(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記A層、B層、C層に含有する有機粒子が、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン− アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子より選ばれる1種であり、前記A層、B層に含有するモース硬度が7以下の無機粒子が、球状シリカ、ケイ酸アルミニウムより選ばれる1種であることを特徴とする、請求項1に記載の離型用二軸配向ポリエステルフィルム。
A層表面の中心線粗さSRa(A)が3nm以上10nm以下、C層表面の中心線粗さSRa(C)が10nm以上30nm以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の離型用二軸配向ポリエステルフィルム。
前記B層が、ポリエステルフィルム製造工程において発生する二軸延伸後の発生屑を回収原料として含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリエステルフィルム。
積層セラミックスコンデンサーを製造する工程においてグリーンシート成形の支持に用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリエステルフィルム。
前記A’層、B’層に含まれる有機粒子が、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン− アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子より選ばれる1種の有機粒子であり、前記A’層、B’層に含まれる無機粒子が球状シリカ、ケイ酸アルミニウムより選ばれる1種の無機粒子であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリエステルフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0013】
第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおける、離型用とは、ポリエステルフィルム基材を用い、部材を成型し、成型後の部材から剥離する用途を指す。部材は、多層セラミックスコンデンサーにおけるグリーンシートや、多層回路基板における、層間絶縁樹脂(電気絶縁樹脂)、光学関連部材におけるポリカーボネート(この際は溶液製膜において使用される)などが挙げられる。
【0014】
第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいては、特に、多層セラミックスコンデンサーにおいての離型用に好適であり、薄膜グリーンシート成形時のセラミックススラリーの塗工性および、グリーンシート打ち抜き性およびグリーンシート積層特性が良好である。
【0015】
第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおける、二軸配向とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものである。また、未延伸(未配向)フィルムを、常法により、二次元方向に延伸された状態を指す。延伸は、逐次二軸延伸または同時二軸延伸のいずれの方法も採ることができる。逐次二軸延伸は、長手方向(縦)および幅方向(横)に延伸する工程を、縦−横の1回ずつ実施することもできるし、縦−横−縦−横など、2回ずつ実施することもできる。
【0016】
第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、3層からなるポリエチレンテレフタレートフィルムであって、表層(A層)、中間層(B層)、表層(C層)の3層からなる積層フィルム(離型用二軸配向ポリエステルフィルム)である。ポリエチレンテレフタレートは、機械強度や寸法安定性などの物理的な性質に優れ、かつ生産性に優れていることや、積層セラミックスコンデンサーの製造に用いる離型フィルムとして使用する際には、その経済性や、スリット加工の行いやすさ、グリーンシート打ち抜き時に、支持体として必要な剛性を付与することができる。上記ポリチレンテレフタレートは公知の方法で製造することができ、固有粘度は0.5dl/g以上、0.8dl/g以下が好ましい。さらに好ましくは0.55dl/g以上、0.70以下である。各層を構成するポリエチレンテレフタレートは、その特性を失わない限り、共重合成分を含んでいても良い。共重合成分としては、芳香族二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、ナトリウムスルホイソフタル酸、ジブロモテレフタル酸などを用いることができる。脂環族二塩基酸としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などを用いることができる。グリコールとしては、脂肪族ジオールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコールなどを用いることができ、芳香族ジオールとして、ナフタレンジオール、2,2ビス(4−ヒドロキシジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ハイドロキノンなどを用いることができ、脂環族ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどを用いることができる。
【0017】
A層は、離型層を設けた後に、セラミックススラリーを塗布する面を構成するのに好適な層であり、C層は離型層の反対面を構成するのに好適な層であり、B層は、A層とC層の中間に位置する層である。
【0018】
この際、A層、B層、C層の各層に添加する粒子種、粒子量を制御することで、内層部にフィルム表面の特性に悪影響を与えない範囲で、製膜工程で発生するエッジ部分の回収原料、あるいは他の製膜工程のリサイクル原料などを適時混合して使用することで、コストメリットを得ることが可能である。
【0019】
また、フィルム層表面の突起高さやフィルム層表面の中心線粗さを適正化させるためや、原料回収時の熱劣化抑制をはかるため、セラミックススラリーの塗工性、グリーンシート打ち抜き性、グリーンシート積層特性を良好にするため、A層を構成するポリエチレンテレフタレートにはモース硬度が7以下の無機粒子、及び/又は有機粒子を含有し、C層を構成するポリエチレンテレフタレートにおいては粒度分布曲線において1つもしくは2つのピークが存在する有機粒子を含有することが、グリーンシートを良好に打ち抜く際にあたり必要である。また、B層を構成するポリエチレンテレフタレートには、モース硬度が7以下の無機粒子、及び/又は有機粒子を含有することが必要である。A層、B層、C層に含有させる有機粒子については同種のものでも異種の物でも良い。また、A層、B層に含有させるモース硬度が7以下の無機粒子についても同種のものでも異種のものでも良い。
【0020】
モース硬度が7以下の無機粒子の種類としては、球状シリカ、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、炭酸カルシウムが好ましい。有機系高分子粒子としては、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン−アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、メラミン樹脂粒子等が好ましい。離型用二軸配向ポリエステルフィルムに適度なクッション性(クッション性能とも言う)を与えるためには、これらの粒子を用いることが好ましい。
【0021】
セラミックススラリーの塗工性とは、セラミックスコンデンサーの誘電体を、離型用二軸配向ポリエステルフィルムからなる離型フィルム上に塗布後、乾燥させた後に得られる成形体であるセラミックスシート(いわゆるグリーンシート)のピンホールの有無や、シート表面および端部の表面状態を示す。
【0022】
また、グリーンシート打抜き性とは、離型フィルム上に成形されたグリーンシートを、積層させるために行う、グリーンシートの切断の際に、グリーンシートを目的の形状に維持させ損傷させることなく切断されているかを示す。
【0023】
グリーンシート積層特性とは、上記工程で切断したグリーンシートを、基板上に熱プレスにより圧着させた後に、離型フィルムを剥離させる工程において、異物を噛み込まずに積層し、グリーンシートにダメージを与えること無く剥離されたかという特性を示す。これら評価手法についての説明は、後述する。
【0024】
第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、下限は20μm以上であり、好ましくは25μm以上、さらに好ましくは31μm以上である。上限は40μm以下であり、好ましくは38μm以下である。厚みが20μmより薄くなると、セラミックススラリーを保持するための剛性がなくなり、セラミックススラリーの塗布において、セラミックススラリーを支えられなくなり、後工程で均一な乾燥ができなくなる。厚みが40μmを超えると、フィルム製造時においての搬送工程で、傷が入り易くなり好ましくない。
【0025】
第1の発明におけるA層の厚みは3.0μm以上8.0μm以下である。厚みが3.0μm未満では、適正な粒子種と粒子量により発現するグリーンシート打ち抜き時のクッション性能が、十分に発現されない。一方、積層厚さが8.0μmを越えると、含有粒子で突起が形成されないことがあり、好ましくない。
【0026】
第1の発明におけるB層の厚みは、10.0μm以上35.0μm以下である。B層はA層とともにグリーンシート打ち抜き時のクッション性に寄与すると同時に、C層とともにグリーンシートの積層特性に影響する。B層が10.0μm未満だとクッション性が低下し、35.0μmを超えると、グリーンシートの積層特性が低下する。
【0027】
また、第1の発明におけるC層の厚みは0.5μm以上2.0μm以下である。厚みが0.5μm未満では、C層に含有した粒子が脱落する場合があり、一方、厚みが2.0μmを越えると、粒子による突起形成の均一性が損なわれることがあり、好ましくない。
【0028】
第1の発明におけるB層の厚みは、A層の厚み、C層の厚みについて前述の範囲内において定め、積層フィルム全体の厚みを前述の範囲内で定めることによって決まる。B層は、ポリエステルフィルムの製造工程で発生した屑よりなる回収原料を入れることがコストの点からは好ましいが、B層中の粒子についての体積平均粒子径はA層、C層に添加している粒子とのバランスを調整することが、グリーンシート打ち抜き性と、グリーンシート積層特性の両立を備える上で好ましい。
【0029】
なお、B層に入れ得る回収原料は、第1の発明のポリエステルフィルム製造工程において発生する二軸延伸後の発生屑のみとすることが好ましい。ただし、回収原料の形状や、かさ密度によっては、原料乾燥の効率が悪くなることや、押出工程での吐出が不安定になることもあるため、B層に入れる回収原料の、B層全体の原料に対する混率は、これらの乾燥や押出工程の適性に合わせ、また、後述するヘイズを好ましい値にコントロールするように、所望の量に調整を行う。
【0030】
また、回収原料は、中間製品の巻き取り後の工程で発生した屑のみを入れることが、さらに好ましい。また、回収原料は、回収原料を得るまでの熱履歴を均質化させることが好ましい。例えば、未配向フィルムと二軸延伸後のフィルムを混在させて回収させると、結晶性が異なるために溶融粘度が安定せず、グリーンシートの打ち抜き性にばらつきが生じることがある。また、再溶融時に融点の違いが生じ、未溶融異物あるいは熱劣化異物の生成に繋がると、該異物が粗大突起となる場合がある。この粗大突起がA層あるいはC層の層厚みよりも大きな場合、A層あるいはC層の表面の粗大突起が形成される事がある。この際、特にA層側へ表面突起が形成された場合、グリーンシートのピンホールが発生することがある。
【0031】
第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、A層には体積平均粒子径が0.1μm以上1.0μmのモース硬度が7以下の無機粒子、及び/又は有機粒子を、A層の重量に対し0.05〜1.0重量%含有含有することが必要である。B層には、体積平均粒子径が0.3μm以上1.5μm以下のモース硬度が7以下の無機粒子、及び/又は有機粒子を含有する必要がある。B層に含有する粒子が、モース硬度が7以下の無機粒子である場合、B層の重量に対し0.6〜6重量%含有し、有機粒子である場合、B層の重量に対し0.05〜5重量%含有する必要がある。また、C層には、体積平均粒子径が0.2μm以上1.0μmの粒度分布曲線において1つもしくは2つのピークが存在する有機粒子をC層の重量に対し0.03〜1.0重量%含有させる。
【0032】
A層、B層およびC層に入れる粒子の体積平均粒子径dA、dB、dCは、 dA < dC ≦ dB の関係である必要がある。第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、異種3層構成における粒子の種類や大きさを限定することで、粒子そのものの弾性変形や、二軸延伸により粒子まわりに生じるボイド(空隙)の数を適正な範囲にコントロールすることにより、薄膜グリーンシート成形時のセラミックススラリーの塗工性および、グリーンシート打ち抜き性およびグリーンシート積層特性のバランスを両立させることができる。
【0033】
グリーンシート打ち抜き性と、グリーンシート積層特性は、フィルム内の微小領域における、クッション性によって発揮される。グリーンシートの打ち抜き性は、A層側から受ける、打ち抜き刃による衝撃を、A層およびB層にて吸収する必要がある。グリーンシート積層時に熱プレスをかける工程では、C層からB層、B層からA層への均一な伝熱が必要である。また、熱プレス時の圧力を均一にさせるためには、最も層の厚いB層のクッション性が高い必要がある。ボイドは粒子の種類、添加量および、粒子径によってその量が決まるが、特に厚み方向への圧力が考慮される際は、粒子径の寄与が高い。
【0034】
第1の発明に用いるA層、B層、C層に含有させる粒子は、フィルムの微細なクッション性能をコントロールし、セラミックスグリーンシートの熱プレスによる積層にて、均一な積層を行い、その後の離型フィルムの剥離を行うために選択される。好ましくは粒子の弾性が高い有機粒子を用いる。有機粒子は、前述の有機粒子の内、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン− アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子より選ばれる有機粒子が特に好ましい。無機粒子においては、有機粒子と同様に好ましく使用するためには、モース硬度が7以下であることが必要である。
【0035】
すなわちモース硬度が7以下の無機粒子は、前述のモース硬度が7以下の無機粒子種の内、球状シリカ、ケイ酸アルミニウムが特に好ましい。
【0036】
粒子の形状・粒子径分布については均一なものが好ましく、とくに粒子形状は球形に近いものが好ましい。体積形状係数は好ましくはf=0.3〜π/6であり、より好ましくはf=0.4〜π/6である。体積形状係数fは、次式で表される。
f=V/Dm
3
ここでVは粒子体積(μm
3),Dmは粒子の投影面における最大径(μm)である。
【0037】
なお、体積形状係数fは粒子が球のとき、最大のπ/6(=0.52)をとる。また、必要に応じて濾過などを行うことにより、凝集粒子や粗大粒子などを除去することが好ましい。有機粒子の中でも、乳化重合法で等で合成された、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子が好適に使用できるが、とくに架橋ポリスチレン粒子、架橋シリコーン、さらに球状シリカなどは体積形状係数が真球に近く、粒径分布が極めて均一であり、均一にフィルム表面突起を形成する観点で好ましい。
【0038】
第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、C層に含有する粒子は、粒度分布曲線において、1つもしくは2つのピークが存在することが必要である。第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、積層セラミックスコンデンサーを製造する工程において、グリーンシート成形の支持体に用いられる場合は、A層の表面に離型層を形成させ、その離型層の上に、グリーンシートを保持したものを、巻き取る。巻き取られた後には、巻き締まりの影響でC層表面とグリーンシートが圧着される。この際、C層表面の突起による表面形状が、グリーンシートに転写されることがある。この時の転写痕が、グリーンシートの形態に影響を及ぼし、コンデンサーの誘電率に影響を及ぼす。このような転写痕をグリーンシートに与えないためには、C層の表面が、グリーンシート表面に圧着される際の圧力が均一に分散される必要がある。このためには、C層表面の平坦な面に形成された突起の高さが、均一であることが必要である。
【0039】
また、C層表面の突起は、巻き取られたグリーンシートを巻き出す際に、グリーンシート表面に引っかかり、グリーンシートを削ることがある。この引っかかりも、C層表面の平坦な面に形成された突起の高さが、均一であることで防止できる。
【0040】
また、C層表面の突起は、グリーンシートとC層表面がブロッキングを起こすことも防止している。薄膜グリーンシートを形成できるような、高平滑な離型フィルムにおいては、C層表面の突起が形成されていない平坦面にグリーンシートが接触しやすくなる。C層に含有する粒子の粒度分布のピークが1つであると、グリーンシートへの接触は最も均一になるものの、C層表面の平坦面とグリーンシートが密着しやすくなる。また、C層表面とグリーンシートとの密着性が均一になり過ぎ、剥離の初期にて過度の剥離力が必要となることがある。この際、微視的に剥離力の弱い箇所をつくると、該箇所が剥離のきっかけとなり、剥離初期に剥離が進行しやすくなる。本発明者らは、C層の表面を、剥離初期に剥離が進行しやすくなる形状とするには、C層に含有する粒子を、粒度分布曲線において、ピークが2つ存在する粒子とすることにより達成できることを見いだした。しかしながら、C層に含有する粒子を、粒度分布曲線において有するピークが3つを超えると、突起間の高低差が均一にならず、圧力の分散がランダムになりすぎることにより、ある箇所において過度な圧力がかかることがある。
【0041】
さらに、これらの粒子については界面活性剤などによる表面処理を施すことにより、ポリエステルとの親和性の改善を図ることが可能であり、脱落の少ない突起を形成することが可能で好ましい。
【0042】
第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、A層表面の中心線粗さSRa(A)は、3nm以上10nm以下であることが好ましく、C層表面の中心線粗さSRa(C)が10nm以上30nm以下であることが好ましい。また、A層表面の十点平均粗さSRz(A)が300nm以下であることが好ましく、C層表面の十点平均粗さSRz(C)が600nm以下であることが、厚みが2μm以下のグリーンシートを成形する上での適切な平滑性を得られるので好ましい。A層表面の中心線粗さSRa(A)を上記の範囲とすることで、離型層塗布後のフィルムロールの保管中にブロッキングを起こしたり、セラミックススラリーの塗布が不均一となることにより発生する、グリーンシートにピンホール等の欠陥が生じる課題を改善することができる。また、A層表面の十点平均粗さSRz(A)を上記の範囲とすると、A層と接する面のグリーンシートの表面形態を良好とすることができ、セラミックスコンデンサーの静電容量のばらつきを抑制することができる。また、C層表面は、第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムを加工する際、離型層塗布工程やセラミックススラリー塗布工程において、加工面の反対面になるため、ハンドリング性が良好である事が必要である。また、スラリーを塗布し乾燥後に得るグリーンシートは、第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムに離型層を塗布してなる離型フィルム上に保持し、巻き取られるため、先述の通りC層表面の形状は、巻き取られた後のグリーンシートの表面形態に影響を及ぼす。すなわち、C層表面の中心線粗さSRa(C)を10nm以上の範囲とすることにより、離型層塗布工程やスラリー塗布工程におけるハンドリング性を良好とし、塗布斑や塗布後の巻き取り時に、噛み込んだ空気が抜けにくくなることによる、巻きズレの発生を抑制することができる。また、C層表面の中心線粗さSRa(C)を30nm以下の範囲とすることにより、表面に形成された凹凸がグリーンシート表面に転写される影響を小さくすることが可能となり、セラミックスコンデンサーの静電容量にばらつきを抑制することができる。また、C層表面の十点平均粗さSRz(C)を600nm以下とすると、巻き取られたグリーンシートの表面に凹みやピンホールの発生を抑制し、セラミックスコンデンサーの耐圧不良の発生を抑制することができる。これらは、A層に特定の有機粒子及び/又は無機粒子を、C層に特定の有機粒子を特定量含有させることによって達成出来る。 第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向および横方向の破断強度の和が500MPa以上600MPa以下であることが好ましく、さらに好ましくは520MPa以上590MPa以下である。また、幅方向の破断強度は、長手方向の破断強度と同等以上であることが好ましく、その差(幅方向の破断強度−長手方向の破断強度)は、0MPa以上90MPa以下であることが好ましく、40MPa以上80MPa以下であることがさらに好ましい。長手方向および横方向の破断強度の和が500MPa以上であると、延伸工程に粒子周りのポリマーが粒子より剥離してなるボイド(空隙)構造が発現しやすくなり、A層およびC層表面の中心線粗さを所望の値に制御することや、クッション性が良好に発現する。また、長手方向および横方向の破断強度の和を600MPaより上回る状態を達成する為には、長手方向や幅方向への延伸を過度に実施する必要があり、延伸中に破断することがあるため好ましくない。
【0043】
また、長手方向および横方向の破断伸度は80%以上220%以下が好ましく、より好ましくは90%以上210%以下が好ましい。さらに、長手方向の破断伸度は、幅方向の破断伸度の同等以上が好ましく、その差(長手方向の破断伸度−幅方向の破断伸度)が0%以上100%以下の場合がさらに好ましい。さらに、長手方向の破断伸度が170%以上190%以下、幅方向の破断伸度が90%以上110%以下で、長手方向の破断伸度が幅方向の破断伸度より70%以上90%以下大きい場合がさらに好ましい。長手方向および横方向の破断伸度を80%以上とすると、セラミックススラリー塗布時に工程内での張力を受けた際、張力変動を吸収し、塗布斑の発生を抑制することができるため好ましい。また、長手方向または横方向の破断伸度が220%以下とすると、離型層塗布後の保管時に平面性を損なうことを抑制することができる。また、セラミックススラリー塗布後の保管時に、グリーンシートの平面性を損ねることも抑制することができる。破断伸度を先述の範囲にコントロールすることにより、加工工程で受ける張力により、フィルムが伸縮する現象や、巻き取り後にも残留応力が回復する挙動をコントロールすることができ、最終的には薄膜のグリーンシートの平面性を良好に保つことができる。また、長手方向の破断伸度を、幅方向の破断伸度と同等以上であると好ましい理由は、以下の通りである。離型層を塗布する工程および巻き取り工程では、フィルムの長手方向に張力がかかる。該張力は巻き取られた後にもフィルム内の応力として残る。そして、長手方向に張力がかかった際に、ポワソン変形により幅方向のフィルムに寸法変化が発生する。この幅方向の寸法変化が、離型層を塗布したロールを巻き出す際に平面性不良が発生することがある。この寸法変化を抑制するためには、長手方向の破断伸度を、幅方向の破断伸度と同等以上とし、また、長手方向と幅方向の破断伸度の差を上記の範囲にすることが好ましい。
【0044】
また、第1の発明における離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、ヘイズが7%以下であることが好ましく、6%以下がさらに好ましい。積層セラミックスコンデンサーの離型用途としては、回収原料を3層複合層の中間層に入れることは可能であるが、ヘイズが7%を超えてしまうと、グリーンシートの成型状態、特に端部の状態を確認するのが難しくなるため、好ましくない。
【0045】
さらに、第1の発明のポリエステルフィルムの長手方向の厚み斑が、2μm以下が好ましい。なお、本発明において、長手方向の厚み斑は、フィルムの長手方向に15mフィルムの厚みを測定し、記録されたフィルム厚さチャートから、フィルムの最大厚みと最小厚みの差として求められる。好ましくは1.4μm以下である。従来から、フィルムの厚み斑を少なくすることはフィルムを製造する上での課題であったが、第1の発明の離型用フィルム、特に薄膜セラミックスコンデンサー製造に適用される離型フィルムへ適用するには長手方向の厚み斑を前記範囲とすることが、グリーンシートの厚さを薄くする際にコンデンサーの静電容量にばらつきを生じさせないため、好ましい。
【0046】
第1の発明におけるポリエステルフィルムは、フィルム表面に存在する高さ0.27μm以上の粗大突起が5個/100cm
2以下であることが好ましい。さらに0.54μm以上の粗大突起が1個/100cm
2以下であることが好ましい。0.54μm以上の粗大突起は実質的に存在しないことが好ましい。粗大突起数を上記の範囲とすると、離型剤を塗布時、塗布ムラ、ピンホール状の塗布抜け欠点を抑制することができる。また、グリーンシートの厚さを薄くする際に発生する離型剤塗布抜けによって、グリーンシートの剥離斑が生じることを抑制することができる。また、粗大突起が原因となるグリーンシートに凹みやピンホールを生じさせることを抑制することができる。
【0047】
フィルム表面の粗大突起において上記の好ましい形態を達成するためには、A層、B層、C層に含有する粒子種および体積平均粒子径を上記の範囲にするが挙げられる。また、第1の発明のポリエステルフィルムの原料供給のための設備、特に原料貯蔵設備(サイロ)、原料搬送のための配管を、第1の発明で使用する粒子を含むマスターペレットのみのために使用し、以下の方法で原料を搬送することなどが挙げられる。原料を搬送するためには、ブロワーを用い空気により搬送を行うか、自由落下により搬送を行うが、空気により搬送を行う際は、空気を取り込む際に0.3μm以上の塵埃を95%カットできるフィルターを用い、空気を濾過することが好ましい。また、第1の発明の製造時に用いるフィルターを、後述の高精度なフィルターとすることにより達成することができる。
【0048】
第1の発明におけるポリエステルフィルムにおいては、寸法変化率を適性にコントロールすることが、後加工、特に離型層を塗布した後の平面性を良好に保つ上で好ましい。寸法変化率を後述する範囲とする方法としては、製膜条件における弛緩処理等の公知の方法により適宜調整することにより達成出来る。150℃における寸法変化率は長手方向で2%以下、幅方向で2.5%以下が好ましく、長手方向で0.5%以上1.7%以下、幅方向で1%以上2%以下がさらに好ましい。また、100℃における寸法変化率は長手方向、幅方向ともに1%以下が好ましく、0.2%以上0.8%以下の範囲であるとさらに好ましい。該寸法変化率において上記範囲の下限を下回ると、離型層を塗布する際にタルミによる平面性不良が発生し、上限を上回ると、離型層を塗布する際に収縮によりトタン状に収縮斑が発生し平面性不良となり、いずれの場合も薄膜グリーンシートの塗布厚みに斑を生じさせることがあるため、好ましくない。
【0049】
次に第1の発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。ポリエステルに不活性粒子を含有せしめる方法としては、例えばジオール成分であるエチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散せしめ、このエチレングリコールスラリーをポリエステル重合完結前の任意段階で添加する。ここで、粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性が良好であり、粗大突起の発生を抑制でき好ましい。また粒子の水スラリーを直接、所定のポリエステルペレットと混合し、ベント方式の2軸混練押出機に供給しポリエステルに練り込む方法も第1の発明の製造に有効である。
【0050】
このようにして、各層のために準備した、粒子含有マスターペレットと粒子などを実質的に含有しないペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給する。第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムの製造における押出機は、1軸、2軸の押出機を用いることができる。また、ペレットの乾燥工程を省くために、押出機に真空引きラインを設けた、ベント式押出機を用いることもできる。また、最も押出量が多くなるB層には、ペレットを溶融する機能と、溶融したペレットを一定温度に保つ機能をそれぞれの押出機で分担する、いわゆるタンデム押出機を用いることができる。第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおけるA層およびC層は、二軸式ベント式押出機を用いることが、粒子の分散性を良好に保てるので好ましい。
【0051】
押出機で溶融して押出したポリマーは、フィルターにより濾過する。ごく小さな異物もフィルム中に入ると粗大突起欠陥となるため、フィルターには例えば3μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。続いてスリット状のスリットダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、3台の押出機、3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば矩形合流部を有する合流ブロック)を用いて3層に積層し、口金からシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。この場合、背圧の安定化および厚み変動の抑制の観点からポリマー流路にスタティックミキサー、ギヤポンプを設置する方法は有効である。
【0052】
延伸方法は同時二軸延伸であっても逐次二軸延伸であってもよい。特に、同時二軸延伸においてはロールによる延伸を伴わないため、フィルム表面の局所的な加熱ムラを抑制し、均一な品質が得られると共に、延伸時にロール延伸に伴うフィルムとロールとの接触場所での速度差、ロールの微少傷の転写などによる傷の発生を抑制でき好ましい。
【0053】
同時二軸延伸においては未延伸フィルムを、まず長手および幅方向に延伸温度を80℃以上130℃以下、好ましくは85℃以上110℃以下として同時に延伸する。延伸温度が80℃よりも低くなるとフィルムが破断しやすく、延伸温度が130℃よりも高くなると十分な強度が得られないため好ましくない。また、延伸ムラを防止する観点から、長手方向・幅方向の合計延伸倍率は4倍以上20倍以下、好ましくは6倍以上15倍以下である。合計延伸倍率が4倍よりも小さいと十分な強度が得られにくい。一方、倍率が20倍よりも大きくなると、フィルム破断が起こりやすく、安定したフィルムの製造が難しい。必要な強度を得るためには、温度140℃以上200℃以下、好ましくは160℃以上190℃以下で長手方向及び/又は幅方向に1.02倍以上1.5倍以下、好ましくは1.05倍以上1.2倍以下で再度延伸を行うことが好ましく、合計延伸倍率が、長手方向で3倍以上4.5倍以下、好ましくは3.5倍以上4.2倍以下、幅方向に3.2倍以上5倍以下、好ましくは3.6倍以上4.3倍以下である。目標とするフィルムの破断強度を達成するため、適時倍率を選択できるが、幅方向の破断強度を高くするため、幅方向の延伸倍率を長手方向よりも高めに設定することがさらに好ましい。その後、205℃以上240℃以下 好ましくは220℃以上240℃以下で0.5秒以上20秒以下、好ましくは1秒以上15秒以下熱固定を行う。熱固定温度が205℃よりも低いとフィルムの熱結晶化が進まないため目標とする寸法変化率などが安定しにくいため好ましくない。また、フィルム物性を安定させるため、フィルム上下の温度差が20℃以下、好ましくは10℃以下、更に好ましくは5℃以下である。フィルム上下での温度差が20℃よりも大きいと、熱処理時に微小な平面性の悪化を引き起こしやすいため好ましくない。その後、長手及び/又は幅方向に0.5%以上7.0%以下の弛緩処理を施す。
【0054】
同時二軸延伸では後述する逐次二軸延伸とは異なり、高温空気によってフィルムが加熱される。そのため、フィルム表面のみ局所的に加熱されて粘着が発生することはなく、延伸方式として逐次延伸より好ましい。
【0055】
一方、第1の発明のポリエステルフィルムは、逐次延伸を用いて製造することもできる。最初の長手方向の延伸は、傷の発生を抑制する上で重要であり、延伸温度は90℃以上130℃以下、好ましくは100℃以上120℃以下である。延伸温度が90℃よりも低くなるとフィルムが破断しやすく、延伸温度が130℃よりも高くなるとフィルム表面が熱ダメージを受けやすくなるため好ましくない。また、延伸ムラ、及びキズを防止する観点からは延伸は2段階以上に分けて行うことが好ましく、トータル倍率は長さ方向に3倍以上4.5倍以下、好ましくは3.5倍以上4.2倍以下であり、幅方向に3.2倍以上5倍以下、好ましくは3.6倍以上4.3倍以下である。目標とするフィルムの破断強度を達成するため、適時倍率を選択できるが、幅方向の破断強度を高くするため、幅方向の延伸倍率を長手方向よりも高めに設定することがさらに好ましい。かかる温度、倍率範囲をはずれると延伸ムラあるいはフィルム破断などの問題を引き起こし、第1の発明の特徴とするフィルムが得られにくいため好ましくない。再縦または横延伸した後、205℃以上240℃以下、好ましくは210℃以上230℃以下で0.5秒以上20秒以下、好ましくは1秒以上15秒以下熱固定を行う。特に熱固定温度が205℃よりも低くなるとフィルムの結晶化が進まないために構造が安定せず、目標とする寸法変化率などの特性が得られず好ましくない。
【0056】
逐次延伸において、長手方向の延伸過程は、フィルムとロールの接触し、ロールの周速とフィルムの速度差による傷が発生しやすい工程につき、ロール周速がロール毎に個別に設定できる駆動方式が好ましい。長手方向の延伸過程において、搬送ロールの材質は、延伸前に未延伸フィルムをガラス転移点以上に加熱するか、ガラス転移点未満の温度に保った状態で延伸ゾーンまで搬送し、延伸時に一挙に加熱するかにより選択されるが、延伸前に未延伸フィルムをガラス転移点以上まで加熱する際は、加熱による粘着を防止するうえで、非粘着性シリコーンロール、セラミックス、テフロン(登録商標)から選択できる。また、延伸ロールは最もフィルムに負荷がかかり、該プロセスで傷や延伸斑が発生しやすい工程につき、延伸ロール表面の中心線粗さRaは、0.005μm以上1.0μm以下、好ましくは0.1μm以上0.6μm以下である。Raが1.0μmよりも大きいと延伸時ロール表面の凸凹がフィルム表面に転写するため好ましくなく、一方0.005μmよりも小さいとロールとフィルム地肌が粘着し、フィルムが熱ダメージを受けやすくなるため好ましくない。延伸ロール表面の中心線粗さを制御するためには研磨剤の粒度、研磨回数などを適宜調整することが有効である。未延伸フィルムをガラス転移点未満の温度に保った状態で延伸ゾーンまで搬送し、延伸時に一挙に加熱する際、予熱ゾーンの搬送ロールは、ハードクロムやタングステンカーバイドで表面処理を行った、延伸ロール表面の中心線粗さRaが0.2μm以上0.6μm以下の金属ロールを使用するのが好ましい。
【0057】
第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、かかる長手方向に延伸された一軸延伸フィルムを、横延伸機にて80℃以上120℃未満に加熱した後、3倍以上6倍未満で幅方向に延伸し、二軸延伸(二軸配向)フィルムとする。
【0058】
第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行なってもよいし、同時2軸にて再延伸しても良い。更に、二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行なうが、この熱処理はオーブン中、加熱されたロール上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は通常150℃以上245℃未満の任意の温度とすることができ、熱処理時間は、通常1秒間以上60秒間以下行なうことが好ましい。熱処理は、フィルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行なってもよい。また、熱処理後は熱処理温度より0℃以上150℃以下低い温度で幅方向に0%以上10%以下で弛緩させる。
【0059】
熱処理後のフィルムは、例えば中間冷却ゾーンや除冷ゾーンを設け、寸法変化率や平面性を調整することができる。また特に、特定の熱収縮性を付与するために、熱処理時あるいはその後の中間冷却ゾーンや除冷ゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に弛緩してもよい。
【0060】
二軸延伸後のフィルムは、搬送工程にて冷却させた後、エッジを切断後巻取り、中間製品を得る。この搬送工程にて、フィルムの厚みを測定し、該データをフィードバックして用いてダイ厚みなどの調整によってフィルム厚みの調整を行い、また、欠点検出器による異物検知を行う。
【0061】
エッジの切断時には、切粉の発生を抑制することが、第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて必要である。エッジの切断は丸刃、シェアー刃、ストレート刃を使用して行うが、ストレート刃を用いる場合は、刃がフィルムに当たる箇所を、常に同じ箇所にさせないことが、刃の摩耗を抑制できるため好ましい形態である。このためオシレーションする機構を有することが好ましい。また、フィルム切断箇所に吸引装置を設けて、発生した切り粉や、切断後のフィルム端部同士が削れて発生する削れ粉を吸引することが好ましい。
【0062】
中間製品はスリット工程により適切な幅・長さにスリットして巻き取り、第1の発明の第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムのロールが得られる。スリット工程におけるフィルムの切断時も、先述のエッジの切断と同様な切断の方式から選定できる。
【0063】
中間製品を所望の幅にスリットを行い、第1の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムを得る。
【0065】
第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおける、離型用とは、ポリエステルフィルム基材を用い、部材を成型し、成型後の部材から剥離する用途を指す。部材は、多層セラミックスコンデンサーにおけるグリーンシートや、多層回路基板における、層間絶縁樹脂(電気絶縁樹脂)、光学関連部材におけるポリカーボネート(この際は溶液製膜において使用される)などが挙げられる。
【0066】
第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいては、特に、多層セラミックスコンデンサーにおいての離型用に好適であり、薄膜グリーンシート成形時のセラミックススラリーの塗工性および、グリーンシート打ち抜き性およびグリーンシート積層特性が良好である。
【0067】
第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおける、二軸配向とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものである。また、未延伸(未配向)フィルムを、常法により、二次元方向に延伸された状態を指す。延伸は、逐次二軸延伸または同時二軸延伸のいずれの方法も採ることができる。逐次二軸延伸は、長手方向(縦)および幅方向(横)に延伸する工程を、縦−横の1回ずつ実施することもできるし、縦−横−縦−横など、2回ずつ実施することもできる。
【0068】
第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、3層からなるポリエチレンテレフタレートフィルムであって、表層(A層)、中間層(B層)、表層(C層)の3層からなる積層フィルム(離型用二軸配向ポリエステルフィルム)である。ポリエチレンテレフタレートは、機械強度や寸法安定性などの物理的な性質に優れ、かつ生産性に優れていることや、積層セラミックスコンデンサーの製造に用いる離型フィルムとして使用する際には、その経済性や、スリット加工の行いやすさ、グリーンシート打ち抜き時に、支持体として必要なコシを付与することができる。上記ポリチレンテレフタレートは公知の方法で製造することができ、固有粘度は0.5dl/g以上、0.8dl/g以下が好ましい。グリーンシートの製造においては、基材となる層に離型層、グリーンシートを積層した後に、目的とするグリーンシート層に打ち抜き刃で加圧し、グリーンシートを基材層から剥離しやすくする工程が有るが、固有粘度を蒸気の範囲とすると、最終的に得られるポリエステルフィルムの硬度を適切な範囲とすることができ、フィルムの耳立ちの発生を抑制し、グリーンシートの平面性、打ち抜き性を良好にすることができる。また、フィルムを打ち抜いた場合に、切り粉(フィルムの破断粉末)の発生を抑制し、打ち抜き性、グリーンシートの積層特性を良好にすることができる。さらに好ましくは0.55dl/g以上、0.70以下である。各層を構成するポリエチレンテレフタレートは、その特性を失わない限り、共重合成分を含んでいても良い。共重合成分としては、芳香族二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、ナトリウムスルホイソフタル酸、ジブロモテレフタル酸などを用いることができる。脂環族二塩基酸としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などを用いることができる。グリコールとしては、脂肪族ジオールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコールなどを用いることができ、芳香族ジオールとして、ナフタレンジオール、2,2ビス(4−ヒドロキシジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ハイドロキノンなどを用いることができ、脂環族ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどを用いることができる。
【0069】
第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエステルA’層およびポリエステルB’層およびポリエステルC‘層の3層からなる積層フィルム(離型用二軸配向ポリエステルフィルム)であることが必要である。
【0070】
A’層は、A’層の表面に離型層を設けた後に、セラミックススラリーを塗布する面を構成するのに好適な層である。また、C’層は、A’層の反対面を構成するのに好適な層であり、B’層は、A’層とC’層の中間に位置する層である。
【0071】
A’層表面の中心線粗さSRa(A’)は、3nm以上10nm以下であることが必要である。A’層は、グリーンシートの平面性を考慮し、A層表面の中心線粗さSR(A’)が低いことが求められる。A層表面の中心線粗さSRa(A’)が3nmを下回ると、離型用二軸配向ポリエステルフィルムの製造工程においてフィルム表面に製造工程の擦過による傷を発生させて、グリーンシートの表面特性を阻害し、塗工性を悪化させる。また、離型層塗布後のフィルムロールの保管中に、A’層と離型層でブロッキングを起こすことがある。また、10nmを超えると、離型材や、セラミックススラリーの塗布が不均一となることがあり、グリーンシートを剥離した際に、グリーンシート表面にピンホール等の欠陥が生じやすくなり、グリーンシート積層特性に影響を与える。
【0072】
C’層表面の中心線粗さSRa(C’)は、10nm以上30nm以下であることが必要である。C’層は、A’層に離型材を塗布する工程やセラミックススラリーを塗布する工程において、ロールと接触して走行性を付与する層となる。C’層表面の中心線粗さSRa(C’)が10nmを下回ると、ハンドリング性が悪化し、A’層への塗布が不安定となり、離型材やセラミックススラリーの塗布斑が発生する。また、塗布後にフィルムを巻き取った際に、噛み込んだ空気が抜けにくくなるため、巻きズレを起こすことがあり、グリーンシートの平面性を阻害する。仮に、離型材やセラミックススラリーを均一に塗布せしめても、噛み込んだ空気によって、グリーンシートの平面性を阻害する傾向がある。一方、C’層は、離型材やセラミックススラリーの塗布を塗布した後、巻き取った際に、グリーンシート表面と接触する層である。そのため、C’層表面の中心線粗さSRa(C’)が30nmを超える場合は、表面に形成された凹凸がグリーンシート表面に転写される影響が大きくなり、グリーンシートに凹み欠点を発生させる。グリーンシートの平面性の欠陥や凹み欠点は、グリーンシートを積層した後の、セラミックスコンデンサーの静電容量にばらつきを生じさせる結果となる。C’層の表面の中心線粗さは、粒子を添加することによって容易に達成することが可能である。
【0073】
A’層とB’層は、いずれの層においても、粒子を含有する層であり、該粒子は、モース硬度が7以下の無機粒子及び/又は有機粒子、及び/又は、架橋度が50〜85%の有機粒子であることが必要である。第2の発明は、以下に記載する、塗工性、打ち抜き性、グリーンシート積層特性を目的とするが、A’層への粒子の添加は、塗工性のため、B’層の粒子の添加は、打ち抜き性のために必要である。また、これら層に含有される粒子が、モース硬度が7以下の無機粒子及び/又は有機粒子であるか、または、架橋度が50〜85%の有機粒子であることは、ただ単に粒子を含有せしめただけでは達成することができなかった、打ち抜き性とグリーンシート積層特性を、良好なものとせしめることができる。
【0074】
積層セラミックスコンデンサーを製造するプロセスにおける、グリーンシート積層体を得るための課程は、次の通りである。すなわち、離型フィルム上にグリーンシートを成形した積層体を、吸着テーブルの上に乗せ、固定する。次に、グリーンシートを、所定の大きさにカッターで切断する(この際には離型フィルムは切断しない)。次に、離型フィルム上にグリーンシートを成形した積層体を、他のグリーンシートに転写して順次積層していく。積層時は、離型フィルムの、グリーンシートが積層されていない面から、加熱と加圧を行う必要がある。
【0075】
先述の工程において、カッターにて切り込みを入れる際には、グリーンシートを切断後、離型フィルムにまで切り込み刃が到達する。この際には、A’層に含有する粒子は、モース硬度が7以下であるか、または、架橋度が50〜85%の粒子であると、グリーンシートの切りこみ部の反り返り(以下、単に耳立ちという場合がある)や、A’層のフィルム切込みによる切り粉が発生しにくくなり、その結果、打ち抜き性と、グリーンシート特性が良好であるという効果を有している。また、グリーンシートの積層時には、フィルム自体も加圧される。そのため、A‘層の粒子が積層したモース硬度が7以下の無機粒子及び/又は有機粒子であるか、または、架橋度が50〜85%の有機粒子であると、粒子自体がフィルム中で扁平するため、グリーンシート表面に転写される影響を小さくすることができる。その結果、グリーンシートの平面性を良好なものとせしめ、グリーンシートの積層特性を良好なものとすることができる。
【0076】
B’層においても、モース硬度が7以下の無機粒子及び/又は有機粒子であるか、または、架橋度が50〜85%の有機粒子であると、A’層同様に、グリーンシートの積層する際の加圧時に、粒子が扁平することにより、A’層やグリーンシートへ与える影響を小さくすることができ、グリーンシートの平面性を良好なものとすることができる。また、ボイド(空隙)の形成を抑制するため、熱伝導を効率よくすることができ、グリーンシートの積層特性を良好なものとせしめることが可能となる。
【0077】
A’層、B’層、C’層に含有させる粒子は同種のものでも異種の物でも良い。
【0078】
モース硬度が7以下の無機粒子の種類としては、球状シリカ、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、炭酸カルシウムが好ましい。モース硬度が7以下の有機粒子としては、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン−アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、メラミン樹脂粒子等が好ましい。
【0079】
粒子の形状・粒子径分布については均一なものが好ましく、とくに粒子形状は球形に近いものが好ましい。体積形状係数は好ましくはf=0.3〜π/6であり、より好ましくはf=0.4〜π/6である。体積形状係数fは、次式で表される。
【0080】
f=V/Dm
3
ここでVは粒子体積(μm
3)、Dmは粒子の投影面における最大径(μm)である。
【0081】
なお、体積形状係数fは粒子が球のとき、最大のπ/6(=0.52)をとる。また、必要に応じて濾過などを行うことにより、凝集粒子や粗大粒子などを除去することが好ましい。中でも、乳化重合法で等で合成された、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子が好適に使用できるが、とくに架橋ポリスチレン粒子、架橋シリコーン、さらに球状シリカなどは体積形状係数が真球に近く、粒径分布が極めて均一であり、均一にフィルム表面突起を形成する観点で好ましい。
【0082】
なお、ここでいう架橋度とは、
架橋度(%)=(原料モノマ中の架橋成分の重量)/原料モノマの全重量 ×100
により定義される。
【0083】
本発明において、薄膜グリーンシート成形時のセラミックススラリーの塗工性は、セラミックスコンデンサーの誘電体を、第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムからなる離型フィルム上に塗布後、乾燥させた後に得られる成形体であるセラミックスシート(いわゆるグリーンシート)のピンホールの有無、また、グリーンシートの表面および端部の表面状態により評価する。
【0084】
グリーンシート打抜き性は、離型フィルム上に成形されたグリーンシートを切断の際に、グリーンシートを目的の形状に維持させ損傷させることなく切断されているかを評価する。
【0085】
グリーンシート積層特性は、上記工程で切断したグリーンシートを、グリーンシートの積層体の上に、熱プレスにより圧着させた後に、離型フィルムを剥離させる工程において、異物を噛み込まずに積層し、グリーンシートにダメージを与えること無く剥離されたかを評価する。
これら評価手法についての説明は、後述する。
【0086】
第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムの全体の厚みは、20〜40μmであることが好ましい。下限は、好ましくは25μm、さらに好ましくは31μmである。上限は、好ましくは、38μmであり、好ましくは36μmである。フィルム全体の厚みを上記の範囲とすると、フィルムにセラミックススラリーを保持するために必要な剛性を付与することができ、セラミックススラリーの塗布において、後工程で均一な乾燥が可能となり、塗工性を良好にすることができる。また、熱伝導性を適切な範囲とすることが可能となり、グリーンシート積層を行う際、積層特性を良好にすることができる。
【0087】
本発明におけるA’層の厚みは3.0μm以上8.0μm以下であることが好ましい。A’層の厚みを上記の範囲とすると、グリーンシート打ち抜き時のクッション性能を良好にすることができ、グリーンシートが離型フィルム側に食い込むことや、グリーンシートの端部の耳立ち(以下、反り返りという場合がある。)の発生を抑制することができる。また、粒子の脱落を抑制し、グリーンシート積層時の粒子のかみこみの発生を抑制することができ、グリーンシートの積層特性を良好にすることができる。また、表面の突起を均一に形成させることができ、離型フィルムの製造工程において、A’層表面に製造工程の擦過による傷の発生を抑制し、グリーンシートの表面の平滑性、塗工性を良好にすることができる。好ましくは、4.0μm以上7.0μm以下である。
【0088】
B’層の厚みは、10.0μm以上35.0μm以下であることが好ましい。B’層はA’層とともにグリーンシート打ち抜き時のクッション性に寄与すると同時に、C’層とともにグリーンシートの積層特性に影響する。B’層の厚みを上記の範囲とすると、クッション性が良好となり、グリーンシートのA層側への食い込みを少なくすることが可能となり、グリーンシートの耳立ちを抑制し、打ち抜き性を良好にすることができる。また、B’層の厚みを上記の範囲とすると、適度な熱伝導性を得ることができるため、グリーンシートの積層工程において、グリーンシートが離型フィルムから剥離や、他のグリーンシートとの積層密着が良好となる。
【0089】
C’層の厚みは、0.5μm以上2.0μm以下であることが好ましい。C’層の厚みを上記の範囲とすると、A’層と同様に、C’層に含有した粒子の脱落を抑制し、グリーンシート積層時の粒子のかみこみの発生を抑制し、グリーンシートの積層特性を良好にすることができる。また、表面の突起を均一に形成させることができ、フィルム成形時の走行性、離型フィルムのグリーンシート積層時の走行性などの、ハンドリング性を良好にすることができる。また、C’層の厚みを上記の範囲とすると、後述するC’層に含有する粒子の粒度分布曲線を特定の範囲としたとき、粒子によって形成される突起をより均一にすることができるため、好ましい。
【0090】
本発明におけるB’層の厚みは、A’層の厚み、C’層の厚みについて前述の範囲内において定め、積層フィルム全体の厚みを前述の範囲内で定めることによって決めることができる。
【0091】
第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、A’層表面の十点平均粗さSRz(A’)が300nm以下であることが好ましく、C’層表面の十点平均粗さSRz(C’)が600nm以下であることが、例えば、厚みが2μm以下のグリーンシートを成形する上での適切な平滑性を得られるので好ましい。
【0092】
A’層表面の十点平均粗さSRz(A’)を上記の範囲とすると、A層と接する面のグリーンシートの表面形態を良好とすることができ、セラミックスコンデンサーの静電容量のばらつきを抑制することができる。
【0093】
C’層表面は、第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムを加工する際、離型層塗布工程やセラミックススラリー塗布工程において、加工面の反対面になるため、ハンドリング性が求められる。また、スラリーを塗布し乾燥後に得るグリーンシートは、第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムに離型層を塗布してなる離型フィルム上に保持し、巻き取られるため、先述の通りC’層表面の形状は、巻き取られた後のグリーンシートの表面形態に影響を及ぼす。すなわち、C’層表面の十点平均粗さSRz(C’) を600nmとすると、巻き取られたグリーンシートの表面に凹みやピンホールの発生を抑制し、セラミックスコンデンサーの耐圧不良の発生を抑制することができるため好ましい。
【0094】
第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムの好ましい態様として、
A’層は、厚みが3.0μm以上8.0μm以下の層であって、A’層に含有する粒子は、体積平均粒子径(dA’)が0.1μm以上1.0μm以下であり、A’層の重量に対し0.05重量%以上1.0重量%以下含有し、
B’層は、厚みが10.0μm以上35.0μm以下の層であって、前記B’層に含有する粒子は、体積平均粒子径(dB’)が0.2μm以上1.5μm以下であり、無機粒子はB’層の重量に対し0.6〜6重量%含有し、有機粒子はB’層の重量に対し0.05〜5重量%含有し、
C’層は、厚み0.5μm以上2.0μm以下の層であって、前記C’層に含有する粒子は、体積平均粒子径(dC’)0.2μm以上1.0μm以下であり、C’層の重量に対し0.03重量%以上1.0重量%未満含有し、
A’層、B’層およびC’層が含有する粒子の体積平均粒子径が、式(1’)の関係でありかつ、層全体の厚みが20μm以上40μm以下である離型用二軸配向ポリエステルフィルムである。
【0095】
dA’< dC’≦ dB’ ・・・ 式(1’)
A’層、B’層およびC’層に入れる粒子の体積平均粒子径dA’、dB’、dC’は、 dA’< dC’ ≦ dB’ の関係でありかつ、A’層、B’層、C’層それぞれに上記の粒径の粒子を上記の範囲で含有させると、グリーンシート打ち抜き時の衝撃緩和や、グリーンシート積層時の熱分散や圧力分散が適正な範囲とすることが可能となり、グリーンシート打ち抜き性および、グリーンシート積層特性を良好にできるため好ましい。
【0096】
(1’)式を満足すると、薄膜グリーンシート成形時のセラミックススラリーの塗工性および、グリーンシート打ち抜き性およびグリーンシート積層特性のバランスを満足させることができるため好ましい。
【0097】
第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムのB’層には、第2の発明の効果を損なわない範囲で、第2の発明のフィルムの製膜工程で発生するエッジ部分(フィルム幅方向端部)や、あるいは他の製膜工程で発生した欠損のフィルムをリサイクル原料(回収原料)として、適時混合して使用することで、コストメリットを得ることが可能である。一般的に、フィルムの製造工程においては、フィルムの幅方向にクリップを把持して走行させる工程を有する。この場合、中間製品を巻き取るためには、先述のクリップ把持部には、著しい厚み斑を有するため、トリミングして除去する。巻き取った中間製品は、その後、製品幅にスリット(切断)加工を行い、製品ロールを得る。スリット(切断)加工された中間製品の端部は、製品とはならない。ここで、先述のクリップ把持部は、熱影響を大きく受け、結晶化が進んでいることから、結晶化状態の低い、中間製品の巻き取り後の工程で発生した屑のみを入れることが好ましい。B’層に入れる回収原料の、B’層全体の原料に対する混率は、回収原料の形状や、かさ密度によっては、原料乾燥の効率が悪くなることや、押出工程での吐出が不安定になることもあるため、これらの乾燥や押出工程の適性に合わせ、調整を行う。また、後述するヘイズを好ましい値にコントロールするように、所望の量に調整を行う。回収原料を得るまでの熱履歴を均質化させることが好ましく、例えば、未配向フィルムと二軸延伸後のフィルムを混在させて回収させると、結晶性が異なるために溶融粘度が安定せず、グリーンシートの打ち抜き性にばらつきが生じることがある。また、再溶融時に融点の違いが生じ、未溶融異物あるいは熱劣化異物の生成に繋がると、該異物が粗大突起となる。この粗大突起がA’層あるいはC’層の層厚みよりも大きな場合、A’層あるいはC’層の表面の粗大突起が形成される事がある。この際、特にA’層側へ表面突起が形成された場合、グリーンシートのピンホールが発生することがある。
【0098】
第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、C’層に含有する粒子は、粒度分布曲線においては、1つもしくは2つのピークが存在することが好ましい。第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、積層セラミックスコンデンサーを製造する工程において、グリーンシート成形の支持体に用いられる場合は、A’層の表面に離型層を形成させ、その離型層の上に、グリーンシートを保持したものを、巻き取る。巻き取られた後には、巻き締まりの影響でC’層表面とグリーンシートが圧着される。この際、C’層表面の突起による表面形状が、グリーンシートに転写されることがある。この時の転写痕が、グリーンシートの形態に影響を及ぼし、コンデンサーの誘電率に影響を及ぼす。このような転写痕をグリーンシートに与えないためには、C’層の表面が、グリーンシート表面に圧着される際の圧力が均一に分散されることが好ましい。このためには、C’層表面の平坦な面に形成された突起の高さが、均一であることが好ましい。
【0099】
また、C’層表面の突起は、巻き取られたグリーンシートを巻き出す際に、グリーンシート表面に引っかかり、グリーンシートを削るという問題を引き起こすことがある。この問題も、C’層表面の平坦な面に形成された突起の高さが、均一であることで防止できる。
【0100】
また、C’層表面の突起は、グリーンシートとC’層表面がブロッキングを起こすことも防止している。薄膜グリーンシートを形成できるような、高平滑な離型フィルムにおいては、C’層表面の突起が形成されていない平坦面にグリーンシートが接触しやすくなる。C’層に含有する粒子の粒度分布のピークが1つであると、グリーンシートへの接触は最も均一になるものの、C’層の平坦面とグリーンシートが密着しやすくなる。また、C’層表面とグリーンシートとの密着性が均一になり過ぎ、剥離の初期にて過度の剥離力が必要となることがある。この際、微視的に剥離力の弱い箇所をつくると、該箇所が剥離のきっかけとなり、剥離初期に剥離が進行しやすくなる。本発明者らは、C’層の表面を、剥離初期に剥離が進行しやすくなる形状とするには、C’層に含有する粒子を、粒度分布曲線において、ピークが2つ存在する粒子とすることにより達成できることを見いだした。しかしながら、C’層に含有する粒子を、粒度分布曲線において有するピークが3つを超えると、突起間の高低差が均一にならず、圧力の分散がランダムになりすぎることにより、ある箇所において過度な圧力がかかることがある。
【0101】
さらに、これらの粒子については界面活性剤などによる表面処理を施すことにより、ポリエステルとの親和性の改善を図ることが可能であり、脱落の少ない突起を形成することが可能で好ましい。
【0102】
第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向および横方向の破断強度の和が500MPa以上600MPa以下であることが好ましく、さらに好ましくは520MPa以上590MPa以下である。また、幅方向の破断強度は、長手方向の破断強度と同等以上であることが好ましく、その差(幅方向の破断強度−長手方向の破断強度)は、0MPa以上90MPa以下であることが好ましく、40MPa以上80MPa以下であることがさらに好ましい。長手方向および横方向の破断強度の和が500MPa以上であると、延伸工程に粒子周りのポリマーが粒子より剥離してなるボイド(空隙)構造が発現しやすくなり、所望の表面の中心線粗さや、クッション性が良好に発現する。また、長手方向および横方向の破断強度の和を600MPaより上回る状態を達成する為には、長手方向や幅方向への延伸を過度に実施する必要があり、延伸中に破断することがあるため好ましくない。
【0103】
また、長手方向および横方向の破断伸度は80%以上220%以下が好ましく、より好ましくは90%以上210%以下が好ましい。さらに、長手方向の破断伸度は、幅方向の破断伸度の同等以上が好ましく、その差(長手方向の破断伸度−幅方向の破断伸度)が0%以上100%以下の場合がさらに好ましい。さらに、長手方向の破断伸度が170%以上190%以下、幅方向の破断伸度が90%以上110%以下で、長手方向の破断伸度が幅方向の破断伸度より70%以上90%以下大きい場合がさらに好ましい。長手方向および横方向の破断伸度を80%以上とすると、セラミックススラリー塗布時に工程内での張力を受けた際、張力変動を吸収し、塗布斑の発生を抑制することができるため好ましい。また、長手方向または横方向の破断伸度が220%以下とすると、離型層塗布後の保管時に平面性を損なうことを抑制することができる。また、セラミックススラリー塗布後の保管時に、グリーンシートの平面性を損ねることも抑制することができる。破断伸度を先述の範囲にコントロールすることにより、加工工程で受ける張力により、フィルムが伸縮する現象や、巻き取り後にも残留応力が回復する挙動をコントロールすることができ、最終的には薄膜のグリーンシートの平面性を良好に保つことができる。また、長手方向の破断伸度を、幅方向の破断伸度と同等以上であると好ましい理由は、以下の通りである。離型層を塗布する工程および巻き取り工程では、フィルムの長手方向に張力がかかる。該張力は巻き取られた後にもフィルム内の応力として残る。そして、長手方向に張力がかかった際に、ポワソン変形により幅方向のフィルムに寸法変化が発生する。この幅方向の寸法変化が、離型層を塗布したロールを巻き出す際に平面性不良が発生することがある。この寸法変化を抑制するためには、長手方向の破断伸度を、幅方向の破断伸度と同等以上とし、また、長手方向と幅方向の破断伸度の差を上記の範囲にすることが好ましい。
【0104】
また、第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、ヘイズが7%以下であることが好ましく、6%以下がさらに好ましい。積層セラミックスコンデンサーの離型用途としては、回収原料を3層複合層の中間層に入れることは可能であるが、ヘイズが7%を超えてしまうと、グリーンシートの成型状態、特に端部の状態を確認するのが難しくなるため、好ましくない。
【0105】
さらに、第2の発明のポリエステルフィルムの長手方向の厚み斑が、2μm以下が好ましい。なお、第2の発明において、長手方向の厚み斑は、フィルムの長手方向に15mフィルムの厚みを測定し、記録されたフィルム厚さチャートから、フィルムの最大厚みと最小厚みの差として求められる。好ましくは1.4μm以下である。従来から、フィルムの厚み斑を少なくすることはフィルムを製造する上での課題であったが、第2の発明の離型用フィルム、特に薄膜セラミックスコンデンサー製造に適用される離型フィルムへ適用するには長手方向の厚み斑を前記範囲とすることが、グリーンシートの厚さを薄くする際にコンデンサーの静電容量にばらつきを生じさせないため、好ましい。
【0106】
第2の発明におけるポリエステルフィルムは、フィルムのA’層表面に存在する高さ0.27μm以上の粗大突起が5個/100cm
2以下であることが好ましい。さらに0.54μm以上の粗大突起が、1個/100cm
2以下であることが好ましい。0.54μm以上の粗大突起は、実質的に存在しないことがさらに好ましい。粗大突起数を上記の範囲とすると、離型剤を塗布時、塗布ムラ、ピンホール状の塗布抜け欠点を抑制することができる。また、グリーンシートの厚さを薄くする際に発生する離型剤塗布抜けによって、グリーンシートの剥離斑が生じることを抑制することができる。また、粗大突起が原因となるグリーンシートに凹みやピンホールを生じさせることを抑制することができる。
【0107】
フィルム表面の粗大突起において上記の好ましい形態を達成するためには、A’層、B’層、C’層に含有する粒子種および体積平均粒子径を上記の範囲にするが挙げられる。また、第2の発明のポリエステルフィルムの原料供給のための設備、特に原料貯蔵設備(サイロ)、原料搬送のための配管を、第2の発明で使用する粒子を含むマスターペレットのみのために使用し、以下の方法で原料を搬送することなどが挙げられる。原料を搬送するためには、ブロワーを用い空気により搬送を行うか、自由落下により搬送を行うが、空気により搬送を行う際は、空気を取り込む際に0.3μm以上の塵埃を95%カットできるフィルターを用い、空気を濾過することが好ましい。また、第2の発明の製造時に用いるフィルターを、後述の高精度なフィルターとすることにより達成することができる。
【0108】
第2の発明におけるポリエステルフィルムにおいては、寸法変化率を適性にコントロールすることが、後加工、特に離型層を塗布した後の平面性を良好に保つ上で好ましい。寸法変化率を後述する範囲とする方法としては、製膜条件における弛緩処理等の公知の方法により適宜調整することにより達成出来る。150℃における寸法変化率は長手方向で2%以下、幅方向で2.5%以下が好ましく、長手方向で0.5%以上1.7%以下、幅方向で1%以上2%以下がさらに好ましい。また、100℃における寸法変化率は長手方向、幅方向ともに1%以下が好ましく、0.2%以上0.8%以下の範囲であるとさらに好ましい。該寸法変化率において上記範囲の下限を下回ると、離型層を塗布する際にタルミによる平面性不良が発生し、上限を上回ると、離型層を塗布する際に収縮によりトタン状に収縮斑が発生し平面性不良となり、いずれの場合も薄膜グリーンシートの塗布厚みに斑を生じさせることがあるため、好ましくない。
【0109】
次に第2の発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。ポリエステルに不活性粒子を含有せしめる方法としては、例えばジオール成分であるエチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散せしめ、このエチレングリコールスラリーをポリエステル重合完結前の任意段階で添加する。ここで、粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性が良好であり、粗大突起の発生を抑制でき好ましい。また粒子の水スラリーを直接、所定のポリエステルペレットと混合し、ベント方式の2軸混練押出機に供給しポリエステルに練り込む方法も第2の発明の製造に有効である。
【0110】
このようにして、各層のために準備した、粒子含有マスターペレットと粒子などを実質的に含有しないペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給する。第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムの製造における押出機は、1軸、2軸の押出機を用いることができる。また、ペレットの乾燥工程を省くために、押出機に真空引きラインを設けた、ベント式押出機を用いることもできる。また、最も押出量が多くなるB’層には、ペレットを溶融する機能と、溶融したペレットを一定温度に保つ機能をそれぞれの押出機で分担する、いわゆるタンデム押出機を用いることができる。第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおけるA’層およびC’層は、二軸式ベント式押出機を用いることが、粒子の分散性を良好に保てるので好ましい。
【0111】
押出機で溶融して押出したポリマーは、フィルターにより濾過する。ごく小さな異物もフィルム中に入ると粗大突起欠陥となるため、フィルターには例えば3μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。続いてスリット状のスリットダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、3台の押出機、3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば矩形合流部を有する合流ブロック)を用いて3層に積層し、口金からシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。この場合、背圧の安定化および厚み変動の抑制の観点からポリマー流路にスタティックミキサー、ギヤポンプを設置する方法は有効である。
【0112】
延伸方法は同時二軸延伸であっても逐次二軸延伸であってもよい。特に、同時二軸延伸においてはロールによる延伸を伴わないため、フィルム表面の局所的な加熱ムラを抑制し、均一な品質が得られると共に、延伸時にロール延伸に伴うフィルムとロールとの接触場所での速度差、ロールの微少傷の転写などによる傷の発生を抑制でき好ましい。
【0113】
同時二軸延伸においては未延伸フィルムを、まず長手および幅方向に延伸温度を80℃以上130℃以下、好ましくは85℃以上110℃以下として同時に延伸する。延伸温度が80℃よりも低くなるとフィルムが破断しやすく、延伸温度が130℃よりも高くなると十分な強度が得られないため好ましくない。また、延伸ムラを防止する観点から、長手方向・幅方向の合計延伸倍率は4倍以上20倍以下、好ましくは6倍以上15倍以下である。合計延伸倍率が4倍よりも小さいと十分な強度が得られにくい。一方、倍率が20倍よりも大きくなると、フィルム破断が起こりやすく、安定したフィルムの製造が難しい。必要な強度を得るためには、温度140℃以上200℃以下、好ましくは160℃以上190℃以下で長手方向及び/又は幅方向に1.02倍以上1.5倍以下、好ましくは1.05倍以上1.2倍以下で再度延伸を行うことが好ましく、合計延伸倍率が、長手方向で3倍以上4.5倍以下、好ましくは3.5倍以上4.2倍以下、幅方向に3.2倍以上5倍以下、好ましくは3.6倍以上4.3倍以下である。目標とするフィルムの破断強度を達成するため、適時倍率を選択できるが、幅方向の破断強度を高くするため、幅方向の延伸倍率を長手方向よりも高めに設定することがさらに好ましい。その後、205℃以上240℃以下 好ましくは220℃以上240℃以下で0.5秒以上20秒以下、好ましくは1秒以上15秒以下熱固定を行う。熱固定温度が205℃よりも低いとフィルムの熱結晶化が進まないため目標とする寸法変化率などが安定しにくいため好ましくない。また、フィルム物性を安定させるため、フィルム上下の温度差が20℃以下、好ましくは10℃以下、更に好ましくは5℃以下である。フィルム上下での温度差が20℃よりも大きいと、熱処理時に微小な平面性の悪化を引き起こしやすいため好ましくない。その後、長手及び/又は幅方向に0.5%以上7.0%以下の弛緩処理を施す。
【0114】
同時二軸延伸では後述する逐次二軸延伸とは異なり、高温空気によってフィルムが加熱される。そのため、フィルム表面のみ局所的に加熱されて粘着が発生することはなく、延伸方式として逐次延伸より好ましい。
【0115】
一方、第2の発明のポリエステルフィルムは、逐次延伸を用いて製造することもできる。
最初の長手方向の延伸は、傷の発生を抑制する上で重要であり、延伸温度は90℃以上130℃以下、好ましくは100℃以上120℃以下である。延伸温度が90℃よりも低くなるとフィルムが破断しやすく、延伸温度が130℃よりも高くなるとフィルム表面が熱ダメージを受けやすくなるため好ましくない。また、延伸ムラ、及びキズを防止する観点からは延伸は2段階以上に分けて行うことが好ましく、トータル倍率は長さ方向に3倍以上4.5倍以下、好ましくは3.5倍以上4.2倍以下であり、幅方向に3.2倍以上5倍以下、好ましくは3.6倍以上4.3倍以下である。目標とするフィルムの破断強度を達成するため、適時倍率を選択できるが、幅方向の破断強度を高くするため、幅方向の延伸倍率を長手方向よりも高めに設定することがさらに好ましい。かかる温度、倍率範囲をはずれると延伸ムラあるいはフィルム破断などの問題を引き起こし、第2の発明の特徴とするフィルムが得られにくいため好ましくない。再縦または横延伸した後、205℃以上240℃以下、好ましくは210℃以上230℃以下で0.5秒以上20秒以下、好ましくは1秒以上15秒以下熱固定を行う。特に熱固定温度が205℃よりも低くなるとフィルムの結晶化が進まないために構造が安定せず、目標とする寸法変化率などの特性が得られず好ましくない。
【0116】
逐次延伸において、長手方向の延伸過程は、フィルムとロールの接触し、ロールの周速とフィルムの速度差による傷が発生しやすい工程につき、ロール周速がロール毎に個別に設定できる駆動方式が好ましい。長手方向の延伸過程において、搬送ロールの材質は、延伸前に未延伸フィルムをガラス転移点以上に加熱するか、ガラス転移点未満の温度に保った状態で延伸ゾーンまで搬送し、延伸時に一挙に加熱するかにより選択されるが、延伸前に未延伸フィルムをガラス転移点以上まで加熱する際は、加熱による粘着を防止するうえで、非粘着性シリコーンロール、セラミックス、テフロン(登録商標)から選択できる。また、延伸ロールは最もフィルムに負荷がかかり、該プロセスで傷や延伸斑が発生しやすい工程につき、延伸ロールの表面の中心線粗さRaは、0.005μm以上1.0μm以下、好ましくは0.1μm以上0.6μm以下である。Raが1.0μmよりも大きいと延伸時ロール表面の凸凹がフィルム表面に転写するため好ましくなく、一方0.005μmよりも小さいとロールとフィルム地肌が粘着し、フィルムが熱ダメージを受けやすくなるため好ましくない。表面の中心線粗さを制御するためには研磨剤の粒度、研磨回数などを適宜調整することが有効である。未延伸フィルムをガラス転移点未満の温度に保った状態で延伸ゾーンまで搬送し、延伸時に一挙に加熱する際、予熱ゾーンの搬送ロールは、ハードクロムやタングステンカーバイドで表面処理を行った、表面の中心線粗さRaが0.2μm以上0.6μm以下の金属ロールを使用するのが好ましい。
【0117】
第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、かかる長手方向に延伸された一軸延伸フィルムを、横延伸機にて80℃以上120℃未満に加熱した後、3倍以上6倍未満で幅方向に延伸し、二軸延伸(二軸配向)フィルムとする。
【0118】
第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムは、さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行なってもよいし、同時2軸にて再延伸しても良い。更に、二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行なうが、この熱処理はオーブン中、加熱されたロール上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は通常150℃以上245℃未満の任意の温度とすることができ、熱処理時間は、通常1秒間以上60秒間以下行なうことが好ましい。熱処理は、フィルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行なってもよい。また、熱処理後は熱処理温度より0℃以上150℃以下低い温度で幅方向に0%以上10%以下で弛緩させる。
【0119】
熱処理後のフィルムは、例えば中間冷却ゾーンや除冷ゾーンを設け、寸法変化率や平面性を調整することができる。また特に、特定の熱収縮性を付与するために、熱処理時あるいはその後の中間冷却ゾーンや除冷ゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に弛緩してもよい。
【0120】
二軸延伸後のフィルムは、搬送工程にて冷却させた後、エッジを切断後巻取り、中間製品を得る。この搬送工程にて、フィルムの厚みを測定し、該データをフィードバックして用いてダイ厚みなどの調整によってフィルム厚みの調整を行い、また、欠点検出器による異物検知を行う。
【0121】
エッジの切断時には、切粉の発生を抑制することが、第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて必要である。エッジの切断は丸刃、シェアー刃、ストレート刃を使用して行うが、ストレート刃を用いる場合は、刃がフィルムに当たる箇所を、常に同じ箇所にさせないことが、刃の摩耗を抑制できるため好ましい形態である。このためオシレーションする機構を有することが好ましい。また、フィルム切断箇所に吸引装置を設けて、発生した切り粉や、切断後のフィルム端部同士が削れて発生する削れ粉を吸引することが好ましい。
【0122】
中間製品はスリット工程により適切な幅・長さにスリットして巻き取り、第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムのロールが得られる。スリット工程におけるフィルムの切断時も、先述のエッジの切断と同様な切断の方式から選定できる。
【0123】
中間製品を所望の幅にスリットを行い、第2の発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルムを得る。
【実施例】
【0124】
以下、実施例で本発明を詳細に説明する。なお、実施例中、A層、B層、C層とあるものは、第1の発明のA層、B層、C層、および、第2の発明のA’層、B’層、C’層をさすものとする。
【0125】
本発明に関する測定方法、評価方法は次の通りである。
【0126】
(1)粒子の体積平均粒子径および粒度分布のピーク判定
フィルムからポリマーをプラズマ低温灰化処理法で除去し、粒子を露出させる。処理条件は、ポリマーは灰化されるが粒子は極力ダメージを受けない条件を選択する。その粒子を走査型電子顕微鏡(SEM;株式会社日立製作所製 S−4000型)で観察し、粒子画像をイメージアナライザ(株式会社ニレコ製 LUZEX_AP)に取り込み、等価円相当径を測定し、粒子の体積平均粒子径を求める。SEMの倍率は粒径により、5000〜20000倍から適宜選択する。任意に観察箇所をかえて、少なくとも5000個の粒子ので粒径の等価円相当径を測定し、その平均値から体積平均粒子径を求める。
【0127】
粒子がプラズマ低温灰化処理法で大幅にダメージを受ける場合には、フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM;株式会社日立製作所製H−600型)を用いて、粒径により、3000〜20000倍で観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所を変えて少なくとも100個以上の粒子の等価円相当径を測定し、その平均値から体積平均粒子径dを求める。
【0128】
なお、粒子の体積平均粒子径を測定する際に、SEMおよびTEMで観察した際に5000倍で10視野確認しても、粒子の存在が認められなかった場合には、粒子を実質的に含有しないと判断する。
【0129】
また、粒子の粒度分布曲線のピーク判定は、イメージアナライザで処理した画像から、体積平均粒子径を、0μmを超えて0.2μm以下、0.2μmを超えて0.4μm以下、0.4μmを超えて0.6μm以下・・というように0.2μm刻みで層別し、粒子の個数をカウントした際、全体の20%以上の個数があれば、1つのピークとみなす。このピークをカウントしピーク判定する。
【0130】
(2)粒子の体積形状係数
走査型電子顕微鏡で、粒子の写真を例えば5000倍で10視野撮影した上、画像解析処理装置を用いて、投影面最大径および粒子の平均体積を算出し、下記式により体積形状係数を得る。
【0131】
f = V/ Dm
3
ここで、Vは粒子の平均体積(μm
3) 、Dm は投影面の最大径(μm)である。
【0132】
(3)モース硬度および架橋度
<モース硬度>
フィルムに添加する粒子と同じ組成、構造をもった試験片、または、粒子に粉砕する前の鉱物を試験片とし、モース硬度測定用の標準鉱物と互いに引っかいて、引っかきが行われるかどうかで測定した。標準鉱物は以下の通りである。モース硬度1:滑石、モース硬度2:石膏、モース硬度3:方解石(カルサイト)、モース硬度4:蛍石(フローライト)、モース硬度5:燐灰石(アパタイト)、モース硬度6:正長石(ムーンストーン)、モース硬度7:石英(クォーツ)、モース硬度8:トパーズ、モース硬度9:コランダム、モース硬度10:ダイヤモンド。
【0133】
<架橋度>
本発明における架橋度は、以下の式にて求める。
架橋度(%)= (原料モノマ中の架橋成分の重量)/(原料モノマの全重量)
×100
(4)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃ で測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いる。すなわち、
ηsp/C=[η]+ K[η]
2 ・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100ml あたりの溶解ポリマー重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343 とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示す。
【0134】
(5)フィルム積層厚み
透過型電子顕微鏡(TEM;日立(株)製H−600型)を用いて、加速電圧100kVで、フィルムの断面を、超薄切片(RuO
4染色)で観察する。その断面全体から全厚みを求め、積層厚みについては、その界面に観察される粒子の最も深い地点から表面からの深さ、つまり積層されている厚みを求める。倍率は測定するフィルムの全厚み、層厚みによって適宜倍率を設定すればよいが、一般的には全厚み測定には1000倍、積層厚み測定には1万〜10万倍が適当である。
粒子が少ない場合など、積層界面を判別するためにどのような倍率で粒子像を得るべきかを事前に想定するために、断面のSEM−XMAによって断面における元素の分布(マッピング)から想定される積層厚みの概算を行い、TEMでの設定倍率を定めると効率的である。
【0135】
(6)破断伸度および破断強度
JIS C2151−1990に準じ、インストロンタイプの引張試験機(オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“ テンシロン” 万能試験機RTC−1210)を用いて測定した。幅10mmの試料フィルムを、試長間100mm、引張り速度200mm/分の条件で引っ張り試験を行い、フィルムが破断した時の応力を求めて破断強度とし、フィルムが破断した時の歪み(伸び率)を求めて破断伸度した。測定は23 ℃ 、湿度65%RHで行う。
【0136】
(7)寸法変化率
フィルム表面に、幅10mm、測定長約100mmとなるように2本のラインを引き、この2本のライン間の距離を23℃で正確に測定しこれをL0とする。このフィルムサンプルを100℃ 又は150℃のオーブン中に30分間、1.5gの荷重下で放置した後、再び2本のライン間の距離を23℃で測定しこれをL1とし、下式によりそれぞれの温度での寸法変化率を求める。
寸法変化率(%)={(L0−L1)/L0}×100。
【0137】
(8)フィルム表面の中心線粗さ(SRa値)
三次元微細表面形状測定器(小坂製作所製ET−350K)を用いて測定し、得られた表面のプロファイル曲線より、JIS・B0601(1994年)に準じ、算術平均粗さSRa値を求める。測定条件は下記のとおり。
X 方向測定長さ: 0.5mm、X方向送り速度: 0.1mm/ 秒。
Y 方向送りピッチ: 5μm、Y方向ライン数: 40本。
カットオフ: 0.25mm。
触針圧: 0.02mN。
高さ(Z方向) 拡大倍率: 5万倍。
【0138】
(9)粗大突起数
粗大突起数は10cm四方の大きさのフィルムを測定する面同士を2枚重ね合わせて、印可電圧をかけて静電気力で密着し、フィルム表面の粗大突起により発生する干渉縞から高さを推定する。干渉縞が1重環で0.270μmであり、2重環0.540μmおよび3重環0.810μm以上の粗大突起個数を測定する。光源としては、ハロゲンランプに564n mのバンドパルスフィルターをかけたものを用いる。
【0139】
(10)長手方向の厚み斑フィルムの長手方向に15mフィルムの厚みを測定し、記録されたフィルム厚さチャートから、フィルムの最大厚みと最小厚みの差として求められる。
【0140】
安立電気製フィルム厚み連続測定器を用いて、フィルムの厚みをフィルムの長手方向に15m測定し、記録されたフィルム厚さチャートから、最大厚みと最小厚みの差を厚み斑(μm)として測定する。測定条件は下記のとおり。
構成: K−306C 広範囲電子マイクロメータ、K−310Cレコーダー、フィルム送り装置。
フィルム幅: 45mm、測定長: 15m、フィルム送り速度: 3m/分
検出器: 3R ルビー端子、測定力: 15 ± 5g。
【0141】
(11)フィルムのヘイズ
JIS K7105−1981に準じ、フィルム幅方向の中央部から、長手4.0cm×幅3.5cmの寸法に切り出したものをサンプルとし、ヘイズを、ヘイズメータ(スガ試験機製HGM−2DP(C光源用))を用いて測定する。
【0142】
[実施例1]
(1)ポリエステルペレットの作成
(ポリエステルAの作成)
テレフタル酸86.5重量部とエチレングリコール37.1重量部を255℃で、水を留出しながらエステル化反応を行う。エステル化反応終了後、トリメチルリン酸0.02重量部、酢酸マグネシウム0.06重量部、酢酸リチウム0.01重量部、三酸化アンチモン0.0085重量部を添加し、引き続いて、真空下、290℃まで加熱、昇温して重縮合反応を行い、固有粘度0.63dl/gのポリエステルペレットAを得た。
【0143】
(ポリエステルBおよびポリエステルCの作成)
上記と同様にポリエステルを製造するにあたり、エステル交換後、体積平均粒子径0.2μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度7の球状シリカをポリエステルBに、体積平均粒子径0.06μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度7の球状シリカをポリエステルCにそれぞれ添加し、重縮合反応を行い、粒子をポリエステルに対し1重量%含有するシリカ含有マスターペレットを得た(ポリエステルB)、(ポリエステルC)。
【0144】
なお、ポリエステルBおよびポリエステルCで用いる球状シリカは、エタノールとエチルシリケートとの混合溶液を攪拌しながら、この混合溶液に、エタノール、純水、および塩基性触媒としてアンモニア水からなる混合溶液を添加し、得られた反応液を攪拌して、エチルシリケートの加水分解反応およびこの加水分解生成物の重縮合反応を行なった後に、反応後の攪拌を行い、単分散シリカ粒子を得た。
【0145】
(ポリエステルD、EおよびポリエステルFの作成)
さらに別に、シード法によるジビニルベンゼン(架橋成分)80重量%、エチルビニルベンゼン15重量%、スチレン5重量%からなる体積平均粒子径0.3μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度3のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子(架橋度80%)の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットに、ベント式二軸混練機を用いて含有させ、体積平均粒子径0.3μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し1重量%含有するマスターペレットを得た(ポリエステルD)。
【0146】
体積平均粒子径0.8μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度3のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し1重量%含有マスターペレット(ポリエステルE)、体積平均粒子径0.1μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度3のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し1重量%含有するマスターペレット(ポリエステルF)を同様にして得た。
【0147】
(ポリエステルGの作成)
炭酸カルシウム粒子(モース硬度3)10重量部とエチレングリコール90重量部を湿式粉砕し、炭酸カルシウム/エチレングリコール分散スラリー(A)を得た。この炭酸カルシウムの体積平均粒子径は1.1μmであった。他方、ジメチルテレフタレート100重量部、エチレングリコール64重量部に触媒として酢酸マンガン0.04重量部、三酸化アンチモン0.03重量部を加えエステル交換反応を行い、その後反応生成物に、リン化合物としてトリメチルホスフェート0.04重量部を加え、さらにその後、先に調整したスラリー(A)1部を加えて重縮合反応を行い、ポリエステルに対し1重量%炭酸カルシウム含有するマスターペレット(ポリエステルG)を得た。
【0148】
一方で、下記処方のフィルムを製造した後のフィルムを回収し、ペレット化したものを回収原料Aとした。なお以下に記載する比率は、フィルム全体の重量に対する重量比(重量%)で表す。
ポリエステルA 93.4
ポリエステルD: 0.6
ポリエステルG: 6.0。
【0149】
(2)ポリエステルペレットの調合
A層、B層、C層それぞれの層の押出機に供給するポリエステルペレットは、以下の比率にて調合する。なお以下に記載する比率は、おのおのの層を構成するポリエステルペレットに対する重量比(単位:重量%)である。
【0150】
A層
ポリエステルA:87.5
ポリエステルB:12.5
B層
ポリエステルA:60.0
回収原料A :40.0
C層
ポリエステルA:65.0
ポリエステルC:30.0
ポリエステルD: 5.0。
【0151】
(3)二軸配向ポリエステルフィルムの製造
先述の、各層について調合した原料を、ブレンダー内で攪拌した後、A層およびC層の原料は、攪拌後の原料を、A層およびC層用のベント付き二軸押出機に供給し、B層の原料は160℃で8時間減圧乾燥し、B層用の一軸押出機に供給した。275℃で溶融押出し、3μm以上の異物を95% 以上捕集する高精度なフィルターにて濾過した後、矩形の異種3層用合流ブロックで合流積層し、層A、層B、層Cからなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。
【0152】
この未延伸積層フィルムに逐次延伸(長手方向、幅方向)を実施した。まず長手方向の延伸を実施し、105℃でテフロン(登録商標)ロールにて搬送した後に、長手方向に120℃で4.0倍延伸して一軸延伸フィルムとした。
【0153】
この一軸延伸フィルムをステンター内で横方向に115℃で4倍延伸し、続いて230℃で熱固定し、その際幅方向に5%弛緩し搬送工程にて冷却させた後、エッジを切断後に巻き取り、厚さ38μmの二軸延伸フィルムの中間製品を得た。この中間製品をスリッターにてスリットし、厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。この二軸延伸フィルムの積層厚みを測定した結果、A層:6.5μm、B層:30.5μm、C層:1.0μmであった。
【0154】
(4)離型層の塗布
次にこの二軸延伸フィルムのロールに、架橋プライマー層(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名BY24−846)を固形分1重量%に調整した塗布液を塗布/乾燥し、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化した。その後1時間以内に付加反応型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名LTC750A)100重量部、白金触媒(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名SRX212)2重量部を固形分5重量%に調整した塗布液を、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化した後に巻き取り、離型フィルムを得た。
【0155】
(5)グリーンシートの塗布状態の評価(セラミックススラリーの塗布性)
チタン酸バリウム(富士チタン工業(株)製商品名HPBT−1)100重量部、ポリビニルブチラール(積水化学(株)製商品名BL−1)10重量部、フタル酸ジブチル5重量部とトルエン−エタノール(重量比30:30)60重量部に、数平均粒径2mmのガラスビーズを加え、ジェットミルにて20時間混合・分散させた後、濾過してペースト状のセラミックスラリーを調整した。得られたセラミックスラリーを、離型フィルムの上に乾燥後の厚みが2μmとなるように、ダイコーターにて塗布し乾燥させ、巻き取り、グリーンシートを得た。 上記で巻き取られたグリーンシートを、繰り出し、離型フィルムから剥がさない状態にて目視で観察し、ピンホールの有無や、シート表面および端部の塗布状態を確認する。なお観察する面積は幅300mm、長さ500mmである。
【0156】
a.ピンホール、凹みの有無
離型フィルムの上に成型されたグリーンシートについて、背面から1000ルクスのバックライトユニットで照らしながら、塗布抜けによるピンホールあるいは、離型フィルム背面の表面転写による凹み状態を観察する。
A:ピンホールも凹みも無い。
B:ピンホールは無く、凹みが3個以内認められる
C:ピンホールが有り、また凹みが4個以上認められる。
【0157】
b.シート表面・端部の塗布状態
離型フィルムの上に成型されたグリーンシートについて、シートの表面および端部を目視で観察する。
A:シート表面および端部に塗布斑が認められない。
B:シート表面に塗布斑が無いが、端部には塗布斑が有る。
C:シート表面、端部に塗布斑が認められる。
【0158】
実施例1においては、ピンホール、凹みの有無評価は、ピンホール、凹みとも無いため、評価をAとした。また、シート表面も端部も塗布斑が無いため、評価をAとした。
【0159】
(6)グリーンシートの打ち抜き性
下記工程にて内部電極パターンを形成し、グリーンシートを打ち抜きおよび積層を行った後、剥離を行った際の特性評価を実施する。
【0160】
a.内部電極のパターンの形成
Ni粒子44.6重量部と、テルピネオール52重量部と、エチルセルロース3重量部と、ベンゾトリアゾール0.4重量部とを、混練し、スラリー化して内部電極層用塗料を得る。内部電極層用塗料を、グリーンシートの上に、スクリーン印刷法によって所定パターンで塗布し、内部電極パターンを有するセラミックグリーンシートを得た。乾燥温度は90℃、乾燥時間は5分である。
【0161】
b.グリーンシートの打ち抜き性評価
上記の、離型フィルムの上に成形され、内部電極パターンを付与した、セラミックグリーンシートを繰り出し、離型フィルム上にてグリーンシートを100枚分切断し打ち抜く。切断には回転式の丸刃カッターを使用する。この際、グリーンシートを切断するための、回転式丸刃カッターの切り込み深さは、グリーンシート厚みプラス2μm〜3μmに設定する。この際、離型フィルム上で打抜かれた後のグリーンシートの切断面を目視で確認する。なお評価においては、丸刃式カッターは1000枚切断後交換する。
【0162】
まず目視にてグリーンシート上面より切断面の均一性を確認し、切断カスや欠落の有無や、離型フィルムからの剥離の有無を確認する。この際の評価指標は以下の通りとする。
A:グリーンシート上面の切断面に切断カスや欠落が無く、離型フィルムとグリーンシートとの局部的な剥離が無い。
B:グリーンシート上面の切断面に波状の凹凸がうっすらと見える。離型フィルムとグリーンシートとの局部的な剥離が無い。
C:グリーンシート上面の切断面に切断カスや欠落、あるいは、離型フィルムとグリーンシートとの局部的な剥離が有るシートが、1枚でも発生している。グリーンシートの積層において異物を噛込む可能性あるためCとする。
【0163】
実施例1において、グリーンシートの打ち抜き性評価を実施したところ、グリーンシート上面の切断面に切断カスや欠落が無く、離型フィルムとグリーンシートとの局部的な剥離が無いため,評価をAとした。
【0164】
(7)グリーンシート積層特性
上記の、離型フィルム上で打ち抜かれた後のグリーンシートを積層する。積層は、離型フィルム上にグリーンシートを保持したまま搬送後、グリーンシートを積層体に熱圧着した後に、離型フィルムを剥がす。この作業を100枚分繰り返し、セラミック積層体を得る。この際の積層状態を目視で確認して、グリーンシート積層特性を以下の基準にて評価する。
A:シート積層時に、熱圧着が均等に行われているので、グリーンシート剥離不良が発生せず、また、エア噛み込みや異物噛み込みがなく良好に積層されている。
B:シート積層時に熱圧着がやや不均一であり、エア噛み込みはなく、許容範囲の剥離状態であるが、ごくたまに剥離状態が安定しないことがある。
C:シート積層時に、エア噛み込みあるいは異物噛み込みがある。または剥離不良が発生する。
【0165】
実施例1においてグリーンシート積層特性を評価した結果、シート積層時にグリーンシート剥離不良が発生していないためAであった。
【0166】
[実施例2]
A層、C層に入れる粒子種を変更した以外は実施例1と同じ製法にて厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。離型層の塗布、グリーンシートの成型(セラミックススラリーの塗布)、内部電極のパターンの形成、グリーンシートの打ち抜き性評価、グリーンシート積層特性についても、実施例1と同様の方法で実施・評価した(以降、実施例、比較例とも同様な加工工程にて実施・評価する)。
【0167】
スラリー塗布特性、グリーンシート打ち抜き性、グリーンシート積層特性ともにAで、良好であった。
【0168】
[実施例3、4]
実施例1の実施形態にて、各層の厚みを各々変更し、これに合わせ粒子の種類及び添加量を調整して、実施例1と同じ製法にて厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。セラミックススラリー塗布特性、グリーンシート打ち抜き性、グリーンシート積層特性ともにAで、良好であった。
【0169】
[実施例5,6]
実施例1の実施形態にて、C層の厚みを0.5μm(実施例7)、2.0μm(実施例8)として、A層の組成は表に記載のとおりとし、A層の厚みはいずれも6.5μmとし、B層の厚みを31.0μm(実施例7)、29.5μm(実施例8)とした。セラミックススラリーの塗布特性は問題無くAであった。内部電極パターン後のグリーンシート打ち抜き性も問題ないものであった。グリーンシート積層時の剥離工程では、実施例5、6ともに剥離が安定しないためBであった。
【0170】
[実施例7]
B層の処方において、実施例4で得たフィルムをB層への回収原料(回収原料B)として使用し、A層とC層は実施例4と同じ処方とした。実施例1と同じ製法にて厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。スラリー塗布特性、グリーンシート打ち抜き性、グリーンシート積層特性ともにAで、良好であった。
【0171】
[実施例8、9]
実施例2において、全厚みを31μm、25μmとして、A層およびC層の厚みは実施例2と同じく、B層の厚みを変えることで全厚みを調節した。スラリー塗布特性、グリーンシート打ち抜き性、グリーンシート積層特性ともにAで、良好であった。
【0172】
[実施例10、11]
実施例1の縦延伸倍率を4.0倍から3.3倍に変更した以外は実施例1と同様にして、二軸延伸フィルムのロールを得た(実施例10)。また、実施例8の縦延伸倍率を4.0倍から3.3倍に変更した以外は実施例8と同様にして、二軸延伸フィルムのロールを得た(実施例11)。スラリー塗布特性、グリーンシート打ち抜き性、グリーンシート積層特性ともにAで、良好であった。
【0173】
[実施例12、13]
実施例1にて、A層、B層、C層の組成を表に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同じ製法にて、厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た(実施例12、実施例13)。実施例12は、スラリー塗布特性、グリーンシート打ち抜き性、グリーンシート積層特性ともにAで、良好であったが、実施例13においては、シート表面に塗布斑が無かったが端部に塗布斑があったため、スラリー塗布性のシート表面、端部の評価はBとした。実施例13では、グリーンシート打ち抜き性、グリーンシート積層特性ともにAで、良好であった。
【0174】
[実施例14]
ポリエステルDを得るにあたり、シード法によるジビニルベンゼン(架橋成分)40重量%、エチルビニルベンゼン15重量%、スチレン45重量%からなる体積平均粒子径0.3μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度3のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子(架橋度40%)の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットに、ベント式二軸混練機を用いて含有させた。また、ポリエステルFを得るにあたり、シード法によるジビニルベンゼン(架橋成分)40重量%、エチルビニルベンゼン15重量%、スチレン45重量%からなる体積平均粒子径0.1μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度3のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子(架橋度40%)の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットに、ベント式二軸混練機を用いて含有させた。
【0175】
実施例13の実施形態にて、上記のポリエステルDおよびポリエステルFを用い、二軸延伸フィルムのロールを得た。グリーンシート打ち抜き性、グリーンシート積層特性ともにAで、良好であった。
【0176】
[比較例1]
実施例1の実施形態にて、A層には実質的に粒子を含有しない処方にて、実施例1と同じ製法にて厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。
【0177】
スラリー塗布後、乾燥工程後にグリーンシート端部で波打ちが発生した。グリーンシート打ち抜き時には、切断面の界面でグリーンシートが剥離した。剥離の影響もありグリーンシートの均一な積層ができない場合が生じ、好ましくない結果であった。
【0178】
[比較例2]
実施例1の実施形態にて、B層には実質的に粒子を含有しない処方にて、実施例1と同じ製法にて厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。
【0179】
スラリー塗布、内部電極のパターンの形成は良好であるが、打ち抜きにおいてグリーンシートの切断に斑が生じグリーンシートが剥離するものもあった。グリーンシートの積層ができない場合が生じ、好ましくない結果であった。
【0180】
[比較例3]
実施例1の実施形態にて、C層には実質的に粒子を含有しない処方にて、実施例1と同じ製法にて厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。
【0181】
離型層の塗布後の巻き取りにて、巻き姿が悪く巻き取り張力を調整して、離型フィルムのロールの巻き硬度を確認しながら、離型フィルムロールを作成した。
【0182】
セラミックススラリー塗布では、塗布端部に蛇行状の斑が発生した。内部電極のパターンの形成後、打ち抜きにおいてグリーンシートの切断に斑が生じたが、グリーンシートの剥離は無かった。グリーンシート積層時の熱圧着時に、均一な積層ができない場合が生じ、好ましくない結果であった。
【0183】
[比較例4]
実施例1の実施形態にて、A層の厚みを12.0μmとし、粗さを調整すべく粒子量を調整した。C層の厚みは1.0μmとし、B層の厚みを吐出量を変え調整し、実施例1と同じ製法にて厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。
【0184】
離型層塗布後、セラミックススラリーを塗布し乾燥させた後の塗布状態は、切断面に波状の凹凸がうっすらと見えた。ピンホールは無かった。内部電極のパターンの形成も良好であった。打ち抜き工程にて打ち抜きにおいグリーンシートの切断に斑が生じその結果グリーンシートの均一な積層ができない場合が生じ、好ましくない結果であった。
【0185】
[比較例5]
実施例1の実施形態にて、C層の厚みを3.0μmとし、粗さを調整すべく粒子量を調整した。A層の厚みは6.5μmとし、B層の厚みを吐出量を変え調整し、実施例1と同じ製法にて厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。
【0186】
離型層塗布後、セラミックススラリーを塗布し乾燥させた後の塗布状態は良好であり、ピンホールも無い。内部電極のパターンの形成も良好であった。グリーンシートは良好に切断できるが、グリーンシートの均一な積層ができない場合が生じ、好ましくない結果であった。
【0187】
[比較例6]
実施例1の実施形態にて、C層の厚みを0.3μmとし、粗さを調整すべく粒子量を調整した。A層の厚みは6.5μmとし、B層の厚みを吐出量を変え調整し、実施例1と同じ製法にて厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。
【0188】
離型層塗布後、セラミックススラリーを塗布し乾燥させた後の塗布状態は良好であり、ピンホールも無かった。内部電極のパターンの形成も良好であった。グリーンシートは良好に切断できるが、グリーンシートの均一な積層ができない場合が生じ、好ましくない結果であった。
【0189】
[比較例7]
実施例1の実施形態にて、C層に入れる粒子を無機粒子とし、厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。離型層塗布後、セラミックススラリーを塗布し乾燥させた後の塗布状態は良好であり、ピンホールも無い。内部電極のパターンの形成も良好であった。グリーンシートは良好に切断できるが、グリーンシートの均一な積層ができない場合が生じ、好ましくない結果であった。
【0190】
[比較例8]
実施例1の実施形態にて、A層に入れる粒子マスターペレットを、ポリエステルGとして、厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。セラミックススラリー塗布時にピンホールおよび塗布端部に波打ちが発生した。グリーンシート打ち抜き時に、グリーンシート上面の切断面に波状の凹凸が見えた。また、グリーンシートを積層する際、エア噛みが多発した。
【0191】
[比較例9]
実施例1の実施形態にて、C層に入れる粒子マスターペレットを、ポリエステルGとして、厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。セラミックススラリー塗布・巻き取り後のグリーンシートを確認した結果、グリーンシート表面に凹みが多数認められたため、内部電極パターンが一部欠落した。グリーンシート打ち抜き時に、グリーンシート上面の切断面に波状の凹凸が見えた。また、グリーンシートを積層する際、エア噛みが多発した。
【0192】
[比較例10]
実施例1の実施形態にて、C層に入れる粒子マスターペレットを、ポリエステルEとして、含有量が本願の下限を超える添加量にて厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。スラリー塗布、内部電極のパターンの形成は良好であるが、打ち抜きにおいてグリーンシートの切断に斑が生じグリーンシートが剥離するものもあった。グリーンシートの均一な積層ができない場合が生じ、好ましくない結果であった。
【0193】
[比較例11]
実施例1の実施形態にて、C層に回収原料Bを用いて、厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。C層に含有する粒子の粒度分布曲線におけるピークは3つあった。スラリー塗布後のグリーンシートを巻きだしたところうっすらとした凹みが目立ち、グリーンシート打ち抜き時にグリーンシート上面の切断面に波状の凹凸が見えるときもあった。グリーンシートを積層する際、エア噛みが多発し、剥離不良も一部発生した。
【0194】
[比較例12]
ポリエステルEを得るにあたり、シード法によるジビニルベンゼン(架橋成分)40重量%、エチルビニルベンゼン15重量%、スチレン45重量%からなる体積平均粒子径0.8μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度3のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子(架橋度40%)の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットに、ベント式二軸混練機を用いて含有させた。
【0195】
実施例14の実施形態にて、上記のポリエステルDおよびポリエステルを用い、二軸延伸フィルムのロールを得た。グリーンシート打ち抜き時には、グリーンシート上面の切断面に波状の凹凸がうっすらと見えたためBとした。グリーンシート積層時は剥離不良が発生したためCとした。
【0196】
【表1】
【0197】
【表2】
【0198】
【表3】
【0199】
【表4】
【0200】
【表5】
【0201】
【表6】
【0202】
【表7】
【0203】
【表8】
【0204】
【表9】
【0205】
【表10】
【0206】
【表11】
【0207】
【表12】
【0208】
【表13】
【0209】
【表14】