(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電性付与剤が配合された前記本体部であって、前記軸から前記本体部の外表面に向かう方向の導電性付与剤同士の距離よりも前記本体部の外表面の周方向の導電性付与剤同士の距離の方が短い距離で前記導電性付与剤を分散させた前記本体部、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の転写部材。
前記転写部材が前記像保持体に対向する対向領域に対して、前記転写部材の回転方向の下流側に配置されて前記転写部材を清掃する清掃部材であって、電気的に接地された導電性の前記清掃部材、
を備えたことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
前記転写部材の回転方向に沿って、前記転写部材の前記対向領域の中心の位置からの距離Lb[mm]が、Lb={(τv/τs)/1.94}×6πを満たす前記転写部材上の位置と、前記転写部材の回転中心と、を結ぶ仮想的な線よりも、前記転写部材の回転方向の上流側に、媒体を除電する除電部が配置された前記除電部材、
を備えたことを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例としての実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0029】
(実施例1のプリンタUの全体構成の説明)
図1は本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図2は本発明の実施例1の画像形成装置の要部の説明図である。
図1、
図2において、実施例1の画像形成装置の一例としてのプリンタUは、プリンタの本体U1と、プリンタの本体U1に媒体を供給する供給装置の一例としてのフィーダーユニットU2と、画像が記録された媒体に対する処理を行う後処理装置の一例としての処理ユニットU3、画像が記録された媒体が排出される排出装置の一例としての排出ユニットU4と、利用者が操作を行う操作部UIと、を有する。
【0030】
(実施例1のマーキングの構成の説明)
図1、
図2において、前記プリンタの本体U1は、プリンタUの制御を行う制御部Cや、プリンタUの外部に図示しない専用のケーブルを介して接続された情報の送信装置の一例としてのプリント画像サーバCOMから送信された画像情報を受信する図示しない通信部、媒体に画像を記録する画像記録部の一例としてのマーキング部U1a等を有する。前記プリント画像サーバCOMには、ケーブルまたはLAN:Local Area Network等の回線を通じて接続され、プリンタUで印刷される画像の情報が送信される画像の送信装置の一例としてのパーソナルコンピュータPCが接続されている。
前記マーキング部U1aは、像保持体の一例としてY:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の各色用の感光体Py,Pm,Pc,Pkを有する。感光体Py〜Pkは、表面が感光性の誘電体で構成されている。
【0031】
図1、
図2において、黒色の感光体Pkの周囲には、感光体Pkの回転方向に沿って、帯電器CCk、潜像の形成装置の一例としての露光機ROSk、現像器Gk、一次転写器の一例としての一次転写ロールT1k、像保持体用の清掃器の一例としての感光体クリーナCLkが配置されている。
他の感光体Py,Pm,Pcの周囲にも同様に、帯電器CCy,CCm,CCc、露光機ROSy,ROSm,ROSc、現像器Gy,Gm,Gc、一次転写ロールT1y,T1m,T1c、感光体クリーナCLy,CLm,CLcが配置されている。
マーキング部U1aの上部には、収容容器の一例として、現像器Gy〜Gkに補給される現像剤が収容されたトナーカートリッジKy,Km,Kc,Kkが着脱可能に支持されている。
【0032】
各感光体Py〜Pkの下方には、中間転写体の一例であって、像保持体の一例としての中間転写ベルトBが配置されており、中間転写ベルトBは、感光体Py〜Pkと一次転写ロールT1y〜T1kとの間に挟まれる。中間転写ベルトBの裏面は、駆動部材の一例としてのドライブロールRdと、張力付与部材の一例としてのテンションロールRtと、蛇行防止部材の一例としてのウォーキングロールRwと、従動部材の一例としての複数のアイドラロールRfと、二次転写用の対向部材の一例としてのバックアップロールT2aと、可動部材の一例としての複数のリトラクトロールR1と、前記一次転写ロールT1y〜T1kにより支持されている。
中間転写ベルトBの表面には、ドライブロールRdの近傍に、中間転写体の清掃器の一例としてのベルトクリーナCLBが配置されている。
【0033】
バックアップロールT2aには、中間転写ベルトBを挟んで、二次転写部材の一例としての2次転写ロールT2bが対向して配置されている。また、バックアップロールT2aには、バックアップロールT2aに現像剤の帯電極性とは逆極性の電圧を印加するために、接触部材の一例としてのコンタクトロールT2cが接触している。
前記バックアップロールT2a、2次転写ロールT2b、コンタクトロールT2cにより、実施例1の2次転写器T2が構成されており、一次転写ロールT1y〜T1k、中間転写ベルトB、2次転写器T2等により、実施例1の転写装置T1,B,T2が構成されている。
【0034】
2次転写器T2の下方には、媒体の一例としての記録シートSが収容される収容部の一例として給紙トレイTR1〜TR3が設けられている。各給紙トレイTR1〜TR3の左斜め上方には、取出部材の一例としてのピックアップロールRpと、捌き部材の一例としての捌きロールRsとが配置されている。捌きロールRsから、記録シートSが搬送される搬送路SHが延びており、搬送路SHに沿って、記録シートSを下流側に搬送する搬送部材の一例としての搬送ロールRaが複数配置されている。
搬送ロールRaの下流側には、2次転写器T2への記録シートSの搬送時期を調整する調整部材の一例としてのレジストレーションロールRrが配置されている。
なお、フィーダーユニットU2にも、給紙トレイTR1〜TR3やピックアップロールRp、捌きロールRs、搬送ロールRaと同様に構成された給紙トレイTR4,TR5等が設けられており、給紙トレイTR4,TR5からの搬送路SHは、プリンタの本体U1の搬送路SHに、レジストレーションロールRrの上流側で合流する。
【0035】
2次転写ロールT2bに対して、記録シートSの搬送方向の下流側には、媒体の搬送装置の一例としての搬送ベルトHBが配置されている。
搬送ベルトHBに対して、記録シートSの搬送方向の下流側には、定着装置Fが配置されている。定着装置Fは、加熱部材の一例としての加熱ロールFhと、加圧部材の一例としての加圧ロールFpとを有する。加熱ロールFhの内部には、熱源の一例としてのヒータが収容されている。
定着装置Fの下流側の処理ユニットU3内には、冷却装置Coが配置されている。
冷却装置Coの下流側には、記録シートSに記録された画像を読み取る画像読取装置Scが配置されている。
【0036】
画像読取装置Scの下流側には、排出ユニットU4に向けて延びる搬送路SHが形成されている。前記処理ユニットU3の内部には、搬送路の一例としての反転路SH2が形成されており、反転路SH2は搬送路SHから下方に分岐する。搬送路SHと反転路SH2との分岐部には、搬送方向の切替部材の一例としての第1のゲートGT1が配置されている。
反転路SH2には、正逆回転可能な搬送部材の一例としてのスイッチバックロールRbが複数配置されている。スイッチバックロールRbの上流側には、反転路SH2の上流部から分岐して、搬送路SHの反転路SH2との分岐部よりも下流側に合流する搬送路の一例としての接続路SH3が形成されている。反転路SH2と接続路SH3との分岐部には、搬送方向の切替部材の一例としての第2のゲートGT2が配置されている。
【0037】
前記反転路SH2の下部には、搬送路の一例としての循環路SH4が配置されている。循環路SH4は、反転路SH2から分岐して左方に延び、レジストレーションロールRrの上流側でプリンタの本体U1の搬送路SHに合流する。循環路SH4には、搬送部材の一例としての搬送ロールRaが配置されている。また、循環路SH4の反転路SH2からの分岐部には、搬送方向の切替部材の一例としての第3のゲートGT3が配置されている。
【0038】
排出ユニットU4には、排出される記録シートSが積載される積載容器の一例としてのスタッカトレイTRhが配置されており、搬送路SHから分岐してスタッカトレイTRhに延びる排出路SH5が設けられている。なお、実施例1の搬送路SHは、排出ユニットU4の右方に、図示しない追加の排出ユニットや後処理装置が追加して装着された場合に、追加された装置に対して記録シートSが搬送可能に構成されている。
【0039】
(マーキングの動作)
前記プリンタUでは、パーソナルコンピュータPCから送信された画像情報を、プリント画像サーバCOMを介して受信すると、画像形成動作であるジョブが開始される。ジョブが開始されると、感光体Py〜Pkや中間転写ベルトB等が回転する。
感光体Py〜Pkは、図示しない駆動源により回転駆動される。
帯電器CCy〜CCkは、予め設定された電圧が印加されて、感光体Py〜Pkの表面を帯電させる。
露光機ROSy〜ROSkは、制御部Cからの制御信号に応じて、潜像を書き込む光の一例としてのレーザー光Ly,Lm,Lc,Lkを出力して、感光体Py〜Pkの帯電された表面に静電潜像を書き込む。
現像器Gy〜Gkは、感光体Py〜Pkの表面の静電潜像を可視像に現像する。
トナーカートリッジKy〜Kkは、現像器Gy〜Gkにおける現像に伴って消費された現像剤の補給を行う。
【0040】
一次転写ロールT1y〜T1kは、現像剤の帯電極性とは逆極性の一次転写電圧が印加され、感光体Py〜Pkの表面の可視像を中間転写ベルトBの表面に転写する。
感光体クリーナCLy〜CLkは、一次転写後に感光体Py〜Pkの表面に残留した現像剤を除去して清掃する。
中間転写ベルトBは、感光体Py〜Pkに対向する一次転写領域を通過する際に、Y,M,C,Kの順に、画像が転写されて積層され、2次転写器T2に対向する2次転写領域Q4を通過する。なお、単色画像の場合は、1色のみの画像が転写されて2次転写領域Q4に送られる。
【0041】
ピックアップロールRpは、受信した画像情報の大きさや記録シートSの指定と、収容された記録シートSの大きさや種類等に応じて、記録シートSの供給が行われる給紙トレイTR1〜TR5から記録シートSを送り出す。
捌きロールRsは、ピックアップロールRpから送り出された記録シートSを1枚ずつ分離して捌く。
レジストレーションロールRrは、中間転写ベルトBの表面の画像が2次転写領域Q4に送られる時期に合わせて、記録シートSを送り出す。
【0042】
2次転写器T2は、コンタクトロールT2cを介してバックアップロールT2aに予め設定された現像剤の帯電極性と同極性の2次転写電圧が印加され、記録シートSに中間転写ベルトBの画像を記録シートSに転写する。
ベルトクリーナCLBは、2次転写領域Q4で画像が転写された後の中間転写ベルトBの表面に残留した現像剤を除去して清掃する。
搬送ベルトHBは、2次転写器T2で画像が転写された記録シートSを表面に保持して下流側に搬送する。
【0043】
定着装置Fは、加熱ロールFhと加圧ロールFpとが接触する定着領域を通過する記録シートSを加圧しながら加熱して、記録シートSの表面の未定着画像を定着する。
冷却装置Coは、定着装置Fで加熱された記録シートSを冷却する。
画像読取装置Scは、冷却装置Coを通過した記録シートSの表面の画像を読み取る。なお、読み取られた画像は、原稿の画像と対比して、印刷不良の判定に使用したり、画像の位置ズレの判定等に使用可能である。
画像読取装置Scを通過した記録シートSは、両面印刷が行われる場合には、第1のゲートGT1が作動して、反転路SH2に搬送され、スイッチバックされて、循環路SH4を通じて、レジストレーションロールRrに再送され、2面目の印刷が行われる。
【0044】
排出ユニットU4に排出される記録シートSは、搬送路SHを搬送され、スタッカトレイTRhに排出される。このとき、記録シートSの表裏が反転された状態でスタッカトレイTRhに排出される場合、搬送路SHから反転路SH2に一旦搬入され、記録シートSの搬送方向の後端が第2のゲートGT2を通過後、第2のゲートGT2が切り替わってスイッチバックロールRbが逆回転をして、接続路SH3を搬送されてスタッカトレイTRhに搬送される。
スタッカトレイTRhは、記録シートSが積載され、記録シートSの積載量に応じて、最上面が予め設定された高さとなるように、積載板TRh1が自動的に昇降する。
【0045】
(実施例1の中間転写体と2次転写器の説明)
図3は本発明の実施例1の転写装置の要部説明図である。
図1〜
図3において、2次転写領域Q4には、支持部材の一例であり、対向部材の一例としてのバックアップロールT2aが配置されている。前記バックアップロールT2aは、回転軸の一例としての金属性のシャフト1を有する。前記シャフト1は、前後方向に延びている。前記シャフト1には、対向部材の本体部の一例してのロール層2が支持されている。前記ロール層2は、基層3と、前記基層3の外側に支持された表層4とを有する。基層3は、弾性部材の一例としてのゴムにより構成されている。前記基層3のゴムには、導電性付与剤が配合されている。表層4は、樹脂により構成されている。前記表層4には、導電性付与剤が配合されている。前記ロール層2は予め設定された硬度H1に設定されている。
【0046】
前記バックアップロールT2aには、実施例1の中間転写体の一例としての無端帯状の中間転写ベルトBが張架されている。前記中間転写ベルトBは、導電性付与剤が配合された樹脂により構成されている。
【0047】
図4は本発明の実施例1の転写部材の説明図であり、
図4Aは転写部材の長さの説明図、
図4Bは本体部の要部拡大図である。
図3、
図4において、前記中間転写ベルトBを挟んで、バックアップロールT2aに対向する位置には、実施例1の転写部材の一例としての2次転写ロールT2bが配置されている。前記2次転写ロールT2bは、軸の一例としての金属性のシャフト6を有する。前記シャフト6は前後方向に延びている。前記シャフト6には、本体部の一例としてのロール層7が支持されている。前記ロール層7は、シャフト6の長さλ1に比べて前後方向の長さが短い長さλ2が設定されている。前記ロール層7は、第1の層の一例としての基層8を有する。また、前記ロール層7は、第2の層の一例として、前記基層8に比べて径方向外側に支持された表層9を有する。よって、前記各層8,9は、径方向内側の内表面8a,9aと、径方向外側の外表面8b,9bとを有している。
【0048】
図4Bにおいて、前記基層8は、ゴム11により構成されている。前記ゴム11には、導電性付与剤12が配合されている。また、前記表層9は、樹脂13により構成されている。前記表層9の樹脂13には、導電性付与剤14が配合されている。ここで、実施例1の表層9では、基層8に比べて、導電性付与剤の割合が多くなるように配合されている。実施例1の各層8,9では、導電性付与剤12,14が各層8,9の中で偏りが少ない状態で分散されている。よって、従来の転写ロールでは、外側の層になるほど、導電性付与剤は少ない構成が一般的であるのに対して、実施例1では、表層9の方が基層8よりも導電性付与剤が高濃度に配合されている。
【0049】
図3、
図4において、前記ロール層7は、前記バックアップロールT2aの硬度H1に応じた硬度H2に設定されている。実施例1では、硬度H1と硬度H2との差が小さく設定されている。よって、実施例1の2次転写領域Q4では、バックアップロールT2aと2次転写ロールT2bとで挟まれて形成される領域、いわゆる、ニップ領域16は平面状に形成される。すなわち、前記中間転写ベルトBと前記2次転写ロールT2bとが対向するニップ領域16は平面状に形成される。前記2次転写ロールT2bには、ニップ領域16の記録シートSの搬送方向の長さ、いわゆる、ニップ幅が、予め設定された長さLになるように荷重が付与される。
【0050】
(転写部材の製造方法について)
(シャフト6について)
シャフト6は、2次転写ロールT2bの電極及び支持部材として機能する導電性部材である。
シャフト6としては、例えば、鉄(快削鋼等)、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属の部材が挙げられる。
シャフト6としては、例えば、外側の面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂やセラミック部材)、導電剤の分散された部材(例えば樹脂やセラミック部材)等も挙げられる。
シャフト6は、中空状の部材(筒状部材)であってもよいし、非中空状の部材であってもよい。
【0051】
(基層8について)
基層8は、導電性の層であり、ゴム材料(弾性材料)21と、導電性付与剤22とを含む。また、基層8は、その他の添加剤を含んでもよい。さらに、基層8は、導電性の発泡弾性層でもよく、導電性の非発泡弾性層でもよい。ただし、表層9の形成時における発泡体への液の侵入防止の観点から非発泡弾性層が好ましい。
【0052】
ゴム材料(弾性材料)21としては、例えば、少なくとも化学構造中に二重結合を有する弾性材料が挙げられる。
ゴム材料21として具体的には、例えば、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、及びこれらを混合したゴムが挙げられる。
これらのゴム材料21の中でも、ポリウレタン、EPDM、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、NBR、及びこれらを混合したゴムが好適である。
【0053】
導電性付与剤22は、ゴム材料21の導電性が低い場合やゴム材料が導電性を有しない場合などに用いる。導電性付与剤22としては、電子導電剤と、イオン導電剤とが挙げられる。
電子導電剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属又は合金;酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体、酸化錫−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末が挙げられる。
【0054】
ここで、カーボンブラックとして具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
電子導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電子導電剤の含有量は、例えば、ゴム材料100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下で使用されることが多い。
【0055】
イオン導電剤としては、例えば、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(例えば、臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0056】
イオン導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イオン導電剤の含有量は、例えば、ゴム材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲で使用されることが多い。
その他の添加剤としては、例えば、発泡剤、発泡助剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤23、加硫促進剤24、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム等)など、通常、ゴム層に添加され得る材料が挙げられる。
【0057】
(表層9について)
表層9は、樹脂材料31と、導電性付与剤32とを含む。また、表層9は、その他の添加剤を含んでもよい。
樹脂材料31としては、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、共重合ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレンブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えばテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等)、尿素樹脂等が挙げられる。
ここで、共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種または複数種を重合単位として含むものであって、この共重合体に含まれる他の重合単位としては、6ナイロン、66ナイロン等が挙げられる。 また、樹脂材料31は、硬化性樹脂33を硬化剤34により硬化したものであってもよい。
【0058】
導電性付与剤32としては、電子導電剤、イオン導電剤が挙げられる。これらの導電性付与剤32としては、基層8で説明した導電性付与剤22と同様なものが挙げられる。
その他の添加剤としては、例えば、可塑剤、硬化剤、軟化剤、酸化防止剤、界面活性剤などの通常樹脂の層に添加され得る材料が挙げられる。
【0059】
ここで、表層9としては、ロール表面の微小硬度及びヤング率を調整して、割れ及び傷の発生を共に抑制する点から、硬化性樹脂33と、硬化剤34と、カーボンブラックと、を含む組成物で構成された樹脂層がよく、特に、イソシアネート基と反応し得る官能基を持つ樹脂(硬化性樹脂)と、イソシアネート硬化剤と、カーボンブラックと、を含む組成物の硬化膜で構成された樹脂層であることがよい。
この硬化膜で構成する樹脂層は、例えば、硬化剤の種類及び量、焼成温度(硬化温度)等によりロール表面の低ヤング率化を実現し、割れの発生を抑制し易くなる一方で、カーボンブラックの量により、ロール表面の微小硬度を高め、傷の発生を抑制し易くなるため好適である。
【0060】
ここで、硬化性樹脂33としては、4フッ化エチレン−ビニルモノマー共重合体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等が好適に使用可能である。
【0061】
特に、イソシアネート基と反応し得る官能基を持つ樹脂としては、分子内に水酸基を有するアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオールなどである。また、機能向上等の目的で、例えば、フルオロオレフィン共重合体(例えば、四フッ化エチレン−ビニルモノマー共重合体等)、フッ化ビニル共重合体等が挙げられる。
【0062】
また、硬化剤34としては、分子末端にイソシアネート基を有する低分子量のポリイソシアネート系化合物が好適に用いられる。具体的には、コロネートL,2030,HX,HL(日本ポリウレタン社製)、デスモジュールL,N 3300,HT(バイエル社製)、タケネートD 102,D 160N,D 170N(武田薬品社製)スミジュール N3300(住化バイエルウレタン社製)、T1890(デグッサ社製)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。
【0063】
ポリオール中の水酸基(OH基)に対するイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO/OH、R値)が0.2〜1.5の範囲、好適には0.3〜1.3の範囲、より好適には、0.9〜1.1の範囲となるような配合比で混合することができる。また、反応抑制剤、金属触媒の他、界面活性剤、整泡剤、脱泡剤、難燃剤、可塑剤、顔料、染料、安定剤、制菌剤、充填剤など、物性制御のための添加剤を含むこともできる。
【0064】
表層9は、各成分を溶剤36に分散させて塗布液を調製し、基層8上に、この塗布液を付与し、乾燥、必要に応じて焼成(硬化)することにより形成される。
ここで、塗布液の調製には、導電性付与剤(カーボンブラック)の分散性を高める点から、ジェットミル又はホモジナイザー等の衝突型分散機を利用することがよい。導電性付与剤(カーボンブラック)の分散性を高めることで、表層9の抵抗率の過剰な上昇を抑えつつ、表層9中の導電性付与剤の含有量を高め、微小硬度が高められる。
なお、溶剤36としては、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、n プロパノール、n ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸n ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0065】
(基層8の形成について)
図5は本発明の実施例1の転写部材の製造方法の説明図であり、
図5Aは第1の層の混合物の製造順序の説明図、
図5Bは第1の層の形成順序の説明図である。
図5Aにおいて、実施例1の基層8の材料の一例としての混合物29は、以下の工程を経て製造される。まず、弾性材料21と、導電性付与剤22とを混合して、混合物27を得る。そして、前記混合物27に対して、加硫剤23と、加硫促進剤24と、を添加して、混合物28を得る。そして、前記混合物28を、混練装置の一例としてのオープンロールで、混練りして、混合物29を得る。
【0066】
図5Bにおいて、次に、この混合物29をシャフト6に巻き付ける。続いて、シャフト6を昇温する。そして、巻き付けた混合物29を予め設定された時間、加硫発泡させる。これにより、シャフト6上に弾性を有する基層8を形成する。そして、前記基層8の外表面8aを研磨して、予め設定された外径に加工して、基層8付きロールを得る。
【0067】
(表層9の形成について)
図6は本発明の実施例1の転写部材の製造方法の説明図であり、
図6Aは第2の層の樹脂液の製造順序の説明図、
図6Bは第2の層の形成順序の説明図、
図6Cは第2の層の形成時に使用する装置の説明図である。
図6Aにおいて、第2の層の樹脂液の一例としての樹脂液43は以下の工程を経て製造される。まず、溶剤36に対して、硬化性の樹脂33と、導電性付与剤32とを投入して樹脂液37が作成される。前記樹脂液37は、分散装置の一例としてのジェットミル分散機38にかけて分散処理が行われる。分散処理をした樹脂液36は、除去部材の一例としてのステンレス製のメッシュ39を通過させる。よって、樹脂液36中の異物や、導電性付与剤32の凝集物等が取り除かれる。異物等が取り除かれた樹脂液36は真空脱泡される。よって、樹脂液36中の空気が取り除かれる。これにより、脱泡された樹脂液41が製造される。脱泡された樹脂液41に対して、硬化剤34を混合して、樹脂液42を製造する。そして、前記樹脂液42には、導電性付与剤32を、さらに配合する。これにより、実施例1の表層の樹脂液43が製造される。
【0068】
図6Bにおいて、前記シャフト6上の基層8の外表面8aは、表層の樹脂液43を使用して、被覆される。実施例1では、被覆方法の一例としてのスプレーコートを行う。すなわち、シャフト6の軸方向が水平方向に沿った状態で支持される。そして、シャフト6が予め設定された回転速度u1で回転される。よって、基層8が、シャフト6と共に回転する。そして、回転する基層8の外表面8aに対して、供給部の一例としてのスプレーノズル51から、表層の樹脂液43をスプレーする。なお、この際に、ノズル51は、シャフト6の軸方向に、予め設定された相対速度で移動させる。よって、基層8の外表面8aは、スプレーされた樹脂液43で覆われ、層が形成される。樹脂液43の層が形成されると、予め設定された時間加熱して焼成する。なお、実施例1では、加熱中にもシャフト6が回転している。これにより、ロール層7の表層9が形成されて、転写ロールT2bが作成される。
【0069】
(転写部材の測定方法について)
図7は本発明の実施例1の第2の時定数の測定方法の説明図であり、
図7Aは測定方法の構成の説明図、
図7Bは時間に対する電位の変化の説明図である。
2次転写ロールT2bでは、第2の時定数の一例としての表面方向の時定数τsが設定される。表面方向の時定数τsは以下に示す構成で測定される。
図7Aにおいて、転写ロールT2bの外表面、すなわち、ロール層7の外表面9aには、測定部材の一例として、導電性を有する第1の金属板61と第2の金属板62とが配置される。第1の金属板61と第2の金属板62とは同形状の板状に形成されている。前記金属板61,62の前後方向の長さλ3は、転写ロールT2bのロール層7の長さλ2に比べて長く形成されている。また、前記金属板61,62は、左右方向、すなわち、厚み方向は、長さλ4に形成されている。各金属板61,62は、長さλ3,λ4の辺を有する面61a,62aが、ロール層7の外表面9aに押し当てられて保持される。
【0070】
ここで、第2の金属板62は、第1の金属板61に対し、ロール層7の外表面9aに沿って周方向に離間して配置される。すなわち、
図7Aにおいて、第1の金属板61の右面61bと、第2の金属板62の左面62bとの間の周長が、予め設定された長さλ5になるように配置される。前記第1の金属板61と、第2の金属板62との間には、絶縁部材63が配置されている。よって、前記第1の金属板61の右面61bと、第2の金属板62の左面62bとの間は絶縁されている。
転写ロールT2bのシャフト6は電気的に接地される。一方、第1の金属板61には、電源の一例としての直流電圧源64が接続される。前記直流電圧源64は、前記第1の金属板61に電圧を印加する。前記直流電圧源64は、予め設定された電圧V0を印加する印加状態と、電圧の印加を停止する停止状態とを切替可能に構成されている。実施例1では、
図7Aにおいて、第2の金属板62には、右面62cに対応して表面電位計66が配置される。前記表面電位計66は、前記第2の金属板62の右面62cの電位Vを測定する。
【0071】
直流電圧源64を停止状態から印加状態に切り替えると、2次転写ロールT2bのロール層7には、第1の金属板61を介して、電圧が印加される。したがって、ロール層7の表面方向や体積方向には、電圧の印加の開始に応じて電気的な変化が生じる。すなわち、ロール層7の表面方向に電気的な変化が生じると、第2の金属板62の電位Vが変化する。このとき、
図7Bに示すように、表面電位計64には、0から、ある電位V1に向かって変化する電位Vが測定される。なお、
図7Bでは、横軸が電圧V0の印加を開始してから経過した時間tを表し、縦軸は測定される電位Vを表している。
【0072】
ここで、電位Vが0からV1に変化する現象は、いわゆる、過渡現象として知られており、ネイピア数をe、印加を開始してから経過した時間をt、転写ロールT2bの表面方向の時定数をτsと表す場合に、以下の式(1)に基づいて、電位Vが変化することが知られている。
V=V1×(1−e
(−t/τs)) …式(1)
したがって、式(1)により、時間tが十分に大きい場合には、e
(−t/τs)の値が小さくなり、Vはほとんど変化しないことが分かる。よって、時間tが十分に大きい場合には、電位Vは安定しており、V≒V1となる。
【0073】
また、前記式(1)において、時間tに、表面方向の時定数τsを代入すると、以下の式(2)が得られる。
V=V1×(1−e
(−τs/τs))
=V1×(1−e
−1)
=V1×(1−1/e)
=V1×{(e−1)/e}
≒V1×(1.718/2.718)
≒V1×0.6321 …式(2)
したがって、式(2)により、電圧V0の印加を開始してから、時間τsが経過した場合には、前記電位Vは、電位V1の約63[%]の値になることが分かる。
そこで、実施例1では、
図7Aに示すように、電圧V0の印加を開始してからの第2の金属板の電位Vの変化を測定する。そして、十分に大きい予め設定された時間T1に測定された電位Vを、電位V1とする。また、第2の金属板62の電位Vが、前記電位V1の63[%]の値になった場合の時間tを特定する。そして、特定された時間tを、表面方向の時定数τsとする。
【0074】
図8は本発明の実施例1の第1の時定数の測定方法の説明図であり、
図8Aは測定方法の構成の説明図、
図8Bは時間に対する電位の変化の測定図である。
2次転写ロールT2bでは、第1の時定数の一例としての体積方向の時定数τvが設定される。体積方向の時定数τvは以下に示す構成で測定される。
図8Aにおいて、体積方向の時定数τvの測定では、第2の金属板62と、絶縁部材63とが省略されてい点以外は、表面方向の時定数τsの測定と同様の構成61,64,66が使用される。すなわち、体積方向の時定数τvを測定する場合には、第2の金属板62に替えて、転写ロールT2bの外表面9aに押し当てられて保持された第1の金属板61の電位Vを測定する。実施例1では、
図8Aにおいて、前記第1の金属板61の右面61bに対応して表面電位計66が配置されている。前記表面電位計66は、第1の金属板61の右面61bの電位Vを測定する。
【0075】
直流電圧源64を印加状態から停止状態に切り替えると、2次転写ロールT2bのロール層7に対して、電圧の印加が停止される。したがって、ロール層7の表面方向や体積方向には、電圧の印加停止に応じて電気的な変化が生じる。このとき、ロール層7の体積方向の電気的な変化に応じて、第1の金属板61の電位Vが変化する。よって、
図8Bに示すように、表面電位計66には、初期の電位V2から、0に向かって変化する電位Vが測定される。なお、
図8Bでは、横軸が電圧の印加を停止してから経過した時間tを表し、縦軸は測定される電位Vを表している。
【0076】
ここで、電位VがV2から0に変化する現象も、過渡現象として知られており、2次転写ロールT2bの体積方向の時定数をτvと表す場合に、以下の式(3)に基づいて、電位Vが変化することが知られている。
V=V2×e
(−t/τv) …式(3)
前記式(3)において、時間tに、体積方向の時定数τvを代入すると、以下の式(4)が得られる。
V=V2×e
(−τv/τv)
=V2×(e
−1)
=V2×(1/e)
≒V2×(1/2.718)
≒V2×0.3679 …式(4)
【0077】
したがって、式(4)により、電圧の印加を停止してから、時間τvが経過すると、前記電位Vは、初期の電位V2の約37[%]の値になることが分かる。
そこで、実施例1では、
図8Bに示すように、電圧の印加を停止してからの第1の金属板61の電位Vの変化を測定する。そして、印加状態に対応する時間t=0の電位Vを、初期の電位V2とする。また、第1の金属板61の電位Vが、前記電位V2の37[%]の値になった場合の時間tを特定する。そして、特定された時間tを、体積方向の時定数τvとする。
【0078】
(転写部材の値の設定について)
2次転写ロールT2bでは、表面方向の時定数τs[s]と、体積方向の時定数τv[s]とが、以下の式(11)の関係を満たすように設定されている。
τs<τv …式(11)
特に、実施例1では、
図3において、2次転写領域Q4におけるシートの搬送方向のニップ領域16の長さをL[mm]、2次転写ロールT2bの外表面の周速の一例としての回転速度をv[mm/s]と表わす場合に、2次転写ロールT2bは、表面方向の時定数τs[s]と、体積方向の時定数τv[s]と、ロール層7の体積抵抗値Rv[Ω]と、ロール層7の表面抵抗値Rs[Ω]とが、以下の式(12)の関係を満たすように設定されている。
(L/v)×(Rv/Rs)<τs<τv …式(12)
【0079】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1のプリンタUでは、記録シートSに画像を記録する際に、2次転写器T2には2次転写電圧Vaが印加される。すなわち、実施例1では、コンタクトロールT2cを介してバックアップロールT2aに2次転写電圧Vaが印加される。これにより、バックアップロールT2aに支持された中間転写ベルトBと、2次転写ロールT2bとの間には、2次転写電圧Vaに応じた転写電界が形成される。したがって、中間転写ベルトB上の可視像が、中間転写ベルトBと2次転写ロールT2bとの間のニップ領域16を通過すると、可視像には転写電界が作用する。よって、可視像は、中間転写ベルトBから記録シートSに転写される。ここで、実施例1では、2次転写ロールT2bの時定数τs,τvなどが、式(11)、式(12)の関係を満たすように設定されている。
【0080】
図9は画像形成装置の対向領域の説明図であり、
図9Aは
図3に対応する説明図、
図9Bは
図9AにおけるIXB−IXB線断面図である。
図9において、一般に、画像形成装置では、2次転写領域Q4におけるニップ領域01の前後方向の長さは、記録シートSの大きさ、すなわち、記録する最大の記録シートSのサイズに基いて構成される。したがって、記録シートSのサイズが最大でない場合には、記録シートSがニップ領域01を通過する場合に、記録シートSの通過する通紙部02と、記録シートSの通過しない非通紙部03とが、ニップ領域01に生じる。そして、このような通紙部02と非通紙部03とが何度も生じた後に、画像を記録しようとすると、大サイズの記録シートSでは画像不良が生じる恐れがある。すなわち、非通紙部03であった部分では、中間転写ベルトBの抵抗値が低下することが従来から知られており、大サイズの画像を記録する場合に、軸方向において転写電界のバラツキが生じ、濃度の低下や、トナーの飛び散り等の画像不良が生じることが知られている。
【0081】
これに応じて、特許文献3では、非通紙部03にトナーを供給して、通紙部02と非通紙部03とで転写時に抵抗値が異なる状況が発生することを抑制している。また、特許文献4では、濃度センサにより中間転写ベルトBの抵抗値の変化を検出して、中間転写ベルトBの劣化を検出している。したがって、従来は、中間転写ベルトBの抵抗低下が発生する原因について、必ずしも詳細には認識されていなかった。
これに対して、本願発明者は、中間転写ベルトBの抵抗値の低下は、中間転写ベルトBと2次転写ロールT2bとの間の放電により生じることを特定した。すなわち、放電が生じることで、樹脂の絶縁性が失われて電気が通り易い導通路が形成されてしまい、抵抗が低下するものと推察される。したがって、2次転写電圧Vaが大きい場合に、抵抗が低下し易くなるのは、中間転写ベルトBと2次転写ロールT2bとの間の電位差が増大して放電が増大するためであると推察される。
よって、中間転写ベルトBの抵抗の低下を抑制するためには、放電を制御、抑制する必要があると考えた。
【0082】
放電の制御、抑制について更に研究を進めたところ、この放電は、2次転写ロールT2bの表面の導電性付与剤12,14の微視的な空間におけるバラツキに起因していると考えるに至った。すなわち、2次転写ロールT2bのロール層7では、樹脂9に対して導電性付与剤14が配合される。よって、2次転写ロールT2bの表面を、微視的に見た場合には、抵抗値の大きい樹脂13に、抵抗値の小さい導電性付与剤14が点在していると考えることができる。よって、2次転写ロールT2bの表面を微視的に見た場合には、抵抗値が大きい部分と、抵抗値が小さい部分とが空間的に繰り返される。そして、この繰り返される程度、すなわち、導電性付与剤14どうしの距離に応じた抵抗値の微視的な空間距離に起因して、電荷の溜まり易さや移動し易さが異なり、放電に影響を与えるものと考えられる。なお、導電性付与剤14が疎に分散しているのであれば、その領域では、抵抗の大きい樹脂13が多く、前記空間距離が長くなる。逆に、導電性付与剤14が密に分散しているのであれば、導電性付与剤14どうしの距離が近く、前記空間距離は短くなる。
【0083】
つまり、中間転写ベルトBと2次転写ロールT2bとの間に電圧が印加された場合に、2次転写ロールT2bの表面では、抵抗値の大きい樹脂13ではなく、抵抗値の小さい導電性付与剤14に電流が流れ易い。すなわち、導電性付与剤14には、電荷が移動し易くて電荷が集まり易い。よって、転写電界が大きくなって放電が生じる場合には、導電性付与剤14と中間転写ベルトBとの間で放電が生じ易い。このとき、中間転写ベルトBでは、前記導電性付与剤14の近傍で放電が生じるものと推察される。したがって、前記空間距離が長い場合には、放電が生じる導電性付与剤14の数が少ないために、中間転写ベルトBでも放電の発生する部分が集中的に生じ易いと考えられる。よって、中間転写ベルトBの抵抗の低下を緩和するには、放電が生じる微視的な点を増やし、放電を分散させれば良いと考えられる。
【0084】
そこで、導電性付与剤12,14の配合量を調節するなどして、2次転写ロールT2bの表面近傍の前記空間距離を短くして放電の分散を試みると、2次転写ベルトBの一部に放電が集中することを大幅に低減できる場合があった。すなわち、導電性付与剤12,14の配合量を調節することで、中間転写ベルトBの抵抗低下を抑制可能であることを見出した。
このとき、点としての導電性付与剤12,14から生じる放電自体は、導電性付与剤12,14の大きさや、抵抗値、形状等によって、生じ易さが異なるもの考えられる。すなわち、導電性付与剤12,14の種類などによって、放電の集中を抑制する場合に必要な最低限の前記空間距離は異なるものと考えられる。これに対して、本願発明者は、導電性付与剤12,14の種類によらずに、表面方向の時定数τsと、体積方向の時定数τvとを式(11)の関係にすることで、2次転写ロールT2bにおける放電の集中が抑制されることを見出した。
【0085】
すなわち、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsが、体積方向の時定数τvに比べて小さくなっている実施例1では、放電が集中し難くなっている。したがって、実施例1では、中間転写ベルトBにおける抵抗の低下も抑制されている。よって、サイズが異なる記録シートSに画像を記録する場合であっても、サイズの大きな記録シートSに画像不良が発生し難くなっている。
なお、式(11)の関係を満たさない場合、すなわち、表面方向の時定数τsが、体積方向の時定数τvよりも大きい場合は、2次転写ロールT2bの外表面9aとシャフト6との間に電流が流れる場合に、外表面9aに沿って電流が流れ難いことに対応する。すなわち、τs>τvの場合には、電荷は外表面9aの一部での移動に制限され易くて、転写電界が一部分でしか生じ難くなって、放電が分散され難いものと考えられる。
【0086】
図10は導電性付与剤の分布の説明図であり、
図10Aは
図4Bに対応する図、
図10Bは比較の図、
図10Cは
図10Bとは異なる比較の図である。
式(11)について補足する。転写ロールの表面近傍に導電性付与剤を多く含有させることは、例えば、2層構成の転写ロールT2bであれば、表層9の導電性付与剤14の含有量を多くすることに相当する。その場合、表層9の体積抵抗値や、転写ロールT2bとしての表面抵抗値は下がる。しかしながら、例えば、導電性付与剤14にカーボンブラック14′を使用した場合、配合されるカーボンブラック14′の部数が同じでも、
図10に示すように、その空間距離は幾通りにもなる。
【0087】
例えば、
図10Aに示す表層9では、カーボンブラック14′が樹脂13中に偏りが少ない状態で、いわゆる、均一に分散している。すなわち、カーボンブラック14′同士の距離について、シャフト6から外表面9aに向かう方向に沿った体積方向の距離d1についてはバラツキが少なくなっている。また、外表面9aに沿った周方向の距離d2についても、バラツキが少なくなっている。なお、
図10Aでは、層8,9のカーボンブラック14′同士の距離について、平均的には、体積方向の距離d1よりも周方向の距離d2の方が短い距離となっている。
【0088】
一方、
図10Bに示す表層9では、カーボンブラック14′が体積方向に沿って分布する密な部分13aと、カーボンブラック14′が存在しない疎な部分13bとが、周方向に沿って繰り返し存在している。すなわち、
図10Bに示す表層9では、体積方向の距離d1についてはバラツキが少ない。しかし、周方向の距離d2については、密な部分では距離d2が小さいが、疎な部分では、距離d2が大きい。よって、周方向の距離d2については、バラツキが大きく不均一である。また、
図10Cに示す表層9では、カーボンブラック14′が全体的に内表面9bに偏っている。そして、一部のカーボンブラック14′が外表面9a近傍に密集している。このとき、外表面9a近傍の密集した部分同士は周方向に離間している。よって、
図10Cの表層9では、カーボンブラック14′同士の距離d1,d2に大きいバラツキが存在しており、不均一である。よって、
図10B、
図10Cに示す表層9では、外表面9a近傍の周方向に関して、カーボンブラック14′同士の距離d2のバラツキが大きく不均一である。
【0089】
ここで、放電が生じる場合を考える。
図10Aの転写ロールT2bでは、カーボンブラック14′の空間距離が小さく、放電が、一部分に集中し難くて分散し易くなっている。よって、導電点当たりの放電エネルギーが分散し易い。これに対して、
図10Bや
図10Cの転写ロールT2bでは、放電は、外表面9a近傍のカーボンブラック14′の密な部分に集中し易く、導電点当たりの放電エネルギーが大きくなり易い。なお、カーボンブラック14′の分布が周方向に均一な場合、距離d2が小さくなればなるほど放電は分散し易い。
【0090】
したがって、導電性付与剤の配合量を多くして、表面抵抗値を体積抵抗値に比べて小さくしたり(表面抵抗値<体積抵抗値としたり)、表面抵抗率を体積抵抗率に比べて小さくしたり(表面抵抗率<体積抵抗率としたり)するだけでは、
図10Bや
図10Cのように空間距離の大きい部分を有する転写ロールになり、中間転写ベルトBと転写ロールT2b間の放電が緩和されない恐れが生じ易い。よって、中間転写ベルトBの抵抗低下が生じる恐れが高い。
【0091】
これに対して、式(11)を満たす実施例1では、τs<τvである。よって、転写ロールT2bの外表面9a近傍において、導電性付与剤14間の空間距離がある値以下に保たれる。したがって、空間距離の小さい転写ロールに構成が限定され、放電の集中は緩和される。したがって、実施例1の転写ロールT2bでは、従来の構成に比べて、放電の集中を緩和し易く、中間転写ベルトBの抵抗低下を抑制し易くなっている。
【0092】
また、従来の構成では、空間距離が放電の緩和に必要な小ささか否かを、転写ロールT2bを分解してロール層7の断面を観察しなければならなかった。つまり、従来は、導電性付与剤14の位置関係を観察しなければならなかった。これに対して、実施例1では、τs<τvの関係性を満たさせることで、ロール層7の断面を実際に観察することなく、導電性付与剤14の空間距離が小さいことが認識される。つまり、τs<τvの関係により、体積方向と表面方向において導電性付与剤14の配置が制御され、導電性付与剤の空間距離が放電の緩和に必要な小ささにされる。
【0093】
図11は導電性付与剤の分散の均一性に関する説明図であり、
図11Aは測定方法の概略図、
図11Bは測定結果の判定方法の説明図である。
導電性付与剤14,14′の分散のバラツキが少ない場合に関し、特に、
図10Aに示すような周方向に均一に分散することの意味について説明する。本明細書では、導電性付与剤14,14′が周方向に均一に分散することを、転写ロールのτsに関する標準偏差σを用いて定義する。すなわち、
図11Aにおいて、転写ロールT2bに対して、周方向に45°ずつ異なる位置P1〜P8でτsを測定する。そして、測定された8つのτsに対する標準偏差σが1.0よりも小さい場合を、本明細書では、導電性付与剤14,14′が周方向に均一に分散しているとする。よって、例えば、サンプル1〜サンプル10の転写ロールT2bについて、
図11Bに示すように、各位置P1〜P8でτsが測定されたとすると、標準偏差σが、σ<1.0を満たすサンプル4,7,9,10は、導電性付与剤14が周方向に均一に分散しているとみなす。
【0094】
図12は導電性付与剤同士の体積方向の距離と周方向の距離に関する説明図であり、
図12Aは測定方法の概略図、
図12Bは
図10Aに対応する測定結果の説明図、
図12Cは
図10Bに対応する測定結果の説明図、
図12Dは
図10Cに対応する測定結果の説明図である。
上述の説明で使用した導電性付与剤同士の距離に関し、体積方向の距離d1と周方向の距離d2との大小関係について説明する。本明細書では、前記距離d1,d2を、転写ロールT2bの一周分について測定された抵抗値Rv,Rsを用いて定義する。すなわち、
図12において、体積方向の距離d1は、転写ロールT2bの一周分についてRvを測定する。そして、測定されたRvの最大値Rv1と最小値Rv2との差分ΔRv(=Rv1−Rv2)が、前記距離d1を表すものとする。また、周方向の距離d2については、転写ロールT2bの一周分について表面抵抗値Rsを測定する。そして、測定されたRsの最大値Rs1と最小値Rs2との差分ΔRs(=Rs1−Rs2)が、前記距離d2を表わすものとする。よって、ΔRs<ΔRvが満たされる転写ロールT2bでは、体積方向の導電性付与剤同士の距離d1よりも外表面9aの周方向の導電性付与剤同士の距離d2の方が短い距離で導電性付与剤12,14がロール層7に分散しているとみなす。
【0095】
式(11)について、さらに補足すると、特許文献1には、表面抵抗率ρsが、体積抵抗率ρvに比べて小さく設定された転写ロールが記載されている。すなわち、特許文献1には、ρs<ρvの転写ロールが記載されている。
一般的に、転写ロールの抵抗値は電圧に依存する。この電圧への依存特性は、印加電圧に対する抵抗値の傾きから、電子導電タイプと、イオン導電タイプの2タイプに分類できる。電子導電タイプは、主にカーボンブラックに代表される電子導電剤が電流を運ぶタイプであり、電圧依存が大きいという特性を有する。一方、イオン導電タイプは、イオンが電流を運ぶタイプであり、電圧依存が小さいという特性を有する。
【0096】
従来の転写ロールでは、イオン導電が支配的であり、体積抵抗値は、印加電圧の上昇とともになだらかに減少することが多い。このとき、表面抵抗値を低くしようとして、表面近傍のカーボンブラックの配合量を多くすると、表面近傍では電子導電がイオン導電に比べて支配的となる。よって、その表面抵抗値は、電圧依存が大きくなり、電圧の上昇と共に急峻に減少する。逆に言えば、その表面抵抗値は電圧の下降と共に急峻に増大する。
【0097】
ここで、一般には、転写ロールT2bの抵抗値は転写中にかかる電圧、例えば、1000[V]で測定される。したがって、従来の構成では、1000[V]で測定される体積抵抗値と表面抵抗値に対して、表面抵抗値の方が体積抵抗値よりも小さくなるように設定された。しかし、カーボンブラックの配合量を多くして表面抵抗値の方を小さく設定した場合、上述のように、表面抵抗値は、電圧の下降と共に急峻に増大する。よって、低い電圧側では、逆に、表面抵抗値の方が体積抵抗値よりも大きくなる。放電は、転写ロールに係る電位差が300[V]程度で生じる。よって、表面抵抗値の方が体積抵抗値に比べて小さく設定された従来の転写ロールの場合、300[V]程度の低い電圧の領域では、表面抵抗値は体積抵抗値よりも大きくなり、放電の集中を緩和することが困難である。すなわち、従来の構成では、式(11)を満たさず、τs>τvとなってしまう。上記抵抗値を抵抗率と読みかえることができるので、一般的には、特許文献1に記載のρs<ρvの規定だけでは、τs>τvとなってしまう。
【0098】
整理すると、従来のように単に表面抵抗値や表面抵抗率を下げるという発想だけでは、導電性付与剤の配合を多くすることにしかならない。そして、それは導電機構を電子導電にすることと等価である。よって、低い電圧側で発生する放電の問題を解決することは困難である。また、イオン導電タイプの転写ロールの表面抵抗値を下げようとして、カーボンブラックを増大させていくと、電子導電の挙動が強くなる。よって、イオン導電を保ったまま、抵抗を下げることは非常に困難である。したがって、いずれにしても、表面抵抗値が電圧の下降と共に急峻に増大することを阻止するのは困難である。
【0099】
なお、基層と表層の2層構造において、表層の抵抗値を大幅に低下させることでτs<τvを実現することも考えられる。つまり、表面抵抗値が、電圧の下降と共に急峻に増大しても、表面抵抗値の方が体積抵抗値に比べて小さくなるように、予め大幅に低下させておくことも考えられる。しかしながら、そもそも、そのような状態では転写電流がシャフト6には流れず転写ロールT2bの表面を流れてしまう。よって、中間転写ベルトBの非通紙部の抵抗低下の問題以前に、転写ロールとしての機能そのものが失われてしまう問題が生ずる。
【0100】
これらに対して、実施例1では、τs<τvを満たす転写ロールT2bである。よって、実施例1では、特許文献1等の従来の構成とは異なり、転写中にかかる電圧程度での抵抗値の関係を調整して転写ロールの機能を確保しつつ、中間転写ベルトBと転写ロールT2b間の実際の放電時に転写ロールT2bにかかる電圧程度での抵抗値の関係が規定される。
【0101】
ところで、式(11)の関係においては、表面方向の時定数τsが小さければ小さいほど、放電が分散し易くなると考えられる。よって、放電の集中を抑制する観点からは、表面方向の時定数τsが小さいほど、望ましいようにも思われる。しかしながら、表面方向の時定数τsが小さ過ぎる場合には、厚紙などに画像を記録する場合に、画像の濃度低下が生じる場合があることが分かった。
これに対して、本願発明者は、表面方向の時定数τsが式(12)の関係を満たす場合には、厚紙などに画像を記録する場合であっても、転写電界が確実に確保され易いことを見出した。よって、式(12)の関係を満たす実施例1のプリンタUでは、転写電界の低下に伴う画像の濃度低下を抑制しつつ、中間転写ベルトBの抵抗低下に伴う画像不良が抑制されている。
【0102】
なお、式(12)について、補足する。
(L/v)×(Rv/Rs)<τs<τv …式(12)
式(12)において、(L/v)は単位が[s]であり、
図3に示すように2次転写ロールT2bの外表面9aが、ニップ領域16に進入してから、ニップ領域16を通過するまでの時間を表わしている。
また、(Rv/Rs)は、抵抗値[Ω]と抵抗値[Ω]の比であり、無次元の値、いわゆる、係数を表している。
【0103】
式(12)における(L/v)は、2次転写ロールT2b上のある位置がニップ領域16を通過する時間と等価である。つまり、ニップ領域16内での電位の立ち上がり時間、すなわち、ニップ領域16内での転写電界の立ち上がり時間を意味する。よって、前記通過時間(L/v)内に、2次転写に必要な転写電界が形成される必要があるが、転写電界の立ち上がり方は、2次転写ロールT2bの抵抗値に依存する。よって、やみくもに、回転速度vと、ニップ幅Lとを設定することは出来ない。すなわち、回転速度vと、ニップ幅Lとは、2次転写ロールT2bの抵抗値に応じて印加する転写電圧についても加味して、決定されることが一般的である。
【0104】
また、式(12)におけるRvは、体積抵抗値である。よって、転写電圧に影響を与える。
ここで、通過時間(L/v)が短い場合には、転写電界は急激に立ち上げる必要がある。よって、Rvは、比較的小さな値を設定する。逆に、(L/v)が長い場合には、転写電界は緩やかに立ち上げることが可能となる。よって、Rvは、比較的大きな値を設定することが可能となる。
また、Rvを比較的小さな値をとることで、2次転写用の電源の電源容量を小さくとることが可能となる。したがって、低電圧電源を使用することが可能となる。よって、費用を下げられる利点がある。しかし、この場合には、ニップ領域16内の放電が多いため画質劣化を伴ってしまう。逆に、Rvを比較的大きな値をとることで、ニップ領域16内の放電の抑制が可能となり、高画質化の利点がある。しかし、この場合には、高圧電源が必要となる。
したがって、目的に応じて体積抵抗値Rvの設定をすることになる。
【0105】
そして、体積抵抗値Rvを表面抵抗値Rsで割ったRv/Rsは、Rsが小さいほど大きな値となる。これは、Rsが小さいほど、2次転写ロールT2bの表面方向に電流が流れ易くなることを意味する。よって、2次転写ロールT2bの表面方向へ迂回する電流、すなわち、転写電界に寄与し難い電流としての損失電流が大きくなることを意味する。したがって、(L/v)×(Rv/Rs)全体としては、転写電界の立ち上がり時間(L/v)における2次転写ロールT2b表面方向への損失電流の程度を意味している。
【0106】
なお、式(12)の表面方向の時定数τsと、体積方向の時定数τvとの大小関係は、式(11)と同様である。すなわち、これにより、中間転写ベルトBと、2次転写ロールT2b間の放電の集中を緩和することを意味している。つまり、τs>τvの場合は、2次転写ロールT2bの表面近傍の導電性付与剤の前記空間距離について、放電の集中を緩和するのに不十分であることを意味している。
【実施例2】
【0107】
次に本発明の実施例2の説明をするが、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例は下記の点で、前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成される。
【0108】
図13は本発明の実施例2の転写部材の要部拡大図であり、実施例1の
図4Bに対応する説明図である。
図13において、実施例2の2次転写ロールT2bのロール層7′では、前記シャフト6から外表面9aに向かうほど導電性付与剤12,14が密に分散している。すなわち、実施例2のロール層7′は、実施例1と同様の基層8を有する。また、実施例2の基層8の外表面8aには、実施例1の表層9に替えて、実施例2の表層9′が支持されている。実施例2の表層9′では、導電性付与剤14が外表面9a側に偏って分散している。そして、外表面9a側に偏った導電性付与剤14は、外表面9aに沿った周方向に対しては、導電性付与剤14同士の距離d2のバラツキが少なくなっている。すなわち、導電性付与剤14は、周方向に関しては偏りが少ない状態で均一に分散している。
【0109】
(実施例2の転写部材の製造方法について)
実施例2では、基層8の外表面8aに対向して電極板を配置する。そして、実施例2では、シャフト6と電極板との間に、電圧を掛けながら、基層8の外表面8aに樹脂液43をスプレーする。つまり、実施例2では、樹脂液43中の導電性付与剤33を外表面9a側に移動させる電界を形成する。なお、電界は樹脂液43の粘性など、導電性付与剤33の移動し易さを考慮して設定される。そして、導電性付与剤33を外表面9a側に移動させて偏らせ、表層9′を形成する。なお、導電性付与剤33を予め帯電させたり、供給時の摩擦帯電等を利用することも可能である。また、スプレー後の乾燥、焼成時間に電界を作用させて導電性付与剤33を偏らせることも可能である。
【0110】
(実施例2の作用)
実施例2の2次転写ロールT2bでも、式(11)や式(12)が満たされている。よって、実施例2でも、実施例1と同様に、放電の集中が緩和されると共に、厚紙に対する転写性が確保される。
特に、実施例2の2次転写ロールT2bの表層9′では、導電性付与剤14が外表面9a側に偏っている。ここで、導電性付与剤14を偏りなく均一に分散させる構成では、式(11)を満足させようとして表層の導電性付与剤の部数を増加させると、転写ロールの体積抵抗値は低下し易い。よって、式(11)を満たして非通紙部における放電の集中が緩和されても、今度は、転写ニップ16内での通紙部でのトナーへの放電が増加する恐れがある。すなわち、画質が劣化する恐れが生じる。これに対して、実施例2では、体積抵抗値を大きく低下させずに、式(11)を満足させ易い。よって、実施例2では、表層で導電性付与剤を均一に分散させる場合に比べて、画質の劣化を損なわずに放電の集中を緩和し易く、中間転写ベルトBの抵抗低下を抑制し易くなっている。
【0111】
図14は実施例2の導電性付与剤の分布の説明図であり、
図14Aは
図13に対応する図、
図14Bは導電性付与剤が均一に分散している場合の比較の説明図である。
また、例えば、
図14Bにおいて、表層の導電性付与剤の部数が少ない場合、導電性付与剤14を偏りなく均一に分散させると、式(11)を満足しない場合がある。すなわち、導電性付与剤の部数が少なくて均一に分散させる構成では、τs>τvとなり、前記空間距離が大きくなる場合がある。このとき、導電性付与剤14が外表面9a側に偏っている実施例2では、導電性付与剤14が
図14Bと同じ部数であり、
図14Bと表面抵抗値や体積抵抗値に差がなくても、τs<τvとなる場合がある。よって、実施例2のように偏らせる構成では、層全体で均一に分散させる構成に比べて、少ない導電性付与剤の部数で、放電の集中を緩和して中間転写ベルトBの抵抗低下を抑制させ易くなっている。
【実施例3】
【0112】
次に本発明の実施例3の説明をするが、この実施例3の説明において、前記実施例1,2の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例は下記の点で、前記実施例1,2と相違しているが、他の点では前記実施例1,2と同様に構成される。
【0113】
(実施例3の転写部材の値の設定について)
実施例3の2次転写ロールT2bでは、式(12)に替えて、以下の式(21)の関係を満たす2次転写ロールT2bを使用する。すなわち、実施例3では、2次転写ロールT2bのロール層7の外表面9aのアスカーC型硬度をHとするとき、表面方向の時定数τs[s]と、体積方向の時定数τv[s]とが、以下の式(21)の関係を満たすように作成される。
(1/H)×0.5<τs<τv …式(21)
【0114】
図15は2次転写ロールのニップ幅と2次転写ロールの硬度の関係を表わした図である。
一般的に、2次転写領域Q4の転写圧力は予め設定されている。そして、前記転写圧力となるように、2次転写ロールT2bの硬度H2に応じて、2次転写ロールT2bを荷重する。このとき、2次転写ロールT2bの硬度H(=H2)と、2次転写領域Q4のニップ領域16の幅Lとの間には、実験に基づいて定められた係数Zに対して、以下の式(22)が成立する。
L=Z/H …式(22)
なお、
図15において、例えば、2次転写ロールT2bの軸方向のロール長さλ3が320[mm]、転写圧力が約4.3[N/cm
2]の場合には、Hと、Lとの間に、実験に基づいた以下の式(22′)が成立している。
L=125/H …式(22′)
なお、上述の転写ロールT2bでは、硬度Hが25度、40度の場合は基層8は発泡ゴムを用いた。また、硬度Hが75度の場合は基層8にソリッドゴムを用いた。また、2次転写ロールT2bでは、転写圧力を4.3[N/cm
2]に保持するために、転写ロール硬度25度では68[N]、転写ロール硬度40度では47[N]、転写ロール硬度75度では25[N]と設定した。
【0115】
ここで、実施例1の式(12)に、式(22)を代入して、式(12)の一番左側の辺を整理すると、以下の式(23)が得られる。
(L/v)×(Rv/Rs)
={(Z/H)/v}×(Rv/Rs)
=(1/H)×(Z/v)×(Rv/Rs) …式(23)
したがって、式(12)は、式(23)を用いると、式(24)と変形できる。
(1/H)×(Z/v)×(Rv/Rs)<τs<τv …式(24)
【0116】
次に、式(24)において、(1/H)の係数部分である(Z/v)×(Rv/Rs)に関して説明する。
(Z/v)×(Rv/Rs)をAと置いて、(1/H)の係数Aを見積もる。
まず、係数Aを見積もる前に、上式の物理的な意味を確認しておく。回転速度vが小さいとき、Rv/Rsも小さくなるように設定される。これは、回転速度vが低速度であるほど、2次転写ロールT2b表面方向への損失電流の閾値の程度が小さくなるように設定されることを意味する。逆に言うと、回転速度vが高速度であるほど、小さなRsの設定が可能となり、Rv/Rsは大きく設定される。つまり、低速度であるほど転写ロール表面方向への損失電流が発生し易いことを意味する。
【0117】
次に、式(24)を変形する。ここで、誘電体の時定数は、一般的に、誘電体の抵抗値と静電容量により定まる。すなわち、表面方向の時定数τsは、表面抵抗値Rsと、表面方向の静電容量Csの積と考えることができる。なお、表面方向の静電容量Csとは、2次転写ロールT2bの表面部分の静電容量である。したがって、式(24)におけるτsを、τs=Rs×Csで置換すると、式(24)の左辺と、表面方向の時定数τsとの関係について、以下の式(25)が得られる。
(1/H)×(Z/v)×(Rv/Rs)<Cs×Rs …式(25)
【0118】
よって、式(25)と、Aの関係から、以下の式(26)が得られる。
(Z/v)×(Rv/Rs)<H×Cs×Rs
A=A(v,Rv,Rs)<H×Cs×Rs …式(26)
よって、Aを式(26)を満たすような値として定める。ここで、A(v,Rv,Rs)とは、係数Aがv,Rv,Rsの関数であることを意味する。そして、v,Rv,Rs,H,Csを設定した際に上式を満たす(やみくもな組み合わせでは式を満たさない)Aの最大値、すなわち、閾値を定める。
【0119】
ただし、係数Aを解析的に定めることは極めて困難である。よって、Aは、幾つかの条件から成る実験から見積もった。実験の条件は、2次転写ロールとして、好適に使用可能な数値を使用している。実施例3の実験では、2次転写ロールT2bの表面抵抗値Rsと体積抵抗値Rvを(Rs[logΩ],Rv[logΩ])と表すと、一例として、抵抗値が、(7.8,8.3),(8.1,8.0),(8.1,8.3),(8.3,8.0),(8.3,8.3),(8.3,8.7)の6通り、アスカーC型硬度が25度、75度の2通りについて、総当たりの計12本の2次転写ロールT2bに対して行った。なお、2次転写ロールT2bの硬度Hについては、アスカーC型硬度で、25度〜75度が好適に使用可能である。よって、その境界値を実験の条件として使用した。
【0120】
また、表面方向の静電容量Csはインピーダンス測定により見積もった。具体的には、ソーラトロン社製1296型誘電率測定インターフェースと1260型インピダンスアナライザーを使用して、インピーダンス測定を行った。このとき、印加電圧はACで1[V]、3[V]を使用した。また、測定周波数を10[mHz]から1[MHz]の条件で実部と虚部を測定した。そして、実部と虚部の各測定値から解析ソフトを用いてCR回路で、近似式の導出法の一例としてのフィッティングした値を用い静電容量Csを見積もった。また、回転速度vは、440[mm/s]、600[mm/s]にて評価を実施した。
なお、バックアップロールT2aの体積抵抗値は10
7.0[Ω]を用いている。しかし、中間転写ベルトBと2次転写ロールT2b間の放電に関しては、中間転写ベルトBと2次転写ロールT2b間の隙間、いわゆる、ギャップにかかる電圧で決まる。したがって、その放電時のエネルギーは、2次転写ロールT2bの導電点、すなわち、導電性付与剤の前記空間距離に依存する。よって、バックアップロールT2aの体積抵抗値は概ね影響しない。
【0121】
図16は係数Aの評価結果の説明図である。
図17は速度と硬度ごとの式(26)を満たす最大の係数Aの説明図である。
図16において、Aが式(26)を満たす場合、厚紙小サイズの転写性が良好となる。よって、
図16に示すように、Aが式(26)を満たす場合には、厚紙小サイズの転写性の欄に○を付した。また、硬度Hと速度v毎に式(26)を満たす最大のAを
図17に示した。つまり、
図17には、係数Aがこの値以下であれば、厚紙小サイズ紙の転写性が良好であるという、係数Aの閾値が描かれている。
【0122】
図16、
図17において、結果は、係数Aが0.9以下であれば、厚紙の小サイズ紙への転写不良が抑制される場合があることを確認した。すなわち、硬度が75度で、v=440[mm/s]の場合、Aが0.9でも転写不良が抑制されること確認した。しかし、高速度回転、すなわち、v=400[mm/s]以上の場合には、一般に、高い転写電圧が必要となるが、硬度や速度が変ると、係数Aを0.9よりも更に小さくする必要があることを確認した。そして、係数Aが十分小さい0.5以下の場合には、
図16、
図17に示す通り、硬度や速度が変わっても、厚紙小サイズの転写不良が抑制されることを確認した。
【0123】
したがって、上の評価結果から、以下の式(27)であれば良いと見積もることが可能となる。
A<0.5 …式(27)
よって、式(27)の両辺をHで割って、Aを元に戻すと、以下の式(28)が得られる。
(1/H)×(Z/v)×(Rv/Rs)<(1/H)×0.5 …式(28)
ここで、式(24)、式(28)、および、
図16の評価結果のτs,τv,Aの大小関係を考慮すると、式(21)が得られる。
(1/H)×0.5<τs<τv …式(21)
【0124】
(実施例3の作用)
前記構成を備えた実施例3の2次転写ロールT2bでは、表面方向の時定数τsと、体積方向の時定数τvとが式(11)の関係を満たしている。よって、実施例1と同様に、放電の集中が緩和されている。特に、実施例3では、表面方向の時定数τsと、体積方向の時定数τvと、2次転写ロールT2bのアスカーC型硬度Hとが、式(21)の関係を満たしている。よって、式(21)の関係を満たす実施例3のプリンタUでは、厚紙などに画像を記録する場合であっても、表面方向の時定数τsの下限が設定されていない場合に比べて、転写電界が確保され易くなっている。よって、実施例3のプリンタUでは、転写電界の低下に伴う画像の濃度低下を抑制しつつ、中間転写ベルトBの抵抗低下に伴う画像不良が抑制され易くなっている。
【0125】
(実験例)
次に、実施例1乃至実施例3の効果を確かめる実験を行った。
(実験例の中間転写体と2次転写器の説明)
図1〜
図3に関し、実験例では以下の構成を用いた。
バックアップロールT2aは、シャフト1の径が14[mm]、ロール層2の肉厚が5[mm]、硬度H1がアスカーC型硬度で60度、体積抵抗値が1[kV]の印加電圧で10
7.0[Ω]のものを使用した。
中間転写ベルトBは、ポリイミドにカーボンブラックを配合したものを使用した。実験例の中間転写ベルトBは、厚さが80[μm]、体積抵抗率が100[V]の印加電圧で10
10[Ω・cm]、表面抵抗率が100[V]の印加電圧で10
10[Ω/□]のものを使用した。
2次転写ロールT2bは、シャフト6の径が14[mm]、基層8が5[mm]、表層9が20[μm]の2層のロール層7を有する構成を用いた。実験例のロール層7の前後方向の長さλ2は320[mm]に設定されている。実験例の2次転写ロールT2bの体積抵抗値Rvと表面抵抗値Rsは基層8と表層9の抵抗を独立に制御することで調整した。なお、実験例の2次転写ロールT2bに関する具体的な構成は後述する。
【0126】
実験例では評価で使用する記録シートSとして、普通紙として82[gsm]の富士ゼロックス社製のJ紙を使用した。また、厚紙の小サイズの記録シートSとして、ハガキを使用した。
温度10[℃]、相対湿度[15%]の下で、評価実験を行った。
二次転写電源は定電流源を使用し、定電流制御を行った。搬送速度vが528[mm/s]の場合には、110[μA]の電流を印加した。また、搬送速度vが264[mm/s]の場合には、55[μA]の電流を印加した。
2次転写ロールT2bには、転写圧力を4.3[N/cm
2]とする転写荷重を設定した。具体的には、転写ロールの硬度が25度の場合には、転写荷重を68[N]と設定した。また、転写ロールの硬度が40度の場合には転写荷重を47[N]と設定した。さらに、転写ロールの硬度が75度の場合には転写荷重を25[N]と設定した。
【0127】
(実験例の2次転写ロールの製造方法について)
図5に関し、実験例では、混合物29の具体的な構成は以下の通りである。
弾性材料21として、エチレンオキサイド基を含有することでイオン伝導性に優れる、エピクロルヒドリンゴムと、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、とを用いた。具体的には、エピクロルヒドリンゴムとして、ダイソー社製エピクロマーCG−102を用いた。また、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとして、日本ゼオン社製ニポールDN−219を用いた。
また、導電性付与剤22は、カーボンブラックを用いた。具体的には、Degussa社製のスペシャルブラック4Aを用いた。なお、カーボンブラックの配合量は作成する2次転写ロールの条件に応じて調節した。配合量については後述する。
さらに、加硫剤23として、硫黄を用いた。具体的には、鶴見化学工業社製の200メッシュを用いた。
また、加硫促進剤24として、大内新興化学工業社製ノクセラ−Mを用いた。
これらが混合されて混合物29が巻きつけられる。
また、前記混合物29が巻き付けられたシャフト6は、160℃に昇温して、2時間加硫発泡させた。基層付きのロールを得た。
【0128】
図6に関し、実験例では、樹脂液43の具体的な構成は以下の通りである。
溶剤36は酢酸ブチルを用いた。
硬化性の樹脂33は、四フッ化エチレン−ビニルモノマー共重合体を用いた。具体的には、ダイキン工業社製のゼッフルGK510を100[部]用いた。
導電性付与剤32は、カーボンブラックを用いた。具体的には、Degussa社製のスペシャルブラック4Aを用いた。なお、カーボンブラックの配合量は作成する2次転写ロールの条件に応じて調節した。配合量については後述する。
ジェットミル分散機38は、ジーナス社製のGeanus PYを使用した。
ジェットミル分散機による分散処理は、圧力が200[N/mm
2]の下で、衝突工程を5[回]行った。
メッシュ39は、20[μm]のメッシュを使用した。
【0129】
硬化剤34は、三井化学社製のタケネートD−140Nを使用した。前記タケネートD−140Nは、基層の樹脂液21におけるゼッフルGK510が100[部]に対して、20[部]用いた。
図6に関し、シャフト6上の基層8の外表面8aは、樹脂液43の層で覆った後、140[℃]で20[分]加熱して焼成して、2次転写ロールT2bを作成した。
【0130】
(実験例の転写部材の測定方法について)
図7Aに関し、金属板61,62の前後方向の長さλ3は、330[mm]に設定した。また、金属板61,62は厚み方向の長さλ4は、2[mm]に設定した。各金属板61,62は、ロール層7の外表面9aに0.2[mm]食い込ませるように押し当てた。
また、第1の金属板61の右面61bと、第2の金属板62の左面62bとの間の周長λ5が2[mm]になるように配置した。
図7Bに関し、直流電圧源64が印加する電圧V0は1000[V]にした。
また、時間T1として、10[s]を用いた。
これらの構成に基づいて、表面方向の時定数τsを測定した。
図8Aに関し、体積方向の時定数τvの測定では、直流電圧源64が1000[V]印加した状態から、電圧の印加を停止した。
これらの構成に基づいて、体積方向の時定数τvを測定した。
【0131】
実験例では、2次転写ロールT2bの体積抵抗値Rv[Ω]は、以下の測定方法を用いた。
すなわち、接地された板金に対して、6[kg・f]の荷重でシャフト6を押圧して、2次転写ロールT2bの外表面9aを押し当てた。また、金属柱を2次転写ロールT2bの外表面9aに、0.2[mm]食い込ませた状態で接触させた。そして、金属柱に1000[V]を印加し、シャフト6を接地して、シャフト6に流れた電流I[A]を測定した。そして、Rv[Ω]=1000[V]/I[A]に基づいて、Rvを計算して測定した。
【0132】
実験例では、2次転写ロールT2bの表面抵抗値Rs[Ω]は、以下の測定方法を用いた。
すなわち、2次転写ロールT2bのシャフト6を接地状態にし、2次転写ロールT2bの表面に対して、2本の金属柱を配置した。2本の金属柱は直径が12[mm]、長さが330[mm]である。2本の金属柱は、2次転写ロールT2bの周方向に10[mm]離した状態で、かつ、0.2[mm]食い込ませた状態で接触させた。そして、一方に1000[V]を印加し、他方を接地して、他方に流れた電流I[A]を測定した。そして、Rs[Ω]=1000[V]/I[A]に基づいて、Rsを計算して測定した。
【0133】
(実験例1−1)
実験例1−1では、2次転写ロールT2bの硬度Hを、アスカーC型硬度で25度に設定した。また、2次転写ロールのτs,τv,Rs,Rvを調整して、「(1/H)×0.5<τs」の関係と、「τs<τv」の関係を満たすようにした。
そして、実験例1−1では、前記2次転写ロールT2bを用いて評価実験を行った。実験例1−1の評価方法では、A3サイズの評価紙であるJ紙を、プロセススピード528[mm/s]で連続通紙50,000枚走行させた後に各種測定、評価を行った。よって、2次転写ロールT2bの回転速度vは528[mm/s]に対応する。このとき、中間転写ベルトBの非通紙領域について、2次転写ロールT2bと対向する側の面の表面抵抗率を測定した。そして、表面抵抗率が、画質に問題のない初期からの変化分が0.20[logΩ/□]以下にあるかどうかを確認した。また、τsの下限に関する損失電流による転写不良確認として、検出感度の高いハガキに対して、青色の全面ベタ画像を印刷し、その転写性を確認した。なお、実験例1−1では、カーボンブラックを、基層8では3[部]、表層9では3[部]、配合した。
【0134】
(実験例1−2)
実験例1−2では、2次転写ロールT2bの硬度Hを、アスカーC型硬度で75度に設定した。また、2次転写ロールT2bのτs,τv,Rs,Rvを調整して、「τs<τv」の関係を満たすようにした。しかし、実験例1−2では、「(1/H)×0.5<τs」の関係は満たしていない。なお、実験例1−2では、カーボンブラックを、基層8では6[部]、表層9では8[部]、配合した。その他の条件、評価方法は実験例1−1と同様に行った。
(実験例1−3)
実験例1−3では、2次転写ロールT2bの硬度Hを、アスカーC型硬度で75度に設定した。また、2次転写ロールT2bのτs,τv,Rs,Rvを調整して、「(1/H)×0.5<τs」の関係と、「τs<τv」の関係を満たすようにした。なお、実験例1−3では、カーボンブラックを、基層8では4[部]、表層9では5[部]、配合した。その他の条件、評価方法は実験例1−1と同様に行った。
【0135】
(比較例1)
比較例1では、従来から一般に用いられている構成の2次転写ロールを使用した。比較例1の2次転写ロールT2bでは、硬度Hが、アスカーC型硬度で25度である。また、比較例1の2次転写ロールでは、「(1/H)×0.5<τs」の関係を満たしている。しかし、「τs<τv」の関係は満たしていない。なお、比較例1では、カーボンブラックが、基層8では5[部]、表層9では3[部]、配合されている。その他の条件、評価方法は実験例1−1と同様に行った。
(比較例2)
比較例2では、2次転写ロールT2bの硬度Hを、アスカーC型硬度で75度に設定した。また、比較例2では、2次転写ロールT2bのRs,Rvは、実験例1−1と同じRs,Rvを用いた。ただし、比較例2の2次転写ロールT2bのτs,τvは、「τs<τv」の関係を満たしていない。また、比較例2のτs,τvは、「(1/H)×0.5<τs」の関係を満たしている。なお、比較例2の2次転写ロールT2bでは、カーボンブラックを、基層8では4[部]、表層9では4[部]、配合した。その他の条件、評価方法は実験例1−1と同様に行った。
【0136】
(実験例1−1〜1−3と比較例1,2の実験結果)
図18は実験例1−1と実験例1−2と実験例1−3と比較例1と比較例2の条件と実験結果の説明図である。
図18において、「τs<τv」の関係を満たす実験例1−1〜1−3では、中間転写ベルトBの表面抵抗率が低下していないことを確認した。一方で、「τs<τv」の関係を満たさない比較例1,2では、中間転写ベルトBの表面抵抗率が低下したことを確認した。よって、転写ロールが「τs<τv」の関係、すなわち、式(11)を満たせば、転写ロールの硬度Hとは関係なく、中間転写ベルトBの非通紙部の抵抗低下を抑制することが可能であり、非通紙部における濃度変化を抑制できることを確認した。すなわち、式(11)を満たすことで、放電の集中が抑制されていることを確認した。
【0137】
なお、実験例1−1と、比較例2とでは、抵抗値Rv,Rsは同じ値である。しかしながら、実験例1−1では中間転写ベルトBの抵抗低下を確認できなかった。これに対して、比較例2では中間転写ベルトBの抵抗低下が生じている。よって、2次転写ロールT2bの抵抗値Rv,Rsのみで、放電の集中を緩和するか否かを判断することは困難と考えられることも確認した。すなわち、従来のように抵抗率など抵抗値に関する値を利用する場合と異なり、時定数τs,τvの関係で規定する実施例1〜3では、放電の集中を緩和可能か否かについて精度良く評価可能である。
【0138】
また、τs<τvの場合に、「(1/H)×0.5<τs」の関係を満たす実験例1−1,1−3では、ハガキの転写不良が生じないことも確認した。一方で、τs<τvの場合に、「(1/H)×0.5<τs」の関係を満たさない実験例1−2や、τs>τvの比較例1では、ハガキの転写不良を確認した。よって、「(1/H)×0.5<τs<τv」の関係、すなわち、式(21)の関係を満たせば、厚紙小サイズ紙への良好な転写性を確保しつつ、中間転写ベルトBの非通紙部の抵抗低下を抑制して非通紙部における濃度変化を抑制できることを確認した。
【0139】
(実験例2−1)
実験例2−1では、実験例1−1の2次転写ロールT2bと同じ値のH,τs,τv,Rs,Rvを用いた。よって、式(11)の関係を満たしている。なお、実験例2−1では、硬度Hが25度であり、式(22′)より、ニップ幅が5.0[mm]となっている。
実験例2−1では、前記構成の2次転写ロールT2bを用いて評価実験を行った。実験例2−1の評価方法では、プロセススピードの影響、すなわち、転写電界の立ち上がり時間の影響を考慮して、厚紙の小サイズの転写性について評価する点以外は、実験例1−1と同様に評価実験を行った。なお、実験例2−1では、プロセススピードvが528[mm/s]であり、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs」の関係を満たしている。
【0140】
(実験例2−2)
実験例2−2では、実験例1−2の2次転写ロールT2bと同じ値のH,τs,τv,Rs,Rvを用いた。よって、式(11)の関係を満たしている。なお、実験例2−2では、硬度Hが75度であり、ニップ幅が1.7[mm]となっている。その他の条件、評価方法は実験例2−1と同様に行った。なお、実験例2−2では、プロセススピードvが528[mm/s]であり、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs」の関係を満たしていない。
(実験例2−3)
実験例2−3では、実験例1−3の2次転写ロールT2bと同じ値のH,τs,τv,Rs,Rvを用いた。よって、式(11)の関係を満たしている。なお、実験例2−3では、硬度Hが75度であり、ニップ幅が1.7[mm]となっている。その他の条件、評価方法は実験例2−1と同様に行った。なお、実験例2−3では、プロセススピードvが528[mm/s]であり、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs」の関係を満たしている。
【0141】
(実験例2−4)
実験例2−4では、2次転写ロールT2bのτs,τv,Rs,Rvを調整して、プロセススピードvが264[mm/s]の下で、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs<τv」の関係を満たすようにした。その他の条件、評価方法は実験例2−3と同様に行った。
(実験例2−5)
実験例2−5では、実験例2−3の2次転写ロールT2bと同じ値のH,τs,τv,Rs,Rvを用いた。よって、式(11)の関係を満たしている。ただし、実験例2−5では、転写荷重を弱めて、ニップ領域の幅Lを1.3[mm]にした。また、実験例2−5では、プロセススピードvが264[mm/s]である。すなわち、実験例2−5では、(L/v)×(Rv/Rs)とτsに関する実験例2−3のL,v,Rv,Rs,τsのうち、Lとvを変更して、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs」の関係を満たすようにした。その他の条件、評価方法は実験例2−3と同様に行った。
【0142】
(実験例2−1〜2−5の実験結果)
図19は実験例2−1と実験例2−2と実験例2−3と実験例2−4と実験例2−5の条件と実験結果の説明図である。
図19において、実験例2−1〜2−5では、式(11)の関係が満たされている。ここで、実験例2−1〜2−5では中間転写ベルトBの表面抵抗率が低下し難いことが確認された。よって、式(11)の関係が満たされれば、放電の集中が緩和されることが再度確認された。
また、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs<τv」の関係を満たす実験例2−1、2−3、2−4、2−5では、ハガキの転写不良が生じないことを確認した。一方で、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs」の関係を満たさない実験例2−2では、ハガキの転写不良を確認した。よって、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs<τv」の関係、すなわち、式(12)の関係を満たせば、厚紙小サイズ紙への良好な転写性を確保しつつ、中間転写ベルトBの非通紙部の抵抗低下を抑制して非通紙部における濃度変化を抑制できることを確認した。
【実施例4】
【0143】
次に本発明の実施例4の説明をするが、この実施例4の説明において、前記実施例1〜3の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例は下記の点で、前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成される。
【0144】
図20は本発明の実施例4の転写装置の要部説明図ある。
図20において、実施例4の転写装置の一例としての2次転写器T2は、実施例1と同様の2次転写ロールT2bを有する。すなわち、実施例4の2次転写ロールT2bも表面方向の時定数τsと、体積方向の時定数τvが、τs<τvに設定されている。また、実施例4では、2次転写ロールT2bの外表面9aは予め設定された表面粗さRzに形成されている。なお、前記表面粗さRz、すなわち、表面の十点平均粗さRzは、2.0[μm]以下が好適に使用可能である。なお、コンタクトロールT2cには電源E1が接続されている。実施例4の電源E1は、中間転写ベルトB上の可視像を記録シートSに転写する極性の電圧のみを印加する。すなわち、実施例4の電源E1は、コンタクトロールT2cを介して、現像剤の一例としてのトナーTnの帯電極性と同極性の電圧のみを、バックアップロールT2aに印加する。また、2次転写ロールT2bのシャフト6は、電気的に接地されている。
【0145】
2次転写領域Q4に対して、前記2次転写ロールT2bの回転方向の下流側には、第1の清掃装置の一例としてのブラシ装置101が配置されている。前記ブラシ装置101は、清掃容器102を有する。前記清掃容器102には、第1の清掃部材の一例であり、導電性を有する清掃部材の一例としての静電ブラシ103が回転可能に支持されている。前記静電ブラシ103は、回転軸の一例としてのシャフト103aを有する。前記シャフト103aは、導電部材の一例としての金属により構成されている。前記シャフト103aは電気的に接地されている。前記シャフト103aの外周面には、導電性を有する複数の毛が予め設定された密度で植毛されている。すなわち、前記シャフト103aには、刷毛部の一例として、導電性を有する複数の毛が放射状にのびるブラシ部103bが支持されている。前記ブラシ部103bは、転写ロールT2bに接触する位置の一例としての清掃位置Q101で2次転写ロールT2bの表面に接触する。前記シャフト103aには図示しない駆動源から駆動が伝達されている。よって、静電ブラシ103は、清掃位置Q101において、2次転写ロールT2bの回転方向と逆方向に予め定められた速度で回転する。
【0146】
ブラシ装置101において、静電ブラシ103の回転方向において、清掃位置Q101の下流側には、潤滑剤104が配置されている。前記潤滑剤104は、付勢部材106に支持されている。前記付勢部材106は、前記潤滑剤104を静電ブラシ103のブラシ部103bに接触する程度に予め設定された付勢力で付勢する。よって、前記潤滑剤104は、前記静電ブラシ103を介して2次転写ロールT2bの表面に供給される。なお、前記潤滑剤104は、例えば、ステアリン酸亜鉛:ZnSt等の固形物で構成可能である。前記潤滑剤104と付勢部材106とにより、実施例1の潤滑剤の供給部104+106が構成されている。前記潤滑剤104に対して、静電ブラシ103の回転方向の下流側には、調節部材の一例としてのフリッカー107が配置されている。前記フリッカー107は、ブラシ部103bに接触して配置される。前記静電ブラシ103の下方には、排出用の搬送部材108が配置されている。前記排出用の搬送部材108は、静電ブラシ103が2次転写ロールT2bから回収した現像剤を図示しない回収容器に向けて搬送する。
【0147】
図20において、清掃位置Q101に対して、2次転写ロールT2bの回転方向の下流側には、第2の清掃装置の一例としてのブレード装置111が配置されている。前記ブレード装置111は、清掃容器112を有する。前記清掃容器112には、第2の清掃部材の一例としての板状の清掃ブレード113が支持されている。前記清掃ブレード113は、第2の接触位置の一例としての第2の清掃位置Q102で2次転写ロールT2bの表面に接触する。前記清掃ブレード113は、前記2次転写ロールT2bの表面に対して、予め設定された圧力で接触している。前記清掃ブレード113の下方には、排出用の搬送部材114が配置されている。前記排出用の搬送部材114は、清掃ブレード113が2次転写ロールT2bから除去した現像剤を図示しない回収容器に向けて搬送する。
【0148】
ここで、実施例4では、2次転写ロールT2bの回転方向において、ニップ領域の下流端の一例としてのニップ出口Q103から、第1の清掃位置Q101までの距離をLa[mm]とした場合に、Laが下記の式(41)を満たすように設定されている。
La≦{(τv/τs)/1.25}×12π …式(41)
なお、実施例4では、バックアップロールT2aと2次転写ロールT2bとがニップ領域16を形成している場合に、バックアップロールT2aと2次転写ロールT2bとが互いの圧力を受け難い位置を、ニップ領域16の下流端、すなわち、ニップ出口Q103とする。具体的には、記録シートSの搬送方向に沿ってニップ領域16を移動する場合に、2次転写ロールT2bの外表面9aと、バックアップロールT2aの外表面との間に隙間121が生じる位置をニップ出口Q103とする。
【0149】
(実施例4の作用)
前記構成を備えた実施例4のプリンタUでは、記録シートSに画像を記録する際に、2次転写器T2には電源E1により2次転写電圧が印加される。よって、中間転写ベルトBと、2次転写ロールT2bとの間には、2次転写電圧に応じた転写電界が形成される。したがって、中間転写ベルトB上の可視像には転写電界が作用して、中間転写ベルトBから記録シートSに可視像が転写される。ここで、実施例4の2次転写ロールT2bでも、式(11)や式(12)が満たされている。したがって、実施例4でも、実施例1などと同様に、放電の集中が緩和されると共に、厚紙に対する転写性が確保されている。
【0150】
ところで、中間転写ベルトB上では、中間転写ベルトBの記録シートSが通過しない非通紙部や、記録シートSと記録シートSとの間に対応する部分、いわゆる、インターイメージ部に、可視像を構成する現像剤Tnが保持されている場合がある。このとき、中間転写ベルトBに前記転写電界が作用すると、現像剤は、記録シートSではなく2次転写ロールT2bに転写される。よって、2次転写ロールT2bの外表面に現像剤が付着して、2次転写ロールT2bの外表面が汚損される場合がある。したがって、例えば、次の記録シートSに可視像を転写する場合に、記録シートSの2次転写ロールT2b側の面、いわゆる、シートSの裏面が、現像剤が付着した2次転写ロールに接触して汚損される場合がある。また、2次転写ロールT2bに現像剤や紙粉などが付着すると2次転写ロールT2bの抵抗が上昇する。よって、予め設定された転写電界が形成されず、転写不良が生じ画質欠陥を招く場合もある。
【0151】
ここで、実施例4では、ブラシ装置101とブレード装置111とが配置されており、2次転写ロールT2bの表面が清掃される。
ブラシ装置101では、静電ブラシ103が回転して、転写ロールT2bを清掃する。すなわち、2次転写ロールT2bの外表面が第1の清掃位置Q101を通過する場合に、ブラシ部103bが転写ロールT2bから現像剤などの付着物を取ったり、転写ロールT2bと静電ブラシ103との間に生じる静電的な力で現像剤などを吸着して回収する。なお、静電ブラシ103は清掃位置Q101から回転移動すると、供給部104+106から潤滑剤104が供給される。そして、潤滑剤104が供給された静電ブラシ103は、フリッカー107と接触する。よって、ブラシ部103bに過剰に供給された潤滑剤や、ブラシ部103bに残っている現像剤などが落される。そして、ブラシ部103bが清掃位置Q101に戻ると、ブラシ部103bは転写ロールT2bに潤滑剤104を供給すると共に、転写ロールT2bの表面を清掃する。
【0152】
また、ブレード装置111では、清掃ブレード113が2次転写ロールT2bの表面に予め設定された接触圧で接触している。よって、回転する2次転写ロールT2bの表面から現像剤などの付着物が擦り取られる。ここで、2次転写ロールT2bの外表面には清掃位置Q101で潤滑剤104が供給される。したがって、潤滑剤104が第1の清掃位置Q101から第2の清掃位置Q102に供給され、清掃ブレード113と転写ロールT2bとの間に過剰な摩擦が生じることが低減されている。よって、清掃ブレード113の摩耗が低減される。
したがって、実施例4では、2次転写ロールT2bに付着した現像剤などの付着物が記録シートSの裏面を汚損することが低減される。また、現像剤が転写ロールT2bの抵抗値を変化させて、画質欠陥を生じさせることが低減される。
【0153】
図21は本発明の実施例4と従来の比較の説明図であり、
図21Aは実施例4の2次転写ロールについての作用説明図、
図21Bは従来の2次転写ロールについての説明図である。
ここで、
図21Bにおいて、τs>τvとなる従来の転写ロール01では、転写ロール01の外表面02に沿って電流が流れ難い。つまり、従来の転写ロール01では、転写電界が作用しても、ニップ領域03の内側だけで転写電界に応じた電位が生じ易く、ニップ領域03の外側では電位は変化し難かった。したがって、仮に、実施例4の静電ブラシ103と同様の静電ブラシ04を配置して電気的に接地しても、転写ロール01の外表面02と静電ブラシ04との間の電位差は小さい。よって、転写ロールT2bから静電ブラシ103に現像剤Tnが移動する電界は生じ難い。よって、従来の転写ロール01を使用する場合には電気的に接地するだけでは現像剤Tnの回収は困難である。したがって、従来の2次転写ロール01に対して静電ブラシ04を配置する構成では、静電ブラシに現像剤を吸着させる清掃用の電界、いわゆる、クリーニング電界を生じさせる電源を設ける必要がある。よって、従来は構成が複雑化し易く、高費用化し易かった。
【0154】
これに対して、実施例4の2次転写ロールT2bは、表面方向の時定数τsと体積方向の時定数τvが式(11)の関係を満たしている。すなわち、τs<τvの関係を満たしている。よって、実施例4の2次転写ロールT2bでは、転写ロールT2bの外表面9aに沿って電流が流れ易くなり、いわば、ニップ領域16とシャフト6との間で電流が流れる場合に、迂回した状態でも電流が流れ易くなる。つまり、
図21Aにおいて、転写電界が作用すると、ニップ領域16だけではなく、ニップ領域16の外側でも転写電界に応じて電位が生じる部分が広がって、いわば、電位の広がりが形成される。よって、静電ブラシ103を電気的に接地すると、電位の広がった部分と、静電ブラシ103との間には電位差が生じて電界E11が形成される。
【0155】
ここで、静電ブラシ103の電位は、転写ロールT2bの接地されたシャフト6の電位に対応する。よって、前記電界E11は、転写ロールT2bの外表面9aからシャフト6に向かう電界の極性に対応する。すなわち、前記電界E11は、転写電界の極性に対応する。よって、転写ロールT2bに付着した現像剤に対して電界E11が作用すると、転写ロールT2bの外表面から、静電ブラシ103に向かって現像剤が移動し易い。よって、前記電界E11は、クリーニング電界として作用する。したがって、式(11)を満たす2次転写ロールT2bを使用する実施例4では、清掃用の電源を設けずに接地するだけで、静電的に現像剤を吸着させ易くなる。よって、実施例4では、τs>τvとなる従来の構成に比べて、簡易な構成で転写ロールT2bから現像剤を除去し易くて清掃し易くなっている。
【0156】
特に、実施例4では、静電ブラシ103の配置距離Laは式(41)を満たしている。ここで、式(41)は、クリーニング電界E11が大きくなり易い配置距離Laの条件を実験に基づいて定めた式である。したがって、実施例4では、式(41)を満たさない場合に比べて、クリーニング電界E11が大きくなり易く、2次転写ロールT2bから現像剤が除去され易くなっている。すなわち、静電ブラシ103の清掃性が向上している。
【0157】
式(41)について説明する。2次転写ロールT2bが式(11)を満たす場合、2次転写ロールT2bでは、ニップ領域16の外側にも転写電界に応じて電位が生じ易い。しかしながら、ニップ領域16から遠ざかるに連れて、生じる電位の大きさも減り、転写ロールT2bの外表面9aの電位の絶対値は小さくなる。よって、清掃領域Q101がニップ領域16から遠い場合には、静電ブラシ103と転写ロールT2bとの間の電位差は小さくなり易い。よって、電界E11も小さくなり易い。したがって、ニップ領域16からの電位の広がり具合によっては、静電ブラシ103の清掃性が向上し難い場合がある。そこで、静電ブラシ103の配置する位置、すなわち、配置距離Laについて、特に、望ましい条件を実験に基づいて規定した。
【0158】
図22は転写ロールと静電ブラシとの電位差と現像剤の残量についての説明図である。
まず、静電ブラシ103と転写ロールT2bとの間の電位差について、清掃に特に望ましい電位差を考える。望ましい電位差は実験に基づいて定めた。具体的には、転写ロールの表面に4.5[g/m
2]の可視像、いわゆる、Cin100%相当のトナーパッチを付着させた。そして、前記付着したトナーパッチを、静電ブラシ103により除去した。このとき、転写ロールT2bの表面と静電ブラシ103との間の電位差と、転写ロールT2b表面に残留する現像剤の量との関係を調べた。
図22に結果を示す。
図22では、電位差が0[V]から増えるに連れて現像剤の残量が急激に減少することが確認された。ただし、電位差が25[V]以上では残量の減少量の変化が少なくなる。そして、電位差が50[V]以上の場合には残量が0に近づいた状態で減少量の変化も少なくなった。よって、電位差が50[V]以上の場合に、現像剤の残量が少なく、静電ブラシの清掃性が高いことが確認された。ここで、実施例4の静電ブラシ103は接地される。よって、清掃位置Q101の転写ロール上の電位が絶対値で50[V]よりも大きくなることが、望ましい条件に必要と考えられる。
【0159】
また、2次転写ロールT2bのニップ領域16に生じる電位の大きさの最低値は、一般的な実機では、100[V]である。よって、ニップ領域16の電位の大きさは100[V]以上と考えて良い。よって、多くの場合、ニップ領域16の電位は100[V]よりも大きくなり、ニップ領域16の外側の部分の電位も大きくなると考えられる。
そこで、大きさ100[V]の電圧を印加した場合に、電圧を印加した位置から電位の大きさが50[V]に減衰する位置までの距離L50を測定する。つまり、100[V]を印加した場合の距離L50を基準にして、前記基準の距離L50よりも短い配置距離Laとすれば、一般の使用状態では、静電ブラシ103に対して特に好適な清掃性が得られると考えられる。
【0160】
ただし、転写ロールT2bの時定数τs,τvにより、電位の広がりは異なる。すなわち、転写ロールT2bのτvが大きければ大きいほど、体積方向に電流は流れ難いといえる。また、τsが小さければ小さいほど、表面方向の電位の変化は少ない。よって、比τv/τsが大きければ大きいほど、表面方向の電気的な変化が速く、表面方向には電位が広がり易いと言える。したがって、望ましい配置位置は、転写ロールT2bの時定数の比τv/τsに応じて変化すると考えられる。
そこで、比τv/τsと、距離L50との関係を測定する実験を行った。
【0161】
図23は転写ロールの電位の変化を測定する測定方法の説明図である。
図23において、比τv/τsと、L50との関係を測定する実験では、τsとτvが調整された転写ロールを使用して行った。実験では、時定数τs,τvの測定に使用される金属板61,62と同様に構成された金属板61′,62′を使用して、電位の測定をした。具体的には、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsと体積方向の時定数τvを(τs[ms],τv[ms])で表示する場合に、(3.6,4.5),(67.6,80),(23.9,26.7)に設定された3つの転写ロールT2bに対して行った。ここで、金属板61′,62′は、厚みが2[mm]のものを使用した。各金属板61′,62′は互いにλ5′離間させて、転写ロールの外表面9aに配置した。このとき、各金属板61′,62′はロール層7の外表面9aに押し当ててロール層7に0.2[mm]食い込ませた。さらに、第2の金属板62′には、表面電位計66′を対向配置した。そして、第1の金属板61′に−100[V]の電圧を印加した。このとき、第2の金属板63′の表面電位が−50[V]になる、第1の金属板61′の右面61b′と第2の金属板62′の左面62b′との間の周長λ5′を、L50として測定した。
【0162】
図24は実施例4の測定結果の説明図であり、
図24Aは表面方向の時定数と体積方向の時定数の説明図、
図24Bは時定数の比と基準の距離の説明図である。
図24に測定結果を示す。τv/τs=1.25の場合に、L50=37.7[mm]と測定された。ここで、φ24の半周の長さは24π/2であり、24π/2≒37.7である。よって、前記L50はφ24の場合の半周長に相当する。したがって、ニップ領域からの転写ロールT2bの回転角度が180°の範囲全てで、50[V]以上の電位が生じること確認された。したがって、転写ロールT2bがφ24の場合、比τv/τsが1.25以上であれば転写ロールT2bの外表面のどこに静電ブラシを配置しても、望ましい清掃性を確保されると判断される。
【0163】
また、
図24Bにおいて、τv/τsが1.25よりも小さくなると、比τv/τsの値に応じて、L50も小さくなることが確認された。このとき、L50と、時定数の比τv/τsとの間には、線形の関係が生じることが確認された。つまり、L50は、下記の式(42)として得られた。
L50={(τv/τs)/1.25}×12π …式(42)
よって、式(41)を求めるには、La≦L50となれば良い。ここで、この関係は周長の関係式である。このとき、転写ロールの径が異なる場合はτv/τsも変わり得るが、L50は比τv/τsに応じて定まる。したがって、転写ロールの径に応じたτv/τsから、L50が得られる。よって、転写ロールの径がφ24と異なる場合にも適用可能である。したがって、配置距離Laについての条件として、式(41)が得られた。
よって、式(41)を満たす実施例4では、式(41)を満たさない場合に比べて、静電ブラシ103の清掃性が向上している。
【0164】
また、実施例4では、清掃ブレード113も、転写ロールT2bに対して配置されている。すなわち、実施例4では、清掃ブレード113と静電ブラシ103が併用されている。よって、静電ブラシ103で転写ロールT2b上を清掃しきれず、転写ロールT2b上に現像剤が残っても、下流の清掃ブレード113で清掃される。また、一般に、清掃ブレードに対して多量の現像剤が搬送されると、現像剤の一部は清掃ブレードをすり抜けて下流に移動してしまう。つまり、清掃不良が生じる。よって、清掃ブレードを使用する場合、予め、ブレードに移動する現像剤を減らす必要が生じる。これに対して、実施例4では、静電ブラシ103で清掃された後の転写ロールT2bが第2の清掃領域Q102に移動する。よって、第2の清掃領域Q2では現像剤が少なくなっている。したがって、清掃ブレード113の現像剤の除去性能が悪化し難い。よって、多量の現像剤が清掃ブレード113に搬送される場合に比べて、実施例4では、清掃ブレード113が確実に現像剤を除去し易くなっている。すなわち、実施例4では、清掃性が向上している。
【0165】
しかも、実施例4では、2次転写ロールT2bの表面粗さRzが2.0[μm]以下に設定されている。ここで、板状の清掃部材を使用する場合には、板状の先端部の角、いわゆる、ブレードのエッジと、転写ロール表面との接触面積を拡大させることが望ましい。しかしながら、2次転写ロールT2bの表面粗さRzが2[μm]より大きい場合、接触面積は拡大され難い。これに対して、実施例4では、表面粗さRzが2[μm]以下であり、転写ロールT2bの表面との接触面積が拡大され易い。したがって、清掃ブレード113と転写ロールT2bとの密着性が保持され易い。よって、現像剤がブレードを通過し難く、清掃ブレードの清掃性が向上している。
【0166】
なお、従来、2次転写ロールの清掃を行う場合に、中間転写ベルトBのインターイメージ部が2次転写領域Q4を通過する時期に合せて、バックアップロールに印加する電圧について、記録シートSに可視像を移動させる転写電圧とは逆の極性の電圧に切り替える構成がある。つまり、2次転写ロールT2bに現像剤を移動し難くしたり、2次転写ロールT2bから現像剤を中間転写ベルトBに移動させて、清掃する構成もある。しかしながら、この場合、転写用の電源に極性の切替が必要となる。また、近年の高速化、すなわち、単位時間当たりの記録枚数の増加と共に、極性の切替には高い応答性が求められる。よって、逆極性に切り替える構成では、高い応答性を有する電源が必要となり、プリンタU全体の構成が複雑化したり、高費用化し易い。
【0167】
これに対して、実施例4では、導電性を有する静電ブラシ103を接地させ、転写ロールT2bとの間にクリーニング電界E11を生じさせる構成である。そして、この電界E11は、転写用の電圧を利用して現像剤が除去される。さらに、下流側の清掃ブレード113も転写ロールT2bの現像剤を除去する構成である。よって、実施例4では、電界の極性を切り替えずに転写ロールT2bから現像剤を除去し易くなっている。よって、極性を切り替える転写用の電源を設ける場合に比べて、実施例4では、簡易な構成で、転写ロールT2bに対する清掃性が確保され易くなっている。
【0168】
(実験例3−1について)
次に、実施例4の効果を確かめる実験を行った。
なお、以下の説明において、実施例1〜3の効果を確かめる実験と同様の構成についての説明は省略する。
実験例3−1では、プリンタUを用いて実施例4の効果を確かめる実験を行った。
バックアップロールT2aは、シャフト1の径が14[mm]、ロール層2の肉厚が5[mm]、硬度H1がアスカーC型硬度で60度、体積抵抗値が1[kV]の印加電圧で6.5[logΩ]のものを使用した。
2次転写ロールT2bは、シャフト6の径が14[mm]、基層8が5[mm]、表層9が20[μm]の2層のロール層7を有する構成を用いた。また、実験例の2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsはτs=23.9[ms]とした。体積方向の時定数τvはτv=26.7[ms]とした。なお、時定数τs,τvは基層8と表層9を独立に導電性付与剤の配合を制御したりして調整した。さらに、実験例3−1の2次転写ロールT2bでは、表面粗さRzを1[μm]に設定した。
【0169】
静電ブラシ103は、シャフト103aの径が5[mm]で、シャフト103a上に長さ2.5[mm]の2d(デニール)のナイロン糸を、密度120[kF/inch
2]で植毛したものを使用した。なお、ナイロン糸の原糸抵抗は1[kV]の印加電圧で7.5[logΩ]であった。また、静電ブラシ103は、潤滑剤104の塗布用の供給部材として兼用した。潤滑剤はZnStを使用した。シャフト103aは電気的に接地した。ここで、実験例3−1の静電ブラシ103の配置距離Laは30[mm]とした。なお、τs=23.9,τv=26.7であるため、{(τv/τs)/1.25}×12π≒33.7となる。よって、La=30<33.7であり、配置距離Laは式(41)を満たしている。
2次転写荷重は6.4[kgf]とした。
評価実験は、環境温度22[℃]、相対湿度[55%]の下で行った。
【0170】
実験例3−1の評価方法では、評価紙として、A3サイズのJ紙を、2次転写ロールT2bの回転速度vを528[mm/s]にして連続通紙50,000枚走行させた。この際に、各記録シートS間に対応するインターイメージ部に対して、YMCK各色の20×20[mm
2]のCin100%(9.0[g/m
2])のトナーパッチと、RGB各色の20×20[mm
2]のCin200%(9.0[g/m
2])のトナーパッチを作成した。また、電源E1が印加する電圧は、転写電流値が−110[μA](マイナス極性)になるように制御しながら印加した(定電流制御)。そして、連続通紙された最後のJ紙について、2次転写ロールT2b側の面となる裏面の汚れを評価した。
【0171】
(実験例3−2)
実験例3−2では、静電ブラシ103の下流側に、清掃ブレード113を配置した。実験例3−2の清掃ブレード113は、アスカーC型硬度で78度のウレタンゴム性のもの使用した。食い込み圧は1.7[gf/mm]に設定した。押し当て角は10[°]に設定した。なお、押し当て角は、清掃ブレード103が撓まない状態で、清掃ブレード103本体と転写ロールT2b表面とがなす角度である。その他の条件、評価方法は実験例3−1と同様に行った。
(実験例3−3)
実験例3−3では、2次転写ロールT2bの表面粗さRzを3[μm]とした。その他の条件、評価方法は実験例3−2と同様に行った。
【0172】
(実験例3−4)
実験例3−4では、2次転写ロールT2bの表面粗さRzを2[μm]とした。その他の条件、評価方法は実験例3−2と同様に行った。
(実験例3−5)
実較例3−5では、静電ブラシ103の配置距離Laを35[mm]とした。なお、τs=23.9,τv=26.7であるため、{(τv/τs)/1.25}×12π≒33.7となる。よって、La=35>33.7であり、実験例3−5の配置距離Laは式(41)を満たさない。その他の条件、評価方法は実験例3−1と同様に行った。
【0173】
(比較例3−1)
比較例3−1では、静電ブラシ103のシャフト103aの接地を解除した。すなわち、シャフト103aは電源に非接続であり、且つ、接地もされない状態、いわゆる、フロートの状態とした。その他の条件、評価方法は実験例3−1と同様に行った。
【0174】
(実験例3−1〜3−5と比較例3−1の実験結果)
図25は実験例3−1ないし実験例3−5と比較例3−1の条件と実験結果の説明図である。
図25において、評価紙の裏面の汚れは、目視による観察、または、拡大鏡の一例として、倍率が25倍のルーペを使用した観察で評価した。目視で評価紙の裏面汚れが明確に確認できる場合は「×」とした。また、目視で評価紙の裏面汚れが確認できるが、その裏面汚れが軽微である場合は「△」とした。さらに、目視で評価紙の裏面汚れが確認出来ず、ルーペを使用した観察で評価紙の裏面に軽微にトナーの付着が確認される程度の場合には、「○」とした。また、目視で評価紙の裏面汚れが確認出来ず、ルーペを用いた観察でもトナーの付着が確認できない場合には「◎」とした。すなわち、「×」は非許容レベルであり、「△」、「○」、「◎」の順に裏面汚れは少なく良好となる。
【0175】
図25において、τs<τvを満たす2次転写ロールT2bを使用し且つ静電ブラシ103が電気的に接地された実験例3−1〜3−5では、「△」、「○」、「◎」の評価が得られた。これに対して、τs<τvを満たす2次転写ロールT2bを使用するが、静電ブラシ103がフロートである比較例3−1では、「×」の評価しか得られなかった。したがって、2次転写ロールT2bが式(11)を満たす場合において、静電ブラシ103を電気的に接地することで、転写ロールT2bが清掃されることが確認された。
【0176】
特に、静電ブラシ103が接地され且つ配置距離Laが式(41)の関係を満たす実験例3−1〜3−4では、裏面汚れの評価が「○」または「◎」であった。これに対して、静電ブラシ103が接地され且つ配置距離Laが式(41)の関係を満たさない実験例3−5では、裏面汚れの評価が「△」であった。したがって、2次転写ロールT2bが式(11)を満たし、静電ブラシ103が接地される場合でも、配置距離Laが式(41)の関係を満たす方が、転写ロールT2bの清掃性が向上することが確認された。
【0177】
実験結果をさらに検討すると、比較例3−1は静電ブラシ103がフロート状態である。よって、静電ブラシ103が接地される場合に比べて、転写ロールT2bの表面電位に対して電位差が広がり難い。よって、比較例3−1では、電界E11が生じ難かったものと判断される。また、実験例3−5では、清掃位置Q101がニップ領域16から遠く、清掃位置Q101における電位が低くなる。よって、実験例3−5では、静電ブラシ103が接地されていても、転写ロールT2bとの間の電位差が広がり難かったものと判断される。すなわち、実験例3―5では、比較例3−1に比べると評価紙の評価は改善されているが、クリーニング電界E11は小さかったものと判断される。これらに対して、実験例3−1〜実験例3−4では、2次転写ロールT2bと静電ブラシ103との間に十分な電位差が生じて、大きいクリーニング電界E11が形成されたものと判断される。
【0178】
ここで、実験例3−1に比べると、清掃ブレード113を併用した実験例3−2,3−4の方が裏面汚れが改善されている。よって、清掃ブレード113と静電ブラシ103とを併用する構成の方が、清掃性がさらに向上し易いことが確認された。ただし、実験例3−3では、清掃ブレードを併用しているが、実験例3−2,3−4ほどは評価が改善されていない。これは、実験例3−3では、2次転写ロールT2bの表面粗さRzが2.0[μm]より大きいためと判断される。すなわち、転写ロールの表面が粗いため、清掃ブレード113と転写ロールT2bの密着性が失われ、清掃ブレード113の清掃性が低減されたと判断される。よって、転写ロールT2bの表面粗さRzは、2.0[μm]以下にすることが望ましいことも確認された。
【0179】
なお、実験例3−1〜3−5では、電源E1が印加する電圧は、インターイメージ部も含め、転写電流値が−110[μA](マイナス極性)になるように制御しながら印加した(定電流制御)。すなわち、インターイメージ部の対向時と画像部の対向時において、転写ロールT2bに印加する電圧の極性の切替えを行なっていない。それにも関わらず、裏面汚れの評価は「△」、「○」、「◎」になった。特に、実験例3−1〜3−4では、裏面汚れの評価は「○」、「◎」になった。したがって、本実施例では印加する電圧の極性を切替える必要がないことも確認された。
【実施例5】
【0180】
次に本発明の実施例5の説明をするが、この実施例5の説明において、前記実施例1〜4の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例は下記の点で、前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成される。
【0181】
図26は本発明の実施例5の転写装置の要部説明図であり、
図26Aは
図4に対応する説明図、
図26Bはデタックソーの説明図である。
図26において、実施例5の転写装置の一例としての2次転写器T2は、実施例1と同様の2次転写ロールT2bを有する。すなわち、実施例5の2次転写ロールT2bも表面方向の時定数τsと、体積方向の時定数τvが、τs<τvに設定されている。なお、コンタクトロールT2cには電源E1′が接続されている。実施例5の電源E1′は、中間転写ベルトB上の可視像を記録シートSに転写する極性の電圧を印加する。すなわち、実施例5の電源E1′は、コンタクトロールT2cを介して、現像剤の一例としてのトナーTnの帯電極性と同極性の電圧を、バックアップロールT2aに印加する。また、2次転写ロールT2bのシャフト6は、電気的に接地されている。
【0182】
図26Aにおいて、前記2次転写ロールT2bの右側には、除電部材の一例としてのデタックソー201が配置されている。すなわち、前記デタックソー201は、ニップ領域16に対して、記録シートSの搬送方向の下流側に配置されている。
図26Bにおいて、実施例5のデタックソー201は、前後方向に延びる板状の本体部201aを有する。前記本体部201aの上方には、鋸歯状に形成された尖端部201bが形成されている。前記尖端部201bは先端に向かうに連れてニップ領域16に近づく方向に傾斜して配置されている。前記デタックソー201は、導電性の金属製の材料により構成されている。実施例5のデタックソー201には、電源E2が接続されている。前記電源E2は、前記電源E1′がバックアップロールT2aに付与する極性と同極性の電圧をデタックソー201に印加する。
【0183】
図27は本発明の実施例5のデタックソーの配置位置の説明図である。
図27において、実施例5のデタックソー201は、ニップ領域16の中心の位置Q201から、転写ロールT2bの回転方向に沿って予め設定された周長Lb離れた下流位置Q202に基づいて配置される。すなわち、転写ロールT2bの回転中心Q203から延び、前記下流位置Q202を通過する仮想的な線の一例としての半直線K1を設定する。このとき、前記半直線K1に対して、除電部の一例としての尖端部201bの先端201b1が、転写ロールT2bの回転方向の上流側に配置される。
ここで、前記周長Lbは下記の式(51)に基づいて設定される。
Lb={(τv/τs)/1.94}×6π …式(51)
なお、実施例5の中心の位置Q201は、対向部材の一例であり、挟持部材の一例としてのバックアップロールT2aの回転中心Q204と、2次転写ロールT2bの回転中心Q203とを結ぶ仮想的な直線K2に基づいて設定される。すなわち、前記仮想線K2とニップ領域16の交差する位置を、ニップ領域Q16の中心位置Q201とする。
【0184】
(実施例5の作用)
前記構成を備えた実施例5のプリンタUでは、記録シートSに画像を記録する際に、2次転写器T2には電源E1′により2次転写電圧が印加される。よって、中間転写ベルトBと、2次転写ロールT2bとの間には、2次転写電圧に応じた転写電界が形成される。したがって、中間転写ベルトB上の可視像には転写電界が作用して、中間転写ベルトBから記録シートSに可視像が転写される。ここで、実施例5の2次転写ロールT2bでも、式(11)や式(12)が満たされている。したがって、実施例5でも、実施例1などと同様に、放電の集中が緩和されると共に、厚紙に対する転写性が確保されている。
【0185】
ところで、記録シートSは2次転写領域Q4を通過する際に帯電する。記録シートSが帯電すると、帯電した記録シートSは静電的な力を受ける。よって、記録シートSがニップ領域16を通過した後に中間転写ベルトBに向かって曲げられる場合があり、記録シートSが中間転写ベルトBに静電的に張り付いて、紙詰まり、いわゆる、ジャムが生じる場合がある。特に、記録シートSが薄紙の場合、記録シートの剛性、いわゆる、コシが弱くて、ジャムが生じ易い。よって、記録シートSが帯電したままではジャムが生じ易い。
【0186】
図28は本発明の実施例5と従来の比較の説明図であり、
図28Aは実施例5の2次転写ロールT2bについての作用説明図、
図28Bは従来の2次転写ロールについての説明図、
図28Cは記録シートが剥離される位置の説明図である。
ここで、
図28Aにおいて、実施例5では、2次転写領域Q4のシート搬送方向の下流側には、デタックソー201が配置されている。そして、前記デタックソー201には、電源E2から電圧が印加されている。よって、帯電した記録シートSとデタックソー201との間には、大きな電位差が生じ易くなっている。したがって、帯電した記録シートSが通過すると、デタックソー201と記録シートSの裏面との間で放電が生じて電荷が除去される。すなわち、デタックソー201が記録シートSを除電する。よって、実施例5では、中間転写ベルトBと記録シートSとの間で静電的な力が生じ難く、ジャムなどの通紙不良が低減される。
【0187】
ここで、
図28Bにおいて、τs>τvとなる従来の転写ロール01では、転写電界が作用しても、ニップ領域03の内側だけで電位が生じ易い。よって、ニップ領域03の外側では電位は変化し難い。ここで、除電部材01にはバックアップロールT2aに印加される電圧と同極性の電圧が印加されている。したがって、従来の転写ロール01に対しニップ領域03の外側に対向する位置に除電部材011を配置すると、転写ロール01の外表面と除電部材011との間の電位差V01が大きくなり易い。
一般に、除電部材では、記録シートSの裏面と除電部材との間の電位差V02が大きくなるほど、除電性が高まる。しかしながら、除電部材への電圧を大きくすると、転写ロールとの間の電位差V01も大きくなり易い。よって、転写ロールと除電部材との間で放電が生じ易くなる。そして、転写ロールとの間で放電が生じると、除電部材の帯電量が減って、記録シートSが除電され難くなってしまう。また、転写ロールとの間で放電が生じると、転写ロールが損傷して転写ロールの寿命が低下し易くなる。
【0188】
したがって、転写ロール01の外表面と除電部材011との間の電位差V01が大きくなり易い従来の構成では、転写ロール01の外表面と除電部材011との間の距離を広めて電圧を大きくしたり、転写ロール01の外表面02と除電部材011との間の距離を広めて記録シートSの裏面と除電部材との距離を近づけたりした。そして、記録シートSの除電を行っていた。しかしながら、記録シートSの除電は、記録シートSの先端S1が転写ロールT2bから離れる瞬間の位置Q205から除電を開始するのが望ましい。つまり、
図28Cにおいて、除電部材は前記位置Q205に近い位置に配置するのが望ましい。
ここで、除電部材と転写ロールとの間に絶縁部材を設置する構成も考えられるが、絶縁部材を配置する場合には配置するための空間を必要とし易く近づけ難い。
【0189】
これに対して、実施例5の2次転写ロールT2bは、表面方向の時定数τsと体積方向の時定数τvが式(11)の関係を満たしている。よって、実施例5の2次転写ロールT2bでは、転写電界が作用すると、ニップ領域16の外側にも電位が広がり易い。ここで、デタックソー201にはバックアップロールT2aに印加される電圧と同極性の電圧が印加されている。よって、デタックソー201の電位の極性は、転写ロールT2bのニップ領域の電位に対応しており、ニップ領域16の外側に広がる電位の極性に対応する。したがって、デタックソー201と転写ロールT2bとの間の電位差は、電位の広がりが生じない場合に比べて小さくなり易い。すなわち、実施例5では、放電が生じ難くなる。したがって、実施例5では、デタックソー201に印加する電圧を大きくしたり、デタックソー201をニップ領域16の位置Q205に近づけて配置し易くなっている。よって、実施例5は、τs>τvの転写ロール01を使用する従来の構成に比べて、記録シートSの除電性を高め易く、ジャムが低減され易くなっている。
【0190】
特に、実施例5では、
図27に示すようにデタックソー201の先端201b1は、式(51)で規定される周長Lbの下流位置Q202を通過する仮想線K1対して、転写ロールT2bの回転方向の上流側に配置されている。ここで、式(51)は、特に、放電が生じ難い条件を実験に基づいて定めた式である。したがって、実施例5では、式(51)を満たさない場合に比べて、放電が生じ難くなっている。
【0191】
式(51)について説明する。2次転写ロールT2bが式(11)を満たす場合、2次転写ロールT2bでは、ニップ領域16の外側にも転写電界に応じて電位が生じ易い。しかしながら、転写ロールT2bの外表面の位置が異なると、転写ロールT2bの表面の電位は異なる。よって、ニップ領域16からの電位の広がり具合によっては、放電が生じ易くなる恐れがある。そこで、デタックソー201の配置する位置について、特に、望ましい条件を実験に基づいて規定した。
【0192】
まず、除電部材と転写ロールとについて、放電と電位差の条件を考える。除電部材と転写ロールT2bとの最接近した位置の間隔dsは、ds=0.5[mm]の場合が一般には設計上の限界と考えて良い。よって、除電部材と転写ロールとの間隔dsは0.5[mm]よりも大きくなり易く、ds=0.5[mm]の場合が最も放電が生じ易い間隔といえる。よって、ds=0.5[mm]の場合に放電が生じ難い電位差であれば、ds≧0.5[mm]の場合にも、その電位差では放電は生じ難い。ここで、間隔dsが0.5[mm]の場合には、電位差が3[kV]以下であれば放電が生じないことが実験に基づいて確認された。なお、この条件はパッシェンの法則も満たす。よって、転写ロールと除電部材との間隔dsを0.5[mm]にして、転写ロールと除電部材との電位差が3[kV]以下となる除電部材の位置が望ましい条件と考えられる。
【0193】
また、2次転写ロールT2bのニップ領域16に印加される電圧の大きさの最大値は、一般的には、10[kV]である。そして、印加される電圧が最大の場合に記録シートSが最も帯電し易く、除電部材に印加すべき電圧の大きさも最大となる。したがって、ニップ領域16に印加される電圧の大きさが10[kV]の場合が、転写ロールと除電部材との間で放電が生じ易い電圧と考えて良い。
そこで、除電部材に印加する電圧の大きさを、一般的な電源の構成に基づいて、10[kv]とすると、転写ロールT2bに対して大きさ10[kV]の電圧を印加した場合に、電圧を印加した位置から電位の大きさが7[kV]に減衰する位置までの範囲は、転写ロールT2bと除電部材との電位差が3[kV]以下になる。よって、大きさ10[kV]の電圧を印加した場合に、電圧を印加した位置から電位の大きさが7[kV]に減衰する位置までの周長Lbを測定する。そして、周長Lbよりも、除電部材が転写ロールT2bの回転方向の上流側に配置されていれば、一般の使用状態では、除電部材201と転写ロールT2bとの間の放電が抑制されると考えられる。
【0194】
ただし、転写ロールT2bの時定数τs,τvにより、電位の広がりは異なる。したがって、望ましい周長Lbは、実施例4のL50と同様に、時定数の比τv/τsに応じて変化すると考えられる。
そこで、比τv/τsと、周長Lbとの関係を測定する実験を行った。
【0195】
図29は本発明の実施例5の転写ロールの電位の変化を測定する測定方法の説明図である。
図29において、比τv/τsと、周長Lbとの関係を測定する実験では、τsとτvが調整された転写ロールを使用して行った。実施例5の測定実験では、実施例4の転写ロールの電位の変化の測定方法と同様にして行った。ただし、実施例5の測定実験では、転写ロールT2bの時定数(τs[ms],τv[ms])は、(3.6,7),(61.2,76.3),(57.6,80),(49.8,83.4),(23.9,26.7)に設定された5つの転写ロールT2bに対して測定を行った。また、第1の金属板61′に−10[kV]の電圧を印加して、第2の金属板62′の表面電位が−7k[V]となる場合の周長λ5′を測定して、Lb=λ5′とした。これらの点以外は、実施例4の測定と同様であるため、実施例5の測定実験の詳細な説明は省略する。
【0196】
図30は実施例5の測定結果の説明図であり、
図30Aは表面方向の時定数と体積方向の時定数の説明図、
図30Bは時定数の比と周長の説明図である。
図30に測定結果を示す。
図30Aにおいて、時定数が(3.6,7)の場合、すなわち、τv/τs=1.94の場合に、Lb=18.85[mm]と測定された。ここで、φ24の4分の1周長は24π/4であり、24π/4≒18.85である。よって、前記Lbはφ24の場合の4分の1周長に相当する。すなわち、ニップ領域Q203からの転写ロールT2bの回転角度が90°の範囲で、大きさ7[kV]以上の電位が生じること確認された。したがって、転写ロールT2bがφ24の場合、比τv/τsが1.94以上であれば、ニップ領域Q203からの転写ロールT2bの回転角度が90°の範囲に除電部材を配置すれば、転写ロールT2bと除電部材との放電が特に減少すると判断される。
【0197】
また、
図30Bにおいて、τv/τsが1.94よりも小さくなると、比τv/τsの値に応じて、Lbも小さくなることが確認された。このとき、Lbと、時定数の比τv/τsとの間には、線形の関係が生じることが確認された。つまり、直線で近似可能である。よって、除電部材の配置する位置について、特に、望ましい条件を規定するための周長Lbは、下記の式(51)として得られた。
Lb={(τv/τs)/1.94}×6π …式(51)
よって、Lbで規定される下流位置Q202を通過する仮想線K1よりも、デタックソー201の先端201b1が、2次転写ロールT2bの回転方向の上流側に配置される実施例5では、先端201b1が仮想線K1の下流側に配置される場合に比べて、放電が
発生し難くなっている。よって、デタックソー201の電圧の大きさを上げたり、デタックソー201をニップ領域16に近づけて位置Q205に近づけ易くなっている。よって、実施例5では、除電性を向上させ易くなっている。
【0198】
なお、従来から、2次転写領域Q4において、記録シートSを無端状の帯部材、いわゆる、搬送ベルトに記録シートSを吸着させて搬送して転写させる構成がある。搬送ベルトを使用する構成では、中間転写ベルトBにシートSが吸着して生じるジャムは発生し難くなる。しかしながら、搬送ベルトを用いる構成は、転写ロールの構成に比べて部品点数が多い。よって、構成が複雑であり、高費用化し易い。
これに対して、実施例5では、2次転写領域Q4では2次転写ロールT2bを使用する構成である。そして、2次転写領域Q4を通過する記録シートSに対して、デタックソー201で除電する構成である。よって、搬送ベルトを使用して記録シートSに画像を転写する構成に比べて、簡易な構成で、ジャムを低減しつつ記録シートSへの転写がされる。
【0199】
(実験例4−1)
次に、実施例5の効果を確かめる実験を行った。
なお、以下の説明において、実施例1〜3の効果を確かめる実験と同様の構成についての説明は省略する。
実験例4−1では、プリンタUを用いて実施例5の効果を確かめる実験を行った。
バックアップロールT2aは、シャフト1の径が14[mm]、ロール層2の肉厚が5[mm]、体積抵抗値が1[kV]の印加電圧で8.0[logΩ]のものを使用した。
2次転写ロールT2bは、シャフト6の径が14[mm]、基層8が5[mm]、表層9が20[μm]の2層のロール層7を有する構成を用いた。さらに、実験例4−1では、2次転写ロールT2bの体積抵抗値Rvは1[kV]の印加電圧で7.5[logΩ]とした。ここで、実験例4−1の2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsは、τs=3.6[ms]とした。また、体積方向の時定数τvは、τv=7[ms]とした。なお、時定数τs,τvは基層8と表層9を独立に導電性付与剤の配合を制御したりして調整した。
【0200】
デタックソー201は、中心の位置Q201からの周長が16.9[mm]となる位置と、回転中心Q203とを通過する仮想的な仮想線K1′上に先端201b1を配置した。また、転写ロールT2bとデタックソー201との間隔dsは0.5[mm]とした。ここで、式(51)によると、実験例4−1の2次転写ロールT2bでは、Lb={(7/3.6)/1.94}×6π=18.89である。よって、Lb=18.89>16.9であり、実験例4−1では、デタックソー201の位置は、2次転写ロールT2bの仮想線K1よりも、2次転写ロールT2bの回転方向の上流側となる。
2次転写荷重は6.4[kgf]とした。
環境温度10[℃]、相対湿度[15%]の下で、評価実験を行った。
【0201】
実験例4−1の評価方法では、紙詰まりの有無と放電の発生の有無を確認した。具体的には、2次転写ロールT2bを回転速度528[mm/s]の下で画像形成を行った。すなわち、デタックソー201に印加する電圧Vdの条件を変更しながら、電圧Vdの条件毎に、評価紙を両面印刷した。評価紙の両面印刷は、52[gsm]の普通紙と、64[gsm]のコート紙を使用して、それぞれ、50枚ずつ両面印刷することで行った。そして、この際に、2次転写領域Q4で生じる通紙不良、いわゆる、ジャムの発生の有無を確認した。また、デタックソー201から転写ロールT2bに放電が生じたか否かを確認した。放電の確認は、デタックソー201と電源との間に電流計を設置して急激な電流の変化が測定されたか否かに基づいて行った。また、観察装置の一例としての高感度カメラを用いて火花放電の発生の有無の観察も合せて行った。また、電圧Vdは−3[kV]〜−10[kV]の電圧を1[kV]ずつ変更して用いた。
【0202】
(実験例4−2)
実験例4−2では、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsは、τs=57.6[ms]とした。また、体積方向の時定数τvはτv=80[ms]とした。ここで、式(51)によると、実験例4−2の2次転写ロールT2bでは、Lb={(80/57.6)/1.94}×6π=13.49である。よって、Lb=13.49<16.9であり、デタックソー201は、実験例4−2の2次転写ロールT2bの仮想線K1に対しては、2次転写ロールT2bの回転方向の下流側となる。また、電圧Vdは、−3[kV]〜−7[kV]の電圧を1[kV]ずつ変更して用いた。その他の条件、評価方法は実験例4−1と同様に行った。
【0203】
(実験例4−3)
実験例4−3では、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsは、τs=23.9[ms]とした。また、体積方向の時定数τvは、τv=26.7[ms]とした。ここで、式(51)によると、実験例4−2の2次転写ロールT2bでは、Lb={(26.7/23.9)/1.94}×6π=10.85である。よって、Lb=10.85<16.9であり、デタックソー201は、実験例4−3の2次転写ロールT2bの仮想線K1に対しては、2次転写ロールT2bの回転方向の下流側となる。また、電圧Vdは、−3[kV]〜−6[kV]の電圧を1[kV]ずつ変更しながら用いた。その他の条件、評価方法は実験例4−1と同様に行った。
【0204】
(比較例4−1)
比較例4−1では、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsは、τs=67.6[ms]とした。また、体積方向の時定数τvは、τv=62[ms]とした。よって、比較例4−1の2次転写ロールは式(11)を満たさない。なお、式(51)を用いてLbに相当する値を計算すると、Lb={(62/67.6)/1.94}×6π=8.91である。また、電圧Vdは、−3[kV]、−4[kV]の電圧を用いた。その他の条件、評価方法は実験例4−1と同様に行った。
【0205】
(比較例4−2)
比較例4−2では、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsは、τs=67.6[ms]とした。また、体積方向の時定数τvは、τv=26.7[ms]とした。なお、式(51)を用いてLbに相当する値を計算すると、Lb={(26.7/67.6)/1.94}×6π=3.84である。また、電圧Vdは、−3[kV]、−4[kV]、−5[kV]の電圧を用いた。その他の条件、評価方法は実験例4−1と同様に行った。
【0206】
(実験例4−1〜4−3と比較例4−1,4−2の実験結果)
図31は実験例4−1と実験例4−2と実験例4−3と比較例4−1と比較例4−2の条件と実験結果の説明図であり、
図31Aは条件の説明図、
図31Bは実験結果の説明図である。
図31において、普通紙とコート紙の両方の通紙が確認され且つ放電が生じなかった場合を「○」とした。また、普通紙とコート紙の一方では通紙が確認され且つ放電が生じなかったが、他方では非通紙、すなわち、ジャムが確認された場合を「○
−」とした。また、普通紙とコート紙の両方でジャムが確認された場合を「×」とした。また、デタックソー201と転写ロールT2bとの間で放電が確認された場合を「▲」とした。
【0207】
図31Bにおいて、τs<τvを満たす2次転写ロールT2bを使用した実験例4−1〜実験例4−3では、「○
−」、または、「○」の評価が得られた。よって、デタックソー201で評価紙の除電が行われる場合があることが確認された。また、放電が生じない場合もあることも確認された。一方で、τs>τvとなる転写ロールを使用した比較例4−1,4−2では、「×」、または、「▲」の評価しか得られなかった。すなわち、ジャムが生じたり、放電が生じて転写ロールT2bを損傷させる恐れがあったりすることが確認された。したがって、2次転写ロールT2bが式(11)を満たす場合、デタックソー201との間で放電が生じ難いことが確認された。すなわち、τs<τvである転写ロールT2bを用いる方が、デタックソー201をニップ領域16に近づけて配置し易く、除電性を向上させ易いことが確認された。
【0208】
実験結果をさらに検討すると、実験例4−1〜4−3、比較例4−1,4−2全ての場合において、−3[kV]では、評価紙でジャムが生じた。これは−3[kV]では、電圧の大きさが小さすぎて、評価紙の除電が行われ難いものと考えられる。
また、τs>τvの転写ロールを使用した比較例4−1,4−2とでは、コート紙の除電がされる電位差となる前に、転写ロールとの間に放電が生じた。
また、τs<τvの転写ロールを使用する実験例4−3では、デタックソー201への印加電圧の大きさが小さい場合に、コート紙では通紙不良を起こした。しかしながら、印加電圧の大きさを大きくすると、普通紙の場合には通紙性が確保された。ただし、印加電圧をさらに大きくすると、放電が確認された。
また、実験例4−2では、印加電圧の大きさが小さい場合には、通紙不良が生じる。しかしながら、電圧Vdの大きさを増加させるのに応じて通紙性が確保され、電圧Vdが−6[V]の場合に、普通紙とコート紙の両方で良好な通紙性が確保された。ただし、印加電圧をさらに大きくすると、放電が確認された。
【0209】
これに対して、式(51)に基づく仮想線K1よりも、デタックソー201の位置が回転方向の上流側となる実験例4−1では、印加電圧の大きさを上げても、ジャムも放電も確認されなかった。よって、実験例4−1では、放電を発生させずに電圧の大きさを増加させ易く、薄紙の通紙性を確保し易い電圧の範囲が大きい事が分かった。また、実験例4−1では、転写ロールを損傷させる恐れも低減されていることが確認された。
なお、現像剤の飛び散りを抑える等の目的で、除電部材に交流電圧をかける場合や、直流電圧に交流電圧を重畳する場合があるが、このような場合でも本発明は有効である。なお、交流(もしくは交流を重畳)を印加した場合でも、その平均電圧値(直流成分)が放電に起因する。
【0210】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H09)を下記に例示する。
(H01)前記各実施例において、画像形成装置の一例としてプリンタUを例示したが、これに限定されず、複写機、FAX、あるいはこれら複数の機能を備えた複合機等に適用可能である。また、多色現像の画像形成装置に限定されず、単色、いわゆるモノクロの画像形成装置により構成することも可能である。
【0211】
(H02)前記実施例2において、電界を形成して導電性付与剤14を外表面9a側に偏らせて表層9′を形成する構成を例示したがこれに限定されない。例えば、樹脂13と導電性付与剤14の比重の違いを利用して外表面9a側に導電性付与剤14を偏らせることが可能である。また、例えば、磁性を有する導電性付与剤14の場合には、磁力で外表面9a側に引き寄せて導電性付与剤14を外表面9a側に偏らせる構成も可能である。
【0212】
(H03)前記各実施例において、2次転写ロールT2bのロール層7は、基層8と、表層9とによる2層構造を例示したが、これに限定されない。例えば、基層8と、表層9との間に、第3の層が挟まれるなどの3層以上の多層構造も可能である。なお、この場合には、外側の層ほど、導電性付与剤12,14の配合量が多くなることが望ましい。
(H04)前記各実施例において、2次転写ロールT2bのロール層7は、基層8と、表層9とによる2層構造を例示したが、これに限定されず、単層の構造も可能である。なお、この場合には、単層の外表面側に導電性付与剤14を偏らせて、τs<τvとすることが可能である。
【0213】
(H05)前記実施例4において、2次転写ロールT2bには潤滑剤104を供給することが望ましいが、潤滑剤104を供給する構成を省略することも可能である。
(H06)前記実施例4において、潤滑剤104は静電ブラシ103を介して転写ロールT2bに供給することが望ましいが、静電ブラシ103に加えて、転写ロールT2bに潤滑剤を塗布する塗布用の供給部材を追加して、塗布用の供給部材から潤滑材を供給する構成も可能である。
【0214】
(H07)前記実施例5において、除電部材として、デタックソー201の構成を例示したがこれに限定されない。例えば、線材を使用する除電部材、いわゆる、コロトロンの構成も可能である。
(H08)前記実施例5において、デタックソーには、直流電圧を印加する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、デタックソーには、交流電圧のみを印加したり、直流電圧に交流電圧を重畳して印加する構成も可能である。
(H09)前記実施例4,5において、静電ブラシ103とデタックソー201の両方を2次転写ロールに対して配置する構成が可能である。