(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガイド機構が、前記移動台に対する前記装置本体のX軸方向の移動を許容する水平方向リニアガイドと、この移動台に対するこの装置本体のY軸方向の移動を許容する鉛直方向リニアガイドとから構成されている、請求項1に記載した軸受挿入装置。
前記装置本体に、筒部駆動装置が設けられており、前記外輪支持筒部を、前記内輪クランプ機構とは独立してZ軸方向に移動可能としている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した軸受挿入装置。
【背景技術】
【0002】
操舵輪(フォークリフト等の特殊車両を除き、通常は前輪)に舵角を付与する際に、運転者がステアリングホイールを操作する為に要する力の軽減を図る為の装置として、パワーステアリング装置が広く使用されている。又、この様なパワーステアリング装置で、補助動力源として電動モータを使用する電動式パワーステアリング装置も、近年普及し始めている。この様な電動式パワーステアリング装置の構造は、各種知られているが、何れの構造の場合でも、ステアリングホイールの操作によって回転させられ、回転に伴って操舵輪に舵角を付与する回転軸に電動モータの補助動力を、減速機を介して付与する。この減速機として一般的には、ウォーム減速機が使用されている。ウォーム減速機を使用した電動式パワーステアリング装置の場合、電動モータにより回転駆動されるウォームと、回転軸と共に回転するウォームホイールとを噛合させて、電動モータの補助動力をこの回転軸に伝達可能とする。
【0003】
例えば特許文献1には、
図4〜5に示す様な、電動式パワーステアリング装置が記載されている。ステアリングホイール1により所定方向に回転させられる、回転軸であるステアリングシャフト2の前端部は、ハウジング3の内側に回転自在に支持しており、この部分にウォームホイール4を固定している。このウォームホイール4と噛合し、電動モータ5により回転駆動されるウォーム6は、ウォーム軸7の軸方向中間部にウォーム歯8を設けて成る。このウォーム軸7の先端部は、単列深溝型玉軸受等の転がり軸受である先端側軸受9により、同じく基端部は同様の基端側軸受10により、それぞれ前記ハウジング3内に回転自在に支持している。
【0004】
前記ウォーム6を前記電動モータ5の出力軸11により回転駆動する為に、前記ウォーム軸7の基端部にスプライン孔12を、このウォーム軸7の基端面に開口する状態で形成している。又、前記出力軸11の先端部にスプライン軸部13を形成している。そして、このスプライン軸部13と前記スプライン孔12とをスプライン係合させる事で、前記出力軸11と前記ウォーム軸7とを、回転力の伝達を可能に結合している。
【0005】
近年、上述の様な構成を有する電動式パワーステアリング装置の生産性の向上を図る為に、組立作業の自動化が進められており、ウォーム減速機部分に就いても、組立作業の自動化が考えられている。このウォーム減速機部分の組立作業は、例えば特許文献2に記載される様に、
図6に示す様にして行われる。
先ず(A)に示した様に、先端側軸受9を、ハウジング3を構成する略有底円筒状のウォーム収納部14の内側に、開口部側から水平方向に挿入し、このウォーム収納部14の内周面に形成された突き当て部15に当接させる。これにより、前記先端側軸受9を、このウォーム収納部14の奥部に形成された軸受挿入部16に内嵌固定(圧入)する。その後、ウォームホイール4を、前記ハウジング3を構成するウォームホイール収納部17内に組み込む。次いで、(A)→(B)に示した様に、前記ウォームホイール4にウォーム歯8を噛合させた状態で、ウォーム6を、所定方向に回転させながら、前記ウォーム収納部14の内側に挿入する。そして、このウォーム6の先端部を、前記先端側軸受9の内側に挿入する。最後に、(C)に示した様に、基端側軸受10を、前記ウォーム6の基端側から外嵌挿入し、前記ウォーム収納部14の内周面の中間部に形成された軸受挿入部18に内嵌固定(圧入)する。
【0006】
従来から、ウォーム減速機部分の組立作業は、上述の様な作業工程により行われているが、この様な作業工程のうち、先端側軸受9をウォーム収納部14の奥部に形成された軸受挿入部16に挿入(内嵌固定)する工程を、自動化する事が期待されている。ところが、この工程を自動化するには、次の様な課題がある。
即ち、一般的なパワーステアリング装置の場合、軸受挿入部16は、ウォーム収納部14の開口部から200mm程度離れた位置に形成されているうえ、前記軸受挿入部16とこの先端側軸受9の外周面との間には、通常10μm程度しか径方向の余裕代(隙間)が存在しない。この為、前記先端側軸受9を前記軸受挿入部16に挿入するには、挿入位置を細かく規制できる高い精度が必要になる。しかも、前記挿入工程は、前記先端側軸受9を水平方向に移動させて行う為、この先端側軸受9及びこの先端側軸受9を支持した部材に作用する重力の影響により、挿入位置が下方にずれ易くなる。更に、前記軸受挿入部16に存在する寸法公差に基づき、この軸受挿入部16の中心軸は、寸法公差がゼロであると仮定した場合を基準として、0.6mm程度ずれる可能性がある。この為、前記先端側軸受9の挿入時には、この公差に基づく芯ずれを解消する(調心する)必要もある。
【0007】
尚、本発明に関連するその他の先行技術文献として、特許文献1、2の他に、特許文献3がある。この特許文献3には、転がり軸受の挿入装置に関する発明が記載されている。但し、この特許文献3に記載された発明の場合には、転がり軸受が挿入される側の部材(上述した例ではウォーム収納部)に、この転がり軸受の内側に挿入する為のセンタリング用の軸を設ける必要がある。この為、転がり軸受が挿入される側の部材の形状がかなり限定されてしまい、例えば前記
図5、6に示した様な、ウォーム収納部14が一体的に形成されている構造では、センタリング用の軸を設ける事ができず採用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、例えばウォーム減速機を構成するウォームを収容する為のウォーム収納部の奥部に形成された軸受挿入部の様に、転がり軸受の挿入距離が長く、且つ、転がり軸受との間の径方向の余裕代が小さく、しかも、寸法公差を考慮する必要がある、軸受挿入部を対象とする場合にも、転がり軸受を自動で挿入できる、軸受挿入装置の構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の軸受挿入装置は、基台と、移動台と、装置本体とを備えている。
このうちの移動台は、この基台上に水平方向のZ軸方向(ハウジング等の転がり軸受が挿入される部材に対して遠近動する方向)に移動可能に設けられている。
又、前記装置本体は、前記移動台に対し、所定方向(後述するX軸方向及びY軸方向)に関する移動を自在に支持されている。
特に本発明の軸受挿入装置の場合には、前記装置本体が、外輪支持筒部と、内輪クランプ機構とを有している。
このうちの外輪支持筒部は、中空筒形で長尺状{転がり軸受が挿入される部材の開口部から軸受挿入部までの距離よりも長い寸法}に構成されており、転がり軸受を構成する外輪の側面にその先端面を当接させて、この転がり軸受のZ軸方向(転がり軸受の軸方向と平行な方向)に関する位置決めを行うものである。
又、前記内輪クランプ機構は、前記外輪支持筒部の先端部から突出した部分に設けられたクランプ本体部を拡縮させる事で、前記転がり軸受を構成する内輪の内周面を把持するものである。
そして、この様な外輪支持筒部及び内輪クランプ機構を備えた前記装置本体は、前記移動台に対し、ガイド機構により、Z軸方向と直交する水平方向のX軸方向、並びに、Z軸方向及びX軸方向と直交する鉛直方向のY軸方向に関するそれぞれの移動を自在とされており(自由な移動を許容されており)、且つ、Y軸方向への所定量の移動を許容する状態で、例えばシリンダや弾性部材により下方からフローティング支持(浮動支持)されている。
【0011】
尚、本発明の軸受挿入装置により挿入する転がり軸受は、内周面に外輪軌道を有する円環状の外輪と、外周面に内輪軌道を有する円環状の内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備え、必要に応じてこれら各転動体を保持する為の保持器や異物の侵入を防ぐシール装置を備えた、ラジアル転がり軸受である。
又、前記転がり軸受は、単列転がり軸受に限らず、複列転がり軸受でも良いし、転がり軸受を構成する転動体は、玉に限らず、各種ころ(円筒ころ、円すいころ、球面ころ、ニードル等)であっても良い。
【0012】
上述した様な本発明の軸受挿入装置を実施する場合には、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記ガイド機構を、前記移動台に対する前記装置本体のX軸方向の移動を許容する、少なくとも1つの水平方向リニアガイドと、この移動台に対するこの装置本体のY軸方向の移動を許容する、少なくとも1つの鉛直方向リニアガイドとから構成する。
【0013】
更に、本発明の軸受挿入装置を実施する場合には、例えば請求項3に記載した発明の様に、前記装置本体に、筒部駆動装置を設けており、前記外輪支持筒部を前記内輪クランプ機構とは独立してZ軸方向に移動可能とする。
【発明の効果】
【0014】
上述の様に構成する本発明の軸受挿入装置によれば、ウォーム減速機を構成するウォームを収容する為のウォーム収納部の奥部に形成された軸受挿入部の様に、転がり軸受の挿入距離が長く、且つ、転がり軸受との間の径方向の余裕代が小さく、しかも、寸法公差を考慮する必要がある、軸受挿入部を対象とする場合にも、転がり軸受を自動で挿入できる。
即ち、本発明の軸受挿入装置の場合には、装置本体を構成する内輪クランプ機構により転がり軸受を構成する内輪を把持すると共に、この装置本体を構成する外輪支持筒部の先端面をこの転がり軸受を構成する外輪の側面に当接させて、この転がり軸受の姿勢を安定させた状態で、前記装置本体を支持した移動台を基台に対し水平方向のZ軸方向に移動させる事により、前記転がり軸受を軸受挿入部に挿入する。
この様に本発明の場合には、前記外輪支持筒部の先端面を、前記転がり軸受を構成する外輪の側面に当接させた状態で、この転がり軸受を挿入する為、例えば前記外輪支持筒部に作用するZ軸方向の力(反力)を直接測定したり、前記移動台を駆動する為の駆動源に作用する力(例えばトルク)の大きさを測定したりする事で、前記転がり軸受が軸受挿入部の奥部にまで挿入された事を検知できる。この為、この転がり軸受の挿入距離が長い場合にも、挿入量が不足する事を防止できて、この転がり軸受を軸受挿入部に確実に挿入する事ができる。
又、本発明の場合には、前記装置本体を、前記移動台に対し、ガイド機構によって、水平方向のX軸方向及び鉛直方向のY軸方向に関するそれぞれの移動を自在としている。この為、前記装置本体の先端部に支持した転がり軸受を、例えばハウジング内で水平方向に移動させた際に、軸受挿入部に存在する公差等に基づき、この軸受挿入部の中心軸と前記転がり軸受の中心軸とが不一致である場合にも、この転がり軸受を構成する外輪の外周面(特に面取り部)と前記ハウジングの内面との接触に基づいて、この転がり軸受を径方向(装置本体をX軸方向又は/及びY軸方向)に移動させる(調心する)事ができる。従って、本発明の軸受挿入装置によれば、転がり軸受との間の径方向の余裕代が小さく、しかも、寸法公差を考慮して挿入する必要がある場合にも、前記転がり軸受を径方向に適宜自動的に移動させて、この転がり軸受の中心軸を軸受挿入部の中心軸に自動で一致させる若しくは近づけられる(調心できる)。
この結果、本発明によれば、上述した様な自動での挿入が難しいと考えられていた軸受挿入部に対しても、自動で転がり軸受を挿入する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例に就いて、
図1、2を参照しつつ説明する。本例の軸受挿入装置19は、ワークである先端側軸受9を、ウォーム減速機を構成するウォーム6(
図5、6参照)を収容する為のウォーム収納部14に形成した軸受挿入部16に、自動で挿入する為の装置である。先ず、本例の軸受挿入装置19に就いての詳しい説明をする前に、本例の軸受挿入装置19により挿入する前記先端側軸受9、及び、この先端側軸受9が挿入される前記ウォーム収納部14に就いて簡単に説明する。
【0017】
前記先端側軸受9は、
図2に示す様に、内周面に外輪軌道を有する円環状の外輪20と、外周面に内輪軌道を有する円環状の内輪21と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の玉22、22とを備えた、単列深溝型のラジアル玉軸受であり、前記ウォーム6の先端部を前記ウォーム収納部14の内側に回転自在に支持する為のものである。又、前記外輪20の軸方向両側面と外周面との間にはそれぞれ、断面円弧形の面取り部44、44が形成されている。
【0018】
前記ウォーム収納部14は、電動式パワーステアリング装置を構成するウォーム減速機を収容する為のハウジング3の一部に設けられており、アルミニウム合金や合成樹脂等から造られている。又、前記ウォーム収納部14は、略有底円筒状に構成されており、その内部空間はウォームホイール4(
図5、6参照)を収容する為のウォームホイール
収納部17の内部空間に連通している。又、この様な構成を有するウォーム収納部14の内周面の奥部には、このウォーム収納部14の中心軸に直交する仮想平面上に存在する突き当て部(段差面)15が形成されている。又、前記ウォーム収納部14の内周面の奥部のうちで、この突き当て部15の開口部側に隣接した部分に、単一円筒面状の軸受挿入部16が形成されている。この軸受挿入部16の内径寸法は、前記先端側軸受9の外輪20の外径寸法よりも、10μm程度大きく設定されている。又、前記ウォーム収納部14の開口部に位置するモータ側端面23から前記軸受挿入部16までの距離(水平方向距離)L
14は、200mm程度である。
【0019】
次に、本例の軸受挿入装置19に就いて詳しく説明する。
前記軸受挿入装置19は、基台24と、移動台25と、装置本体26と、ガイド機構27と、図示しないNC装置とを備えている。
このうちの基台24は、工場の床面上に水平に載置されている。又、この基台24には、図示しない駆動モータとボールねじ装置を備えた駆動機構28が設けられており、この基台24上に設けられた前記移動台25を、前記NC装置からの移動指令に基づき、水平方向のZ軸方向(
図1の左右方向、ハウジング3に対して遠近動する方向)に移動させる。前記移動台25は、水平方向に延設した第一取付板部29と、垂直方向に立設した第二取付板部30とを備えている。
【0020】
尚、
図1には、前記移動台25をZ軸方向に移動させる以前の状態(原点に位置する状態)を示している。又、この移動台25の移動方向前方側(
図1の左側)には、床面上に取付台31が載置されており、この取付台31上に前記ハウジング3が、前記ウォーム収納部14の開口部を前記軸受挿入装置19側に向けた状態で固定されている。
【0021】
前記装置本体26は、上述した様な移動台25に対し、前記ガイド機構27を介して、所定方向に関する移動を自在に支持されている。このガイド機構27は、2つの水平方向リニアガイド32a、32bと、1つの鉛直方向リニアガイド33とを備えている。又、このうちの一方の水平方向リニアガイド32aと鉛直方向リニアガイド33とは、互いに組み合わされて十字型に構成されており、前記移動台25を構成する第二取付板部30の前面(
図1の左側面)と前記装置本体26(後述するシリンダ本体52)との間部分に設けられている。又、他方の水平方向リニアガイド32bは、前記移動台25を構成する第一取付板部29の上面と前記装置本体26(シリンダ本体52)の下面との間部分に、エアシリンダ34を介して設けられている。
【0022】
前記両水平方向リニアガイド32a、32bは、前記装置本体26が前記移動台25に対し、Z軸方向と直交する水平方向のX軸方向(
図1の表裏方向)に自由に移動する事を許容するものである。これに対し、前記鉛直方向リニアガイド33は、前記装置本体26が前記移動台25に対し、Z軸方向及びX軸方向と直交する鉛直方向のY軸方向(
図1の上下方向)に自由に移動する事を許容するものである。互いに組み合わされて十字型に構成された前記一方の水平方向リニアガイド32aと前記鉛直方向リニアガイド33は、1対の案内レール36a、36bと、1つのスライダ37aと、図示しない複数の転動体とを備えている。即ち、互いに直交する状態で配置された前記両案内レール36a、36b内に前記スライダ37aを、複数の転動体を介して、これら各案内レール36a、36bの長手方向に沿ってそれぞれ相対移動可能に跨架している。又、前記他方の水平方向リニアガイド32bは、案内レール36cと、スライダ37bと、図示しない複数の転動体とを備えており、この案内レール36c内にこのスライダ37bを、複数の転動体を介して、この案内レール36cの長手方向に沿って相対移動可能に跨架している。
尚、図示は省略するが、別途シリンダ装置を設けて、前記両スライダ37a、37bの移動を、前記各案内レール36a、36b、36cの長手方向の中央位置等、所定の位置にてそれぞれ停止させる構造を採用する事もできる。
【0023】
又、前記一方の水平方向リニアガイド32aに代えて、工作機械等にてエアシリンダ装置と組み合わせて用いられる場合のあるフローティングジョイントを使用する事もできる。この場合には、このフローティングジョイントの基端部を前記スライダ37aに支持固定し、先端部を前記装置本体26(シリンダ本体52)に対して固定する。これにより、この装置本体26を前記スライダ37aに対し、X軸方向の僅かな変位(例えば1mm程度の変位)を可能に支持する事ができる。
【0024】
前記エアシリンダ34は、前記鉛直方向リニアガイド33により、前記移動台25に対するY軸方向への移動を許容された前記装置本体26が、重力等により下方に移動するのを防止する為に設けている。前記エアシリンダ34は、ピストン38と、このピストン38を嵌装したシリンダ本体39とを備えており、このピストン38により、前記装置本体26に対し上方に向いた力を付与している。これにより、この装置本体26を、Y軸方向への所定量の移動を許容した状態で、所定の高さ位置に下方からフローティング支持している。具体的には、前記エアシリンダ34により、前記装置本体26及びこの装置本体26により支持する前記先端側軸受9に作用する重力に見合った大きさの力を付与する様にしている。従って、挿入作業時に、前記装置本体26に下方又は上方に向いた外力が作用した場合に、前記ピストン
38が変位できる範囲で、前記装置本体26の下方又は上方への移動を許容する。
【0025】
前記装置本体26は、外輪支持機構40と、内輪クランプ機構41とを備えている。このうちの外輪支持機構40は、外輪支持筒部42と、油圧シリンダ装置又はエアシリンダ装置である筒部駆動装置43とを備えている。この外輪支持筒部42は、中空円筒形で、長尺状に構成されており、前記先端側軸受9を構成する外輪20の片側面(
図1、2の右側面)にその先端面45を当接させて、この先端側軸受9のZ軸方向(先端側軸受9の軸方向と平行な方向)に関する位置決めを行うものである。この様な外輪支持筒部42の全長L
42は、前記ウォーム収納部14に関する前記モータ側端面23から前記軸受挿入部16までの距離L
14よりも大きい(L
42>L
14)。又、図示の構造の場合、前記外輪支持筒部42のうち、後述する取付フランジ46を外嵌した基端部を除いた部分の外径寸法を、全長に亙り一定とし、前記外輪20の外径寸法よりも僅かに小さくしている。但し、ウォーム収納部の内面形状によっては、外輪支持筒部の先端部に先細のテーパ部を設け、中間部の外径寸法を外輪20の外径寸法よりも大きくする事もできる。又、前記外輪支持筒部42の先端面45は、この外輪支持筒部42の中心軸に直交する仮想平面上に存在する円輪状に形成されている。又、前記先端面45の外径寸法は、前記外輪20の外径寸法よりも僅かに小さく、この先端面45の内径寸法は、この外輪20の内径寸法と同じかこれよりも小さい。尚、図示は省略するが、先端面45の内径寸法は、前記内輪21の外径寸法よりも小さくする事もできる。
【0026】
又、前記外輪支持筒部42の基端部外周面には、円輪状の取付フランジ46が外嵌固定されている。そして、この取付フランジ46の一部(上端部)に、前記筒部駆動装置43を構成する駆動ロッド47の先端部を連結している。この駆動ロッド47は、その基端部がシリンダ本体48内に嵌装されており、前記NC装置から指令の指令に基づく、このシリンダ本体48内への圧油又は空気の給排により、Z軸方向への移動が可能とされている。又、本例の場合、前記外輪支持筒部42は、前記内輪クランプ機構41を構成する後述の中間筒部51の周囲に、図示しない滑り軸受等を介して、Z軸方向の相対変位を可能に案内支持されている。
【0027】
前記内輪クランプ機構41は、クランプ本体部49と、油圧シリンダ装置又はエアシリンダ装置であるクランプ駆動装置50と、中間筒部51とを備えている。このうちの中間筒部51は、アルミニウム合金やステンレス鋼等の金属製で、略円筒状に構成されており、前記外輪支持筒部42の内側に同心に配置されている。又、前記中間筒部51の基端部(
図1の右端部)は、前記クランプ駆動装置50を構成するシリンダ本体52に連結固定されており、この状態で、前記中間筒部51の先端部(
図1の左端部)を、前記外輪支持筒部42の先端部よりもZ軸方向に突出させている。又、前記中間筒部51の内側には、Z軸方向に貫通する貫通孔53が形成されている。この貫通孔53は、前記中間筒部51の基端部から先端寄り部分に亙る範囲に形成された、内径寸法が一定である小径孔部54と、前記中間筒部51の先端部に形成された、この小径孔部54よりも大きな内径寸法を有する開口孔部55と、これら小径孔部54と開口孔部55との間部分に形成された収納孔部56とを備えている。この収納孔部56は、前記開口孔部55の内周面に連続する状態で形成された、この開口孔部55に近づくに従って内径寸法が小さくなる方向に傾斜した、部分円すい凹面状の傾斜面部57と、この傾斜面部57よりも前記小径孔部54側に形成された内径寸法が一定である円筒面部58と、この円筒面部58とこの小径孔部54の内周面とを連続させる段差面部59とを備えている。本例の場合には、この様な構成を有する収納孔部56を形成する事により、この収納孔部56の周囲に、前記円筒面部58を内周面に有する薄肉部60を形成している。又、前記中間筒部51の先端側部分の円周方向複数個所には、それぞれの基端部がZ軸方向に関して前記段差面部59と整合する部分に位置し、それぞれの先端部が前記中間筒部51の先端縁部に開口した、スリット61、61がZ軸方向に形成されている。そして、この中間筒部51の先端側部分のうちで、円周方向に関してこれら各スリット61、61同士の間に存在する部分を、拡縮部62、62としている。本例の場合には、これら各拡縮部62、62のうちで、前記外輪支持筒部42の先端部から突出した部分(先端部)により、前記クランプ本体部49を構成している。尚、このクランプ本体部49の外径寸法は、このクランプ本体部49を駆動していない(内輪21をクランプしていない)状態で、前記内輪21の内径寸法よりも僅かに小さい。
【0028】
前記クランプ駆動装置50は、油圧シリンダ装置又はエアシリンダ装置であり、前記中間筒部51の内側に配置されたピストンロッド63と、このピストンロッド63の基端部を嵌装した前記シリンダ本体52とを備えている。このシリンダ本体52は、前記第二取付板部30に対し、前記一方の水平方向リニアガイド32aと前記鉛直方向リニアガイド33とにより、X軸方向及びY軸方向に関するそれぞれの相対変位を可能に支持されている。又、前記シリンダ本体52は、前記第一取付板部29に対し、前記他方の水平方向リニアガイド32bにより、X軸方向の相対変位を可能に支持されると共に、前記エアシリンダ34により、Y軸方向への所定量の移動を許容した状態で下方からフローティング支持されている。この様なクランプ駆動装置50は、前記NC装置から指令の指令に基づき、前記シリンダ本体52内に圧油又は空気を給排する事で、前記ピストンロッド63をZ軸方向に移動可能としている。
【0029】
前記ピストンロッド63の先端部には、先端側に向かうに従って外径寸法が小さくなった部分円すい柱状の先端部を有するカム部64が設けられている。このカム部64は、前記中間筒部51の内側に形成された収納孔部56内に配置されており、その先端部外周面を、前記傾斜面部57に対向させている。
【0030】
本例のクランプ本体部49により、前記内輪21の内周面を把持するには、このクランプ本体部49を、この内輪21の内側に挿入した状態で、前記カム部64をZ軸方向に関して前方に移動させる。これにより、このカム部64の先端部外周面を前記傾斜面部57に押し付け、前記各拡縮部62、62をこれら各拡縮部62、62の基端部を起点として径方向外方に押し拡げる(スリット61、61の円周方向に関する幅寸法を大きくする)。そして、これら各拡縮部62、62の外周面を前記内輪21の内周面に押し付ける事により、この内輪21を所定の保持力で把持(クランプ)する。これに対し、クランプを解除するには、前記カム部64(ピストンロッド63)を、前記収納孔部56の内側で、Z軸方向に関して後方に移動させる。これにより、前記各拡縮部62、62を弾性的に復元させ、前記内輪21に対する保持力を小さくする(ゼロにする)。この様に、本例の場合には、前記各拡縮部62、62を板ばねとして機能させる。
【0031】
以上の様な構成を有する本例の軸受挿入装置19により、前記先端側軸受9を、前記ウォーム収納部14の内周面の奥部に形成された軸受挿入部16に挿入する作業は、次の様にして行う。
先ず、図示しない軸受供給装置により、前記先端側軸受9を、自動的に供給し、前記軸受挿入装置19に対してセットする。即ち、前記内輪21の内側に前記クランプ本体部49(拡縮部62、62の先端部)を挿入すると共に、前記外輪20の片側面を前記外輪支持筒部42の先端面45に当接させる。この様にセットした状態で、本例の軸受挿入装置19は、前記NC装置の指令に基づき、前記内輪クランプ機構41を構成するシリンダ本体52内に圧油又は空気を給排し、前記ピストンロッド63をZ軸方向に関して前方に移動させる。これにより、前記カム部64の先端部外周面を利用して前記各拡縮部62、62を径方向外方に押し拡げ、前記内輪21の内周面を所定の保持力でクランプする。
尚、本例の場合には、上述の様に、前記クランプ本体部49により前記先端側軸受9をクランプした状態で、この先端側軸受9の中心軸が前記軸受挿入部16の中心軸の近傍(少なくとも公差程度のずれの範囲内)に位置する様に、予め前記装置本体26のY軸方向に関する位置決めを前記エアシリンダ34等を利用して行っておくと共に、X軸方向に関する位置決めを行っておく。
【0032】
次いで、前記NC装置の指令に基づき、前記基台24上に設けた前記移動台25及びこの移動台25に支持した前記装置本体26を、Z軸方向に関して前方に移動(平行移動)させる。これにより、前記シリンダ本体部
48によりクランプされた前記先端側軸受9を、前記ウォーム収納部14の内側に開口部側から挿入する。挿入作業中、前記先端側軸受9を構成する外輪20の外周面(主として面取り部44)が、前記
ウォーム収納部14の内周面(例えば軸受挿入部16の開口部側に形成された傾斜面65)に接触した場合には、前記先端側軸受9を径方向(X軸方向、Y軸方向)に自動で(Z軸方向の押し付け力に基づき自動で)移動させて、Z軸方向への挿入を継続する。そして、前記先端側軸受9を構成する外輪20の他側面(
図1、2の左側面)が前記突き当て部15に当接した事が、前記移動台25を駆動する駆動モータの回転トルクの大きさから検知されるまで挿入を続け、検知されたならば、前記移動台25の駆動を停止する。本例の場合、この状態で、前記先端側軸受9が前記軸受挿入部16に挿入(内嵌)された状態となる。又、本例の場合、前記NC装置は、前記移動台25を駆動する駆動モータの回転トルクの大きさを監視すると共に、この移動台25の位置(Z軸方向の位置)を監視している。これにより、前記先端側軸受9が予め求めた挿入完了位置(Z軸方向への移動量)に達するよりも手前(例えば約2mm以上手前)で回転トルクが上昇した場合には、異常が発生したと判定し、挿入動作を中止する様にしている。尚、回転トルクが上昇した場合に異常が発生したと判定する位置は、挿入完了位置から2mm以上手前の位置に限定されず、適宜設定する事ができる。
【0033】
次いで、前記内輪クランプ機構41を構成する前記シリンダ本体52に、圧油又は空気を給排して、前記ピストンロッド63及び前記カム部64を、Z軸方向に関して後方に移動させる。これにより、前記各拡縮部62、62を弾性的に復元させて、前記内輪21に対する保持力を減少させる。これと同時に、前記外輪支持機構40を構成するシリンダ本体48に圧油又は空気を給排し、前記駆動ロッド47及び前記取付フランジ46を介して、前記外輪支持筒部42を、前記内輪クランプ機構41とは独立して、Z軸方向に関して前方に移動させる。これにより、前記外輪20の他側面を前記突き当て部15に押し付けつつ、前記内輪21の内周面から前記各拡縮部62、62の外周面を完全に離隔させる。
【0034】
その後、前記シリンダ本体48に圧油又は空気を給排して、前記外輪支持筒部42を、上述の場合とは反対にZ軸方向に関して後方に移動させ、この外輪支持筒部42の先端面45を前記外輪20の片側面から離隔させる。そして最後に、前記移動台25及び前記装置本体26を、Z軸方向に関して後方に移動させて原点位置に復帰させる。
【0035】
以上の様な構成を有する本例の軸受挿入装置19によれば、前記ウォーム収納部14の奥部に形成された軸受挿入部16に、前記先端側軸受9を自動で挿入できる。
即ち、本例の軸受挿入装置19の場合には、前記外輪支持筒部42の先端面45を前記外輪20の片側面に当接させた状態で、前記先端側軸受9の挿入作業を行う為、前記移動台25を駆動する駆動モータの回転トルクの大きさから、前記先端側軸受9が前記突き当て部15に当接した事を検知できる。この為、本例の様に、この先端側軸受9の挿入距離が長い場合にも、挿入量が不足する事を防止できて、この先端側軸受9を前記軸受挿入部16に確実に挿入する事ができる。
【0036】
又、本例の場合には、前記装置本体
26を、前記移動台25に対し、前記両水平方向リニアガイド32a、32b及び前記鉛直方向リニアガイド33により、X軸方向及びY軸方向に関する移動を自在としている。この為、上述した様な挿入作業時に、前記軸受挿入部16に存在する公差等に基づき、この軸受挿入部16の中心軸と前記先端側軸受9の中心軸とが不一致である場合にも、この先端側軸受9を構成する外輪20の外周面(例えば面取り部44)と前記ウォーム収納部14の内周面(例えば傾斜面65)との接触に基づいて、前記装置本体
26をX軸方向及びY軸方向に移動させ、前記先端側軸受9を径方向に移動させる(調心する)事ができる。従って、本例の軸受挿入装置19によれば、前記ウォーム収納部14に形成された軸受挿入部16の様に、前記先端側軸受9との間の径方向の余裕代が小さく、しかも、寸法公差を考慮して挿入する必要がある場合にも、前記先端側軸受9を径方向に適宜自動的に移動させて、この先端側軸受9の中心軸を前記軸受挿入部16の中心軸に自動で一致させる若しくは近づけられる(調心できる)。
この結果、本例の軸受挿入装置19によれば、ウォーム減速機を構成する前記ウォーム6を収容する為のウォーム収納部14に形成した軸受挿入部16の様に、自動での挿入が難しいと考えられていた軸受挿入部を対象として、自動で転がり軸受を挿入する事ができる。
【0037】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例に就いて、
図3を参照しつつ説明する。本例の場合には、クランプ本体部49aを構成する拡縮部62a、62aを径方向外方に押し拡げる際に、ピストンロッド63に必要となる推力を小さくする為に、中間筒部51aの先端寄り部分に形成した薄肉部60aの径方向に関する厚さ寸法を、上述した実施の形態の第1例の場合よりも小さくしている。この為、前記ピストンロッド63及びこのピストンロッド63の先端部に設けたカム部64を、Z軸方向に関して後方に移動させた際の、前記各拡縮部62a、62aの弾性的な復元力が小さくなる。従って、本例の場合には、これら各拡縮部62a、62aが径方向内方に変形するのを補助する為に、これら各拡縮部62a、62aの外周面に、断面部分円形状の円周方向凹溝66、66をそれぞれ形成し、これら各円周方向凹溝66、66を架け渡す様に、弾性材製のOリング67を外嵌している。これにより、このOリング67が発揮する径方向内方に向いた弾力により、前記各拡縮部62a、62aを径方向内方に変形させ易くしている。更に、前記Oリング67の外周縁部を、前記各円周方向凹溝66、66から径方向外方に突出させる事により、このOリング67の外周面を内輪21の内周面に接触させて、この内輪21の把持力を向上させている。
その他の構成及び作用効果は、前記実施の形態の第1例の場合と同様である。