特許第6173078号(P6173078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6173078-タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173078
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20170724BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20170724BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20170724BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20170724BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K3/22
   C08K3/36
   B60C1/00 A
   C08J3/20 B
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-142877(P2013-142877)
(22)【出願日】2013年7月8日
(65)【公開番号】特開2015-13974(P2015-13974A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2015年7月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 達也
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−148952(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/020655(WO,A1)
【文献】 特開2012−116983(JP,A)
【文献】 特開2000−159935(JP,A)
【文献】 特開2012−121944(JP,A)
【文献】 特開2008−255212(JP,A)
【文献】 特開2008−101158(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043855(WO,A1)
【文献】 特開2012−180397(JP,A)
【文献】 特開2008−169292(JP,A)
【文献】 特開2008−169264(JP,A)
【文献】 特開2012−117060(JP,A)
【文献】 特開2012−036370(JP,A)
【文献】 特開平05−214170(JP,A)
【文献】 特開2000−080204(JP,A)
【文献】 特開平08−059894(JP,A)
【文献】 特開2000−204197(JP,A)
【文献】 特開平11−334310(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/004676(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/004675(WO,A1)
【文献】 特開2009−173838(JP,A)
【文献】 特開2011−079882(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/062119(WO,A1)
【文献】 特開2004−155807(JP,A)
【文献】 特開2003−321578(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/076048(WO,A1)
【文献】 特開2015−232114(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/178336(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/178232(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08J 3/00− 7/18
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類系ブタジエンゴムを含むゴム成分と、平均粒子径1.5μm以下及び窒素吸着比表面積3〜60m/gである水酸化アルミニウムと、湿式シリカとを含み、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記水酸化アルミニウムの含有量が1〜60質量部であり、
少なくとも前記ゴム成分及び前記水酸化アルミニウムを排出温度150℃以上で混練して得られるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記水酸化アルミニウムの平均粒子径が0.69μm以下及び窒素吸着比表面積が3〜50m/g、前記湿式シリカの窒素吸着比表面積が80〜300m/gであり、
前記ゴム成分100質量部に対する前記湿式シリカの含有量が15〜130質量部である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
130℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が50以上であり、かつ
常温で液体のプロセスオイル量、軟化点51℃未満のレジン量及び軟化点51〜140℃のレジン量が下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
1.0×(常温で液体のプロセスオイル量)+0.6×(軟化点51℃未満のレジン量)+0.4×(軟化点51〜140℃のレジン量)≦35
〔式中、プロセスオイル量及びレジン量は、前記ゴム成分100質量部に対する含有量(質量部)を表す。〕
【請求項4】
前記排出温度が165℃以上である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分100質量部に対して、下記式(I)で表されるシランカップリング剤を0.1〜20質量部含む請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(C2p+1O)Si−C2q−S−CO−C2k+1 (I)
(式中、pは1〜3の整数、qは1〜5の整数、kは5〜12の整数である。)
【請求項6】
タイヤ用トレッドに使用される請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及び該ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、トレッド、サイドウォール等、様々な部材により構成され、各部材に応じて諸性能が付与されている。路面と接触するトレッドには、安全性等の観点でウェットグリップ性能などの性能が要求され、水酸化アルミニウムの添加により当該性能を改善する方法が提案されているが、耐摩耗性が悪化するという欠点があるため、一般公道用のタイヤに用いられることは少ない。また、配合材料の加工性にも問題がある。
【0003】
また、溶液重合スチレンブタジエンゴムのスチレン量及びビニル量の増加や変性溶液重合スチレンブタジエンゴムによるtanδカーブの制御、シリカの増量によりtanδピークを高くすること、液状レジンの添加、などの方法も挙げられるが、他の諸物性を維持しながら、ウェットグリップ性能を改善するのは難しいのが現状である。
【0004】
特許文献1には、特定のゴム成分や水酸化アルミニウムなどの特定の無機補強剤を用いて、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び加工性を向上させることが開示されているが、更なる改善が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4559573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及びロール加工性をバランス良く改善したタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴム成分と、平均粒子径1.5μm以下及び窒素吸着比表面積3〜60m/gである水酸化アルミニウムと、湿式シリカとを含み、前記ゴム成分100質量部に対して、前記水酸化アルミニウムの含有量が1〜60質量部であり、少なくとも前記ゴム成分及び前記水酸化アルミニウムを排出温度150℃以上で混練して得られるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0008】
前記水酸化アルミニウムの平均粒子径が0.69μm以下及び窒素吸着比表面積が3〜50m/g、前記湿式シリカの窒素吸着比表面積が80〜300m/gであり、前記ゴム成分100質量部に対する前記湿式シリカの含有量が15〜130質量部であることが好ましい。
【0009】
130℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が50以上であり、かつ常温で液体のプロセスオイル量、軟化点51℃未満のレジン量及び軟化点51〜140℃のレジン量が下記式を満たすことが好ましい。
1.0×(常温で液体のプロセスオイル量)+0.6×(軟化点51℃未満のレジン量)+0.4×(軟化点51〜140℃のレジン量)≦35
〔式中、プロセスオイル量及びレジン量は、前記ゴム成分100質量部に対する含有量(質量部)を表す。〕
【0010】
前記排出温度が165℃以上であることが好ましい。
【0011】
前記ゴム成分100質量部に対して、下記式(I)で表されるシランカップリングを0.1〜20質量部含むことが好ましい。
(C2p+1O)Si−C2q−S−CO−C2k+1 (I)
(式中、pは1〜3の整数、qは1〜5の整数、kは5〜12の整数である。)
【0012】
タイヤ用トレッドに使用されることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、前記タイヤ用ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ゴム成分に対して、所定量の特定平均粒子径及び窒素吸着比表面積を有する水酸化アルミニウムと、湿式シリカとを配合したもので、かつ少なくとも前記ゴム成分及び前記水酸化アルミニウムを所定の排出温度で混練して得られたタイヤ用ゴム組成物であるので、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及びロール加工性をバランス良く改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】タイヤ表面の水酸化アルミニウムと路面上のシリカとの間に生じうる瞬間的な反応を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分に対して、所定量の特定平均粒子径及び窒素吸着比表面積を有する水酸化アルミニウムと、湿式シリカとを配合したもので、かつ少なくとも前記ゴム成分及び前記水酸化アルミニウムを所定の排出温度で混練して得られるものである。
【0017】
水酸化アルミニウムを添加することでウェットグリップ性能を改善できるが、これは、以下の(1)〜(3)の作用が単独又は複数発揮されることによる効果であると推察される。
【0018】
(1)配合した水酸化アルミニウムが混練り中に一部がシリカ以上のモース硬度を持つアルミナに転化したり、図1で示されるように、水酸化アルミニウムがシリカと結合し、固定化されることにより、アルミナ塊や水酸化アルミニウムがアンカー効果を発現し、それにより、ウェットグリップ性能が高まると考えられる。
【0019】
(2)路面上の二酸化ケイ素とタイヤ表面上の水酸化アルミニウムが走行中に接触する(擦れる)ことに伴って、図1で示されるような瞬間的な結合が形成され、ウェットグリップ性能が向上すると考えられる。
【0020】
(3)ウェット路面では、タイヤ表面が水膜を介して路面に接触する部位が存在し、通常、この水膜はタイヤと路面が直接接触する部位で発生する摩擦熱により蒸発すると考えられるが、水酸化アルミニウムが添加されていると、当該摩擦熱は、タイヤ表面の水酸化アルミニウムにおいて「Al(OH)→1/2Al+3/2HO」で示される吸熱反応が進行することに寄与し、水膜(水分)の蒸発が抑制されると考えられる。仮に水膜が蒸発した場合はタイヤ表面と路面間に空間が形成されるため、路面とタイヤ間の接触面積が減少し、ウェットグリップ性能が低下する。
【0021】
このように水酸化アルミニウムの添加による作用効果でウェットグリップ性能が改善されるものの、通常は耐摩耗性やロール加工性が悪化するため、これらをバランス良く改善することは難しい。本発明は、特定の平均粒子径及び窒素吸着比表面積を持つ水酸化アルミニウムと、湿式シリカとを含み、かつゴム成分と特定の水酸化アルミニウムを所定排出温度で混練して得られるゴム組成物であるため、前記(1)〜(3)の作用がバランス良く発揮されてウェットグリップ性能が充分に改善されると同時に、優れた耐摩耗性やロール加工性も得られ、これらの性能バランスが顕著に改善される。
【0022】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分と、所定量の特定平均粒子径及び窒素吸着比表面積を有する水酸化アルミニウムと、湿式シリカとを含むもので、少なくとも前記ゴム成分及び前記水酸化アルミニウムを所定の排出温度で混練して得られるものであり、このような製法で得られるものであれば特に限定されないが、例えば、ゴム成分、前記特定の水酸化アルミニウム及び湿式シリカを150℃以上で混練するベース練り工程と、前記ベース練り工程で得られた混練物及び加硫剤を混練する仕上げ練り工程とを含む製法により好適に製造できる。
【0023】
ゴム成分としては特に限定されず、天然ゴム(NR)やイソプレンゴム(IR)などのイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。なかでも、良好な操縦安定性、低燃費性、破断時伸びを確保しつつ、良好な耐久性が得られるという理由から、イソプレン系ゴム、BR、SBRが好ましい。特にサマータイヤでは、BRとSBRを併用することが好ましく、スタッドレスタイヤでは氷上性能も重要であることから、BRとイソプレン系ゴムを併用することが好ましい。
【0024】
BRとしては、特に限定されず、例えば、高シス配合量のBR、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含むBR、希土類元素系触媒を用いて合成されたBR(希土類系BR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、良好な操縦安定性、低燃費性、破断時伸びを確保しつつ、良好な耐久性が得られるという理由から、希土類系BRが好ましい。
【0025】
希土類系BRとしては、従来公知のものを使用でき、例えば、希土類元素系触媒(ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒)などを用いて合成したものが挙げられる。なかでも、ネオジム系触媒を用いて合成したNd系BRが好ましい。
【0026】
イソプレン系ゴムのNRとしては、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、IRとしても、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。SBRとしては、特に限定されず、乳化重合SBR(E−SBR)、溶液重合SBR(S−SBR)、シリカとの相互作用を有する化合物により変性されたシリカ用変性SBR等が挙げられる。なかでも、シリカとの相互作用が強いため、シリカを良好に分散でき、低燃費性、耐摩耗性を向上できる点から、シリカ用変性SBRが好ましい。
【0027】
シリカ用変性SBRとしては、各種変性剤でポリマーの末端や主鎖が変性されたSBRなど、従来公知のものが挙げられる。例えば、特開2010−077412号公報、特開2006−274010号公報、特開2009−227858号公報、特開2006−306962号公報、特開2009−275178号公報などに記載の変性SBRなどが挙げられ、具体的には、下記一般式(1)で表される変性剤を反応させて得られるMwが1.0×10〜2.5×10の変性SBRを好適に使用できる。
【化1】
(式中、nは1〜10の整数を表し、Rは2価の炭化水素基を表し(−CH−など)、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜4のヒドロカルビル基又は炭素原子数が1〜4のヒドロカルビルオキシ基を表し、R、R及びRの少なくとも1つがヒドロカルビルオキシ基であり、Aは窒素原子を有する官能基を表す。)
【0028】
本発明において、シリカ用変性SBRの結合スチレン量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは27質量%以上である。25質量%未満であると、ウェットグリップ性能が劣る傾向がある。また、該結合スチレン量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えると、低燃費性が悪化するおそれがある。
なお、スチレン量は、H−NMR測定により算出される。
【0029】
特定の平均粒子径及び窒素吸着比表面積を有する水酸化アルミニウムについて、該水酸化アルミニウムの平均粒子径は、1.5μm以下、好ましくは0.69μm以下、より好ましくは0.6μm以下である。また、該平均粒子径は、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.25μm以上、更に好ましくは0.4μm以上である。1.5μmを超えると、耐摩耗性及びウェットグリップ性能が低下するおそれがあり、0.2μm未満であると、ロール加工性が低下するおそれがある。なお、水酸化アルミニウムの平均粒子径は、数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される。
【0030】
上記水酸化アルミニウムの窒素吸着比表面積(NSA)は、3〜60m/gである。上記範囲外では、耐摩耗性及びウェットグリップ性能が悪化するおそれがある。該NSAの下限は、好ましくは6m/g以上、より好ましくは12m/g以上であり、また、上限は、好ましくは50m/g以下、より好ましくは40m/g以下、更に好ましくは20m/g以下である。なお、水酸化アルミニウムのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0031】
上記水酸化アルミニウムのモース硬度は、タイヤの耐摩耗性やウェットグリップ性能の確保や、バンバリーミキサーや押出機の金属摩耗を抑える観点から、原料段階で1〜8であることが好ましく、2〜7であることがより好ましい。モース硬度は、材料の機械的性質の一つで古くから鉱物関係で汎用されている測定法であり、硬さを計りたい物質(水酸化アルミニウム等)を標準物質でこすり、ひっかき傷の有無でモース硬度を測定する。なお、水酸化アルミニウムのモース硬度は、アルミナに転化することで上昇し、シリカ以上の値となる。これにより、路面石以上の硬度となるので、優れた耐摩耗性やウェットグリップ性能が得られる。
【0032】
上記水酸化アルミニウムとしては、上記平均粒子径及びNSAの特性を有する市販品を使用でき、また、水酸化アルミニウムに粉砕などの処理を施して前記特性を有する粒子に調整した処理品、なども使用可能である。粉砕処理を施す場合、湿式粉砕、乾式粉砕(ジェットミル、カレントジェットミル、カウンタージェットミル、コントラプレックスなど)等、従来公知の方法を適用できる。
また、必要に応じて、医薬、バイオ関係で頻用されるメンブランフィルター法にて分取し、特定の平均粒子径及びNSAを有するものを作製し、ゴム配合剤として使用することもできる。
【0033】
本発明における湿式シリカについて、該湿式シリカのNSAは、好ましくは80m/g以上、より好ましくは110m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。また、該NSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。80m/g未満であると、耐摩耗性能が低下するおそれがあり、300m/gを超えると、ロール加工性及び燃費性能が低下するおそれがある。なお、湿式シリカのNSAは、上記水酸化アルミニウムと同様の方法で測定される。
【0034】
本発明のゴム組成物は、上記水酸化アルミニウム及び湿式シリカの他に、カーボンブラック等の他の充填剤を配合してもよく、例えば、前記ベース練り工程で混練できる。カーボンブラックとしては、特に限定されないが、本発明の効果を充分に発揮するという点で、微粒子カーボンであることが好ましい。
【0035】
上記カーボンブラックのNSAは、好ましくは80m/g以上、より好ましくは100m/g以上である。また、該NSAは、好ましくは200m/g以下、より好ましくは180m/g以下である。上記範囲内であると、本発明の効果を充分に発揮できる。なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217のA法によって求められる。
【0036】
前記ベース練り工程で湿式シリカを混練する際、シランカップリング剤も同時に混練してもよい。例えば、下記式(I)で表されるシランカップリング剤を使用することが好ましい。上記共役ジエン系重合体及びシリカとともに下記式(I)で表されるシランカップリング剤を配合することで、シリカを良好に分散させ、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性を顕著に改善できる。また、下記式(I)で表されるシランカップリング剤はゴム焼けを起こしにくいため、製造時、高温で排出できる。
(C2p+1O)Si−C2q−S−CO−C2k+1 (I)
(式中、pは1〜3の整数、qは1〜5の整数、kは5〜12の整数である。)
【0037】
pは1〜3の整数であるが、2が好ましい。pが4以上ではカップリング反応が遅くなる傾向がある。
【0038】
qは1〜5の整数であるが、2〜4が好ましく、3がより好ましい。qが0または6以上では合成が困難である。
【0039】
kは5〜12の整数であるが、5〜10が好ましく、6〜8がより好ましく、7が更に好ましい。
【0040】
上記式(I)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のNXTなどがあげられる。上記式(I)で表されるシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、その他のシランカップリング剤、例えば、Momentive社製のNXT−Z45やEVONIK−DEGUSSA社製のSi69、Si75などと併用してもよい。
【0041】
本発明では、軟化剤を配合してもよく、例えば、前記ベース練り工程で配合できる。軟化剤としては、プロセスオイル;C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、テルペン系樹脂、クマロンインデン樹脂、芳香族ビニル重合体等のレジンを使用できる。なかでも、テルペン系樹脂、プロセスオイル、クマロンインデン樹脂、芳香族ビニル重合体などが好適であり、サマータイヤの場合、芳香族ビニル重合体が特に好適に用いられ、スタッドレスタイヤの場合、テルペン系樹脂及びクマロンインデン樹脂が特に好適に用いられる。
【0042】
プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。該プロセスオイルは常温(20℃)で液状であることが一般的である。
【0043】
テルペン系樹脂としては、テルペン樹脂及びテルペンフェノール樹脂等を用いることができる。テルペン系樹脂の軟化点は、好ましくは51〜140℃、より好ましくは90〜130℃である。
【0044】
クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。ここで、クマロンインデン樹脂の軟化点は、好ましくは51℃未満、より好ましくは−10〜30℃である。
【0045】
芳香族ビニル重合体としては、芳香族ビニル単量体(単位)として、スチレン、α−メチルスチレンが使用され、それぞれの単量体の単独重合体、両単量体の共重合体のいずれでもよい。上記芳香族ビニル重合体としては、経済的で、加工しやすく、ウェットスキッド性能に優れていることから、α−メチルスチレン若しくはスチレンの単独重合体又はα−メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体又はスチレンの単独重合体がより好ましい。芳香族ビニル重合体の軟化点は、好ましくは51〜140℃、より好ましくは80〜130℃である。なお、軟化剤の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0046】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、ワックス、酸化亜鉛、老化防止剤等の材料を適宜配合してもよく、例えば、前記ベース練り工程で混練できる。
【0047】
前記ゴム成分、水酸化アルミニウム、湿式シリカ等の成分を混練するベース練り工程は、例えば、混練機を用いて、これらの成分を混練することにより実施できる。混練機としては従来公知のものを使用でき、例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどが挙げられる。
【0048】
前記ベース練り工程等、少なくとも前記ゴム成分及び水酸化アルミニウムを混練する工程(例えば、ベース練り工程を1工程で実施する場合は当該工程、ベース練り工程を後述する分割したベース練り工程として実施する場合は前記水酸化アルミニウムを投入してゴム成分と混練する工程)における排出温度は、150℃以上、好ましくは155℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは165℃以上、特に好ましくは170℃以上である。水酸化アルミニウムの熱分解開始温度(DSC吸熱開始温度)の吸熱ピークが220〜350℃にあるため、上記排出温度とすることで、適度に水酸化アルミニウムのアルミナへの転化が起こり、前記(1)〜(3)の作用がバランス良く発揮され、ウェットグリップ性能を顕著に改善できる。150℃未満であると、ゴム組成物内の水酸化アルミニウムのアルミナへの転化する量が少なく、ウェットグリップ性能が低下するおそれがある。一方、排出温度の上限は特に限定されないが、所望の性能が得られるように、ゴム焼けが発生しない範囲で、適宜調整すればよいが、好ましくは190℃以下、より好ましくは185℃以下である。
【0049】
前記ベース練り工程は、前記ゴム成分、水酸化アルミニウム等を混練するものであれば特に限定されず、1工程でベース練り工程を行う方法の他に、ゴム成分、シリカ半量、シランカップリング剤半量を混練するX練り、X練りで混練した混練物、残りのシリカ、カーボンブラック、残りのシランカップリング剤、硫黄及び加硫促進剤を除くその他の成分を混練するY練り、Y練りで混練した混練物を再混練するZ練り等に分割したベース練り工程でもよい。なお、この場合、前記水酸化アルミニウムの混練時期は、X練り、Y練り、Z練り等、いずれのタイミングでもよい。
【0050】
上記ベース練り工程の後、例えば、得られた混練物1に、前記と同様の混練機を用いて、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤等の成分を混練する仕上げ練り工程(排出温度は80〜110℃等)を行い、更に得られた混練物2(未加硫ゴム組成物)を130〜190℃で5〜30分間加硫反応させる加硫工程を行うことにより、本発明のゴム組成物を製造できる。
【0051】
前記製法等により得られる本発明のゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のジエン系ゴムの配合量は、本発明の効果が良好に得られるという点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、100質量%でもよい。
【0052】
特にサマータイヤ用ゴム組成物がBRを含む場合、ゴム成分100質量%中のBRの配合量は、好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。該配合量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。80質量%を超えると、チッピング性、ウェットグリップ性能が劣るおそれがある。高ドライグリップ性を目指す配合では、SBR/NR配合系にするのが良く、BRを配合しなくとも良い。
【0053】
サマータイヤ用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のSBRの配合量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。該配合量の上限は特に限定されず、100質量%でもよいが、好ましくは90質量%以下である。10質量%未満であると、グリップ性能、加硫リバージョン性に劣るおそれがある。
【0054】
一方、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のBRの配合量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。該配合量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。30質量%未満であると、低温特性(氷上性能、ウェットグリップ性能)が劣るおそれがあり、90質量%を超えると、ドライグリップ性能、ロール加工性が劣るおそれがある。
【0055】
スタッドレスタイヤ用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの配合量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。該配合量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。10質量%未満であると、ドライグリップ性能、ロール加工性が悪化するおそれがあり、80質量%を超えると、低温特性(氷上性能、ウェットグリップ性能)が劣るおそれがある。
【0056】
前記製法等により得られる本発明のゴム組成物において、上記水酸化アルミニウムの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。1質量部未満であると、充分なウェットグリップ性能が得られないおそれがある。また、該含有量は、60質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。60質量部を超えると、耐摩耗性が他の配合剤の調整で補えないほど悪化するおそれがある。
【0057】
上記湿式シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは40質量部以上である。15質量部未満であると、充分な耐摩耗性及びウェットグリップ性能が得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは130質量部以下、より好ましくは110質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。130質量部を超えると、低燃費性が低下するおそれがある。
【0058】
カーボンブラックを配合する場合、上記シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30〜180質量部、より好ましくは45〜135質量部である。特にサマータイヤ用ゴム組成物の場合、該合計配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50〜160質量部、より好ましくは65〜130質量部である。一方、スタッドレスタイヤの場合、シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは25〜140質量部、より好ましくは50〜110質量部である。
【0059】
上記式(I)で表されるシランカップリング剤の含有量は、湿式シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは4質量部以上である。0.1質量部未満では、シリカを充分に分散させることやシリカの再凝集することを防止することが困難になり、低燃費性、加工性及び耐摩耗性を悪化させる。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは16質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。20質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。また、ロール表面への未反応カップリング剤の蓄積の原因となる。
【0060】
前記製法等により得られる本発明のゴム組成物において、プロセスオイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1〜40質量部、より好ましくは2〜32質量部、更に好ましくは7〜20質量部である。レジンの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは2〜40質量部である。
【0061】
本発明のゴム組成物は、常温で液体のプロセスオイル量、軟化点51℃未満のレジン量及び軟化点51〜140℃のレジン量が下記式を満たすものであることが好ましい。
1.0×(常温で液体のプロセスオイル量)+0.6×(軟化点51℃未満のレジン量)+0.4×(軟化点51〜140℃のレジン量)≦35
〔式中、プロセスオイル量及びレジン量は、前記ゴム成分100質量部に対する含有量(質量部)を表す。〕
【0062】
つまり、「1.0×(常温で液体のプロセスオイル量)+0.6×(軟化点51℃未満のレジン量)+0.4×(軟化点51〜140℃のレジン量)」で示される実軟化効果数、すなわち、軟化剤の配合量だけでなく、プロセスオイルやレジンの軟化点も考慮に入れ、軟化効果の高低を数値化した実軟化効果数が35以下であると、水酸化アルミニウムのアルミナへの転化やシリカとの結合を促進できる。
【0063】
本発明のゴム組成物は、更に下記式を満たすことが好ましい。
(前記湿式シリカ及びカーボンブラックの合計含有量)/〔1.0×(常温で液体のプロセスオイル量)+0.6×(軟化点51℃未満のレジン量)+0.4×(軟化点51〜140℃のレジン量)〕≧2.0
【0064】
本発明のゴム組成物の130℃におけるムーニー粘度ML1+4は、好ましくは50以上、より好ましくは52〜90である。上記範囲内であると、本発明の効果を充分に発揮できる。なお、ムーニー粘度は、JIS K 6300−1に準じた130℃における測定値である。
【0065】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に使用することができ、トレッドに好適に使用できる。
【0066】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて成形し、更に他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製した後、その未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、空気入りタイヤを製造できる。
【0067】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤに好適であり、それぞれのサマータイヤ、スタッドレスタイヤとして使用可能である。
【実施例】
【0068】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0069】
<末端変性剤の作製>
窒素雰囲気下、100mlメスフラスコに3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(アヅマックス(株)製)を23.6g入れ、さらに無水ヘキサン(関東化学(株)製)を加え、全量を100mlにして作製した。
【0070】
<共重合体製造例1>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn−ヘキサンを18L、スチレン(関東化学(株)製)を740g、ブタジエンを1260g、テトラメチルエチレンジアミンを10mmol加え、40℃に昇温した。次に、ブチルリチウムを10mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に、上記末端変性剤を11mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液にメタノール15mL及び2,6−tert−ブチル−p−クレゾール0.1gを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、変性SBRを得た。Mwは270,000であり、ビニル含量は56%、スチレン含有量は37質量%であった。
【0071】
得られた変性SBRのMw、ビニル含量及びスチレン含有量については以下の方法により分析した。
【0072】
<重量平均分子量Mwの測定>
変性SBRの重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
【0073】
<ビニル含量及びスチレン含有量の測定>
日本電子(株)製JNM−ECAシリーズの装置を用いて、変性SBRの構造同定を行った。測定結果から、変性SBR中のビニル含量及びスチレン含有量を算出した。
【0074】
以下に、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
BR:ランクセス(株)製のCB25(Nd系触媒を用いて合成したハイシスBR、Tg:−110℃)
SBR:共重合体製造例1で作製した変性SBR
カーボンブラック1:コロンビアカーボン(株)製のHP160(NSA:165m/g)
カーボンブラック2:キャボットジャパン製のショウブラックN220(NSA:111m/g)
シリカ1:ローディア社製のZ115Gr(NSA:115m/g)
シリカ2:Evonik社製のULTRASIL VN3(NSA:175m/g)
アルミナ:住友化学(株)製の60P1(平均粒子径:0.03μm、NSA:61m/g、モース硬度:9)
水酸化アルミニウム1:ATH#Bの乾式粉砕品(平均粒子径:0.15μm、NSA:61m/g、モース硬度:3、熱分解物(アルミナ)のモース硬度:9)
水酸化アルミニウム2:ATH#Bの乾式粉砕品(平均粒子径:0.21μm、NSA:55m/g、モース硬度:3、熱分解物(アルミナ)のモース硬度:9)
水酸化アルミニウム3:ATH#Bの乾式粉砕品(平均粒子径:0.25μm、NSA:45m/g、モース硬度:3、熱分解物(アルミナ)のモース硬度:9)
水酸化アルミニウム4:ATH#Bの乾式粉砕品(平均粒子径:0.4μm、NSA:34m/g、モース硬度:3、熱分解物(アルミナ)のモース硬度:9)
水酸化アルミニウム5:住友化学(株)製のATH#B(平均粒子径:0.6μm、NSA:15m/g、モース硬度:3、熱分解物(アルミナ)のモース硬度:9)
水酸化アルミニウム6:住友化学(株)製のATH#C(平均粒子径:0.8μm、NSA:7.0m/g、モース硬度:3、熱分解物(アルミナ)のモース硬度:9)
水酸化アルミニウム7:住友化学(株)製のC−301N(平均粒子径:1.0μm、NSA:4.0m/g、モース硬度:3、熱分解物(アルミナ)のモース硬度:9)
水酸化アルミニウム8:住友化学(株)製のC−303(平均粒子径:3.1μm、NSA: 2.0m/g、モース硬度:3、熱分解物(アルミナ)のモース硬度:9)
水酸化アルミニウム9:ATH#Cのメンブランフィルター法による分取品(平均粒子径:0.67μm、NSA:47m/g、モース硬度:3、熱分解物(アルミナ)のモース硬度:9)
レジン1:Arizona chemical社製のSYLVARES SA85(α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃、Mw:1000)
レジン2:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX1150N(テルペン樹脂(ピネン重合体)、軟化点:115℃)
レジン3:Arizona chemical社製のSYLVARES TP115(テルペンフェノール樹脂、軟化点:115℃)
レジン4:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:10℃)
オイル1:JX日鉱日石エネルギー(株)製のダイアナプロセスPA−32(ミネラルオイル)
オイル2:H&R社製のVivatec500(TDAE)
ワックス:日本精鑞(株)製のOzoace0355
老化防止剤1:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学(株)製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
加工助剤:ストラクトール社製のWB16(脂肪酸金属塩(脂肪酸カルシウム)と脂肪酸アミドとの混合物)
亜鉛華:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R(平均粒子径:0.29μm、NSA:4m/g)
シランカップリング剤1:Evonik社製のSi69
シランカップリング剤2:Evonik社製のSi75
シランカップリング剤3:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のNXT(上記式(I)で表されるシランカップリング剤において、p=2、q=3、k=7の化合物)
硫黄:細井化学工業(株)製のHK−200−5(5質量%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS−G(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン)
【0075】
<実施例及び比較例>
表1のサマータイヤ、表2のスタッドレスタイヤに示す配合内容及び混練条件に従い、バンバリーミキサーを用いて、まず、ゴム成分と、シリカ半量と、シランカップリング剤半量とを5分間混練り(X練り)する。
次いで、前記X練りにて混練した混練物と、残りのシリカと、カーボンブラック全量と、残りのシランカップリング剤とを混練し、硫黄及び加硫促進剤以外のその他の成分を混練して、更に5分間混練り(Y練り)する。
Y練りで混練した混練物を再度4分間混練り(Z練り)する。
次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃の条件下で12分間プレス加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:245/40R18)を得た。
なお、アルミナ及び水酸化アルミニウムの添加は、表1又は2に記載の時期に投入した。
【0076】
得られた未加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。評価結果を表1、2に示す。
【0077】
(ウェットグリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ウェットアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際における、操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、比較例1及び13を100として指数表示をした。指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示す。指数105以上の場合、ウェットグリップ性能が良好である。
【0078】
(耐摩耗性)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行った。その際におけるタイヤトレッドゴムの残溝量を計測し(新品時8.0mm)、耐摩耗性として評価した。残溝量が多いほど、耐摩耗性に優れる。比較例1及び13の残溝量を100として指数表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。指数85以上の場合、耐摩耗性が良好である。
【0079】
(ロール加工性指数)
オープンロールにおける熱入れ、シーティング工程にて、ロールに対する未加硫ゴム組成物の巻きつき、シート平滑とエッヂのスムースさなどを目視にて評価し、比較例1及び13を100として指数表示した(ロール加工性指数)。指数が大きいほど、オープンロールにおける熱入れ、混練、シーティングが円滑に進み、加工性に優れることを示す。指数90以上の場合、ロール加工性が良好である。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
表1、2の評価結果から、所定の平均粒子径及び窒素吸着比表面積を持つ水酸化アルミニウムを所定量含有し、前記水酸化アルミニウム投入時の混練工程における排出温度が150℃以上である実施例では、良好な耐摩耗性及びロール加工性を保持しつつ、ウェットグリップ性能が改善され、これらの性能をバランス良く改善できることが明らかとなった。
図1