【実施例】
【0034】
実施例1
表1に、本発明における本発明の連続鋳造用タンディッシュの不定形耐火物を用いたライニング方法に使用可能なアルミナ−炭化珪素質不定形耐火物を示し、表2に、比較品の内張り材を示す。
使用原料
褐色電融アルミナ:アルミナ含有量95質量%品
焼成ばん土頁岩:アルミナ含有量83質量%品
電融スピネル:アルミナ含有量71質量%品
ムライト:アルミナ含有量71質量%品
シャモット:アルミナ含有量46質量%品
仮焼アルミナ:アルミナ含有量99質量%品
炭化珪素:炭化珪素含有量95質量%品
上記アルミナ原料及び炭化珪素を耐火性原料として合計を100質量%とした。
【0035】
バインダー
アルミナセメント:アルミナ含有量71質量%品
コロイダルシリカ:濃度20質量%のアルカリ安定化品
上記アルミナセメント、コロイダルシリカまたはこれら両者を使用して耐火性原料に対して外掛け添加した。
【0036】
炭素原料
カーボンブラック:DBP吸収量29cm
3/100g品。
【0037】
その他の原料
シリカヒューム:シリカ含有量99質量%品
ボールクレー:アルミナ含有量57質量%品
カイヤナイト粒:アルミナ含有量55質量%品
トリポリリン酸ナトリウム
【0038】
混練および流動性の評価
混練は、JIS R2521に準じた試験方法により万能ミキサーを用いて実施した。水分添加量は、タップフロー値が140〜150になるように、液分の分離や粗粒の沈降が発生しない範囲で調整した。流動性の評価については、混練水分量を流動性の評価とした。ただし、本発明品10と本発明品11は、コロイダルシリカを用いた配合例である。コロイダルシリカは、濃度20質量%のものを用いているため、コロイダルシリカに含まれる水分量とフロー値を調整するための水分添加量との合計量を流動性評価のための混練水分量と見なした。混練水分量が少ないほど流動性が「良い」とし、混練水分量が5.9質量%以下を「○」、6.0質量%以上6.9質量%以下を「△」、7.0質量%以上を「×」とした。
【0039】
耐スポーリング性の評価
耐スポーリング性の評価は、並型形状(230mm×114mm×65mm)に流し込み成形したサンプルを使用し、200℃で24時間乾燥した後、電気炉にて加熱15000℃、45分間−自然冷却15分間を1サイクルとして8サイクル反復して発生した亀裂の本数を測定した。比較品1の亀裂発生本数を100として指数表示し、亀裂指数とした。亀裂指数は小さいほど亀裂の発生が少なく、耐スポーリング性に優れることを示している。評価としては、亀裂指数が90未満のものを「○」、100を超えるものを「×」、それ以外を「△」とした。
【0040】
耐食性および耐浸潤性の評価
耐食性および耐浸潤性の評価は、回転ドラム法を用いて耐スラグ性を、高周波誘導炉内張り法を用いてメタル浸食性をそれぞれ評価した:
スラグ耐食性・耐浸潤性試験
スラグ耐食性試験は、ロータリースラグ法で行った。侵食剤としてタンディッシュスラグ(CaO/SiO
2質量比=0.9)を1時間あたり1.2kg使用し、1600℃で4時間行った。侵食剤は1時間ごとに排出して新しいものと交換した。加熱方法はアーク加熱による。試験終了後に溶損深さを測定し、比較例1の溶損深さを100として指数表示して溶損指数とした。この溶損指数は、数値が小さいほど溶損量が少なく、スラグ耐食性に優れることを示している。 また、試験終了後、試料断面より浸潤深さを測定し、比較例1の溶損深さを100として指数表示して浸潤指数とした。この浸潤指数は、数値が小さいほど浸潤量が少なく耐スラグ浸潤性に優れることを示している。
【0041】
スラグ耐食性の評価は、溶損指数が45未満のものを「○」、50未満のものを「△」、50以上のものを「×」とした。また、耐スラグ浸潤性の評価は、浸潤がほぼみられず、浸潤指数が0のものを「○」、10以上のものを「×」、それ以外を「△」とした。
【0042】
メタル耐食性試験
メタル耐食性試験は、高周波誘導炉内張り法で行った。侵食剤として鋼鉄13kgを使用し、1600℃で4時間行った。試験終了後、溶損深さを測定し、比較例1の溶損深さを100として指数表示してメタル溶損指数とした。このメタル溶損指数は、数値が小さいほど溶損量が少なくメタル耐食性に優れることを示している。メタル耐食性の評価は、メタル溶損指数が110以下のものを「○」、120以下のものを「△」、120を超えるものを「×」とした。
【0043】
総合評価
流動性、耐スポーリング性、スラグ耐食性、スラグ耐浸潤性およびメタル耐食性の各評価のうち、すべてが「○」であるものを総合評価「○」一つでも×があるものを総合評価「×」、それ以外を総合評価「△」とし、総合評価が「○」ないし「△」であるものについて基準を満たしたと判断した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1に示す本発明品について以下に説明する:
本発明品1から本発明品4は、いずれについても耐スポーリング性、耐食性、耐浸潤性において良好で、必要な基準を満たしていた。
本発明品5は、本発明品1に、更に、カーボンブラックを添加した例であり、必要な基準を満たしていた。
本発明品6は、焼成ばん土頁岩、本発明品7は、電融スピネル、本発明品8は、ムライト、本発明品9は、ムライトとシャモットを組み合わせたものを、それぞれ仮焼アルミナと組み合わせて耐火原料のうちアルミナ原料として使用した例である。アルミナ原料中のアルミナ含有量が基準を満たしていれば適用可能であり、いずれの例においても特性は必要な基準を満たしていた。
本発明品10は、バインダーとしてコロイダルシリカを使用した例、本発明品11は、バインダーとしてアルミナセメントとコロイダルシリカを組み合わせて使用した例である。流動性の不足は、混練水分量を調整することによって調節した。本発明品10、本発明品11とも必要な基準を満たしていた。
本発明品12は、粗粒の多い例、本発明品13は、微粉の多い例、本発明品14は、中粒の多い例である。いずれの例とも必要な基準を満たしていた。
【0047】
次に、表3に示す比較品について以下に説明する。
比較品1は、従来から使用されているアルミナ−シリカ質キャスタブル耐火物に相当する例である。耐スポーリング性、スラグ耐食性およびスラグ耐浸潤性に劣ることが判る。
比較品2は、取鍋などで主として用いられるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に相当する例である。耐スポーリング性およびスラグ耐浸潤性に劣ることが判る。
比較品3および比較品4は、耐火原料のうち炭化珪素の割合が多すぎる例である。メタル耐食性に劣ることが判る。
比較品5および比較品6は、耐火原料のうち炭化珪素の割合が少なすぎる例である。また、比較品7は、炭化珪素不含の例である。スラグ耐食性、スラグ耐湿潤性、耐スポーリング性が低下することが判る。
比較品8は、カーボンブラックを2質量%添加した例である。粗粒の沈降により必要な流動性が得られず、また、メタル耐食性が低下することが判る。
比較品9は、耐火原料のうちアルミナ原料としてシャモットを使用した例である。アルミナ原料中のアルミナ含有量が不足しており、スラグ耐食性、スラグ耐湿潤性が低下することが判る。
【0048】
実施例2
表1の本発明品2、および表2の比較品1および2を内張り材として用いた連続鋳造用タンディッシュについて実稼働試験を行った。試験は各内張り材を適用した連続鋳造用タンディッシュの使用可能チャージ数および使用後の状況を比較することで行った。また、タンディッシュは、鉄皮と、鉄皮内側に設けたアルミナ−シリカ質れんがからなる永久張り材(厚さ65mm)及び更に内側に施工した内張り材(厚さ150mm)で構成され、稼働に際しては内張り材表面にマグネシア質コーティング材を吹き付け施工(厚さ50mm)したうえで供した。
比較品1を内張り材として適用した連続鋳造用タンディッシュは、コーティング材と内張り材の焼き付きが多くみられ、また、スラグの浸潤による変質層が内張り材稼働面側に生成していた。変質層と原質層の境界付近には構造スポーリングによる、稼働面に平行な亀裂が発生していた。また、スラグライン部において溶損がみられた。平均寿命は200チャージであった。
比較例2を内張り材として適用した連続鋳造用タンディッシュは、スラグ浸潤による変質層の生成はみられたものの、比較品1と比較してコーティング材との焼き付き、スラグライン部での溶損は軽微であった。しかし、時に大きな亀裂が発生し、地金の差し込みがみられた。平均寿命は180チャージであった。
本発明品2を内張り材として適用した連続鋳造用タンディッシュは、コーティング材との焼き付きはほとんど見られず、スラグライン部での溶損も軽微であった。さらに比較品にみられた浸潤による変質層についてもほとんど生成せず、目立った亀裂の発生もみられなかった。平均寿命も大きく改善し、300チャージであった。
このように本発明品の優位性は明らかである。