特許第6172743号(P6172743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6172743
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/12 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
   A61B1/12 531
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-134241(P2013-134241)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-8760(P2015-8760A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【弁理士】
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】片山 暁元
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−314459(JP,A)
【文献】 特開2006−320366(JP,A)
【文献】 特開2013−009896(JP,A)
【文献】 実開平03−056402(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端面上に、対物レンズを備える観察窓が配置された内視鏡であって、
前記先端面上に、前記観察窓に向かって液体を送出する第1のノズルと、該観察窓に向かって気体を送出する第2のノズルとを備え、
前記第1のノズルが配置される面は、前記先端面における前記観察窓が配置されている位置よりも所定の高さ低い位置に設けられており、
前記第2のノズルが配置される面は、前記先端面における前記観察窓が配置されている位置の高さ以上の位置に設けられており、
前記先端面における前記観察窓と前記第1のノズルとの間に傾斜面が形成され、前記第1のノズルから送出された液体は前記傾斜面を経由して前記観察窓に向かって送出される、ことを特徴とする、内視鏡。
【請求項2】
前記観察窓と前記第2のノズルとが、前記先端面の同じ高さに配置されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記第2のノズルは、
前記第1のノズルから送出された液体が、前記第2のノズルの気体を送出する送出口に入らないように配置され、かつ、
前記第1のノズルから送出され、前記第1のノズルと前記観察窓との間に残留した液体が、前記第2のノズルから送出された気体によって前記観察窓上に送出されないように配置されている、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記第2のノズルは、
前記第2のノズルが、前記第1のノズルから送出された液体の送出範囲の外側にあり、かつ、
前記第2のノズルから送出された気体の送出範囲が、前記第1のノズルから送出された液体の送出範囲のうち前記第1のノズルと前記観察窓とに挟まれた領域の外側にある、
ように配置される、
ことを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記観察窓の中心と前記第1のノズルの中心とを結ぶ線分と、前記観察窓の中心と前記第2のノズルの中心とを結ぶ線分とが成す角が、90度よりも大きく、130度よりも小さい、
ことを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記傾斜面は、前記観察窓が配置されている高さから、前記第1のノズルが配置されている高さに向かって、単調に減少するように設けられている、
ことを特徴とする、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記第1のノズルが配置されている面と同じ面上に、流体を送出する第3のノズルを更に備える、
ことを特徴とする、請求項1から請求項の何れか一項に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記先端面上に、光を出射する照明窓を更に備える、
ことを特徴とする、請求項1から請求項の何れか一項に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体腔内を観察するための内視鏡であって、特に内視鏡先端部の流体送出ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
人の体腔内などを観察するための内視鏡として、挿入部の先端部に対物レンズを備える観察窓と、観察窓に向かって流体を送出するノズルを設けた内視鏡が知られている。ここで、ノズルからは、観察窓に付着した体腔内の粘液や汚物を洗浄するための洗浄液、および、洗浄液を除去するための空気が送出され、観察窓を洗浄することにより、観察窓を通して得られる観察像として良好な画像が得られる。しかしながら、洗浄液は、洗浄液の持つ粘性や表面張力等により、先端部の凹凸構造などに溜まってしまい、空気を送出しても、洗浄液を除去できない場合や、空気を送出することで、溜まっていた洗浄液が観察窓に付着してしまう場合があるなど、いわゆる水切れ性が悪いという問題があった。
【0003】
このような水切れ性を向上した内視鏡として、特許文献1に記載の内視鏡がある。特許文献1では、内視鏡の先端面よりも高い位置に観察窓を設け、観察窓の周縁部と先端面との間に傾斜部を設けた内視鏡が開示されている。特許文献1の内視鏡では、ノズルから送出された洗浄液は、傾斜部に衝突することで大きく広がるため、観察窓全体に洗浄液を広げることが可能となる。また、ノズルから空気を送出した場合は、残留した洗浄液は傾斜部を伝って観察面よりも低い先端面に流れていくため、観察面に洗浄液が残りにくく、高い水切れ性が得られる。
【0004】
また、特許文献2には、内視鏡の先端面よりも高い位置に観察窓を設け、観察窓と送気および送出用ノズルとの間に傾斜面を設け、更に、観察窓のノズルとは反対の側には、傾斜が急な第2の傾斜面(垂直面)を設けた内視鏡が開示されている。この構成により、特許文献1が有する水切れ性の向上に加え、観察窓のノズルとは反対の側が垂直面となっていることにより、流体が垂直面を越えて観察面に流れ込むことを防ぐことが可能になり、特許文献1に記載の内視鏡に比べて、水切れ性を更に向上できる。
【0005】
また、特許文献3には、送水用のノズルと送気用のノズルとを別々に設けた内視鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−210388号公報
【特許文献2】特開2011−120863号公報
【特許文献3】特開2010−119589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2に記載の内視鏡では、ノズルから洗浄液を送出する場合は、洗浄液が傾斜面に衝突することによって大きく広がり、観察窓全体に洗浄液を広げるという効果を得ることができる。しかしながら、洗浄液を除去するための空気を送出する場合、空気は傾斜面に沿って進んで、そのまま傾斜面から離れて拡散し(ジャンプし)、観察窓に対して十分に空気を噴きつけることができない場合があった。そのため、空気による洗浄液の除去が十分に行われず、観察面を通して得られる画像として良好な画像が得られなくなる可能性があった。
【0008】
特許文献3の内視鏡では、送水用ノズルと送気用ノズルとが別々に設けられている。ここで、送水用ノズルから洗浄液が送出されたあと、観察窓と送水用ノズルとの間に洗浄液が残留した場合、送水用ノズルとは別の角度に配置された送気用ノズルから空気が送出されると、残留した洗浄液が送出された空気に引き込まれて、観察窓上に洗浄液がかかってしまい、十分に洗浄液の除去を行うことができなくなる可能性があった。
【0009】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、観察窓を洗浄する洗浄液の水切れ性が高く、残留した洗浄液の除去時に洗浄液が観察窓にかかるのを抑制し、良好な観察像を得られる内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明により、挿入部の先端面上に、対物レンズを備える観察窓が配置された内視鏡であって、先端面上に、それぞれ観察窓に向かって流体を送出する第1のノズルと第2のノズルとを備え、第1のノズルが配置される面は、先端面における観察窓が配置されている位置よりも所定の高さ低い位置に設けられており、第2のノズルが配置される面は、先端面における観察窓が配置されている位置の高さ以上の位置に設けられており、先端面における観察窓と第1のノズルとの間に傾斜面が形成され、第1のノズルから送出された流体は傾斜面を経由して観察窓に向かって送出される、ことを特徴とする内視鏡が提供される。
【0011】
このような構成によれば、第1のノズルと観察窓との間に所定の高さの段差が設けられ傾斜面が形成されているため、第1のノズルから送出された流体の送出範囲が傾斜面によって広げられ、流体を観察窓全体に送出することができ、観察窓全体を洗浄することが可能になる。また、第2のノズルは観察窓と同じ高さ以上の位置に設けられているため、第2のノズルから送出された流体は、第1のノズルから送出された流体のように、傾斜面によってジャンプすることなく観察窓に向かって送出され、第1のノズルから送出され観察窓上に残留した流体を効率よく除去することが可能になる。
【0012】
また、観察窓と第2のノズルとが、先端面の同じ高さに配置された構成としてもよい。
【0013】
このような構成によれば、第2のノズルと観察窓とが同じ高さに設けられており、第2のノズルと観察窓との間に傾斜面が設けられていないため、第2のノズルから送出された流体は直接観察窓に向かって送出され、第1のノズルから送出され観察窓上に残留した流体を効率よく除去することが可能になる。
【0014】
また、第2のノズルは、第1のノズルから送出された流体が、第2のノズルの流体を送出する送出口に入らないように配置され、かつ、第1のノズルから送出され、第1のノズルと観察窓との間に残留した液体が、第2のノズルから送出された液体によって観察窓上に送出されないように配置された構成としてもよい。
【0015】
このような構成によれば、第1のノズルから送出された流体が第2のノズルの送出口に入らないため、第1のノズルから送出され、観察窓上に残留した液体を、第2のノズルから送出された流体によって除去する時に、第2のノズルから、第1のノズルから送出された液体が送出されるのを抑制することができる。これにより、残留した流体を効率よく除去することが可能になる。また、第1のノズルと観察窓との間に残留した液体が、第2のノズルから送出された液体によって観察窓上に送出されないため、観察窓上に残留した流体を効率よく除去することが可能になる。
【0016】
また、第2のノズルは、第2のノズルが、第1のノズルから送出された流体の送出範囲の外側にあり、かつ、第2のノズルから送出された流体の送出範囲が、第1のノズルから送出された流体の送出範囲のうち第1のノズルと観察窓とに挟まれた領域の外側にある、ように配置された構成としてもよい。
【0017】
また、観察窓の中心と第1のノズルの中心とを結ぶ線分と、観察窓の中心と第2のノズルの中心とを結ぶ線分とが成す角が、90度よりも大きく、130度よりも小さくなるよう構成されていてもよい。
【0018】
また、傾斜面は、観察窓が配置されている高さから、第1のノズルが配置されている高さに向かって、単調に減少するように設けられていても良い。
【0019】
また、第1のノズルから送出される流体は液体であり、第2のノズルから送出される流体は気体であってもよい。
【0020】
また、第1のノズルが配置されている面と同じ面上に、流体を送出する第3のノズルを更に備えた構成であってもよい。
【0021】
また、先端面上に、光を出射する照明窓を更に備えた構成であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の内視鏡によれば、観察窓を洗浄する洗浄液の水切れ性が高く、残留した洗浄液の除去時に洗浄液が観察窓にかかるのを抑制し、良好な観察像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態における内視鏡の挿入部先端部の上面図である。
図2図2は、本発明の実施形態における内視鏡の挿入部先端部の断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態における内視鏡の挿入部先端部の上面図である。
図4図4は、内視鏡の挿入部先端部の上面図で、本発明の実施形態における対物レンズと送水ノズル、送気ノズルの配置を説明するための図である。
図5図5は、本発明の他の実施形態における内視鏡の挿入部先端部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
(構成)
まず、本発明の内視鏡10の構成について説明する。
【0026】
図1に、本発明の実施形態における内視鏡10の挿入部先端部の上面図を示す。
【0027】
内視鏡10の体腔内への挿入部は湾曲可能な管状の形状であり、挿入部先端部には、対物レンズ11や鉗子口14が設けられている。内視鏡10の挿入部先端部とは反対の端は外部装置に接続されているか、あるいは、内視鏡10を操作するオペレータの操作部となっている。挿入部先端部と外部装置あるいは操作部とは、内視鏡10内を通るチューブやチャネルなどによって接続されている。
【0028】
内視鏡10の挿入部先端部の先端面20上には、観察対象領域(体腔内の内壁や患部など)からの物体光を取り込むための対物レンズ11、対象領域に光を照射するための配光レンズ12および配光レンズ13、内視鏡10内に器具を通すための鉗子口14、対物レンズ11上に気体(例えば、空気、炭酸ガスなど)を送出する送気ノズル16が設けられている。
【0029】
また、先端面20に対して所定の高さだけ低い面21には、対物レンズ11を洗浄するための洗浄液(例えば、水、生理食塩水など)を送出する送水ノズル15、対象領域に対して洗浄剤(例えば、水、生理食塩水など)を噴射するための副送水口17が設けられており、先端面20と低い面21とは傾斜面18を介して繋がっている。ここで、低い面21は、先端面20に対して、内視鏡10の挿入部の軸線と平行に外部装置の方向(先端部とは逆の方向)へ所定の高さ分だけ下がった位置に配置されている。以下では、送出ノズル15からは洗浄液、送気ノズル16からは空気、副送水口17からは洗浄剤が送出されるとして説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
鉗子口14は、内視鏡10内を通る図示しないチャネルと繋がっており、外部からチャネルに挿入された器具は、鉗子口14を通って内視鏡10の先端から突き出される。チャネルに挿入される器具としては、鉗子やカテーテル、ワイヤなどがあり、観察対象領域に対して行いたい処置によって適宜選択される。
【0031】
副送水口17は、内視鏡10内を通る図示しない送水チューブによって外部装置と接続されており、外部装置から供給された洗浄剤は送水チューブを通り、副送水口17から観察対象領域に対して送出される。副送水口17から送出された洗浄剤は、観察対象領域の洗浄のために用いられるが、これに限定されない。
【0032】
配光レンズ12および配光レンズ13は、それぞれ内視鏡10内を通る図示しないライトガイドによって外部装置と接続されており、外部装置から出射された光は、ライトガイドを通って配光レンズ12および配光レンズ13から出射され、観察対象領域を照射するよう構成されている。配光レンズ12および配光レンズ13から出射した光は、対象領域で反射され、物体光として対物レンズ11で取り込まれる。なお、配光レンズ12および配光レンズ13として、レンズ機能を有しないカバーガラスを用いてもよい。
【0033】
図2に、本発明の実施形態における内視鏡10の挿入部先端部の断面図を示す。
【0034】
図2(a)は、図1に示す線A−A’における断面図を表している。対物レンズ11は複数のレンズから構成されており、対象領域で反射された物体光は、対物レンズ11を通って、撮像ユニット22で受光される。撮像ユニット22によって受光された光は電気信号に変換され、内視鏡10内の図示しない導電線を通って外部装置に送信される。外部装置では受信した電気信号を処理し、図示しないモニターに対象領域の観察像を表示する。ここで、撮像ユニット22として、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの、受光した光を電気信号に変換する撮像素子が用いられる。ここで、対物レンズ11は、複数のレンズの間隔を、操作部から電気的あるいは機械的に調整可能で、ピントや倍率などを変更可能な構成であってもよい。なお、図2では、内視鏡10の先端に撮像ユニット22を設けた構成としているが、撮像ユニット22を設ける代わりにライトガイドを設け、ライトガイド内を伝搬した光を外部装置によって受光する構成としても良い。また、対物レンズ11は単レンズであってもよい。
【0035】
送水ノズル15は、送水チューブ23を介して外部装置と接続されており、外部装置から供給された洗浄液は、送水ノズル15の送出口から送出される。送水ノズル15の送出口は、対物レンズ11の方向に洗浄液を送出し、かつ、送出された洗浄液の少なくとも一部が傾斜面18に衝突するように配置されている。送出された洗浄液は傾斜面18に衝突することによって拡散しつつ、対物レンズ11に向かって送出される。
【0036】
ここで、傾斜面18の傾斜角度、および、先端面20と低い面21との間の段差は、送水ノズル15から送出された洗浄液が、傾斜面18に衝突して送水ノズル15の側に跳ね返って来る洗浄液の量を抑え、かつ、傾斜面18によって拡散された洗浄液が対物レンズ11全体に送出されるように設定されている。この傾斜角度と段差は、送水ノズル15から送出される洗浄液の粘性を加味して決定することが望ましい。例えば、粘性の低い流体(例えば、空気)は、洗浄液などの液体に比べて、傾斜面18に衝突した時の拡散の度合いが大きい。このことから、使用する流体に応じて、適した傾斜角度と段差の大きさがある。また、送水ノズル15から洗浄液を送出する時、洗浄液の圧力が低いと洗浄液が傾斜面18を越えにくくなり、また、圧力が大きいと傾斜面18上での流速が速くなり、傾斜面18と先端面20との境界で洗浄液がジャンプしてしまう可能性がある。このことから、使用する洗浄液の流量や圧力によって傾斜角度や段差の大きさを変えることが望ましい。
【0037】
図2(b)は、図1に示す線A−O−Bにおける断面図を表している。対物レンズ11および送水ノズル15については、図2(a)と同様である。送気ノズル16は、送気パイプ24を介して外部装置と接続されており、外部装置から供給された空気は、送気ノズル16の送出口から送出される。送気ノズル16の送出口は、対物レンズ11の方向に空気を送出するように配置されている。ここで、送気ノズル16と対物レンズ11との間には、送気ノズル16と対物レンズ11との間にある傾斜面18のような斜面が設けられていないため、送気ノズル16から送出された空気は、斜面によってジャンプしたり、斜面に衝突することによって拡散されたりすることなく対物レンズ11に送出される。
【0038】
図3に、本発明の実施形態における内視鏡10の挿入部先端部の上面図を示す。
【0039】
図3(a)は、送水ノズル15から送出される洗浄液の送水範囲25、および、送気ノズル16から送出される空気の送気範囲26を模式的に表したものである。送水ノズル15から送出された洗浄液は、傾斜面18に衝突することによって送水範囲25が広がり、先端面20上の対物レンズ11全体に洗浄液が送出される。送気ノズル16から送出された空気は、少なくとも対物レンズ11における物体光の取り込み範囲(図3(a)において、対物レンズ11を示す複数の同心円のうち、最も半径の小さい円で囲まれる領域)に送出される。
【0040】
送気ノズル16の送出口は、送水ノズル15から送出された洗浄液や洗浄された汚れが送気ノズル16の送出口内に入ってしまわないように、送水ノズル15による洗浄液の送水範囲25の外側に配置されている。また、本発明では、送水ノズル15と送気ノズル16は、送水ノズル15による送出方向と送気ノズル16による送出方向とが同じ方向にならないように、かつ、送水ノズル15と対物レンズ11との間に残留した洗浄液が、送気ノズル16から送出された空気によって対物レンズ11上に送出されないように配置されている。
【0041】
上記のような送水ノズル15および送気ノズル16の配置として、送気ノズル16は、送気ノズル16が、送水ノズル15から送出された洗浄液の送水範囲25の外側にあり、かつ、送気ノズル16から送出された空気の送気範囲26が、送水ノズル15から送出された洗浄液の送水範囲25のうち送水ノズル15と対物レンズ11とに挟まれた領域の外側にあるように配置してもよい。
【0042】
また、上記のような送水ノズル15および送気ノズル16の配置として、図3(b)に示すように、内視鏡10の挿入部の先端部を上面から見た時に、送水ノズル15の中心と対物レンズ11の中心とを結ぶ線分(すなわち、洗浄液の送水範囲25の中心を通る線)と、送気ノズル16の中心と対物レンズ11の中心とを結ぶ線分(すなわち、空気の送気範囲26の中心を通る線)とが成す角をθとした時に、送水ノズル15と送気ノズル16とは、90°<θ<130°が成り立つように配置してもよい。
【0043】
図4は、対物レンズ11と送水ノズル15、送気ノズル16とが成す角θを変えた場合の、内視鏡10の挿入部先端部の上面図を示している。
【0044】
図4(a)は、130°<θ<180°とした場合の内視鏡10の挿入部先端部の上面図を表している。この場合、対物レンズ11に付着した汚れを洗浄するために、送水ノズル15から洗浄液を送出すると、送気ノズル16の送出口が洗浄液の送水範囲25内にあるため、洗浄液や汚れが送気ノズル16の送出口内に入ってしまう。送気ノズル16の送出口に洗浄液や汚れが入ると、空気を送出する時に洗浄液が送出され、洗浄液の除去が行えない、あるいは、空気が正常に送出されないという問題が生じる。
【0045】
図4(c)は、0°<θ<90°とした場合の内視鏡10の挿入部先端部の上面図を表している。図4(a)の場合と同様に洗浄液を送出したあと、送水ノズル15と対物レンズ11との間に洗浄液が残留した場合、図4(c)の構成では、残留した洗浄液27を除去するために送気ノズル16から空気を送出すると、送水ノズル15による送出方向と送気ノズル16による送出方向とが部分的に同じ方向を向いていることから、残留した洗浄液27が送出された空気に引き込まれ、対物レンズ11上に送出される。そのため、空気を送出しても観察窓上の洗浄液が除去されない、あるいは、除去に時間がかかるという問題が生じる。
【0046】
図4(b)は、本発明の実施形態における、90°<θ<130°とした場合の内視鏡10の挿入部先端部の上面図を表している。本実施形態においては、送気ノズル16の送出口が洗浄液の送水範囲25外にあるため、洗浄液や汚れが送気ノズル16の送出口内に入ってしまうのを抑制できる。また、残留した洗浄液27を除去するために送気ノズル16から空気を送出すると、送水ノズル15による送出方向と送気ノズル16による送出方向とが異なるため、残留した洗浄液27が送出された空気に引き込まれ、対物レンズ11上に送出されてしまうことを抑制できる。
【0047】
なお、図4(b)では、送水ノズル15と送気ノズル16の配置として、内視鏡10の挿入部先端部を上面から見たときの角度θを用いて規定しているが、本願発明はこの先端面20上の角度θのみによって規定されるわけではない。例えば、送気ノズル16が、先端面20よりも高い位置から対物レンズ11に対して空気を送出するような構成としてもよい。また、90°<θ<130°の関係にある送水ノズル15と送気ノズル16に加え、更に別の送気ノズルを設けてもよい。
【0048】
また、送水ノズル15または送気ノズル16は、ノズルの位置はそのままで、流体を送出する向きが変えられるように回転可能に構成されていてもよい。このように回転可能に構成することで、使用する流体の種類や送出時の流体の圧力に応じて、送出口の向きを調整可能になり、対物レンズ11を洗浄しやすく、かつ、残留した洗浄液を除去しやすいように各ノズルの向きを最適化できる。なお、この場合、内視鏡10の使用時は、使用中に送出口の向きが変わらないように、各ノズルは接着材等で固定されていることが望ましい。
【0049】
また、本発明の傾斜面18の形状は図1に示すような曲線状に限られない。図5は、本発明の他の実施形態における、内視鏡30の挿入部先端部の上面図を示す。図1に示す内視鏡10における傾斜面18は、対物レンズ11の側に向かって凸となるように曲線状に設けられているのに対し、図5に示す内視鏡30の傾斜面28は、送水ノズル15と対物レンズ11とで挟まれた領域で直線状に形成されている。図5に示す内視鏡30は、傾斜面28の形状以外は、図1に示す内視鏡10と同じである。送水ノズル15から送出された洗浄液は、傾斜面28に衝突することによって送水範囲が拡大し、対物レンズ11全体に送出される。これにより対物レンズ11全体を洗浄することができる。なお、傾斜面の形状は、図1に示す曲線状、図5に示す直線状に限られず、例えば、対物レンズ11の側に向かって凹となるような曲線状に設けられていてもよい。
【0050】
外部装置には、配光レンズ12および配光レンズ13に光を供給するための光源、送水ノズル15に洗浄液を供給するための洗浄液供給源、送気ノズル16に空気を供給するための空気供給源、副送水口17に洗浄剤などを供給するための液体供給源、撮像ユニット22から送信された電気信号を受信および信号処理を行う信号処理部が含まれるが、これらに限られない。
【0051】
内視鏡10の操作部には、送水ノズル15や送気ノズル16、副送水口17に流体を供給するかどうかを制御する供給スイッチ、対物レンズ11のピントや倍率を調整するためのレンズ操作部、チャネルに器具を挿入するための操作側鉗子口、内視鏡10の湾曲する向きや湾曲度合いを調整するための角度操作部が含まれるが、これらに限られない。
【0052】
(動作)
次に、本発明の内視鏡10の動作について説明する。
【0053】
内視鏡10のオペレータは、管状の内視鏡10を湾曲させながら、人の体腔内の所望の位置まで内視鏡10を挿入する。内視鏡10の挿入時または所望の位置の観察時に、外部装置から光を供給し、内視鏡10内のライトガイドを通して配光レンズ12および配光レンズ13から出射させる。配光レンズ12および配光レンズ13から出射した光は、内視鏡10の挿入経路内や観察対象領域において反射される。反射された光は、物体光として対物レンズ11によって取り込まれ、撮像ユニット22で受光される。撮像ユニット22で受光された光は電気信号に変換され、内視鏡10内の導電線を通って、外部装置に送信される。外部装置では、受信した電気信号を信号処理して観察像を生成し、モニターなどに表示する。
【0054】
内視鏡10の挿入時に、内視鏡10の先端に配置されている対物レンズ11には、人の体腔内の体液や汚物が付着し、対物レンズ11による物体光を取り込みが阻害され、モニター上で正確な観察像が得られなくなる場合がある。その場合、外部装置から洗浄液が供給され、内視鏡10内の送水チューブ23を通して送水ノズル15の送出口から送出される。送水ノズル15から送出された洗浄液は、対物レンズ11全体に対して送出される。この洗浄液により、汚れが付着した対物レンズ11が洗浄される。
【0055】
ここで、送水ノズル15から送出された洗浄液は、傾斜面18によって送水範囲が広げられる。これにより、洗浄液が対物レンズ11全体に噴射されるため、対物レンズ11全体を洗浄することができる。また、送水ノズル15は低い面21に設けられていることにより、送水ノズル15が洗浄液を送出した後、送出ノズル15から液ダレした液体が対物レンズ11の方に流れ、対物レンズ11に洗浄液が付着してしまうことを抑制できる。
【0056】
また、対物レンズ11と送水ノズル15、送気ノズル16とが成す角θは、130°より小さく設定されており、これにより、送水ノズル15から洗浄液を送出する時に、洗浄液および体液や汚物などの汚れが送気ノズル16の送出口に入り、送気ノズル16の送気機能を低下させてしまうことを抑制している。
【0057】
洗浄液を送出して対物レンズ11を洗浄した後、送水ノズル15と対物レンズ11との間に洗浄液が残留する場合がある。その場合、外部装置から空気が供給され、内視鏡10内の送気パイプ24を通して送気ノズル16の送出口から送出される。送気ノズル16から送出された空気は、対物レンズ11の少なくとも物体光の取り込み範囲に送出される。この空気により、内視鏡10の挿入部先端部や対物レンズ11上に残留した洗浄液が除去される。
【0058】
ここで、送気ノズル16から送出された空気は、送水ノズル15から送出された洗浄液と異なり、傾斜面18などに衝突することなく、直接対物レンズ11に送出される。そのため、傾斜面18などに衝突することによって空気がジャンプまたは拡散することがないため、残留した洗浄液を効率よく除去することがきる。
【0059】
また、対物レンズ11と送水ノズル15、送気ノズル16とが成す角θは、90°より大きく設定されており、これにより、送水ノズル15と対物レンズ11との間に残留した洗浄液を除去する場合に、残留した洗浄液が送気ノズル16から送出された空気によって引き込まれ、対物レンズ11上に広がることを抑制できる。
【0060】
このように、本発明の内視鏡10を用いることによって、送水ノズル15から送出された洗浄液および送気ノズル16から送出された空気により、対物レンズ11に付着した汚れを効率的に除去できるため、良好な観察像を得ることができる。
【0061】
内視鏡10のオペレータは、観察像を見ながら、内視鏡10の挿入および対象領域の処置を行う。ここで、処置の内容としては、対象領域(患部など)の観察や洗浄、医学的処置(鉗子やカテーテルを用いた外科的な処置、薬剤の塗布などの内科的処置)が含まれる。
【0062】
対象領域に対し洗浄を行う場合、外部装置や操作部から洗浄剤などが供給され、内視鏡10内の送水チューブを通して副送水口17から送出されることによって、対象領域の洗浄が行われる。
【0063】
ここで、副送水口17は、送水ノズル15と同様に先端面20よりも所定の高さ低い面21に設けられている。そのため、副送水口17から送出した、または、送出後に液ダレした洗浄剤が、内視鏡10の先端を伝って対物レンズ11の方向に流れた場合、洗浄剤は傾斜面18によって堰き止められるため、対物レンズ11に洗浄剤が付着してしまうことを抑制できる。
【0064】
また、対象領域に対し外科的な処置を行う場合、外部装置や操作部から鉗子やカテーテルなどの器具が挿入され、内視鏡10内のチャネルを通して鉗子口14から突出される。これらの器具を操作部から操作することによって対象領域の外科的な処置が行われる。
【0065】
また、本発明の内視鏡10による処置は、医学的な用途に限定されない。例えば、工業製品などにおいて、人が目視や直接手を触れることができない箇所の検査や修理、点検を行うために用いるものであってもよい。
【0066】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 内視鏡
11 対物レンズ(観察窓)
12 配光レンズ
13 配光レンズ
14 鉗子口
15 送水ノズル
16 送気ノズル
17 副送水口
18 傾斜面
20 先端面
21 面
22 撮像ユニット
23 送水チューブ
24 送気パイプ
25 送水範囲
26 送気範囲
27 残留洗浄液
28 傾斜面
30 内視鏡
図1
図2
図3
図4
図5