特許第6171818号(P6171818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6171818
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】電子楽器のスイッチスキャン装置
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/18 20060101AFI20170724BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   G10H1/18 101
   G10H1/34
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-210151(P2013-210151)
(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公開番号】特開2015-75527(P2015-75527A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168756
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 元彦
(72)【発明者】
【氏名】堀田 晴道
【審査官】 菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−121797(JP,U)
【文献】 特開平2−118695(JP,A)
【文献】 特開2009−245025(JP,A)
【文献】 特開昭61−255397(JP,A)
【文献】 特開昭53−001014(JP,A)
【文献】 特開平3−048180(JP,A)
【文献】 特開2000−259332(JP,A)
【文献】 特開2014−010176(JP,A)
【文献】 特開平6−124155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00− 7/12
H01H 9/54− 9/56,
13/00−13/88,
19/00−21/88
H03K 17/00−17/98
G06F 3/02− 3/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブ化された状態且つオン状態にあるとき所定の第1電位になり、アクティブ化された状態且つオフ状態にあるとき、及び非アクティブ化された状態にあるときハイインピーダンス状態になる出力端子をそれぞれ有する複数のスイッチと、
前記複数のスイッチの出力端子が接続された検出ラインと、
前記検出ラインがハイインピーダンス状態にあるときの前記検出ラインの電位を所定の第2電位に設定する電位確定手段と、
前記複数のスイッチを順にアクティブ化して前記検出ラインの電位を検出することにより前記複数のスイッチのオン・オフ状態を順に検出するスイッチスキャン制御部であって、前記検出ラインに接続された入出力端子を備え、前記入出力端子を入力端子として機能するように設定した状態で前記複数のスイッチのうちの第1のスイッチをアクティブ化するとともに前記検出ラインの電位を検出した後、全ての前記スイッチを非アクティブ化し、前記入出力端子を出力端子として機能するように設定するとともに前記入出力端子の電位を所定の第2電位に設定し、前記入出力端子を入力端子として機能するように設定するとともに前記第1のスイッチとは異なる第2のスイッチをアクティブ化した状態で前記検出ラインの電位を検出することにより、前記第1のスイッチのオン・オフ状態と前記第2のスイッチのオン・オフ状態を順に検出するスイッチスキャン制御部と、を備えた電子楽器のスイッチスキャン装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子楽器のスイッチスキャン装置において、
前記電子楽器は複数の可動部を備え、
前記複数のスイッチは前記複数の可動部にそれぞれ対応して設けられ、
前記複数の可動部の動作位置に応じて前記複数のスイッチのオン・オフ状態が決定される、電子楽器のスイッチスキャン装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子楽器のスイッチスキャン装置において、
前記複数のスイッチは、固定された固定接点と、前記複数の可動部によって押圧されて移動する可動接点とをそれぞれ備え、前記固定接点と前記可動接点とが離間しているときオフ状態であり、前記可動接点が前記可動部によって押圧されて前記固定接点に当接しているときオン状態である、スイッチスキャン装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電子楽器のスイッチスキャン装置において、
前記複数の可動部は、演奏者によってそれぞれ操作される複数の鍵であり、
前記複数の鍵の押鍵深さに応じて前記複数のスイッチのオン・オフ状態がそれぞれ決定される、電子楽器のスイッチスキャン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスイッチを走査して、各スイッチのオン・オフ状態を検出する電子楽器のスイッチスキャン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に記載されているように、演奏者によって押離鍵操作される複数の鍵を備えた電子楽器の鍵盤装置は知られている。この鍵盤装置は、前記複数の鍵にそれぞれ設けられ、前記鍵の押鍵深さが所定の押鍵深さよりも小さいときオフ状態となり、前記所定の押鍵深さよりも大きいときオン状態となる複数のスイッチと、前記複数のスイッチのオン・オフ状態を検出するスイッチスキャン制御部を備える。この鍵盤装置では、前記複数のスイッチの出力端子(固定接点の一方の端子)が共通の検出ラインに接続されている。スイッチスキャン制御部は、各スイッチを順にアクティブ化し、検出ラインの電位を検出することにより前記スイッチのオン・オフ状態を検出する。なお、前記スイッチがアクティブ化された状態にあり、且つオン状態にあるとき、前記スイッチの出力端子の電位がローレベルになる。また、前記スイッチがアクティブ化された状態にあり且つオフ状態にあるとき、及び前記スイッチが非アクティブ化された状態にあるとき、前記スイッチの出力端子はハイインピーダンス状態となる。そして、前記出力端子がハイインピーダンス状態にあるときの電位を確定するためのプルアップ抵抗が検出ラインに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−185374号公報
【発明の概要】
【0004】
一般に、前記複数のスイッチはプリント配線基板に実装されている。ここで、図8に示すように、出力端子同士が共通の検出ラインに接続されたスイッチAとスイッチBのうち、スイッチAがオン状態にあり、且つスイッチBがオフ状態にある場合の検出ラインの電位について考察する。スイッチスキャン制御部が、オン状態にあったスイッチAを非アクティブ化し、次にスイッチBをアクティブ化する(図8において、ドライブラインDS0をローレベルからハイレベルに変更し、その後、ドライブラインDS1をハイレベルからローレベルへ変更する)とき、検出ラインの電位がローレベルからハイレベルに到達するまでに、プリント配線基板の配線パターンに起因する浮遊容量とプルアップ抵抗の抵抗値で決定される所定の時間がかかる。そのため、スイッチA及びスイッチBのオン・オフ状態を検出するために、検出ラインの電位を図8における矢印を付したタイミングにてそれぞれ検出すると、スイッチAに関しては正しい検出結果が得られる。しかし、スイッチBに関しては、実際にはオフ状態であるのに、オン状態と検出される虞がある。これを回避するためには、検出ラインの電位がローレベルからハイレベルへ到達するのを待って、その後、スイッチBをアクティブ化すればよい。つまり、スイッチの走査速度を遅くすればよい。しかし、スイッチの走査速度を遅くした場合、スイッチのオン・オフ状態が実際に変化してから、その変化を検出するまでに長い時間がかかる虞がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、走査速度を速くすることができる電子楽器のスイッチスキャン装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、アクティブ化された状態且つオン状態にあるとき所定の第1電位になり、アクティブ化された状態且つオフ状態にあるとき、及び非アクティブ化された状態にあるときハイインピーダンス状態になる出力端子をそれぞれ有する複数のスイッチ(SW)と、前記複数のスイッチの出力端子(FS2)が接続された検出ライン(MK0〜MK11)と、検出ラインがハイインピーダンス状態にあるときの前記検出ラインの電位を所定の第2電位に設定する電位確定手段(R)と、前記複数のスイッチを順にアクティブ化して前記検出ラインの電位を検出することにより前記複数のスイッチのオン・オフ状態を順に検出するスイッチスキャン制御部(SC)であって、前記検出ラインに接続された入出力端子(IO0〜IO11)を備え、前記入出力端子を入力端子として機能するように設定した状態で前記複数のスイッチのうちの第1のスイッチをアクティブ化するとともに前記検出ラインの電位を検出した後、全ての前記スイッチを非アクティブ化し、前記入出力端子を出力端子として機能するように設定するとともに前記入出力端子の電位を所定の第2電位に設定し、前記入出力端子を入力端子として機能するように設定するとともに前記第1のスイッチとは異なる第2のスイッチをアクティブ化した状態で前記検出ラインの電位を検出することにより、前記第1のスイッチのオン・オフ状態と前記第2のスイッチのオン・オフ状態を順に検出するスイッチスキャン制御部と、を備えた電子楽器のスイッチスキャン装置としたことにある。
【0007】
この場合、前記電子楽器は複数の可動部(KY)を備え、前記複数のスイッチは前記複数の可動部にそれぞれ対応して設けられ、前記複数の可動部の動作位置に応じて前記複数のスイッチのオン・オフ状態が決定されるとよい。
【0008】
また、この場合、前記複数のスイッチは、固定された固定接点(FS)と、前記複数の可動部によって押圧されて移動する可動接点(MS)とをそれぞれ備え、前記固定接点と前記可動接点とが離間しているときオフ状態であり、前記可動接点が前記可動部によって押圧されて前記固定接点に当接しているときオン状態であるとよい。
【0009】
また、この場合、前記複数の可動部は、演奏者によってそれぞれ操作される複数の鍵(KY)であり、前記複数の鍵の押鍵深さに応じて前記複数のスイッチのオン・オフ状態がそれぞれ決定されるとよい。
【0010】
上記のように構成した本発明に係る電子楽器のスイッチスキャン装置によれば、アクティブ化するスイッチを変更する際、一旦全てのスイッチを非アクティブ化した状態で、入出力端子を出力端子として機能するように設定し、その出力レベルを第2電位(オフ状態の電位)に設定している。これにより、検出ラインの電位が強制的に第2電位に設定される。よって、従来のスイッチスキャン装置のように検出ラインの電位がオン状態の電位からオフ状態の電位へ到達するのを待つ必要が無い。したがって、本実施形態によれば、スイッチの走査速度を速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るスイッチスキャン装置が適用された電子楽器の鍵盤装置の側面図である。
図2図1の鍵盤装置の各鍵の押離鍵状態を検出する電子回路を示す回路図である。
図3】スイッチスキャン処理の手順を示すフローチャートである。
図4】オン・オフ状態判定処理の手順を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係るスイッチスキャン装置のドライブライン及び検出ラインの電位の遷移を示すタイミングチャートである。
図6】ドライブラインがアクティブ化される周期を示すタイミングチャートである。
図7A】本発明の一実施形態に係るスイッチスキャン装置のドライブライン及び検出ラインの電位の遷移に関し、スイッチオン処理及びスイッチオフ処理が実行されるタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
図7B】本発明の一実施形態に係るスイッチスキャン装置のドライブライン及び検出ラインの電位の遷移に関し、スイッチオン処理及びスイッチオフ処理が実行されるタイミングの他の例を示すタイミングチャートである。
図7C】生起し得ない検出ラインの電位の遷移を示すタイミングチャートである。
図8】従来のスイッチスキャン装置のドライブライン及び検出ラインの電位の遷移を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係るスイッチスキャン装置SSについて説明する。まず、スイッチスキャン装置SSが適用された電子楽器DMの鍵盤装置KBについて簡単に説明しておく。
【0013】
鍵盤装置KBは、図1に示すように、演奏者によって押離腱操作される複数の鍵KYを備える。鍵KYは、その後端部にて、鍵フレームFRに揺動可能に支持されている。また、鍵盤装置KBは、複数の鍵KYにそれぞれ対応した複数のハンマーHMを備える。ハンマーHMは、鍵KYの下方にて、鍵フレームFRに揺動可能に支持されている。ハンマーHMは、鍵KYに係合していて、鍵KYの揺動に連動して揺動する。
【0014】
スイッチスキャン装置SSは、複数のスイッチSWを備える。各鍵KYには、2つのスイッチSWが設けられている。前記2つのスイッチSWは、鍵KYと鍵フレームFRの上面との間にて前後方向(鍵KYの長手方向)に離間して配置されている。図2に示すように、スイッチSWは、固定接点FSと、固定接点FSに対応して設けられた可動接点MSからなる。固定接点FSは、鍵フレームFRの上面に組み付けられたプリント配線基板PBの上面に形成されている。固定接点FSは離間した2つの導電部FS1,FS2からなる。可動接点MSは、合成ゴムによってドーム状に形成されたラバードームの内面に形成されている。
【0015】
鍵KYが離鍵されている状態では、可動接点MSと固定接点FSは離間している。つまり、前記2つのスイッチSWはいずれもオフ状態である。鍵KYが押されることによりラバードームが弾性変形し、まず鍵KYの支点に近い側に配置されたスイッチSW(プライマリスイッチと呼ぶ)の可動接点MSが固定接点FSに当接する。これにより、固定接点FSの2つの導電部FS1,FS2が短絡し、プライマリスイッチがオフ状態からオン状態に変化する。さらに押鍵深さが増大すると、演奏者に近い側に配置されたスイッチSW(セカンダリスイッチと呼ぶ)の可動接点MSが固定接点FSに接触することにより、セカンダリスイッチがオフ状態からオン状態に変化する。プライマリスイッチがオン状態に変化してからセカンダリスイッチがオン状態に変化するまでの時間を計測することにより、押鍵の強さ(オンベロシティ)を検出できる。
【0016】
鍵KYが離されると、ラバードームが元の状態に戻る。この過程では、まずセカンダリスイッチの可動接点MSが固定接点FSから離間することにより、セカンダリスイッチがオン状態からオフ状態に変化する。さらに押鍵深さが減少すると、プライマリスイッチの可動接点MSが固定接点FSから離間することにより、プライマリスイッチがオン状態からオフ状態に変化する。セカンダリスイッチがオフ状態に変化してからプライマリスイッチがオフ状態に変化するまでの時間を計測することにより、離鍵の強さ(オフベロシティ)を検出できる。上記のように、鍵KYの押鍵深さに応じて、スイッチSWのオン・オフ状態が決定される。
【0017】
鍵盤装置KBが備える複数のスイッチSWは、所謂スイッチマトリクスMXを構成している。スイッチマトリクスMXの構成について説明する。前記複数のスイッチSWは、15個のグループのうちのいずれかのグループに属するようにグループ分けされている。各グループに属するスイッチSWの固定接点FSの一方の導電部FS1は、各グループに対応して設けられたドライブラインDS0〜DS14に接続されている。互いに異なるグループに属する15個のスイッチSWの固定接点FSの他方の導電部FS2(本発明のスイッチの出力端子)は、ダイオードDを介して、共通の検出ライン(検出ラインMK0〜MK11のうちのいずれか)にそれぞれ接続されている。言い換えれば、前記一方の導電部FS1が共通のドライブラインに接続された固定接点FSの前記他方の導電部FS2は、互いに異なる検出ラインに接続されている(図2参照)。検出ラインMK0〜MK11には、電位確定手段としてのプルアップ抵抗Rがそれぞれ接続されている。つまり、検出ラインMK0〜MK11がハイインピーダンス状態のとき、プルアップ抵抗Rの作用により、検出ラインMK0〜MK11の電位がハイレベル(本発明の第2電位)に設定される。なお、検出ラインMK0〜MK11、及びドライブラインDS0〜DS14は、プリント配線基板PBに配線パターンとして形成されている。
【0018】
また、スイッチスキャン装置SSは、プリント配線基板PBに組み付けられたスイッチスキャン制御部SCを有する。スイッチスキャン制御部SCは、スイッチマトリクスMXに接続されている。スイッチスキャン制御部SCは、ドライブラインDS0〜DS14に接続される出力端子OT0〜OT14と、検出ラインMK0〜MK11に接続される入出力端子IO0〜IO11とを備える。入出力端子IO0〜IO11は、入力端子又は出力端子として機能するように設定される。
【0019】
また、スイッチスキャン装置SSは、各スイッチのオン・オフ状態を記憶するメモリMMを有する。詳しくは後述するように、各スイッチSWのオン・オフ状態は繰り返し検出されるが、各スイッチSWのオン・オフ状態が検出されるごとに、検出された各スイッチSWのオン・オフ状態が一時的にメモリMMに記憶される。各スイッチSWは、接続されているドライブラインの番号を表すドライブライン番号nと検出ラインの番号を表す検出ライン番号mとをインデックスとして用いることにより特定される。ドライブライン番号nと検出ライン番号mとによって特定されるスイッチSWをスイッチSW(n,m)と記載する。スイッチSW(n,m)のオン・オフ状態は、メモリMMの記憶領域MA(n,m)に記憶される。
【0020】
電子楽器DMの電源が投入されると、スイッチスキャン制御部SCは、図3に示す、スイッチスキャン処理を実行する。スイッチスキャン制御部SCは、ステップS10にて、スイッチスキャン処理を開始する。次に、ステップS11にて、スイッチスキャン制御部SCは、メモリMMを初期化する。具体的には、すべての記憶領域MA(n,m)にオフ状態であることを表す「OFF」を書き込む。次に、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS12にて、ドライブライン番号nを初期化する(n=0)。次に、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS13にて、入出力端子IO0〜IO11を入力端子として機能するように設定する(図5:T1)。次に、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS14にて、15個のグループのうちの1つのグループに属するスイッチSW(具体的には、ドライブラインDSnに接続されているスイッチSW)を同時にアクティブ化する。つまり、出力端子OTnの電位をローレベル(本発明の第1電位)に設定し、その他の出力端子の電位をハイレベルに設定する(図5:T2)。最初、ドライブライン番号nが「0」に設定されているので、出力端子OT0の電位をローレベルに設定し、出力端子OT1〜OT14の電位をハイレベルに設定する。
【0021】
次に、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS15にて、所定の時間(例えば、4マイクロ秒)が経過するまで待機する。次に、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS16にて、前記アクティブ化したスイッチSWのオン・オフ状態を検出する(図5:T3)。つまり、検出ラインMK0〜MK11(入出力端子IO0〜IO11)の電位を検出する。検出した電位がローレベルであれば、その検出ライン(入出力端子)に接続されているスイッチSWは、オン状態であり、検出した電位がハイレベルであれば、その検出ライン(入出力端子)に接続されているスイッチSWはオフ状態である。
【0022】
次に、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS17にて、図4に示す、スイッチ状態判定処理を実行する。このスイッチ状態判定処理において、スイッチスキャン制御部SCは、前記アクティブ化したスイッチSW(つまり、ドライブラインDSnに接続されたスイッチSW)のオン・オフ状態と、メモリMMに記憶されているオン・オフ状態とを比較して、その結果に応じた処理を実行する。以下、スイッチ状態判定処理について具体的に説明する。
【0023】
スイッチスキャン制御部SCは、ステップS170にてスイッチ状態判定処理を開始する。次に、ステップS171にて、検出ライン番号mを初期化する(m=0)。次に、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS172にて、記憶領域MA(n,m)に記憶されているオン・オフ状態に応じて、次に実行する処理を決定する。ステップS172において、記憶領域MA(n,m)にオン状態であることを表す「ON」が記憶されている場合、ステップS173に処理を進める。一方、ステップS172において、記憶領域MA(n,m)にオフ状態であることを表す「OFF」が記憶されている場合、後述のステップS175に処理を進める。
【0024】
ステップS173において、スイッチスキャン制御部SCは、前記検出したスイッチSW(n,m)のオン・オフ状態に応じて次に実行する処理を決定する。前記検出したスイッチSW(n,m)の状態がオン状態である場合、ステップS174に処理を進める。一方、前記検出したスイッチSW(n,m)の状態がオフ状態である場合、ステップS175に処理を進める。
【0025】
ステップS174において、スイッチスキャン制御部SCは、スイッチSW(n,m)はオン状態と判定して、スイッチオン処理を実行する(図7A参照、図7B参照)。例えば、スイッチSW(n,m)がプライマリスイッチである場合には、スイッチSW(n,m)に対応する鍵KYのオンベロシティの計測を開始する。既にオンベロシティの計測を開始している場合には、その計測を続行する。また、例えば、スイッチSW(n,m)がセカンダリスイッチである場合には、スイッチSW(n,m)に対応する鍵KYが押鍵されたことを表すキーオン情報を電子楽器DM内に設けられたメインコンピュータに供給する。メインコンピュータは、キーオン情報によって特定される楽音の発音処理を開始する。既に消音処理を開始している場合には、その処理を続行する。そして、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS176に処理を進める。
【0026】
また、ステップS175において、スイッチスキャン制御部SCは、前記検出したスイッチSW(n,m)のオン・オフ状態に関わらず、スイッチSW(n,m)はオフ状態と判定して、スイッチオフ処理を実行する(図7A図7B参照)。例えば、スイッチSW(n,m)がセカンダリスイッチである場合には、スイッチSW(n,m)に対応する鍵KYのオフベロシティの計測を開始する。既にオフベロシティの計測を開始している場合には、その計測を続行する。また、例えば、スイッチSW(n,m)がプライマリスイッチである場合には、スイッチSW(n,m)に対応する鍵KYが離鍵されたことを表すキーオフ情報を電子楽器DM内に設けられたメインコンピュータに供給する。メインコンピュータは、キーオフ情報によって特定される楽音の消音処理を開始する。既に消音処理を開始している場合には、その処理を続行する。そして、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS176に処理を進める。
【0027】
スイッチスキャン制御部SCは、ステップS176にて、前記検出したスイッチSW(n,m)のオン・オフ状態を記憶領域MA(n,m)に書き込む。
【0028】
次に、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS177にて、検出ライン番号mをインクリメントする。次に、スイッチスキャン装置SSは、ステップS178にて、全ての検出ラインに関してスイッチ状態判定処理を実行したか否かを判定する。つまり、検出ライン番号mが「11」以下であれば、未処理の検出ラインが存在する(「No」)と判定し、ステップS172に戻る。一方、検出ライン番号mが「12」であれば、全ての検出ラインに関してスイッチ状態判定処理を実行済みである(「Yes」)と判定し、ステップS179にて、スイッチ状態判定処理を終了し、スイッチスキャン処理のステップS18に処理を進める。
【0029】
次に、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS18にて、全てのスイッチSWを非アクティブ化する(図5:T4)。つまり、出力端子OT0〜OT14の電位をハイレベルに設定する。この状態では、全ての検出ラインがハイインピーダンス状態であると見做すことができる。そして、ステップS18の実行前においてローレベルであった検出ライン(つまり、接続されたスイッチがオン状態であった検出ライン)の電位がプルアップ抵抗Rの作用により上昇し始める。次に、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS19にて、入出力端子IO0〜IO11を出力端子として機能するように設定する。次に、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS20にて、入出力端子IO0〜IO11の電位をハイレベル(つまり、オフ状態であるときの電位)に設定する(図5:T5)。次に、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS21にて、ドライブライン番号nをインクリメントする。
【0030】
次に、スイッチスキャン制御部SCは、ステップS22にて、ドライブライン番号nが「15」であるか否かを判定する。ドライブライン番号nが「14」以下である場合には「No」と判定して、ステップS13に戻る。一方、ドライブライン番号nが「15」である場合には、「Yes」と判定して、ステップS12に戻る。上記のように、ステップS11〜S22を繰り返し実行することにより、図6に示すように、スイッチSWは、それらが属するグループ順にアクティブ化される。つまり、入出力端子IO0〜IO11が入力端子として機能するように設定された状態で複数のスイッチSWのうちの第1のスイッチSWがアクティブ化され、検出ラインMK0〜MK11の電位が検出される。次に全てのスイッチSWが非アクティブ化され、入出力端子IO0〜IO11が出力端子として機能するように設定される。そして、入出力端子IO0〜IO11の電位がハイレベル(第2電位)に設定される。次に、入出力端子IO0〜IO11が入力端子として機能するように設定される。そして、前記第1のスイッチSWとは異なる第2のスイッチSWがアクティブ化された状態で検出ラインMK0〜MK11の電位が検出される。なお、本実施形態では、1つのドライブラインは、4.12マイクロ秒間だけアクティブ化される。そして、アクティブ化されたドライブラインが非アクティブ化される直前に、検出ラインMK0〜MK11の電位が検出される。また、ドライブラインが非アクティブ化されてから次のドライブラインがアクティブ化されるまでの間の時間は、1.68マイクロ秒に設定されている。本実施形態では、ドライブラインが15個設けられているので、1つのドライブラインがアクティブ化される周期は、87マイクロ秒である。
【0031】
上記のように構成したスイッチスキャン装置SSにおいては、アクティブ化するスイッチのグループを変更する際(つまり、ローレベルに設定するドライブラインを変更する際)、図5に示すように、一旦全てのスイッチを非アクティブ化した状態で、入出力端子IO0〜IO11を出力端子として機能するように設定し、その出力レベルをハイレベルに設定している。これにより、プルアップ抵抗Rの作用によってローレベルからハイレベルに向かって上昇中であった検出ラインを含む全ての検出ラインの電位が強制的にハイレベルに設定される。よって、従来のスイッチスキャン装置のように検出ラインの電位がオン状態の電位からオフ状態の電位へ到達するのを待つ必要が無い。したがって、本実施形態によれば、スイッチの走査速度を速くすることができる。
【0032】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0033】
例えば、上記実施形態では、スイッチSWは、鍵KYによって押圧されるように構成されているが、スイッチSWがハンマーHMによって押圧されるように構成されていても良い。また、本発明は、鍵盤装置KBに限られず、電子楽器DMが備える複数の可動部の動作をリアルタイムに検出するための装置に適用できる。例えば、電子楽器DMが備える複数の設定操作子によって押圧される複数のスイッチのオン・オフ状態を検出する装置として利用できる。
【0034】
また、例えば、上記実施形態では、接点式のスイッチSWを用いているが、これに代えて、鍵KYの押鍵深さ(揺動角度)に応じてオン・オフ状態が決定される光学式スイッチ、静電容量式スイッチなどを用いても良い。
【符号の説明】
【0035】
D…ダイオード、DM…電子楽器、DS0〜DS14…ドライブライン、FR…鍵フレーム、FS…固定接点、FS1…導電部、FS2…導電部、HM…ハンマー、IO0〜IO11…入出力端子、KB…鍵盤装置、KY…鍵、m…検出ライン番号、MK0〜MK11…検出ライン、MM…メモリ、MS…可動接点、MX…スイッチマトリクス、n…ドライブライン番号、OT0〜OT14…出力端子、PB…プリント配線基板、R…プルアップ抵抗、MA…記憶領域、SC…スイッチスキャン制御部、SS…スイッチスキャン装置、SW…スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8