(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は、本発明の第1の実施形態に係るヒューズ素子の平面図及び
図1(a)中のB−B線に沿う断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るヒューズ素子において回路を遮断した後の状態を説明するための断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態のヒューズ素子において、基板上に設けられた電極構造を説明するための平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態のヒューズ素子において、基板上に一層目の電極上に抵抗体を印刷した状態を示す平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態のヒューズ素子において、抵抗体を覆うように絶縁ガラス層を形成した状態を示す平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施形態のヒューズ素子の製造方法において、絶縁ガラス層上に二層目の電極膜を形成した状態を示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施形態のヒューズ素子の製造方法において、オーバーコート層を形成した状態を示す平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1の実施形態のヒューズ素子の平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1の実施形態のヒューズ素子における補助金属膜の形状を説明するための部分切欠き平面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施形態のヒューズ素子において、低融点金属層が移動する形態を説明するための略図的平面図である。
【
図11】
図11(a)及び
図11(b)は、補助金属膜を有しない場合の変形例における平面図及び
図11(a)中におけるC−C線に沿う断面図である。
【
図12】
図12(a)及び
図12(b)は、
図11に示した構造において電流遮断後の状態を説明するための平面図及び
図12(a)中におけるD−D線に沿う断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第1の実施形態で用いられている、延長部を有する補助金属膜を示す平面図である。
【
図14】
図14(a)及び
図14(b)は、
図13に示した構造において補助金属膜上に低融点金属層が設けられている状態を示す平面図及び
図14(a)中におけるE−E線に沿う断面図である。
【
図15】
図15(a)及び
図15(b)は、
図14に示した低融点金属層が電流遮断動作後に移動した状態を示す平面図及び
図15(a)中におけるF−F線に沿う断面図である。
【
図16】
図16は、補助金属膜の好ましい形状を説明するための平面図である。
【
図21】
図21は、本発明の第2の実施形態に係るヒューズ素子の平面図である。
【
図23】
図23は、本発明の第2の実施形態に係るヒューズ素子において電流遮断後の状態を示す断面図であり、
図22に示した断面部分における状態を示す断面図である。
【
図24】
図24は、本発明の第2の実施形態のヒューズ素子の製造に際し、基板上に設けられた電極構造を示す平面図である。
【
図25】
図25は、第2の実施形態のヒューズ素子の製造に際し、基板上に絶縁ガラス層を形成した状態を示す模式的平面図である。
【
図26】
図26は、第2の実施形態のヒューズ素子の製造に際し、絶縁ガラス層上に抵抗体を印刷した状態を示す模式的平面図である。
【
図27】
図27は、第2の実施形態のヒューズ素子の製造方法において、オーバーコート層を形成した状態を示す平面図である。
【
図28】
図28は、低融点金属層を設けた後の低融点金属層と低融点金属層に接している樹脂層との接触状態を示す部分切欠き断面図である。
【
図29】
図29は、本発明の第3の実施形態に係るヒューズ素子の平面図である。
【
図30】
図30は、本発明の第4の実施形態に係るヒューズ素子の平面図である。
【
図31】
図31は、本発明の第5の実施形態に係るヒューズ素子の平面図である。
【
図32】
図32は、第5の実施形態のヒューズ素子の模式的正面図である。
【
図33】
図33は、第5の実施形態に係るヒューズ素子の模式的側面図である。
【
図34】
図34は、第5の実施形態のヒューズ素子において用いられるキャップの底面図である。
【
図35】
図35は、第5の実施形態のヒューズ素子からキャップを取り除いた状態を示す平面図である。
【
図36】
図36は、第5の実施形態のヒューズ素子の製造に際し、低融点金属層の上に樹脂層を設ける前の状態を示すヒューズ素子の要部の平面図である。
【
図37】
図37は、第6の実施形態に係るヒューズ素子の平面図である。
【
図38】
図38は、第6の実施形態に係るヒューズ素子の模式的正面図である。
【
図39】
図39は、第6の実施形態に係るヒューズ素子の模式的側面図である。
【
図40】
図40は、第6の実施形態に係るヒューズ素子のキャップの底面図である。
【
図41】
図41は、第6の実施形態に係るヒューズ素子からキャップを取り除いた状態を示す平面図である。
【
図42】
図42は、本発明の第7の実施形態に係るヒューズ素子の断面図である。
【
図43】
図43は、第7の実施形態のヒューズ素子の製造に際し、基板上にヒューズ電極を形成した状態を示す平面図である。
【
図44】
図44は、第7の実施形態のヒューズ素子の製造に際し、絶縁ガラス層を形成した状態を示す平面図である。
【
図45】
図45は、第7の実施形態のヒューズ素子の製造に際し、抵抗接続用電極を形成した状態を示す平面図である。
【
図46】
図46は、第7の実施形態のヒューズ素子の製造に際し、絶縁ガラス層上に抵抗体を印刷した状態を示す模式的平面図である。
【
図47】
図47は、第7の実施形態のヒューズ素子の製造に際し、オーバーコート層を形成した状態を示す平面図である。
【
図48】
図48は、第8の実施形態のヒューズ素子の製造に際し、導体配線の一部に第2の導体配線を積層した状態を示す平面図である。
【
図49】
図49は、本発明の第9の実施形態に係るヒューズ素子の製造に際し、基板上に導体配線を含む電極膜を形成した状態を示す平面図である。
【
図50】
図50は、第9の実施形態のヒューズ素子の製造に際し、絶縁ガラス層を形成した状態を示す平面図である。
【
図51】
図51は、第9の実施形態のヒューズ素子の製造に際し、抵抗接続用電極を形成した状態を示す平面図である。
【
図52】
図52は、第9の実施形態のヒューズ素子の製造に際し、抵抗体を印刷した状態を示す平面図である。
【
図53】
図53は、第9の実施形態の製造に際し、オーバーコート層を形成した状態を示す平面図である。
【
図54】
図54は、本発明の第10の実施形態に係るヒューズ素子の製造に際し、導体配線上に第2の導体配線を積層した状態を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより本発明を明らかにする。
【0025】
[第1の実施形態]
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係るヒューズ素子を示す平面図及び(a)中のB−B線に沿う断面図である。
【0026】
ヒューズ素子1は、基板2を有する。基板2は、本実施形態では、アルミナからなる。もっとも、基板2は、適宜の絶縁性材料により形成することができる。基板2は、上面2aと、下面2bと、第1,第2の端面2c,2dと、第1,第2の側面2e,2fとを有する。基板2は、矩形板状の形状を有する。もっとも、基板2の形状は、矩形板状以外の形状であってもよい。
【0027】
上記基板2の厚みについては特に限定されないが、0.2mm〜0.7mm程度とすることが好ましく、それによって、薄型化を進めることができる。
【0028】
上記基板2の上面2aの積層構造を、
図3〜
図8を参照しつつ製造方法を説明することにより明らかにする。
【0029】
まず、
図3に示すように、基板2の上面2a上に、Ag膜を成膜することにより、電極ランド3〜6を形成する。電極ランド3,4は、それぞれ、第1,第2の側面2e,2fと上面2aとのなす端縁に至るように形成されている。また、電極ランド3は、基板2内を貫通しているスルーホール電極7a,7bの上端と電気的に接続されている。同様に、電極ランド4は、スルーホール電極8a,8bの上端と電気的に接続されている。電極ランド5は、第1の端面2c側に寄せられて設けられており、第1の端面2cと上面2aとのなす端縁に至っている。電極ランド6は、第2の端面2d側に寄せられて設けられており、第2の端面2dと上面2aとのなす端縁に至るように設けられている。
【0030】
上記スルーホール電極7a,7b,8a,8bの径は、特に限定されないが、0.2mm〜0.5mm程度が望ましい。
【0031】
上記電極ランド3〜6は、導電ペーストのスクリーン印刷などの適宜の導電膜形成方法により形成され得る。また、本実施形態では、電極ランド3〜6は、Ag膜からなる。もっとも、Ag以外の他の金属または合金により形成されてもよい。
【0032】
電極ランド3〜6の厚みは特に限定されないが、5μm〜30μm程度とすることが望ましい。
【0033】
次に、
図4に示すように抵抗体11を電極ランド5,6間に跨がるように形成する。電極ランド3,4を結ぶ方向を第1の方向、電極ランド5,6を結ぶ方向を第2の方向とする。抵抗体11は第2の方向に延びている。
【0034】
上記抵抗体11は、電流が流れた際に発熱する材料により形成されている。このような材料としては、例えば、RuO
2やAgPdなどを用いることができる。また、Niを主体とし、Cr、Mn、Cu及びFeのうちの少なくとも一種を含む合金を好適に用いることができる。上記抵抗体11は、例えばスクリーン印刷により抵抗体含有ペーストを印刷することにより形成することができる。あるいは、他の適宜の膜形成方法を用いて、抵抗体11を形成することができる。
【0035】
上記抵抗体11の膜厚は特に限定されないが、5μm〜30μm程度とすることが望ましい。それによって、薄型化を図ると共に、抵抗体11の加熱による溶断動作をより一層効果的に発現させることができる。
【0036】
抵抗体11は、上記のように、電極ランド5と電極ランド6とを電気的に接続しており、上記第2の方向に延ばされている。
【0037】
次に、
図5に示すように絶縁ガラス層12を形成する。絶縁ガラス層12は、上記抵抗体11を覆うように設けられている。また、絶縁ガラス層12は、抵抗体11を覆っているだけでなく、抵抗体11が設けられている部分の外側の領域において、基板2の上面2aに密着するように設けられている。上記絶縁ガラス層12を構成する材料としては、ガラスセラミックスなどの適宜の絶縁性ガラスを用いることができる。
【0038】
絶縁ガラス層12の厚みについても特に限定されないが、5μm〜40μmが好ましい。絶縁ガラス層12の厚みがこの範囲であれば、より一層十分な絶縁性を発現すると共に、薄型化をより一層妨げ難い。
【0039】
次に、
図6に示すように、電極ランド3と電極ランド4とを結ぶように、絶縁ガラス層12上に導体配線13を設ける。本実施形態では、導体配線13はAg膜からなる。もっとも、導体配線13は、後述する低融点金属溶融液により拡散現象を生じる適宜の金属材料により形成することができる。上記導体配線13は、後述する拡散現象により溶解し、溶断部を形成する。
【0040】
導体配線13の厚みは特に限定されないが、好ましくは5μm〜50μmである。導体配線13の厚みがこの範囲内であれば、ヒューズ導体としての機能をより効果的に発現させることができる。
【0041】
より好ましくは15μm〜20μmである。なお、導体配線の厚みを厚くするには、導体ペーストを重ね塗りする方法などの方法を好適に用いることができる。
【0042】
上記導体配線13は、本体部13aを有する。本体部13aの一端側に幅広部13bが、他端側に幅広部13cが連ねられている。幅広部13b,13cは、それぞれ、電極ランド3,4に重なり合っている。幅広部13b,13cの幅方向寸法、すなわち前述した第2の方向に沿う寸法は、本体部13aの第2の方向に沿う寸法よりも大きくされている。
【0043】
他方、本体部13aにおいては、幅方向外側に延びている補助金属膜13d,13d,13e,13eが一体に設けられている。補助金属膜13d,13dは、後述する低融点金属層の実装を補助し、かつ低融点金属の溶融液を第2の方向に導くために設けられている。補助金属膜13e,13eも同様の機能を果たす。
【0044】
補助金属膜13d,13dは、基板2の中心よりも第1の電極ランド3側に寄せられて設けられている。補助金属膜13e,13eは基板2の中心よりも第2の電極ランド4側に寄せて設けられている。
【0045】
また、本体部13a中央においては、接続部13fが連ねられている。接続部13fは、本体部13aから電極ランド5に至るように設けられている。それによって、本体部13aが、電極ランド5に電気的に接続されている。上記接続部13fは第2の方向に延びているが、接続部13fと本体部13aを介して反対側に金属膜14が設けられている。
【0046】
金属膜14は設けられずともよいが、接続部13fとは反対側に金属膜14を設けることにより、抵抗ばらつきを低減することができると共に、均熱性を高めることができる。
【0047】
上記補助金属膜13d,13d,13e,13e及び接続部13fは、導体配線13に一体的に設けられており、同じ材料からなる。もっとも、補助金属膜13d,13d,13e,13e及び接続部13fは、導体配線13の本体部13aと別の金属材料で形成されてもよい。好ましくは、本実施形態のように導体配線13を構成する金属材料より一体的に補助金属膜13d,13d,13e,13e等を形成することが望ましい。
【0048】
また、本実施形態では、本体部13aの幅方向両側に補助金属膜13d,13dが設けられていたが、一方側にのみ補助金属膜13dが設けられていてもよい。補助金属膜13e,13eについても同様である。もっとも、好ましくは、後述する動作説明から明らかなように、幅方向両側に補助金属膜13d,13d,13e,13eが設けられていることが望ましい。
【0049】
次に、
図7に示すように、オーバーコート層15を形成する。オーバーコート層15は、適宜のガラス材料やガラスセラミックスなどにより形成することができる。また、液晶ポリマー等の高耐熱樹脂を用いてもよい。オーバーコート層15は、後述する低融点金属の溶融物が流れたり、飛散することを防止するために設けられている。
【0050】
上記オーバーコート層15は、矩形枠状部15aを有する。矩形枠状部15aは、第1,第2の側面2e,2fに沿うように延びている部分と、第1の方向に延びている一対の部分とを有する。そして、矩形枠状部15aの中央において、第2の方向に延びる連結部15bが設けられている。連結部15bは、前述した接続部13f及び金属膜14に重なり合うように設けられている。オーバーコート層の形状は楕円形等でもよく、枠状部は一部が開放された形状でも構わない。
【0051】
上記オーバーコート層15の厚みは特に限定されないが、5μm〜40μmの範囲とすることが望ましい。
【0052】
次に、
図8に示すように、樹脂層19を形成する。樹脂層19は、本実施形態では、ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性熱可塑性樹脂からなる。もっとも、樹脂層19は、適宜の合成樹脂を用いて形成することができる。
【0053】
好ましくは、低融点金属が溶融するよりも低い温度で溶融し、低融点金属の融液がヒューズ導体を溶解させる近傍温度で気化し、ガスを発生させる材料が望ましい。その場合には、発生したガスにより、低融点金属の溶融液を攪拌し、流動性を高めることができる。従って、樹脂層19は熱可塑性樹脂からなることが好ましい。
【0054】
より好ましくは、結晶性熱可塑性樹脂が望ましい。結晶性熱可塑性樹脂は、フラックスとは異なり、リフロー時の温度で気化しない。フラックスの場合はリフロー時の温度などで気化し、劣化するおそれがある。ヒューズ素子1の動作温度は400℃程度と比較的高い。この場合、フラックスでは、このような動作温度に達するよりもかなり低い温度で劣化してしまう。従って、従来の純BiもしくはBi基合金からなる低融点金属層が溶融し、導体配線を溶解する温度では、十分な酸化物除去効果や攪拌効果が得られない。
【0055】
これに対して、結晶性熱可塑性樹脂では、融点が高いため、純BiもしくはBi基合金が溶融し、導体配線を溶解する温度において気化し、発生したガスにより溶融物を攪拌する。よって、流動性を効果的に高めることができる。
【0056】
上記のような結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレンなどを挙げることができる。
【0057】
上記樹脂層19は、前述したオーバーコート層15の連結部15b上を通り、第1の方向において電極ランド3側及び電極ランド4側に延ばされている。すなわち、樹脂層19は、導体配線13の本体部13aを覆うように設けられている。もっとも、樹脂層19は、補助金属膜13d,13d,13e,13eの全体を覆うようには設けられていない。すなわち、補助金属膜13d,13d,13e,13eの少なくとも一部が露出されるように樹脂層19が設けられている。
【0058】
上記樹脂層19の厚みは、前述した樹脂層19の作用効果をより効果的に発現する上では、10μm以上であることが望ましく、より好ましくは20μm〜60μmの範囲である。
【0059】
樹脂層19の平面形状は特に限定されず、またその平面積についても特に限定されない。
【0060】
次に、
図1(a)に示す低融点金属層20,21を設ける。低融点金属層20,21は、純BiもしくはBiを80重量%以上含むBi基合金からなる。低融点金属層20の形成に際しては、ペースト状の純BiもしくはBi基合金を印刷し、リフロー法により加熱する。この加熱温度は290℃程度である。そのため、下方の樹脂層19がリフロー時に溶融する。従って、低融点金属層20の下方に位置している樹脂層19が溶融し、低融点金属層20の両側に移動する。よって、
図1(b)に示すように、低融点金属層20の下方に樹脂層19は存在しない。言い換えれば、低融点金属層20は、下方の導体配線13に直接接触することとなる。また、樹脂層19は、低融点金属層20の側面に接触していることになる。
【0061】
また、低融点金属層20,21の厚みについても特に限定されないが、低融点金属層20,21による溶断動作をより効果的に発現させるには、0.07mm〜0.3mmの範囲が好ましい。
【0062】
上記のようにして、
図1(a)及び(b)に示したヒューズ素子1の基板2上の構造が形成される。
【0063】
図1(b)に示すように、電極ランド3,4は、引き出し部22,22に連ねられている。引き出し部22,22は、基板2の側面2e,2fを経由して下面2bに至っている。なお、前述したスルーホール電極7a,7b及び8a,8bは、電極ランド3,4と引き出し部22,22の下面に至っている部分とを電気的に接続するように設けられている。
【0064】
引き出し部22,22やスルーホール電極7a,7b,8a,8bは、Agなどの適宜の導電性材料により形成することができる。
【0065】
上記のように、ヒューズ素子1では、電極ランド3と電極ランド4との間に導体配線13が接続されている。そして、導体配線13に接触するように低融点金属層20,21が設けられている。
【0066】
他方、電極ランド5,6間に前述した抵抗体11が接続されている。電極ランド5は、導体配線13に電気的に接続されている。従って、導体配線13に直列に抵抗体11が電気的に接続されている。
【0067】
上記ヒューズ素子1による電流遮断動作を説明する。
【0068】
ヒューズ素子1の電極ランド3と電極ランド4との間に過電流が流れると、導体配線13が発熱する。この発熱により、低融点金属層20,21が溶融する。この低融点金属層20,21が溶融すると、低融点金属層20,21の溶融液に接触している導体配線部分が拡散を生じる。そのため、
図2に示すように溶断部X,Xが形成され、導体配線13による導通が遮断される。このようにして、過電流から電子回路を保護することができる。
【0069】
他方、抵抗体11に電流を流すオン状態と、流さないオフ状態とをとり得るFETなどのスイッチング素子を上記抵抗体11に接続しておく。そして、電子回路に異常が生じた場合を検出する検出素子と、上記スイッチング素子とを電気的に接続する。異常が起こった場合には、検出素子からの信号により上記スイッチング素子がオン状態となるように、スイッチング素子を検出素子に接続しておく。この構成によれば、電子回路に異常が生じた場合には、スイッチング素子がオン状態とされ、抵抗体11に電流が流れる。抵抗体11は通電されると発熱する。
【0070】
他方、抵抗体11の熱を受けるように抵抗体11は上記低融点金属層20,21に熱結合するように配置されている。従って、抵抗体11が発熱すると、その熱により導体配線13を溶断する。それによって、溶断部が形成され、電流が遮断されることになる。
【0071】
すなわち、ヒューズ素子1は、上記2種類の動作モードで電流を遮断することを可能とする。もっとも、本発明においては、抵抗体11は設けられずともよく、上記導体配線13及び低融点金属層20,21を用いた一方の保護動作のみを果たすヒューズ素子であってもよい。
【0072】
ヒューズ素子1の特徴は、純BiもしくはBiを80重量%以上含むBi基合金を低融点金属層20,21に用いたことにある。そのため、拡散により溶断部を形成して確実に電流を遮断することができるだけでなく、リフロー時の温度により低融点金属層20,21が溶融し難い。従って、低融点金属層を用いたヒューズ素子1において、溶断特性の変化を効果的に防ぐことができると共に、リフローによる表面実装に適したヒューズ素子1を提供することができる。
【0073】
さらに、上記実施形態のヒューズ素子1では、上記純BiもしくはBiを80重量%以上含むBi基合金を用いた低融点金属層20,21に接触するように上記樹脂層19が設けられているため、樹脂層19の気化により生じたガスにより低融点金属層の溶融液が攪拌される。よって、低融点金属層溶融液が速やかに移動し、溶断部を確実に形成する。よって、より一層確実に電流を遮断することが可能とされている。
【0074】
加えて、本実施形態では上記補助金属膜13d,13d,13e,13eが設けられているため、低融点金属層の溶融物がより確実に溶断部を形成するように移動する。これを、
図9〜
図15を参照してより詳細に説明する。
【0075】
図9は、上記実施形態における導体配線13に連ねられた補助金属膜13d,13d,13e,13eを示す部分切欠き平面図である。ここで、補助金属膜13dの長さをL、幅をWとする。ここで、長さLは前述した第2の方向に沿う寸法であり、幅Wは前述した第1の方向に沿う寸法である。
【0076】
低融点金属層20,21は
図1(a)に示すように、両側の補助金属膜13d,13d間及び補助金属膜13e,13e間にそれぞれ延びるように設けられることになる。従って、
図10に実線で示すように、第2の方向に延びる低融点金属層20,21が形成されることになる。
【0077】
他方、過電流が流れた際に上記低融点金属層20,21が溶融すると、破線で示すように、低融点金属層20,21が移動する。言い換えれば、低融点金属層20はW1方向に、低融点金属層21はW2方向に、その中央部が移動する。
【0078】
これは、以下の理由による。保護動作が果たされる場合、低融点金属層20,21で囲まれている中央部分が最も高温になる。他方、中央部分から遠ざかるにつれて温度は低くなる。そのため、低融点金属層20,21は、中央部分に面している側から溶融する。そして、中央部分に面している側から拡散が生じる。そのため、拡散は、W1方向及びW2方向に沿って進行することとなる。
【0079】
本実施形態では、上記補助金属膜13d,13d,13e,13eが設けられているため、低融点金属層20,21が、第2の方向に延びるようにかつ導体配線13の両側に至るように確実に設けられている。従って、
図10の破線で示すように低融点金属層20,21を速やかに移動させることができる。それによって拡散による溶断部の形成が確実に行われ得る。これを、補助金属膜が設けられていない構成と対比して説明する。
【0080】
図11(a)及び(b)は、補助金属膜を有しない変形例における導体配線23を示す平面図である。導体配線23は、補助金属膜を有せず、導体配線23の中央に低融点金属層24が設けられている。なお、導体配線23の第1の方向両側の端部は第2の方向に延ばされているが、これらは前述した電極ランド3,4に重なり合う部分であり、補助金属膜を形成している部分ではない。
【0081】
図11(b)に示すように、低融点金属層24は、導体配線23の中央において盛り上がるように設けられている。
【0082】
導体配線23に過電流が流れると、
図12(a)において破線で示す位置から実線で示す位置に低融点金属層24の溶融液が移動し、拡散が進行する。すなわち、
図12(b)に示すように、導体配線23の中央においては低融点金属層が存在しないことになる。よって、溶融した低融点金属層24は第1の方向中心から外側に向かって移動し、導体配線23の一部が拡散で溶断することとなる。
【0083】
しかしながら、
図12(b)の矢印X1で示す第2の方向両端部分では、拡散が不十分になりやすい。従って、この矢印X1,X1で示す部分において導体配線23を構成している金属部分が残存し、電流が遮断しないおそれがある。なお、
図12(b)の矢印X1,X1で示す端面近傍部分はハッチングから明らかなように金属部分が残存している部分である。
【0084】
これに対して
図13に示す導体配線13では、上記実施形態に従って補助金属膜13d,13dが設けられている。ここでは、理解を容易とするために、上記実施形態とは若干形状を異ならせ、一対の補助金属膜13d,13dのみが導体配線13に設けられている構造とする。この場合には、
図14(a)及び(b)に示すように、両側の補助金属膜13d,13dに跨がるように、低融点金属層20が設けられている。そして、過電流が流れ、拡散が生じると、
図15(a)及び(b)に示すように、低融点金属層20が中央側から第1の方向において外側に移動することとなる。
【0085】
図15(b)に示すように、中央部分においては、導体配線13が存在しない溶断部X2が確実に形成される。特に、両側に補助金属膜13d,13dが設けられているため、すなわち拡散が、導体配線13の幅方向両側すなわち第2の方向の両端においても確実に進行し、溶断部を確実に形成することができる。
【0086】
よって、上記実施形態では、上記補助金属膜13d,13d,13e,13eの存在により、拡散による溶断部の形成をより一層確実に果たすことができる。
【0087】
なお、上記補助金属膜による溶断部の形成をより確実に行うには、上記補助金属膜の形状において、
図16に示す補助金属膜13dを例にとると、導体配線13の幅Dよりも補助金属膜13d,13dを含めた幅方向寸法Cを長くし、C/Dを1.05以上とすることが好ましい。より好ましくは1.20以上とすることが好ましい。
【0088】
また、上記補助金属膜13dの第1の方向に沿う寸法Bすなわち補助金属膜13dの幅Bと、上記導体配線13の第2の方向に沿う寸法である幅Dとの比であるB/Dを0.3以上とすることが望ましく、より望ましくは0.5以上とすることが望ましい。それによって、純BiもしくはBi基合金実装形状の安定化及び拡散による遮断動作の確実性をより一層高めることができる。また、遮断動作後の絶縁抵抗を確保することも可能となる。また、幅Bが長くなると、すなわちB/Dの比が0.3以上になると、低融点金属層を確実に補助金属膜13d,13d間に至るように形成することができる。
【0089】
上記のように、比C/D及び比B/Dを上記好ましい範囲とした場合にこのような結果を得られることを、下記の実験例に基づき説明する。
【0090】
表1は、補助金金属膜13d,13dにおける上記寸法C及びDを下記の表1に示すように添加させた場合の過電流通電時の溶断部形成結果を示す。表1において、30A通電時溶断数とは、30Aの電流をヒューズ素子に通電し、1分以内に電流が遮断されたサンプルの数を示す。
【0091】
表1の評価記号の×は遮断率が50%以下、△は50%を超え、80%以下、○は100%であることを示す。
【0093】
表1から明らかなように、C/Dの比が1.05以上であれば、遮断率が60〜100%と高く、1.20以上では、遮断率が100%であることがわかる。
【0094】
また、
図16に示した寸法B及びDを下記の表2に示すように変更してなる各ヒューズ素子について、上記と同様にして、30Aの電流を通電し、溶断試験を行った。結果を下記の表2に示す。
【0095】
表2における評価記号の×は、遮断率が70%以下であることを、△は70%を超え、90%以下であることを、○は100%であることを示す。
【0097】
表2から明らかなように、B/Dが0.3以上であれば、遮断率が90%以上であり、0.5以上であれば100%となることがわかる。
【0098】
なお、上記実施形態では、第2の方向において導体配線13から外側に突出する補助金属膜13d,13d,13e,13eを示したが、この補助金属膜の形状は特に限定されない。
【0099】
例えば、
図17に示す補助金属膜13hを用いてもよい。補助金属膜13hは、導体配線13の側辺から外側に延びる相対的に幅が細い幅細部と、幅細部の先端に設けられた太幅部とを有する。また、導体配線13には、上記補助金属膜13hが設けられている部分に隣接して切欠き13g,13gが設けられている。この切欠き13g,13gを設けることにより、導体配線13の幅寸法D′が他の導体配線部分よりも狭くされている部分が設けられている。それによって、切欠き13g,13g間に位置している導体配線部分における溶断をより確実に行わせることができる。
【0100】
また、
図18に示すように、導体配線13と分離して補助金属膜13i,13iを設けてもよい。
図19に示すように、導体配線13の一方側の補助金属膜13jと、他方側の補助金属膜13kの形状を非対称としてもよい。また、
図20に示すように、導体配線13に連なっている補助金属膜13l,13mを、矩形以外の平面形状としてもよい。ここでは、補助金属膜13l,13mの外周縁が曲線で構成されている。このように、補助金属膜の形状は特に限定されない。
【0101】
なお、第1の実施形態では、上記抵抗体11が用いられていたが、抵抗体11に代えて、電流が流れた際に発熱する適宜の発熱素子を用いてもよい。このような発熱素子としては、例えば、電流が流れた際に発熱するICや、様々な電子部品素子を用いることができる。また、抵抗体11は、上記のように印刷により形成された抵抗膜である必要も必ずしもない。
【0102】
[第2の実施形態]
図21は、本発明の第2の実施形態に係るヒューズ素子の平面図であり、
図22は、
図21中のG−G線に沿う断面図である。
【0103】
ヒューズ素子31は、基板32を有する。基板32は、アルミナなどの絶縁性材料からなる。基板32は矩形板状の形状を有する。この基板32の上面32a上の積層構造を、
図24〜
図27を参照しつつ製造方法を説明することにより明らかにする。
【0104】
まず、
図24に示すように、基板32の上面32a上に、Ag膜などの金属膜を成膜することにより、導体配線33と、電極ランド34とを形成する。導体配線33は、基板32の側面32eと側面32fとを結ぶ方向に延ばされている。第1の端面32c側に電極ランド34が設けられている。他方、導体配線33には、上記電極ランド34が設けられている側とは反対側に突出するように突出部35が連ねられている。突出部35の先端が接続部35aである。接続部35aは、第2の端面32dに近い側に位置している。突出部35は導体配線33と同じ材料により同一工程で形成されている。
【0105】
なお、上記電極ランド34は、基板32の第1の端面32cを経て下面32bに至るように形成されている。
【0106】
また、導体配線33の一端は、側面32eを経て、下面32bに至るように設けられている。導体配線33の他方端も、同様に側面32fを経て下面32bに至るように形成されている。この導体配線33が下面32bに至っている構造は、
図22の断面図に示されている。
【0107】
次に、
図25に示すように、上記導体配線33の長さ方向中央を横切るように、絶縁ガラス層36を形成する。絶縁ガラス層36は、
図5に示した絶縁ガラス層12と同様の材料からなる。ここでは、絶縁ガラス層36は、電極ランド34上から、突出部35の先端の矩形の接続部35aに至るように設けられている。
【0108】
次に、
図26に示すように、絶縁ガラス層36上に、発熱素子としての抵抗体37を設ける。抵抗体37の形成は、第1の実施形態の抵抗体11と同様にして行い得る。
【0109】
抵抗体37は、絶縁ガラス層36よりも細幅に形成されている。絶縁ガラス層36によって、導体配線33と抵抗体37との電気的絶縁が図られている。本実施形態では、基板32の上面32a上において、上記導体配線33、絶縁ガラス層36及び抵抗体37が下から順にこの順序で積層されていることになる。
【0110】
上記抵抗体37の一端が、電極ランド34に接合されている。抵抗体37の他端が、接続部35aに接合されている。従って、電極ランド34と接続部35aとの間に抵抗体37が接続されていることになる。また、抵抗体37の上記他端が、導体配線33に電気的に接続されていることになる。
【0111】
本実施形態のヒューズ素子31では、電極ランド34と、導体配線33の一方端及び他方端が外部と電気的に接続される端子となる。すなわち、3端子型のヒューズ素子31が構成されている。
【0112】
次に、
図27に示すように、オーバーコート層38を形成する。オーバーコート層38は、第1の実施形態におけるオーバーコート層15と同じような材料で形成することができる。オーバーコート層38は、矩形枠状部38aと、仕切り部38bとを有する。仕切り部38bは、矩形枠状部38aの開口中央を上記抵抗体37が延びる方向に延びている。それによって、開口が開口部38c,38dと区画されている。上記仕切り部38bは、下方の抵抗体37を被覆する大きさとされている。従って、
図27に示すように、平面視した場合、仕切り部38bにより抵抗体37が隠されている。
【0113】
次に、
図21に示す樹脂層39a〜39cの元となる樹脂層を形成する。すなわち、第1の実施形態と同様に、矩形の平面形状の樹脂層を形成する。この矩形の形状の樹脂層とは、
図21の樹脂層39aから樹脂層39cまでを覆う領域を占めている。樹脂層39a〜39cは、ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性熱可塑性樹脂からなる。もっとも、樹脂層39a〜39cは、樹脂層19と同様に適宜の合成樹脂を用いて形成し得る。
【0114】
上記樹脂層を形成した後に、第1の実施形態の場合と同様に、低融点金属層40,41を形成する。低融点金属層40,41は、第1の実施形態の低融点金属層20,21と同様に純BiもしくはBiを80重量%以上含むBi基合金からなる。
【0115】
低融点金属層40,41の形成に際しては、ペースト状の金属もしくは上記合金を印刷し、リフロー法により加熱する。この加熱温度は290℃程度である。そして、低融点金属層40,41は前述した樹脂層上に設けられる。そのため、低融点金属層40,41の下方の樹脂層部分がリフロー時に溶融する。よって、低融点金属層40,41の下方に位置している樹脂層が溶融し、低融点金属層40,41の両側に位置する。このようにして、樹脂層39a〜39cが形成されることになる。
【0116】
なお、
図28は、上記のようにして形成された樹脂層39aと樹脂層39bとの間に低融点金属層40が位置している部分を拡大して示す。
図28に示すように、低融点金属層40により樹脂層が押し退けられた結果、樹脂層39a,39bが低融点金属層40の両側に形成されている。樹脂層39a,39bは、低融点金属層40の側面に樹脂層の一部が這い上がったフィレット状の形状となっている。よって、樹脂層39a,39bは、低融点金属層40の側面に接触している。
【0117】
上記のようにして、第2の実施形態のヒューズ素子31を得ることができる。
【0118】
ヒューズ素子31の製造に際しては、外部との接続のための電極ランド34と、ヒューズ導体としての導体配線33とを、同じ工程において同じ材料により形成することができる。従って、第1の実施形態に比べて、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0119】
ヒューズ素子31においても、第1の実施形態のヒューズ素子1と同様にして電流が遮断される。すなわち、導体配線33に過電流が流れると、導体配線33が発熱する。この発熱により、低融点金属層40,41が溶融する。その結果、低融点金属層40,41の融液に、導体配線部分が拡散する。そのため、
図23に示すように、溶断部X1, X1が形成される。従って、導体配線33による導通が遮断される。
【0120】
他方、抵抗体37に電流が流れた場合には、抵抗体37が発熱する。本実施形態では、抵抗体37の側方に低融点金属層40,41が配置されている。抵抗体37の下方には、導体配線33が存在する。熱伝導性が高い導体配線33が、低融点金属層40,41に大きな面積で接触している。他方、絶縁ガラス層36の厚みはさほど厚くない。従って、抵抗体37で発生した熱が、熱伝導性の高い導体配線33に速やかに伝わり、低融点金属層40,41にさらに伝わる。従って、低融点金属層40,41が溶融し、上記と同様の溶断部を形成することとなる。
【0121】
よって、本実施形態のヒューズ素子31においても、第1の実施形態のヒューズ素子1と同様に、2種類の動作モードで電流を遮断することができる。
【0122】
また、樹脂層39a〜39cは低融点金属層40,41に接触されている。従って、樹脂層39a〜39cの気化により生じたガスにより、低融点金属層40,41の溶融液が攪拌される。よって、溶断部を、より速やかにかつ確実に形成することができる。
【0123】
また、本実施形態では、上記のように低融点金属層40,41が抵抗体37と平面視において重なり合っていない。従って、第1の実施形態に比べて、薄型化を図ることができる。これは、低融点金属層40,41の下方には、導体配線33が存在するだけであり、絶縁ガラス層及び抵抗体が存在しないためである。
【0124】
なお、上記抵抗体37は、基板32上において、上記導体配線33の一部及び絶縁ガラス層36を介して設けられている。すなわち基板32上に間接的に、抵抗体37が設けられていることになる。
【0125】
[第3の実施形態]
図29は、本発明の第3の実施形態に係るヒューズ素子の平面図である。本実施形態のヒューズ素子51は、第1の実施形態の変形例に相当する。すなわち、低融点金属層20A及び21Aは、それぞれ、発熱中心側に延びる突出部20a,21aを有する。それによって、第1の実施形態のヒューズ素子1に比べて遮断動作を早めることができる。
【0126】
なお、突出部20a,21aが設けられていることを除いては、ヒューズ素子51はヒューズ素子1と同様に構成されている。従って、第1の実施形態の同様の作用効果を得ることができる。
【0127】
[第4の実施形態]
図30は、第4の実施形態に係るヒューズ素子52を示す平面図である。第4の実施形態のヒューズ素子52も、第1の実施形態のヒューズ素子1の変形例に相当する。ここでは、低融点金属層20B,21Bは、露出している導体配線の全領域を覆うように拡げられている。すなわち、
図29に示した突出部20a,21aとは反対側に、さらに延長部20b,21bが設けられている。なお、低融点金属層20B,21Bに用いられているBiの融液の表面張力により、Biが、露出している導体配線の上面全体に濡れ拡がらない可能性もある。従って、下方の導体配線の一部が露出していてもよい。
【0128】
第4の実施形態のヒューズ素子52では、上記のように、低融点金属層20B,21Bの面積が大きくされているため、低融点金属層20B,21Bの厚みを薄くすることができる。従って、低背化を進めることができる。ヒューズ素子52は、その他の点においては、第1の実施形態及び第3の実施形態と同様であるため、第1,第3の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0129】
[第5の実施形態及び第6の実施形態]
以下において、キャップが取り付けられた構造を有する実施形態を説明する。
【0130】
図31は、本発明の第5の実施形態に係るヒューズ素子の平面図である。ヒューズ素子61では、ヒューズ素子本体62上にキャップ63が固定されている。ヒューズ素子本体62は、前述した第2の実施形態のヒューズ素子31と同様に構成されている。すなわち、基板62A上に、
図35に示す積層構造が形成されている。
図35において、低融点金属層65,66が樹脂層68と接触するように設けられている。また、上記低融点金属層65,66は、オーバーコート層67の開口部内に配置されている。
図35では、明瞭ではないが、
図36に樹脂層68、低融点金属層65及び仕切り部38bを取り除いた状態を示すように、下方には、第2の実施形態と同様に、導体配線33、絶縁ガラス層36及び抵抗体37が、下から順にこの順序で積層されている。
【0131】
従って、ヒューズ素子本体62は、第2の実施形態のヒューズ素子31と同様に動作し得る。
【0132】
本実施形態の特徴は、上記ヒューズ素子本体62の上面に
図31に示したキャップ63が固定されていることにある。このキャップ63により、上記積層部分を覆うことにより、上面が封止されたパッケージ構造のヒューズ素子61を提供することができる。
【0133】
図32は、このヒューズ素子61の模式的正面図であり、
図33は模式的側面図である。なお、
図34は上記キャップ63の底面図である。
【0134】
図34に示すように、キャップ63は略矩形の形状を有し、中央に凹部63aが設けられている。この凹部63aが、前述したヒューズ素子本体62の要部の上方に被さる部分となる。すなわち、凹部63aは、ヒューズ素子本体62の低融点金属層が設けられている部分等を収納するための部分である。
【0135】
上記凹部63aの外周は矩形枠状の側壁部64である。この矩形枠状の側壁部64は、キャップ63の天面から下方に延びるように設けられている。もっとも、側壁部64の下方の端面は、3種類の高さ位置を有している。
図34において、側壁の各辺の中央部64a〜64dは、高さ位置が最も高い。これは、外部と接続するための電極等を外部と電気的に接続するためのスペースを設けるためである。他方、中央部64a〜64dの両側の端面部分64e〜64lは、上記中央部64a〜64dよりも下方に位置している。さらに、上記側壁の端面のうちコーナー部64m〜64pは、その高さ位置が最も低くなっている。そして、図示しない接着剤を用いて、上記キャップ63がヒューズ素子本体62の上面に接合されている。
【0136】
なお、上記接着剤としては、エポキシ系接着剤などの適宜の接着剤を用いることができる。また、キャップ63自体は、合成樹脂や金属などの適宜の材料により形成することができる。
【0137】
他方、キャップ63の上面では、
図31に示す凹部63b,63cが設けられている。凹部63b,63cは対角線方向の一対のコーナー部に設けられている。凹部63b,63cを設けることにより、樹脂成型しやすくなる。
【0138】
上記ヒューズ素子61の寸法は特に限定されないが、平面視において縦2.5mm×横3.2mm程度の寸法とされ得る。または、厚みについては、1.0mm程度とし得る。従って、かなり小型のヒューズ素子61を提供し得ることがわかる。
【0139】
図37は、キャップ付きのヒューズ素子である第6の実施形態のヒューズ素子を示す平面図であり、
図38はその模式的正面図であり、
図39はその模式的側面図である。本実施形態のヒューズ素子71においても、ヒューズ素子本体72の上面にキャップ73が接合されている。ヒューズ素子本体72は、基板72A上に第2の実施形態と同様の積層構造を有する。すなわち、
図41に示すように、オーバーコート層77で囲まれた開口部内に、樹脂層74と、低融点金属層75,76とが配置されている。その下方には、下から順に、導体配線、絶縁ガラス層及び抵抗体がこの順序で積層されている。
【0140】
本実施形態においても、上記ヒューズ素子本体72上に、キャップ63と同様のキャップ73が固定されている。
図40は、キャップ73の底面図である。キャップ73はキャップ63とほぼ同様に構成されている。従って、相当する部分については同一の参照番号を付することによりその詳細な説明は省略する。
【0141】
もっとも、本実施形態においては、キャップ73の寸法がキャップ63と異なっている。すなわち、本実施形態のヒューズ素子71は、縦3.0mm×横4.0mmの略矩形の平面形状を有する。そして、厚みは1.0mm程度とされている。本実施形態においても、第5の実施形態と同様に、小型であり、特に薄型のヒューズ素子を提供し得ることがわかる。
【0142】
上記キャップ63,73の厚みは、特に限定されないが、0.6mm以下とすることが好ましい。それによって、低背化を進めることができる。
【0143】
図42は、本発明の第7の実施形態に係るヒューズ素子の正面断面図である。ヒューズ素子81の構造を、
図43〜
図47を参照しつつ、該ヒューズ素子の製造方法を説明することによりその構造を明らかにする。ヒューズ素子41は、第6の実施形態のように、縦3.0mm×横4.0mmの略矩形の平面形状を有する。なお、この縦及び横の寸法は特に限定されるものではない。
【0144】
まず、
図43に示すように、基板42上に、導体配線33Aを形成する。この導体配線33Aは、
図24に示した導体配線33と同様の形状を有する。すなわち、接続部35aを有する突出部35が導体配線33Aと一体に形成されている。また突出部35とは反対側の側縁から側方に突出するように補助金属膜33aが導体配線33Aと一体に設けられている。
【0145】
上記導体配線33A、突出部35及び補助金属膜33aは、Agなどの適宜の金属材料により形成することができる。
【0146】
次に、
図44に示すように、接続部35aの一部を露出させるように、突出部35と補助金属膜33aを覆うように、かつ導体配線33を横切るように、絶縁ガラス層36を形成する。
【0147】
しかる後、
図45に示すように、接続用電極43a,43bを印刷する。接続用電極43a,43bは、後述する抵抗体に電気的に接続される電極である。接続用電極43a,43bは、前述した導体配線33Aと同様の材料で形成することができる。
【0148】
次に、
図46に示すように、抵抗体37を絶縁ガラス層36上に印刷する。抵抗体37は、前述した接続用電極43aと、接続用電極43bとに電気的に接続されるように形成される。
【0149】
しかる後、
図47に示すように、オーバーコート層38を形成する。
【0150】
次に、
図42に示すように、樹脂層45及び低融点金属層46を第1の実施形態と同様に形成する。
【0151】
上記各工程によって、第7の実施形態のヒューズ素子81を得ることができる。
図42に示すように、ヒューズ素子81では、抵抗体37が延びる方向において、抵抗体37の下方には、導体配線33A及び接続用電極43a,43bが存在する。従って、金属が抵抗体37のほぼ全領域に拡散する。例えば、導体配線33A、接続用電極43a,43bがAgからなる場合、Agが抵抗体37の長さ方向全長にわたり均一に拡散することとなる。従って、抵抗体37において、特に抵抗が高い部分において発熱が集中するといった問題が生じ難い。よって、抵抗体37の耐電力特性の悪化が生じ難い。
【0152】
図48は、本発明の第8の実施形態のヒューズ素子の製造方法を説明するための模式的平面図である。第8の実施形態は、第7の実施形態の変形例に相当する。すなわち、
図43に示したように、基板42上に、導体配線33A、突出部35及び補助金属膜33aを形成した後に、
図48に示すように、導体配線33Aの中央に第2の導体配線33Bを積層する。この第2の導体配線33Bは、導体配線33Aのヒューズとして機能する導体部分上に設けられている。
【0153】
第2の導体配線33Bは、導体配線33Aと同じ金属により形成されてもよく、他の金属により形成されてもよい。好ましくは、第2の導体配線33Bは、導体配線33Aと同じ材料からなる。
【0154】
第2の導体配線33Bを積層することにより、ヒューズ素子としての定格電流を高めることができる。
【0155】
図49〜
図53は、第9の実施形態のヒューズ素子の製造方法を説明するための各平面図であり、第7の実施形態において示した
図43〜
図47に相当する図である。第9の実施形態は、縦2.5mm×横3.2mm程度の寸法を有するヒューズ素子である。すなわち、第9の実施形態では、前述したヒューズ素子61と同程度の寸法のヒューズ素子が形成される。従って、基板62A上に、ヒューズ素子61の場合と同様に、導体配線33Cが形成される。もっとも、本実施形態においても、第7の実施形態のヒューズ素子81の場合と同様に、導体配線33Cと一体に、突出部35及び補助金属膜33aが形成されている。突出部35の先端は、接続部35aとされている。
【0156】
次に、
図50に示すように、基板62A上において、絶縁ガラス層36を形成する。次に、
図51に示すように、絶縁ガラス層の一端を覆うように接続用電極45aを形成する。また、他端においても、接続用電極45bを形成する。
【0157】
しかる後、
図52に示すように、接続用電極45a,45b間に接続されるように、かつ絶縁ガラス層上に、抵抗体37を印刷する。しかる後、
図53に示すように、オーバーコート層38を形成する。しかる後、第7の実施形態の場合と同様に、樹脂層及び低融点金属層を形成する。このようにして、第9の実施形態のヒューズ素子が得られる。
【0158】
第9の実施形態で得られるヒューズ素子は、上記寸法及び形状の基板62Aを用いたことを除いては、ヒューズ素子81とほぼ同様の工程で形成される。第9の実施形態においても、ヒューズ素子81の場合と同様に、抵抗体37の全長にわたり、金属の拡散度合が均一となる。従って、発熱集中が生じ難く、抵抗体の耐電力性が悪化し難い。
【0159】
図54は、第10の実施形態の製造工程を説明するための平面図である。第10の実施形態は、第9の実施形態の変形例に相当する。すなわち、
図54に示すように、導体配線33C上に、第2の導体配線33Dを形成する。第10の実施形態はその他の点については第9の実施形態と同様である。第10の実施形態では、第8の実施形態と同様に、第2の導体配線33Dを有するため、ヒューズ素子としての定格電流を高めることができる。