、デリバリーカテーテルのシース内に縮径された状態で保持される。このデリバリーカテーテルが体内に挿入され、所望の位置まで誘導されると、ステントが、シースから放出され、体温により形状を記憶した外径まで拡張し、留置される。生体の管に生じた狭窄などの病変部位に留置されたステントは、ラジアルフォースと呼ばれる物性により管を内側から支えることが可能となる。
【0004】
しかし、このように留置されたステントは、生体の管が再狭窄しないように狭窄しようとする力に抗して内側から支える必要があるとともに、例えば下肢など動きが活発な部分の血管では、圧縮、伸展、ねじりなど様々な外力を受けるため、ステントのストラットに外力が繰り返し様々な方向から負荷されることになり、拡張状態にあるステントに対する外力負荷の繰り返しによる疲労が原因でストラットが破断するなどのステントの破壊が課題となっている。
【0005】
この課題を解決するために各ステント製造メーカーでは、疲労破壊に強い網目の模様(デザイン)を考案することで耐疲労特性を向上させてきた。しかしながら、デザイン自体は耐疲労特性を有しても、製造工程の段階でそのデザインどおりに製造できなければ、デザインに基づく効果は大きく低下する。
【0006】
ところで、製造工程内で最もデザインが乱れるのは拡径工程である。自己拡張型ステントの製造工程は、多種多段階におよび、チューブから製造する場合、シートから製造する場合、ワイヤーから製造する場合など、様々である。例としてチューブから製造する場合の一般的な工程を示す。チューブ状の基体をレーザーや、放電加工、工具による切削加工などにより網目状のストラットを形成することで、デザインどおりに加工を行う。その後、バリ取りを行い、このチューブ状の基体を当初の径から所望の径まで拡径する拡径工程を行い、熱処理などの形状記憶処理を施す。その後、必要に応じて化学研磨やブラスト処理を行い、最終的には電解研磨により表面を鏡面に仕上げる。
【0007】
この拡径工程としては、例えばステントを小径チューブから製造する場合、拡径時のステントの網目の模様を見越した所望のデザインにカットされた小径チューブを、このチューブよりも大径である部分を有するマンドレルを使用して所望の径まで段階的に拡径させる方法が知られている。そして、このように拡径した状態のチューブに対して形状記憶処理を行うことから、この拡径の際にストラットが所望の網目の模様に配置されることが非常に重要である。拡張時の所望の網目の模様(デザイン)とは異なるストラットの配置、例えばストラット同士の過度の延伸、過度の圧縮などが生じた配置のまま形状記憶処理がされた場合、ストラットに微小クラックが発生したり、残留応力が集中したりすることで、耐疲労特性が悪化し、体内に留置されたステントが破壊し易くなることが知られている。
そのため、拡径工程において、拡径時のストラットの網目を所定模様に配置することは非常に重要であり、高度に注意を払う必要があることが知られている。所定模様に配置するためには、作業者が目視にて、マンドレルに配置されたストラットを所望の網目の模様が記載された設計図と見比べながら芯材等を用いて、高度に注意を払いながら所定模様になるようにストラットの配置を手作業で整形していく方法が知られている。しかし、この方法では、作業者による差などに起因する品質の変動が大きく、また、ストラットの網目の模様が複雑な場合は、整形作業自体の難易度が高く、作業効率や生産性の低下が大きいのが課題である。
【0008】
このような課題に対応する方法として、例えば、先行文献1では、拡径時のストラットの網目の模様を所望の模様にする、即ちストラットにより形成される開口部を均一にさせるべく、ストラット間の過度の延伸や過度の圧縮がおきないように、対になるストラット間に犠牲ブリッジを設ける方法が開示されている。この犠牲ブリッジを設けることにより、ストラット間の距離を一定に維持することで開口部が均一になるように拡径が可能ではあるが、犠牲ブリッジを製造工程の途中で離脱する工程が必要となり、工数が増える点で課題がある。また、離脱するための方法として、切削加工や化学研磨などの複雑な作業が必要となり、さらに工数が増える点で課題がある。
【0009】
また、他の方法として、拡径工程を実施しない方法も提案されている。例えば先行文献2では、留置される生体内部位に適合した所望のステント径のチューブを加工して、網目状のストラットを形成し、その後、必要時に縮径することにより、拡径工程を実施することなくステントを製造する方法が開示されている。確かに、この方法では拡径工程は行わないため、ストラットの配置が拡径時の所望の網目の模様とは異なることはないが、加工するチューブ径が大きくなることにより原材料となるチューブのコストがかかり過ぎることが課題である。材料コストはチューブ径に比例するため、特に大径のステントを製造する場合は適していない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
【0018】
本発明の自己拡張型ステントの製造方法は、網目状のストラットを形成させたチューブ状の基体を拡径することで製造される自己拡張型ステントの製造方法であって、拡径後の基体におけるストラットの網目の模様を、ストラットの位置の矯正を行うことで、上記自己拡張型ステントにおけるストラットの網目の所定模様に整形するものである。
【0019】
本発明の自己拡張型ステントの製造方法では、先ず、網目状のストラットを形成させたチューブ状の基体を作製する。このようなチューブ状の基体は、当業者が通常作製する方法により得ることができる。例えば、筒状のチューブをレーザーカット等のカット加工を施して網目状のストラットを形成させることでチューブ状の基体を作製することができる。レーザーカット後に電解研磨を施しても良い。また、シート状の部材にレーザーカット等のカット加工を施して網目状のストラットを形成させた後、筒状に丸め、溶接等により接合してチューブ状の基体を作製することもできる。さらに、丸線、角線、平線等を網目状に配置し、必要に応じて任意箇所を溶接等により接合して網目状のストラットを形成させつつ、チューブ状の基体を作製することもできる。いずれの方法においても、バフ研磨や電解研磨などの研磨処理、酸洗浄、熱処理等を組み合わせることができる。また、チューブ状の基体には、ステントの機能上、基体の長軸方向の両端部を連通する内腔部が形成されている。
【0020】
チューブ状の基体を構成する材料としては、特に限定はなく、無機系材料、有機系材料何れでもよい。無機系材料としては、例えば、ステンレススチール、形状記憶合金、超弾性金属等の金属材料、セラミック、ハイドロキシアパタイト等が挙げられる。また、形状記憶合金/超弾性金属としては、例えば、Ni−Ti合金、Cu−Al−Mn合金、タンタリウム、Co−Cr合金、イリジウム、イリジウムオキサイド、ニオブ等が挙げられる。また、有機系材料としては、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン等の高分子化合物が挙げられる。
【0021】
基体に形成されているストラットの網目の模様は、拡径が可能で、狭窄部に留置した時に良好なラジアルフォースを有し得るようなものであれば、特に限定はない。本発明において使用可能な基体の実施形態の一例を図面に基づき説明する。
図1(a)は、本発明で用いる拡径前の網目状のストラットを形成させたチューブ状の基体の実施形態の一例を示した側面図である。本例のチューブ状の基体1は、基体1の周方向に進行する波形状のセクション2が基体1の長軸方向に複数(
図1(a)の例では4つである。)連続して並び、隣接するセクション2は、各セクションの近接する山部と谷部とで連結部3により連結されている。連結部3は、1箇所でも良いし、2箇所以上でもよい。このように、本例では、セクション2と連結部3とで、網目状のストラットが形成されている。尚、本発明では、
図1(a)に示した実施形態に限らず、他の網目の模様を採用することも可能であることは勿論のことである。
【0022】
網目状のストラットを形成させたチューブ状の基体を作製した後、この基体を拡径する。拡径する方法は、特に限定はないが、段階的に基体の径を拡大する方法を採用することができ、例えば、チューブ状の基体に形成されている上記の内腔部に所定外径のマンドレルを挿入して段階的に拡径させる方法が挙げられる。この例を図面に基づき説明する。
図1(a)〜(c)に示すように、先ず、
図1(a)に示すようなチューブ状の基体1を作製した後、
図1(b)に示すように、チューブ状の基体1の内腔部に、基体1の内径よりも大きい一定外径の円柱部を有するマンドレル4を挿入して、
図1(a)に示す基体1の径を、その径より大きくかつ所望径よりも小さい径に拡大させた状態(
図1(b)の符号1a)にする。次に、
図1(c)に示すように、
図1(b)に示すマンドレル4の外径よりも大きい一定外径の円柱部を有するマンドレル5を挿入して、所望径に拡大させた状態(
図1(c)の符号1b)にする。
図1の例では異なる径を有するマンドレルを用いて2段階で所望径まで拡径しているが、1段階でも良いし、2段階以上で所望径まで段階的に拡径してもよい。
【0023】
図2は、
図1に示す拡径方法の変形例を示したものである。
図2に示す例は、
図1(b)、(c)に示すように複数のマンドレルを用いず、外径が異なる一定外径の円柱部7、9と円柱部7、9から連続し隣り合う円柱部7、9をつなぐテーパー部8とを有する1つのマンドレル6を用いた拡径方法を示したものである。
図2(a)に示すように、
図1(a)に示すチューブ状の基体1の内腔部に、基体1の内径より大きい外径を有する円柱部7を挿入し、基体1をその内径が円柱部7の外径に対応するように拡径させた状態にする(
図2(a)の符号1c)。そして、小径の円柱部7から大径の円柱部9に向かって漸次拡径するテーパー部8に沿って基体1cを円柱部9まで移動させることで、基体1cの内径を漸次拡径させ、基体1cをその内径が円柱部9の外径に対応するように拡径させた状態にする(
図2(b)の符号1d)。円柱部9の外径を所望の外径に設定することで、所望径に拡径されたチューブ状の基体を得ることができる。尚、
図2に示す例では、2つの異なる外径の円柱部7、9と両円柱部をつなぐテーパー部8を備えたマンドレル6を用いたが、円柱部は2箇所以上に設けてもよい。また、円柱部7の外径は、
図1(a)に示す拡径前のチューブ状の基体1の内径より大きいが、基体1の内径と同程度であってもよい。
このように、テーパー部で複数の異なる一定外径の円柱部をつなぐ構造を有するマンドレルを使用することで、拡径前の基体を、容易に所望の径に拡径するすることができる。
【0024】
マンドレルを構成する材質としては、特に限定はなく、無機系材料及び有機系材料を用いることができる。無機系材料としては、金属、ガラス、セラミックなどが例示でき、有機系材料としては、各種の高分子化合物などが例示できる。後述するように、マンドレルを整形した基体と共に熱処理を行う観点からは、基体を構成する材料に応じた耐熱性を有する材料が好ましい。また、マンドレルの外表面は、基体を摺動させる観点から平滑であるのが好ましい。
【0025】
上記のように、例えば
図1(a)に示す網目状のストラットを形成させた基体1を所望の径まで拡径すると、
図1(c)及び
図2(b)に示すように、基体の網目状のストラットの配置が乱れて、網目の模様が歪んでしまうことになる。本発明では、このように拡径後の基体において歪んだ網目の模様を、ストラットの位置を矯正することで、自己拡張型ステントにおけるストラットの網目の所定模様に整形する。ここで、「自己拡張型ステントにおけるストラットの網目の所定模様」とは、非収縮時の自己拡張型ステントの網目の模様として設計した網目の模様を意味する。尚、以下では、特に断らない限り、「自己拡張型ステントにおけるストラットの網目の所定模様」を単に「ストラットの網目の所定模様」ないしは「所定模様」と称する。
また、このような網目の所定模様は、狭窄部を拡張するのに良好なラジアルフォースを有し、デリバリーカテーテルのシース内に保持可能に収縮可能な構造を有する構造であれば、特に限定はない。
図1(d)は、
図1(a)に示す基体1を拡径して得られる所定模様を有するステントを模式的に示した側面図である。
図1(d)のステント1eは、基体1のセクション2、連結部3にそれぞれ対応するセクション2a、連結部3aを有する。セクション2aは、基体1が拡径することで、セクション2より振幅が小さく、波長が長い波形状を有することになる。
【0026】
上記のようなストラットの位置の矯正を行う方法としては、例えば、ストラットを受け入れる凹部を所定模様に合わせて1つ以上即ち1つ又は複数配置させたステント加工治具を用いて、上記凹部に、拡径後の基体のストラットを基体の外周側から嵌め込ませる方法、または、ストラット間の隙間に入る凸部を所定模様に合わせて複数配置させたステント加工治具を用いて、上記凸部に、拡径後の基体のストラット間の隙間を基体の外周側から嵌め込ませる方法、等が挙げられる。
このようなステント加工治具を用いることで、作業者による品質の変動が小さい均質なステントを効率よく製造することができる。また、大きな径のチューブから製造する必要がないため大きな径のステントの場合でも安価に製造できる。
【0027】
上記ステント加工治具としては、拡径後の基体のストラットを基体の外周側から受け入れる凹部が1つ以上、又は、拡径後の基体のストラット間の隙間に基体の外周側から入る凸部が複数含まれており、上記凹部又は上記凸部は、上記自己拡張型ステントにおけるストラットの網目の所定模様に合わせて配置されるものを使用するのが好ましい。
【0028】
上記のようにストラットの網目の所定模様に合わせて配置される凸部は、ストラット間の隙間に入ることになる。言い換えれば、複数の凸部の間にストラットが入ることになる。また、ストラットの網目の所定模様に合わせて配置される凹部には、ストラットが入り込むことになる。言い換えれば、凹部に囲まれる部分がストラット間の隙間に入ることになる。したがって、凹部の場合は凹部に囲まれる部分が、凸部の場合は凸部が、ストラット間の隙間に入りやすく、即ち、ストラットの配置を矯正しやすくするように、凹部や凸部の配置、構造を決定するのが好ましい。このような観点から、凹部に囲まれる部分又は凸部の平面視形状は、上記自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の平面視形状に対する占有率が10%以上90%以下となる形状を有するのが好ましい。占有率の算出では、ストラット間の隙間を有効に占有する部分のみを考慮するものとする。また、占有率は、加工治具全体及び各凹部に囲まれる部分又は各凸部のいずれかにおいて上記範囲に該当すればよい。
【0029】
また、凹部に囲まれる部分の平面視形状は、自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の平面視形状に対応する形状、又は、この対応する形状を縮小した形状を有するのが好ましい。これにより、凹部に囲まれる部分をストラット間の隙間の形状に近い形状にすることが容易になり、凹部に配置の乱れたストラットを受け入れやすくすることができる。
凸部の平面視形状は、自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の平面視形状に対応する形状、若しくは、この対応する形状を縮小した形状、又は、自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の所定位置周辺のみを占有する小平面視形状が好ましい。前者(対応する形状及び対応する形状を縮小した形状)の場合は、凸部をストラット間の隙間の形状に近い形状にすることが容易になり、凸部間に配置の乱れたストラットを受け入れやすくすることができる。後者の小平面視形状の場合は、ストラット間の隙間が大きく、ストラットの位置が拡径時に変動しやすい部分に凸部を設ける場合に有効である。
ここで、「自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の平面視形状に対応する形状」とは、ストラット間の隙間の平面視形状(平面に展開した展開図における形状)に一致する形状の他、一致はしないものの、平面視形状におけるストラット間の隙間に入り得る最大の単一又は複数の多角形、円、楕円若しくはそれらの組み合わせ又はその他の形状を意味する。また、「多角形」には、角部が丸め加工された実質的に多角形であるものを含む。
尚、対応する形状がストラット間の隙間の平面視形状に一致する場合は、凹部に囲まれる部分又は凸部の平面視形状として、占有率が10%以上90%以下となるように、自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の平面視形状に対応した形状を縮小した形状を採用するのが好ましい。
【0030】
このようなステント加工治具の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図3〜7は、
図1(a)に示す基体1を、
図1(c)及び
図2(b)に示す所望の径に拡径した基体1b、1dの網目の模様を所定模様(
図1(d)の符号1e参照。)に整形する際に使用可能なステント加工治具の実施形態を示したものである。
【0031】
図3に示すステント加工治具10(第1実施形態)は、平板状の支持台12に、
図1(c)及び
図2(b)に示す拡径後の基体1b、1dのストラットを基体1b、1dの外周側から受け入れる凹部11が1つ、ストラットの網目の所定模様(設計した模様)に合わせて配置されたものである。第1実施形態では、凹部11は支持台12の上面側の一平面に形成されているため、凹部11によって形成される網目の模様は、自己拡張型ステントにおけるストラットの網目の所定模様の展開図(
図3の符号21参照。)を一平面上に一つ転写したもの、又は、展開図を2つ以上ステントの周方向の模様が滑らかに連続するように並列させて一平面上に転写したものに概ね一致する。即ち、本実施形態の凹部に囲まれる部分の平面視形状は、自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の平面視形状に一致する形状又は該一致する形状を縮小した形状を有するものである。
【0032】
凹部11は、
図3(b)に示すように凹部11の底13に向かって一定幅であってもよいし、
図3(c)に示す変形例のように凹部11の底に向かって先細りしていてもよい。凹部11を凹の底に向かって先細りさせた場合、凹部の開口部をストラット幅より大きくできるため、凹部にストラットを嵌め込ませ易くなる点で好ましい。
【0033】
また、
図3(b)及び(c)に示す凹部11の開口部43の幅W1は、ストラット幅より大きく、乱れたストラットの位置を矯正可能で、ストラットを受け入れ可能であれば特に限定はないが、凹部11に囲まれる部分44、45、46の平面視形状が、自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の平面視形状に対する占有率が好ましくは50%以上90%以下、より好ましくは60%以上80%以下となるように、開口部43の幅W1を決定するのが望ましい。この範囲であれば、乱れたストラットを凹部に受け入れやすくなる傾向にあり、また、乱れたストラットの位置をより確実に矯正しやすくなる傾向にある。ここで、凹部11に囲まれる部分とは、
図3(a)の符号44で示す部分のように、凹部11で完全に囲まれて閉じた部分の他、符号45及び46で示す部分のように、凹部11で完全に囲まれない部分を含む。後者の場合は、閉じていない部分を直線(
図3(a)中の一点鎖線L1、L2参照。)で補うことで閉じた部分を仮想し、占有率を算出するものとする。また、この仮想直線L1、L2は、凹部11に受け入れられるストラットの中心線を基準に仮想的に描画するものとする。
【0034】
図4に示すステント加工治具14(第2実施形態)は、平板状の支持台15に、
図1(c)及び
図2(b)に示す拡径後の基体1b、1dのストラット間の隙間40、41、42に基体1b、1dの外周側から入る凸部16、17、18が複数、ストラットの網目の所定模様(
図4の符号21参照。)に合わせて配置されたものである。凸部16は、基体1を拡径させたステントにおける隣り合うセクション2と連結部3を構成するストラット間の隙間の所定模様(設計した模様)に対応する平面視形状に対応し、凸部17、18は、同ステントにおけるセクション2の波形を構成するストラット間の隙間の所定模様(設計した模様)に対応する平面視形状に対応する。第2実施形態では、凸部16、17、18は支持台15の上面側の一平面に形成されているため、凸部16、17、18によって形成される網目の模様は、自己拡張型ステントにおけるストラットの網目の所定模様の展開図を一平面上に一つ転写したもの、又は、展開図を2つ以上ステントの周方向の模様が滑らかに連続するように並列させて一平面上に転写したものに概ね一致する。即ち、凸部の平面視形状は、自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の平面視形状に一致する形状又は該一致する形状を縮小した形状を有するものである。尚、本実施形態では、隣接する凸部17、凸部18は、それぞれ複数設けられているが、各凸部17同士、各凸部18同士を連結するように設けてもよく、このような構成も、ストラット間の隙間に入る凸部に該当するものとする。但し、占有率の算出においては、
図3の符号45、46の部分と同様に仮想直線L1、L2(例えば
図4(a)中の一点鎖線参照。)を用いて算出するものとする。
【0035】
また、凸部16は、
図4(b)に示すように凸部16の先端19に向かって一定幅であってもよいし、
図4(c)に示す変形例のように凸部16の先端19に向かって先細りしていてもよい。尚、凸部17、18についても同様である。凸部を先細りさせることにより、凸部の先端側がストラット間の隙間より小さくなるため、凸部をストラット間の隙間に入れ易くなる点で好ましい。
【0036】
さらに、
図4(b)及び(c)に示すように、凸部16同士、凸部16と凸部18との間の幅W2は、凸部16の先端19間の幅がストラット幅より大きく、乱れたストラットの位置を矯正可能で、ストラットを受け入れ可能であれば特に限定はないが、自己拡張型ステントにおけるストラット間の隙間の平面視形状に対する占有率が好ましくは50%以上90%以下、より好ましくは60%以上80%以下となるように、凸部間の幅W2を決定するのが好ましい。尚、凸部17、18同士、凸部16と凸部17との間の幅も同様である。この範囲であれば、乱れたストラットの隙間に凸部が入りやすくなる傾向にあり、また、乱れたストラットの位置をより確実に矯正しやすくなる傾向にある。
更に、凸部16、17、18は、所定模様に対応する全ての箇所に設けてもよいが、そのうちの数箇所に設けてもよく、その配置はストラットの整形を考慮して適宜決定することができる。凸部17、18については全く設けなくてもよい。
【0037】
図5は、
図4に示したステント加工治具14の変形例である第3実施形態のステント加工治具20の概略を示した平面図である。
図5に示した第3実施形態では、
図4に示すステント加工治具14の凸部16、17、18の平面視形状とは異なる平面視形状の凸部22、23を設けた以外は同様の構成を有する。即ち、
図5に示すステント加工治具20は、平板状の支持台15に、
図1(c)及び
図2(b)に示す拡径後の基体1b、1dのストラット間の隙間40、41、42に基体1b、1dの外周側から入る凸部22、23が複数、ストラットの網目の所定模様(
図5の符号21参照。)に合わせて配置されたものである。また、凸部22、23の平面視形状は、所定模様の展開図におけるストラット間の隙間の平面視形状に対応する形状又は対応する形状を縮小した形状を有する。ストラット間の隙間に対する占有率は好ましくは50%以上90%以下、より好ましくは60%以上80%以下である。この範囲であれば、乱れたストラットの隙間に凸部が入りやすくなる傾向にあり、また、乱れたストラットの位置をより確実に矯正しやすくなる傾向にある。但し、占有率の算出においては、
図3の符号45、46の部分と同様に仮想直線L1、L2(例えば
図5中の一点鎖線参照。)を用いて算出するものとする。
第3実施形態の凸部22、23は、
図1(d)に示すように所定模様におけるセクション2aの波形状の山部及び谷部のストラット間の隙間に対応する三角形の平面視形状を有する。本実施形態では、凸部22、23の平面視形状はともに二等辺三角形であり、ステントの周方向には、凸部22と凸部23は、一方が二等辺三角形の底辺を基準に反転させて、交互に一列に並べられるとともに、ステント軸方向には、凸部22、23が一列に並べられている。三角形の大きさ、形状は、ストラットの所定模様に合わせて、ストラットの整形のし易さを考慮して適宜決定すればよい。また、
図4の第2実施形態の場合と同様に凸部22、23の配置、数も同様に適宜決定することができる。凸部間の距離は、
図4の第2実施形態の場合と同様にして決定することができる。また、凸部22、23は、
図4の第2実施形態の場合と同様にして先端に向かって一定幅であってもよいし、先端に向かって先細りしていてもよい。
【0038】
図6は、
図4に示したステント加工治具14の他の変形例である第4実施形態のステント加工治具24の概略を示した平面図である。
図6に示した第4実施形態では、
図4に示すステント加工治具14の凸部16、17、18の平面視形状とは異なる平面視形状の凸部25、26を設けた以外は同様の構成を有する。即ち、
図6に示すステント加工治具24は、平板状の支持台15に、
図1(c)及び
図2(b)に示す拡径後の基体1b、1dのストラット間の隙間40、41、42に基体1b、1dの外周側から入る凸部25、26が複数、ストラットの網目の所定模様(
図6の符号21参照。)に合わせて配置されたものである。また、凸部25、26の平面視形状は、所定模様の展開図におけるストラット間の隙間の所定位置周辺のみを占有する小平面視形状を有する。ストラット間の隙間に対する小平面視形状の占有率は、好ましくは10%以上50%未満、より好ましくは20%以上40%以下である。占有率の算出においては、
図3の符号45、46の部分と同様に仮想直線L1、L2(例えば
図6中の一点鎖線参照。)を用いて算出するものとする。また、この場合、ストラットの位置が拡径時に変動しやすい部分に限って凸部を設けることができる。
第4実施形態の凸部25は、
図1(d)に示すように所定模様における隣接するセクション2aの近接する山部及び谷部のストラットの間を通り、その山部及び谷部につながる一方の谷部側及び山部側に伸びる細長い方形の平面視形状を有し、それらが平行又は同一直線上に並べられている。凸部26は、ステントの軸方向両端部に対応する位置で、セクション2aの山部又は谷部のストラットの近傍を通り、その山部又は谷部につながる一方の谷部側又は山部側に伸びる細長い方形の平面視形状を有し、凸部25の長軸方向に対して平行又は同一直線状に並べられている。細長い方形の大きさ、形状は、ストラットの所定模様に合わせて、ストラットの整形のし易さを考慮して適宜決定すればよいが、効率よくストラットの位置の矯正を行う観点から、ストラット間の隙間が大きく、ストラットの位置が拡径時に変動しやすい部分に設けるとよい。また、
図4の第2実施形態の場合と同様に凸部25、26の配置、数も同様に適宜決定することができる。凸部間の距離も、
図4の第2実施形態の場合と同様にして決定することができる。また、凸部25、26は、
図4の第2実施形態の場合と同様にして先端に向かって一定幅であってもよいし、先端に向かって先細りしていてもよい。
【0039】
図7は、
図4に示したステント加工治具14のさらに他の変形例である第5実施形態のステント加工治具27の概略を示した平面図である。
図7に示した第5実施形態では、
図4に示すステント加工治具14の凸部16、17、18の平面視形状とは異なる平面視形状の凸部28を設けた以外は同様の構成を有する。即ち、
図7に示すステント加工治具27は、平板状の支持台15に、
図1(c)及び
図2(b)に示す拡径後の基体1b、1dのストラット間の隙間40、42に基体1b、1dの外周側から入る凸部28が複数、ストラットの網目の所定模様(
図7の符号21参照。)に合わせて配置されたものである。また、凸部28の平面視形状は、所定模様の展開図におけるストラット間の隙間の所定位置周辺のみを占有する小平面視形状を有する。ストラット間の隙間に対する小平面視形状の占有率は、好ましくは10%以上50%未満、より好ましくは20%以上40%以下である。占有率の算出においては、
図3の符号45、46の部分と同様に仮想直線L1、L2(例えば
図7中の一点鎖線参照。)を用いて算出するものとする。また、この場合、ストラットの位置が拡径時に変動しやすい部分に限って凸部を設けることができる。
第5実施形態の凸部28は、
図1(d)に示すように所定模様における隣接するセクション2aの山部又は谷部の近傍部のストラット間の隙間に入る円形状の平面視形状を有し、それらが、格子状に並べられている。本例では、円形状であるが、ストラットの所定模様に合わせて、楕円形状などの他の形状でもよい。その大きさは、ストラットの整形のし易さを考慮して適宜決定すればよいが、効率よくストラットの位置の矯正を行う観点から、ストラット間の隙間が大きく、ストラットの位置が拡径時に変動しやすい部分に設けるとよい。また、
図4の第2実施形態の場合と同様に凸部28の配置、数も同様に適宜決定することができる。凸部間の距離も、
図4の第2実施形態の場合と同様にして決定することができる。また、凸部28は、
図4の第2実施形態の場合と同様にして先端に向かって一定幅であってもよいし、先端に向かって先細りしていてもよい。
【0040】
また、上記の第1〜7実施形態では、平板状の支持台15のある一つの面に凹部や凸部を設けているが、本発明では、基体の外周側からストラット又はその隙間に凹部又は凸部を近接させることが可能であれば支持台15の形状、構造は、特に限定はない。例えば、
図8に示すステント加工治具29(第6実施形態)のように、断面が半楕円状の曲面を有する板状の支持台30の凸面側に凸部31を設けたものでもよいし、凸部に替えて凹部(図示せず)を設けてもよい。また、図示しないが、円筒状や楕円筒状の外周面側又は内周面側に、円柱状や楕円柱状の外周面に、凹部、凸部を設けてもよい。さらに、曲面に限らず、多角面であってもよく、多角面の凸面側又は凹面側に凹部や凸部を設けてもよい。
【0041】
本発明のステント加工治具を構成する材料は、特に限定はないが、拡径した基体のストラットと接してその位置を矯正する際にストラットが損傷するのを防止する観点からは、基体を構成する材料より硬度が低い材料を用いるのが好ましい。基体を構成する材料として例えばNi−Ti合金を用いる場合は、これより硬度の低いアルミニウム、銅、真鍮などの金属、樹脂、ガラスなどが挙げられる。このうち、耐摩耗性、強度の観点から、基体を構成する材料より硬度の低い金属が好ましい。
【0042】
以下では、
図1(c)に示すマンドレル5にて拡径して、網目状のストラットの配置が乱れたチューブ状の基体1bを、
図5に示すステント加工治具20を用いて、ストラットの位置を矯正し、ストラットの網目の所定模様に整形する工程を例として説明するが、
図4、6、7に示すように所定の凸部を設けたステント加工治具、
図3のように所定の凹部を設けたステント加工治具、その他の網目の所定模様に合わせた配置された凸部又は凹部を設けたステント加工治具を用いた場合も同様に整形を行うことが可能である。
【0043】
図9(a)は、
図1(a)に示す網目状のストラットを形成させたチューブ状の基体1をマンドレル5を用いて所望の径まで拡径した後の状態を模式的に示した平面図であり、拡径した基体1bは、ストラットの配置が乱れて、網目の模様が歪んだ状態である。このように拡径後の基体1bにマンドレル5が挿入された状態で、基体1bのストラットを、基体の外周側から周方向に沿って順次、部分的にステント加工治具20の凸部22、23に嵌め込ませる(
図9(b)、(d)参照。)。この時、ステント加工治具20に所定模様に相似する凸部22、23が支持台15に配置されているため、配置が乱れていた部分のストラットは、凸部22及び/又は凸部23に押されて移動し(
図9(d)参照。)、ついにはストラット間の隙間に凸部22及び/又は凸部23が嵌り込み、ストラットの位置を所定模様に合致させることで、ストラットの位置が矯正され、所定模様を有する基体1eが得られる(
図9(c)参照。)。尚、基体1eは、
図1(d)と同じストラットの網目の所定模様を有する。
【0044】
基体1bのストラットを基体の外周側から周方向に沿って順次、部分的にステント加工治具20の凸部22、23に嵌め込ませる方法としては、特に限定はなく、例えば、拡径後の基体1bにマンドレル5が挿入された状態で、マンドレル5を基体1bとともに回転させ、かつ、上記マンドレルの軸心と上記ステント加工治具とを相対移動させる方法が挙げられる。
図9(b)、(d)は、マンドレル5を基体1bとともに回転させつつ、ステント加工治具20の平板状の支持台15の凸部22、23が設けられている上面側に沿って平行してマンドレル5の軸心を相対移動させている途中の状態を模式的に示した図である。また、図示しないが、ステント加工治具が筒状、柱状の場合は、マンドレル5を基体1bとともに回転させ、かつ、基体1bと外接するようにステント加工治具を回転させる方法でもよい。これらの方法によれば、容易に効率よくストラットの位置の矯正が可能である。
また、相対移動は、例えば
図9に示す平板状のステント加工治具20の場合は、一方端から他方端に向かって1回移動させてもよいし、複数回移動させてもよいし、1回又は2回以上往復させるように移動させてもよい。また、ステント加工治具が筒状、柱状の場合は、1回転または2回転以上相対移動させてもよい。
【0045】
相対移動は、手動で行ってもよいし、駆動装置などを用いて行ってもよい。
手動で行う場合は、例えば拡径後の基体1bにマンドレル5が挿入された状態で、作業者が、マンドレルをステント加工治具20に向かって手で軽く押しつけつつ、マンドレル5を転がすことで、マンドレル5と共に基体1bを回転させながら相対移動させる方法が挙げられる。
【0046】
駆動装置を用いる場合は、例えば
図5に示す所定模様に合わせて凸部22、23が配置されたステント加工治具20を用いる場合、
図10に示すような駆動装置32を用いて行うことができる。この駆動装置32は、マンドレル部33、可動部34、レール台35を備える。可動部34は、レール台35に設けられたレール36に沿って進退可能である。レール台35及びレール36は、ステント加工治具20の所定模様におけるステントの周方向に平行して配置可能である。レール台35は、必要に応じてステント加工治具20を固定するための固定部(図示せず)を有する。また、可動部34には、マンドレル部33がその長軸方向が可動部34の進退する方向(
図10の符号38)に直交し、ステント加工治具20が配置されている方向に突設される。マンドレル部33は、マンドレル部33をその長軸を中心としてその周方向(
図10の符号39)に回転可能なように可動部34に設けられる。可動部34には必要に応じて回転駆動手段(図示せず)を設けてもよい。また、マンドレル部33の全部または一部を可動部34から分離可能にしてもよい。また、可動部34には、マンドレル部33とステント加工治具20との距離を調整するための昇降手段、又は、マンドレル部33及び基体1bをステント加工治具20に対して押し付ける押圧力を付加し、調整するための加圧調整手段を備える(いずれも図示せず。)。可動部34のレール36に沿った進退は、レール台35又は可動部34に設けられた駆動手段(図示せず。)により行うことができる。もっとも、作業者が可動部34を把持して手動で駆動させてもよい。
【0047】
そして、
図10に示すように、マンドレル部33に、網目状のストラットを形成させたチューブ状の基体1b(
図10では簡略して表示した。)を所望の径に拡径した状態で保持し、可動部34をレール台5のレール36に沿って移動させることで、ステント加工治具20の所定模様におけるステントの周方向に平行して、ステント加工治具20に対してマンドレル部33の軸心を移動させることができる。この時、マンドレル部33とステント加工治具20との距離を調整するか、マンドレル部33とステント加工治具20との間の押圧力を調整することで、凸部22及び/又は凸部23が、配置が乱れていた部分のストラットと接触した時に、基体1bのストラットとマンドレル表面との摩擦力やストラットの張力に抗してストラットを移動させることができる。また、マンドレル部33に挿入された拡径された基体1bをマンドレル部33と共に回転させることが可能なため、基体の周方向に沿って、順次、基体1bの配置が乱れていた部分のストラットと凸部22、23が接して、そのストラットを移動させ、ストラット間の隙間を凸部22及び/又は凸部23に嵌め込ませていき、基体1bの全周のストラットの位置を順次矯正することができる。
【0048】
相対移動させる際、基体1bとステント加工治具20との距離、例えば、凸部22、23の先端とマンドレル外周面との距離は、基体1bと凸部22、23とが接して、配置が乱れている部分のストラットを移動させることが可能であれば、基体1bのストラットの厚みより小さく、基体1bと凸部22、23が接する(距離がゼロ)までの範囲で適宜決定することができる。
【0049】
以上のようにして、拡径した基体1bのストラットの網目の模様をステントにおける所定模様に整形した後、熱処理を行って、その整形した状態を拡径姿勢として固定させる。ここで、「拡径姿勢」とは、基体を拡径した後の自己拡張型ステントにおけるストラットの網目の所定模様を備えた姿勢を意味する。
熱処理の条件は、基体を構成する材質等に応じて、適宜決定することができる。熱処理を行う加熱炉としては、例えば、酸化雰囲気炉、電気炉、塩浴炉等が挙げられる。加熱条件は、例えば、材質がNi−Ti合金の場合は、450〜600℃で、5〜60分とすることができる。
【0050】
以上のようにして、所望のストラットの網目の所定模様を有する自己拡張型ステントを製造することができる。得られた自己拡張型ステントは、上記のように、デリバリーカテーテルのシース内に縮径された状態で保持され、体内の所望の位置まで誘導され、シースから放出されると、狭窄部の状態によるが、熱処理にて記憶された所定の外径まで拡張し、留置される。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
【0052】
(実施例1)
Ni−Ti合金製のチューブからレーザーにより所望の網目状のストラットを形成し、バリ取りを行って、所望の網目状のストラットを形成したチューブ状の基体を得た。その後、この基体にマンドレルを挿入してφ8mmまで拡径した。
図5に示した凸部が所定模様に合わせて配置されたステント加工治具を用い、マンドレルを挿入した状態の基体をマンドレルとともに回転させながら、マンドレルの軸心をステント加工治具の平板状の支持台に沿って平行に手動で数回往復移動させた。以上の操作を3個繰り返して実施し、3個のサンプルを作製した。
マンドレルを挿入して拡径した後はストラットの配置が乱れて、網目の模様が歪んでいたが、ステント加工治具を用いることで、ストラットの位置が矯正され、ストラットの網目の所定模様に整形されたことを目視にて確認した。
基体にマンドレルを挿入してからストラットの位置の矯正が完了するまでの所要時間は何れも2分以内であった。作業者はステントのストラットの網目の所定模様である設計図を把握できていなくても、ステント加工治具を使用することにより、拡径時のストラットの網目を所定模様に配置することを容易に実施することが可能であった。
【0053】
(比較例1)
ステント加工治具を使用せず、目視により設計図と見比べながらピンセットを用いた以外は、実施例1と同様にしてストラットの位置を所定模様に整形するまでの作業を行い、3個のサンプルを作製した。
基体にマンドレルを挿入してからストラットの位置の矯正が完了するまでの所要時間は、いずれも5分程度であり、実施例1の2倍以上の工数を要した。さらに、設計図を把握しストラットの配置を理解するための時間も必要であった。
【0054】
(結果)
実施例1および比較例1の結果より、いずれもほぼ良品レベルの所定模様に整形されていたが、実施例の方が各サンプルのばらつきは小さく、従って、作業者による品質の変動が小さいことが確認できた。また、工数に関しても実施例の方が作業時間が大幅に短縮されており、効率が良いことを確認できた。このように、ステント加工治具を用いることで、拡径時のストラットの網目を所定模様に配置することを容易に行うことが可能で、品質の安定した自己拡張型ステントを効率よく製造することが可能であることが分かった。