(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多角形状の輪郭を形成している前記複数の融着部は、それぞれ、多角形領域の一辺に沿う直線状の第1縁部と、第1縁部に隣接し、多角形領域の他の一辺に沿う直線状の第2縁部とを有しており、隣り合う第1縁部と第2縁部により多角形の角部が形成されている、請求項1に記載の吸収性物品の表面シート。
多角形状の輪郭を形成している前記複数の融着部は、第1縁部及び第2縁部との間を繋ぐ第3縁部を有し、第3縁部は、前記多角形の角部に向かって凸若しくは凹の円弧状又は直線状の平面視形状を有する、請求項2に記載の吸収性物品の表面シート。
熱収縮性繊維を主体として構成された下層と、非熱収縮性繊維を主体として構成された上層とを、前記融着部で部分的に熱融着させた後、下層を熱収縮して得られたものであり、上層が肌対向面側に位置し、熱収縮した熱収縮性繊維を含む下層が非肌対向面側に位置する、請求項1〜5の何れか1項に記載の吸収性物品の表面シート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態である吸収性物品の表面シート1(以下、単に「表面シート1」ともいう)は、
図4に示すように、熱融着性繊維を含む2層の繊維層2A,2Bを含み、前記2層の繊維層2A,2Bが、特定のパターンで規則的に形成された多数の融着部21のそれぞれにおいて相互に熱融着されている。これらの融着部21は、熱エンボス加工によって加圧及び加熱されて形成されたものであり、融着部21は、非肌対向面側に向かって窪んだ凹部となっている。
本実施形態における、表面シート1は、熱収縮性繊維を主体として構成された下層と、非熱収縮性繊維を主体として構成された上層とを、熱エンボス加工により部分的に熱融着させた後、下層を熱収縮して得られたものであり、熱収縮した熱収縮性繊維を含む下層が、2層の繊維層2A,2Bのうちの非肌対向面側の繊維層2Bを構成している。また、熱エンボス加工により部分的に熱融着させた部分が融着部21となって、表面シート1上に複数配されている。また、表面シート1に形成された融着部21のうち4つは、
図2に示すように、輪郭が正方形状(多角形状)の多角形領域22を生じるように配置されている。そして、
図1に示すように、多角形領域22は、表面シート1の平面上に複数設けられている。なお、本明細書において「主体として」とは、当該材料を構成する成分の中で、最も多く含まれていることを意味する。
【0011】
また、それらの多角形領域22は、
図1に示すように、表面シート1の平面視において、少なくとも異なる2方向D1,D2に沿って並ぶように配置されている。また、多角形領域22は、前記2方向D1,D2のそれぞれにおいて、間隔を空けて配置されている。
本実施形態の表面シート1において、多角形領域22が並ぶ前記2方向D1,D2は、
図2に示すように、互いに直交する方向であり、ナプキン等の吸収性物品に組み込まれた状態においては、例えば、前記2方向D1,D2のうちの一方である第1方向D1が、着用者の前後方向に対応する吸収性物品の長手方向と一致し、他方である第2方向D2が、該長手方向に直交する幅方向に一致する。第1方向D1及び第2方向D2を、何れも、吸収性物品の長手方向に対して傾斜した状態として吸収性物品に使用することもできる。
【0012】
本実施形態における多角形領域22の輪郭は、正方形状(四角形状)である。正方形は、平面上に隙間なく並べることが可能な形状であり、本実施形態における多角形領域22は、何れも同形同大の正方形状であり、それぞれの互いに平行な一対の2辺が第1方向D1に延びており、それぞれの互いに平行な他の一対の2辺が第2方向に延びている。
多角形領域22は、平面上に隙間なく並べることが可能な形状であることが好ましく、そのような多角形の他の例としては、正方形、菱形、三角形、長方形、正六角形等が挙げられる。
【0013】
また、複数の多角形領域22が並ぶ前記第1方向D1において、互いに隣り合う多角形領域22,22は、多角形の辺24,24どうしが相対向し且つ相対向する2辺24,24が平行となるように配置されている。また、複数の多角形領域22が並ぶ前記第2方向D2においても、互いに隣り合う多角形領域22,22は、多角形の辺23,23どうしが相対向し且つ相対向する2辺23,23が平行となるように配置されている。
そして、多角形領域22それぞれは、融着部21に対して隆起した線状隆起部25によって周囲を囲まれている。
より詳細には、
図1に示すように、第1方向D1において隣り合う多角形領域22,22間に、第2方向D2に沿って延びる第2線状隆起部25bが形成され、第2方向D2において隣り合う多角形領域22,22間に、第1方向D1に沿って延びる第1線状隆起部25aが形成されており、それらは、
図1に示すように、全体として格子状に延在している。
多角形領域22は、それぞれ、2本の第2線状隆起部25bと2本の第1線状隆起部25aに周囲を全周に亘って囲まれている。
【0014】
多角形領域22のそれぞれは、多角形領域22の内側に、複数の融着部21が配置されて形成されており、多角形領域22の多角形状の輪郭は、それぞれ、多角形の角部を形成する縁部a,bを有する複数の融着部21a〜21dによって形成されている。融着部21a〜21dの外縁が多角形領域22の輪郭の一部をなしていて、各々は離間している。したがって、多角形領域22の輪郭は、各融着部21a〜21dの外縁と、隣り合った融着部の外縁を結ぶ仮想直線とから構成されている。
より詳細には、
図2に示すように、多角形領域22には、4個の融着部21a〜21dが配置されており、4個の融着部21a〜21dは、それぞれ、第1方向D1に沿う直線状の第1縁部aと第2方向D2に沿う直線状の第2縁部bとを有し、第1方向D1において隣り合う融着部の2つの第1縁部a及び2つの第1縁部間を結ぶ仮想直線によって、多角形領域22の第1方向D1に沿う一対の辺が形成され、第2方向D2において隣り合う融着部の2つの第2縁部b及び2つの第2縁部間を結ぶ仮想直線によって、多角形領域22の第2方向D2に沿う他の一対の辺が形成されている。そして、第1方向D1に沿う一対の辺及び第2方向D2に沿う一対の辺により、多角形領域22の正方形状(多角形状)の輪郭が形成されている。このように、多角形領域22それぞれは、多角形領域22の内側に位置する複数の融着部21a〜21dによって、正方形状(多角形状)の輪郭が形成されている。
【0015】
本実施形態の表面シート1においては、多角形領域22のそれぞれが、それぞれの中央部付近に中央隆起部26を有している。中央隆起部26の内部は、上層を構成する繊維で満たされている。
中央隆起部26は、多角形領域22の多角形状の輪郭を形成している前記複数の融着部21a〜21dに囲まれた部分に形成されており、平面視における中央隆起部26の輪郭は、それらの融着部21a〜21dの中央側縁部である第3縁部cによって形成されている。即ち、多角形領域22を形成する複数の融着部21a〜21dは、
図2に示すように、それぞれ、多角形領域22の多角形の角部に対向する部位に、中央隆起部26の輪郭を形成する第3縁部cを有しており、それらの第3縁部cによって、中央隆起部26の平面視形状の輪郭が形成されている。本実施形態の表面シートでは、第3縁部cは、多角形領域22の内側へ向かって凸に湾曲した曲線形状となっていて、融着部21の外形は扇形となっている。つまり、正多角形である本実施形態の多角形領域22では、これを構成する4つの融着部21a〜21dの各々の多角形領域22の対角線に向かって延びる方向における長さが、多角形領域22の重心へ向かって長くなるように第3縁部cは該重心側へ向かって湾曲している。このために、中央隆起部26は山形形状となり易く、多角形領域22の周囲に位置する線状隆起部25よりも低い高さに制御し易くなる。
【0016】
中央隆起部26は、多角形領域22の角部をなす融着部21各々の内側縁から重心方向(中心方向)に向かって高さを増す山形形状をなしている。
図2に示した本実施形態では、多角形領域22の輪郭において、融着部21a〜21d各々の間が離間して隙間部28を形成しており、各々の隙間部28には、山形形状の中央隆起部とつながった尾根状部分28aとしての小隆起部29形成されている。小隆起部29は、中央隆起部26及び線状隆起部25よりも高さが低いが、融着部21よりは高さが高い。
【0017】
特に、下層や全体に熱収縮性繊維を用いて隆起部25,26を形成する場合、隙間部28を設けることにより、その隙間部28部分が隆起し、融着部21に対して隆起する小隆起部29が形成されるとともに、熱エンボス加工後に下層を収縮させる際に、複数の融着部21が互いに近づく方向に収縮して、融着部21に対して隆起した中央隆起部26が容易に形成される。小隆起部29は、線状隆起部25及び中央隆起部26の何れよりも突出高さが低い。なお、隙間部28は、全く圧密化されていない場合のほか、融着部21よりも弱い熱融着等によって圧密化されている場合を含む。
【0018】
また、本実施形態の表面シート1においては、個々の多角形領域22を囲む線状隆起部25が、該多角形領域22の全周に亘って、中央隆起部26より高く隆起している。
ここで、全周に亘って中央隆起部26より高いとは、本実施形態の場合を例に説明すると、多角形領域22を囲む、2本の第1線状隆起部25aと2本の第2線状隆起部25bとが、2本の線状隆起部の交差部分25cを含めて、中央隆起部26より高く隆起していることを意味する。
【0019】
上述した表面シート1の形成材料について説明する。
前述した通り表面シート1は、肌対向面側を形成する繊維層2Aに用いる上層としては、例えば、カード法によって形成されたウェブや嵩高な不織布が好ましく用いられる。嵩高な不織布としては、表面シート1に所望の密度勾配を持たせることが可能であること、また表面シート1に良好な風合いをもたらすことが可能であるとの観点から、エアスルー不織布、エアレイド不織布、レジンボンド不織布が好ましく用いられる。カード法によって形成されたウェブとは、不織布化される前の状態の繊維集合体のことである。つまり、不織布を製造する際に用いられるカードウェブに加えられる後処理、例えばエアスルー法やカレンダー法による加熱融着処理が施されていない状態にある、繊維同士が極めて緩く絡んでいる状態の繊維集合体のことである。カード法によって形成されたウェブを上層として用いる場合には、上層と下層とを接合させると同時に又は接合させた後、上層中の繊維同士を熱融着させる。
上層の構成繊維は、実質的に熱収縮性を有しないものか、又は下層の構成繊維の熱収縮温度より熱収縮温度の高い繊維であることが好ましい。
上層の坪量は、充分な密度勾配を形成する観点及び表面シート1の肌触りを良好にする観点から、好ましくは10〜50g/m
2、更に好ましくは15〜40g/m
2である。
【0020】
非肌対向面側を形成する繊維層2Bに用いる下層としては、カード法によって形成されたウェブや熱収縮性を有する不織布を用いることができる。
下層の構成繊維としては、熱可塑性ポリマー材料からなり且つ熱収縮性を有するものが好適に用いられる。そのような繊維の例としては、潜在捲縮性繊維が挙げられる。熱収縮させる前の下層は、熱収縮性繊維の含有割合(好ましくは潜在捲縮性繊維の含有割合)が、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、上限は100質量%である。
また、上層は、非熱収縮性繊維の含有割合が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。非熱収縮性繊維は、熱収縮しないものであっても良いし、温度によっては熱収縮するが、前述のように、下層中の熱収縮性繊維が収縮する温度においては熱収縮しないものであっても良い。
【0021】
潜在捲縮性繊維は、加熱される前においては、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、且つ所定温度で加熱することによって螺旋状の捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。
潜在捲縮性繊維は、例えば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維からなる。その例としては、特開平9−296325号公報や特許第2759331号公報に記載のものが挙げられる。下層は、例えば、このような潜在捲縮性繊維を含ませておき、上層との熱融着と同時に又はその後に、加熱により該繊維の捲縮を発現させ、収縮させることができる。下層の坪量は、好ましくは10〜50g/m
2、更に好ましくは15〜40g/m
2である。
【0022】
本発明に係る表面シートは、例えば、非熱収縮性繊維又は下層の繊維よりも熱収縮温度の高い繊維からなる上層と、上層の繊維よりも熱収縮温度の低い収縮前の熱収縮性繊維材料からなる下層とを、多数の融着部21により所定のパターンで部分的に貼り合わせると同時に又は両者を貼り合わせた後に、熱を加えて、下層を水平方向に熱収縮させることにより形成される。融着部21は熱収縮し難いが、上層及び下層が融着部21により間欠的に貼り合わされて一体化されているために、下層が熱収縮すると、上層もつられて縮もうとして歪が生じる。この歪により、上層における融着部21以外の部分が大きく隆起し、それによって線状隆起部25及び中央隆起部26が形成される。融着部21による熱融着は、例えば、表面シート1の個々の融着部21に対応する多数のエンボス用の凸部が所定のパターンで配設されたエンボス面(エンボスロールの周面等)を、上層と下層との積層体における上層側から圧接させ、エンボス用の凸部に熱圧された部位における上層及び下層を溶融させて行われる。
【0023】
上述した方法で形成された表面シート1は、その坪量が20〜100g/m
2であることが好ましく、35〜80g/m
2であることが更に好ましい。
【0024】
上述した本発明の一実施形態である吸収性物品用の表面シート1を生理用ナプキンの表面材として使用した際の作用効果について説明する。
本実施形態の表面シート1においては、
図3及び
図4に示すように、個々の多角形領域22を形成している複数の融着部21a〜21dが、多角形領域22の周囲を囲む線状隆起部25に囲まれており、しかも、多角形領域22の内側に形成された中央隆起部26の高さが、その周囲を囲む線状隆起部25よりも低い。そのため、繊維層2A側を肌当接面としたナプキンの使用中に、着用者の肌により表面シート1が加圧されても、周囲の線状隆起部25が圧力に抵抗して、着用者の肌が、多角形領域22の内側、特に融着部21a〜21dに当接することを抑制する。
そのため、起立時や歩行時のように、表面シート1が強く加圧されない状態のみならず、表面シート1が比較的強く加圧される就寝時や着座時等においても、着用者の肌に対する接触面積が低く抑えられ、液吸収後のドライ感が大幅に向上し、肌への液戻り量も低減する。また、接触面積が低下することにより、表面シート1と肌とが擦れ難くなり、肌触りや装着感も向上する。
【0025】
しかも、線状隆起部25の内側に、線状隆起部25よりも低い中央隆起部26がするため着用者が横になったり座ったりして、表面シート1を着用者の肌が比較的強く加圧する場合においては、多角形領域22を囲む線状隆起部25とは別に、中央隆起部26も体圧を支えるため、比較的強く加圧されている状態においても良好なクッション性を発現し、肌触りやクッション感に優れた表面シートとなる。
更に、多角形領域22の内側に中央隆起部26を有するため、多角形領域22の内側にも液の吸収性が確保されるとともに、融着部21に比して柔軟となり易い線状隆起部25や中央隆起部26が、表面シート1の平面方向に分散して形成されているため、表面シート1が、多数の箇所で曲がり易く、全体として柔軟に変形するとともに、シワも生じにくく、着用中に着用者に違和感を与えにくい。
【0026】
接触面積率を低く抑える観点等から、多角形領域22を囲む線状隆起部25は、多角形領域22の全周に亘って高さが均一であることが好ましい。ここで、全周に亘って高さが均一であるためには、線状隆起部25における表面シートの厚みt5’を、交差部分25cを含む多角形領域22の全周囲に亘って測定した際に、当該高さが最も高い部分と最も低い部分との高低差が、当該高さが最も高い部分の高さの30%以下であることが好ましく、更には20%以下であることがより好ましい。
また、同様の観点から、多角形領域22を囲む線状隆起部25は、多角形領域22の全周に亘って幅が均一であることが好ましい。ここでいう幅は、多角形領域22を囲む線状隆起部25の幅を、交差部分25cを除いて測定した際に、該幅さが最も広い部分と該幅が最も狭い部分の幅の差が、当該幅が最も広い部分の幅の30%以下であることを意味し、好ましくは20%以下である。
【0027】
また、中央隆起部26の融着部21からの突出高さt6は、線状隆起部25の融着部21からの突出高さt5の、好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上であり、また、好ましくは60%以下、更に好ましくは50%以下である。より具体的には、突出高さt6は突出高さt5の10%以上60%以下、特に20%以上50%以下である。当該範囲であると、不慮に高い圧力が加わったような状態でも、表面シートと着用者の肌との接触面積を小さく保つことが極めて容易となるとともに、体液の液戻りを抑制することが容易となる。また、見た目の柔らかさの点からも有利である。
また、表面シート1は、中央隆起部26を有する部分の厚みt6’が、融着部21における厚みt2の、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上である。他方、表面シート1は、線状隆起部25を有する部分の厚みt5’が、融着部21における厚みt2の、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.6倍以上である。
【0028】
また、ある一方向において隣り合う2つの多角形領域22の、向かい合った平行な2辺の間の距離、すなわち、該一方向における線状隆起部25の幅Wは、同じ方向における多角形領域の長さL1よりも小さいことが好ましい。
図1には、第1方向D1における、線状隆起部25の幅及び多角形領域22の長さを符号W及びL1で示したが、第2方向D2についても、線状隆起部25の幅が多角形領域の長さよりも小さいことが好ましい。このようにすることによって、線状隆起部25よりも高さの低い領域の面積を大きくすることができ、着用者肌への接触面積の低減と通気性確保が容易となる。
【0029】
なお、本実施形態の表面シート1においては、融着部21における坪量が、線状隆起部25における坪量と略同一であり、また融着部21における坪量が、中央隆起部26における坪量と略同一である。他方、融着部21における繊維密度は、線状隆起部25における繊維密度より高く、また、融着部21における繊維密度は、中央隆起部26における繊維密度よりも高い。
【0030】
また、中央隆起部26は、線状隆起部25よりも繊維密度が高い。このために、表面シート1上に排泄された体液は、線状隆起部25から中央隆起部26に向かって移動し、吸収体へと移動し易くなっている。また、中央隆起部26は着用者の肌と触れにくいので、線状隆起部25に排出された体液が着用者肌と長時間触れることが回避される。
加えて、本実施形態の表面シート1では、中央隆起部26の繊維密度よりも小隆起部29の繊維密度の方が高い。このために、小隆起部29から吸収体への体液の移動が起こり易くなっており、一層、着用者肌と長時間体液が接触する機会が減る。したがって、肌トラブルや濡れた感じによる不快感を回避することが可能になる。
【0031】
また、線状隆起部25と中央隆起部の間を結ぶようにして、これらよりも高さが低い小隆起部29が存在しているので、表面シート全体が連続した隆起部分で繋がっていることとなる。このために、着用者の動きに対する自然な動作追従性が実現されており、シワやヨレの発生をより抑えることが可能となっている。加えて、3段階の高さが設けられつつも、熱圧着によるフィルム化を抑える設計が可能であり、実際、本実施形態の表面シートは、いずれの隆起部もフィルム化されていない。このため、排泄液が肌当接面側(表面側)から非肌当接面側(裏側)へと移行する面積が広いので、シート表面に液残りが起こり難い。また、線状隆起部25以外はこれより高さが低いので、排泄液が肌に接触しにくいため、不快感やカブレ等の不都合を抑制し易い。
【0032】
本発明の吸収性物品の表面シートは、吸収性物品の表面シートとして用いられる。
吸収性物品は、主として尿や経血等の排泄体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナー(おり物シート)、使い捨ておむつ等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
【0033】
本発明の吸収性物品の表面シートは、上述した実施形態に制限されずに、適宜変更可能である。
【0034】
例えば、2層構造の表面シートは、上層が、加熱により伸長する熱伸長性複合繊維を含み、下層が、該熱伸長性複合繊維を含まないか又は上層より少量の該熱伸長性複合繊維を含んでいる中間シートに、熱エンボス加工を施して融着部21を形成した後、熱伸長性複合繊維を伸長させる熱風処理等の加熱処理を施すことによって上層側に、隆起部(線状隆起部、中央隆起部)を形成したものであっても良い。熱伸長性複合繊維については、例えば、特開2010−148730号公報に記載もの等を用いることができる。また、表面シート1は、単層構造の不織布からなるものであっても良い。その場合の融着部においては、構成繊維どうしが繊維の全体又は表面の溶融固化により一体化されている。熱融着性繊維としては、表面の全体又は一部が、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂からなるものを挙げることができる。
【0035】
また、本発明における多角形領域22は、
図5(a)に示すように、3つの融着部21によって三角形状の輪郭が形成された三角形状の領域であっても良いし、
図5(b)に示すように、6つの融着部21によって六角形状の輪郭が形成された六角形状の領域であっても良い。また、多角形状の輪郭を形成する融着部は、
図2に示す扇形の融着部のように、第1縁部aと第2縁部bとの間を繋ぐ第3縁部cが、多角形の中心方向に向かって凸の円弧状を有するものに代えて、第1縁部aと第2縁部bとの間を繋ぐ第3縁部cが、多角形の角部に向かって凹の円弧状を有するものや、第3縁部cが直線状で、全体形状が三角形状のもの等であっても良い。
【0036】
また、上述した実施形態の表面シート1は、多角形が並ぶ2方向D1,D2が、それぞれ、吸収性物品の長手方向と幅方向に沿うものであり、柔軟性と着用感の点では好ましものである。これに代えて、多角形領域が該吸収性物品の長手方向に対して傾斜した方向に並ぶように配置されている形態であっても良い。この場合には、排泄液の横漏れ抑制効果が高くなる。傾斜の角度は、長手方向に対して10°以上、80°以下であると、当該効果が高いので好ましい。
【0037】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の吸収性物品の表面シートを開示する。
<1> 熱融着性繊維を含み、熱エンボス加工で形成された融着部によって構成された輪郭を備える多角形領域を複数有する吸収性物品の表面シートであって、前記複数の多角形領域は、表面シートの平面視において、少なくとも異なる2方向に沿って、それぞれの方向に間隔を空けて並ぶように配置されており、前記多角形領域は、それぞれ、多角形の角部を形成する縁部を有する複数の融着部によって多角形状の輪郭が形成されており、前記多角形領域それぞれは、前記融着部に対して隆起した線状隆起部によって周囲を囲まれており、前記多角形領域それぞれは、多角形状の輪郭を形成している複数の融着部に囲まれた部分に、該融着部に対して隆起した中央隆起部を有しており、前記多角形領域を囲む前記線状隆起部は、該多角形領域の全周に亘って、前記中央隆起部より高く隆起している、吸収性物品の表面シート。
【0038】
<2> 多角形状の輪郭を構成している前記複数の融着部は、それぞれ、多角形領域の一辺に沿う直線状の第1縁部と、第1縁部に隣接し、多角形領域の他の一辺に沿う直線状の第2縁部とを有しており、隣り合う第1縁部と第2縁部により多角形の角部が形成されている、前記<1>に記載の吸収性物品の表面シート。
<3> 多角形状の輪郭を形成している前記複数の融着部は、第1縁部及び第2縁部との間を繋ぐ第3縁部を有し、第3縁部は、前記多角形の中心方向に向かって凸若しくは凹の円弧状又は直線状の平面視形状を有する前記<2>に記載の吸収性物品の表面シート。
<4> 前記第3縁部は、前記多角形の中心方向に向かって凸の曲線であり、前記融着部が扇形形状である前記<3>に記載の吸収性物品の表面シート。
<5> 前記多角形の輪郭を構成している前記複数の融着部の間に、圧着されていないか、該融着部よりも弱い圧着が施されている隙間部を有する、前記<1>〜<4>の何れか1つに記載の吸収性物品の表面シート。
<6> 前記中央隆起部が山形形状である、前記<1>〜<5>の何れか1つに記載の吸収性物品の表面シート。
<7> 前記隙間部には、前記中央隆起部と前記線状隆起部とを繋ぐ、前記融着部よりも高さが低い小隆起部を備えている、前記<5>又は<6>に記載の吸収性物品の表面シート。
<8> 前記小隆起部は、前記中央隆起部及び前記線状隆起部よりも高さが低い前記<7>記載の吸収性物品の表面シート。
<9> 前記多角形領域を囲む前記線状隆起部は、該多角形領域の全周に亘って高さが均一である、前記<1>〜<8>の何れか1つに記載の吸収性物品の表面シート。
<10> 前記多角形領域を囲む前記線状隆起部は、該多角形領域の全周に亘って幅が均一である、前記<1>〜<9>の何れか1つに記載の吸収性物品の表面シート。
【0039】
<11> 熱収縮性繊維を主体として構成された下層と、非熱収縮性繊維を主体として構成された上層とを、前記融着部で部分的に熱融着させた後、下層を熱収縮して得られたものであり、上層が肌対向面側に位置し、熱収縮した熱収縮性繊維を含む下層が非肌対向面側に位置する、前記<1>〜<10>の何れか1つに記載の吸収性物品の表面シート。
<12> 前記上層の坪量が10g/m2以上、50g/m2以下である、前記<11>記載の吸収性物品の表面シート。
<13> 前記下層の坪量が10g/m2以上、50g/m2以下である、前記<11>又は<12>記載の吸収性物品の表面シート。
<14> 前記多角形領域が、三角形、四角形又は六角形状である、前記<1>〜<13>の何れか1つに記載の吸収性物品の表面シート。
<15> 前記多角形領域が、正多角形形状である、前記<1>〜<14>の何れか1つに記載の吸収性物品の表面シート。
<16> 前記央隆起部の融着部からの突出高さは、線状隆起部の融着部からの突出高さの10%以上60%以下である、前記<1>〜<15>の何れか1つに記載の吸収性物品の表面シート。
<17> 前記中央隆起部の厚みが、融着部における厚み1.1倍以上である、前記<1>〜<16>の何れか1つに記載の吸収性物品の表面シート。
<18> 前記線状隆起部の厚みが、融着部における厚みの1.5倍以上である、前記<1>〜<17>の何れか1つに記載の吸収性物品の表面シート。
<19> ある一方向において隣り合う2つの多角形領域の、向かい合った平行な2辺の間の距離は、同じ方向のおける多角形領域の長さよりも小さい、前記<1>〜<18>の何れか1つに記載の吸収性物品の表面シート。
<20> 前記中央隆起部の繊維密度が、前記線状隆起部の繊維密度よりも高い前記<1>〜<19>の何れか1つに記載の吸収性物品の表面シート。
<21> 前記中央隆起部の繊維密度が、前記小隆起部の繊維密度よりも低い前記<1>〜<20>の何れか1つに記載の吸収性物品の表面シート。
【0040】
<22> 前記<1>〜<21>の何れか1つに記載の表面シートと吸収体を備えている、吸収性物品。
<23> 前記吸収性物品は縦長であり、前記多角形領域が該吸収性物品の長手方向及び幅方向各々に沿って並ぶよう配置されている、前記<20>記載の吸収性物品。
<24> 前記吸収性物品は縦長であり、前記多角形領域が該吸収性物品の長手方向に対して傾斜した方向に並ぶように配置されている、前記<20>記載の吸収性物品。
<25> 前記多角形領域が四角形である、前記<22>記載の吸収性物品。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0042】
[上層の製造]
大和紡績株式会社製の芯鞘型複合繊維〔NBF(SH)(商品名)、2.2dtex×51mm〕を原料として、カード法によって坪量22g/m
2のカードウェブを製造し、これを上層として用いた。前記芯鞘型複合繊維はポリエチレンテレフタレートを芯成分、ポリエチレンを鞘成分とするものであった。
【0043】
[下層の製造]
大和紡績株式会社の熱収縮性繊維〔L(V)(商品名)、2.2dtex×51mm〕を原料として、カード法によって坪量22g/m
2のカードウェブを製造し、これを下層として用いた。
【0044】
実施例
下層上に上層を重ね合わせた積層体の上層側から、熱エンボス加工を施し、
図1及び
図2に示すような、1/4円状の4個の融着部4個で一つの多角形領域を形成するパターンの融着部を配置した。積層体のエンボス接着後、130℃±10℃の熱風を5〜10秒間通過させて、下層の熱収縮性繊維を捲縮させ、下層を収縮させると共に上層を凸状に突出させ、線状隆起部25及び中央隆起部26を有する吸収性物品用の表面シート1を製造した。熱融着によって形成された融着部は、面積が3.14mm
2であり、エンボス面積率(完成した表面シートにおけるエンボス面積率)は16.5%であった。また、得られた線状隆起部25の幅Wは、縦横いずれの方向においても、2.0mmであり、多角形領域22の長さL1(1辺の長さに同じ)は、縦横いずれの方向においても4.0mmであった。
【0045】
比較例
下層上に上層を重ね合わせた積層体の上層側から、
図6で示すパターンで熱エンボス加工を施し、4個の熱融着エンボス30で囲まれた凸部31を形成した。積層体のエンボス接着後、実施例と同様の条件で、熱風を通過させて、多数の凸部31を有する吸収性物品用の表面シート32を製造した。熱融着によって形成された融着部は、面積が3.07mm
2の十字形状であり、エンボス面積率(完成した表面シートにおけるエンボス面積率)は12.3%であった。
【0046】
実施例及び比較例で得られた表面シートについて、(1)低荷重下における肌との接触面積、及び(2)高荷重下における肌との接触面積を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0047】
(1)低荷重下における肌との接触面積
ナプキン着用時に着用者が感じるベタつき、蒸れの良否を評価するべく、下記方法により、肌とナプキン表面の接触面積を測定した。
〔測定方法〕
実施例及び比較例の各表面シートについて、肌との接触面積を以下の方法で測定した。
サンプルである表面シートを60mm×80mmの大きさに切りだし、無加圧の状態及び、上層に透明の重さ50gのアクリル板を置き、更にアクリル板上に526gの錘を設置し、12gf/cm
2の荷重を掛けた状態で、各サンプルの表面形状をKeyence社製、形状解析アプリケーションKS−Analyzerを用いて解析し、無荷重の状態から12gf/cm
2の荷重を掛けた状態で厚み方向に変化した部分を抽出し、二値化処理することにより、装着時に肌と接触する部分の画像を得た。この画像をNexus製NewQube(Ver.4.22)を用いて処理を行い、接触面積率を算出した。
【0048】
(2)高荷重下における肌との接触面積
ナプキン着用時に着用者が感じるベタつき、蒸れの良否を評価するべく、下記方法により、肌とナプキン表面の接触面積を測定した。
〔測定方法〕
低荷重下での測定と同様の方法にて、接触面積率を算出した。異なる点は、アクリル板上に設置する錘の重さであり、高荷重下における測定においては、アクリル板上に1102gの錘を設置し、24gf/cm
2の荷重を掛けた状態で、測定を行った。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果によれば、実施例の表面シートは、比較例の表面シートに比べ、低荷重下及び高荷重下のいずれにおいても、肌との接触面積が低く、実施例の表面シートによれば、通気性に優れ、べたつき感やムレを低減でき、肌へのダメージ等を減らす効果があることが判る。また、実施例の表面シートは、低荷重下の結果及び高荷重下の結果との対比から、クッション感(装着感)にも優れることが判る。