特許第6172034号(P6172034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6172034
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】位置測定治具
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/14 20060101AFI20170724BHJP
   G01B 3/28 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   G01B5/14
   G01B3/28
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-82161(P2014-82161)
(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公開番号】特開2015-203601(P2015-203601A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 航
(72)【発明者】
【氏名】草薙 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】森 亮平
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−104147(JP,A)
【文献】 実開平2−41103(JP,U)
【文献】 特開2014−35237(JP,A)
【文献】 米国特許第6073360(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/00− 3/08
G01B 3/11− 3/56
G01B 5/00− 5/30
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ボディの内部から、そのボディ開口部を介して外部に配設可能な機能部品の、上記自動車ボディに対する組付位置を測定するための位置測定治具であって、
上記機能部品に取り付けられる治具本体と、
該治具本体に設けられ、該治具本体が上記機能部品に取り付けられた状態を維持するための保持部と、
上記治具本体に設けられ、上記機能部品における部品基準面に当接して、該機能部品に対する上記治具本体の基準位置を決めるための基準部と、
上記治具本体にスライド可能に設けられ、上記基準部からの突出量を繰り返し変更可能な測定子と、を備え、
上記基準部が上記部品基準面に当接され、上記測定子が上記自動車ボディにおけるボディ基準面に当接されたときの上記測定子の突出量に応じて、上記ボディ基準面と上記部品基準面との間隔を測定可能であり、
上記保持部は、上記部品基準面に対して屈曲する部品面に当接される、上記治具本体における側面に形成された当接面と、該当接面が形成された側面と反対側の側面に上記治具本体に対して回動可能に設けられ、バネによる付勢力を受けて上記機能部品に係止される回動係止爪とを有していることを特徴とする位置測定治具。
【請求項2】
上記機能部品には、上記自動車ボディの車室内に収納された状態において、上記ボディ開口部に配置されるドアと接触して該ドアとの隙間を封止するためのウェザーストリップが設けられており、
上記ボディ基準面と上記部品基準面との間隔を測定することによって、上記ウェザーストリップの押し潰し量を検知するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の位置測定治具。
【請求項3】
上記機能部品は、上記自動車ボディの後方部分に設けられた上記ボディ開口部に対向して上記自動車ボディの車室内に収納される一方、上記ボディ開口部の下端部に設けられた水平方向に伸びる回動支軸の回りに回動して、上記ボディ開口部から上記自動車ボディの外部に配設されるスロープ部品であり、
該スロープ部品には、リヤバンパーの一部が設けられており、
上記部品基準面は、上記リヤバンパーを取り付けるためのブラケットに形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置測定治具。
【請求項4】
上記治具本体には、上記測定子に係合して、該測定子の突出量に応じて回転量が決定される目盛回転体が回転可能に設けられており、
該目盛回転体の外周には、上記ボディ基準面と上記部品基準面との間隔が許容範囲内にあることを示す目盛が設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の位置測定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能部品の自動車ボディに対する組付位置を測定するための位置測定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディにおけるボディ開口部には、ボディ開口部に閉じられるドアとの隙間を封止するためのウェザーストリップが設けられている。そして、ウェザーストリップの押し潰し量を適切に管理するために、自動車ボディとドアとの隙間量を、隙間測定治具等を用いて測定することが行われている。
例えば、特許文献1においては、ボディ開口部に固定可能な固定ピースと、固定ピースへの固定位置を変更可能な移動ピースとを有する隙間測定治具について開示されている。そして、移動ピースの可塑性部材に生じる変形量によって、ボディ開口部とドア部材との隙間量を測定している。
【0003】
また、例えば、特許文献2においては、スピンドルの移動変位量を測定する変位量測定手段と、スピンドルに片持ち支持されたアームと、被測定物に当接する測定子とを備える変位量測定治具について開示されている。この変位量測定治具によれば、狭い開口部又は奥行きのある開口部を有するワークの寸法等の測定を正確に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−178183号公報
【特許文献2】特開2009−300301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等に開示される従来の隙間測定治具は、自動車ボディのボディ開口部に取り付けて用いるものである。また、この隙間測定治具は、移動ピースの可塑性部材の塑性変形量に応じて隙間量を測定するものであり、一度使用した後には、可塑性部材を取り換えない限り、繰り返し使用することができない。また、自動車ボディの内部から、ボディ開口部を介して自動車ボディの外部に配設可能な機能部品の組付に使用されるものではない。また、特許文献2に開示された変位量測定治具も、上記隙間測定治具と同様に上記機能部品の組付に使用されるものではない。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、自動車ボディに対する機能部品の組付位置を調整する際に、機能部品に取り付けたままの状態で、機能部品の組付位置を繰り返し測定することができる位置測定治具を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、自動車ボディの内部から、そのボディ開口部を介して外部に配設可能な機能部品の、上記自動車ボディに対する組付位置を測定するための位置測定治具であって、
上記機能部品に取り付けられる治具本体と、
該治具本体に設けられ、該治具本体が上記機能部品に取り付けられた状態を維持するための保持部と、
上記治具本体に設けられ、上記機能部品における部品基準面に当接して、該機能部品に対する上記治具本体の基準位置を決めるための基準部と、
上記治具本体にスライド可能に設けられ、上記基準部からの突出量を繰り返し変更可能な測定子と、を備え、
上記基準部が上記部品基準面に当接され、上記測定子が上記自動車ボディにおけるボディ基準面に当接されたときの上記測定子の突出量に応じて、上記ボディ基準面と上記部品基準面との間隔を測定可能であり、
上記保持部は、上記部品基準面に対して屈曲する部品面に当接される、上記治具本体における側面に形成された当接面と、該当接面が形成された側面と反対側の側面に上記治具本体に対して回動可能に設けられ、バネによる付勢力を受けて上記機能部品に係止される回動係止爪とを有していることを特徴とする位置測定治具にある。
【発明の効果】
【0008】
上記位置測定治具は、自動車ボディに対する機能部品の組付位置を測定するために用いられる。そして、位置測定治具は、機能部品の組付位置の調整を行う際に、繰り返し組付位置の測定を行うことができるものである。
機能部品の組付位置の測定を行う際には、位置測定治具は、基準部が機能部品における部品基準面に当接された状態で機能部品に取り付けられ、保持部によって機能部品に取り付けられた状態が維持される。そして、機能部品を自動車ボディにおける組付位置に配置したときには、位置測定治具の測定子が、自動車ボディにおけるボディ基準面に当接する。このとき、基準部に対する測定子の突出量が縮小される。そして、測定子の突出量に応じて、ボディ基準面と部品基準面との間隔が測定される。
【0009】
また、測定された間隔が、目標とする間隔の範囲内にないときには、自動車ボディに対する機能部品の組付位置の調整が行われる。このとき、保持部によって、位置測定治具が機能部品に取り付けられた状態が維持されている。そのため、機能部品に位置測定治具が取り付けられたままの状態で、自動車ボディに対する機能部品の組付位置の調整を行うことができる。
【0010】
また、測定子は、基準部からの突出量を繰り返し変更可能に構成されており、ボディ基準面から離れた後には速やかに元の位置に復帰することができる。そのため、機能部品の組付位置の調整が行われた後、機能部品を自動車ボディにおける組付位置に配置したときには、再びボディ基準面に測定子を当接させて、測定子の突出量に応じて、ボディ基準面と部品基準面との間隔を測定することができる。
【0011】
それ故、上記位置測定治具によれば、自動車ボディに対する機能部品の組付位置を調整する際に、機能部品に取り付けたままの状態で、機能部品の組付位置を繰り返し測定することができる。
なお、上記基準部によって決定される、機能部品に対する治具本体の基準位置とは、基準部が機能部品における部品基準面に当接したときに決定される治具本体の位置のことであり、機能部品と治具本体との位置関係を特定するための位置のことである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例にかかる、自動車ボディのボディ開口部を、後方から見た状態で示す説明図。
図2】実施例にかかる、自動車ボディのボディ開口部及び自動車ボディに組み付けられたスロープ部品を、側方から見た状態で示す説明図。
図3】実施例にかかる、図2におけるスロープ部品を展開した状態を、側方から見た状態で示す説明図。
図4】実施例にかかる、位置測定治具を示す斜視図。
図5】実施例にかかる、位置測定治具を側方から見た状態で示す説明図。
図6】実施例にかかる、位置測定治具を上方から見た状態で示す説明図。
図7】実施例にかかる、自動車ボディのボディ開口部の一部及び自動車ボディに組み付けられたスロープ部品の一部を、後方から見た状態で拡大して示す説明図。
図8】実施例にかかる、位置測定治具によって、自動車ボディのボディ基準面とスロープ部品の部品基準面との間隔を測定する状態を、側方から見た状態で示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述した位置測定治具における好ましい実施の形態について説明する。
上記位置測定治具においては、上記機能部品には、上記自動車ボディの車室内に収納された状態において、上記ボディ開口部に配置されるドアと接触して該ドアとの隙間を封止するためのウェザーストリップが設けられており、上記ボディ基準面と上記部品基準面との間隔を測定することによって、上記ウェザーストリップの押し潰し量を検知するよう構成されていてもよい。
この場合には、位置測定治具を用いることによって、機能部品に設けられたウェザーストリップの押し潰し量の調整を容易に行うことができる。
【0014】
また、上記機能部品は、上記自動車ボディの後方部分に設けられた上記ボディ開口部に対向して上記自動車ボディの車室内に収納される一方、上記ボディ開口部の下端部に設けられた水平方向に伸びる回動支軸の回りに回動して、上記ボディ開口部から上記自動車ボディの外部に配設されるスロープ部品であり、該スロープ部品には、リヤバンパーの一部が設けられており、上記部品基準面は、上記リヤバンパーを取り付けるためのブラケットに形成されていてもよい。
この場合には、自動車ボディに対するスロープ部品の組付位置の調整を容易に行うことができる。また、スロープ部品を自動車ボディ内に収納するときの、スロープ部品に設けられたウェザーストリップの押し潰し量の調整を容易に行うことができる。
【0015】
また、上記保持部は、上記部品基準面に対して屈曲する部品面に当接される、上記治具本体における側面に形成された当接面と、該当接面が形成された側面と反対側の側面に上記治具本体に対して回動可能に設けられ、バネによる付勢力を受けて上記機能部品に係止される回動係止爪とを有してい
これにより、基準部が部品基準面に当接する状態で、機能部品に対する位置測定治具の治具本体の基準位置をできるだけ正確に決めることができる。
【0016】
また、上記治具本体には、上記測定子に係合して、該測定子の突出量に応じて回転量が決定される目盛回転体が回転可能に設けられており、該目盛回転体の外周には、上記ボディ基準面と上記部品基準面との間隔が許容範囲内にあることを示す目盛が設けられていてもよい。
この場合には、目盛回転体における目盛を目視することにより、ボディ基準面と部品基準面との間隔が許容範囲内にあるかを検知することができる。そのため、自動車ボディに対する機能部品の組付位置の測定及び調整を容易に行うことができる。
【実施例】
【0017】
以下に、位置測定治具にかかる実施例について、図面を参照して説明する。
本例の位置測定治具1は、図1図3に示すように、自動車ボディ5の内部から、そのボディ開口部51を介して外部に配設可能な機能部品としてのスロープ部品6の、自動車ボディ5に対する組付位置501を測定するために用いられる。
位置測定治具1は、図4図6に示すように、治具本体2、保持部21、基準部24、測定子3及び付勢手段31を備えている。治具本体2は、スロープ部品6に取り付けられる。保持部21は、治具本体2に回動可能に設けられており、治具本体2がスロープ部品6に取り付けられた状態を維持する部分である。基準部24は、治具本体2に設けられており、スロープ部品6における部品基準面621に当接して、スロープ部品6に対する治具本体2の基準位置を決めるための部分である。
【0018】
測定子3は、治具本体2にスライド可能に設けられており、基準部24からの突出量Xを繰り返し変更可能である。付勢手段31は、測定子3に設けられており、基準部24から突出する方向に測定子3を付勢するものである。
位置測定治具1は、基準部24が部品基準面621に当接され、測定子3が自動車ボディ5におけるボディ基準面52に当接されたときの測定子3の突出量Xに応じて、ボディ基準面52と部品基準面621との間隔Sを測定可能である。
【0019】
以下に、本例の位置測定治具1について、図1図8を参照して詳説する。
位置測定治具1は、スロープ部品6に取り付けられた状態で使用され、作業者が位置測定治具1における後述する目盛321を読み取ることによって、ボディ基準面52と部品基準面621との間隔Sが許容範囲内にあるかを検知するために使用される。
図3に示すように、スロープ部品6は、自動車ボディ5と地上面Gとの間で車椅子等を走行させて、ボディ開口部51を介して自動車ボディ5との間で車椅子等を載せ降ろし可能にするものである。スロープ部品6は、図2に示すように、収納状態601においては、自動車ボディ5の後方部分に設けられたボディ開口部51に対向して自動車ボディ5の車室内に収納される。また、スロープ部品6は、図3に示すように、展開状態602においては、ボディ開口部51の下端部に設けられた水平方向に伸びる回動支軸61の回りに回動して、ボディ開口部51から自動車ボディ5の外部に配設される。
【0020】
図1図2図7に示すように、自動車ボディ5の後方部分に設けられたボディ開口部51の一部は、スロープ部品6によって形成される。自動車ボディ5におけるボディ開口部51の周縁部とスロープ部品6とには、ドア7と接触して弾性変形し、ドア7との隙間を封止するためのウェザーストリップ54,64が設けられている。スロープ部品6におけるウェザーストリップ64は、スロープ部品6が収納状態601にあるときに、ドア7と接触してドア7との隙間を封止するものである。本例の位置測定治具1は、ボディ基準面52と部品基準面621との間隔Sを測定することによって、ウェザーストリップ64の押し潰し量を検知するよう構成されている(図5図6参照)。
【0021】
図8に示すように、スロープ部品6には、自動車ボディ5に設けられた部品係止部としてのストライカ53に係止される被係止部としてのフック部63が設けられている。フック部63は、バネ(図示略)の力を受けて、ストライカ53に係止された状態が維持されるよう構成されている。ストライカ53は、自動車ボディ5における左右の位置にそれぞれ設けられており、フック部63は、スロープ部品6における左右の位置にそれぞれ設けられている。
【0022】
自動車ボディ5に対するスロープ部品6の組付位置501は、フック部63がストライカ53に係止されることによって決定される。そして、自動車ボディ5に対するスロープ部品6の組付位置501は、自動車ボディ5にストライカ53が設けられた位置を若干変更することによって調整される。
図8に示すように、自動車ボディ5におけるボディ基準面52は、ストライカ53が設けられた位置の近傍に形成されている。スロープ部品6における部品基準面621は、スロープ部品6にリヤバンパーの中央部分65(図3参照)を取り付けるためのブラケット62に形成されている。
【0023】
図1図3に示すように、自動車ボディ5の後方部分に設けられたリヤバンパーの一部は、スロープ部品6に設けられる。スロープ部品6には、リヤバンパーの中央部分65が設けられている。スロープ部品6におけるリヤバンパーの中央部分65は、収納状態601にあるときに、自動車ボディ5におけるリヤバンパーの両側部分55と繋がる。自動車ボディ5に対するスロープ部品6の組付位置501の調整を行う際には、リヤバンパーの中央部分65は、スロープ部品6から取り外しておく。そして、図1図2においては、リヤバンパーの中央部分65が取り外された状態を示す。
【0024】
図5図6図8に示すように、位置測定治具1の治具本体2に設けられた基準部24は、治具本体2の前端面である基準面241として形成されている。基準面241には、スロープ部品6に対する治具本体2の取付位置を決めるための位置決めピン242が設けられている。スロープ部品6のブラケット62における、部品基準面621が形成された部分には、位置決めピン242が差し込まれる差込穴622が設けられている。
【0025】
図4図6に示すように、位置測定治具1の保持部21は、治具本体2における側面に形成された当接面25と、当接面25が形成された側面と反対側の側面に治具本体2に対して回動可能に設けられた回動係止爪22とを有している。当接面25は、ブラケット62における、部品基準面621に対して屈曲する部品面623に当接される。回動係止爪22は、バネ23による付勢力を受けて回動支点部220の回りに回動し、ブラケット62の一部624に係止されるよう構成されている。
【0026】
回動係止爪22には、ブラケット62の一部624に係止される係止部221と、位置測定治具1をスロープ部品6に取り付ける際に、係止部221がブラケット62に係止されるように案内する案内部222と、係止部221の係止状態を解除するための係止解除レバー223とが設けられている。バネ23は、係止部221のブラケット62への係止状態を維持する方向へ弾性回復力を付与するねじりコイルバネによって構成されている。
【0027】
図5図6に示すように、位置測定治具1の測定子3は、軸形状に形成されている。位置測定治具1の付勢手段31は、コイルスプリングであり、軸形状の測定子3の外周に配置されている。付勢手段31によって付勢された測定子3は、治具本体2の部分によって受け止められて、自然状態において、治具本体2から最も突出した原位置にある。そして、測定子3の先端部がボディ基準面52に当接すると、付勢手段31が弾性変形して、測定子3の治具本体2からの突出量Xが縮小される。
【0028】
治具本体2には、測定子3に係合して、測定子3の突出量Xに応じて回転量が決定される目盛回転体32が回転可能に設けられている。目盛回転体32の外周には、ボディ基準面52と部品基準面621との間隔Sが許容範囲内にあることを示す目盛321が設けられている。この目盛321は、ボディ基準面52と部品基準面621との間隔Sが目標値であることを示す0(ゼロ)を中心として、一方の回転側に+数mmの許容範囲、及び他方の回転側に−数mmの許容範囲を定めて設けることができる。なお、許容範囲は、適宜設定することができ、例えば±1.5mmの範囲とすることができる。
【0029】
図5に示すように、測定子3には、直線状に複数の歯面が並んで形成されたラック33が設けられている。目盛回転体32には、ラック33に噛合するピニオンギヤ34が設けられている。目盛回転体32の直径は、ピニオンギヤ34の直径よりも大きくしてある。本例の目盛回転体32の直径は、ピニオンギヤ34の直径の4倍にしてある。目盛回転体32の直径は、ピニオンギヤ34の直径の2〜8倍にすることができる。
測定子3がスライドすると、これに噛合するピニオンギヤ34が回転し、ピニオンギヤ34とともに目盛回転体32が回転する。そして、目盛回転体32の直径がピニオンギヤ34の直径よりも大きいことにより、目盛回転体32に設ける目盛321の倍率が大きくなり、作業者による目盛321の目視を容易にすることができる。
【0030】
次に、位置測定治具1を用いて、ボディ基準面52と部品基準面621との間隔Sを測定する方法、及び本例の作用効果について説明する。
スロープ部品6が自動車ボディ5に組み付けられた後には、作業者は、位置測定治具1をスロープ部品6に取り付ける。このとき、作業者は、基準部24の位置決めピン242を、スロープ部品6のブラケット62における差込穴622に差し込み、基準部24の基準面241をブラケット62の部品基準面621に当接させるとともに、治具本体2の当接面25をブラケット62の部品面623に当接させる。この当接を行うときには、保持部21の案内部222によって回動係止爪22の係止部221がブラケット62の一部624に案内され、回動係止爪22の係止部221がブラケット62に係止される。これにより、位置測定治具1の治具本体2が、ブラケット62に取り付けられた状態が維持される。
【0031】
次いで、作業者は、スロープ部品6を回動支軸61の回りに回動させ、スロープ部品6のフック部63を自動車ボディ5のストライカ53に係止させる。そして、フック部63がストライカ53に係止されたときに、スロープ部品6が自動車ボディ5における組付位置501に配置される。また、このとき、位置測定治具1の測定子3の先端部が、自動車ボディ5のボディ基準面52に当接し、付勢手段31が弾性変形する。そして、付勢手段31による付勢力に打ち勝って、治具本体2に対する測定子3の突出量Xが縮小される。これにより、測定子3の突出量Xに応じて(測定子3の突出量Xが縮小した量に応じて)、ボディ基準面52と部品基準面621との間隔Sが測定される。
【0032】
また、測定子3の突出量Xが縮小されるときには、ラック33及びピニオンギヤ34を介して目盛回転体32が回転する。そして、作業者は、目盛回転体32における目盛321の示す位置が、±数mmの許容範囲内にあるかを目視することによって、ボディ基準面52と部品基準面621との間隔Sが目標とする間隔の範囲内にあるかを検知する。
【0033】
次いで、測定された間隔Sが、目標とする間隔Sの範囲内としての許容範囲内にないときには、自動車ボディ5に対するスロープ部品6の組付位置501の調整が行われる。この組付位置501の調整は、自動車ボディ5においてストライカ53が設けられた位置を若干変更することによって行う。この調整を行うときには、保持部21によって、位置測定治具1がスロープ部品6に取り付けられた状態が維持されている。そのため、スロープ部品6に位置測定治具1が取り付けられたままの状態で、自動車ボディ5に対するスロープ部品6の組付位置501の調整を行うことができる。
【0034】
また、測定子3は、付勢手段31により常に突出する方向に付勢されており、ボディ基準面52から離れた後には速やかに元の原位置に復帰する。そして、作業者は、自動車ボディ5におけるストライカ53の位置をずらして、スロープ部品6の組付位置501の調整を行う。その後、作業者は、再びスロープ部品6のフック部63をストライカ53に係止させて、スロープ部品6を自動車ボディ5における組付位置501に配置する。そして、再びボディ基準面52に測定子3が当接され、作業者は、目盛回転体32における目盛321の示す位置が、±数mmの許容範囲内にあるかを目視して、ボディ基準面52と部品基準面621との間隔Sが許容範囲内にあるかを測定する。
【0035】
このように、本例の位置測定治具1によれば、自動車ボディ5に対するスロープ部品6の組付位置501を調整する際に、スロープ部品6に取り付けたままの状態で、スロープ部品6の組付位置501を繰り返し測定することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 位置測定治具
2 治具本体
21 保持部
22 回動係止爪
23 バネ
24 基準部
241 基準面
25 当接面
3 測定子
31 付勢手段
32 目盛回転体
321 目盛
5 自動車ボディ
501 組付位置
51 ボディ開口部
52 ボディ基準面
54 ウェザーストリップ
55 リヤバンパーの両側部分
6 スロープ部品(機能部品)
61 回動支軸
62 ブラケット
621 部品基準面
623 部品面
64 ウェザーストリップ
65 リヤバンパーの中央部分
7 ドア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8