(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記動作制御部は、前記画像信号の変化が有から無になった時点から、無の状態が所定の時間継続した場合に、前記モータの回転を停止又は反転させることを特徴とする請求項5記載の撮像レンズ調整方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された撮像レンズは、例えば監視カメラなどの撮像装置に用いられる。
監視カメラ用の撮像装置は、撮像素子の高画素化によって、近年、高精細な画像を撮像できるようになってきている。
それに伴い、焦点を、従来よりも高精度に合わせる必要が生じてきている。
そのため、フォーカスリングに設けられたウォームホイールにウォームを噛合させたウォームギヤを搭載して微調整を可能とし、さらにウォームをウォ―ムホイールに適切な力で付勢させると共にステッピングモータなどにより微小回動させて、より細かい焦点調整が可能となるようにしている。
【0005】
しかしながら、フォーカスリングは、回動範囲の両端位置で回動が規制されるため、フォーカスリングを回動させて両端位置に達したときにウォームギヤを過回動させると、動けないウォームホイールを、それに付勢噛合するウォームが無理に回動させようとして、歯同士が食い付いて動かなくなる機械的デッドロック状態となる場合がある。
ウォームギヤでデッドロックが生じると、モータを逆転させてもロックが解除されない場合が多いため、デッドロックを回避する工夫が必要となる。
【0006】
そのため、フォーカスリングの回動位置を測定するセンサを設け、回動範囲の両端位置近傍まで回動した場合にモータの回転を停止させる、などの構成が検討されるが、構造が複雑化し、部品点数が増えてコストアップになるなどの問題が生じ、必ずしも好ましい構造とは言えない。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、簡単な構造で安価にデッドロックの発生を防止できる撮像レンズ,撮像装置,撮像レンズ調整方法,及び駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成及び手順を有する。
1) 筐体と、
レンズと、
前記レンズを保持するレンズ保持部と、
前記筐体に対し、前記レンズの光軸まわりに回動して前記レンズ保持部を前記光軸上で移動させるウォームホイールと、
駆動歯車を有するモータと、
前記駆動歯車に噛合する歯車及び前記ウォームホイールのホイール歯に噛合するウォーム歯を有するウォームと、
前記筐体に固定された基部と、
前記モータ及び前記ウォームを保持し、前記基部に対し、連結部を介してのみ連結され
た保持部と、
を備え、
前記保持部は、前記連結部の弾性変形によって、前記ウォーム歯が前記ホイール歯に
対し弾性的に付勢して噛合する第1の位置と前記ホイール歯に対し非噛合となる第2の位置との間で
前記ホイール歯に対し離接する方向に弾性変位可能とされている撮像レンズである。
2) 1)に記載の撮像レンズと、
前記撮像レンズの結像を画像信号に変換して出力する撮像素子と、
を備えたことを特徴とする撮像装置である。
3) 2)に記載の撮像装置における前記撮像レンズの光学系を調整する撮像レンズ調整方法であって、
前記モータの動作を制御する動作制御部と、前記画像信号の変化を監視する画像監視部と、を備えた制御装置を用い、
前記動作制御部が、前記モータの所定一方向への回転を実行中に、前記画像監視部が、前記画像信号の変化が有から無になったと判定した場合に、前記動作制御部は、前記モータの回転を停止又は反転させることを特徴とする撮像レンズ調整方法である。
4) 筐体と、
回動体と、
前記筐体に対し、前記回動体を所定の軸まわりに回動させるためのウォームホイールと、
駆動歯車を有するモータと、
前記駆動歯車に噛合する歯車及び前記ウォームホイールのホイール歯に噛合するウォーム歯を有するウォームと、
前記筐体に固定された基部と、
前記モータ及び前記ウォームを保持し、前記基部に対し、連結部を介してのみ連結され
た保持部と、
を備え、
前記保持部は、前記連結部の弾性変形によって、前記ウォーム歯が前記ホイール歯に
対し弾性的に付勢して噛合する第1の位置と前記ホイール歯に対し非噛合となる第2の位置との間で
前記ホイール歯に対し離接する方向に弾性変位可能とされている駆動装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構造で安価にデッドロックの発生を防止できる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る撮像レンズ及び撮像装置を、好ましい実施例である撮像レンズ1及びそれを備えた撮像装置51により
図1〜
図12を用いて説明する。
【0012】
図1に示される実施例の撮像装置51は、監視用途に用いられるものであって、いわゆるドームカメラDCに搭載されている。
具体的には、撮像装置51は、ドームカメラDCが備えるパンチルト台D1に固定され、遠隔操作によるパン動作及びチルト動作により、任意の方向の画像を透明又は半透明の半球状のドーム部D2を通して撮像する。
撮像装置51及びドームカメラDCは、有線又は無線により監視者が操作する制御装置SGと通信可能に接続される。
【0013】
撮像装置51は、撮像レンズ1と、撮像レンズ1による結像を電気信号に変換する撮像素子Vと、を備えている。撮像レンズ1は、交換可能とされる場合もある。電気信号は、画像信号SN1として外部に出力される。
撮像レンズ1には、焦点調整のためのモータ8(後述)を含む複数のモータが搭載されている。各モータの動作は、パン動作及びチルト動作と共に、制御装置SGからの指令で制御される。
撮像装置51で撮像した画像は、画像信号SN1として制御装置SGに送出される。ここでは、画像は静止画像と動画像とを含むものとする。
【0014】
制御装置SGは、モニタSGa及び記録装置SGbなどを備える。また、モータ8などのモータの動作を制御する動作制御部SG1と、画像信号SN1の変化を監視する画像監視部SG2と、を有する。
制御装置SGは、入来した画像信号SN1に基づく画像をモニタSGaに表示させ、必要に応じて記録装置SGbに記録させる。
【0015】
図2は、撮像装置51に搭載された撮像レンズ1を示す外観斜視図である。
図2に矢印で示されるように、被写体側を前方とし、その反対側の撮像素子V側を後方とする。
【0016】
撮像レンズ1は、バリフォーカルレンズである。
撮像レンズ1は、光軸CL1に対して直交する方向に突出するフランジ2aを有する筐体2と、フランジ2aよりも前方側で、筐体2に対して光軸CL1を中心に回動する環状の前枠部3と、焦点調整用のレンズL1を保持して前枠部3に内嵌し、前枠部3の回動に連動して光軸CL1方向に前後移動することで焦点調整を行う移動枠部4と、を有して構成されている。すなわち、移動枠部4がレンズL1を保持するレンズ保持部に該当し、前枠部3が焦点調整を行うためのいわゆるフォーカスリングに該当する。レンズ保持部は、光軸CL1まわりに回動する回動体である。
【0017】
前枠部3の外周面3aには、円弧状のウォームホイール5が、ねじN1によりその両端の二箇所で固定されている。ウォームホイール5としては、周方向に閉じた円盤状や円環状であるものに限定されず、この例のように、円弧状を呈するものも便宜的に含む。
前枠部3の回動範囲、すなわち、焦点調整のために回動する角度範囲は、約90°とされている。
従って、ウォームホイール5は、少なくともその角度範囲にホイール歯5aが形成されている。ホイール歯5aは、後述するウォーム歯7bと噛合する。
筐体2には、周方向において、ウォームホイール5が取り付けられている側に、ギヤベース6が取り付けられている。
【0018】
次に、ギヤベース6について
図3〜
図5を主に参照して説明する。
図3〜
図5は、ギヤベース6の単体をそれぞれ異なる方向から見た斜視図である。
具体的には、
図3は、
図2に概ね対応する方向から見た図であり、
図4は、
図2における左手奥側から見た(矢視Y1方向)図であり、
図5は、
図2の真裏側下方側(
図4の矢視Y2方向)から見た図である。
図3〜
図4では、
図2との対比理解容易のため、撮像レンズ1に装着した状態での光軸CL1を併記してある。
【0019】
ギヤベース6は、筐体2に対して係合する係合基部6aと、係合基部6aに対して弾性的に変位可能に一体形成されたウォーム保持部6bを有している。このウォーム保持部6bには、ウォーム7とウォーム7を回転駆動するモータ8とが取り付けられている。
このギヤベース6は、樹脂で形成されている。好適な樹脂として、例えば、PC/ABSアロイがある。
モータ8は、ギヤードステッピングモータであり、薄い略蒲鉾状の外観を呈する。
係合基部6aとウォーム保持部6bとは、連結部6cにおいて連結されている。
【0020】
係合基部6aは、前枠部3の外周面に沿う円弧部6a1を有する板状のベース部6a2と、ベース部6a2の縁部から光軸CL1に沿って延出した二つの壁部6a3,6a4と、を有している。
二つの壁部6a3,6a4は、円弧部6a1に沿って離隔して形成されている。
壁部6a3は、ベース部6a2に対し、光軸CL1の後方側にのみ延出している。壁部6a4は、ベース部6a2に対し、光軸CL1の前方側と後方側との両方に延出している。
【0021】
一方の壁部6a3には、光軸CL1のある側に向かって屈曲するL字状の爪部6a5,6a6が設けられている。爪部6a5,6a6は、筐体2のフランジ2a等に形成された被係合部(図示せず)に係合するようになっている。
他方の壁部6a4には、ネジ孔6a7が形成されている。
【0022】
係合基部6aは、壁部6a3,6a4の内面が、筐体2の外周面に概ね沿う形状に形成されている。これにより、係合基部6aは、二つの爪部6a5,6a6を筐体2の被係合部に係合させると、筐体2に抱きつくように概ね安定保持される。
爪部6a5,6a6を被係合部に係合させた状態で、タップネジN2を、ネジ孔6a7を介して筐体2のフランジ2aに設けられた下穴(図示せず)に螺着させることで、係合基部6a、すなわち、ギヤベース6は、筐体2に一体的に固定される。
係合基部6aのベース部6a2には、開口部6a8が形成されている。
【0023】
連結部6cは、壁部6a4に設けられている。具体的には、連結部6cは、壁部6a4の内面から外面に向かって切り込まれたスリット部6a4aが設けられた部位である。スリット部6a4aにより、連結部6cにおける壁部6a4の厚さt1(
図3参照)が、他の部位よりも十分薄くなっている。
【0024】
厚さt1は、その設定において、実用上変形しない剛性を有して形成されるベース部6a2の厚さ(例えば
図5における部位P1位置での厚さ)に対し、弾性変形が容易となる程度の薄さとする。
具体的には、例えば、ベース部6a2の厚さの0.5〜0.8倍とする。
これにより、係合基部6aに対し連結部6cでのみ連結されているウォーム保持部6bは、係合基部6aに対して弾性的に変位容易となっている。この変位の詳細については後述する。
【0025】
ウォーム保持部6bは、連結部6cの近傍に、モータ8を収容する凹部6b1を有するモータ収容部6b2と、モータ収容部6b2からベース部6a2の前方側の面に沿って概ね直状に延びる腕部6b3と、を有して形成されている。
腕部6b3は、中間部においてその延在方向に対して直交し光軸CL1に接近する方向に突出したウォーム支持部6b3aと、先端部(モータ収容部6b2から最も遠い側)においてウォーム支持部6b3aと対向するように突出したウォーム軸支部6b3bと、を有している。
【0026】
ウォーム支持部6b3aは、光軸CL1側から切り込まれたU字状の切り込み部6b3a1を有している。
また、切り込み部6b3a1の奥側は、入口側の幅t2よりも若干大きな内径Daなる円弧部6a3a2が形成されている。
ウォーム軸支部6b3bは、ウォーム支持部6b3aと対向する面に開口する孔6b3b1を有している。
円弧部6a3a2と孔6b3b1とは、軸線CL2を共通軸線として同心に形成されている。
【0027】
ウォーム保持部6b3aには、軸線CL2に沿って凹部6b1から離れる方向に突出する突出筒部6b3cが形成されている。
ウォーム保持部6b3aには、後方側に突出する柱部6b3dが形成されている。柱部6b3dは、重力以外の力がかかっていない自然状態で、ベース部6a2に形成された開口部6a8内に進入する長さを有し、柱部6b3dと開口部6a8の内面との間に自然状態で所定の隙間が得られるよう、大きさや位置が設定されている。
【0028】
次に、ギヤベース6にウォーム7及びモータ8を取り付けたギヤアッセンブリ66について、
図6を参照して説明する。
図6は、ギヤベース6に、ウォーム7とモータ8とを取り付けたを示す三面図である。具体的には、
図6(a)が、ギヤアッセンブリ66を光軸CL1の前方からみた平面図であり、
図6(b)が、ギヤアッセンブリ66を光軸CL1側からみた正面図であり、
図6(c)が、
図6(b)の左方側からみた左側面図である。
【0029】
ウォーム7は、シャフト部7aと、シャフト部7aの中央部分に形成されたウォーム歯7bと、シャフト部7aの一端側に設けられた平歯車7cと、を有している。
シャフト部7aの他端側は縮径となる段付きで形成され、先端には小径部7a1が形成されている。小径部7a1の直径は、ウォーム軸支部6b3bの孔6b3b1の内径に対し若干小さく形成されている。
シャフト部7aの平歯車7c側には、小径なる首下部7a2が形成されている。首下部7a2の直径は、ウォーム支持部6b3aの円弧部6b3a2の内径とほぼ等しくなっている。
【0030】
ウォーム7は、小径部7a1を、ウォーム軸支部6b3bの孔6b3b1に挿入しつつ、首下部7a2を、ウォーム支持部6b3aの切り込み部6b3a1を広げながら円弧部6a3a2に嵌着させることで取り付けられる(
図4も参照)。
取り付けた状態では、シャフト部7aの大径なる部分の軸線CL2方向の長さが、ウォーム支持部6b3aとウォーム軸支部6b3bとの間の距離に対して微小クリアランスで設定されているので、ウォーム7の軸線CL2方向の遊び(移動)はほとんどない。
【0031】
ギヤベース6にウォーム7を取り付けた後に、モータ8を、
図6(a),(b)の左方側から凹部6b1に進入させ、接着剤等で固定する。
モータ8は、一側面側の軸線CL3上に出力軸が配置され、出力軸には平歯車7cよりも少ない歯数で平歯車7cに噛合可能な、駆動歯車としてのギヤ8aが取り付けられている。
ギヤアッセンブリ66においては、モータ8が凹部6b1内の所定位置に進入装着された際に、ギヤ8aは、ウォーム7の平歯車7cに噛合するようになっている。そこで、モータ8の凹部6b1への進入は、ウォーム7をギヤ8aに噛合するよう回転位置を調整しながら行う。
ギヤアッセンブリ66において、ウォーム7は、ギヤ8aと平歯車7cとの噛合により、モータ8の回転方向に応じた回転方向で減速して回転する。
尚、ギヤべース6へのウォーム7及びモータ8の取り付けは、モータ8を先に取り付けて、後からウォーム7を取り付ける手順であってもよい。
【0032】
ギヤアッセンブリ66では、モータ8とウォーム7とは、共にウォーム保持部6b側に取り付けられている。
従って、係合基部6aに対し、モータ8とウォーム7とは、一体的に変位する。
【0033】
このギヤアッセンブリ66の構成とウォーム保持部6bの変位とは、
図7及び
図8において模式的に示される。
図7は、
図6(a)の平面図に相当する模式図であり、
図8は
図7の左側面図に相当する模式図である。
【0034】
図7(a)の平面図において、ウォーム保持部6bは、係合基部6aに対して、薄肉とされた連結部6cのみで連結されている。また、ウォーム保持部6bは、その一端部が連結部6cに連結されている。
従って、平面視において、ウォーム保持部6bは、係合基部6aに対し実質的に片持ち支持で連結されている。これにより、少なくとも連結部6cを概ね中心とする光軸CL1に直交する方向の弾性的な回動変位(矢印DR1)が小さい力で可能になっている。
【0035】
一方、
図8の左側面図においても、ウォーム保持部6bは、薄肉とされた連結部6cのみで係合基部6aに連結されている。
従って、側面視においても、ウォーム保持部6bは、係合基部6aに対し実質的に片持ち支持で連結されている。これにより、少なくとも連結部6cを概ね中心とする光軸CL1を含む平面内での弾性的な回動変位(矢印DR2)が可能になっている。
【0036】
ギヤベース6では、スリット部6a4aの形成方向が光軸CL1に沿う方向であることから、連結部6cの、
図7に示される光軸CL1に直交する方向の弾性変形(曲げ変形)の方が、
図8に示される光軸CL1を含む平面内での弾性変位(捩れ変形)よりも行われ易いが、変形が容易になされる点では同様である。
【0037】
また、ギヤアッセンブリ66は、
図6に示された自然状態で筐体2に取り付けた使用状態で、ウォーム歯7bがウォームホイール5のホイール歯5aに若干干渉するようになっている。すなわち、使用状態でウォーム歯7bは、ホイール歯5aを弾性的に付勢しつつ噛合している。
【0038】
図9は、使用状態におけるウォームホイール5とウォーム7との噛合部分を示した斜視図である。
上述から明らかなように、ウォーム7は、連結部6cの弾性変形により、光軸CL1に直交しウォームホイール5から離れる方向の変位(
図9における矢印DR3方向:
図7における矢印DR1の一方方向に相当)と、光軸CL1に沿ってウォームホイール5から離れる前後方向の変位(
図9における矢印DR4方向:
図8における矢印DR2に相当)と、が同時に可能となる。
すなわち、
図9における斜め上方への移動(矢印DR5参照)や斜め下方への移動(矢印DR6参照)である、光軸CL1に直交しその光軸CL1から離れる方向の二次元的な変位が可能となっている。
換言するならば、連結部6cは、ウォーム保持部6bが、光軸CL1に対する直交方向及び平行方向のそれぞれに独立して変位可能となるように変形する。
【0039】
次に、デッドロックの回避動作について
図10を参照して説明する。
図10は、ギヤアッセンブリ66を、筐体2に取り付けて、ウォーム歯7bをウォームホイール5に噛合させた使用状態を詳細に示す平面図である。
図10に示された状態は、モータ8を駆動してウォーム7を右回り(矢印DR7参照)に回動させ、ウォーム歯7bに噛合したウォームホイール5を光軸CL1まわりに時計回り方向(矢印DR8方向)に回し切った状態が示されている。
【0040】
この状態で、ウォーム7をさらに右回りに回動させると(過回動させると)、ウォームホイール5の回動は禁止されているから、ウォーム歯7bにはホイール歯5aを乗り上げる方向の力が働く。
ここでウォーム保持部6bが弾性的に変位可能になっていなければ、ウォーム7のウォーム歯7bがホイール歯5aに食い付いてしまうところ、実施例のギヤアッセンブリ66では、ウォーム保持部6bがホイール歯5aから離れる方向に弾性的に変位可能になっているので、ウォーム保持部6bは、
図10に一点鎖線で示されるように非噛合となる位置まで逃げるように移動する。
そのため、ウォーム7は、過回動している間、ウォーム歯7bがホイール歯5aの山を乗り越えてまた谷に落ちる、という実線と一点鎖線とで示される噛合位置と非噛合位置との間の往復移動(矢印9及び矢印10)を繰り返す。
これにより、ウォーム7が過回動しても、ウォーム歯7bがホイール歯5aに食い付くことはなく、デッドロックが回避される。
【0041】
ギヤベース6では、ウォーム保持部6bの逃げ方向が、一方向の一次元的な逃げだけでなく、光軸CL1に直交する方向及び光軸CL1に沿う方向とで形成される仮想平面で設定される方向で逃げることができる。この仮想平面は、
図9のける矢印DR3及び矢印DR4で規定される面である。
そのため、ウォーム歯7bとホイール歯5aとの摺動状況が如何なる場合にも、ウォーム歯7bは、回動が許容されたまま、回動が禁止されたホイール歯5a面上を摺動して良好に逃げることができ、より確実にデッドロックが回避される。
【0042】
上述の撮像レンズ1及び撮像装置51によれば、ギヤベース6を、係合基部6aとウォーム保持部6bとを有し、両者を二次元的に相対変位可能な形状として形成している。これにより、簡単な構造で部品点数が増えることがなく安価にデッドロックの発生を防止することができる。
また、ウォーム保持部6bには、ウォーム7とその駆動源であるモータ8とを共に搭載しているので、相対変位のときに回動軸がずれることがないので、動作が極めて安定する。
【0043】
ウォーム保持部6bの変位に伴い、柱部6b3dは開口部6a8の内側空間内を変位する。この変位における変位量が、予期せぬ理由(異物の介入など)により所定値を超える場合には、柱部6b3dが開口部6a8の内面に当接してウォーム保持部6bの所定値以上の変位を防止する。すなわち、連結部6cが過剰に変形して破壊するのを防止する。これは、修理により復帰可能なデッドロックよりも復帰不可となる破壊の防止を優先とする措置である。
【0044】
係合基部6aとウォーム保持部6bとは、上述のように一箇所の連結部6cのみで連結されているものに限定されない。
ウォーム保持部6bの一端側が、複数の独立した連結部6cを経て係合基部6aに連結されていてもよい。
【0045】
図11には、ウォーム保持部6bが、その一端側において二つの独立した単連結部である連結部6c1,6c2を介して係合基部6aに連結されている場合の構造モデルが示されている。
連結部6c1,6c2は、互いに直交する方向に延在する薄肉で形成されている。これにより、ウォーム保持部6bは、連結部6c1によって
図11の左右方向(矢印DR9)に変位可能とされ、連結部6c2によって
図11の上下方向(矢印DR10)に変位可能とされている。
従って、ウォーム保持部6bは、係合基部6aに対して略二次元的に変位可能となっている。
少なくともこのモデルに該当する構造は、本発明に含まれ簡単な構造で安価にデッドロックの発生を防止できる。
【0046】
次に、ウォームホイールが回動端に達したときの制御装置SGの制御について、フロー図である
図12を参照して説明する。撮像装置51の焦点調整は、制御装置SGがモータ8を駆動して前枠部3を回動させることで実行される。
【0047】
まず、制御装置SGにおいて、焦点調整のために、動作制御部SG1がモータ8を駆動し、ウォーム7及びウォームホイール5を介した前枠部3を回動させている間(Step1)、画像監視部SG2は、画像信号SN1の変化を常に監視している。
【0048】
この監視は、モータ8の駆動中に画像信号SN1が変化しているか否かを判定するものである(Step2)。
ウォームホイール5が回動していれば、前枠部3も回動して焦点位置が移動するため、画像の先鋭度が変化する。すなわち、画像信号SN1が変化する。
この場合、画像監視部SG2は、焦点調整が正常に行われていると判断する(Yes)。
【0049】
逆に、モータ8の駆動中に、監視中の画像信号SN1の変化が止まったら、ウォームホイール5が回動していない、すなわち、回動端に達したか、或いはごみ詰まり等の偶発的な回動規制がなされたことになる。
そこで、画像監視部SG2は、(Step2)において画像信号SN1の変化が止まったら(No)、変化のない時間(状態)が所定時間経過(継続)したか否かを判定する(Step3)。
【0050】
(Step3)の判定で所定時間経過していなければ(No)、(Step2)へ戻り、画像信号SN1の変化の監視を継続する。回動規制が偶発的な場合は、自然に回動が再開する場合も想定される。その場合(Step2)で(Yes)の判定となるので、動作制御部SG1はモータ8の駆動を継続する。
【0051】
(Step3)の判定で所定時間経過したら(Yes)、画像監視部SG2はウォームホイール5が回動端に達したと判断する。その後、この判断結果に基づき、動作制御部SG1は、モータ8の駆動を停止又は逆転させる(Step4)。
この(Step4)でモータ8を停止させるか逆転させるかは、予め作業者等が設定しておくか、別の判断により選択するようにしてもよい。
【0052】
このように、制御装置SGは、モータ8を駆動中にウォームホイール5が回動端に達したか否かを、画像信号SN1の変化に応じて判断し、モータ8の回転を停止又は反転させる制御を行う。
従って、ウォームホイール5のホイール歯5aとウォーム7のウォーム歯7bとのデッドロックを回避するウォーム7の往復動作を、必要以上に継続させることがない。そのため、歯の不要な摩耗等が抑制でき撮像レンズ1の寿命が短くなることはない。
【0053】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてさらに変形例としてもよいのは言うまでもない。
【0054】
連結部6cを設ける位置は、上述の例に限定されない。
ウォーム7及びモータ8とを保持したウォーム保持部6bを、係合基部6aに対して二次元的に変位可能とするものであれば、連結位置は限定されない。
連結部6cを、一軸方向の変位を担う単連結部である連結部6c1とその一軸に傾斜又は直交する他軸方向の変位を担う単連結部である連結部6c2とで構成する場合も、各連結部6c1,6c2の設定位置は上述の例に限定されない。
ドームカメラDCは、撮像装置51のパン動作及びチルト動作を遠隔操作するものに限定されない。例えば、パンチルト可変構造を有し、ドームカメラ敷設時に、作業者が手で撮像装置51の姿勢をパン方向及びチルト方向に調整し、調整後に固定するタイプであってもよい。
【0055】
上述した構成及び手順は、焦点調整をするものに限定されない。光軸CL1上に移動させるレンズL1をズーム調整用等のレンズとして光学系の調整をするものであってよい。
さらに、本発明の技術的思想は、光学系の調整に限定されず、ウォームギヤを用いて直動体や回動体などの被移動体を移動させる駆動装置及び被移動体を移動させて行う調整方法に適用可能である。