【課題を解決するための手段】
【0041】
この技術的効果は、自動二輪車のブレーキディスクロータであって、対面する環状の摩擦面、径方向外側面および径方向内側面、径方向外側面から径方向内側面へ延びる環状体を内面で冷却するための内通し冷却管路を有する環状体であり、この環状体は、少なくとも2層で作製され、環状体の前記少なくとも2層は、互いに堅固に接合され、この2層の各層は、完全部品としてあらかじめ別々に作製された部材であり、環状の摩擦面は、少なくとも部分的に、環状体外層の外側に面する側を形成するのに対し、環状体外層の内側に面する側は、隣接層に直接接触する領域および隣接層とは接触しない領域を有し、前記隣接層と直接接触する外層領域は、層の前記剛性接合に対して働き、各々の内通し冷却管路は、少なくとも部分的に、一方の外層の隣接層とは接触しない領域、およびもう一方の外層の隣接層とは接触しない領域によって形成される、ブレーキディスクロータを提供することによって達成される。
【0042】
特許請求する技術対策によれば、内冷却管路の垂直壁は、ロータの外層であり、内冷却管路の側壁は、ロータの外層の傾斜領域(これは、ブレーキロータが2層だけで構成され、この2層が互い隣接している場合のみの可能性である)、または隣接層とは接触しない平坦中間層にある通しスロットの側壁のいずれか、および、提供された場合は、外層の傾斜領域である。そのため、以下に詳述する好適な実施形態では、ベンチレーテッド型ブレーキロータは、2つまたは3つの素子、すなわち2つの外層および、可能ならば1つの平坦中間層で構成され、この平坦中間層によって、中間層が他の形状(平坦ではない)である場合よりもディスクの局所的な剛性が最大になるとともに、ロータの中心面に対してロータが対称になる。
【0043】
内通し冷却管路の得策な立体形状パラメータは、この技術対策向けのパラメータを含めて上記に記載している。特許請求する本発明によれば、内通し冷却管路は、直線状に作製されることができ、ロータの径方向外側面から径方向内側面へ本質的に径方向に延びることができる。しかしながら、本発明の好適な実施形態では、管路方向は、径方向とは異なっていてもよい。熱交換をさらに向上させることを目的に、内通し冷却管路の軸は、ロータの回転軸からこれに対応する管路軸の点へ向かう半径ベクトルに、ある角度をもって向けられることができ、これによって、管路の効果的な長さが実際に長くなると同時に、流入空気流との熱交換が増大することにつながる。管路は、非直線状に作製されることができ、例えば、ロータの回転軸までの距離に比例してロータの周速度が変動することを計算に入れて、湾曲していてもよい;内通し冷却管路が湾曲状に作製される場合、この管路の長さはさらに長くなる。その上、管路の断面(横断寸法)は、周期的な変化を含めて、管路の長さに応じて様々であってよい。
【0044】
特許請求する技術対策の一実施形態によれば、ロータは、1つの部品としてあらかじめ別々に作製された2つの部材(層)で構成され、各々の部材は外層であり、この2つの外層は、互いに隣接する層であり、したがって、内冷却管路は、隣接層とは接触しない2層からなるこのような領域で完全に形成される。
【0045】
自動二輪車のブレーキディスク用のこのようなロータの可能な実施形態によれば、2つの外層のうちの少なくとも1つの外層には、実質的にU字型で径方向外側面から径方向内側面へ延びる素子が使用され、各々の層が、層の一方の側に凹部、層のもう一方の側に凸部を形成し、層の各側にある凹部および凸部は、層の周方向に沿って交互に配列される。前記外層の外側に面する側の凸部すべてが摩擦面を形成し、外層のこの側の凹部すべてが外通し冷却管路を形成して、ロータの環状体の外側を冷却し、この外層の内側に面する側にある凸部すべてが、もう一方の外層と接合するために隣接層と接触する前記面として働き、外層のこの側の凹部すべてが隣接層とは接触しない前記領域として働き、この各々の凹部がもう一方の外層の隣接層とは接触しない領域とそれぞれ一緒になって、各々の内通し冷却管路を形成する。
【0046】
これ以降、前記層を「実質的にU字型の素子を有する層」と呼ぶ。
【0047】
ロータの好適な実施形態によれば、もう一方の外層は、前記実質的にU字型の素子を有する層と同一方法で作製され、いずれの外層も互いに対して隣接層を形成し、前記同一層は、好ましくは、隣接層で互いに対面する凹部が互いに一列に配列されて内通し冷却管路を形成し、隣接層で互いに対面する凸部が互いに堅固に接合される。
【0048】
ロータの前記実施形態によれば、隣接層で互いに対面する凸部の剛性接合は、はんだ付け、接着、溶接(抵抗溶接、特に抵抗スポット溶接など)および力による閉鎖(例えばリベット接合)によって行われることができる。層材料の代表厚みは1.5mmであり、ロータの周方向への摩擦面の代表横断寸法は5〜9mmである(内通し冷却管路の幅は約5mm、高さは約2〜2.5mm、層を堅固に接合する領域の周方向の幅は3.5〜6mm。特許請求する技術対策の筆者が得た数字のシミュレーションおよび結果が示す通り、ブレーキの動作過程で生じるロータの材料への応力は、このような立体寸法で疲労限界を超えることはなく、ブレーキパッドから圧力がかかる方向(すなわち、摩擦面に対して垂直に)への摩擦面の変位は、3〜10ミクロン以下であり、この変位は、ブレーキパッドの弾性によって相殺される。
【0049】
実質的にU字型の素子を有する層の凸部および凹部の(周方向の)幅、および凸部領域および凹部領域の層材料の厚みは、互いに異なっていてもよく、前記層のパラメータの最適な値は、ブレーキパッドの動作過程で層の摩擦面に起こる許容範囲内の応力レベルおよび変形レベルによって算出される。特に、(全体的にロータの摩擦面を形成する)ロータの外側凸部領域の層材料の厚みは、好ましくは1.3〜1.6mmとすることができ、(全体的に層間の剛性接合を担う)外側の凹部領域の層材料の厚みは、1.1〜1.5mmとすることができ;凸部および凹部の側壁の厚みは、1.2〜1.5mmであり;これ以外の厚みの組み合わせも可能である。同じように、外側凸部の(周方向の)幅は、好ましくは約6mmであり、外側凹部の幅は約4mmであり、凸部および凹部の寸法がこの比率であれば、摩擦面積の占有率は、ブレーキパッド面積の50%を遙かに超え、これによって、ブレーキパッドにかかる負荷が低減される。凸部および凹部の側壁のロータ軸に対する傾斜角度は、好ましくは5〜10°であり、この傾斜角度は、ブレーキシューの圧力がかかった状態で摩擦面に少量の変形が起こり、何よりもまず層の側壁から平坦面にかけての領域にかかる応力を制限するという条件によって算出され;半径が好ましくは0.3〜0.5mmである面取り部をこれらの場所に作ってもよい。側壁の前記傾斜角度は、機械加工(ミリング)、または圧力処理(パンチング)のいずれかによって層を作製するときの最適な角度に近い角度でもある。
【0050】
層素子の前記パラメータ、何よりもまず摩擦幅および接合面ならびに側壁厚は、周方向に変動してもよい。特に、本発明者らが制動プロセスの数字のシミュレーションによって発見した通り、最大の応力は、ロータがブレーキディスクキャリアに接合している場所(前輪ブレーキロータ用)またはロータを後輪に設置する点(後輪ブレーキロータ用)に近い管路で現れる。前記応力の増大を相殺する目的で、各々の(とりわけ負荷のかかった)凸部および凹部の側壁の厚みを、層の周に応じた平均値に比して好ましくは15〜25%増大してもよい。
【0051】
ロータの前記実施形態によれば、接合した材料の全体の厚みは、ロータ外側の凹部領域の各層からなる材料の2つの厚みに等しく、好ましくは2.6〜3.2mmである。前記厚み部分の接合は、特に、抵抗スポット溶接などの抵抗溶接によって、効果的かつ生産性の高い状態で作製されることができる。その上、この実施形態で、抵抗(スポット)溶接による層の剛性接合を用いる選択肢には、溶接過程で局所的な加熱を受けるロータ領域がブレーキパッドと接触しない、すなわち摩擦面が熱作用を受けないという利点がある。その上、ロータの接合領域は、摩擦面から離れているため(例えば、ロータ全体の厚みが5.2mmで、接合材全体の厚みが3.0mmの場合、摩擦面までの距離は各側で1.1mmである)、力による閉鎖(リベット)で剛性接合を行うことができる。
【0052】
実質的にU字型の素子を有する外層を備えたロータの好適な実施形態によれば、好ましくは各々の外通し冷却管路の壁は、展開面で作製され、かつ/または熱交換/伝熱を容易にするコーティングを備える。
【0053】
前記実施形態は、制動プロセスで加熱されるロータの冷却率をさらに上昇させるものである。この結果は、平滑面の周りを流れる場合に比して、流入空気流で展開(粗)面の熱交換率が上昇することによって達成される([1]の第296頁;[4]:Zhukauskas、A.A.「Convective Transfer in Heat−Exchangers(熱交換器に起こる対流伝熱)。M.:Nauka出版社、1982年、第472頁;第163頁)。これに応じて、各々の外通し冷却管路に展開面を備えることが好ましく(これらの管路の面は、管路の側壁および「底」で構成されている)、この展開面は、様々な方法、例えば、機械加工(特に、鋼線ブラシを用いたもの)、ショットブラスト(割型成形または注型成形で)、サンドブラストなど、または化学的方向(エッチング)によって作製することができる。外通し冷却管路の壁面の好ましい荒さは、20〜100ミクロンであり、この場合の荒さは、熱交換度を決定する境界層プロセスで重要な効果を発揮する。
【0054】
外通し冷却管路に対する展開面は、組み立てたロータを処理するか、または組み立てる前にロータの構成部品(層)を処理するかのいずれかの方法で作製されることができ、層が例えば接着またははんだ付けによって堅固に接合されている場合は、後者が好ましい。その上、内通し冷却管路の展開面によって、これらの管路内の熱交換率は、さらに上昇する。
【0055】
展開面を有する外通し冷却管路を作製すると、このような管路の全面積が大きくなるため(換言すれば、最初の「立体」面の単位当たりの伝熱係数が高くなるため)、ロータ全体の冷却率が大幅に上昇する。ロータの好適な実施形態によれば、例えば、フロントブレーキディスクの場合、外通し冷却管路の最初の「立体」面積が(荒さに関係なく)、約300cm
2であっても、この面積は、従来のロータの面積約600cm
2に匹敵するものである(平坦な立体形状である従来の一体型ロータの場合、空気との熱交換に必要な面積Sを、式S=2M/ρλに従って推定することができ、式中Мはロータ重量、ρはロータの材料の密度、λは厚みである)。粗面の冷却率は、平滑面の冷却度の1.5〜2倍の高さであるという事実があるため、外通し冷却管路の面を展開することによってのみ、従来の一体型ロータの通常の冷却率に匹敵するロータの冷却率を達成することができる。
【0056】
本発明による外通し冷却管路の面を展開できるかどうかは、この面がブレーキパッドと接触していないという事実に関係している。なぜなら、パッドとの接触領域は、自動的に平滑になるからである。その上、展開(粗)面は、通常黒度が著しく高く、熱放射によっても冷却される。放射による伝熱は、ロータが大幅に加熱されたときに(500°Cで、黒体の面からの放射力が2W/cm
2である場合)重要な役割を果たすことができるが、平滑な(研磨された)ステンレス鋼の面の黒度は、ロータが動作する温度では0.25〜0.3を超えることはない。本発明による外通し冷却管路の面をさらに処理して、面の黒度および放射による伝熱を増大させてもよい。面の黒度の増大は、例えば、面の(荒さを出す)無光沢仕上げ、および相当薄いコーティングの塗布(典型的な厚みは数ミクロン)または塗装(例えば、塗料層の厚みが約20〜30ミクロンのときの無光沢塗装)によって達成でき;コーティング、または塗装のいずれかを、平滑面だけでなく粗面にも塗布してもよい。その結果、黒度が1に近い場合は、流入空気流がない状態でも熱放射がある場合(自動二輪車が停止しているとき)に限って、激しく加熱されたロータを1秒当たり最大2度の割合で冷却でき、この割合は対流式冷却に匹敵する可能性がある。
【0057】
前記ロータの実施形態で、内通し冷却管路および外通し冷却管路、とりわけ展開面を有する外通し冷却管路を両方使用することで、ロータに対して最大の冷却率が確保され、これに応じて、ロータが最低温度に保たれる。加熱の度合いが最小の状態で動作することで、ロータの摩擦面およびブレーキパッドの面にかかる圧力の増大を相殺することができ、この増大は、両者が接触する有効面積の縮小と関係がある。
【0058】
実質的にU字型の素子を有する層は、例えば、自動二輪車のブレーキディスク用に組み立てたロータの層全体の高さ以上の厚みを有するシート、すなわち、Δ/2以上の厚みを有するシートを機械加工(ミリング)することで作製されることができ、式中Δは、組み立てたロータ全体の厚みである(下記も参照)。その上、前記層は、生産的な形成方法、例えば、ロータを組み立てるために準備した層の材料の厚みとおおまかに一致する厚みである(約1.5mm)薄型シースシートのソートパンチングによって作製されることができ、この形成プロセスでは、高さが好ましくは約1.2mmの凸部および凹部を形成しなければならない(組み立て後の内通し冷却管路の高さを好ましくは2〜2.5mmにするため。
【0059】
そのため、特許請求する技術対策を用いたロータの一実施形態によれば、このロータは、実質的にU字型の素子を有する2層で構成され、内通し冷却管路の高さは、次式によって算出され:
h=2×(H−d) (3)
式中、符号は式(2)で使用した符号と同じものであり、Δ=2Нである。これはつまり、実質的にU字型の素子を有する層を形成するようになっているソースプレートの厚みが1.5mmである場合、高さ2mmの内冷却管路を得るためには、各外層の全体の高さをН=2.5mmにする必要があるということである。これは事実上、内冷却管路の高さと厚みが同じである自動二輪車のバージョンで公知のロータの実施形態による公知のロータ[3]における中間層の側壁の高さに比して、層の側壁の半分の高さ(長さ)(Н−d=1mm)ということである。これに応じて、公知のロータ[3]に比して、半分の度合いの変形が必要であり、これによって実質的にこの素子の作製技術が簡易になる。
【0060】
特許請求する技術対策では、同じブレーキパッドの圧力で側壁の長さが半分になるため、最も負荷のかかる輪郭領域には、公知のベンチレーテッド型ロータ[3]に比して著しく少ない応力しかかからなくなる。これは、アームおよび印加される力のモーメントが2倍の場合に剛性が同じであれば(特許請求する技術対策と[3]のいずれの場合も同じ側壁厚であれば、「波形輪郭」の側壁の剛性は同じ)、応力は2倍異なり、変位は8倍異なるということが条件である。したがって、[3]によるベンチレーテッド型ロータの実施形態では、波形輪郭の側壁の厚みを増大する必要があり、その結果、公知のロータ重量は大きくなる。
【0061】
しかしながら、特許請求する技術対策の前記実施形態(実質的にU字型の素子を有する2層)による変形度をさらに小さくすることは、実現するのが困難である可能性があるため、ロータの一実施形態によれば、実質的にU字型の素子を有する外層の間に中間層が設けられ、この中間層は、各々の外層に対する隣接層であり、平坦に作製され、外層の径方向外側面から径方向内側面へ延びる通しスロットを有し、各々の外層は、隣接層とは接触しない、それぞれの外層領域と一緒になって、それぞれの内通し冷却管路を形成し、前記平坦中間層は、外層の内側面を超えて、かつ/または外層の外側面を超えて径方向に外側に突出する。
【0062】
このような場合、中間層の好適な厚みが約1mmであり、実質的にU字型の素子を有する層のシースシートの好適な厚みが約1.5mmであれば、ロータを組み立てた後に必要な厚み(通常およそ5mm)を得るために、実質的にU字型の素子を有する層を形成するための変形度を低くすることができ、すなわち、凸部および凹部の高さをさらに半分に(約1mmから約0.5mmに)減らすことができ(内通し冷却管路の高さHは2mmのまま)、これに応じて厚み約1.5mmのソースプレートの変形を、生産性およびコスト効果の高い生産プロセスであるパンチング過程で、確実かつ安定して行うことができる。
【0063】
パンチング過程での変形度を低減させると、シースシートのブランク形成の安定性が向上し、ロータを組み立てる準備の整った層に亀裂およびその他の欠陥が生じないようになり、パンチングプレスに求められる作用力は大幅に低減し、ダイ工具の耐用年数が延びる。同時に、ロータを組み立てる際は、3層を剛性接合する必要があり、これはつまり、2層からなる層を組み立てるロータの実施形態に比して、接触面の数が2倍に増加するということである。
【0064】
平坦中間層および実質的にU字型の素子を有する外層を備えたロータの前記好適な実施形態によれば、平坦中間層は、外層の内側面を超えて、かつ/または外層の外側面を超えて径方向に突出する。この技術対策によって、自動二輪車のブレーキディスクロータからの流入空気流に対する伝熱率を効果的に上昇させることができる。なぜなら、(中間層の突出領域という犠牲を払って)ロータ重量が増加すると、この領域の冷却度を上げるのに有利に働くからである。実際、ロータの面積の増加量は、ΔS=2ΔM/ρζに等しく、式中ΔMはロータ重量の増加量、ρは中間層の材料密度、ζはこの層の厚みである。ζは約1mmであるため、この場合、例えば、自動二輪車のブレーキディスク用の従来の一体型ロータに比して、ロータの厚みはおよそ5mmであり、本発明による「突出する」中間層を有するロータ重量が増加すると、面積は5倍に大きくなる。
【0065】
その上、平坦中間層のこれらの突出部があるだけで、外層の径方向外側面から径方向内側面へ延びる通しスロットを有するこの中間層の接合性が確実になり、これによって前記層を一体部品として作製し、ロータの組み立てを根本的に簡易にすることができる。
【0066】
さらに、好適な実施形態によれば、外層の内側面を超えて、かつ/または外層の外側面を超えて径方向に外側に突出する中間層の面は、展開面で作製され、かつ/または伝熱/熱交換を容易にするコーティングを備えている(このような実施形態を上に記載)。この場合、上記と同じように、前記中間層領域の(冷却の観点から、何よりもまず流入空気流で冷却する)有効面積は、粗面を作製するとロータ重量が増加しないため、事実上ロータ重量が新たに増加することなく、さらに大幅に大きくなり、薄型の吸収性コーティングまたは(中間層の厚みに比して)吸収性塗料の薄層を塗布する場合、ロータの重量増加は最小になる。
【0067】
求められる形状およびスロット配列を有する平坦層は、これに対応する厚みを有するシートを機械加工(ミリング)するか、レーザ切削するか、またはダイカットして打ち抜く標準手順によって作製することができる。
【0068】
外層が実質的にU字型の素子を有するものである、自動二輪車のブレーキディスク用のロータを作製する際は、ロータを組み立ててロータ層を堅固に接合した直後は、ロータ全体の厚みが完成品の厚みよりもわずかに(好ましくは0.3〜0.6mm)大きいことが得策である。組み立て後、仕上げ作業としてグライディングまたは正確なミリングを使用し、この作業過程で、材料の表面近くの嵩を、自動二輪車のブレーキディスクロータのそれぞれの環状摩擦面から、好ましくは0.15〜0.3mmの深さまで除去し、両摩擦面を正確に平行にしてロータに回転振れがないようにし、これによって、層を完成品の中に接合する過程で起こることがあるあらゆる歪曲(変形)、ならびに別々に製造されたソースブランクおよび層にみられる誤差も相殺される。変形は、何よりもまず層の剛性接合のばらつきに現れ、これは、局所的または全体的な加熱によって起こり(熱変形)、何よりもまずはんだおよび溶接のばらつきに現れるが、このような変形は、抵抗スポット溶接を用いると最小になる。その上、グライディング(ミリング)の結果、外層の凸部に鋭利なエッジが形成されると、自動二輪車のブレーキディスク用の従来のロータにあるスロット(孔)と同じように、粉塵およびパッド腐食生成物が自動的に除去される。
【0069】
特許請求する本発明のもう1つの実施形態によれば、平坦中間層を有する自動二輪車のブレーキロータに2つの平坦な外層が設けられる。各々の前記層は、シートを機械加工(ミリング)をするか、または対応する厚みを有するシートをパンチング(ダイパンチング)することによって作製され、後者の方が生産性の高いプロセスである。通しスロット(孔)は、粉塵およびパッド腐食生成物を除去する目的で、外側平坦層に作製してよい。
【0070】
2つの平坦外層および1つの平坦中間層を備えるロータを作製する以下の一連工程が可能である:ロータの2つの外層の各層および中間層をあらかじめ互いに別々に作製し、ロータを恒久的な接合部に組み立てた後、仕上げの機械加工を行う。仕上げ過程で、外層の摩擦面を好ましくは0.15〜0.3mmの深さまでミリングまたはグライディング工程を実施することができ、両外層を正確に平行にして仕上がったロータに回転振れがないようにし;とりわけ、何よりも局所的または全体的な加熱(はんだ付け、溶接)によって完成品中の層の剛性接合で起こる可能性のある歪曲(変形)、ならびにシースシート内で起こり得る誤差(何よりも、不安定な厚み)を相殺するようにする。
【0071】
ロータの一実施形態によれば、中間層は、別々に作製されてロータを最終的に組み立てる過程で一緒に組み立てられるいくつかの部材(層)で構成されることができる。ロータを作り上げる層は、溶接(例えば、抵抗溶接またはシーム溶接)および/もしくは接着、および/もしくははんだ付け、または他の同様のプロセスによる恒久的な接合部の中に接合される。
【0072】
自動二輪車のブレーキディスク用のロータの前記実施形態によれば、内通し冷却管路の側壁は、中間層にスロットの側壁を形成し、前記管路の垂直壁は、外層領域を形成し、この外層は、隣接(中間)層とは接触しない。平坦外層の間にある中間層材料の残りの部分は、支持する「強化リブ」の機能を果たし、この強化リブを介して平坦外層は、一体部品の中に堅固に接合される。強度、そして何よりも剛性を対象に前記実施形態を計算することで、通し冷却管路の以下の好適なパラメータを算出することができる:高さ1.8〜2.5mm(中間層の厚みと同じ)、幅4〜7mm(中間層のスロット幅と同じ)、「強化リブ」の好適な幅約5mm。「強化リブ」の幅およびこの強化リブ間の距離は、動作中のロータに応力がかかることを計算に入れて、(特に周期的に)周方向に変動させてもよい。
【0073】
管路の最適な幅および管路間の距離(つまり、隣り合う内通し冷却管路の軸間の距離)を算出する際は、摩擦力が実際に発生し、何よりもまず、摩擦面とブレーキパッドとの間が接近接触する領域に発生することを計算に入れる必要があり、相当多数の「管路‐強化リブ」の対をブレーキパッドの下に配置することが得策である。現代のブレーキパッドの典型的な長手サイズは、およそ50mmに等しく、「管路-強化リブ」の対の寸法は、8〜11mmが好ましい。
【0074】
「強化リブ」の幅も、単一部品としてのロータを作り上げる層すべての接合部が、いわばこのリブを介して設けられるという事実によって決まり、接触領域は、剛性接合の種類に応じて最小値に限定される。例えば、全体の厚みがおよそ5mmであるロータの3層を効果的に接合する抵抗スポット溶接を使用すれば、キャストコアの直径は、プロセスが正しく実施されれば、少なくとも約3.5mm(好ましくは4〜4.5mm)であり、中間層である「強化リブ」の幅がさらに短い場合は、様々な側面に溶融金属を散布することも可能であり、これによって各々の内通し冷却管路を被覆できる。
【0075】
少なくとも1つの平坦中間層を、外層の内側面を超えて、かつ/または外層の外側面を超えて径方向に外側に突出できるように作ることで、前述したように、平坦中間層のそれぞれの領域があることによって、ロータ重量が増加するよりも大きい度合いまで冷却面積を増大させることができる。
【0076】
さらに、好適な実施形態によれば、外層の内側面を超えて、かつ/または外層の外側面を超えて径方向に延びる中間層面は、展開面で作製され、かつ/または伝熱/熱交換を容易にするコーティングを備えている(これの変形例を上に記載)。この場合、前述したように、対応する中間層領域の(冷却の観点から、まず流入空気流で冷却する)有効面積は、事実上ロータ重量が新たに増加することなくさらに大幅に大きくなる。
【0077】
平坦中間層の前記領域面を展開できるかどうかは、中間層がブレーキパッドと接触しないということが条件になる。面は、例えば、ロータの構成部品を一体部品になるように組み立てる前か(このようにする場合、内通し冷却管路の面の荒さが自動的に確実になる)、またはロータの構成層を全体が単一の完成品になるように剛性結合した後だがロータ摩擦面の仕上げ機械加工の前に、ショットブラストによって展開できる。
【0078】
少なくとも1つの平坦中間層に関して記載した実施形態によって、内通し冷却管路を備えるベンチレーテッド型ロータの冷却率をさらに向上させることができる。
【0079】
ロータが外層および少なくとも1つの中間層で構成される、自動二輪車のブレーキディスクロータのこのような実施形態によれば、少なくとも1つの中間層の材料は、外層の材料よりも密度が低く、かつ/または熱伝導率が高くてよい。この可能性は、ロータの中間層に対する材料を、摩擦面および接触ブレーキパッドを作り上げるロータの外層に重要なトライボロジー技術要件(摩耗率および摩擦係数値)に関係なく選択できるという事実に関係している。
【0080】
熱交換条件を改善し、ロータ内にさらに均質な温度場を生成するために(この場合、熱変形も低減される)、ロータの中間層を、ロータの外層よりも熱伝導率および温度伝導率が高い材料で作製することができる。例えば、特性が中間層を作製するのに十分であるSteel 20の熱伝導率および温度伝導率の係数は、通常現代のロータに使用され外層の作製にも使用されることがあるステンレス鋼の係数の事実上2倍(1.9倍)である。
【0081】
さらに、ロータ重量を低減する目的で、中間層を、ロータの外層の材料よりも密度が低い材料、例えば、かなりの高温にも耐性のあるチタン合金で作製してもよい。特許請求する本発明によるロータの冷却スピードが高く、このロータの加熱温度が適度であれば、中間層を高温のアルミニウム合金または焼結アルミニウム粉末(SAPタイプの合金)で作製してもよく、後者の変形例の方が、アルミニウム合金よりも好ましい。なぜなら、SAPの熱膨張係数は、鋼鉄の熱膨張係数に近いからである。異なる材料を堅固に接合するために、接着、力による閉鎖(例えば、とりわけ外層が実質的にU字型の素子を有する層である場合のリベット締め)およびはんだ付けを利用して、中間層および外層に使用する金属をいくつか組み合わせてもよい。
【0082】
自動二輪車のブレーキディスクロータの好適な実施形態によれば、、内通し冷却管路は、不変の断面を有するか、例えば、好ましくは内側から外側に向かって拡大する、可変的な断面で作製される。
【0083】
ロータの径方向外側面にある内通し冷却管路の断面を増大させることで、これらの管路により多くの流入空気を「捕捉」することができ、内通し冷却管路内の熱交換は、ロータの外面よりも効率的であるため、これは合理的なことである。このような「捕捉」方式は、ロータの径方向外側面に近くなるにつれて内通し管路を拡大することで実現することができる。
【0084】
内通し管路の幅を増大すれば、摩擦の影響を受けて現れるロータ摩擦面の変形およびロータへの応力、ならびにブレーキパッドからの圧力も増大する。そのため、管路幅は、何よりもまずブレーキパッドがロータに圧力をかけない領域またはロータの動作領域が最小の部分で、最適値と比較して増大させることができる。したがって、管路の幅をロータの径方向外側面から2〜3mm以内の所で増大させることが好ましい。内通し管路の幅の好適な増大量は、ロータの外側面への距離が短くなる1mmに対して1.5mm以内である。内通し冷却管路の幅を増大させる前記パラメータによって、流入空気が管路に入る断面の全面積を大幅に増大させることができ、ロータの外側境界から約2mmの距離の所ですでに、ブレーキパッドと対になって起こす摩擦に対する管路のパラメータは最適になる。その結果、ロータ摩擦面の主要部分が、最適な条件で確実に制動する。管路の断面をさらに急激に増大させると、流入空気流の一部は、内通し冷却管路の壁の脇から外部に排出される状況に陥り、ロータの通し管路の中を通らなくなる。
【0085】
その上、本発明によれば、管路全長の主要部分にある自動二輪車のブレーキディスクロータ(内側のものも外側のものも両方)内の通し管路断面は、特に、管路壁の凸部を犠牲にして、可変的に作製されてよく、管路の高さおよび/または幅は変動してよく、好適な実施形態によれば、管路幅は、周期的に変動する。管路幅のこのような周期的変動は、好ましくは1周期で平均値の+/−3〜5%以内(すなわち、典型的な管路幅b約5〜6mmの場合は+/−0.15〜0.3mm)であり、(0.5〜1)×b(すなわち、3〜6mm)で伝熱が大幅に増大することが好ましい([4]、第429頁;[5]:Leontiev,A.I.,Olimpiev,V.V.「Influence of Heat Transfer Intensifiers on Thermal−Hydraulic Properties of Channels(管路の熱水力特性に及ぶ伝熱増強装置の影響)」;Thermal Physics of High Temperatures(高温の熱物理学)」、第45巻、第6号、2007年、第925〜953頁;第926頁、927頁)。管路の幅(断面)のこのような変動には、剛性、応力およびロータの変形に事実上何の影響も及ぼさず、これによってこの変動を管路全長の主要部分に実施することができる。同時に、「荒さが控えめな管路」にすることで、回転して流れる乱流モードで約25%の伝熱利得を得ることができ(この場合、管路幅の変動は、好ましくは、(0.5〜1)×bに相当する期間で管路の平均幅bの2〜4%)、層流モードの場合は数倍の伝熱利得を得ることができ;後者の場合、管路幅の好適な変動は約0、1×bであり、変動期間は約0、7×bである([5])。
【0086】
さらに、本発明を添付の図面を参照して例を用いて説明していくが、この例は本発明を限定するものではない。