(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記緊急停止は、燃料の供給及び商用電源の供給が停止された場合における第1緊急停止、及び燃料の供給のみ停止された場合における第2緊急停止を含み、上記コントローラは、上記第2緊急停止においては、上記燃料供給装置による燃料供給及び上記燃料電池モジュールからの電力の取り出しを停止させるシャットダウン停止を実行した後、上記空気供給装置を所定時間作動させるようにプログラムされ、上記第1緊急停止の場合には、上記コントローラの作動停止により燃料供給及び電力の取り出しが停止した後、上記緊急排出手段が自律的に上記発電室内の気体の排出を促進する請求項1記載の固体酸化物型燃料電池システム。
上記緊急排出手段は、商用電源の供給が停止されると自動的に開放される常開型バルブにより構成され、この常開型バルブが開放されることにより、大気から上記発電室内に空気を取り込む流路の流路抵抗が低下される請求項1記載の固体酸化物型燃料電池システム。
発電運転時において上記発電室内の気体を排出する排気ポートが、上記発電室の上部に設けられ、上記常開型バルブを通過した外気が流入する空気流入ポートは、上記発電室の上記排気ポートよりも下方に設けられている請求項5記載の固体酸化物型燃料電池システム。
大気から上記常開型バルブを介して上記発電室に至る流路の流路抵抗は、上記常開型バルブが開放されたとき、自然対流により上記発電室内の気体が上記排気ポートから排出され、外気が上記空気流入ポートから上記発電室内に吸入されるように設定されている請求項6記載の固体酸化物型燃料電池システム。
上記発電室内の気体を上記排気ポートを介して外気に排出する流路の流路抵抗は、上記燃料電池セルスタックの燃料極側から空気極側に至る流路の流路抵抗よりも小さく構成されている請求項7記載の固体酸化物型燃料電池システム。
上記燃料電池セルスタックは複数の燃料電池セルユニットから構成され、上記各燃料電池セルユニットの上端には燃料極側と空気極側を連通させる細管が設けられ、この細管は、出口が上記排気ポートに近接するように、上方に向けて延びている請求項8記載の固体酸化物型燃料電池システム。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)を示す全体構成図である。この
図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
【0030】
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して金属製のケース8が内蔵されている。この密閉空間であるケース8の下方部分である発電室10には、燃料と酸化剤ガス(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(
図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(
図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
【0031】
燃料電池モジュール2のケース8の上述した発電室10の上方には、燃焼部である燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料と残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。さらに、ケース8は断熱材7により覆われており、燃料電池モジュール2内部の熱が、外気へ発散するのを抑制している。
また、この燃焼室18の上方には、燃料を改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、残余ガスの燃焼ガスにより発電用の空気を加熱し、発電用の空気を予熱する熱交換器である空気用熱交換器22が配置されている。
【0032】
次に、補機ユニット4は、燃料電池モジュール2からの排気中に含まれる水分を結露させた水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料を遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)と、電源喪失時において、燃料流量調整ユニット38から流出する燃料ガスを遮断するバルブ39を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤ガスである空気の逆流を防止する逆止弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)とを備えている。
【0033】
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
【0034】
次に、
図2及び
図3により、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。
図2は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、
図3は、
図2のIII-III線に沿って断面図である。
図2及び
図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内のケース8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
【0035】
改質器20は、その上流端側の端部側面に純水、改質される燃料ガス、及び改質用空気を導入するための改質器導入管62が取り付けられている。
改質器導入管62は、改質器20の一端の側壁面から延びる円管であり、90゜屈曲されて概ね鉛直方向に延び、ケース8の上端面を貫通している。なお、改質器導入管62は、改質器20に水を導入する水導入管として機能している。また、改質器導入管62の上端には、T字管62aが接続されており、このT字管62aの概ね水平方向に延びる管の両側の端部には、燃料ガス及び純水を供給するための配管が夫々接続されている。水供給用配管63aはT字管62aの一方の側端から斜め上方に向けて延びている。燃料ガス供給用配管63bはT字管62aの他方の側端から水平方向に延びた後、U字型に屈曲され、水供給用配管63aと同様の方向に、概ね水平に延びている。
【0036】
一方、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20a、混合部20b、改質部20cが形成され、この改質部20cには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
【0037】
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。また、燃料ガス供給管64の鉛直部の途中には、流路が狭められた圧力変動抑制用流路抵抗部64cが設けられ、燃料ガスの供給流路の流路抵抗が調整されている。流路抵抗の調整については後述する。
【0038】
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
【0039】
一方、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。
また、
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
【0040】
次に
図4により燃料電池セルユニット16について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の両端部にそれぞれ接続されたキャップである内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
【0041】
燃料電池セル84の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路細管98が形成されている。
【0042】
この燃料ガス流路細管98は、内側電極端子86の中心から燃料電池セル84の軸線方向に延びるように設けられた細長い細管である。このため、マニホールド66(
図2)から、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃料ガス流路88に流入する燃料ガスの流れには、所定の圧力損失が発生する。従って、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流入側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。また、燃料ガス流路88から、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃焼室18(
図2)に流出する燃料ガスの流れにも所定の圧力損失が発生する。従って、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流出側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。
【0043】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0044】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0045】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0046】
次に
図5により燃料電池セルスタック14について説明する。
図5は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16は、8本ずつ2列に並べて配置されている。各燃料電池セルユニット16は、下端側がセラミック製の長方形の下支持板68(
図2)により支持され、上端側は、両端部の燃料電池セルユニット16が4本ずつ、概ね正方形の2枚の上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴がそれぞれ形成されている。
【0047】
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面と電気的に接続される空気極用接続部102bとを接続するように一体的に形成されている。また、各燃料電池セルユニット16の外側電極層92(空気極)の外表面全体には、空気極側の電極として、銀製の薄膜が形成されている。この薄膜の表面に空気極用接続部102bが接触することにより、集電体102は空気極全体と電気的に接続される。
【0048】
さらに、燃料電池セルスタック14の端(
図5では左端の奥側)に位置する燃料電池セルユニット16の空気極86には、2つの外部端子104がそれぞれ接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の内側電極端子86に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
【0049】
次に
図6により本実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。
図6は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体酸化物型燃料電池システム1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。また、制御部110には、マイクロプロセッサ、メモリ、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)が内蔵されており、これらにより、各センサからの入力信号に基づいて、補機ユニット4、インバータ54等が制御される。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
【0050】
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
【0051】
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
【0052】
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
【0053】
発電室温度センサ142は、
図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
【0054】
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
【0055】
次に、
図7乃至
図9を参照して、改質器20の詳細な構成を説明する。
図7は改質器20の斜視図であり、
図8は、天板を取り除いて改質器20の内部を示した斜視図である。
図9は、改質器20内部の燃料の流れを示す平面断面図である。
【0056】
図7に示すように、改質器20は、直方体状の金属製の箱であり、内部には燃料を改質するための改質触媒が充填されている。また、改質器20の上流側には水、燃料及び改質用空気を導入するための改質器導入管62が接続されている。さらに、改質器20の下流側には、内部で改質された燃料を流出させる燃料ガス供給管64が接続されている。
【0057】
図8に示すように、改質器20の内部には、その上流側に蒸発室である蒸発部20aが設けられ、この蒸発部20aに隣接して、下流側には混合部20bが設けられている。さらに、混合部20bに隣接して、下流側には改質部20cが設けられている。蒸発部20aの内部には、複数の仕切り板が配置されることにより、曲がりくねって蛇行する通路が形成されている。改質器20に導入された水は、温度が上昇した状態では蒸発部20a内で蒸発され、水蒸気となる。さらに、混合部20bは所定の容積を有するチャンバーから構成され、その内部にも、複数の仕切り板が配置されることにより、曲がりくねって蛇行する通路が形成されている。改質器20に導入された燃料ガス、改質用空気は、混合部20bの曲がりくねった通路を通りながら蒸発部20aで生成された水蒸気と混合される。
【0058】
一方、改質部20cの内部にも、複数の仕切り板が配置されることにより曲がりくねった通路が形成され、この通路に触媒が充填されている。蒸発部20a、混合部20bを通って燃料ガス、水蒸気及び改質用空気の混合物が導入されると、改質部20cでは、部分酸化改質反応及び水蒸気改質反応が発生する。さらに、燃料ガス、及び水蒸気の混合物が導入されると、改質部20cでは、水蒸気改質反応のみが発生する。
なお、本実施形態においては、蒸発部、混合部、改質部が一体に構成され、1つの改質器を形成しているが、変形例として、改質部のみを備えた改質器を設け、この上流側に隣接して混合部、蒸発室を設けることもできる。
【0059】
図8及び
図9に示すように、改質器20の蒸発部20aに導入された燃料ガス、水及び改質用空気は、改質器20の横断方向に蛇行して流れ、この間に、導入された水は蒸発し、水蒸気となる。蒸発部20aと混合部20bの間には、蒸発/混合部隔壁20dが設けられ、この蒸発/混合部隔壁20dには隔壁開口20eが設けられている。この隔壁開口20eは、蒸発/混合部隔壁20dの片側約半分のうちの、上側約半分の領域に設けられた長方形の開口部である。
また、混合部20bと改質部20cの間には、混合/改質部隔壁20fが設けられ、この混合/改質部隔壁20fには多数の連通孔20gを設けることにより狭小流路が形成されている。混合部20b内において混合された燃料ガス等は、これらの連通孔20gを通って改質部20cに流入する。
【0060】
改質部20cに流入した燃料等は、改質部20cの中央を長手方向に流れた後、2つに分岐して折返し、2つの通路は再び折り返して改質部20cの下流端に向かい、そこで合流されて燃料ガス供給管64に流入する。燃料は、このように蛇行した通路を通過しながら、通路に充填された触媒により改質される。なお、蒸発部20a内においては、或る量の水が短時間に急激に蒸発する突沸が発生し、内部の圧力が上昇する場合がある。しかしながら、混合部20bには所定容積のチャンバーが構成され、混合/改質部隔壁20fには狭小流路が形成されているため、改質部20cには、蒸発部20a内の急激な圧力変動の影響が及びにくい。従って、混合部20bのチャンバー及び混合/改質部隔壁20fの狭小流路は圧力変動吸収手段として機能する。
【0061】
次に、
図10及び
図11を新たに参照すると共に、
図2及び
図3を再び参照して、発電酸化剤ガス用熱交換器である空気用熱交換器22の構造を詳細に説明する。
図10は、ハウジング6内に収納された金属製のケース8及び空気用熱交換器22を示す斜視図である。
図11は、蒸発室用断熱材と、蒸発部の位置関係を示す断面図である。
【0062】
図10に示すように、空気用熱交換器22は、燃料電池モジュール2内のケース8の上方に配置された熱交換器である。また、
図2及び
図3に示すように、ケース8の内部には燃焼室18が形成され、複数の燃料電池セルユニット16、改質器20等が収納されているので、空気用熱交換器22は、これらの上方に位置する。空気用熱交換器22は、燃焼室18内で燃焼され、排気として排出される燃焼ガスの熱を回収、利用して、燃料電池モジュール2内に導入された発電用の空気を予熱するように構成されている。また、
図10に示すように、ケース8の上面と空気用熱交換器22の底面との間には、内部断熱材である蒸発室用断熱材23が、これらの間に挟まれるように配置されている。即ち、蒸発室用断熱材23は、改質器20と空気用熱交換器22の間に配置されている。さらに、
図10に示されている空気用熱交換器22及びケース8の外側を、外側断熱材である断熱材7が覆っている(
図2)。
【0063】
図2及び
図3に示すように、空気用熱交換器22は、複数の燃焼ガス配管70と発電用空気流路72と、を有する。また、
図2に示すように、複数の燃焼ガス配管70の一方の端部には、排気ガス集約室78が設けられており、この排気ガス集約室78は、各燃焼ガス配管70に連通されている。また、排気ガス集約室78には、排気ガス排出管82が接続されている。さらに、各燃焼ガス配管70の他方の端部は開放されており、この開放された端部は、ケース8の上面に形成された連通開口8aを介して、ケース8内の燃焼室18に連通されている。
【0064】
燃焼ガス配管70は、水平方向に向けられた複数の金属製の円管であり、各円管は夫々平行に配置されている。一方、発電用空気流路72は、各燃焼ガス配管70の外側の空間によって構成されている。また、発電用空気流路72の、排気ガス排出管82側の端部には、発電用空気導入管74(
図10)が接続されており、燃料電池モジュール2の外部の空気が、発電用空気導入管74を通って発電用空気流路72に導入される。なお、
図10に示すように、発電用空気導入管74は、排気ガス排出管82と平行に、空気用熱交換器22から水平方向に突出している。さらに、発電用空気流路72の他方の端部の両側面には、一対の連絡流路76(
図3、
図10)が接続されており、発電用空気流路72と各連絡流路76は、夫々、出口ポート76aを介して連通されている。
【0065】
図3に示すように、ケース8の両側面には、発電用空気供給路77が夫々設けられている。空気用熱交換器22の両側面に設けられた各連絡流路76は、ケース8の両側面に設けられた発電用空気供給路77の上部に夫々連通されている。また、各発電用空気供給路77の下部には、多数の吹出口77aが水平方向に並べて設けられている。各発電用空気供給路77を通って供給された発電用の空気は、多数の吹出口77aから、燃料電池モジュール2内の燃料電池セルスタック14の下部側面に向けて噴射される。
【0066】
また、ケース8内部の天井面には、隔壁である整流板21が取り付けられており、この整流板21には開口部21aが設けられている。
整流板21は、ケース8の天井面と改質器20の間に、水平に配置された板材である。この整流板21は、燃焼室18から上方に流れる気体の流れを整え、空気用熱交換器22の入り口(
図2の連通開口8a)に導くように構成されている。燃焼室18から上方へ向かう発電用空気及び燃焼ガスは、整流板21の中央に設けられた開口部21aを通って整流板21の上側に流入し、整流板21の上面とケース8の天井面の間の排気通路21bを
図2における左方向に流れ、空気用熱交換器22の入り口に導かれる。また、
図11に示すように、開口部21aは、改質器20の改質部20cの上方に設けられており、開口部21aを通って上昇した気体は、蒸発部20aとは反対側の、
図2、
図11における左側の排気通路21bに流れる。このため、蒸発部20aの上方の空間(
図2、
図11における右側)は、改質部20cの上方の空間よりも排気の流れが遅く、排気の流れが淀む気体滞留空間21cとして作用する。
【0067】
また、整流板21の開口部21aの縁には、全周に亘って縦壁21dが設けられており、この縦壁21dにより、整流板21の下側の空間から整流板21の上側の排気通路21bに流入する流路が狭められている。さらに、排気通路21bと空気用熱交換器22を連通させる連通開口8aの縁にも、全周に亘って下がり壁8b(
図2)が設けられており、この下がり壁8bにより、排気通路21bから空気用熱交換器22に流入する流路が狭められている。これらの縦壁21d、下がり壁8bを設けることにより、燃焼室18から空気用熱交換器22を通って燃料電池モジュール2の外部に至る排気の通路における流路抵抗が調整されている。流路抵抗の調整については後述する。
【0068】
蒸発室用断熱材23は、空気用熱交換器22の底面に、概ねその全体を覆うように取り付けられた断熱材である。従って、蒸発室用断熱材23は、蒸発部20a全体の上方に亘って配置されている。この蒸発室用断熱材23は、整流板21の上面とケース8の天井面の間に形成された排気通路21b及び気体滞留空間21c内の高温の気体が、空気用熱交換器22の底面を直接加熱するのを抑制するように配置されている。このため、燃料電池モジュール2の運転中においては、蒸発部20aの上方の排気通路に滞留している排気から、空気用熱交換器22の底面に直接伝わる熱が少なくなり、蒸発部20a周囲の温度は上昇しやすくなる。また、燃料電池モジュール2の停止後においては、蒸発室用断熱材23が配置されていることにより、改質器20からの熱の発散が抑制され、即ち、蒸発部20a周囲の熱が空気用熱交換器22に奪われにくくなり、蒸発部20aの温度低下が緩やかになる。
【0069】
なお、蒸発室用断熱材23は、外気への熱の散逸を抑制するために、燃料電池モジュール2のケース8及び空気用熱交換器22全体を覆っている外側断熱材である断熱材7とは別に、断熱材7の内部に配置された断熱材である。また、断熱材7は、蒸発室用断熱材23よりも断熱性が高く構成されている。即ち、断熱材7の内面と外面の間の熱抵抗は、蒸発室用断熱材23の上面と下面の間の熱抵抗よりも大きくなっている。即ち、断熱材7と蒸発室用断熱材23を同一の材料で構成する場合には、断熱材7を蒸発室用断熱材23よりも厚く構成する。
【0070】
次に、固体酸化物型燃料電池システム1の発電運転時における燃料、発電用空気、及び排気ガスの流れを説明する。
まず、燃料は、燃料ガス供給用配管63b、T字管62a、改質器導入管62を介して改質器20の蒸発部20aに導入されると共に、純水は、水供給用配管63a、T字管62a、改質器導入管62を介して蒸発部20aに導入される。従って、供給された燃料及び水はT字管62aにおいて合流され、改質器導入管62を通って蒸発部20aに導入される。発電運転中においては、蒸発部20aは高温に加熱されているため、蒸発部20aに導入された純水は、比較的速やかに蒸発され水蒸気となる。蒸発された水蒸気及び燃料は、混合部20b内で混合され、改質器20の改質部20cに流入する。水蒸気と共に改質部20cに導入された燃料は、ここで水蒸気改質され、水素を豊富に含む燃料ガスに改質される。改質部20cにおいて改質された燃料は、燃料ガス供給管64を通って下方に下り、分散室であるマニホールド66に流入する。
【0071】
マニホールド66は、燃料電池セルスタック14の下側に配置された比較的体積の大きい直方体状の空間であり、その上面に設けられた多数の穴が燃料電池セルスタック14を構成する各燃料電池セルユニット16の内側に連通している。マニホールド66に導入された燃料は、その上面に設けられた多数の穴を通って、燃料電池セルユニット16の燃料極側、即ち、燃料電池セルユニット16の内部を通って、その上端から流出する。また、燃料である水素ガスが燃料電池セルユニット16の内部を通過する際、空気極(酸化剤ガス極)である燃料電池セルユニット16の外側を通る空気中の酸素と反応して電荷が生成される。この発電に使用されずに残った残余燃料は、各燃料電池セルユニット16の上端から流出し、燃料電池セルスタック14の上方に設けられた燃焼室18内で燃焼される。
【0072】
一方、酸化剤ガスである発電用の空気は、発電用の空気供給装置である発電用空気流量調整ユニット45によって、発電用空気導入管74を介して燃料電池モジュール2内に送り込まれる。燃料電池モジュール2内に送り込まれた空気は、発電用空気導入管74を介して空気用熱交換器22の発電用空気流路72に導入され、予熱される。予熱された空気は、各出口ポート76a(
図3)を介して各連絡流路76に流出する。各連絡流路76に流入した発電用の空気は、燃料電池モジュール2の両側面に設けられた発電用空気供給路77を通って下方に流れ、多数の吹出口77aから、燃料電池セルスタック14に向けて発電室10内に噴射される。
【0073】
発電室10内に噴射された空気は、燃料電池セルスタック14の空気極側(酸化剤ガス極側)である各燃料電池セルユニット16の外側面に接触し、空気中の酸素の一部が発電に利用される。また、吹出口77aを介して発電室10の下部に噴射された空気は、発電に利用されながら発電室10内を上昇する。発電室10内を上昇した空気は、各燃料電池セルユニット16の上端から流出する燃料を燃焼させる。この燃焼による燃焼熱は、燃料電池セルスタック14の上方に配置された改質器20の蒸発部20a、混合部20b及び改質部20cを加熱する。燃料が燃焼され、生成された燃焼ガスは、上方の改質器20を加熱した後、改質器20上方の開口部21aを通って整流板21の上側に流入する。整流板21の上側に流入した燃焼ガスは、整流板21によって構成された排気通路21bを通って空気用熱交換器22の入り口である連通開口8aに導かれる。連通開口8aから空気用熱交換器22に流入した燃焼ガスは、開放された各燃焼ガス配管70の端部に流入し、各燃焼ガス配管70外側の発電用空気流路72を流れる発電用空気との間で熱交換を行い、排気ガス集約室78に集約される。排気ガス集約室78に集約された排気ガスは、排気ガス排出管82を介して燃料電池モジュール2の外部に排出される。これにより、蒸発部20aにおける水の蒸発、及び改質部20cにおける吸熱反応である水蒸気改質反応が促進されると共に、空気用熱交換器22内の発電用空気が予熱される。
【0074】
次に、
図12を新たに参照して、固体酸化物型燃料電池システム1の起動工程における制御を説明する。
図12は、起動工程における燃料等の各供給量、及び各部の温度の一例を示すタイムチャートである。なお、
図12の縦軸の目盛りは温度を示しており、燃料等の各供給量は、それらの増減を概略的に示したものである。
【0075】
図12に示す起動工程においては、常温の状態にある燃料電池セルスタック14の温度を、発電が可能な温度まで上昇させる。
まず、
図12の時刻t0において、発電用空気及び改質用空気の供給が開始される。具体的には、コントローラである制御部110が、発電用の空気供給装置である発電用空気流量調整ユニット45に信号を送って、これを作動させる。上述したように、発電用空気は、発電用空気導入管74を介して燃料電池モジュール2内に導入され、空気用熱交換器22、発電用空気供給路77を経て発電室10内に流入する。また、制御部110は、改質用の空気供給装置である改質用空気流量調整ユニット44に信号を送って、これを作動させる。燃料電池モジュール2内に導入された改質用空気は、改質器20、マニホールド66を経て、各燃料電池セルユニット16の内部に流入し、その上端から流出する。なお、時刻t0においては、まだ燃料が供給されていないため、改質器20内において改質反応は発生しない。本実施形態においては、
図12の時刻t0において開始される発電用空気の供給量は約100L/minであり、改質用空気の供給量は約10.0L/minである。
【0076】
次いで、
図12の時刻t0から所定時間後の時刻t1において、燃料の供給が開始される。具体的には、制御部110が、燃料供給装置である燃料流量調整ユニット38に信号を送って、これを作動させる。本実施形態においては、時刻t1において開始される燃料の供給量は約5.0L/minである。燃料電池モジュール2内に導入された燃料は、改質器20、マニホールド66を経て、各燃料電池セルユニット16の内部に流入し、その上端から流出する。なお、時刻t1においては、まだ改質器の温度が低温であるため、改質器20内において改質反応は発生しない。
【0077】
次に、
図12の時刻t1から所定時間経過した時刻t2において、供給されている燃料への点火工程が開始される。具体的には、点火工程においては、制御部110が、点火手段である点火装置83(
図2)に信号を送り、各燃料電池セルユニット16の上端から流出する燃料に点火する。点火装置83は、燃料電池セルスタック14の上端近傍で繰り返し火花を発生させ、各燃料電池セルユニット16の上端から流出する燃料に点火する。
【0078】
図12の時刻t3において着火が完了すると、改質用の水の供給が開始される。具体的には、制御部110が、水供給装置である水流量調整ユニット28(
図6)に信号を送り、これを作動させる。本実施形態においては、時刻t3に開始される水の供給量は、2.0cc/minである。時刻t3においては、燃料供給量は、従前の約5.0L/minに維持される。また、発電用空気及び改質用空気の供給量も、従前の値に維持される。なお、この時刻t3において、改質用空気中の酸素O
2と燃料中の炭素Cの比O
2/Cは約0.32になる。
【0079】
図12の時刻t3において着火された後、供給された燃料は、各燃料電池セルユニット16の上端からオフガスとして流出し、ここで燃焼される。この燃焼熱は、燃料電池セルスタック14の上方に配置された改質器20を加熱する。ここで、改質器20の上方(ケース8の上)には、蒸発室用断熱材23が配置されており、これにより、燃料の燃焼開始直後において、改質器20の温度は常温から急激に上昇する。蒸発室用断熱材23の上に配置されている空気用熱交換器22には外気が導入されているため、空気用熱交換器22は、特に燃焼開始直後においては温度が低く、冷却源となりやすい。本実施形態においては、ケース8の上面と空気用熱交換器22の底面の間に蒸発室用断熱材23が配置されていることにより、ケース8内の上部に配置された改質器20から空気用熱交換器22への熱の移動が抑制され、ケース8内の改質器20付近には熱が籠もりやすくなる。加えて、蒸発部20aの上方の、整流板21の上側の空間は、燃焼ガスの流れが遅くなる気体滞留空間21c(
図2)として構成されているため、蒸発部20a付近は二重に断熱され、より急速に温度が上昇する。
【0080】
このように、蒸発部20aの温度が急速に上昇することにより、オフガスの燃焼開始後短時間で水蒸気を生成することが可能になる。また、蒸発部20aには、改質用の水が少量ずつ供給されているため、多量の水が蒸発部20aに貯留されている場合に比べ、わずかな熱で水を沸点まで加熱することができ、早急に水蒸気の供給を開始することができる。さらに、水流量調整ユニット28の作動開始直後から水が流入するため、水の供給遅れによる、蒸発部20aの過剰な温度上昇、及び水蒸気の供給遅れを回避することができる。
【0081】
なお、オフガスの燃焼開始後、或る程度の時間が経過すると、燃焼室18から空気用熱交換器22に流入する排気ガスにより、空気用熱交換器22の温度も上昇する。改質器20と空気用熱交換器22の間を断熱する蒸発室用断熱材23は、断熱材7の内側に設けられた断熱材である。従って、蒸発室用断熱材23は、燃料電池モジュール2からの熱の散逸を抑制するものではなく、オフガスの燃焼開始直後において、改質器20、特に、その蒸発部20aの温度を急速に上昇させる。
【0082】
このようにして、改質器20の温度が上昇した時刻t4において、蒸発部20aを経て改質部20bに流入した燃料と改質用空気が、式(1)に示す部分酸化改質反応を起こすようになる。
C
mH
n+xO
2 → aCO
2+bCO+cH
2 (1)
この部分酸化改質反応は発熱反応であるため、改質部20b内で部分酸化改質反応が発生すると、その周囲の温度が局部的に急上昇する。
【0083】
一方、本実施形態においては、着火が確認された直後の時刻t3から改質用の水の供給が開始されており、また、蒸発部20aの温度が急速に上昇するように構成されているため、時刻t4においては、既に蒸発部20a内で水蒸気が生成され、改質部20bに供給されている。即ち、オフガスに着火された後、改質部20bの温度が部分酸化改質反応が発生する温度に到達する所定時間前から水の供給が開始され、部分酸化改質反応が発生する温度に到達した時点においては、蒸発部20aに所定量の水が貯留され、水蒸気が生成されている。このため、部分酸化改質反応の発生により温度が急上昇すると、改質部20bに供給されている改質用の水蒸気と燃料が反応する水蒸気改質反応が発生する。この水蒸気改質反応は、式(2)に示す吸熱反応であり、部分酸化改質反応よりも高い温度で発生する。
C
mH
n+xH
2O → aCO
2+bCO+cH
2 (2)
【0084】
このように、
図12の時刻t4に到達すると、改質部20b内では部分酸化改質反応が発生するようになり、また、部分酸化改質反応が発生することによる温度上昇で、水蒸気改質反応も同時に発生するようになる。従って、時刻t4以降に改質部20b内で発生する改質反応は、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応が混在した式(3)に示すオートサーマル改質反応(ATR)となる。即ち、時刻t4においてATR1工程が開始される。
C
mH
n+xO
2+yH
2O → aCO
2+bCO+cH
2 (3)
【0085】
このように、本発明の実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1では、起動工程の全期間において水が供給されており、部分酸化改質反応(POX)が単独で発生することはない。なお、
図12に示すタイムチャートでは、時刻t4における改質器温度は約200℃である。この改質器温度は部分酸化改質反応が発生する温度よりも低いが、改質器温度センサ148(
図6)により検出されている温度は改質部20bの平均的な温度である。実際には、時刻t4においても、改質部20bは部分的には部分酸化改質反応が発生する温度に到達しており、発生した部分酸化改質反応の反応熱により、水蒸気改質反応をも誘発される。このように、本実施形態においては、着火された後、改質部20bが部分酸化改質が発生する温度に到達する前から、水の供給が開始されており、部分酸化改質反応が単独で発生することがない。
【0086】
次に、改質器温度センサ148による検出温度が約500℃以上に到達すると、
図12の時刻t5において、ATR1工程からATR2工程に移行される。時刻t5において、水供給量が2.0cc/minから3.0cc/minに変更される。また、燃料供給量、改質用空気供給量及び発電用空気供給量は従前の値が維持される。これにより、ATR2工程における水蒸気と炭素の比S/Cは0.64に増加される一方、改質用空気と炭素の比O
2/Cは0.32に維持される。このように、改質用空気と炭素の比O
2/Cを一定に維持しながら、水蒸気と炭素の比S/Cを増加させることにより、部分酸化改質可能な炭素の量を低下させずに、水蒸気改質可能な炭素の量が増加される。これにより、改質部20bにおける炭素析出のリスクを確実に回避しながら、改質部20bの温度上昇と共に、水蒸気改質される炭素の量を増加させることができる。
【0087】
さらに、
図12の時刻t6本実施形態において、発電室温度センサ142による検出温度が約400℃以上に到達すると、ATR2工程からATR3工程に移行される。これに伴い、燃料供給量が5.0L/minから4.0L/minに変更され、改質用空気供給量が9.0L/minから6.5L/minに変更される。また、水供給量及び発電用空気供給量は従前の値が維持される。これにより、ATR3工程における水蒸気と炭素の比S/Cは0.80に増加される一方、改質用空気と炭素の比O
2/Cは0.29に減少される。
【0088】
さらに、
図12の時刻t7において、発電室温度センサ142による検出温度が約550℃以上に到達すると、SR1工程に移行される。これに伴い、燃料供給量が4.0L/minから3.0L/minに変更され、水供給量が3.0cc/minから7.0cc/minに変更される。また、改質用空気の供給は停止され、発電用空気供給量は従前の値が維持される。これにより、SR1工程では、改質部20b内で専ら水蒸気改質が発生するようになり、水蒸気と炭素の比S/Cは、供給された燃料の全量を水蒸気改質するために適切な2.49に設定される。
図12の時刻t7においては、改質器20、燃料電池セルスタック14とも、十分に温度が上昇しているので、改質部20bにおいて部分酸化改質反応が発生していなくとも、水蒸気改質反応を安定して発生させることができる。
【0089】
次に、
図12の時刻t8において、発電室温度センサ142による検出温度が約600℃以上に到達すると、SR2工程に移行される。これに伴い、燃料供給量が3.0L/minから2.5L/minに変更され、水供給量が7.0cc/minから6.0cc/minに変更される。また、発電用空気供給量は従前の値が維持される。これにより、SR2工程では、水蒸気と炭素の比S/Cは、2.56に設定される。
【0090】
さらに、SR2工程を所定時間実行した後、発電工程に移行する。発電工程においては、燃料電池セルスタック14からインバータ54(
図6)に電力が取り出され、発電が開始される。なお、発電工程では、改質部20bにおいて、専ら水蒸気改質により燃料が改質される。また、発電工程においては、燃料電池モジュール2に対して要求される出力電力に対応して、燃料供給量、発電用空気供給量、及び水供給量が変更される。
【0091】
次に、
図1を再び参照して、燃料電池モジュール2の発電室10と外気の間を連通させる常開型バルブ46を説明する。
図1に示すように、発電用の空気は、空気供給源40から逆止弁42、発電用空気流量調整ユニット45を介して燃料電池モジュール2の発電室10内に供給される。一方、常開型バルブ46は、空気供給源40と発電室10を直接連通させる管路の途中に設けられており、これが開放されると、空気供給系統のうちの逆止弁42及び発電用空気流量調整ユニット45がバイパスされ、空気供給源40である外気と発電室10が直接連通される。これにより、大気から発電室10内に空気を取り込む流路の流路抵抗が低下される。なお、空気供給源40と常開型バルブ46の間には空気フィルター(図示せず)等が設けられており、常開型バルブ46が開放された状態においても、空気供給源40と発電室10との間には所定の流路抵抗が存在する。常開型バルブ46は、所謂ノーマルオープン型のバルブであり、これを作動させる電源が喪失されると開放された状態となる。固体酸化物型燃料電池システム1の通常動作中は、常開型バルブ46は常に閉鎖された状態にあり、緊急停止により常開型バルブ46への給電が不可能な状態となると自動的に開放される。即ち、常開型バルブ46は、給電が途切れると、制御部110からの制御信号を受けることなく自律的に開放される。
【0092】
次に、
図13乃至
図15を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム1の停止について説明する。
図13は、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム1における緊急停止モードの選択を行う停止判断のフローチャートである。
図13のフローチャートは、所定の条件に基づいて、何れの緊急停止モードを選択するかを判断するためのフローチャートであり、固体酸化物型燃料電池システム1の運転中において、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0093】
まず、
図13のステップS1においては、燃料供給源30(
図1)からの燃料ガスの供給、及び商用電源からの電力の供給が停止されているか否かが判断される。燃料ガス及び電力の両方の供給が停止されている場合には、ステップS2に進み、ステップS2においては、第1緊急停止モードが選択されて、
図13のフローチャートの1回の処理が終了する。第1緊急停止モードが選択される場合としては、自然災害等により、燃料ガス及び電力の供給が停止された場合が想定され、このような停止が行われる頻度は極めて少ないと考えられる。
【0094】
一方、燃料ガス及び電力の少なくとも一方が供給されている場合には、ステップS3に進み、ステップS3においては、燃料ガスの供給が停止され、且つ電力が供給されている状態であるか否かが判断される。燃料ガスの供給が停止され、且つ電力が供給されている場合にはステップS4に進み、それ以外の場合には
図13のフローチャートの1回の処理が終了する。ステップS4においては、第2緊急停止モードが選択されて、
図13のフローチャートの1回の処理が終了する。第2緊急停止モードが選択される場合としては、燃料ガス供給経路の工事等により、一時的に燃料ガスの供給が停止された場合等が想定され、このような停止が行われる頻度は少ないと考えられる。
【0095】
なお、電力の供給が停止され、燃料ガスの供給が継続されている場合には、
図13のフローチャートによっては、何れの緊急停止モードも選択されない。このような場合においては、本実施形態による固体酸化物型燃料電池システム1は、燃料電池セルスタック14によって生成された電力によって補機ユニット4を作動させることにより、発電を継続することができる。なお、電力の供給停止が所定の長時間に亘って継続した場合において、発電が停止されるように本発明を構成することもできる。
【0096】
次に、
図14及び
図15を参照して、各緊急停止モードおける停止処理を説明する。
図14は本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム1において、第1緊急停止モード(
図13のステップS2)により停止された場合の停止挙動の一例を模式的に時系列で表したタイムチャートである。
【0097】
まず、
図14の時刻t101において、燃料供給源30(
図1)からの燃料ガスの供給、及び商用電源からの電力の供給が停止され、これが
図13に示したフローチャートのステップS1において判定されると、第1緊急停止モード(ステップS2)により制御部110の作動は直ちに停止される。制御部110の作動が停止されると、燃料流量調整ユニット38による燃料の供給、水流量調整ユニット28による水の供給、及び発電用空気流量調整ユニット45による発電用空気の供給が短時間に停止する。また、インバータ54による燃料電池モジュール2からの電力の取り出しも停止する(出力電流=0)。第1緊急停止モードにより固体酸化物型燃料電池システム1が停止されると、常開型バルブ46(
図1)への電力供給が喪失され、常開型バルブ46が開放される。
【0098】
燃料供給及び電力の取り出しが停止されるシャットダウン停止の後、燃料電池モジュール2は、この状態で自然放置される。このため、各燃料電池セルユニット16内部の燃料極側に存在していた燃料は、外部の空気極側との圧力差に基づいて、燃料ガス流路細管98(
図4)を通って空気極側に噴出される。また、各燃料電池セルユニット16の空気極側に存在していた空気(及び燃料極側から噴出した燃料)は、空気極側の圧力(発電室10(
図1)内の圧力)と大気圧との圧力差に基づいて、排気通路21b、空気用熱交換器22等を通って、燃料電池モジュール2の外部に排出される。従って、
図14に示すように、時刻t101のシャットダウン停止の後、各燃料電池セルユニット16の燃料極側及び空気極側の圧力は、自然に低下する。なお、上記のように、時刻t101においてシャットダウン停止されると常開型バルブ46も開放され、発電室10と外気(空気供給源40)の間は、この経路によっても連通される。しかしながら、常開型バルブ46を介して外気と発電室10を連通させる流路の流路抵抗は、空気用熱交換器22等を通って外気に至る流路の流路抵抗よりも大きく設定されている。このため、発電室10内の気体のほぼ全量が空気用熱交換器22等を通って排出され、常開型バルブ46を介して外気と連通される流路からは空気が吸入される。
【0099】
また、
図14に示すように、時刻t101のシャットダウン停止の直後においては、各燃料電池セルユニット16の燃料極側と空気極側の圧力差が最も大きく、燃料極側に存在している燃料が燃料電池セルユニット16上端部の燃料ガス流路細管98を通って空気極側に大量に流出する。シャットダウン停止直後の燃料電池セルユニット16の温度が高い状態において、燃料中の水素等が燃料電池セルユニット16の空気極に触れると、空気極が還元され、損傷される虞がある。しかしながら、燃料極側から空気極側に流出した水素は空気よりも軽いため、燃料電池モジュール2内の燃料電池セルスタック14よりも上方に滞留し、空気極への接触が回避される。また、燃料電池モジュール2内の上部に滞留した燃料ガスは、燃料電池セルスタック14上方の整流板21の開口部21a(
図2)を通って空気用熱交換器22に流入し、燃料電池モジュール2外へ排出される。従って、整流板21の開口部21aは、発電室10内の気体を空気用熱交換器22側に排出する排気ポートとして機能する。
【0100】
さらに、燃料極側の燃料は、細管である燃料ガス流路細管98を通って空気極側に噴出する。この燃料ガス流路細管98は出口が排気ポートである開口部21aに近接するように上方に向けて延びている。燃料は、上方の開口部21aに向けて噴射されるため、噴射された燃料は空気極側から遠ざけられ、空気極還元のリスクが軽減される。また、燃料極側の燃料が燃料ガス流路細管98を通って空気極側に噴出する流路抵抗は、発電室10内の気体が排気ポート(開口部21a)を通って外気に排出される流路の流路抵抗よりも大きく構成されている。このため、燃料極側から空気極側へ流出する燃料の流量は、開口部21aを通って外気に排出される気体の流量よりも少なくなり、流出した燃料が発電室10内に充満するのを防止することができる。
【0101】
加えて、時刻t101のシャットダウン停止後においては、常開型バルブ46(
図1)が開放されている。外気(空気供給源40)から常開型バルブ46を通って燃料電池モジュール2に至る流路は、発電用空気導入管74(
図10)、空気用熱交換器22の発電用空気流路72(
図3)、出口ポート76a(
図3)、発電用空気供給路77(
図3)を通って、発電室10に開口している多数の吹出口77aに連通している。従って、各燃料電池セルユニット16から流出した温度の高い燃料が、自然対流により発電室10上方の開口部21a(
図2)から排出されると、常開型バルブ46を通って取り込まれた外気が発電室10下部に設けられた吹出口77aから発電室10内に引き込まれる。換言すれば、常開型バルブ46を介して吹出口77aから発電室10内に空気が吸入されることにより、各燃料電池セルユニット16から流出した燃料が、発電室10から排出されやすくなる。従って、吹出口77aは常開型バルブ46を通過した外気が流入する空気流入ポートとして機能する。また、常開型バルブ46は、緊急停止により制御部110の作動が停止された状態において、自然対流を促進することによって発電室10内の気体の排出を促進する緊急排出手段として機能する。このように、第1緊急停止モードによりシャットダウン停止が行われた際に常開型バルブ46が開放されることにより、燃料極側から空気極側に流出した燃料が空気極に触れ、これを損傷するリスクがより確実に回避される。
【0102】
次に、
図15を参照して、第2緊急停止モードを説明する。
図15は本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム1において、第2緊急停止モード(
図13のステップS4)が実行された場合の停止挙動の一例を模式的に時系列で表したタイムチャートである。
【0103】
まず、第2緊急停止モードは、燃料ガスの供給のみが停止された場合に実行される停止モードである。
図15の時刻t201において、シャットダウン停止が行われると、燃料流量調整ユニット38による燃料の供給、及び水流量調整ユニット28による水の供給が短時間に停止する。また、インバータ54による燃料電池モジュール2からの電力の取り出しも停止する(出力電流=0)。第2緊急停止モードが実行された場合には、商用電源の供給は喪失されていないため、制御部110の作動が停止されることはなく、また、常開型バルブ46も閉鎖されたままである。第2緊急停止モードでは、制御部110に内蔵されたシャットダウン停止回路110aは、時刻t201のシャットダウン停止の直後に、温度降下制御を実行し、発電用空気流量調整ユニット45を所定時間に亘って最大出力で作動させる。なお、本実施形態においては、発電用空気流量調整ユニット45を作動させる時間は約2分間である。さらに、
図15の時刻t202において、発電用空気流量調整ユニット45が停止された後は、第1緊急停止モードと同様に自然放置されるが、常開型バルブ46は閉鎖された状態に維持される。即ち、第2緊急停止モードでは、緊急排出手段は作動されない。
【0104】
第2緊急停止モードによる停止では、シャットダウン停止の後、燃料電池セルユニット16の空気極側に空気が送り込まれる。これにより、
図15のA部において、空気極側の温度が、第1緊急停止モードの場合(
図14)よりも急激に低下している。従来の燃料電池システムにおいては、燃料供給が完全に停止された後、燃料電池セルスタック14の温度が酸化抑制温度に低下するまでは、空気が燃料極側に逆流して燃料極を酸化させ、損傷する危険があると考えられていたため、空気の供給は必ず停止されていた。しかしながら、燃料供給を停止した後でも、所定時間の間は安全に空気極側に発電用の空気を供給できることが、本件発明者により見出された。
【0105】
即ち、シャットダウン停止の直後においては、各燃料電池セルユニット16の燃料極側に十分に燃料ガスが残存しており、これが各燃料電池セルユニット16上端から噴出している状態であるため、空気極側に空気を送り込むことにより燃料極側に空気が逆流することはない。即ち、この状態においては、発電用空気流量調整ユニット45によって空気を送り込むことにより、空気極側の圧力が上昇するが、依然として燃料極側の圧力が空気極側の圧力よりも高い状態にある。また、燃料極側から空気極側に流出した燃料ガスは、発電用空気流量調整ユニット45によって空気が送り込まれることにより、送り込まれた空気と共に燃料電池モジュール2外に排出される。
【0106】
さらに、時刻t202において空気の供給が停止された後は、第1緊急停止モードと同様に自然放置される。しかしながら、第2緊急停止モードにおいては、シャットダウン停止後に発電用空気流量調整ユニット45が作動されるため、燃料極側から空気極側に流出した燃料ガスは、燃料電池モジュール2外に排出されている。また、
図15の時刻t202においても、燃料極側の圧力は空気極側よりも高いため、発電用空気流量調整ユニット45の停止後も燃料極側から燃料ガスが流出する。しかしながら、時刻t202においては、燃料極側と空気極側の圧力が接近しているため、燃料極側から流出する燃料ガスは大幅に減少している。
【0107】
このため、発電用空気流量調整ユニット45停止後に噴出された燃料ガスである水素は、燃料電池モジュール2内の上部(燃料電池セルスタック14よりも上方)に滞留するが、噴出された燃料ガスは、各燃料電池セルユニット16の空気極には、実質的に接触しない。従って、常開型バルブ46が閉鎖された状態であっても、燃料ガスが高温の空気極に接触することにより還元され、空気極が劣化されることはない。
【0108】
本発明の実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1によれば、緊急停止により制御部110の作動が停止された状態において、発電室10内の気体の排出を促進する緊急排出手段として、常開型バルブ46(
図1)を開放させるので、制御部110による制御が喪失された状態においても、発電室10内に流出した燃料ガスを効果的に排出することができる。これにより、緊急停止後に発電室10内に流出した燃料ガスが空気極に接触して、燃料電池セルスタック14の空気極を劣化させ、又は損傷するリスクをより確実に回避することができる。
【0109】
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1によれば、燃料の供給のみ停止された場合における第2緊急停止(
図13のステップS4)では、商用電源の供給が喪失されていないので、シャットダウン停止(
図15の時刻t201)を実行した後、発電用空気流量調整ユニット45を所定時間(
図15の時刻t201〜t202)作動させる。これにより、発電室10内に流出した燃料ガスを強制的に排気し、空気極の劣化、損傷を確実に防止することができる。また、発電用空気流量調整ユニット45はシャットダウン停止後所定時間だけ作動させるので、燃料供給が停止された後、燃料極側の圧力が低下した状態において空気が供給されることによる、空気の燃料極側への逆流を防止することができる。さらに、燃料及び商用電源の供給が停止された場合における第1緊急停止(
図13のステップS2)では、制御部110の作動が停止された状態(
図14の時刻t101以降)において、常開型バルブ46が自律的に開放されることにより発電室10内の気体の排出が促進される。これにより、燃料及び商用電源の供給が停止された場合においても空気極の劣化、損傷を確実に防止することができる。
【0110】
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1によれば、商用電源の供給が喪失されていない第2緊急停止(
図13のステップS4)の場合には、緊急排出手段である常開型バルブ46は開放されず、発電用空気流量調整ユニット45の作動のみで流出した燃料ガスを確実に排気することができる。
【0111】
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1によれば、常開型バルブ46(
図1)の開放により発電室10内の自然対流が促進され、発電室10内の気体が排出されるので、発電室10内の気体を強制的に排出するための動力を使用することなく、気体の排出を促進することができる。
【0112】
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1によれば、常開型バルブ46(
図1)を緊急排出手段として利用しているので、簡単な構成により確実に緊急の排出を行うことができる。
【0113】
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1によれば、空気の供給に通常使用されている空気供給系統の一部をバイパスする(
図1)だけで、大気から発電室10内に空気を取り込む流路抵抗を低下させることができ、簡単な構造で緊急排出手段を構成することができる。
【0114】
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1によれば、常開型バルブ46(
図1)を通った外気が発電室10の下方から流入され、温度の高い発電室10内の気体を上部の開口部21a(
図3)から排出するので、自然対流により効率的に燃料を排出することができる。
【0115】
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1において、大気から常開型バルブ46(
図1)を介して発電室10に至る流路の流路抵抗は、常開型バルブ46が開放されたとき、自然対流により発電室10内の気体が開口部21aを通って排出され、外気が各吹出口77a(
図3)から発電室10内に吸入されるように設定されている。これにより、常開型バルブ46が開放された際に、発電室10内の気体が常開型バルブ46を逆流して外気に排出されることがなく、高温の気体が通常の排気経路ではない出口から外気に排出されるのを防止することができる。
【0116】
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1において、発電室10内の気体を開口部21a(
図3)を介して外気に排出する流路の流路抵抗は、燃料電池セルスタック14の燃料極側から空気極側へ燃料ガス流路細管98(
図4)を介して燃料が流出される流路の流路抵抗よりも小さく構成されている。これにより、燃料極側から空気極側へ流出する燃料の流量を、開口部21aを通って外気に排出される気体の流量よりも少なくすることができ、流出した燃料が発電室10内に充満するのを防止することができる。
【0117】
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1によれば、シャットダウン停止(
図14の時刻t101、
図15の時刻t201)後に、燃料は燃料電池セルユニット16上端の燃料ガス流路細管98(
図4)を通って燃料極側から空気極側に噴射され、燃料ガス流路細管98の出口は開口部21a(
図3)に近接するように延びているので、各燃料電池セルユニット16から空気極側に噴射された燃料が速やかに開口部21aに流入し、噴射された燃料が空気極に接触するリスクをより低下させることができる。また、燃料ガス流路細管98の流路断面積の変更により、開口部21aを介して排気する流路の流路抵抗が、燃料極側から空気極側に至る流路の流路抵抗よりも小さくなるように、容易に調整することができる。
【0118】
次に、
図16を参照して、本発明の変形実施形態による固体酸化物型燃料電池システムを説明する。
図16は、本発明の変形実施形態による固体酸化物型燃料電池システムの全体構成図である。
上述した本発明の実施形態においては、緊急停止により制御部110の作動が停止された状態において、発電室10内の気体の排出を促進する緊急排出手段として常開型バルブ46が使用されていた。本変形例においては、緊急排出手段として、蓄電池により作動される排出用ファンが使用されている点が上述した実施形態とは異なり、その他の構成は上述した実施形態と同様である。
【0119】
図16に示すように、本発明の変形実施形態による固体酸化物型燃料電池システム200には、緊急排出手段として排出用ファン202が備えられている。排出用ファン202は、燃料電池モジュール2からの排気ガス排出管(
図10における「排気ガス排出管82」に相当)に設けられた送風ファンである。排出用ファン202は、蓄電池202aの電力により作動するように構成されており、第1緊急停止モードにより制御部の作動が停止された後、自律的に所定時間作動される。即ち、排出用ファン202は、制御部110からの制御信号や、電力の供給を受けることなく、蓄電池202aの電力により所定時間作動し、発電室10内の気体を排出する。排出用ファン202が作動されることにより、発電室10内の気体(燃料極側から流出した燃料ガス及び空気)が、空気用熱交換器22を介して強制的に燃料電池モジュール2の外に排出される。これにより、燃料の供給及び商用電源の供給が停止された場合においても、シャットダウン停止後に燃料極側から空気極側に流出した燃料ガスが燃料電池セルユニット16の空気極に触れ、空気極を還元して損傷させるリスクをより確実に回避することができる。
【0120】
また、排出用ファン202は、燃料電池モジュール2の排気側に設けられているが、排出用ファン202の代わりに、或いは排出用ファン202に加えて、燃料電池モジュール2の吸気側に排出用ファンを設けることもできる。
図16に想像線で示すように、燃料電池モジュール2の吸気側に排出用ファン204を設けることができる。排出用ファン204も、排出用ファン202と同様に、蓄電池204aの電力により作動するように構成されており、第1緊急停止モードにより制御部の作動が停止された後、自律的に所定時間作動される。排出用ファン204が作動されると、発電室10の下部から外気が強制的に押し込まれ、発電室10の上方に滞留している燃料ガスが、空気用熱交換器22を通って燃料電池モジュール2の外に排出される。これにより、燃料極側から流出した燃料ガスが空気極に触れ、損傷させるリスクをより確実に回避することができる。
【0121】
さらに、上述した本発明の実施形態においては、固体酸化物型燃料電池システム1が第2緊急停止モードによりシャットダウン停止された場合には、常開型バルブ46は閉鎖された状態に維持されていた。この実施形態の変形例として、第2緊急停止モードにより停止された場合においても、常開型バルブ46が開放されるように、本発明を構成することもできる。また、上述した変形実施形態の更なる変形例として、固体酸化物型燃料電池システム200が第2緊急停止モードにより停止された場合においても排出用ファン202及び/又は排出用ファン204を所定時間作動させるように、本発明を構成することもできる。