特許第6172754号(P6172754)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6172754
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】通信装置及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
   H04L12/28 200M
   H04L12/28 100A
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-46603(P2014-46603)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2015-171091(P2015-171091A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】落合 勇太
(72)【発明者】
【氏名】小林 直人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光敏
【審査官】 岡 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−041141(JP,A)
【文献】 特開2005−020570(JP,A)
【文献】 特開2006−009650(JP,A)
【文献】 特開2009−296280(JP,A)
【文献】 特開2009−105828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ネットワークに接続され、複数の車載制御装置による情報の授受を仲介する通信装置であって、
各車載制御装置に電力を供給するバッテリの残量の情報を取得するバッテリ残量取得部と、
前記各車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を取得するスリープ可否取得部と、
前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得部が前記車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得した場合に、当該車載制御装置を前記スリープモードへの移行を妨げる要因となる車載制御装置として特定する上で指標となる情報を増加更新する指標情報更新部と
を備え
前記指標は、前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得部が車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得した期間の長さである
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
車両ネットワークに接続され、複数の車載制御装置による情報の授受を仲介する通信装置であって、
各車載制御装置に電力を供給するバッテリの残量の情報を取得するバッテリ残量取得部と、
前記各車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を取得するスリープ可否取得部と、
前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得部が前記車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得した場合に、当該車載制御装置を前記スリープモードへの移行を妨げる要因と
なる車載制御装置として特定する上で指標となる情報を増加更新する指標情報更新部と
を備え、
前記指標は、前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得部が車載通信装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得した頻度である
ことを特徴とする通信装置。
【請求項3】
前記指標情報更新部は、前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となったときに、前記車両ネットワークに接続された車載制御装置に対してスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を要求する請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
車両ネットワークに接続され、複数の車載制御装置による情報の授受を仲介する通信装置であって、
各車載制御装置に電力を供給するバッテリの残量の情報を取得するバッテリ残量取得部と、
前記各車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を取得するスリープ可否取得部と、
前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得部が前記車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得した場合に、当該車載制御装置を前記スリープモードへの移行を妨げる要因となる車載制御装置として特定する上で指標となる情報を増加更新する指標情報更新部と
を備え、
前記指標情報更新部は、前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となったときに、前記車両ネットワークに接続された車載制御装置に対してスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を要求する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項5】
前記バッテリ残量取得部、及び前記スリープ可否取得部、及び前記指標情報更新部を備える通信装置が、複数の車両ネットワークが接続されて、それら複数の車両ネットワークの間での情報の授受を相互に中継するゲートウェイである請求項1〜4の何れか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記車両ネットワークは、CANプロトコルに規定される通信によって情報の授受を行うものである請求項1〜5の何れか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
車両ネットワークに接続され、複数の車載制御装置による情報の授受を仲介する通信装置を通じて実行される通信方法であって、
各車載制御装置に電力を供給するバッテリの残量の情報を取得するバッテリ残量取得ステップと、
前記各車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を取得するスリープ可否取得ステップと、
前記バッテリ残量取得ステップにおいて取得されたバッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得ステップにおいて車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨が取得された場合に、当該車載制御装置を前記スリープモードへの移行を妨げる要因として特定する上で指標となる情報を増加更新する指標情報更新ステップと
を含み、
前記指標は、前記バッテリ残量取得ステップにおいて取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得ステップにおいて車載制御装置のいず
れかからスリープモードに移行不能である旨を取得した期間の長さである
ことを特徴とする通信方法。
【請求項8】
車両ネットワークに接続され、複数の車載制御装置による情報の授受を仲介する通信装置を通じて実行される通信方法であって、
各車載制御装置に電力を供給するバッテリの残量の情報を取得するバッテリ残量取得ステップと、
前記各車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を取得するスリープ可否取得ステップと、
前記バッテリ残量取得ステップにおいて取得されたバッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得ステップにおいて車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨が取得された場合に、当該車載制御装置を前記スリープモードへの移行を妨げる要因として特定する上で指標となる情報を増加更新する指標情報更新ステップと
を含み、
前記指標は、前記バッテリ残量取得ステップにおいて取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得ステップにおいて車載通信装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得した頻度である
ことを特徴とする通信方法。
【請求項9】
車両ネットワークに接続され、複数の車載制御装置による情報の授受を仲介する通信装置を通じて実行される通信方法であって、
各車載制御装置に電力を供給するバッテリの残量の情報を取得するバッテリ残量取得ステップと、
前記各車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を取得するスリープ可否取得ステップと、
前記バッテリ残量取得ステップにおいて取得されたバッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得ステップにおいて車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨が取得された場合に、当該車載制御装置を前記スリープモードへの移行を妨げる要因として特定する上で指標となる情報を増加更新する指標情報更新ステップと
を含み、
前記指標情報更新ステップでは、前記バッテリ残量取得ステップにおいて取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となったときに、前記車両ネットワークに接続された車載制御装置に対してスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を要求する
ことを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ネットワークを通じた車載制御装置の情報の授受に用いられる通信装置、及び該通信装置による通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車等の車両には、ナビゲーションシステムを構成する車載制御装置をはじめ、エンジンやブレーキ等の各種車載機器を電子的に制御する車載制御装置、車両の状態を表示するメータ等の機器を制御する車載制御装置などの多くの車載制御装置が搭載されている。そして、車両内では、それら各車載制御装置が通信線により電気的に接続されて車両ネットワークが形成されており、この車両ネットワークを介して車載制御装置が各種情報の授受を行う。このような車両ネットワークのうちには、同一の通信線に接続された全ての車載制御装置についてのウェイクアップモードからスリープモードへの移行を協調動作とするものがあり、その一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
すなわち、特許文献1に記載の多重通信システムでは、車載制御装置は自己がスリープモードに移行可能であるか否かを定期的に判断し、スリープモードに移行可能であるか否かに応じてスリープ可信号又はスリープ不可信号を同一の通信線に接続された他の車載制御装置に送信する。そして、全ての車載制御装置からスリープ可信号が送信された時点でそれら車載制御装置がスリープモードに移行するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−126738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記多重通信システムでは、車載制御装置の故障等に伴って車載制御装置が恒常的にスリープモードに移行できなくなった場合には、この車載制御装置と同一の通信線に接続されている全ての車載制御装置がスリープモードに移行できなくなる。その結果、無駄に電力が消費されることでいわゆるバッテリ切れを生じる要因となりかねないため、故障した車載制御装置は速やかに交換することが望ましい。しかしながら、上記多重通信システムでは、スリープモードに移行できない原因となっている車載制御装置が必ずしも故障等に陥っているとは限らないものの、そのような状態にある車載制御装置を特定すること自体が困難となっている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両ネットワークに接続された複数の車載制御装置のうちからスリープモードへの移行を妨げる原因になりかねない車載制御装置を特定することのできる通信装置及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する通信装置は、車両ネットワークに接続され、複数の車載制御装置による情報の授受を仲介する通信装置であって、各車載制御装置に電力を供給するバッテリの残量の情報を取得するバッテリ残量取得部と、前記各車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を取得するスリープ可否取得部と、前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得部が前記車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得した場合に、当該車載制御装置を前記スリープモードへの移行を妨げる要因となる車載制御装置と
して特定する上で指標となる情報を増加更新する指標情報更新部とを備え、前記指標は、前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得部が車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得した期間の長さである。
【0008】
また、上記課題を解決する通信方法は、車両ネットワークに接続され、複数の車載制御装置による情報の授受を仲介する通信装置を通じて実行される通信方法であって、各車載制御装置に電力を供給するバッテリの残量の情報を取得するバッテリ残量取得ステップと、前記各車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を取得するスリープ可否取得ステップと、前記バッテリ残量取得ステップにおいて取得されたバッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得ステップにおいて車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨が取得された場合に、当該車載制御装置を前記スリープモードへの移行を妨げる要因として特定する上で指標となる情報を増加更新する指標情報更新ステップとを含み、前記指標は、前記バッテリ残量取得ステップにおいて取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得ステップにおいて車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得した期間の長さである。
【0009】
上記構成または方法によれば、バッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で車載通信装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得したときには、当該車載通信装置が故障等の要因によって恒常的にスリープモードに移行できていない可能性があると判断され、その可能性の大きさの指標が増加更新される。そして、一定の期間に亘って増加更新される指標に基づき、車両ネットワークに接続された車載制御装置のうちからスリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高い車載制御装置を特定することができる。
また、上記構成または方法によれば、スリープモードに移行不能である旨を取得した期間が相対的に長い車載制御装置を、スリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高い車載制御装置として特定することができる。
上記課題を解決する通信装置は、車両ネットワークに接続され、複数の車載制御装置による情報の授受を仲介する通信装置であって、各車載制御装置に電力を供給するバッテリの残量の情報を取得するバッテリ残量取得部と、前記各車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を取得するスリープ可否取得部と、前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得部が前記車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得した場合に、当該車載制御装置を前記スリープモードへの移行を妨げる要因となる車載制御装置として特定する上で指標となる情報を増加更新する指標情報更新部とを備え、前記指標は、前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得部が車載通信装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得した頻度である。
また、上記課題を解決する通信方法は、車両ネットワークに接続され、複数の車載制御
装置による情報の授受を仲介する通信装置を通じて実行される通信方法であって、各車載制御装置に電力を供給するバッテリの残量の情報を取得するバッテリ残量取得ステップと、前記各車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を取得するスリープ可否取得ステップと、前記バッテリ残量取得ステップにおいて取得されたバッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得ステップにおいて車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨が取得された場合に、当該車載制御装置を前記スリープモードへの移行を妨げる要因として特定する上で指標となる情報を増加更新する指標情報更新ステップとを含み、前記指標は、前記バッテリ残量取得ステップにおいて取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得ステップにおいて車載通信装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得した頻度である。
上記構成または方法によれば、バッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で車載通信装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得したときには、当該車載通信装置が故障等の要因によって恒常的にスリープモードに移行できていない可能性があると判断され、その可能性の大きさの指標が増加更新される。そして、一定の期間に亘って増加更新される指標に基づき、車両ネットワークに接続された車載制御装置のうちからスリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高い車載制御装置を特定することができる。
また、上記構成または方法によれば、スリープモードに移行不能である旨を取得した頻度が相対的に多い車載制御装置を、スリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高い車載制御装置として特定することができる。
好ましい構成として、前記指標情報更新部は、前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となったときに、前記車両ネットワークに接続された車載制御装置に対してスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を要求する。
上記構成によれば、バッテリの残量が所定の閾値未満となったときに、車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報が直ちに取得され、スリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高い車載制御装置を特定する上での指標を増加更新するか否かが速やかに判断される。すなわち、バッテリの残量が所定の閾値未満となってから、スリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高い車載制御装置を特定する上での指標を増加更新するか否かが判断されるまでの間にタイムラグが生じることが抑えられる。したがって、一定の期間に亘って増加更新される指標に基づき、車両ネットワークに接続された車載制御装置のうちからスリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高い車載制御装置をより正確に特定することができる。
上記課題を解決する通信装置は、車両ネットワークに接続され、複数の車載制御装置による情報の授受を仲介する通信装置であって、各車載制御装置に電力を供給するバッテリの残量の情報を取得するバッテリ残量取得部と、前記各車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を取得するスリープ可否取得部と、前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得部が前記車載制御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得した場合に、当該車載制御装置を前記スリープモードへの移行を妨げる要因となる車載制御装置として特定する上で指標となる情報を増加更新する指標情報更新部とを備え、前記指標情報更新部は、前記バッテリ残量取得部が取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となったときに、前記車両ネットワークに接続された車載制御装置に対してスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を要求する。
また、上記課題を解決する通信方法は、車両ネットワークに接続され、複数の車載制御装置による情報の授受を仲介する通信装置を通じて実行される通信方法であって、各車載制御装置に電力を供給するバッテリの残量の情報を取得するバッテリ残量取得ステップと、前記各車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を取得するスリープ可否取得ステップと、前記バッテリ残量取得ステップにおいて取得されたバッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で前記スリープ可否取得ステップにおいて車載制
御装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨が取得された場合に、当該車載制御装置を前記スリープモードへの移行を妨げる要因として特定する上で指標となる情報を増加更新する指標情報更新ステップとを含み、前記指標情報更新ステップでは、前記バッテリ残量取得ステップにおいて取得したバッテリの残量が前記所定の閾値未満となったときに、前記車両ネットワークに接続された車載制御装置に対してスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を要求する。
上記構成または方法によれば、バッテリの残量が所定の閾値未満となる条件下で車載通信装置のいずれかからスリープモードに移行不能である旨を取得したときには、当該車載通信装置が故障等の要因によって恒常的にスリープモードに移行できていない可能性があると判断され、その可能性の大きさの指標が増加更新される。そして、一定の期間に亘って増加更新される指標に基づき、車両ネットワークに接続された車載制御装置のうちからスリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高い車載制御装置を特定することができる。
また、上記構成または方法によれば、バッテリの残量が所定の閾値未満となったときに、車載制御装置からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報が直ちに取得され、スリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高い車載制御装置を特定する上での指標を増加更新するか否かが速やかに判断される。すなわち、バッテリの残量が所定の閾値未満となってから、スリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高い車載制御装置を特定する上での指標を増加更新するか否かが判断されるまでの間にタイムラグが生じることが抑えられる。したがって、一定の期間に亘って増加更新される指標に基づき、車両ネットワークに接続された車載制御装置のうちからスリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高い車載制御装置をより正確に特定することができる。
【0010】
好ましい構成として、前記バッテリ残量取得部、及び前記スリープ可否取得部、及び前記指標情報更新部を備える通信装置が、複数の車両ネットワークが接続されて、それら複数の車両ネットワークの間での情報の授受を相互に中継するゲートウェイである。
【0011】
上記構成によれば、複数の車両ネットワークに接続された車載制御装置のうちからスリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高い車載制御装置を一括して特定することができる。
【0018】
好ましい構成として、前記車両ネットワークは、CANプロトコルに規定される通信によって情報の授受を行うものである。
上記構成によれば、通信装置は、車両に多く利用されているCANプロトコルに対応することから、CANプロトコルを利用してスリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高い車載制御装置を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施の形態の通信装置及び通信方法が適用される車両の概略構成を示すブロック図。
図2】同実施の形態の通信装置及び通信方法にあってゲートウェイECUが実行するタイマ情報の更新処理の処理手順を示すフローチャート。
図3】同実施の形態の通信装置及び通信方法にあってゲートウェイECUがタイマ情報の更新処理を実行する際のタイミングチャートであって、(a)は、バッテリ電圧の推移を示す模式図、(b)は、第11ECUからスリープ可信号又はスリープ不可信号が送信されるタイミングを示す模式図、(c)は、第12ECUからスリープ可信号又はスリープ不可信号が送信されるタイミングを示す模式図、(d)は、第11ECUに対応するタイマの計時の推移を示す模式図、(e)は、第12ECUに対応するタイマの計時の推移を示す模式図。
図4】第2の実施の形態の通信装置及び通信方法にあってゲートウェイECUが実行するタイマ情報の更新処理の処理手順を示すフローチャート。
図5】同実施の形態の通信装置及び通信方法にあってゲートウェイECUがタイマ情報の更新処理を実行する際のタイミングチャートであって、(a)は、バッテリ電圧の推移を示す模式図、(b)は、第11ECUからスリープ可信号又はスリープ不可信号が送信されるタイミングを示す模式図、(c)は、第12ECUからスリープ可信号又はスリープ不可信号が送信されるタイミングを示す模式図、(d)は、第11ECUに対応するタイマの計時の推移を示す模式図、(e)は、第12ECUに対応するタイマの計時の推移を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施の形態)
以下、通信装置の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施の形態では、CAN(Controller Area Network)により構成される車両ネットワークを介して車載制御装置としてのECU(Engine Control Unit)の間でCANの通信規定であるCANプロトコルに従った情報の授受が行われる。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態の通信装置は、車両100内に設けられたゲートウェイECU50と、ゲートウェイECU50に接続された第1〜第3の通信バスNW1〜NW3と、これらの通信バスNW1〜NW3に接続された複数のECU11,12,21〜23,31,32とを備えている。第11及び第12ECU11,12は、第1の通信バスNW1に接続されており、例えばエンジン、ブレーキ、ステアリング等の各種車両駆動系の機器を制御する。また、第21〜第23ECU21〜23は、第2の通信バスNW2に接続されており、例えば現在地から目的地までの経路案内等を行うカーナビゲーションシステムをはじめとする各種情報系の機器を制御する。また、第31及び第32ECU31,32は、第3の通信バスNW3に接続されており、例えばエアコンや車両100の各種状態を表示するメータ等のボディ系の機器を制御する。なお、第1の通信バスNW1には、外部機器との接続が行われるDLC(Data Link Connector)15が接続されている。そして、DLC15は、例えばECU11,12,21〜23,31,32,50の診断機器との接続を行い、こうした診断機器と第1の通信バスNW1との間の情報の授受を中継する。
【0022】
第11〜第32ECU11,12,21〜23,31,32は、図示しない各種のセンサから取得された情報や演算処理により得られた情報に基づいて各種制御に必要な情報処理を行う情報処理部11A,12A,21A〜23A,31A,32Aを備えている。また、第11〜第32ECU11,12,21〜23,31,32は、CANプロトコルに基づく通信メッセージを通じて各々が対応する通信バスNW1〜NW3に接続されている他のECUとの間で通信を行うとともに、情報処理部11A,12A,21A〜23A,31A,32Aとの間で通信メッセージに関連する各種情報の授受を行うCANコントローラ11B,12B,21B〜23B,31B,32Bを備えている。
【0023】
情報処理部11A,12A,21A〜23A,31A,32Aは、マイクロコンピュータを含んで構成され、各種処理を行う演算装置や、演算結果や各種制御機能を提供するプログラムや制御機能に用いられるパラメータなどを記憶する記憶装置を有している。
【0024】
CANコントローラ11B,12B,21B〜23B,31B,32Bは、通信バスNW1〜NW3から通信メッセージを受信したタイミングを取得するとともに、受信した通信メッセージを解析し、当該通信メッセージに含まれるメッセージIDや、転送した情報本体である通信情報などを取得する。また、CANコントローラ11B,12B,21B〜23B,31B,32Bは、通信メッセージの受信タイミング、メッセージIDや通信情報などの情報を情報処理部11A,12A,21A〜23A,31A,32Aに提供する。さらに、CANコントローラ11B,12B,21B〜23B,31B,32Bは、情報処理部11A,12A,21A〜23A,31A,32AからメッセージIDや通信情報、送信タイミングなどが入力され、このうちのメッセージIDや通信情報に基づいて当該メッセージIDと通信情報とを含む通信メッセージを生成する。そして、CANコントローラ11B,12B,21B〜23B,31B,32Bは、入力された送信タイミングで生成した通信メッセージを通信バスNW1〜NW3に送信する。
【0025】
ゲートウェイECU50は、第1〜第3の通信バスNW1〜NW3の間におけるCANプロトコルの通信メッセージを相互に中継している。そして、ゲートウェイECU50は、第11〜第32ECU11,12,21〜23,31,32と同様の情報処理部50Aを備えるとともに、ゲートウェイコントローラ50Bを備えている。このゲートウェイコントローラ50Bは、通常、FlexRay(登録商標)やLin(Local Interconnect Network)やイーサネット(登録商標)等の他の通信規格の通信バスとの間の通信メッセージを中継するためのものがある。
【0026】
ゲートウェイECU50の情報処理部50Aは、車載通信システムを構成するECU11,12,21〜23,31,32,50に電力を供給するバッテリ30に通信線Lを介して接続されている。そして、ゲートウェイECU50の情報処理部50Aは、通信線Lを介してバッテリ30から送信されるバッテリ電圧をバッテリ30の残量の情報として取得するバッテリ電圧取得部51として機能する。
【0027】
また、ゲートウェイECU50のゲートウェイコントローラ50Bは、第11〜第32ECU11,12,21〜23,31,32からスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を取得するスリープ可否取得部52として機能する。具体的には、本実施の形態では、第11〜第32ECU11,12,21〜23,31,32は、情報処理部11A,12A,21A〜23A,31A,32Aがスリープモードに移行可能であるか否かを定期的に判断する。また、これらのECU11,12,21〜23,31,32の情報処理部11A,12A,21A〜23A,31A,32Aには、ゲートウェイECU50のゲートウェイコントローラ50Bから要求信号を含む通信メッセージが定期的に送信される。
【0028】
そして、これらのECU11,12,21〜23,31,32の情報処理部11A,12A,21A〜23A,31A,32Aは、送信された要求信号に応じて通信メッセージをCANコントローラ11B,12B,21B〜23B,31B,32BからゲートウェイECU50に一定の時間間隔で送信させる。この通信メッセージは、送信元となるECU11,12,21〜23,31,32がスリープモードに移行可能であるか否かを示すスリープ可信号S1(図3参照)又はスリープ不可信号S2(図3参照)を含んでいる。そして、スリープ可否取得部52は、これらのECU11,12,21〜23,31,32から送信される通信メッセージをスリープ可否に関する情報として取得する。なお、ECUのスリープ状態とは、ECUが電源は供給されているものの起動する必要のない条件下であるとき、消費電力を抑制するために省電力モードに移行されている状態である。
【0029】
また、ゲートウェイECU50の情報処理部50Aは、バッテリ電圧取得部51が取得したバッテリ電圧が所定の閾値となる閾値電圧(図3参照)未満である間に、スリープ可否取得部52がスリープ不可信号S2を取得したときに、タイマ情報格納部53に格納されているタイマ情報を増加更新するタイマ制御部54としても機能する。なお、本実施の形態では、閾値電圧は、バッテリ30がバッテリ切れとなるときのバッテリ電圧よりも少しだけ大きい値として設定されている。また、タイマ情報格納部53には、第1〜第3の通信バスNW1〜NW3に接続されたECU11,12,21〜23,31,32ごとにタイマ情報が格納されている。そして、タイマ制御部54は、タイマ情報を増加更新するときには、スリープ不可信号S2の送信元となったECU11,12,21〜23,31,32に対応するタイマ情報を増加更新する。
【0030】
次に、本実施の形態の車載通信システムにあってゲートウェイECU50のタイマ制御部54が実行するタイマ情報の更新処理の処理手順の概要を図3のタイミングチャートを参照して説明する。なお、図3では、説明の便宜上、第1の通信バスNW1に接続された第11ECU11及び第12ECU12に対応するタイマ情報の更新処理について図示し、他の通信バスNW2,NW3に接続された他のECU21〜23,31,32に対応するタイマ情報の更新処理についての図示は割愛する。
【0031】
ゲートウェイECU50のタイマ制御部54は、自己がスリープ状態からウェイクアップ状態に切り替わったときに、図2に示すタイマ情報の更新処理を実行する。なお、ゲートウェイECU50のウェイクアップ状態への切り替えは、第1〜第3の通信バスNW1〜NW3に接続された他のECU11,12,21〜23,31,32の何れかがスリープ状態からウェイクアップ状態に切り替わることに伴ってこれらのECU11,12,21〜23,31,32からウェイクアップ信号を受信したことをトリガーとして行われる。ただし、ゲートウェイECU50のウェイクアップ状態への切り替えは、外部からゲートウェイECU50に入力される信号をトリガーとして第1〜第3の通信バスNW1〜NW3に接続された他のECU11,12,21〜23,31,32に先んじて行われることもある。
【0032】
まず、タイマ制御部54は、バッテリ残量取得処理としてバッテリ電圧取得部51が取得したバッテリ電圧が閾値電圧未満であるか否かを判定する(ステップS11)。また、タイマ制御部54は、バッテリ電圧が閾値電圧未満であるときには(ステップS11=YES)、スリープ可否取得処理としてスリープ可否取得部52が第1〜第3の通信バスNW1〜NW3に接続された他のECU11,12,21〜23,31,32からスリープ不可信号S2を受信したか否かを判定する(ステップS12)。そして、タイマ制御部54は、スリープ不可信号S2を受信したときには(ステップS12=YES)、指標情報更新処理として、スリープ不可信号S2の送信元となったECU11,12,21〜23,31,32に対応するタイマを駆動してタイマの計時を開始する(ステップS13)。一方、タイマ制御部54は、バッテリ電圧が閾値電圧以上であるときには(ステップS12=NO)、第1〜第3の通信バスNW1〜NW3に接続された全てのECU11,12,21〜23,31,32に対応するタイマの計時を停止する(ステップS14)。また、タイマ制御部54は、バッテリ電圧が閾値電圧未満である間にスリープ可信号S1を受信したときにも(ステップS12=NO)、スリープ可信号S1の送信元となったECU11,12,21〜23,31,32に対応するタイマの計時を停止する(ステップS14)。
【0033】
なお、本実施の形態では、図3(a)に示すように、時刻t1においてバッテリ電圧が閾値電圧を下回った後、図3(b)に示すように、時刻t2において第11ECU11からゲートウェイECU50にスリープ不可信号S2が送信されている。そのため、図3(d)に示すように、時刻t2において第11ECU11に対応するタイマの計時が開始されている。
【0034】
一方、図3(a)に示すように、時刻t1においてバッテリ電圧が閾値電圧を下回った後、図3(c)に示すように、時刻t3においては第12ECU12からゲートウェイECU50にスリープ可信号S1が送信されている。そのため、図3(e)に示すように、時刻t3においても第12ECU12に対応するタイマの計時は開始されていない。
【0035】
また、図3(b)に示すように、バッテリ電圧が閾値電圧を下回った状態が維持されている時刻t4において第11ECU11からゲートウェイECU50にスリープ可信号S1が送信されている。そのため、図3(d)に示すように、時刻t4において第11ECU11に対応するタイマの計時が停止されている。
【0036】
また、図3(b)に示すように、バッテリ電圧が閾値電圧を下回った状態が維持されている時刻t5において第12ECU12からゲートウェイECU50にスリープ不可信号S2が送信されている。そのため、図3(e)に示すように、時刻t5において第12ECU12に対応するタイマの計時が開始されている。
【0037】
また、図3(b)に示すように、バッテリ電圧が閾値電圧を下回った状態が維持されている時刻t6において第11ECU11からゲートウェイECU50にスリープ不可信号S2が送信されている。そのため、図3(d)に示すように、時刻t6において第11ECU11に対応するタイマの計時が再開されている。
【0038】
また、図3(a)に示すように、時刻t7においてバッテリ電圧が閾値電圧を再び上回っている。そのため、図3(d)に示すように、時刻t7において第11ECU11に対応するタイマの計時が停止されるとともに、図3(e)に示すように、時刻t7において第12ECU12に対応するタイマの計時が停止されている。
【0039】
その後、タイマ制御部54は、スリープ可否取得部52が第1〜第3の通信バスNW1〜NW3に接続された全てのECU11,12,21〜23,31,32からスリープ可信号S1を受信したか否かを通信バスNW1,NW2,NW3ごとに判定する(ステップS15)。そして、タイマ制御部54は、第1〜第3の通信バスNW1〜NW3の何れかに接続された全てのECU11,12,21〜23,31,32からスリープ可信号S1を受信したときには(ステップS15=YES)、その通信バスNW1〜NW3に接続された全てのECU11,12,21〜23,31,32にスリープ信号を送信してこれらのECUをスリープ状態に移行させる(ステップS16)。
【0040】
さらに、タイマ制御部54は、第1〜第3の通信バスNW1〜NW3に接続された全てのECU11,12,21〜23,31,32がスリープ状態に移行したか否かを判定する(ステップS17)。そして、タイマ制御部54は、第1〜第3の通信バスNW1〜NW3に接続された全てのECU11,12,21〜23,31,32がスリープ状態に移行していないときには(ステップS17=NO)、その処理をステップS11に戻し、ステップS11〜S16の処理を反復して行う。なお、タイマ制御部54は、先のステップS15において、第1〜第3の通信バスNW1〜NW3の何れにおいても接続された全てのECU11,12,21〜23,31,32からスリープ可信号S1が送信されてはいないときにも(ステップS15=NO)、その処理をステップS11に戻し、ステップS11〜S16の処理を反復して行う。
【0041】
一方、タイマ制御部54は、第1〜第3の通信バスNW1〜NW3に接続された全てのECU11,12,21〜23,31,32がスリープ状態に移行したときには(ステップS17=YES)、その時点でタイマ情報格納部53に格納されているタイマ情報をゲートウェイECU50が備える不揮発性メモリ(図示略)に格納した上で、図2に示すタイマ情報の更新処理を終了する。
【0042】
次に、本実施の形態の通信装置及び通信方法、特に、ゲートウェイECU50の作用について説明する。
ゲートウェイECU50は、バッテリ電圧が閾値電圧未満である間にスリープ不可信号S2を取得したときに、スリープ不可信号S2の送信元となったECUに対応するタイマの計時を開始してタイマ情報を増加更新している。すなわち、ゲートウェイECU50は、バッテリ電圧が閾値電圧未満となったときに、バッテリ電圧の低下との相関性が推認されるECUをスリープモードに移行できない可能性が高い要因として推定し、それらECUに対応するタイマの計時を開始してタイマ情報を増加更新している。これは、バッテリ電圧が閾値電圧未満である間にECU11,12,21〜23,31,32が故障等の要因によりスリープモードに移行できないときには、そのECUについてはスリープモードに移行した本来の場合よりも消費電力が大きくなり、バッテリ電圧を必要以上に大きく低下させていると考えられるからである。
【0043】
また、ゲートウェイECU50は、バッテリ電圧が閾値電圧未満となってからバッテリ切れとなるまでの一定の期間に亘ってタイマ情報を増加更新する。この場合、増加更新されたタイマ情報は、バッテリ電圧が閾値電圧未満となる条件下でECUからスリープモードに移行不能である旨を取得した期間の長さに相当しており、スリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高いECUを特定する上で指標となる。すなわち、ゲートウェイECU50のタイマ制御部54は、この指標となるタイマ情報を増加更新する指標情報更新部として機能する。そして、このタイマ情報は、DLC15に診断機器が接続されたときに、その接続された診断機器によってゲートウェイECU50から読み出される。その結果、診断機器に読み出されたECUごとのタイマ情報のうち、最も計時の進んだタイマに対応するECUがバッテリ切れの要因となった可能性の高いECUとして特定される。すなわち、本実施の形態では、バッテリ切れになった時点だけではなく、バッテリ切れとなるまでの期間に増加更新されたタイマ情報に基づき、第11〜第32ECU11,12,21〜23,31,32のうちからバッテリ切れの要因となった可能性の高いECUが特定される。
【0044】
以上説明したように、上記第1の実施の形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)バッテリ電圧が閾値電圧未満となる条件下でECU11,12,21〜23,31,32からスリープモードに移行不能である旨を取得したときには、当該ECUのいずれかが故障等の要因によって恒常的にスリープモードに移行できていない可能性があると判断され、その可能性の大きさの指標となるタイマの計時が開始される。そして、一定の期間に亘って増加更新されるタイマ情報に基づき、通信バスNW1〜NW3に接続されたECU11,12,21〜23,31,32のうちからスリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性のあるECUを特定することができる。
【0045】
(2)ゲートウェイECU50がバッテリ電圧取得部51、スリープ可否取得部52、及びタイマ制御部54を備えることにより、複数の通信バスNW1〜NW3に接続されたECU11,12,21〜23,31,32のうちからスリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性のあるECUを一括して特定することができる。
【0046】
(3)通信バスNW1〜NW3に接続されたECU11,12,21〜23,31,32のうち、スリープモードに移行不能である旨を取得した期間が相対的に長いECUを、スリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性のあるECUとして特定することができる。
【0047】
(4)ゲートウェイECU50は、車両に多く利用されているCANプロトコルに対応することから、CANプロトコルを利用する車両においてスリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性のあるECUを特定することができる。
【0048】
(第2の実施の形態)
次に、通信装置及び通信方法の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、第2の実施の形態は、ゲートウェイECU50から第11〜第32ECU11,12,21〜23,31,32へのスリープ可否の要求態様が第1の実施の形態と異なる。したがって、以下の説明においては、第1の実施の形態と相違する構成について主に説明し、第1の実施の形態と同一又は相当する構成については重複する説明を省略する。
【0049】
図4に示すように、タイマ制御部54は、バッテリ電圧取得部51が取得したバッテリ電圧が閾値電圧未満であるときには(ステップS11=YES)、バッテリ電圧が閾値電圧を下回ったタイミングであるか否かを判定する(ステップS11A)。例えば、タイマ制御部54は、バッテリ電圧取得部51が取得したバッテリ電圧を一定の時間幅に亘って記憶することを前提とし、現時点の直前の時点においてバッテリ電圧が既に閾値電圧を下回っていたか否かに基づき、バッテリ電圧が閾値電圧を下回ったタイミングであるか否かを判定する(ステップS11A)。
【0050】
そして、タイマ制御部54は、バッテリ電圧が閾値電圧を下回ったタイミングであるときには(ステップS11A=YES)、第11〜第32ECU11,12,21〜23,31,32に対して要求信号を送信してスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報を要求した上で(ステップS11B)、その処理をステップS12に移行する。一方、タイマ制御部54は、バッテリ電圧が閾値電圧を下回ったタイミングではないときには(ステップS11A=NO)、ステップS11Bの処理を経ることなく、その処理をステップS12に移行する。
【0051】
なお、本実施の形態では、図5(a)に示すように、時刻t1は、バッテリ電圧が閾値電圧を下回ったタイミングとなっている。そして、図5(b)に示すように、時刻t1においてゲートウェイECU50から第11ECU11に要求信号が送信されるとともに、その要求信号に応じて第11ECU11からゲートウェイECU50にスリープ不可信号S2が送信されている。そのため、図5(d)に示すように、時刻t1において第11ECU11に対応するタイマの計時が開始されている。
【0052】
また、図5(c)に示すように、同時刻t1においてゲートウェイECU50から第12ECU12に要求信号が送信されるとともに、その要求信号に応じて第12ECU12からゲートウェイECU50にスリープ可信号S1が送信されている。そのため、図5(e)に示すように、時刻t1において第12ECU12に対応するタイマの計時は停止されている。
【0053】
すなわち、本実施の形態では、バッテリ電圧が閾値電圧を下回った直後にゲートウェイECU50から第11ECU11及び第12ECU12に要求信号が送信され、各ECU11,12がスリープモードに移行可能であるか否かについて判定される。そして、スリープモードに移行不能であるECU11,12があるときには、そのECU11,12に対応するタイマの計時が開始されてタイマ情報が増加更新される。
【0054】
したがって、上記第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態の効果(1)〜(4)に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(5)バッテリ電圧が閾値電圧未満となったときに、ECUからスリープモードに移行可能であるか否かを示す情報が直ちに取得され、スリープモードへの移行を妨げる要因となるECUを特定する上で指標となるタイマの計時を開始するか否かが速やかに判断される。すなわち、バッテリ電圧が閾値電圧未満となってから、スリープモードへの移行を妨げる要因となるECUを特定する上で指標となるタイマの計時を開始するか否かが判断されるまでの間にタイムラグが生じることが抑えられる。したがって、一定の期間に亘って増加更新されるタイマ情報に基づき、通信バスNW1〜NW3に接続されたECUのうちからスリープモードへの移行を妨げる要因となるECUをより正確に特定することができる。
【0055】
なお、上記各実施の形態は、以下のような形態にて実施することもできる。
・上記各実施の形態において、ゲートウェイECU50は、バッテリ電圧が閾値電圧未満である間にスリープ不可信号S2を取得したとき、スリープ不可信号S2の送信元となったECU11,12,21〜23,31,32に対応するカウンタをカウントアップしてもよい。この構成では、ゲートウェイECU50は、通信バスNW1〜NW3に接続されたECU11,12,21〜23,31,32からスリープモードに移行不能である旨を取得した頻度をカウンタの計数情報としてECU11,12,21〜23,31,32ごとに得ることとなる。そして、このカウンタの計数情報は、例えばDLC15に接続された診断機器によってゲートウェイECU50から読み出される。その結果、スリープモードに移行不能である旨を取得した頻度が相対的に多いECUを、スリープモードへの移行を妨げる要因となる可能性の高いECUとして特定することができる。
【0056】
・上記各実施の形態において、第11〜第32ECU11,12,21〜23,31,32の各々は、スリープの可否に関する情報を含む通信メッセージを、ゲートウェイECU50から送信される要求信号によらずに定期的に送信する構成であってもよい。
【0057】
・上記各実施の形態において、第11〜第32ECU11,12,21〜23,31,32の何れかが、バッテリ電圧取得部51、スリープ可否取得部52、タイマ情報格納部53、及びタイマ制御部54を備える通信装置を構成してもよい。この場合、通信装置として機能するECUの情報処理部がバッテリ電圧取得部51、タイマ情報格納部53、及びタイマ制御部54として機能するとともに、同ECUのCANコントローラがスリープ可否取得部52として機能する。
【0058】
・上記各実施の形態では、バッテリ電圧取得部51、スリープ可否取得部52、タイマ情報格納部53、及びタイマ制御部54の各々の機能が一つの通信装置に集約されている場合について例示した。しかしこれに限らず、これらの機能の一部が別々に設けられた複数の通信装置によって分散されていてもよい。
【0059】
・上記各実施の形態において、車載通信システムを構成する通信バスNW1〜NW3の通信規格はCANに限られず、少なくとも一部の通信バスの通信規格がFlexRayやLin、イーサネット等の他の通信規格であってもよい。要は、スリープモードへの制御が可能である通信規格であればよい。
【符号の説明】
【0060】
11…第11ECU、11A…情報処理部、11B…CANコントローラ、12…第12ECU、11A…情報処理部、11B…CANコントローラ、12…第12ECU、12A…情報処理部、12B…CANコントローラ、15…DLC、21…第21ECU,21A…情報処理部、21B…CANコントローラ、22…第22ECU、22A…情報処理部、22B…CANコントローラ、23…第23ECU、23A…情報処理部、23B…CANコントローラ、30…バッテリ、31…第31ECU、31A…情報処理部、31B…CANコントローラ、32…第32ECU、32A…情報処理部、32B…CANコントローラ、50…ゲートウェイECU、50A…情報処理部、50B…ゲートウェイコントローラ、51…バッテリ電圧取得部、52…スリープ可否取得部、53…タイマ情報格納部、54…タイマ制御部、100…車両、NW1…第1の通信バス、NW2…第2の通信バス、NW3…第3の通信バス。
図1
図2
図3
図4
図5