(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記軸受には、前記挿通孔の壁面に対し直交方向へ向けてその外面まで貫通した貫通孔が設けられていて、該貫通孔に前記固定部材が取り付けられることを特徴とする請求項5に記載の駐輪具。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る駐輪具の実施形態について図面を用いて説明する。なお、
図1、
図6、及び
図7では、車輪サイズが比較的大きいものを車輪W1と、車輪W1よりも車輪サイズが小さいものを車輪W2と区別して表記しているが、以下の説明において、車輪W1と車輪W2を特に区別する必要がない場合には、これらを総括して「車輪W」と記載するものとする。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の駐輪具10は、自転車を設置面Sに起立状態で保持するためのものであり、自転車の車輪Wを保持する保持部材1と、この保持部材1を被取付部材Pに連結する連結部材2と、を備えている。被取付部材Pは、設置面Sに所定距離を隔てて複数設けられた不図示の支持体(例えば、支柱など)に懸架されたパイプや棒材等の長尺部材である。被取付部材Pは、例えば、路面などに設置された柵等の既存の設備の一部を利用することができるほか、駐輪具10を設置するための専用部材として所望の場所に新たに設置してもよい。
【0022】
保持部材1は、
図1から
図3に示すように、一対の傾斜部11、折返し部12、および連結部13を有する棒状成形体である。本実施形態の保持部材1は、所要長さを有するパイプや棒材等の長尺部材を公知の曲げ機(例えば、パイプベンダーやバーベンダー等)により曲げ加工して一体形成したものである。保持部材1を形成するための被加工材となる長尺部材は、断面形状が円形を成すものを用いるのが好ましいが、楕円形状や多角形状のものであってもよい。保持部材1の材質としては、例えば、金属や樹脂などが挙げられるが、特に限定はない。かかる保持部材1は、加工容易性に優れ、加工コストの低減を図ることができるとともに、駐輪具10の構成部品数および組立て工数の増加を防ぐことができるという利点がある。
【0023】
一対の傾斜部11は、車輪Wを挟んで当該車輪Wの回転軸方向の両側に配置される部位であり、駐輪具10が設置されたとき各傾斜部11は被取付部材Pの設置面Sに対し鋭角に傾斜している。各傾斜部11は、駐輪具10に対する車輪Wの位置を規定する位置決め手段としての機能と、車輪Wの側面の一部を何れか一方に当接させて自転車が横転しないように車輪Wを支持する支持手段としての機能とを兼備する。なお、傾斜部11に車輪Wを当接させなくとも起立状態を維持できる自転車(例えば、直立式スタンドを備えた自転車等)を駐輪する場合には、必ずしも各傾斜部11を車輪Wの支持手段として機能させる必要はなく、専ら車輪Wの位置決め手段として機能させてもよい。
【0024】
傾斜部11の長さは、駐輪具10の使用対象として想定される自転車の車輪サイズに応じて適宜設計される。その際、車輪サイズが比較的大きい車輪W1の直径よりも短く、車輪サイズが比較的小さい車輪W2の直径よりも長い寸法範囲で傾斜部11の長さを決定するのが望ましい。これにより、保持部材1の機能性を確保しながら本体のコンパクト化を実現しつつ、異なる車輪サイズの自転車に対する汎用性を得ることが可能となる。
【0025】
傾斜部11の設置面Sに対する傾斜角度θは、鋭角である限り特に限定されないが、例えば、20°≦θ≦70°の関係を満たす範囲であることがより好ましい。傾斜角度θが20°を下回ると、車輪Wが傾斜部11に当接する位置が自転車の重心位置よりも大幅に低くなり過ぎて自転車の起立状態を安定的に維持できないおそれがある。一方、傾斜角度θが70°を上回ると、自転車の駐輪時に傾斜部11がハブやフロントフォークに干渉する可能性が高くなる。具体的には、車輪サイズが比較的小さい車輪W2を被取付部材Pに当接する位置まで進入させたケース(
図6参照)等が考えられる。但し、かかる場合においても、駐輪具10としての機能性は十分確保できるため、傾斜角度θが70°を上回る形態を本発明から除外する必要はない。
【0026】
折返し部12は、設置面Sに近接する側に位置する各傾斜部11の一端側に配置される部位であり、連係部121を介して各傾斜部11同士を連続して繋いでいる。折返し部12は、通常、設置面S上にこの設置面Sと接触した状態で載置される。これにより、保持部材1が連結部材2と折返し部12の二点で支持され、被取付部材Pに対して保持部材1をより安定的に連結固定することができる。折返し部12は、保持部材1に対する車輪Wの相対的な位置関係や駐輪具10の設置態様などに応じて、車輪Wの進退方向への移動を規制する車輪止めとして機能する。
【0027】
本実施形態の折返し部12は、
図2及び
図3に示すように、各傾斜部11の長手方向に対し直交方向へ直線状に延出するように形成されている。この折返し部12の長さは、一対の傾斜部11を少なくとも車輪Wの幅寸法よりもやや広い距離だけ離隔させることが可能な長さに設計されている。つまり、本実施形態では、折返し部12の長さが、各傾斜部11間の離隔距離を直接的に規定するように構成されている。これにより、折返し部12の設計及び加工を簡略化しつつ、設置面Sに対する接触安定性が得られる。
【0028】
連結部13は、一対の傾斜部11のうち少なくとも一方の他端側から当該傾斜部11とは異なる方向へ延出した部位であり、後述する連結部材2に当該連結部13を連結することにより保持部材1が被取付部材Pに固定される。本実施形態の連結部13は、傾斜部11の他端と連係部131を介して連続して繋がれており、この連係部131から設置面Sに向かって下方へ直線状に延出している。また、本実施形態において、連結部13と傾斜部11は、互いの長手方向がこれら二つの直線状の部位を含む平面上において鋭角に交差する関係にあり、且つ、この平面の法線方向が折返し部12の長手方向と一致している。
【0029】
また、本実施形態の連結部13は、保持部材1が被取付部材Pに固定されたとき、その先端部132が折返し部12と共に設置面Sに接触載置された状態で、その延出方向(長手方向)が設置面Sに対し直交するように構成されている。かかる構成を採用すれば、連結部材2に余計なストレスを生じさせることなく、設置面Sとの接触部が複数確保された安定性の高い姿勢で保持部材1を被取付部材Pに固定することが可能となる。これにより、連結部材2の機械的強度の経時的劣化を抑制するとともに、駐輪具10の耐用年数の向上を図ることができる。
【0030】
連結部13の長さは、例えば、設置面Sから被取付部材Pまでの高さ、被取付部材Pに対する連結部材2の取付け態様等に応じて適宜設計変更することができる。その際、とりわけ重要となるのは、折返し部12を設置面S上に載置した状態で設置面Sに対する傾斜部11の傾斜角度θが少なくとも20°を下回らない姿勢で保持部材1を被取付部材Pに連結固定できることである。また、連結部13は、その長さ設計において、かかる条件を満たす範囲で余剰部分を設けることが望ましい。連結部13の余剰部分は、連結部材2との組合せにより、設置面Sに対する傾斜部11の傾斜角度θを調整するための角度調整機構を構成する。
【0031】
連結部材2は、上述した保持部材1を被取付部材Pに連結するためのアタッチメントである。本実施形態の連結部材2は、
図4に示すように、所定形状に形成された板状の本体21と、この本体21を被取付部材Pに取り付けるための取付部22と、を有する板状成形体から成るものである。本体21は、長手方向両端辺が丸みを帯びた平板状の長板部材であり、この長板部材の長手方向両端側には保持部材1の連結部13を挿通させる連結孔211が板厚方向に貫通して形成されている。連結孔211の形状、寸法は、連結部13の径方向断面形状、外径よりもやや大きく形成されている。取付部22は、本体21の中央部に設けられた貫通孔であり、本体21を被取付部材Pに固定するための固定部材3(例えば、
図5に示すボルトとナット等)が取り付けられる。連結部材2の材質は、所要の剛性を維持しつつ任意に塑性変形させることが可能な金属材料を用いるのが好ましい。具体的には、安価で錆が生じ難いステンレス等が挙げられる。
【0032】
次に、本実施形態に係る保持部材1と連結部材2の被取付部材Pに対する連結形態について説明する。まず、
図5(a)に示すように、連結部材2に対する簡易な加工を行う。具体的には、連結部材2の本体21に設けられた二つの連結孔211が互いに対向して配置されるようにして、被取付部材Pを挟み込むように平板状の本体21をU字状等に変形させる。そして、被取付部材Pに対する連結部材2の大まかな取付け位置を定めつつ、本体21に設けられた取付部22を通じて固定部材3(ボルト31及びナット32)をセットする。
【0033】
続いて、
図5(b)に示すように、保持部材1の連結部13を各連結孔211へ挿通させた後、固定部材3のボルト31を締め付ける。このとき、ボルト31の先端部(又はナット32の端面)及び連結部13が、それぞれ被取付部材Pの外周面との接触部分をボルト31の軸力によって互いに正対する方向へ押圧する。こうして、連結部材2を介して固定部材3が生じさせる押圧力を利用して連結部13に被取付部材Pを挟持させることにより、保持部材1と被取付部材Pとが一体的に連結される。
【0034】
一方、連結部13と被取付部材Pの接触部分には前述した押圧力に反作用する力が働くため、被取付部材Pから連結部13に対して当該押圧力と同じ大きさの反力が加わる。また、連結部13は、連結部材2の本体21に設けられた各連結孔211の周縁部との接触部分において、被取付部材Pからの反力に正対する方向への押圧力を受ける。こうして、被取付部材Pと連結部材2によって連結部13を挟持させることにより、連結部13の長手方向に沿った進退移動(
図5(b)に示す実線矢印を参照)及び連結部13の中心軸回りの回転(
図5(b)に示す点線矢印を参照)が制限され、被取付部材Pに対する保持部材1の相対的な位置関係が固定される。
【0035】
さらに、本実施形態では、保持部材1の連結部13、連結部材2、及び固定部材3が、それぞれ被取付部材Pの軸心O(
図5(a)参照)を中心とする回転対称の位置関係となるように配置構成されている。このため、本実施形態の連結部材2によれば、互いに対向する各連結孔211が被取付部材Pの径方向断面をなす円の接線方向へ連通するように配置されている限り、保持部材1を上述と同様の形態で被取付部材Pに連結固定することが可能となる。かかる特性を利用することで、駐輪具10の設置態様についての自由度を大幅に向上させることができる。
【0036】
例えば、
図1において二点鎖線で示す保持部材1のように、連結部13の長手方向に沿って被取付部材Pとの接触位置をその先端側へずらせつつ、連結部13を挿通可能な角度に連結部材2の各連結孔211の向きを調整することで、傾斜部11の設置面Sに対する傾斜角度θを異ならせた姿勢で保持部材1を被取付部材Pに連結固定することができる。つまり、本実施形態では、保持部材1の連結部13が長手方向に余剰部分を有する点と、連結部材2による連結形態及びその特性との相乗効果により、これらを傾斜部11の角度調整機構として機能させることができる。
【0037】
また、
図6(a),(b)に示すように、設置面Sから被取付部材Pまでの高さが異なる場合であっても、互いに対向する各連結孔211の向きを調整して連結部材2の位置決めを行うことにより、設置面Sに対する傾斜部11の傾斜角度θが適宜調整された形で保持部材1を被取付部材Pに連結固定することができる。また、
図7(a),(b)に示すように、設置面Sが傾斜面である場合においても、上り斜面、下り斜面を問わず、前述と同様に保持部材1を被取付部材Pに連結固定することが可能である。
【0038】
なお、
図6及び
図7に示す保持部材1は、何れも連結部13が下方へ延出する姿勢で被取付部材Pに連結固定されているが、本実施形態の連結部材2を用いれば、必要に応じて連結部13が上方へ延出する姿勢で連結固定することも可能である。例えば、図示を省略するが、
図6(b)に示すように、車輪Wの回転軸よりも高い位置に設けられた被取付部材Pに対し、傾斜部11の傾斜角度θを抑えて保持部材1を連結固定するような場合が想定される。かかる場合、連結部13の延出方向を逆にすることで、被取付部材Pの位置に起因する傾斜部11の傾斜角度θに関する制限が解消され、所望の傾斜角度θでの設置が可能となる。
【0039】
次に、本実施形態の駐輪具10と車輪Wの関係について、
図1等を参照しながら説明する。本実施形態の駐輪具10を用いて自転車を駐輪する際、上述のとおり、車輪Wは保持部材1に設けられた一対の傾斜部11の間に配置される。そこで、車輪Wは、その側面を横切るように設置面Sから斜め上方へ傾斜角度θで延出する各傾斜部11により車輪Wの回転軸方向に位置決めされる。このとき、車輪Wの側面の一部が各傾斜部11の何れか一方に当接する場合には、当該車輪Wを傾斜部11に支持させることで自転車を起立状態に保持することができる。一方、車輪Wの進退方向には、被取付部材Pと保持部材1の折返し部12とがそれぞれ配置されており、車輪Wの進退移動が規制される。
【0040】
ここで、本実施形態の駐輪具10が特に優れている点は、保持部材1の構成を大幅に簡素化しつつも、多様な車輪サイズの自転車への汎用的な使用を実現した点にある。具体的には、一対の傾斜部11が車輪Wの回転軸方向の位置決め手段及び車輪Wの支持手段としての機能を有しており、如何なるサイズの車輪Wであっても、その側面が必ず傾斜部11の一部又は全部と対向するように車輪Wを配置することができる。そのため、車輪W1,W2のように車輪サイズが明らかに異なる場合であっても、各傾斜部11を機能させることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態の駐輪具10は、折返し部12を設置面S上に載置して保持部材1を被取付部材Pに連結固定することで連結部13に加わる曲げ荷重やねじり荷重等が軽減され、構成が簡素化された保持部材1の耐久強度の向上が図られている。さらには、駐輪具10の設置面S上に載置された折返し部12を車輪止めとして機能させることも可能である。これにより、例えば、
図7(a)に示すような傾斜面であっても自転車を駐輪できるという利点が得られる。
【0042】
しかも、本実施形態の駐輪具10は、連結部13を連結部材2と組み合せて傾斜部11の角度調整機構として機能させることが可能であり、設置態様の自由度が極めて高く、各傾斜部11の傾斜角度θについての角度調整の許容範囲が広く確保されている。したがって、保持部材1を駐輪される自転車の車輪サイズに最適な姿勢へと容易に調整することができ、起立状態の自転車をより安定的に保持することができる。
【0043】
例えば、
図6(b)に示す車輪W1のように、被取付部材Pと折返し部12によって進退移動の許容スペースが制限された状態で自転車を駐輪すれば、保持部材1に対する車輪W1の位置関係が一義的に定まるため、車輪W1の保持安定性をより一層高めることができる。また、
図7(a),(b)に示すように、設置面Sが傾斜面である場合、車輪Wの進退方向の位置決めは、車輪Wが折返し部12又は被取付部材Pの何れか一方に接触する位置に自転車の自重によって一義的に定められる。かかる場合においても、車輪Wをより安定的に保持できる。
【0044】
このように、本実施形態の駐輪具10によれば、至って簡易な構成でありながら、車輪サイズが異なる自転車を起立状態で安定的に保持することができる。具体的には、一対の傾斜部11、折返し部12、及び連結部13を有する棒状成形体を保持部材1として用いることで、保持部材1の構成を簡素化しつつも、この棒状成形体の各部位に自転車の車輪Wを所定の位置に保持するために要する諸機能を集約させている。これにより、駐輪具10の全体的な構成の簡素化と、多様な車輪サイズの自転車への汎用化とを同時に実現することができる。
【0045】
また、保持部材1を曲げ加工により一体形成するように構成すれば、公知の切断機や曲げ機等を用いた簡易な加工による製造が可能となり、加工コストの低減を図ることができる。しかも、保持部材1を製造する際、無駄になる原材料の割合が極めて少なくなり、歩留まりが大幅に向上する。その上、保持部材1を一の構成部品として取り扱うことができるため、駐輪具10の構成部品数および組立て工数が低減される。
【0046】
さらに、連結部材2を上記のように構成すれば、設置態様についての自由度が極めて高い駐輪具10を提供することが可能となり、駐輪具10の汎用性や機能性をより一層高めることができる。例えば、被取付部材Pの高さが異なる場合(
図6参照)、設置面Sが傾斜面である場合(
図7参照)などの状況下においても駐輪具10を適宜設置して自転車を駐輪しておくことが可能であり、駐輪具10の設置環境等に関する制限事項を緩和することができる。また、傾斜部11の傾斜角度θの調整許容範囲を広く確保できるため、保持部材1を駐輪する自転車の車輪サイズに応じた最適姿勢に調整して用いることができる。これにより、多様な車輪サイズの自転車に対する保持安定性がより一層向上する。
【0047】
次に、本発明に係る駐輪設備の実施形態について説明する。
図8に示すように、本実施形態の駐輪設備100は、複数の自転車を起立状態で整列させて保管する設備であって、上述と同様の被取付部材P及び複数の駐輪具10を備えている。
【0048】
被取付部材Pは、両端部が支柱などの支持体PSに連結された状態で懸架支持された長尺部材から成り、長手方向が設置面Sに対し平行に設置されている。つまり、本実施形態の被取付部材Pは、設置面Sからの高さが長手方向の任意の位置において概ね均一になるように設置されている。なお、被取付部材Pの長さは特に限定されないが、両端部を支持体PSに懸架支持させた状態において自重による撓みが大きくなる場合は、必要に応じて被取付部材Pの長さを均等分する位置に支持体PSを増設してもよい。
【0049】
被取付部材Pに連結固定される駐輪具10の数についても特に限定はない。但し、被取付部材Pの長手方向において隣り合う駐輪具10は、それぞれに駐輪される自転車が互いに接触しない程度の距離を隔てて配設される。なお、本実施形態では、各駐輪具10が被取付部材Pの長手方向に沿って等間隔で配置されているが、隣り合う駐輪具10同士の間隔は必ずしも均等である必要はない。例えば、各駐輪具10を被取付部材Pの長手方向に沿って一又は複数ごとに不等間隔で配置すれば、駐輪設備100の駐輪スペースを複数の領域にブロック分けすることもできる。
【0050】
また、本実施形態の駐輪設備100において、各駐輪具10は、それぞれの保持部材1の折返し部12が被取付部材Pに対して同じ側に配置されている。かかる配置構成は、例えば、駐輪設備100の設置スペースが特に狭い場合、あるいは被取付部材Pが壁面等の不図示の構造物に近接して配設されている場合など、自転車の駐輪スペースに何らかの制限が課されるような場合に特に有効である。但し、被取付部材Pに対する各駐輪具10の配置構成はこれに限定されず、任意に設計変更することができる。
【0051】
例えば、他の実施形態として
図9に示す駐輪設備200のように、各駐輪具10を、保持部材1の折返し部12が被取付部材Pを挟んで両側に配置されるようにしてもよい。かかる配置構成は、一の被取付部材Pに対しより多くの駐輪具10を設置するための配置構成として特に有効であり、自転車の駐輪許容台数の増加を図りつつ設備の省スペース化を同時に実現することが可能となる。
【0052】
また、上述の駐輪設備100,200の変形例として
図10及び
図11に示す駐輪設備100',200'のように、各駐輪具10の設置態様を変更した形態で実施することも可能である。即ち、上述した駐輪具10の設置態様の自由度の高さを有効利用し、平面視における各傾斜部11の被取付部材Pに対する交差角度を適宜調整して各駐輪具10を設置してもよい。かかる調整は、保持部材1を連結部13の中心軸回りに所要の角度だけ回転させて被取付部材Pに連結固定することにより行うことができる。かかる実施形態によれば、被取付部材Pの長手方向に直交する方向における自転車の駐輪スペースが削減できるという利点がある。
【0053】
このように、本発明の各実施形態に係る駐輪設備100,100',200,200'によれば、被取付部材Pに上述の駐輪具10を複数設けただけの至って簡易な設備構成でありながら、設置環境(例えば、障害物となり得るような構造物の有無、設置スペースの広さ及び平面形状など)に応じて最適な設置態様を任意に選択可能な駐輪設備を省スペースで提供することが可能となる。
【0054】
以上、本実施形態の駐輪具10及びこの駐輪具10を用いた駐輪設備100等について説明したが、本発明は他の形態でも実施することができる。
【0055】
例えば、
図12(a)に示す保持部材1aのように、一対の傾斜部11それぞれの他端側に連結部13が設けられた形態であってもよい。各傾斜部11に設けられた連結部13を何れも上述した連結部材2を介して被取付部材Pに連結固定することで、自転車駐輪時における保持部材1aの剛性を高めることができ、自転車をより安定的に保持することが可能となる。
【0056】
また、
図12(b)に示す保持部材1bのように、一対の傾斜部のうち一方の傾斜部11aの傾斜角度θが、他方の傾斜部11bとは異なる形態であってもよい。これにより、多様な車輪サイズの自転車に対する駐輪具の汎用性をより一層高めることができる。さらに、必要に応じて連結部13bを他方の傾斜部11bの他端側に設けてもよい。その際、連結部13bの長さは、保持部材1bの姿勢などに応じて適宜調整可能である。例えば、
図10及び
図11に示すように、保持部材1bを連結部13の中心軸回りに所要の角度だけ回転させて被取付部材Pに連結固定するとき、他方の連結部13bが被取付部材Pに干渉するような場合には、その連結部13bの長さを短縮すればよい。あるいは、連結部13bの長さが予め短縮された保持部材1bを形成してもよい。
【0057】
さらに、上述した各実施形態に係る保持部材1,1a,1bは、何れも折返し部12が直線状に形成されているが、例えば、
図13に示す保持部材1cのように、円弧状に湾曲した折返し部12aを備えた形態であってもよい。これにより、保持部材1cを形成する際、被加工材となる長尺部材の曲げ加工の工数を削減でき、加工コスト低減や生産効率の向上を図ることができる。なお、図示を省略するが、折返し部12aは、波形状など複数の湾曲部を含む形状に形成することもできる。その場合、折返し部12aと車輪Wとの接触部における保持安定性の向上を図ることができる。
【0058】
一方、
図14(a)に示す連結部材2aのように、被取付部材Pと接触する本体21の中央部近傍に拡幅部23が設けられていてもよい。連結部材2aは、
図14(b)に示すように、拡幅部23を被取付部材Pに接触させつつボルト31によって被取付部材Pに固定される。これにより、被取付部材Pと連結部材2aとの接触面積が増大し、連結部材2aの耐久強度を高めることができる。
【0059】
なお、連結部材2aは、上述の連結部材2とは異なり、保持部材1の連結部13との位置関係を固定する手段が別途必要である。例えば、連結部13の長手方向に沿った進退移動(
図5(b)に示す実線矢印を参照)を制限する手段として、円筒状の軸受ブッシュ4等が挙げられる。また、連結部13の中心軸回りの回転(
図5(b)に示す点線矢印を参照)を制限する手段として、連結孔211にキー溝(図示省略)を設け連結部にキーを設ける方法などが挙げられる。
【0060】
また、
図15に示す連結部材2bのように、被取付部材Pと接触する本体21の中央部近傍に、この本体21と一体的に連続する突起部24が設けられていてもよい。この突起部24を設けることで連結部材2bの本体21と被取付部材Pとの間に隙間Gが形成され、保持部材1を連結固定する際に生じる応力が逃される。これにより、本体21の中央部近傍に生じやすい応力集中が緩和され、亀裂の発生や金属疲労による劣化等を効果的に抑制することができる。
【0061】
本実施形態の連結部材2bは、軸受ボス部材5及び固定部材3によって保持部材1と共に被取付部材Pに固定されている。なお、
図15では、軸受ボス部材5と、連結部材2b、被取付部材P、及び保持部材1の連結部13との間に隙間が形成されるように表示されているが、これは各構成部材を別個独立して明示することを目的とするものである。したがって、実際には、このような隙間が形成されないことが望ましく、仮に隙間が形成されるとしても許容範囲内の微小なものである。
【0062】
軸受ボス部材5は、例えば、プラスチックや硬質ゴム等から成る樹脂成形体である。軸受ボス部材5は、保持部材1の連結部13を挿通させる挿通孔51と、この挿通孔51の壁面の一部に設けられた溝部52とを有し、挿通孔51を挟んで溝部52とは反対側の外面に被取付部材Pの外面形状に沿った湾曲面53が形成されている。溝部52の中央部には、挿通孔51の壁面に対し直交方向へ向けて軸受ボス部材5の外面まで貫通する貫通孔521が設けられており、この貫通孔521を通じて溝部52に配設されたナット32とボルト31とが締結される。なお、湾曲面53には、被取付部材Pに対するグリップ力向上を図るための微小な凹凸部(図示省略)が形成されていてもよい。
【0063】
かかる連結部材2bによれば、U字状の本体21の互いに対向する両端部の間に形成される空間に軸受ボス部材5が配設されるため、連結部13との接触面積が大きくなり、上述した連結部材2と同様の原理でありながら保持部材1をより強固且つ安定的に被取付部材Pに対して連結固定することができる。しかも、固定部材3の配置を自転車の駐輪スペース側に確保できるため、駐輪具設置のための十分な作業スペースを確実に確保でき、施工容易性の向上や作業時間の大幅短縮を図ることが可能である。
【0064】
例えば、被取付部材Pが壁面等の構造物に近接して配設されているような場合であっても、僅かな隙間さえあれば、そこへU字状の連結部材2bの一端側を中央部が被取付部材Pと接触するまで壁面に沿って差し込むことができる。その連結部材2bを被取付部材Pに対し相対的に回転させれば、壁面が障害物となることは一切なく、且つ、十分な作業スペースが確保された状態で駐輪具の設置を行うことができる。
【0065】
さらに、上述した各実施形態に係る連結部材2,2a,2bは、何れも板状成形体から構成されているが、本発明の駐輪具を構成する連結部材は、必ずしも板状の成形部材を含むものである必要はない。
【0066】
例えば、
図16(a)に示す連結部材2cのように、本体21が、例えば直方体状の成形部材を用いることもできる。連結部材2cは、本体21の上面21Uから底面21Bまで貫通する連結孔211と、この本体21の互いに対向する各側面21Sを連結孔211の長手方向に対し直交方向に貫通するとともに連結孔211を避けて形成された第二連結孔212と、を備えており、連結孔211及び第二連結孔212へ通じる軸孔213,214がそれぞれ設けられている。連結孔211には、上述と同様に保持部材1の連結部13が、第二連結孔212には被取付部材Pがそれぞれ挿通され、軸孔213,214を通じてそれぞれ不図示のボルト31で締結固定する。
【0067】
あるいは、
図16(b)に示す連結部材2dのように、複数のパイプクリップ25,26を一体的に固定して組み合わせた部材を用いてもよい。本実施形態の連結部材2dは、一方のパイプクリップ25が保持部材1の連結部13を、他方のパイプクリップ26が被取付部材Pを、それぞれの長手方向が直交する姿勢で保持するように構成されている。なお、本実施形態において、各パイプクリップ25,26は、取扱い容易性の観点から、開口部251,261を通じて連結部13及び被取付部材Pを着脱するタイプのものを採用しているが、例えば、上述の固定部材3等により不図示のフランジ部を締結するタイプのものを採用してもよい。
【0068】
これらの連結部材2c,2dを用いても、上述した各連結部材2,2a,2bと同様、保持部材1を被取付部材Pに所望の姿勢で連結固定することができる。何れの実施形態を採用するかは、本発明に係る駐輪具の使用目的や使用態様に応じて任意に選択することが可能である。例えば、被取付部材Pが既存の柵等を前提とする一時的な使用の際には、駐輪具の設置及び撤去が比較的容易なものを選択すればよい。一方、本発明に係る駐輪設備のように駐輪具の設置期間が比較的長期にわたることが想定される場合や、被取付部材Pに対する高頻度の着脱が想定されず不特定多様な自転車を駐輪することが前提となる場合には、固定強度が比較的高く、これを長期間維持できるものを選択すればよい。
【0069】
さらに、上述した各実施形態に係る駐輪設備100,100',200,200'は、何れも一の被取付部材Pに複数の駐輪具10を設けた省スペース化を目的とするものであるが、これらを一つの設備ユニットとして大型駐輪施設等に複数の設備ユニットを設置して用いることも可能である。例えば、大型駐輪施設の敷地を複数の領域に区画し、各区画に一又は複数の駐輪設備ユニットを設置するようにしてもよい。その際、それぞれの区画ごとに駐輪具10の設置態様(
図1、
図6等を参照)を異ならせて設置すれば、利用者が所有する自転車の車輪サイズに最適な駐輪区画を選択して駐輪することができるため利便性が向上する。
【0070】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、あるいは、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成した形態や、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【0071】
例えば、上記説明では、本発明の駐輪具が一の被取付部材Pに対して設置される態様についてのみ詳細に説明しているが、複数の被取付部材Pに対して一の駐輪具を設置するような形態で実施することも可能である。