(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、積層体の端面にビア導体が露出している場合、微小なゴミや印刷のかすれ、実装時のはんだの飛び散り等に起因してショート不良が発生しやすい。特に、端面ビアを電極ペーストの充填によって形成する場合、充填した電極ペーストが、隣接する端面導体にまで広がってしまうことがあり、そのことにより、隣接する端面導体間のショート不良が発生するリスクもある。
【0005】
本発明の目的は、積層体の端面でのショートの発生を防止し、良品率の向上に有効なアンテナ装置およびそれを備えるカード型情報媒体ならびに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のアンテナ装置は、
複数の絶縁体層が積層されて形成される積層体と、
前記絶縁体層の面に形成され、前記絶縁体層の外縁に位置する2つの端部と、前記2つの端部の間を接続する主要部とで構成される複数の線状導体と、前記積層体の、前記絶縁体層の積層方向に平行な端面に形成され、前記線状導体の前記2つの端部同士を前記積層方向に接続する端面導体と、を含むコイルと、
を備え、
前記絶縁体層の面および前記積層体の前記端面に対する平行方向において、前記端面導体の幅は前記主要部の幅よりも狭く、且つ互いに隣接する前記端面導体の間隔は互いに隣接する前記主要部の間隔よりも広いことを特徴とする。
【0007】
上記構成により、隣り合う端面導体間の間隔が広くなり、端面導体同士のショートが発生しにくくなる。また、線状導体の主要部の線幅は所定幅に確保できるので、導体損失の増加は抑制される。
【0008】
(2)上記(1)において、前記絶縁体層の面および前記積層体の端面に対する平行方向において、前記2つの端部の線幅は前記主要部の線幅より細い、ことが好ましい。
【0009】
太い線状導体と細い端面導体との境界が積層体の角部(稜)に位置すると、その角部に電流の集中箇所が形成されるので、抵抗値が大きくなる。上記構成によれば、コイルを構成する導体のうち、太い部分と細い部分の境界が絶縁体層の面に形成されることとなり、電流の集中や抵抗値の増大を抑制できる。
【0010】
(3)上記(2)において、前記2つの端部は、前記主要部から離れるに従い、線幅が次第に細くなる形状であることが好ましい。
【0011】
上記構成により、線状導体の線幅が急激に変化する箇所が無くなり(線幅変化の不連続部が無くなり)、電流集中や抵抗値の増大をさらに抑制できる。
【0012】
(4)上記(2)において、前記2つの端部は、前記主要部に近接する部分の線幅が、前記主要部から離れた部分の線幅より太いことが好ましい。
【0013】
上記構成により、主要部から端面導体までの線幅の変化が小さくなり、電流集中や抵抗値の増大を抑制することができる。
【0014】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記2つの端部と前記端面導体との接続部の幅は前記端面導体の線幅とは異なることが好ましい。
【0015】
上記構成により、2つの端部と端面導体との接続位置のずれの許容度が大きくなり、2つの端部と端面導体との接続不良を防止できる。
【0016】
(6)上記(5)において、前記2つの端部と前記端面導体との接続部は、前記絶縁体層の縁より内側に配置されることが好ましい。
【0017】
上記構成により、2つの端部と端面導体との接続位置は積層体の角部から離れた(内側の)位置にあるので、絶縁体層の角部における電流集中が低減される。
【0018】
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記端面導体は、連なる複数の層間接続導体で構成されることが好ましい。
【0019】
上記構成により、端面導体の横断面積が大きくなるため、端面導体の抵抗値を抑えることができる。また、親基板状態で製造するとき、絶縁体層の面方向に層間接続導体が並ぶので、切断線の位置が相対的に多少ずれても、切断面の両側に端面導体を確実に残して切断できる。すなわち、親基板の切断位置の精度および端面導体の形成位置の精度の許容度が大きくなる。
【0020】
(8)上記(7)において、前記層間接続導体の横断面形状はそれぞれ円形または楕円形であることが好ましい。
【0021】
上記構成により、層間接続導体の形成位置のずれが生じても、端面導体の横断面積は大きく確保され、端面導体の抵抗値を抑えることができる。
【0022】
(9)本発明のカード型情報媒体は、アンテナ素子とメモリ素子とを含み、
前記アンテナ素子は、
複数の絶縁体層が積層されて形成される積層体と、
前記絶縁体層の面に形成され、前記絶縁体層の外縁に位置する2つの端部と、前記2つの端部の間を接続する主要部とで構成される複数の線状導体と、前記積層体の、前記絶縁体層の積層方向に平行な端面に形成され、前記線状導体の前記2つの端部同士を前記積層方向に接続する端面導体と、を含むコイルと、
を備え、
前記絶縁体層の面および前記積層体の前記端面に対する平行方向において、前記端面導体の幅は前記主要部の幅よりも狭く、且つ互いに隣接する前記端面導体の間隔は互いに隣接する前記主要部の間隔よりも広いことを特徴とする。
【0023】
上記構成により、導体損失が低く且つ小型のアンテナ素子を備えたカード型情報媒体が構成される。
【0024】
(10)本発明の電子機器は、アンテナ素子と前記アンテナ素子を収納する筐体とを備え、
前記アンテナ素子は、
複数の絶縁体層が積層されて形成される積層体と、
前記絶縁体層の面に形成され、前記絶縁体層の外縁に位置する2つの端部と、前記2つの端部の間を接続する主要部とで構成される複数の線状導体と、前記積層体の、前記絶縁体層の積層方向に平行な端面に形成され、前記線状導体の前記2つの端部同士を前記積層方向に接続する端面導体と、を含むコイルと、
を備え、
前記絶縁体層の面および前記積層体の前記端面に対する平行方向において、前記端面導体の幅は前記主要部の幅よりも狭く、且つ互いに隣接する前記端面導体の間隔は互いに隣接する前記主要部の間隔よりも広いことを特徴とする。
【0025】
上記構成により、導体損失が低く且つ小型のアンテナ素子を備えた電子機器が構成される。
【0026】
(11)本発明のアンテナ装置の製造方法は、
複数の絶縁体層が積層されて形成される積層体と、
前記絶縁体層の面に形成され、前記絶縁体層の外縁に位置する2つの端部と、前記2つの端部の間を接続する主要部とで構成される複数の線状導体と、前記積層体の、前記絶縁体層の積層方向に平行な端面に形成され、前記線状導体の前記2つの端部同士を前記積層方向に接続する端面導体と、を含むコイルと、
を備えるアンテナ装置の製造方法であって、
前記複数の線状導体のペーストパターンを前記絶縁体層に形成する工程と、
前記複数の絶縁体層に貫通孔を形成し、当該貫通孔に前記端面導体用の導体ペーストを充填する工程と、
前記複数の絶縁体層を積層し、焼成する工程と、
前記複数の端面導体を通るラインで前記積層体を切断する工程と、を含み、
前記端面導体の幅は前記主要部の幅よりも狭いことを特徴とする。
【0027】
上記製造方法によれば、隣り合う端面導体間の間隔が広くなり、端面導体同士のショートが発生しにくくなる。また、線状導体の主要部の線幅は所定幅に確保できるので、導体損失の増加は抑制される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、端面導体同士のショートを防止し、且つ導体損失の増加が抑制されたアンテナ装置、小型のカード型情報媒体および電子機器が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以降で示す各実施形態において、「アンテナ装置」とは、磁束を放射するアンテナである。アンテナ装置は、通信相手側のアンテナと磁界結合を用いた近傍界通信のために用いられるアンテナであり、例えばNFC(Near field communication)等の通信に利用される。アンテナ装置は例えばHF帯で使用され、特に13.56MHzまたは13.56MHz近傍の周波数帯で用いられる。アンテナ装置の大きさは、使用する周波数における波長λに比べて十分に小さく、使用周波数帯においては電磁波の放射特性は悪い。後述のアンテナ装置が備えるコイルアンテナの大きさはλ/10以下である。なお、ここでいう波長とは、アンテナが形成される基材の誘電性や透磁性による波長短縮効果を考慮した実効的な波長の事を指す。コイルアンテナが有するコイル導体の両端は、使用周波数帯(HF帯、特に13.56MHz近傍)を利用する給電回路に接続される。
【0031】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付す。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点について説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0032】
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態に係るアンテナ装置201の斜視図、
図1(B)はアンテナ装置201の内部の構造を示す図である。
【0033】
アンテナ装置201は、第1主面S1と、第1主面S1に対向する第2主面S2と、第1主面S1と第2主面S2とを接続する端面S3,S4を有する直方体状の積層体10を備える。
図1(A)に表れているように、積層体10の第1主面S1に外部接続端子31,32が形成されている。このアンテナ装置201は、外部接続端子31,32を回路基板上のランドに接続することにより表面実装される。
【0034】
積層体10の第1主面S1側(後述する絶縁体層1aを介して第1主面S1の内側に位置する面)には、第1線状導体11a〜11tが設けられている。つまり、第1線状導体11a〜11tは積層体10の第1主面S1側に20個配置されている。積層体10の第2主面S2側(後述する絶縁体層1eを介して第2主面S2の内側に位置する面)には、第2線状導体12a〜12tが設けられている。つまり、第2線状導体は積層体10の第2主面S2側に20個配置されている。
【0035】
積層体10の端面S3には、第1線状導体11a〜11tの第1端部と前記第2線状導体12a〜12tの第3端部との間をそれぞれ接続する第1端面導体21a〜21tが形成されている。つまり、第1端面導体は積層体10の端面S3に20個配置されている。積層体10の端面S4には、第1線状導体11a〜11tの第2端部と前記第2線状導体12a〜12tの第4端部との間をそれぞれ接続する第2端面導体22a〜22sが形成されている。つまり、第2端面導体は積層体10の端面S4に19個配置されている。
【0036】
上記第1線状導体11a〜11t、第2線状導体12a〜12t、第1端面導体21a〜21t、第2端面導体22a〜22sによって、扁平矩形ヘリカル状のコイルアンテナが構成されている。なお、第1線状導体、第2線状導体、第1端面導体、第2端面導体の個数は上記に限られない。
【0037】
図2はアンテナ装置201の分解平面図であり、積層体10の構成要素である絶縁体層1a〜1eについて表した図である。
【0038】
絶縁体層1aは第1主面S1側にあり、絶縁体層1eは第2主面S2側にある。絶縁体層1aの上面には外部接続端子31,32が形成されている。絶縁体層1bの上面には絶縁体層1bの外縁に位置する2つの端部と、この2つの端部の間を接続する主要部とで構成される複数の第1線状導体11a〜11tが形成されている。絶縁体層1eの上面には絶縁体層1eの外縁に位置する2つの端部と、この2つの端部の間を接続する主要部とで構成される複数の第2線状導体12a〜12tが形成されている。絶縁体層1b,1c,1dには、第1端面導体21a〜21tおよび第2端面導体22a〜22sが形成されている。
【0039】
絶縁体層1b,1c,1dは磁性体フェライトで構成され、絶縁体層1a,1eは非磁性フェライトで構成される。
【0040】
なお、
図2に示した例では、第1線状導体11a〜11tと第2線状導体12a〜12tとの間に3層の絶縁体層1b,1c,1dだけを設けたが、第1線状導体11a〜11tと第2線状導体12a〜12tとの間の絶縁体層は、1層または2層であってもよいし、4層以上であってもよい。層数を多くすることでコイル開口を大きくできる。例えば、非磁性体層である絶縁体層1a,1eの厚みはそれぞれ25μmとし、厚みが50μmの磁性体層である絶縁体層を5層積層して磁性体層の総厚みを例えば250μmとしてもよい。
【0041】
なお、第1、第2の線状導体の外側に磁性体の層が配置されてもよい。すなわち、積層体10を構成する全ての層が磁性体層であってもよい。例えば、
図2に示した絶縁体層1a,1eは磁性体フェライトであってもよい。但し、第1線状導体11a〜11tと第2線状導体12a〜12tとの外側を非磁性体層とすれば、アンテナ装置201のコイルアンテナから生じる磁束の磁路は開磁路のみとなり、アンテナ装置201のコイルアンテナから生じる磁束が、積層体10の第1主面S1、第2主面S2、端面S3および端面S4において積層体10の外側に広がる。よって、アンテナ装置201のコイルアンテナと通信相手側のアンテナとは磁界結合しやすくなり、アンテナ装置201のコイルアンテナと通信相手側のアンテナとの結合係数が上昇し、通信特性が良くなる。
【0042】
また、積層体10を構成する全ての層が非磁性体層であってもよい。
【0043】
図3(A)(B)は、第1線状導体、第1端面導体および第2端面導体の詳細な構成を示す部分平面図である。第1線状導体は、第1主要部110、第1端部111および第2端部112で構成される。第1端部111は第1主要部110に繋がる部分111Rと第1端面導体21に繋がる部分111Eとで構成される。第2端部112は第1主要部110に繋がる部分112Rと第2端面導体22に繋がる部分112Eとで構成される。同様に、第2線状導体は、第2主要部120、第3端部121および第4端部122で構成される。第3端部121は第2主要部120に繋がる部分121Rと第1端面導体21に繋がる部分121Eとで構成される。第4端部122は第2主要部120に繋がる部分122Rと第1端面導体21に繋がる部分122Eとで構成される。
【0044】
なお、第1主要部110、第2主要部120における「主要部」とは、第1線状導体および第2線状導体の主要な部分を意味し、例えば各線状導体の50%以上を占める部分である。
【0045】
第1端面導体21は、第1端部111および第3端部121に直接的に繋がる部分211と積層体10の端面S3に露出する部分212とで構成される。第2端面導体22は、第2端部112および第4端部122に直接的に繋がる部分221と積層体10の端面S4に露出する部分222とで構成される。
【0046】
図4Aは、第1線状導体、第1端面導体および第2端面導体の寸法について示す部分平面図であり、
図4Bは、第2線状導体、第1端面導体および第2端面導体の寸法について示す部分平面図である。
図4A、
図4Bにおいて、第1主要部110の幅は第1主要部110の延伸方向に直交する方向の幅W11rまたは複数の第1主要部110の配列方向の幅W11tで表すことができる。同様に、第2主要部120の幅は第2主要部120の延伸方向に直交する方向の幅W12rまたは複数の第2主要部120の配列方向の幅W12tで表すことができる。第1端部111の最大幅部分の線幅はW111Rであり、最小幅部分の線幅はW111Eである。また、第2端部112の最大幅部分の線幅はW112Rであり、最小幅部分の線幅はW112Eである。また、第3端部121の最大幅部分の線幅はW121Rであり、最小幅部分の線幅はW121Eである。また、第4端部122の最大幅部分の線幅はW122Rであり、最小幅部分の線幅はW122Eである。
【0047】
第1端面導体21の幅W21は第1主要部110の幅W11tまたはW11rより狭く、第2主要部120の幅W12t,W12rよりも狭い。また、第2端面導体22の幅W22は第1主要部110の幅W11tまたはW11rより狭く、第2主要部120の幅W12t,W12rよりも狭い。
【0048】
寸法W111RからW111Eで示す、第1端部111の線幅は第1主要部110の線幅W11t,W11rより細い。また、寸法W112RからW112Eで示す、第2端部112の線幅は第1主要部110の線幅W11t,W11rより細い。
【0049】
寸法W121RからW121Eで示す、第3端部121の線幅は第2主要部120の線幅W12t,W12rより細い。また、寸法W122RからW122Eで示す、第4端部122の線幅は第2主要部120の線幅W12t,W12rより細い。
【0050】
第1端部の一部111Rは第1主要部110から遠ざかるほど細くなる先細り形状である。また、第2端部の一部112Rは第1主要部110から遠ざかるほど細くなる先細り形状である。すなわち、第1端部111および第2端部112は、第1主要部110から離れるに従って線幅が次第に細くなる形状である。同様に、第3端部121および第4端部122は、第2主要部120から離れるに従って線幅が次第に細くなる形状である。
【0051】
第1端部111または第3端部121と第1端面導体21との接続部の幅WC21は第1端面導体21の線幅W21とは異なる。または、第2端部112または第4端部122と第2端面導体22との接続部の幅WC22は第2端面導体22の線幅W22とは異なる。本実施形態では、第1端部111および第3端部121と第1端面導体21との接続部の幅WC21は第1端面導体21の線幅W21より細く、第2端部112および第4端部122と第2端面導体22との接続部の幅WC22は第2端面導体22の線幅W22より細い。
【0052】
なお、逆に、第1端部111および第3端部121と第1端面導体21との接続部の幅WC21が第1端面導体21の線幅W21より太くてもよい。また、第2端部112および第4端部122と第2端面導体22との接続部の幅WC22が第2端面導体22の線幅W22より太くてもよい。
【0053】
図5は、第1線状導体が形成された、親基板状態での積層体の平面図である。
図6は親基板から個片を分離する際の分割ライン付近の構造を示す図である。但し、
図6では、
図2に示した絶縁体層1aに相当する絶縁体層を除いて図示している。
図7はアンテナ装置の端面付近の構造を示す部分斜視図である。アンテナ装置201の製造方法について、これらの図および
図2、
図3を参照して説明する。
【0054】
(1)外部接続端子31,32を絶縁体層1aに形成する。
【0055】
(2)第1線状導体11a〜11t用のペーストパターンを第1絶縁体層1bに形成する。また、第2線状導体12a〜12t用のペーストパターンを第2絶縁体層1eに形成する。
【0056】
(3)絶縁体層1aの外部接続端子31,32の所定位置に層間接続導体形成用の貫通孔をレーザー加工等により形成する。層間接続導体形成用の貫通孔の横断面は円形または楕円形とするのが好ましい。
【0057】
(4)絶縁体層1b,1c,1dの所定位置に貫通孔をレーザー加工等により形成する。
【0058】
(5)絶縁体層1a〜1dの各孔に導電性ペーストを充填し、層間接続導体を形成する。
【0059】
(6)絶縁体層1a〜1eを積層し、圧着して積層体を構成する。
【0061】
(8)ここまでの工程においては、各絶縁体層および積層体は親基板相当のサイズであり、複数のアンテナ装置形成領域を備える。その後、
図5に示す切断ラインCLv、CLhで切断することで、A1,A2,A3,A4・・・で示す領域をアンテナ装置として分離する。
【0062】
以上の方法でアンテナ装置は製造される。なお、絶縁体層1eの裏面に、反り抑制用の導体パターンとして、外部接続端子31,32と同様の導体パターンを形成してもよい。
【0063】
図6に示したように、第1端面導体21と第2端面導体22とは、連接された複数の層間接続導体で構成される。そして、これら層間接続導体を横断するように切断ラインCLhで切断される。この切断面に第1端面導体および第2端面導体が露出することになる。
【0064】
本実施形態では、絶縁体層1b,1eのいずれの線状導体についても、主要部と端部の形状、端面導体との関係等を上述の関係としたが、いずれかの絶縁体層について上記関係を満足してもよいし、配列された複数の線状導体のうち、いずれかの線状導体について上記関係を満足してもよいし、ある線状導体の一方の端部について上記関係を満足してもよい。
【0065】
本実施形態によれば次のような効果を奏する。
【0066】
(a)第1端面導体21a〜21tおよび第2端面導体22a〜22sを第1線状導体11a〜11tの主要部110、第2線状導体12a〜12tの主要部120よりも細くすることで、端面導体間のショート発生を防止することができる。また、第1、第2の線状導体の主要部110,120の幅は狭くされないので、抵抗値の上昇が抑えられる。さらに、線状導体間の間隔が広がらないので、磁束のマイナーループ(線状導体間を抜けるように周回する磁束ループ)が発生し難く、マイナーループに起因する通信特性の低下(例えば、アンテナ装置201のコイルアンテナと通信相手側のアンテナとの結合係数の低下)も防止できる。
【0067】
(b)第1端面導体21および第2端面導体22を構成する層間接続導体は、横断面形状がそれぞれ円形または楕円形である。よって、第1端面導体21および第2端面導体22に角部(例えば、多角形において180°よりも小さい内角を有する部分)が形成されないので、角部に電流が集中することによる抵抗値の増大が発生しない。
【0068】
また、第1端部111もしくは第3端部121と第1端面導体21との接続部は、積層体10の角より内側領域に配置され、または、第2端部112もしくは第4端部122と第2端面導体22との接続部は、積層体10の角より内側領域に配置される。よって、第1線状導体の第1端部111の角部および第2線状導体の第3端部121の角部に電流が集中することがなく、そのことで、抵抗値(損失)の増大を抑えることができる。
【0069】
(c)第1端面導体21と第2端面導体22とは、連接された複数の層間接続導体で構成され、これら層間接続導体を横断するように切断ラインCLhで切断されることにより、第1端面導体21、第2端面導体22の横断面積が大きくなるため、これら端面導体21,22の抵抗値を抑えることができる。また、親基板状態で製造するとき、第1主面および第2主面の面方向に層間接続導体が並ぶので、切断線の位置が相対的に多少ずれても、切断面の両側に端面導体を確実に残して切断できる。すなわち、親基板の切断位置の精度および第1、第2の端面導体の形成位置の精度の許容度が大きくなる。
【0070】
(d)第1線状導体(11a〜11t)の第1端部111および第2端部112は、第1主要部110から離れるに従い、線幅が次第に細くなる形状であり、第2線状導体(12a〜12t)の第3端部121および第4端部122は、第2主要部120から離れるに従い、線幅が次第に細くなる形状であるので、第1線状導体および第2線状導体に線幅が急激に変化する箇所が無くなり(線幅変化の不連続部が無くなり、インピーダンス変化が滑らかとなり)、電流集中やインピーダンスの不整合を抑えることができる。電流集中を抑えることで、抵抗値(損失)の増大を抑えることができる。また、インピーダンスの不整合を抑えることで、アンテナ装置201のコイルアンテナに電磁気エネルギーが拡散され、通信特性が良くなる。
【0071】
(e)第1線状導体(11a〜11t)の第1端部111および第2線状導体(12a〜12t)の第3端部121のうち第1端面導体21との接続部の線幅は第1端面導体21の線幅と異なり、第2端部112および第4端部122のうち第2端面導体22との接続部の線幅は第2端面導体22の線幅と異なっている。この構造により、第1端部111、第3端部121と第1端面導体21との接続位置のずれの許容度が大きくなり、第2端部112、第4端部122と第2端面導体22との接続位置のずれ許容度が大きくなり、第1端部111、第3端部121と第1端面導体21との接続不良や、第2端部112、第4端部122と第2端面導体22との接続不良を防止できる。
【0072】
(f)第1線状導体11a〜11tおよび第2線状導体12a〜12tの表面が絶縁体層で覆われているので、微小なゴミや実装時のはんだの飛び散りに起因する、第1、第2の線状導体におけるショート不良も発生しにくくなる。また、コイル軸方向のコイル部の長さを維持したまま実装用の外部接続端子を積層体の外側に形成することができるので、アンテナ装置を小型化できる。
【0073】
また、本実施形態においては、直方体状の積層体10を用いた例を示したが、積層体10の形状はこれに限られない。
【0074】
また、本実施形態においては、直方体状の積層体10の長手方向に沿って、複数の第1線状導体11a〜11tおよび複数の第2線状導体12a〜12tが順に配列される例を示したが、直方体状の積層体10の短手方向に沿って順に配列されてもよい。
【0075】
また、本実施形態においては、第1端面導体21と第2端面導体22の第1主要部110、第2主要部がストレートなラインである例を示したが、主要部110,120内で太さが変化する形状(たとえば台形や紡錘形)であってもよい。
【0076】
また、本実施形態においては、全ての第1端面導体21と全ての第2端面導体22がそれぞれ第1線状導体の第1主要部110、第2主要部120よりも細い例を示したが、第1端面導体21および第2端面導体22のいずれか一方だけが、いずれかの主要部よりも細く形成されてもよい。また、第1端面導体21および第2端面導体22のうち一部の端面導体だけが、それと接続される線状導体の主要部よりも細く形成されてもよい。いずれの場合でも発明の効果を奏する。
【0077】
また、本実施形態においては、全ての第1端部111と第2端部112がそれぞれ第1端面導体21と第2端面導体22よりも細い例を示したが、第1端部111と第2端部112のいずれか一方だけが、いずれかの端面導体よりも細く形成されてもよい。また、第1端部111と第2端部112のうち一部の端部だけが、それと接続される端面導体よりも細く形成されてもよい。いずれの場合でも発明の効果を奏する。
【0078】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、第1線状導体の第1端部および第2端部の幾つかの形状の例を示す。
図8(A)に示す例では、第1線状導体の第1端部111、第2端部112の線幅が、第1主要部110の線幅より細い。
図8(B)に示す例では、第1端部111、第2端部112は、第1主要部110の線幅から先細り形状の台形である。
図8(C)に示す例では、第1端部111は、第1主要部110に近接する部分111Rの線幅が、第1主要部110から離れた部分111Eの線幅より太く、第1主要部110の線幅より細い。同様に、第2端部112は、第1主要部110に近接する部分112Rの線幅が、第1主要部110から離れた部分112Eの線幅より太く、第1主要部110の線幅より細い。
図8(D)に示す例では、第1端部111のうち、第1主要部110に近接する部分111Rは、第1主要部110の線幅から先細りの形状となっている。また、第2端部112のうち、第1主要部110に近接する部分112Rは、第1主要部110の線幅から先細りの形状となっている。
【0079】
図8(A)(B)(C)(D)では、第1線状導体について示したが、第2線状導体についても同様に種々の形状とすることができる。
【0080】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では本発明のカード型情報媒体の例を示す。
図9(A)は第3の実施形態に係るカード型情報媒体の平面図であり、
図9(B)はカード型情報媒体が装着される電子機器の外観斜視図である。
【0081】
電子機器の筐体62は長手方向と短手方向とを有する直方体状の筺体であって、カード型情報媒体202を挿抜するカードスロット63を備えている。
【0082】
カード型情報媒体202の内部にはアンテナ装置201が設けられている。カード型情報媒体202は、例えばSD(Secure Digital)カード(登録商標)等のメモリーカードやSIM(Subscriber Identity Module)カードのように、端末本体への装着や取り外しが可能な小型のカード型デバイスであって、RFIC素子に接続されたアンテナ装置201を有する。
【0083】
筐体62内に設けられる配線基板にはスロットケースが取り付けられている。スロットケースは、配線基板との間にカード型情報媒体202が着脱できる空間(スロット)を構成する。
【0084】
このように、無線通信システムを有しない電子機器であっても、本発明のカード型情報媒体202を電子機器のカードスロット63に挿入することにより、HF帯やUHF帯の通信システムに対応した電子機器を構成することができる。したがって、本発明のカード型情報媒体202が挿入された電子機器は、磁界結合による近距離無線通信(Near Field Comunication)により、外部の電子機器やその他の外部装置とのデータの送受が可能となる。
【0085】
本実施形態において、「電子機器」とは、スマートフォンやフィーチャーフォン等の携帯電話端末、スマートウォッチやスマートグラス等のウェアラブル端末、ノートPCやタブレットPC等の携帯PC、カメラ、ゲーム機、玩具等の情報機器、ICタグ、SDカード、SIMカード、ICカード等の情報媒体等、様々な電子機器を指す。
【0086】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、アンテナ装置を内蔵する電子機器について示す。
図10は、第4の実施形態に係る電子機器203の筐体内部の構造を示す平面図である。本実施形態の電子機器は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ノートPC、カメラ、ゲーム機、玩具、スマートウォッチ等のウェアラブル端末などである。
【0087】
電子機器203はアンテナ装置201を備える。筐体91の内部には回路基板81,82、バッテリーパック83等が収められている。回路基板81にはUHF帯アンテナ92等が実装されている。回路基板81および回路基板82は同軸ケーブル86を介して接続されている。また、回路基板82にはUHF帯アンテナ93、通信回路を備えた給電回路85、表面実装部品84、給電回路85に接続されたアンテナ装置201が実装されている。給電回路85は、アンテナ装置201に対して給電する。表面実装部品84は例えば共振回路用のチップコンデンサである。
【0088】
なお、上述の実施形態では、主にNFC等の磁界結合を利用した通信システムにおけるアンテナ装置および電子機器を説明したが、上述の実施形態におけるアンテナ装置および電子機器は、磁界結合を利用した非接触電力伝送システム(電磁誘導方式、磁界共鳴方式)でも同様に用いることができる。例えば、上述の実施形態におけるアンテナ装置は、HF帯、特に6.78MHzまたは6.78MHz近傍の周波数で使用される磁界共鳴方式の非接触電力伝送システムの受電装置の受電アンテナ装置に適用できる。または、送電装置の送電アンテナ装置に適用できる。この場合、アンテナ装置は受電アンテナ装置や送電アンテナ装置として機能する。この場合でも、アンテナ装置のコイルアンテナが有するコイル導体の両端は、使用周波数帯(HF帯、特に6.78MHz近傍)を利用する受電回路や送電回路に接続される。
【0089】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。例えば、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。