(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動側案内斜面と前記被駆動側案内斜面とのうちの一方の案内斜面の内径側部分に、傾斜摺接部が設けられており、該一方の案内斜面の外径側部分に、該傾斜摺接部よりも軸方向に凹んだ傾斜凹部が設けられており、前記先端突き合わせ部が、該傾斜摺接部よりも径方向外側に設けられている、請求項1に記載のカム装置。
前記杆状部材の周囲で、前記駆動側カムまたは該駆動側カムと同期して回転する部材と、前記杆状部材の軸方向に関して対向する位置に設けられた回転しない部材との間に、スラストベアリングが設けられている、請求項5に記載のステアリングホイールの位置調節装置。
【背景技術】
【0002】
自動車用ステアリング装置は、
図8に示すように構成され、ステアリングホイール1の回転がステアリングギヤユニット2の入力軸3に伝達され、入力軸3の回転に伴って左右1対のタイロッド4が押し引きされることにより、前車輪に舵角が付与される。ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト5の後端部に支持固定されており、ステアリングシャフト5は、円筒状のステアリングコラム6を軸方向に挿通した状態で、ステアリングコラム6に回転自在に支持されている。ステアリングシャフト5の前端部は、自在継手7を介して中間シャフト8の後端部に接続され、中間シャフト8の前端部は、別の自在継手9を介して、入力軸3に接続されている。
【0003】
自動車用ステアリング装置には、運転者の体格や運転姿勢に応じて、ステアリングホイール1の上下位置を調節するためのチルト機構、および/または、ステアリングホイール1の前後位置を調節するためのテレスコピック機構から構成される、ステアリングホイールの位置調節装置が、組み込まれている(特開2009−227181号公報参照)。チルト機構を構成するために、ハウジング10がステアリングコラム6の前端部に固定されており、ハウジング10の上部前端部が車体11に対し、幅方向に配置されたチルト軸12により、揺動変位を可能に支持されている。なお、本明細書において、幅方向とは、車体の幅方向を意味し、車体の左右方向と一致する。変位ブラケット13が、ステアリングコラム6の軸方向中間部下面に設けられており、支持ブラケット14が、変位ブラケット13を幅方向両側から挟む状態で設けられている。支持ブラケット14には、上下方向に伸長する1対のチルト用長孔15が形成されており、変位ブラケット13のうち、チルト用長孔15の一部に整合する部分に通孔16が形成されている。図示の例では、テレスコピック機構を構成するために、通孔16は、前後方向に伸長する長孔(テレスコピック用長孔)により構成されている。また、ステアリングシャフト5およびステアリングコラム6は、伸縮可能に構成されている。チルト長孔15および通孔16を幅方向に挿通する状態で、杆状部材17が設けられている。杆状部材17の一端部に設けられ調節レバーを操作することで、支持ブラケット14により変位ブラケット13を幅方向両側から挟持する力を調節することにより、ステアリングホイール1の位置を調節可能な状態とロックする状態に切り替えられる。
【0004】
図9および
図10は、ステアリングホイールの位置調節装置を備えたステアリング装置の1例を示している。ステアリングコラム6は、後側に配置したアウタコラム18の前部と、前側に配置したインナコラム19の後部とを摺動可能に嵌合させて、全長を伸縮可能に構成されている。アウタコラム18は、たとえば軽合金をダイキャスト成形することにより造られる。アウタコラム18の前部にスリット20を設けることにより、アウタコラム18の前部はその内径を弾性的に拡縮可能に構成されている。アウタコラム18の外周面のうち、スリット20を左右方向両側から挟む部分には、変位ブラケット13を構成する1対の被挟持板部21が設けられている。1対の被挟持板部21には、通孔(テレスコピック用長孔)16が形成されている。支持ブラケット14を構成する1対の支持板部22は、変位ブラケット13を左右両側から挟持するように配置されている。1対の支持板部22にはチルト軸12(
図8参照)を中心とする部分円弧状のチルト用長孔15が形成されている。杆状部材17は、チルト用長孔15および通孔16に、幅方向に挿通されている。
【0005】
杆状部材17の軸方向一端部に設けられた調節レバー23、杆状部材17の軸方向他端部に設けられたアンカ部24、および、杆状部材17の軸方向一端寄り部分に設けられたカム装置25により、調節レバー23の揺動に基づいて1対の支持板部22の内側面同士の間隔を拡縮するチルトロック機構が構成される。アンカ部24は、杆状部材17の軸方向他端部に設けられたボルトの頭部のような形状を有しており、アンカ部24の内側面に形成された第1係合凸部26は、1対の支持板部22のうち、アンカ部24の内側面と対向する他方(
図10の右方)の支持板部22に形成されたチルト用長孔15に、チルト用長孔15に沿った変位のみを可能に係合している。したがって、杆状部材17は、1対のチルト用長孔15に沿って昇降はできるが、杆状部材17の軸を中心として回転することはない。
【0006】
ステアリングホイールの位置調節装置には、
図11に示すような、駆動側カム27と被駆動側カム28とを組み合わせた、カム装置25が組み込まれている。駆動側カム27は、杆状部材17を挿通するための中心孔29を有し、全体を円輪板状に構成されており、被駆動側カム28は、杆状部材17を挿通するための中心孔30を有し、全体を円輪板状に構成されている。駆動側カム27と被駆動側カム28との互いに対向する面には、円周方向に関する凹凸面である、駆動側カム面31と被駆動側カム面32とが形成されている。駆動側カム27の内側面に設けられた駆動側カム面31は、平坦面状の駆動側基準面33と、駆動側基準面33の円周方向等間隔複数個所から幅方向内方に突出した複数の駆動側凸部34とにより構成されている。被駆動側カム28の外側面に設けられた被駆動側カム面32は、平坦面状の被駆動側基準面35と、被駆動側基準面35の円周方向等間隔複数個所からそれぞれ幅方向外方に突出した複数の被駆動側凸部36とにより構成されている。被駆動側カム28の内側面には、第2係合凸部37が形成されている。
【0007】
被駆動側カム28の第2係合凸部37は、1対の支持板部22のうち、被駆動側カム28の内側面と対向する一方(
図10の左方)の支持板部22に形成されたチルト用長孔15に、チルト用長孔15に沿った変位のみを可能に係合している。したがって、被駆動側カム28は、チルト用長孔15に沿って昇降はできるが、被駆動側カム28の軸を中心として回転することはない。駆動側カム27には、調節レバー23の基端部が結合固定されており、駆動側カム27は、調節レバー23の往復揺動に伴って杆状部材17の周囲で往復回転するように構成されている。
【0008】
ステアリングホイール1の位置調節を行う際には、調節レバー23を所定方向(一般的には下方)に揺動させて、駆動側カム27を、アンロック状態に切り替える際の回転方向であるロック解除方向(
図12の右方向)に回転させ、
図12(A)に示すように、駆動側凸部34と被駆動側凸部36とを円周方向に関して交互に配置することにより、カム装置25の軸方向寸法が縮小したアンロック状態となり、被駆動側カム28とアンカ部24との間隔が拡がる。この結果、1対の支持板部22の内側面と1対の被挟持板部21の外側面との当接部の面圧が低下ないしは喪失し、かつ、アウタコラム18の前端部の内径が弾性的に拡がって、アウタコラム18の前端部内周面とインナコラム19の後端部外周面との当接部の面圧が低下する。この状態で、杆状部材17がチルト用長孔15および通孔16内で動ける範囲で、ステアリングホイール1の上下位置および前後位置を調節することが可能となる。
【0009】
ステアリングホイール1を所望位置に保持するには、ステアリングホイール1を所望位置に移動させた後、調節レバー23を逆方向(一般的には上方)に揺動させて、駆動側カム27を、ロック状態に切り替える際の回転方向であるロック方向(
図12の左方向)に回転させる。駆動側カム27をロック方向に回転させると、
図12(B)に示すように、駆動側カム面31に形成された駆動側凸部34の円周方向両側面のうち、ロック方向に関して前方側に位置する駆動側案内斜面38が、被駆動側カム面32に形成された被駆動側凸部36の円周方向両側面のうち、ロック方向に関して後方側に位置する被駆動側案内斜面39に摺接し案内されて、被駆動側案内斜面39を上る。これにより、
図12(C)に示すように、駆動側凸部34の平坦面状の先端面40と被駆動側凸部36の平坦面状の先端面41とが互いに突き当たり、カム装置25の軸方向寸法が拡大したロック状態となり、1対の支持板部22の内側面同士の間隔が縮まる。これにより、1対の支持板部22の内側面と1対の被挟持板部21の外側面との当接部の面圧が上昇し、かつ、アウタコラム18の前端部の内径が弾性的に縮まり、アウタコラム18の前端部内周面とインナコラム19の後端部外周面との当接部の面圧が上昇して、ステアリングホイール1が、調節後の所望位置に保持される。
【0010】
上述のようなカム装置25が組み込まれたステアリングホイールの位置調節装置では、ロック状態において、駆動側カム27と被駆動側カム28とが比較的相対回転しやすく、調節レバー23に誤って衝撃などが加わった場合にロック状態が解除されやすいといった問題を生じる可能性がある。
【0011】
特開2002−087286号公報には、駆動側カムに設けられた駆動側凸部の先端面に、この駆動側凸部の円周方向側面に形成した駆動側案内斜面とは逆向きに傾斜した勾配部を形成することで、駆動側カムが被駆動側カムに対してロック解除方向に相対回転しにくくする構造が記載されている。ただし、特開2002−087286号公報に記載の構造の場合、長期間にわたる使用により、勾配部が摩耗してしまい、駆動側カムの被駆動側カムに対する相対回転を有効に防止できなくなる可能性があり、また、被駆動側凸部の先端面が勾配部の頂部に乗り上げる際の調節レバーの操作力が過大になり、この調節レバーの操作性が低下する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述のような事情に鑑みて、ロック状態において、駆動側カムが被駆動側カムに対して相対回転してしまうことを有効に防止し、かつ、カム装置を操作するための調節レバーの操作力を滑らかにすることができる、カム装置の構造を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のカム装置は、回転可能に支持される駆動側カムと、回転不能に支持される被駆動側カムとを備える。
【0015】
前記駆動側カムは、たとえば円輪板状で、その軸方向片側面に設けられた、円周方向に関する凹凸面である駆動側カム面を備える。該駆動側カム面は、駆動側基準面と、該駆動側基準面の円周方向複数個所から軸方向片側に向けて突出する状態で設けられ、円周方向片側面に駆動側案内斜面を有する複数の駆動側凸部とを備える。
【0016】
前記被駆動側カムは、たとえば円輪板状または矩形板状で、前記駆動側カム面と軸方向に対向する軸方向他側面に設けられた、円周方向に関する凹凸面である被駆動側カム面を備える。該被駆動側カム面は、被駆動側基準面と、該被駆動側基準面の円周方向複数個所から軸方向他側に突出する状態で設けられ、円周方向他側面に被駆動側案内斜面を有する複数、好ましくは駆動側凸部と同数の被駆動側凸部とを備える。前記被駆動側カムは、軸方向に対向する支持ブラケットや摩擦板などの相手部材に回転不能に支持される。このために、たとえば、前記被駆動側カムの軸方向片側面に、該相手部材に係合させる係合凸部が設けられる。
【0017】
前記カム装置は、前記駆動側カムを前記被駆動側カムに対して相対回転させることにより、前記駆動側凸部と前記被駆動側凸部とを円周方向に交互に配置することで、該カム装置の軸方向寸法を縮小したアンロック状態と、該駆動側凸部の先端面(頂上面)と該被駆動側凸部の先端面(頂上面)とを突き合わせることで、該カム装置の軸方向寸法を拡大したロック状態とを、前記駆動側案内斜面と前記被駆動側案内斜面とを摺接させる状態を介して切り換え可能としている。
【0018】
特に、本発明のカム装置は、前記駆動側カムと前記被駆動側カムとのうちの一方のカムの凸部の外径側部分、たとえば径方向外半部に、先端突き合わせ部が設けられており、該一方のカムの凸部の内径側部分、たとえば径方向内半部に、該先端突き合わせ部よりも軸方向に凹んだ先端凹部が設けられている。
【0019】
好ましくは、前記一方のカムの凸部(駆動側凸部と被駆動側凸部のうちの一方の凸部)の案内斜面(駆動側案内斜面と被駆動側案内斜面のうちの一方の案内斜面)の内径側部分に、傾斜摺接部が設けられ、該一方のカムの凸部の案内斜面の外径側部分に、該傾斜摺接部よりも軸方向に凹んだ傾斜凹部が設けられ、前記先端突き合わせ部は、該傾斜摺接部よりも径方向外側に設けられる。
【0020】
該傾斜摺接部と該先端突き合わせ部とは連続する状態で設けられていることが好ましい。
【0021】
好ましくは、前記一方のカムの外周縁部の円周方向少なくとも1箇所位置で、円周方向に関する位相が前記傾斜凹部を含む部分に、径方向内方に凹んだ切り欠き部が設けられ、前記駆動側カムと前記被駆動側カムとのうちの他方のカムのカム面(駆動側カム面と被駆動側カム面のうちの一方のカム面)の外径側部分の円周方向少なくとも1箇所位置で、円周方向に関する位相が該他方のカムの凸部と整合する部分に軸方向に突出する状態でストッパ凸部が設けられることで、該カム装置は、前記ロック状態で、前記切り欠き部の円周方向片側面と前記ストッパ凸部の円周方向他側面とを当接させて、前記駆動側カムが、前記ロック状態に切り替える際の該駆動側カムの回転方向であるロック方向にそれ以上回転することが阻止されるように構成される。
【0022】
本発明のステアリングホイールの位置調節装置は、ステアリングコラムと、変位ブラケットと、支持ブラケットと、1対のチルト用長孔と、通孔と、杆状部材と、アンカ部と、押圧部と、カム装置とを備える。
【0023】
前記ステアリングコラムは、幅方向に配置されたチルト軸を中心として揺動変位可能である。
【0024】
前記ステアリングコラムの内側には、ステアリングシャフトが回転自在に支持される。
該ステアリングコラムの端部開口から突出した部分にステアリングホイールが固定される。
【0025】
前記変位ブラケットは、前記ステアリングコラムの軸方向中間部に設けられている。
【0026】
前記支持ブラケットは、前記変位ブラケットを挟持する1対の支持板部を有し、車体に対し支持される。
【0027】
前記1対のチルト用長孔は、前記1対の支持板部の互いに整合する部分に、たとえば前記チルト軸を中心とする部分円弧状、あるいは、前記チルト軸を中心とする円弧の接線方向の直線状であって、上下方向に伸長する。
【0028】
前記通孔は、たとえば円孔または前後方向に伸長する長孔であり、前記変位ブラケットのうちで前記1対のチルト用長孔の一部と整合する部分に、幅方向に貫通する状態で形成されている。
【0029】
前記杆状部材は、前記チルト用長孔および前記通孔を幅方向に挿通されている。
【0030】
前記押圧部は、前記杆状部材の一端部で前記1対の支持板部のうちの一方の支持板部の外側面から突出した部分に設けられる。
【0031】
前記アンカ部は、前記杆状部材の他端部で前記1対の支持板部のうちの他方の支持板部の外側面から突出した部分に設けられる。
【0032】
前記カム装置は、前記アンカ部と前記押圧部との間隔を拡縮する。
【0033】
本発明のステアリングホイールの位置調節装置の場合、前記カム装置として、本発明のカム装置が使用され、該カム装置を構成する前記被駆動側カムが、前記押圧部として機能する。前記カム装置を構成する前記駆動側カムは、前記杆状部材の一端部に対して、該杆状部材を中心とする回転を可能に、かつ、該杆状部材の一端側への変位を抑えられた状態で支持される。前記杆状部材の周囲で、前記駆動側カムまたは該駆動側カムと同期して回転する部材と、該杆状部材の軸方向に関して対向する位置に設けられた回転しない部材との間に、スラストベアリングが設けられる。なお、前記駆動側カムは、前記杆状部材に対し、該杆状部材との相対回転可能に、あるいは、前記杆状部材と同期した回転を可能に、外嵌され得る。
【発明の効果】
【0034】
本発明のカム装置およびステアリングホイールの位置調節装置によれば、ロック状態で、駆動側カムが被駆動側カムに対して相対回転することを有効に防止できて、調節レバーの操作力を滑らかにすることができる。すなわち、駆動側カムと被駆動側カムとのうち、一方のカムの凸部の先端面の外径側部分に、先端突き合わせ部を設け、かつ、該一方のカムの凸部の先端面の内径側部分に、該先端突き合わせ部よりも軸方向に関して凹んだ先端凹部を設けている。このため、ロック状態で、前記一方のカムの凸部の先端面のうち、外径側部分に設けられた先端突き合わせ部のみを、駆動側カムと被駆動側カムとのうちの他方のカムの凸部の先端面に突き合わせて、前記一方のカムの凸部の先端面のうち、内径側部分に設けられた先端凹部は、前記他方のカムの凸部の先端面に突き合わされないように構成することができる。したがって、本発明のカム装置は、ロック状態で、前記駆動側カムが前記被駆動側カムに対して相対回転しようとした際に、前記駆動側凸部の先端面と前記被駆動側凸部の先端面との間で生じる摩擦力の作用点と、前記駆動側カムの回転中心との間の距離を、
図11に示した従来構造の場合に比べて大きくすることができる。これにより、前記駆動側カムをロック解除方向に相対回転させる際に、該駆動側カムに対し作用する、相対回転を阻止する方向のモーメント力を大きくできる。この結果、調節レバーの操作力を損なうことなく、ロック状態で、前記駆動側カムが前記被駆動側カムに対してロック解除方向に相対回転することを有効に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1〜
図7は、本発明の実施の形態の1例を示している。ステアリングホイール1aの回転が回転すると、ステアリングホイール1aの回転がステアリングギヤユニット2aの入力軸3aに伝達され、入力軸3aの回転に伴って、ラックアンドピニオン機構を介して、左右1対のタイロッド4aが押し引きされ、前車輪に舵角が付与される。
【0037】
ステアリングホイール1aは、ステアリングシャフト5aの後端部に支持固定されており、ステアリングシャフト5aは、円筒状のステアリングコラム6aを軸方向に挿通した状態で、ステアリングコラム6aに回転自在に支持されている。ステアリングシャフト5aの前端部は、自在継手7aを介して中間シャフト8aの後端部に接続され、中間シャフト8aの前端部は、別の自在継手9aを介して、入力軸3aに接続されている。ステアリングコラム6aの前方には、ステアリングシャフト5aに操舵補助力を付与するための動力源となる電動モータ42が設けられている。
【0038】
ステアリングシャフト5aは、後側(
図2の右側)のアウタシャフト43の前端部と、前側(
図2の左側)のインナシャフト44の後端部とをスプライン係合させることにより、トルクの伝達を可能に、かつ、軸方向の伸縮を可能に構成されている。ステアリングシャフト5aは、アウタコラム18aとインナコラム19aとを伸縮可能に組み合わせたステアリングコラム6aの内側に、単列深溝型などの転がり軸受により、回転のみ可能に支持されている。
【0039】
ステアリングコラム6aを構成する前側のインナコラム19aの前端部には、ハウジング10aが固定され、ハウジング10aの上部前端部は、車体に対し、幅方向に配置したチルト軸12aにより、揺動変位を可能に支持されている。ハウジング10a内には、電動アシスト機構を構成する、ウォームおよびウォームホイールを備えたウォーム式減速機などが収納されている。電動アシスト機構は、インナシャフト44に作用するトルクに応じて、ウォームを、ハウジング10aに固定した電動モータ42により回転駆動することで、ステアリングシャフト5aに操舵補助力を付与するように構成されている。
【0040】
ハウジング10aの上部前端部を、チルト軸12aを中心に揺動変位を可能に支持することにより、ステアリングホイール1aの上下位置を調節可能とする機構が構成され、かつ、ステアリングシャフト5aおよびステアリングコラム6aを伸縮可能にすることにより、ステアリングホイール1aの前後位置を調節可能とする機構が構成される。ステアリングホイール1aを調節後の位置に保持するために、変位ブラケット13aが、ステアリングコラム6aの一部に固設され、かつ、支持ブラケット14aが車体側に支持されている。また、アウタコラム18aの前部上端部に前後方向に伸長するスリット20aが設けられ、アウタコラム18aの前部の内径が弾性的に拡縮可能となっている。アウタコラム18aの外周面のうち、スリット20aを左右両側から挟む部分には、変位ブラケット13aを構成する1対の被挟持板部21aが設けられている。1対の被挟持板部21aには、前後方向に伸長する通孔(テレスコピック用長孔)16aが設けられている。なお、テレスコピック機構を省略する場合には、通孔16aは円孔により構成される。
【0041】
支持ブラケット14aは、変位ブラケット13aを幅方向両側から挟む状態で設けられている。支持ブラケット14aは、上部に設けられた取付板部45と、取付板部45から下方に垂れ下がった左右1対の支持板部22aを備える。取付板部45の幅方向両端部には、後端縁に開口した1対の切り欠き溝が形成されており、支持ブラケット14aは車体に対し、ボルトやスタッドなどの結合部材により車体に固定された1対の離脱部材46を、この1対の切り欠き溝に係合させることで、二次衝突時に前方への離脱を可能に支持されている。1対の支持板部22aの互いに整合する部分には、上下方向に伸長する状態で、チルト軸12aを中心とする部分円弧状の1対のチルト用長孔15aが形成されている。
【0042】
杆状部材17aは、チルト用長孔15aと通孔16aとを幅方向に挿通している。杆状部材17aの軸方向一端側部分で、1対の支持板部22aのうちの一方(
図4の左方)の支持板部22aから突出した部分に、この一方の支持板部22aの側から順に、摩擦組立体49bと、被駆動側カム28aと、駆動側カム27aと、調節レバー23aと、スラストベアリング50とが配置されている。杆状部材17aの軸方向他端部に設けられた頭部47と、1対の支持板部22aのうちの他方(
図4の右方)の支持板部22aとの間には、前記アンカ部を構成する矩形押圧板48と、摩擦組立体49aとが配置されている。杆状部材17aの軸方向一端部に形成された雄ねじ部51には、ナット52が螺着されている。
【0043】
矩形押圧板48の内側面を、摩擦組立体49aを構成するテレスコ用摩擦板55のうち、このテレスコ用摩擦板55に形成された長孔の上下両縁部から幅方向外側に折れ曲がる状態で形成された1対の折れ曲がり部に係合することで、矩形押圧板48がテレスコ用摩擦板55に対して、相対回転したり、上下方向に変位したりすることが阻止されている。
【0044】
1対の摩擦組立体49a、49bはそれぞれ、複数種類の摩擦板を積層することにより構成されている。他方の支持板部22aと矩形押圧部48との間に配置された摩擦組立体49aは、円輪摩擦板53と、チルト用摩擦板54と、テレスコ用摩擦板55との3種類の摩擦板を積層することにより構成されている。一方の支持板部22aと被駆動側カム28aとの間に配置された摩擦組立体49bは、円輪摩擦板53と、チルト用摩擦板54との2種類の摩擦板を積層することにより構成されている。
【0045】
円輪摩擦板53は、中央部に杆状部材17aを挿通するための通孔を有し、全体を円輪状に形成されている。
【0046】
チルト用摩擦板54は、上下方向に伸長する状態で形成されており、上下方向中間部に、杆状部材17aを挿通するための上下方向に伸長する長孔が形成されており、下端部に、円孔である取付孔が形成されている。チルト用摩擦板54は、該取付孔内に、1対の支持板部22aの外側面から幅方向に突出する状態で設けられた固定ピン56を挿通させることにより、支持ブラケット14aに対し支持されている。
【0047】
テレスコ用摩擦板55は、前後方向に伸長する状態で形成されており、前後方向中間部に、杆状部材17aを挿通するための前後方向に伸長する長孔が形成されており、後端部に、上下方向に伸長する長孔である取付孔が形成されている。テレスコ用摩擦板55は、該取付孔内に、1対の被挟持板部21aのうちの他方(
図4の右方)の被挟持板部21aの外側面から幅方向に突出する状態で設けられた固定ピン57を挿通させることにより、アウタコラム18aに対し支持されている。テレスコ用摩擦板55は、摩擦組立体49aを構成するチルト用摩擦板54のうち、最も外側に配置された1枚のチルト用摩擦板54を幅方向両側から挟持する状態で配置されている。矩形押圧板48に対向する1枚(幅方向外側)のテレスコ用摩擦板55には、長孔の上下両縁部から幅方向外側に折れ曲がる状態で、矩形押圧板48を係合させるための1対の折れ曲がり部が設けられている。
【0048】
杆状部材17aの周囲で、摩擦組立体49a、49bの内側に配置された部分には、合成樹脂製のスリーブ58が外嵌されている。スリーブ58の幅方向内端部外周面には、矩形板状のフランジ部59が形成されており、フランジ部59は、1対の支持板部22aのチルト長孔15a内に、チルト用長孔15aに沿った変位のみを可能に係合している。スリーブ58は、円輪摩擦板53とチルト用摩擦板54とテレスコ用摩擦板55とを組み合わせて、摩擦組立体49a、49bをサブアッセンブリしておくために利用される。1対の被挟持板部21aの通孔16aの内側には、円筒状のカラー60とコイルばね61とが配置されている。コイルばね61は、カラー60とフランジ部59との間で弾性的に圧縮されている。このような構成を採用することで、駆動側カム27aと被駆動側カム28aとの間に作用する摩擦力が高められている。
【0049】
被駆動側カム28aは、駆動側カム27aと組み合わされて、カム装置25aを構成する。本例では、被駆動側カム28aが一方のカムであり、前記押圧部として機能する。被駆動側カム28aは、焼結金属製で、杆状部材17aを挿通するための中心孔30aを有し、全体を略矩形板状に構成されている。被駆動側カム28aの外側面(
図5(A)の上面)には、円周方向に関する凹凸面である、被駆動側カム面32aが形成されている。
【0050】
被駆動側カム面32aは、平坦面状の被駆動側基準面35aと、被駆動側基準面35aの円周方向等間隔複数個所(図示の例では4個所)から幅方向外方に向けて突出した、断面略台形状の被駆動側凸部36aとを備える。
【0051】
被駆動側凸部36aの円周方向両側面のうち、ロック状態に切り替える際の駆動側カム27aの回転方向であるロック方向に関する後側面には、被駆動側基準面35aから滑らかに傾斜した被駆動側案内斜面39aが形成されている。被駆動側凸部36aの円周方向両側面のうち、ロック方向に関する前側面には、わずかに傾斜した壁面状の被駆動側ストッパ面62が形成されている。被駆動側ストッパ面62の傾斜は、被駆動側カム28aを成形型から取り出すのに必要な抜き勾配に相当する。
【0052】
被駆動側凸部36aの頂上面である先端面41aのうちの外径側半部には、被駆動側カム28aの中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面状の先端突き合わせ部63が形成されており、該先端面41aのうちの内径側半部には、先端突き合わせ部63に比べて軸方向に一定量だけ凹んだ、先端凹部64が形成されている。したがって、ロック状態では、先端面41aのうちの先端突き合わせ部63のみが、駆動側凸部34aの先端面40aに当接した状態となる。先端凹部64が、先端突き合わせ部63よりも軸方向に凹んでいる程度は、先端凹部64が駆動側凸部34aの先端面40aに当接しないという条件を満たす限り、任意に決定することができるが、たとえば、被駆動側凸部36a、すなわち、被駆動側基準面35aから先端突き合わせ部63までの軸方向寸法の1/8〜1/10程度とすることができる。
【0053】
被駆動側案内斜面39aの内径側半部には、傾斜摺接部65が形成されており、被駆動側案内斜面39aの外径側半部には、傾斜摺接部65に比べて軸方向に凹んだ傾斜凹部66が形成されている。したがって、駆動側カム27aを回転すると、被駆動側案内斜面39aのうちの傾斜摺接部65のみが、駆動側カム28aの被駆動側案内斜面38aと摺接する。傾斜凹部66は、同じ円周方向位置(円周方向に同じ位相である部分)において比べると、傾斜摺接部65よりも軸方向に一定量だけ凹んでいる。傾斜凹部66が、傾斜摺接部65から軸方向に凹んでいる程度は、傾斜凹部66が、駆動側案内斜面38aと摺接しないという条件を満たす限り、任意に決定することができるが、たとえば、被駆動側凸部36aの軸方向寸法の1/8〜1/10程度とすることができる。傾斜摺接部65および傾斜凹部66は、曲線的に傾斜した凸曲面により構成されている。傾斜摺接部65の円周方向両端縁のうち、面取り部を除く、ロック方向に関する後側の端縁の軸方向高さ寸法は、先端突き合わせ部63の軸方向高さ寸法と等しくなっている。
【0054】
被駆動側凸部36aのうち、頂上面である先端面41aの外径側半部に先端突き合わせ部63が設けられ、円周方向側面である被駆動側案内斜面39aの内径側半部に傾斜摺接部65が設けられている。すなわち、先端突き合わせ部63は、傾斜摺接部65よりも径方向外方に配置されている。換言すれば、被駆動側カム面32aのうちの径方向内半部に、傾斜摺接部65と先端凹部64とが円周方向に隣接する状態で配置されており、被駆動側カム面32aのうちの径方向外半部に、傾斜凹部66と先端突き合わせ部63とが円周方向に隣接する状態で配置されている。
【0055】
先端突き合わせ部63と傾斜摺接部65とを、段差部などを介さずに滑らかに連続させるため、傾斜摺接部65の円周方向両端縁のうちロック方向に関する前側の端縁(
図5中の符号aを付した部分)は、先端突き合わせ部63の円周方向両端縁のうちロック方向に関する後側の端縁(
図5中の符号bを付した部分)よりも、ロック方向に関してわずかに前側に配置されている。傾斜摺接部65の外周縁部(
図5中の符号cを付した部分)と先端突き合わせ部63の円周方向両端縁のうちロック方向に関して後側の端縁(
図5中の符号bを付した部分)とは、ほぼ直角に折れ曲がる状態で連続しており、かつ、傾斜摺接部65の円周方向両端縁のうちロック方向に関する前側の端縁(
図5中の符号aを付した部分)と先端突き合わせ部63の内周縁部(
図5中の符号dを付した部分)とは、ほぼ直角に折れ曲がる状態で連続している。
【0056】
なお、傾斜摺接部65の外周縁部(
図5中の符号cを付した部分)と先端突き合わせ部63の内周縁部(
図5中の符号dを付した部分)とは、ほぼ単一円上に配置されているが、傾斜摺接部65の外周縁部を先端突き合わせ部63の内周縁部よりも径方向外側に配置されることも可能である。傾斜摺接部65の外周縁部を先端突き合わせ部63の内周縁部よりも径方向外側に配置した場合、傾斜摺接部65の円周方向両端縁のうちロック方向に関する前側の端縁(
図5中の符号aを付した部分)と、先端突き合わせ部63の円周方向両端縁のうちロック方向に関する後側の端縁(
図5中の符号bを付した部分)との円周方向に関する位置を一致させることも可能である。
【0057】
傾斜摺接部65の円周方向両端縁のうちロック方向に関する前側の端縁(
図5中の符号aを付した部分)を、先端突き合わせ部63の円周方向両端縁のうちロック方向に関する後側の端縁(
図5中の符号bを付した部分)よりも、ロック方向に関して前側に配置し、傾斜摺接部65と先端突き合わせ部63とを径方向に関して重畳させる場合、傾斜摺接部65と先端突き合わせ部63との軸方向高さ寸法が一致するのは、重畳している範囲のうち、円周方向に関して一個所のみである。このため、傾斜摺接部65と先端突き合わせ部63との軸方向高さ寸法が一致している円周方向位置を境界として、傾斜摺接部65のロック方向に関する前側に位置する部分、および、先端突き合わせ部63のロック方向に関する後側に位置する部分には、面取りなどの逃げ部を設け、前記境界よりもロック方向に関する後側で先端突き合わせ部63の軸方向高さ寸法が、傾斜摺接部65の軸方向高さ寸法よりも高くなったり、前記境界よりもロック方向に関する前側において、傾斜摺接部65の軸方向高さ寸法が、先端突き合わせ部63の軸方向高さ寸法よりも高くなったりすることが防止されている。
【0058】
被駆動側カム28aの外周縁部のうち、中心孔30aを挟み直径方向反対側2箇所位置で、かつ、円周方向に関して傾斜凹部66を含む部分には、径方向内方に凹んだ切り欠き部67が形成されている。切り欠き部67は、円周方向に隣接して配置された1対の被駆動側凸部36aを跨ぐようにして形成されている。すなわち、切り欠き部67の円周方向一端部が、被駆動側凸部36aのうちの一方の駆動側凸部36aに形成された先端突き合わせ部63の円周方向半部を切り欠いており、切り欠き部67の円周方向中間部が、被駆動側凸部36a同士の間に存在する被駆動側基準面35aを切り欠いており、切り欠き部67の円周方向他端部が、他方の駆動側凸部36に形成された傾斜凹部66の大部分を切り欠いている。切り欠き部67は、駆動側カム27aに形成されたストッパ凸部71を進入させるための部分となる。切り欠き部67のうち、ロック方向に関する前側面には、ロック状態で、ストッパ凸部71を当接させて、駆動側カム27aがロック方向にそれ以上回転することを阻止するためのストッパ面68が形成されている。
【0059】
被駆動側カム28aの内側面の前後方向両端部には、幅方向内方に向けて突出した1対の係合凸部69が設けられている。1対の係合凸部69同士の間には、被駆動側カム28aと一方の支持板部22aとの間に配置された摩擦組立体49bを構成するチルト用摩擦板54が配置されており、被駆動側カム28aが、摩擦組立体49bに対して相対回転することが阻止されている。
【0060】
被駆動側カム28aとともにカム装置25aを構成する駆動側カム27aは、他方のカムに相当する。駆動側カム27aは、焼結金属製で、杆状部材17aを挿通するための中心孔29aを有し、全体を円輪板状に構成されている。駆動側カム27aの内側面(
図6(A)の上面)には、円周方向に関する凹凸面である、駆動側カム面31aが形成されている。
【0061】
駆動側カム面31aは、平坦面状の駆動側基準面33aと、この駆動側基準面33aの円周方向等間隔複数個所(図示の例では4個所)から幅方向内方に向けて突出した、断面略台形状の駆動側凸部34aとを備える。
【0062】
駆動側凸部34aの円周方向両側面のうち、ロック方向に関する前側面には、駆動側基準面33aから滑らかに傾斜した、駆動側案内斜面38aが形成されている。駆動側案内斜面38aは、直線的に傾斜した傾斜平面であり、駆動側カム面31aの径方向内端部から外端部にわたる範囲に形成されている。駆動側凸部34aの円周方向両側面のうち、ロック方向に関する後側面には、わずかに傾斜した壁面状の駆動側ストッパ面70が形成されている。駆動側ストッパ面70の傾斜は、駆動側カム27aを成形型から取り出すのに必要な抜き勾配に相当するものである。
【0063】
駆動側凸部34aの頂上面である先端面40aは、駆動側カム27aの中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面状に形成されている。先端面40aは、ストッパ凸部71が設けられた部分を除いて、駆動側カム面31aの径方向内端部から外端部にわたる範囲に形成されている。
【0064】
駆動側カム面31aの外径側部分のうち、中心孔29aを挟み直径方向反対側2箇所位置で、かつ、円周方向に関して先端面40aと整合する部分には、先端面40aよりも幅方向内方に向け突出した1対のストッパ凸部71が設けられている。ストッパ凸部71を、被駆動側カム28aの外周縁部に形成された切り欠き部67内に進入させ、ロック状態で、ストッパ凸部71をストッパ面68に当接させることにより、駆動側カム27aがロック方向にそれ以上回転することが阻止される。これに対し、ロック解除状態では、駆動側ストッパ面70と被駆動側ストッパ面62とを当接させることにより、駆動側カム27aがロック解除方向にそれ以上回転することが阻止される。
【0065】
駆動側カム27aの外側面には、幅方向外方に向けて突出する断面非円形状の係合突起72が設けられている。係合突起72が、調節レバー23aの基端部に形成された係合孔に相対回転不能に係合することにより、調節レバー23aの往復揺動に伴って、駆動側カム27aが往復回転可能となっている。図示の例では、駆動側カム27aは、調節レバー23aの操作に基づき、杆状部材17aに対して相対回転するように構成されている。ただし、杆状部材が駆動側カムと同期して回転する構造も採用可能である。
【0066】
調節レバー23aの基端部とナット52との間に配置されたスラストベアリング50は、円輪板状の1対の軌道輪と、該1対の軌道輪同士の間に放射状に配置された複数本のニードルとを備えた、スラストニードルベアリングにより構成されている。スラストベアリング50は、カム装置25aをアンロック状態に切り替えた状態で、内部に隙間が存在するように各部の寸法が設定されている。スラストベアリング50は、カム装置25aをアンロック状態からロック状態に切り替える段階、すなわち、駆動側案内斜面38aと被駆動側案内斜面39aとが摺接する段階で、内部隙間が徐々に減少していくとともに、ニードルが転動し始め、ロック状態になるまで、ニードルの転動が継続される。要するに、スラストベアリング50を設けることで、カム装置25aをアンロック状態からロック状態に切り替える際に生じる摩擦力を低減することができ、調節レバー23aの回転操作を滑らかにすることができる。
【0067】
ステアリングホイール1aの位置を調節可能な状態とするには、調節レバー23aを所定方向(一般的には下方)に揺動させて、駆動側カム27aをロック解除方向に回転させる。そして、駆動側凸部34aと被駆動側凸部36aとを円周方向に関して交互に配置することにより、カム装置25aの軸方向寸法を縮小したアンロック状態とし、前記押圧部である被駆動側カム28aと、前記アンカ部である矩形押圧板48との間隔を拡げる。この結果、1対の支持板部22aの内側面と1対の被挟持板部23aの外側面との当接部の面圧、および、アウタコラム18aとインナコラム19aとの嵌合部の面圧が、低下あるいは喪失する。この状態で、杆状部材17aがチルト用長孔15aおよび通孔16a内で動ける範囲で、ステアリングホイール1aの上下位置および前後位置の調節が可能となる。
【0068】
ステアリングホイール1aの上下位置を調節する際には、杆状部材17aとともに、摩擦組立体49a、49bを構成する円輪摩擦板53およびテレスコ用摩擦板55が上下方向に移動するが、チルト用摩擦板54は変位しない。これに対し、ステアリングホイール1aの前後位置を調節する際には、テレスコ用摩擦板55が、アウタコラム18aとともに前後方向に移動するが、円輪摩擦板53およびチルト用摩擦板54は変位しない。
【0069】
ステアリングホイール1aを調節後の位置に保持するには、ステアリングホイール1aを所望の位置に移動させた後、調節レバー23aを逆方向(一般的には上方)に揺動させると、駆動側凸部34aの円周方向側面に形成された駆動側案内斜面38aが、被駆動側凸部36aの円周方向側面に形成された被駆動側案内斜面39aに摺接し案内されて、被駆動側案内斜面39aを上る。そして、駆動側凸部34aの平坦面状の先端面40aと被駆動側凸部36aの平坦面状の先端面41aとが互いに突き当たることにより、カム装置25aの軸方向寸法を拡大したロック状態とし、1対の支持板部22aの内側面同士の間隔を縮める。この状態で、1対の支持板部22aの内側面と1対の被挟持板部23aの外側面との当接部の面圧、および、アウタコラム18aとインナコラム19aとの嵌合部の面圧が上昇して、ステアリングホイール1が調節後の位置に保持される。円輪摩擦板53、チルト用摩擦板54およびテレスコ用摩擦板55が相互に挟持されるため、ロック状態でのステアリングホイール1aの位置を保持する力を高められる。
【0070】
本例のステアリングコラム装置によれば、ロック状態で、駆動側カム27aが被駆動側カム28aに対して相対回転することが有効に防止され、かつ、調節レバーの操作力を滑らかにすることができる。すなわち、被駆動側カム28aに設けられた被駆動側凸部36aの先端面41aのうちの外径側部分に先端突き合わせ部63を設けるとともに、先端面41aのうちの内径側部分に先端突き合わせ部63よりも軸方向に関して凹んだ先端凹部64を設けている。このため、ロック状態で、被駆動側凸部36aの先端面41aのうち、外径側部分に設けられた先端突き合わせ部63のみが、駆動側カム27aの駆動側凸部34aの先端面40aに突き合わされ、被駆動側凸部36aの先端面41aのうち、内径側部分に設けられた先端凹部64は、駆動側凸部34aの先端面40aに突き合わされないように、カム装置25aは構成されている。したがって、本例のカム装置25aは、ロック状態で、駆動側カム27aが被駆動側カム28aに対して相対回転しようとした際に、駆動側凸部34aの先端面40aと被駆動側凸部36aの先端面41aとの間で生じる摩擦力の作用点と、駆動側カム27aの回転中心との間の距離を、
図11に示した従来構造の場合と比較して大きくすることができる。これにより、駆動側カム27aをロック解除方向に相対回転させる際に、駆動側カム27aに対し作用する、相対回転を阻止する方向のモーメント力を大きくすることができる。この結果、ロック状態で、駆動側カム27aが被駆動側カム28aに対してロック解除方向に相対回転することを有効に防止できて、調節レバーの操作力を滑らかにすることができる。さらに、調節レバー23aに誤って衝撃などを加えた際にも、ロック状態が解除されにくくなっている。
【0071】
また、被駆動側凸部36aの被駆動側案内斜面39aのうちの内径側部分に傾斜摺接部65を設けるとともに、被駆動側案内斜面39aのうちの外径側部分に傾斜摺接部65に比べて軸方向に凹んだ傾斜凹部66を設けている。このため、ロック解除状態からロック状態に切り替える際に、被駆動側案内斜面39aの内径側部分に設けられた傾斜摺接部65のみを、駆動側凸部34aの駆動側案内斜面38aに摺接させることができ、被駆動側案内斜面39aの外径側部分に設けられた傾斜凹部66は、駆動側案内斜面38aに摺接しないように、カム装置25aは構成されている。したがって、本例のカム装置25aは、ロック解除状態からロック状態に切り替えるため、駆動側カム27aを被駆動側カム28aに対してロック方向に相対回転させる際に、駆動側案内斜面38aと被駆動側案内斜面39aとの間で生じる摩擦力の作用点と、駆動側カム27aの回転中心との間の距離を、
図11に示した従来構造の場合と比較して小さくすることができる。これにより、駆動側カム27aをロック方向に相対回転させる際に、駆動側カム27aに対し作用する、相対回転を阻止する方向のモーメント力を小さくできる。この結果、ロック解除状態からロック状態に切り替える際に、駆動側カム27aを相対回転させるのに要する力を低減させることができる。
【0072】
本例のカム装置25aは、被駆動側凸部36aの傾斜摺接部65と先端突き合わせ部63とを連続させる状態で設けているため、ロック解除状態からロック状態に切り替える際に、駆動側カム27aを被駆動側カム28aに対し滑らかに相対回転させることができる。換言すれば、調節レバー23aの操作力が突然高くなるなどすることを防止できて、この調節レバー23aの操作力を安定させることができる。
【0073】
被駆動側カム28aのうちで、実質的にカム面として機能しない傾斜凹部66を含む部分に、ストッパ面68を有する切り欠き部67を設けているため、カム装置25aとして、無駄のない設計が可能になるとともに、被駆動側カム28aの軽量化が図られる。
【0074】
本実施形態の1例による効果を確認するために実施した3種類のシミュレーションについて説明する。第1に、
図11に示すように、被駆動側凸部の先端面全体を突き合わせ面とした構造と、
図5に示すように、被駆動側凸部の先端面の内径側半部に先端凹部を形成することで、先端面の外径側半部のみを突き合わせ面とした構造とで、調節レバーの操作力にどのような変化が生じるか、シミュレーションを実施した。被駆動側凸部の先端面の形状を異ならせた以外の条件については、すべて同じとした。
図7(A)に示すシミュレーション結果から明らかな通り、被駆動側凸部の先端面の外径側半部のみを突き合わせ面とした構造(実線α)では、先端面全体を突き合わせ面とした構造(破線β)に比べて、ロック状態(締付状態)でのレバー操作力が上昇する、言い換えれば、レバーが相対回転しにくくなる。
【0075】
第2に、
図11に示すように、被駆動側凸部の被駆動側案内斜面全体を摺接面とした構造と、
図5に示すように、被駆動側凸部の被駆動側案内面のうち外径側半部に傾斜凹部を形成することで、被駆動側案内面の内径側半部のみを摺接面とした構造とで、調節レバーの操作力にどのような変化が生じるか、シミュレーションを実施した。被駆動側凸部の被駆動側案内斜面の形状を異ならせた以外の条件については、すべて同じとした。
図7(B)に示すシミュレーション結果から明らかな通り、被駆動側凸部の被駆動側案内斜面の内径側半部のみを摺接面とした構造(実線γ)では、被駆動側案内斜面全体を摺接面とした構造(破線δ)に比べて、ロック解除状態からロック状態に切り替えるまでのレバー操作力を全体的に低減できる。
【0076】
第三に、被駆動側凸部のうち、先端面全体を突き合わせ面とし、被駆動側案内斜面全体を摺接面とした構造と、
図5に示すように、被駆動側凸部のうち、先端面の外径側半部のみを突き合わせ面とし、被駆動側案内斜面の内径側半部のみを摺接面とした構造とで、調節レバーの操作力にどのような変化が生じるか、シミュレーションを実施した。被駆動側凸部の先端面および被駆動側案内斜面の形状を異ならせた以外の条件については、すべて同じとした。
図7(C)に示すシミュレーション結果から明らかな通り、被駆動側凸部のうち、先端面の外径側半部のみを突き合わせ面とするとともに、被駆動側案内斜面の内径側半部のみを摺接面とした構造(実線ε)では、先端面全体を突き合わせ面とするとともに被駆動側案内斜面全体を摺接面とする構造(破線ζ)に比べて、ロック解除状態からロック状態に切り替えるまでのレバー操作力を全体的に低減できるだけでなく、ロック状態でのレバー操作力を上昇させることができ、レバーの操作力を全体的に滑らかにする(安定させる)ことができる。
【0077】
本実施形態の1例では、被駆動側カムを構成する被駆動側凸部の先端面に、外径側部分に先端突き合わせ部を形成し、内径側部分に先端凹部を形成した構造を示したが、本発明を実施する場合、駆動側カムを構成する駆動側凸部の先端面の外径側部分に先端突き合わせ部を形成し、該駆動側凸部の先端面の内径側部分に先端凹部を形成することもできる。また、傾斜摺接部および傾斜凹部を、駆動側カムを構成する駆動側凸部に形成することも可能であり、傾斜摺接部および傾斜凹部を形成しないように構成も採用可能である。