(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
<定着装置用部材>
本実施形態に係る定着装置用部材は、筒状の基材と、前記基材の外周面を被覆する被覆部材であって、第1のフッ素樹脂を含む第1の離型層、及び、第2のフッ素樹脂を含み、前記第1の離型層の外周面上の幅方向両端部以外の領域に積層された第2の離型層を有し、幅方向両端部で露出している前記第1の離型層の外周面の動摩擦係数が前記第2の離型層の外周面の動摩擦係数よりも高い被覆部材と、を備えて構成されている。
【0021】
本実施形態に係る定着装置用部材は、外周面を構成する被覆部材がフッ素樹脂を含み、動摩擦係数が異なる第1の離型層と第2の離型層とが積層された構造を有する。幅方向両端部以外の記録媒体が通過する領域では、動摩擦係数が小さい第2の離型層の外周面が露出しているため、フッ素樹脂による離型性が維持され、記録媒体やトナーの付着が抑制される。一方、記録媒体が通過しない幅方向両端部では、第2の離型層よりも動摩擦係数が大きい第1の離型層の外周面が露出しているため、定着装置における相手部材との間の駆動力の伝達が維持されるとともに、弾性部材を設けた場合に比べて異物が付着しにくく、汚染や駆動力の伝達の低下が抑制される。
【0022】
本実施形態に係る定着装置用部材は、定着装置用のロール状部材又はベルト状部材のいずれにも適用可能であるが、以下、代表例として、加圧ロール又は定着ロールとして適用する場合について主に説明する。
【0023】
<加圧ロール>
図1は本実施形態に係る定着装置用部材の一例(加圧ロール)を概略的に示している。また、
図2は本実施形態に係る定着装置用部材を備えた定着装置の構成の一例(第1実施形態)を示し、
図3は本実施形態の定着装置における加圧ロールと定着ベルトの幅方向断面を概略的に示している。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る加圧ロール104は、円筒状の芯体105と、芯体105の外周面上に配置された円筒状の弾性層(基材)107と、弾性層107の外周面を被覆する被覆部材108とを有するロール状となっている。
被覆部材108は、弾性層107側から、それぞれフッ素樹脂を含む第1の離型層108A(以下、「内側離型層」という場合がある)と第2の離型層108B(以下、「外側離型層」という場合がある)とが一体的に積層されて構成されている。外側離型層108Bは、内側離型層108Aの外周面の幅方向両端部以外の領域に積層されており、幅方向両端部で露出している内側離型層108Aの外周面の動摩擦係数が外側離型層108Bの外周面の動摩擦係数よりも高くなっている。
なお、被覆部材108(離型層108A,108B)の幅方向とは、
図1におけるX方向であり、加圧ロール104の長手方向及び芯体105の軸方向と同じ方向である。
本実施形態の加圧ロール104は、例えば、モータ(図示省略)により回転駆動される。
【0025】
以下、本実施形態の加圧ロールの各構成部材について具体的に説明する。なお、以下に説明する各構成部材の材料、形状、寸法等は一例であり、以下の例示に限定されるものではない。
【0026】
(芯体)
芯体105は円筒状の部材であり、外周面に配置される弾性層107及び被覆部材108を支持する。
芯体105は、軸方向の両端部が軸受部材(図示省略)により回転可能に支持される。
【0027】
芯体105の材質としては、例えば、アルミニウム(例えば、A−5052材)、鉄、SUS、銅等の金属、合金、セラミックス、FRM(繊維強化メタル)などが挙げられ、樹脂製であってもよい。
また、芯体105の形状は、円筒状(中空)に限らず、円柱状(中実)であってもよい。
【0028】
(弾性層)
芯体105の外周面には軸方向両端部を除いて芯体105の外周面を被覆するように円筒状の弾性層107が形成されている。
弾性層107の構成材料としては、例えば、各種ゴム材料が用いられる。各種ゴム材料としては、例えば、ウレタンゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム(FKM)などが挙げられ、特に耐熱性、加工性に優れたシリコーンゴムが挙げられる。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。
弾性層107の一例として、シリコーンゴムで構成され、厚みは6mmとなっている。
なお、芯体105と弾性層107との間に接着層を設けてもよい。
【0029】
(被覆部材)
弾性層107の外周面には円筒状(チューブ状)の被覆部材108が設けられている。
被覆部材108は、それぞれフッ素樹脂を含む内側離型層108Aと外側離型層108Bとが一体となった積層構造を有し、幅方向両端部において内側離型層108Aの外周面の一部が露出している。
【0030】
−第1の離型層(内側離型層)−
内側離型層108Aは第1のフッ素樹脂を含み、弾性層107の外周面を被覆するように配置されている。
【0031】
内側離型層108Aを構成するフッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレン・テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。これらの中でも、フッ素樹脂としては、PFA及びFEPが好適に挙げられる。
内側離型層108Aの厚みは5μm以上100μm以下で設定することが望ましい。
【0032】
−第2の離型層(外側離型層)−
外側離型層108Bは第2のフッ素樹脂を含み、内側離型層108Aの外周面上の幅方向両端部以外の領域に積層され、幅方向両端部では内側離型層108Aの外周面の端部(露出面)がそれぞれ露出している。そして、外側離型層108Bの露出面の動摩擦係数は、内側離型層108Aの外周面の動摩擦係数よりも高くなっている。
【0033】
なお、本実施形態における動摩擦係数は、以下の測定により得られた値を言う。
具体的には、本実施形態の定着装置用部材から切り出した離型層サンプルを測定サンプルとして用い、このサンプルを摩擦係数測定器(株式会社レスカ社製、Friction Player FPR−2000)を用いて測定する。
【0034】
本実施形態に係る加圧ロール104は、定着装置100において、外側離型層108Bの外周面が記録媒体Pと接触し、幅方向両端部における内側離型層108Aの露出面が定着ベルト102の外周面と接触することになる。外側離型層108Bの厚みが薄過ぎると外側離型層108Bの摩耗により幅方向両端部以外の領域(通紙領域)で内側離型層108Aが露出し易くなり、外側離型層108Bの厚みが厚過ぎると幅方向両端部における内側離型層108Aの露出面と定着ベルト102との摩擦力が弱くなる。かかる観点から、外側離型層108Bの厚みは5μm以上100μm以下であることが望ましい。
【0035】
外側離型層108Bを構成するフッ素樹脂としては、前記した内側離型層108Aを構成するフッ素樹脂として例示したものが挙げられる。
各離型層108A,108Bに含まれるフッ素樹脂は、内側離型層108Aの露出面が、外側離型層108Bの外周面よりも動摩擦係数が大きくなるようにそれぞれ選択すればよい。例えば、内側離型層108Aに含まれる第1のフッ素樹脂と外側離型層108Bに含まれる第2のフッ素樹脂は異種のフッ素樹脂でもよいが、内側離型層108Aと外側離型層108Bとの剥離を抑制するため、同種のフッ素樹脂であることが好ましい。同種のフッ素樹脂であっても、例えば、第2のフッ素樹脂のメルトフローレート(MFR)よりもMFRが大きい第1のフッ素樹脂を用いることで、内側離型層108Aの動摩擦係数を外側離型層108Bの動摩擦係数よりも大きくすることができる。
【0036】
なお、本実施形態におけるメルトフローレート(MFR)は、372℃で、5kgf荷重の条件下において、JIS K 7210に準じて測定した値である。
【0037】
各離型層108A,108Bには、各種添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、導電剤(カーボンブラック等)、充填剤(炭酸カルシウム等)、軟化剤(パラフィン系等)、加工助剤(ステアリン酸等)、老化防止剤(アミン系等)、加硫剤(硫黄、金属酸化物、過酸化物等)、機能性充填剤(アルミナ等)等が挙げられる。
【0038】
−被覆部材の作製方法−
被覆部材108を作製する方法は、内側離型層108Aの外周面上に、幅方向両端部において内側離型層108Aが露出するように外側離型層108Bが積層された構造とすることができれば特に限定されない。
例えは、クロスヘッド、ダブルヘッド等の2層押出しが可能な押出しヘッドを備えた2層押出し機を用い、動摩擦係数が大きい内側離型層108Aが内側に、動摩擦係数が小さい外側離型層108Bが外側に位置するように2層押出しによって2層構造のチューブ状部材を作製する。
【0039】
なお、内側離型層108Aと外側離型層108Bを同種のフッ素樹脂で形成する場合は、例えば押出温度によってMFRを調整することができる。例えばフッ素樹脂を押出成形して各離型層108A,108Bを形成する場合、押出温度を高くするほどフッ素樹脂の分子鎖長が小さくなり、MFRが小さくなり易い。そのため、内側離型層108Aは比較的高温で押出成形を行い、外側離型層108Bは比較的低温で押出成形を行うことで、相対的に動摩擦係数が大きい内側離型層108Aと、動摩擦係数が小さい外側離型層108Bを有する2層のチューブ状部材が得られる。
【0040】
例えば、PFA樹脂を用い、内側離型層108AのMFRが3.0g/10min以上4.5g/10min未満となり、外側離型層108BのMFRが1.8g/10min以上3.0g/10min未満となるように2層押出成形を行ってチューブ状部材を作製する。
【0041】
そして、2層押出成形によって得た2層構造のチューブ状部材を弾性層107の長さに応じた長さに切断し、チューブ状部材の幅方向(長手方向)両端部では、
図4に示すように、各端部領域Dの外側離型層108Bを切削等によって除去して内側離型層108Aを露出させる。
両端部において外側離型層108Bを除去する幅W(内側離型層108Aの露出面の幅)は、定着装置において、最大幅の記録媒体Pが内側離型層108Aの露出面と接触せず、且つ、内側離型層108Aの露出面と定着ベルト102との接触によって定着ベルト102への駆動の伝達が確保させる範囲とすればよい。
内側離型層108Aの露出面の幅Wは、例えば、被覆部材108の全体幅に対して両端合わせて5%以上15%以下であることが好ましく、5%以上10%以下であることが好ましい。
【0042】
なお、被覆部材108を作製する他の方法として、例えば、弾性層107の外周面を内側離型層108Aで被覆した後、内側離型層108Aの両端部における外周面が露出するように外側離型層108Bで被覆してもよい。
【0043】
<定着装置>
次に、本実施形態に係る定着装置について説明する。
本実施形態に係る定着装置は、前記定着装置用部材を有する第1の回転体と、前記第1の回転体の前記定着装置用部材の外周面に接触して記録媒体を挟み込む挟込領域を形成する第2の回転体と、前記第1の回転体及び前記第2の回転体の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、を備えて構成されている。
【0044】
−第1実施形態−
図2に示すように、第1実施形態の定着装置100は、記録用紙Pの進入又は排出を行うための開口が形成された筐体101を有している。筐体101の内部には、第1の回転体の一例としての加圧ロール104と、第2の回転体(相手部材)の一例としての定着ベルト102と、定着ベルト102を加熱する加熱手段の一例としてのハロゲンヒータ109とが設けられている。加圧ロール104の外周面と定着ベルト102の外周面が一部の領域で接触し、記録用紙Pが挟まれて記録用紙Pへのトナー像Tの定着が行われる挟込領域(ニップ部という場合がある)Nを形成している。
【0045】
筐体101の内部には、定着ベルト102を挟んで加圧ロール104と対向するパッド部材103と、定着ベルト102の外周面の温度を測定する温度センサ112とが設けられている。記録用紙Pをニップ部Nに案内するガイド部材、及び定着ベルト102から記録用紙Pを剥離させる剥離部材については、図示及び説明を省略する。
【0046】
〔加圧ロール〕
加圧ロール104は前記した本実施形態に係る定着装置用部材であり、円筒状の芯体105と、弾性層107と、内側離型層108Aと外側離型層108Bとが積層された被覆部材108とを有し、被覆部材108の幅方向両端部では内側離型層108Aの外周面の一部が露出した構成となっている。
【0047】
〔定着ベルト〕
定着ベルト102は、
図3に示すように無端状に形成された基材102Aと、基材102Aの外周面に積層された離型層102Bとを有している。
【0048】
基材102Aは、一例として、ポリイミド製であり、厚みは200μmとなっている。基材102Aの厚みは500μm以下で設定することが望ましく、30μm以上300μm以下で設定することがより望ましい。
【0049】
離型層102Bは、一例として、PFA製であり、厚みは100μmとなっている。離型層102Bの厚みは30μm以上300μm以下で設定することが望ましい。
【0050】
定着ベルト102の幅方向両端部の断面形状を円形状に保持するために、通常、幅方向両端部に取り付けられる円環状の樹脂製のキャップ部材については、図示及び説明を省略する。
【0051】
(パッド部材)
パッド部材103は、定着ベルト102の幅方向(
図3におけるX方向)を長手方向とする直方体状の部材であり、ウレタンゴム製となっている。また、パッド部材103のハロゲンヒータ109側の面は、アルミニウム製の支持部材116に接着剤で固定されており、パッド部材103の反対側の面は、定着ベルト102の内周面と接触している。支持部材116は、長手方向両端部が、ブラケット(図示省略)を介して筐体101に固定されている。
【0052】
〔ハロゲンヒータ〕
図2に示すように、ハロゲンヒータ109は、一例として、2本設けられており、後述する温度センサ112の測定温度と定着設定温度との差に基づいて通電又は通電停止が行われるようになっている。また、ハロゲンヒータ109は、内部にタングステンワイヤ(図示省略)が設けられており、通電によってタングステンワイヤが発光することで、定着ベルト102を加熱すると共に、加圧ロール104を間接的に加熱するようになっている
【0053】
なお、加熱手段は、ハロゲンヒータ109に限らず、定着ベルト102の内周面に接触する面状発熱体であってもよい。また、加熱手段は、定着ベルト102に銅などからなる発熱層を形成し、コイルに電流を流して、発生した磁界の電磁誘導作用によって発熱層を加熱するものであってもよい。
【0054】
(温度センサ)
図2に示すように、温度センサ112は、定着ベルト102の回転方向でニップ部Nよりも下流側の位置に、定着ベルト102の外周面と間隔をあけて設けられている。また、温度センサ112は、一例として、定着ベルト102の幅方向中央部と対向する位置に1箇所設けられている。
【0055】
さらに、温度センサ112は、測定した温度データが画像形成装置の制御部(図示せず)に送られるようになっている。そして、制御部は、予め設定した定着ベルト102の定着設定温度と、温度センサ112で測定された温度との差を0に近づけるように、ハロゲンヒータ109への通電又は通電停止を行うようになっている。
【0056】
上記構成を有する本実施形態の定着装置100は、加圧ロール104が定着ベルト102の外周面を加圧することで、
図5に示すように加圧ロール104の外周面の幅方向両端部において露出する内側離型層108Aは対向する定着ベルト102の両端部における外周面に接触する。加圧ロール104の回転駆動に合わせて、定着ベルト102と加圧ロール104との間で駆動力の伝達が行われ、定着ベルト102が従動回転(周回移動)する。
【0057】
ここで、内側離型層108Aの定着ベルト102に対する動摩擦係数は、外側離型層108Bの定着ベルト102に対する動摩擦係数よりも大きい。このため、定着ベルト102には、内側離型層108Aとの接触により、幅方向両端部で中央部よりも大きい摩擦力が作用するので、加圧ロール104との間の駆動力の伝達が安定する(定着ベルト102が滑りにくい)。また、加圧ロール104の両端部ではフッ素樹脂で構成された内側離型層108Aが定着ベルト102と接触して駆動力が伝達されるため、異物の付着による汚染や駆動力の伝達の低下が抑制される。
【0058】
なお、定着装置100において、加圧ロール104の幅方向において最大の幅となる記録用紙Pにトナー像Tを定着するとき、記録用紙Pは、定着ベルト102と加圧ロール104の外側離型層108Bとで形成されるニップ部Nを通り、定着ベルト102と加圧ロール104の内側離型層108Aとが接触する部位は通らない。
【0059】
−第2実施形態−
次に、第2実施形態に係る定着装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材及び部位には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0060】
図6には、第2実施形態の定着装置120が示されている。定着装置120は、第1の回転体の一例としての定着ロール122と、第2の回転体の一例としての加圧ベルト124と、定着ロール122を加熱するハロゲンヒータ109とを有している。
【0061】
定着ロール122は、一例として、第1実施形態の加圧ロール104(
図1参照)と同じ構成となっている。
芯体105の内側には、ハロゲンヒータ109が接触せずに配置されており、定着ロール122の温度は、温度センサ112で測定されるようになっている。さらに、定着ロール122は、モータ(図示省略)により回転駆動されるようになっている。
【0062】
加圧ベルト124は、一例として、第1実施形態の定着ベルト102(
図2参照)と同じ構成となっている。また、加圧ベルト124の内側には、加圧ベルト124を定着ロール122に押し付けてニップ部Nを形成するためのパッド部材103が設けられている。これにより、定着ロール122は、加圧ベルト124と共に記録用紙Pを加圧する。
【0063】
定着装置120では、ハロゲンヒータ109が定着ロール122の内側にあるので、定着ロール122が直接、ハロゲンヒータ109で加熱される。
【0064】
上記第1実施形態及び第2実施形態の定着装置100,120では、ロール状部材(加圧ロール104,定着ロール122)の外周面が2層の離型層108A,108Bが積層された被覆部材108により構成され、幅方向両端部において内側離型層108Aの外周面が露出している場合について説明したが、かかる構成の被覆部材108をベルト状部材(定着ベルト102、加圧ベルト124)の離型層として適用してもよい。このようなベルトを備える場合も、ベルトの幅方向両端部で露出する内側離型層とロールとの接触により摩擦力が作用するので、ベルトとロールとの間の駆動力の伝達が安定し、ロールの回転駆動に合わせてベルトが従動回転(周回移動)する。そして、ベルトとロールの接触部で弾性層や弾性部材が露出していないため、汚染が抑制される。
【0065】
<画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記記録媒体に前記トナー像を定着する前記本実施形態の定着装置と、を備えて構成されている。
【0066】
図7は、
図2に示す第1実施形態に係る定着装置100を備えたタンデム式の画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
画像形成装置10においては、感光体79の周囲に、反時計回りに帯電ロール83、現像器85、中間転写ベルト86を介して配置された1次転写ロール80、感光体清掃部材84が配置され、これら1組の部材が、1つの色に対応した現像ユニットを形成している。また、この現像ユニット毎に、現像器85に現像剤を補充するトナーカートリッジ71がそれぞれ設けられており、各現像ユニットの感光体79に対して、帯電ロール83の(感光体79の回転方向)下流側であって現像器85の上流側の感光体79表面に画像情報に応じたレーザー光を照射するレーザー発生装置78が設けられている。
【0067】
4つの色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に対応した4つの現像ユニットは、画像形成装置10内において水平方向に直列に配置されており、4つの現像ユニットの感光体79と1次転写ロール80との転写領域を挿通するように中間転写ベルト86が設けられている。中間転写ベルト86は、その内面側に以下の順序で反時計回りに設けられた、支持ロール73、支持ロール74、および駆動ロール81により張力を付与しつつ支持されて駆動され、ベルト駆動装置90を形成している。尚、4つの1次転写ロールは支持ロール73の(中間転写ベルト86の回転方向)下流側であって支持ロール74の上流側に位置する。また、中間転写ベルト86を介して駆動ロール81の反対側には中間転写ベルト86の外周面を清掃する転写清掃部材82が駆動ロール81に対して接触するように設けられている。
【0068】
また、中間転写ベルト86を介して支持ロール73の反対側には用紙供給部77から用紙経路76を経由して搬送される記録用紙の表面に、中間転写ベルト86の外周面に形成されたトナー像を転写するための2次転写ロール75が、支持ロール73に対して接触するように設けられている。
【0069】
また、画像形成装置10の底部には記録媒体を収容する用紙供給部77が設けられ、用紙供給部77から用紙経路76を経由して2次転写部を構成する支持ロール73と2次転写ロール75との接触部を通過するように、記録媒体が供給される。この接触部を通過した記録媒体は、更に定着装置100のニップ部を挿通するように不図示の搬送手段により搬送され、最終的に画像形成装置10の外へと排出される。
【0070】
次に、
図7に示す画像形成装置10を用いた画像形成方法について説明する。トナー像の形成は各現像ユニット毎に行なわれ、帯電ロール83により反時計方向に回転する感光体79表面を帯電した後に、レーザー発生装置78(露光装置)により帯電された感光体79表面に潜像(静電潜像)を形成し、次に、この潜像を現像器85から供給される現像剤により現像してトナー像を形成し、1次転写ロール80と感光体79との接触部に運ばれたトナー像を矢印C方向に回転する中間転写ベルト86の外周面に転写する。尚、トナー像を転写した後の感光体79は、その表面に付着したトナーやゴミ等が感光体清掃部材84により清掃され、次のトナー像の形成に備える。
【0071】
各色の現像ユニット毎に現像されたトナー像は、画像情報に対応するように中間転写ベルト86の外周面上に順次重ね合わされた状態で、2次転写部に運ばれ2次転写ロール75により、用紙供給部77から用紙経路76を経由して搬送されてきた記録用紙表面に転写される。トナー像が転写された記録用紙は、更に定着装置100の接触部を通過する際に加圧加熱されることにより定着され、記録媒体表面に画像が形成された後、画像形成装置外へと排出される。
【0072】
そして、定着装置100においては、加圧ロール104の回転に伴って定着ベルト102が従動し、記録媒体が通過する領域の離型性を維持しつつ、幅方向両端部の汚染が抑制されるので、定着ベルト102への駆動力の伝達状態や汚染に起因する画像不良(例えば、画像乱れなど)が抑制される。