【実施例1】
【0020】
この発明の実施例1に係る樹脂製窓板のデフォッガ線の接続端子構造を
図1〜
図6にしたがって説明する。
図1に示すように、車両のリヤウインドウに用いられる樹脂製窓板10は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の透明な樹脂材料によって、車両のリヤウインドウの窓開口部に対応する形状に形成されている。
樹脂製窓板10の表面(車室側の表面)に設定されるデフォッガ線配設領域A上に対し、後述する接続端子部材30をそのデフォッガ線接続部31で固定した後、デフォッガ線接続部31の表面を含むデフォッガ線配設領域A上にデフォッガ用導電性ペーストを塗布し、硬化させることで、デフォッガ線11が形成されるようになっている。
なお、デフォッガ線配設領域は、樹脂製窓板10の表面の左右両側部の縦方向のデフォッガ線配設領域A(
図1では片側のデフォッガ線配設領域Aを示す)と、これらデフォッガ線配設領域Aの間に跨る複数の横方向のデフォッガ線配設領域(図示しない)とが設定される。
そして、デフォッガ用導電性ペースト(導電性金属粉が混入された導電性及び接着性を有するペースト状の樹脂材料)が樹脂製窓板10の表面の左右両側部の縦方向のデフォッガ線配設領域Aと、複数の横方向のデフォッガ線配設領域に塗布された後、硬化されることで樹脂製窓板10の表面にデフォッガ線11が配線される。
【0021】
図1に示すように、樹脂製窓板10の表面には、デフォッガ線配設領域Aを隔てて一対をなす端子保持体20が配設されている。これら一対の端子保持体20は、樹脂製窓板10が樹脂材料によって成形されると同時に、樹脂製窓板10と同一樹脂材料によって一体成形されている。
図1〜
図3に示すように、一対の端子保持体20は、デフォッガ線配設領域Aの長手方向に平行する方向に延びて長尺状をなしかつ次に述べる接続端子部材30を差し込み可能な差込空間Sを樹脂製窓板10の表面との間に構成する側壁部21及び上壁部22と、これら壁部21、22の一端部を塞ぐようにして一体に形成されて接続端子部材30の差込量を規制する奥壁部23とを有している。
【0022】
図1〜
図4に示すように、接続端子部材30は、導電性の金属板よりなり、デフォッガ線接続部31と、そのデフォッガ線接続部31の基端部31aで繋がれた状態でスリット状の切り込み部31bが形成されかつデフォッガ線接続部31の両側部で上方へ切り起こし状に形成された両ばね部33と、デフォッガ線接続部31の片側部から連結部32をもって一体に延出されたリード線接続部34とを有している。
また、接続端子部材30のデフォッガ線接続部31の幅寸法は、デフォッガ線11の幅寸法と同じ、又は若干大きく、又は若干小さく設定される。
そして、デフォッガ線接続部31は、両ばね部33と共に差込空間Sに差し込まれることで、樹脂製窓板10の表面に接して固定され、デフォッガ線配設領域A上に配設される。
【0023】
すなわち、
図5と
図6に示すように、デフォッガ線接続部31の両ばね部33は、デフォッガ線接続部31と共に差込空間Sに弾性変形されながら差し込まれることで、一対の端子保持体20のそれぞれの上壁部22下面に弾性変形して圧着する。これによって、デフォッガ線接続部31が樹脂製窓板10の表面に接して固定される。
また、この実施例1において、リード線接続部34は、デフォッガ線接続部31の片側から横断面L字状の連結部32をもって形成され、その先端部寄りには、リード線40の端末接続具41に対し接触状態を確保するための導通用凸部35が形成されている。
なお、接続端子部材30の両ばね部33は、この発明の接続端子部材を樹脂製窓板10の表面に固定する固定部として機能すると共に、デフォッガ線接続部31を樹脂製窓板10の表面に圧着する圧着手段を構成している。
【0024】
前記したように、樹脂製窓板10の表面のデフォッガ線配設領域A上に対し接続端子部材30が固定された後、樹脂製窓板10表面に固定の接続端子部材30のデフォッガ線接続部31の表面を含むデフォッガ線配設領域A上に対し、デフォッガ用導電性ペーストを塗布し、硬化させることで、デフォッガ線11が形成される。そして、接続端子部材30のリード線接続部34に対しリード線40がその端末接続具41で接続される(
図1参照)。
【0025】
この実施例1に係る樹脂製窓板のデフォッガ線の接続端子構造は上述したように構成される。
したがって、樹脂製窓板10表面に固定された接続端子部材30のデフォッガ線接続部31の表面を含むデフォッガ線配設領域A上にデフォッガ用導電性ペーストを塗布し、硬化させることで、デフォッガ線11が形成される。これによって、デフォッガ線11とデフォッガ線接続部31とが電気的に導通される。そして、接続端子部材30のリード線接続部34に対しリード線40の端末接続具41が差し込まれて接続される。
【0026】
前記したように、デフォッガ線11(デフォッガ用導電性ペースト)が硬化する前に、接続端子部材30のデフォッガ線接続部31の表面にデフォッガ用導電性ペーストが塗布されて接触される。このため、デフォッガ線11のうち、デフォッガ線接続部31の表面に位置するデフォッガ線部分11aのほぼ全面がデフォッガ線接続部31の表面に接触不良なく直接接触して接合される。
この結果、接続端子部材30のデフォッガ線接続部31と、デフォッガ線11との通電性能を高めることができる。
また、従来と異なり、樹脂製窓板10表面のデフォッガ線配設領域A上にデフォッガ線11を配設する前に、デフォッガ線配設領域A上に対し、接続端子部材30を固定するため、デフォッガ線配設領域A上に対し、接続端子部材30を固定する際にデフォッガ線11を損傷させることもない。
【0027】
また、この実施例1において、樹脂製窓板10の表面のデフォッガ線配設領域Aに対し、接続端子部材30を固定する場合、樹脂製窓板10の表面と一対の端子保持体20との間の差込空間Sに対し、接続端子部材30のデフォッガ線接続部31が、両ばね部33と共に、これら両ばね部33を弾性変形させながら差し込まれる。
接続端子部材30のデフォッガ線接続部31の基部31aが一対の端子保持体20の奥壁部23に当接する位置まで差し込まれることで、両ばね部33の弾性変形による弾発力によって、これら両ばね部33の先端が、一対の端子保持体20の上壁部22下面にそれぞれ圧着する。そして、両ばね部33の付勢力(弾性変形による弾発力)によって、デフォッガ線接続部31が樹脂製窓板10の表面に押圧されて固定される。
すなわち、樹脂製窓板10の表面と一対の端子保持体20との間の差込空間Sに対し、接続端子部材30のデフォッガ線接続部31及び両ばね部33を差し込むという極めて簡単な操作によって、樹脂製窓板10の表面に接続端子部材30を容易に固定することができる。
【0028】
また、樹脂製窓板10に一体に形成された一対の端子保持体20は、デフォッガ線配設領域Aの長手方向に平行する方向に延びて長尺状をなしかつ接続端子部材30が差し込み可能な差込空間Sを樹脂製窓板10の表面との間に構成する側壁部21及び上壁部22と、接続端子部材30の差込量を規制する奥壁部23とを有している。
これによって、一対の端子保持体20に対する接続端子部材30の差し込み方向がデフォッガ線配設領域Aの長手方向に平行する方向となる。このため、一対の端子保持体20に対する接続端子部材30の差込量を所望とする大きさに容易に設定することができる。
また、
図1と
図3に示すように、一対をなす端子保持体20のうち、一方の端子保持体20aを、樹脂製窓板10の内側に形成し、他方の端子保持体20bを、デフォッガ線11と樹脂製窓板10端縁との間の限られたスペース内に容易に形成することができる。
【実施例2】
【0029】
次に、この発明の実施例2に係る樹脂製窓板のデフォッガ線の接続端子構造を
図7と
図8にしたがって説明する。
この実施例2においては、樹脂製窓板110の表面に対する接続端子部材130の固定構造を変更したものである。
図7と
図8に示すように、接続端子部材130は、導電性の金属板よりなり、矩形板状のデフォッガ線接続部131と、そのデフォッガ線接続部131の一側にL字状の接続部132をもって一体状に延出されたリード線接続部134とを有している。
また、接続端子部材130のデフォッガ線接続部131の幅寸法は、デフォッガ線111の幅寸法と同じ、又は若干大きく、又は若干小さく設定される。
【0030】
接続端子部材130は、樹脂製窓板110の成形型内にセットされる。
そして、成形型内にポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の透明な樹脂材料を充填して、樹脂製窓板110を成形すると同時に、その樹脂製窓板110の表面のデフォッガ線配設領域Aに対し、接続端子部材130のデフォッガ線接続部131の表面が、樹脂製窓板110の表面と同一面をなして露出された状態で樹脂製窓板110に一体状に固定される。
図8に示すように、接続端子部材130のデフォッガ線接続部131の表面を含むデフォッガ線配設領域A上にデフォッガ用導電性ペーストを塗布し、硬化させることで、デフォッガ線111が形成される。これによって、デフォッガ線111とデフォッガ線接続部131とが電気的に導通される。
この実施例2のその他の構成は実施例1と同様に構成されるため、その説明は省略する。
【0031】
したがって、この実施例2においても、実施例1と同様にして、デフォッガ線111(デフォッガ用導電性ペースト)が硬化する前に、接続端子部材130のデフォッガ線接続部131の表面にデフォッガ用導電性ペーストが塗布されて接触される。このため、デフォッガ線111のうち、デフォッガ線接続部131の表面に位置するデフォッガ線部分111aのほぼ全面がデフォッガ線接続部131の表面に接触不良なく直接接触して接合される。
この結果、接続端子部材130のデフォッガ線接続部131と、デフォッガ線111との通電性能を高めることができる。
また、従来と異なり、樹脂製窓板110表面のデフォッガ線配設領域A上にデフォッガ線111を配設する前に、デフォッガ線配設領域A上に対し、接続端子部材130を固定するため、デフォッガ線配設領域A上に対し、接続端子部材130を固定する際にデフォッガ線111を損傷させることもない。
【0032】
特に、この実施例2においては、樹脂製窓板110を樹脂材料で成形すると同時に、接続端子部材130のデフォッガ線接続部131が樹脂製窓板110の表面に露出された状態で樹脂製窓板110に一体状に固定される。このため、樹脂製窓板110の表面に接続端子部材130を固定する作業を省くことができる。
また、この実施例2において、接続端子部材130のデフォッガ線接続部131の表面が、樹脂製窓板110の表面と同一面をなして露出された状態で樹脂製窓板110に一体状に固定される。
このため、接続端子部材130のデフォッガ線接続部131の表面を含むデフォッガ線配設領域A上にデフォッガ用導電性ペーストを塗布し、硬化させることで、デフォッガ線111が形成される際、デフォッガ線接続部131の長手方向両端部に段差面を発生させることなく、デフォッガ線111を同一平面上に形成することができる。
【実施例3】
【0033】
次に、この発明の実施例3に係る樹脂製窓板のデフォッガ線の接続端子構造を
図9にしたがって説明する。
この実施例3においては、
図9に示すように、実施例1で述べた接続端子部材30のリード線接続部34に対し、リード線40の端末部40aをはんだ付けやビス等によって直接に接続されている。
また、接続端子部材30は、そのリード線接続部34に対し、リード線40の端末部40aが直接に接続される以外は実施例1と同様に構成されるため、同一構成部分に対し同一符号を付記してその説明は省略する。
【0034】
したがって、この実施例3によると、実施例1と同様の作用効果を奏する。
特に、この実施例3においては、接続端子部材30のリード線接続部34に対し、リード線40の端末部40aが直接に接続されることで、リード線40の端末部40aに端末接続具を設ける必要がなくなり、構造が簡単となる。
【0035】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1において、接続端子部材30のデフォッガ線接続部31の両側部に両ばね部33が上方へ切り起こし状に形成された場合を例示したが、両ばね部33に替えて、一対の端子保持体20の側壁の高さ(差込空間S)を開口側から奥側に向けてしだいに狭くなるテーパに形成することで、デフォッガ線接続部31とデフォッガ線11とを通電可能な接触状態に保持することも可能であるし、一対の端子保持体20の上壁部22の下面に、端子保持体と一体成形によるばね部を形成したり、別部材による弾性体を配設してもよい。
また、前記実施例1において、一対の端子保持体20の奥壁部23によって接続端子部材30のデフォッガ線接続部31の基部31aの差込量を規制するように構成したが、接続端子部材30側に差込量を規制する規制部を形成することも可能であり、この場合には、一対の端子保持体20に対し、奥壁部23が形成されない構成にすることができる。
また、実施例2で述べた接続端子部材130のリード線接続部134に対しリード線の端末部をはんだ付けやビス等によって直接に接続してもよい。
また、実施例2で述べた接続端子部材130のデフォッガ線接続部131を、樹脂製窓板110の表面のデフォッガ線配設領域A上に接着剤によって固定してもこの発明を実施することができる。