(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被切断材の長手方向に移動自在に構成されたフレームに、切断トーチを有する切断機アセンブリを前記長手方向に交差する方向に移動自在に取付け、前記切断機アセンブリに設けた一対の案内部材を前記被切断材の両側端部に当接させながら、前記切断トーチを、前記被切断材の長手方向に沿う切断進行方向に移動させながら前記被切断材を切断する切断装置であって、
前記切断機アセンブリは、
前記一対の案内部材の各々を、前記被切断材の各側端部に対して接離可能となるように支持する支持アームと、
前記一対の案内部材の各々が、前記切断トーチに対して前記切断進行方向について前記切断トーチの前後に移動可能となるように、前記一対の案内部材の各々と前記支持アームの各々との間に設けられた直動ガイドと、
を有し、
前記案内部材及び前記直動ガイドは、前記案内部材を前記被切断材に当接させながら前記切断機アセンブリを前進させることで前記案内部材に作用する抵抗によって、前記案内部材が前記直動ガイド上を移動するように構成されている、
切断装置。
【背景技術】
【0002】
H形鋼、I形鋼、溝形鋼等の鋼材をその長手方向に切断(縦切り)するための切断機として、該鋼材の長手方向に移動可能なフレームと、該フレーム上を該鋼材の幅方向に走行自在に構成された切断トーチとを有するタイプのものが知られている。例えば特許文献1には、レール1に沿って移動可能な補助レール7に移動自在に支承されたガス切断機8を用いて、ローラ3上の被切断材4をその長さ方向に切断する装置が記載されている。引用文献1にはさらに、ガス切断機8の両側に設けたセンサ20、21を用いて、被切断材4に対するガス切断機8の左右方向位置を調節する位置調整機構が記載されている。
【0003】
また特許文献2には、ガーター6に沿って走行自在なフレーム7に沿って走行自在に設けられた切断バーナー11を用いて、スラブ1をその長さ方向に切断する装置が記載されている。引用文献2にはさらに、切断バーナー11を装着した装着台12の両側に設けたエヤーマイクロセンサ13、14を、スラブ1の側面1aと常に一定間隔となるように制御し、さらにセンサ13、14と切断バーナー11との位置関係を一定に自動制御して、スラブを所定の比率で縦方向に切断する旨が記載されている。
【0004】
一方、特許文献3には、走行レール1に沿って走行する基台2に設けた片持ち状の横アーム8と、横アーム8上に摺動自在に設けた摺動ガーダ14と、摺動ガーダ14に対し水平方向に摺動自在に保持された切断トーチ24とを有し、鋼材をその長手方向に切断する縦切装置が記載されている。引用文献3にはさらに、ピニオンギヤ15により横アーム8に対して対称的に摺動自在に取付けた一対の移動台10、11の各々に摺動ローラ17を設け、鋼材26の切断中は摺動ローラ17を鋼材の側面に接触させることにより、鋼材に対する切断トーチ24の幅方向位置を検出し、切断トーチを所定の位置に制御する旨が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、鋼材等の被切断材は、切断機の走行レールに対して正確に平行に配置することは困難であり、また鋼材自身が直線状でなくその長手方向に曲がりを有する場合もある。そこで従来は、特許文献1及び2にあるように、鋼材に対する切断トーチの位置を測定し調整するためのセンサを設けていた。しかしこのようなセンサを設けることは、切断機のコストアップにつながり、またセンサの故障によって正確な切断ができなくなる虞もある。
【0007】
一方、特許文献3に記載されているように、切断トーチの両側にローラ等のガイド手段を設け、被切断材の両側面に該ローラを接触させながら切断を行う技術も公知であり、この場合は上述のセンサ等は不要である。しかしこのような技術には、以下に述べるような問題があった。
【0008】
図11は、特許文献3に示すようなガイドローラを有する切断機によって、H形鋼等の鋼材をその長手方向に切断していく状態を模式的に示す図である。同図では、H形鋼100がその長手方向102に沿って下から上に向かって切断(半割り)されるものとする。ここで、切断開始位置Aにおいては、一対のガイドローラ104をH形鋼100の両フランジ106の下端から切断方向前方側にいくらか(L
2)進んだ所に当接させておく一方、ガイドローラ104との位置関係が固定されている切断トーチ(図示せず)は、H形鋼100の下端から一定距離L
1だけ離隔した位置108にて着火される必要がある。すなわち、ガイドローラ104と切断トーチは、H形鋼100の長手方向に関して少なくとも距離L(=L
1+L
2)だけ下方に離す必要がある。
【0009】
次に切断トーチが着火され、H形鋼100の長手方向に沿って略水平方向(
図11)において上方)に移動しながらH形鋼100を切断していくのであるが、ガイドローラ104はH形鋼100のフランジ106に当接しているので、ガイドローラ104との位置関係が規定されている切断トーチによって、H形鋼100はフランジ106に平行に切断されていく。しかし、切断トーチが
図11の位置B、すなわちH形鋼100の上端(位置C)から距離Lだけ長手方向に関して下方の位置110に到達すると、ガイドローラ104がH形鋼100のフランジ106と当接しなくなるので、案内機能が急に失われることになり、切断終了間際(すなわち位置Bから位置Cまで)の切断が不安定となる。具体的には、位置Bにおいてガイドローラ104がH形鋼100から離れたことによる機械的な振動や衝撃によって、位置B近傍にびびり疵が発生したり、位置Bから位置Cまではガイドローラ104による切断トーチの案内機能が得られないため、位置Bと位置Cとの間にいわゆる切れ曲がり112が生じたりすることがある。また、H形鋼自身も長手方向に曲がり部分を有している場合があり、このような場合も切れ曲がりが生じることになる。
【0010】
上述のようなびびり疵が発生すると、切断工程後にハンドグラインダ等による手直し作業が必要となる。また上述のような切れ曲がりが発生すると、その左側部分(厚い方)についてはハンドグラインダ等による削除加工、右側部分(薄い方)については肉盛溶接が必要となり、やはり手直し作業が必要となる。このような手直し作業は、生産効率を悪化させ、大きなコスト増大要因となっていた。
【0011】
そこで本発明は、簡易な構成でありながら、びびり疵や切れ曲がりを生じさせずに被切断材を切断できる切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本願第1の発明は、被切断材の長手方向に移動自在に構成されたフレームに、切断トーチを有する切断機アセンブリを前記長手方向に交差する方向に移動自在に取付け、前記切断機アセンブリに設けた一対の案内部材を前記被切断材の両側端部に当接させながら、前記切断トーチを、前記被切断材の長手方向に沿う切断進行方向に移動させながら前記被切断材を切断する切断装置であって、前記切断機アセンブリは、前記一対の案内部材の各々を、前記被切断材の各側端部に対して接離可能となるように支持する支持アームと、前記一対の案内部材の各々が、前記切断トーチに対して前記切断進行方向について前記切断トーチの前後に移動可能となるように、前記一対の案内部材の各々と前記支持アームの各々との間に設けられた直動ガイドと、を有する、切断装置を提供する。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記案内部材及び前記直動ガイドは、前記案内部材を前記被切断材に当接させながら前記切断機アセンブリを前進させることで前記案内部材に作用する抵抗によって、前記案内部材が前記直動ガイド上を移動するように構成されている、切断装置を提供する。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記直動ガイドは、前記直動ガイドにおける前記案内部材の移動方向が、水平に対して、前記切断進行方向の前方に向けて下り勾配となるように配置されている、切断装置を提供する。
【0015】
第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記案内部材の各々は、鉛直方向の軸心回りを自由回転可能なガイドローラである、切断装置を提供する。
【0016】
第5の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記案内部材の各々は、前記被切断材と各側端部上を摺動する樹脂製部材である、切断装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る切断装置では、切断進行方向について案内部材と切断トーチとの位置関係を逆転させることができるので、被切断材の全長に亘って、案内部材が被切断材に当接した状態(案内された状態)で被切断材を切断することができる。従ってびびり疵や切れ曲がりを生じさせることなく被切断材を切断することができる。
【0018】
案内部材及び直動ガイドを、案内部材を前記被切断材に当接させながら切断機アセンブリを前進させることで案内部材に作用する抵抗によって、案内部材が直動ガイド上を移動するように構成することにより、案内部材を直動ガイド上で移動させるための駆動手段が不要となり、切断トーチの振動要因を減らせるとともに、設備の低コスト化が図れる。
【0019】
直動ガイドにおける案内部材の移動方向が、水平に対して、切断進行方向の前方に向けて下り勾配となるように直動ガイドを配置することにより、ある鋼材の切断終了時から次の鋼材の切断開始迄の間に、案内部材を切断進行方向に関して切断トーチよりも前方側に自動的に移動させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る切断機の概略構成を示す図である。切断機10は、工場等の床面等の設置面12上に配置された被切断材である鋼材(図示例ではH形鋼)14をその長手方向に沿って切断(例えば半割り)するための装置であり、鋼材14の長手方向に交差する方向(概ね直交)かつ略水平に延びるフレーム16と、フレーム16上を走行自在に構成された切断機アセンブリ18とを有する。なおフレーム16は、鋼材14の長手方向と略平行に、床面12上に配置されたレール(図示せず)上を走行自在であるが、該レール及びフレーム16の構造は従来のものと同様でよいので、詳細な説明は省略する。
【0022】
切断機アセンブリ18は、一対の案内部材(図示例では自由回転可能なガイドローラ)20a及び20bと、ガイドローラ20a及び20bをそれぞれ先端に有する支持アーム22a及び22bと、支持アーム22a及び22bを略水平方向に互いに接離可能に移動させる開閉手段(図示例では油圧又は空圧シリンダ)24とを有し、これによりガイドローラ20a及び20bは、鋼材14の両側端部(図示例ではH形鋼のフランジ)30a及び30bに対して略水平方向に接離可能になる。また支持アーム22a及び22bは、ラック26及びピニオン28を有するラック・ピニオン機構を介して互いに連結可能であり、これにより両支持アームは、1つの開閉手段24によって互いに左右対称に移動することができる。
【0023】
また切断機アセンブリ18は、鋼材14の幅方向についてガイドローラ20a及び20bに対する位置関係が規定された(図示例では、フレーム16の長手方向(鋼材14の幅方向)について常に両ガイドローラの中間に位置する)切断トーチ32を有する。切断トーチ32自体は周知のものでよく、例えばガス、プラズマ又はレーザを利用するタイプのものが使用可能である。ガイドローラ20a及び20bを鋼材14の両側部に当接させた状態で、切断トーチ32を着火し、フレーム16を鋼材14の長手方向に移動させることにより、鋼材14を長手方向に切断(半割り)することができる。
【0024】
図2は、切断機10の要部すなわちガイドローラ近傍の詳細を示す図であり、
図3は
図2のA−A断面を示す図である。ガイドローラ20aは、直動ガイド(リニアガイド)34aを介してアーム部材22aに取付けられる。具体的には、
図3に示すように、ガイドローラ20aを切断進行方向36(鋼材14の長手方向)に略平行な方向に移動自在に支持するリニアガイド34aを支持アーム22aの先端(支持アーム22aとガイドローラ20aとの間)に取付け、切断進行方向36についてのガイドローラ20aと切断トーチ32との位置関係を逆転できるようになっている。図示例では、切断進行方向36についてリニアガイド34aのストロークの略中央に切断トーチ32が配置されており、ガイドローラ20aはリニアガイド34aのストローク長にわたって移動可能となっているので、ガイドローラ20aは切断進行方向36について切断トーチ32の前後に移動可能となる。
【0025】
他方のアーム部材22b及びガイドローラ20bについても同様である。すなわち、ガイドローラ20bは、リニアガイド34bを介してアーム部材22bに取付けられる。具体的には、
図2及び後述する
図4等に示すように、ガイドローラ20bを切断進行方向36(鋼材14の長手方向)に略平行な方向に移動自在に支持するリニアガイド34bを支持アーム22bの先端(支持アーム22bとガイドローラ20bとの間)に取付け、切断進行方向36についてのガイドローラ20bと切断トーチ32との位置関係を逆転できるようになっている。図示例では、切断進行方向36についてリニアガイド34のストロークの略中央に切断トーチ32が配置されており、ガイドローラ20bはリニアガイド34bのストローク長にわたって移動可能となっているので、ガイドローラ20bは切断進行方向36について切断トーチ32の前後に移動可能となる。またリニアガイド34a及び34bは通常、切断進行方向について左右対称に設けられる。
【0026】
なお各リニアガイドは、該リニアガイドにおけるガイドローラの移動方向が、水平に対して、切断進行方向36の前方に向けて下り勾配となるように配置されていることが好ましい。詳細には、
図3に示すように、鉛直面内でリニアガイド34aのストローク方向の水平度を調整できるように、リニアガイド34aのスライドベース38を支持アーム22aに取付ける2つのボルト40a及び40bのうち、一方のボルト(図示例ではボルト40a)用穴42を長穴とする。このようにしておけば、
図3において二点鎖線で示すように、スライドベース38を切断進行方向36前方に向かうにつれていくらか下方に傾けることができ、ある鋼材の切断終了時から次の鋼材の切断開始迄の間に、ガイドローラ20aを切断進行方向36に関して切断トーチよりも前方に自動的に(重力によって)移動させることが可能となる。一方、ガイドローラ20aの軸ホルダ44をリニアガイド34aに取付ける2つのボルト46a及び46bについては、鉛直面内でガイドローラ20aの軸心の鉛直度を調整できるように、一方のボルト(図示例ではボルト46a)用穴48を長穴にしておくことが好ましい。このようにしておけば、スライドベース38を傾けた場合でも、H形鋼14の長手方向とガイドローラ20aの軸心方向とを正確に垂直にすることができ、切断時のガイドローラ20aの動作を円滑にすることができる。他方のリニアガイド34bについても同様である。
【0027】
次に、
図4及び
図5を参照して、本願発明の切断機におけるガイドローラ及びリニアガイドの作用について説明する。なお
図4は、被切断材(鋼材)の切断時における、該鋼材と、これに当接するガイドローラと、リニアガイドとを上方から見た図であり、
図5は、
図4をより模式的に示す図である。
図5において先ず、切断機アセンブリ(ガイドローラ及び支持アーム)を、両支持アームが開いた(両ガイドローラの間隔が鋼材の幅より大きい)状態(破線で図示)で、切断開始位置Dに移動させる。この切断開始位置Dでは、切断トーチ32は、鋼材14の端部(図示例では下端)から所定距離L
1だけ離れた位置に位置する。またこの位置では、リニアガイド34a及び34bを、上述の長穴42(
図2)等を用いて適度に傾けることにより、ガイドローラ20a及び20bはいずれも、切断トーチ32よりも切断進行方向36について前方側(上側)に位置している。図示例では、切断トーチ32はリニアガイド34a及び34bのストローク長の略中央に配置され、切断進行方向36について切断トーチ32とリニアガイド34a、34b(支持アーム22a、22b)との位置関係は固定されている。また、ガイドローラ20a及び20bはそれぞれ、リニアガイド34a及び34bのストローク長の前方側端部に位置している。
【0028】
次に、両支持アームを閉鎖(鋼材14側に移動)させ、ガイドローラ20a及び20bを、それぞれ鋼材14のフランジ30a及び30bの下端から切断方向前方側にいくらか(L
2)進んだ所に当接させる(実線で図示)。この時点では、各ガイドローラと切断トーチ32は、H形鋼14の長手方向に関して距離L(=L
1+L
2)離れている。この状態において切断トーチ32を着火し、切断機アセンブリ(切断トーチ)を切断進行方向36に沿って移動(前進)させ、鋼材14を切断していく。
【0029】
ここで、ガイドローラ20a及び20bはそれぞれ鋼材14のフランジ30a及び30bに当接しているので、切断トーチ32の前進に伴って回転しようとする。一方、ガイドローラ20a及び20bはそれぞれリニアガイド34a及び34bに対して摺動自在であるので、各ガイドローラの回転抵抗(具体的には、ガイドローラの回転軸(軸心)と軸受との摩擦抵抗)がリニアガイドとの摺動抵抗より大きければ、
図5の切断途中位置Eに示すように、ガイドローラ20a及び20bはそれぞれ、リニアガイド34a及び34bのストローク長の後方側端部に移動し、結果としてガイドローラ20a及び20bは、切断進行方向36について切断トーチ32より後方側に移動する。この際、ガイドローラ20a及び20bをそれぞれリニアガイド34a及び34b上で摺動させるための駆動源は不要である。
【0030】
ガイドローラ20a及び20bと切断トーチ32との位置関係が逆転した後も、鋼材14の切断は続行され、切断トーチ32が切断終了位置Fに至った時点で切断作業が終了する。このとき、ガイドローラ20a及び20bは、切断進行方向36について切断トーチ32より後方側に位置しているので、切断トーチ32が鋼材14の長手方向末端に達したときも、ガイドローラ20a及び20bはそれぞれ鋼材14のフランジ30a及び30bに当接している。従って、切断トーチ32は鋼材14の全長に亘って確実に案内(幅方向について正確に位置決め)された状態で切断を行うことができる。従って本発明によれば、
図11を用いて説明したような、切断終了直前のびびり疵や切れ曲がりが発生することはなく、鋼材の両フランジに平行に好適な切断を行うことができる。
【0031】
なお鋼材の断面寸法が比較的小さい場合、すなわち切断トーチの設定高さが低くなる場合は、ガイドローラが自重でリニアガイドの前方側端部に移動するようになるまでリニアガイドを傾けると、リニアガイドの前方側が床面に干渉する虞がある。このような場合には、リニアガイドを水平にセットしておき、1つの鋼材を切断する毎に、作業者の手作業によって各ガイドローラをリニアガイドの前方側端部に移動させるようにしてもよい。或いは、切断機アセンブリを一旦、
図5の位置Eで鋼材に接触させてその後方側の位置Dまで後退させ、その後、切断機アセンブリを前進させて切断を行うようにしてもよい。いずれのやり方でも、切断開始時にはガイドローラが切断トーチより前方側に位置している状態を確実に実現することができる。
【0032】
上記実施形態では、鋼材の両端部に当接する案内部材としてガイドローラが説明されており、このガイドローラとしては例えば、針状コロ軸受を内蔵したいわゆるカムフォロワが使用可能である。しかし、鋼材の切断中に両端部に当接することにより切断トーチの位置を規定(案内)でき、かつ鋼材の切断中に切断進行方向についての切断トーチとの位置関係を(特段の駆動手段を用いずに)逆転できるものであれば、他の部材も使用可能である。例えば、上記カムフォロワの代わりに、自己潤滑性のすべり軸受を内蔵したガイドローラ(後述)を使用してもよいし、ローラ全体をナイロン等の樹脂から作製し、鋼製の軸等に嵌合したものを使用してもよい。或いは、
図10に示すように、樹脂製の直方体形状の摺動ブロック49をリニアガイド34a、34bに移動自在に取付け、鋼材のフランジと面接触することにより案内機能を発揮する構造のものも使用可能である。但しいずれの場合も、案内部材、すなわちガイドローラの回転抵抗、或いは樹脂製の摺動ブロックと鋼材との摩擦抵抗が、リニアガイドの摺動抵抗より大きいことが必要である。
【0033】
図6は、ガイドローラの他の具体例を示す図である。
図6のガイドローラ20a′が
図2等に記載のガイドローラ20aと異なる点は、内蔵している軸受が針状コロ軸受ではなく、図示するようなすべり軸受50であることであり、他は同様でよい。上述したように、本実施形態ではガイドローラの回転抵抗とリニアガイドの摺動抵抗との差を利用することにより、ガイドローラと切断トーチとの位置関係を自動的に変更できるようにしているので、ガイドローラの回転抵抗が小さいと、切断中にガイドローラが回転するだけでガイドローラがリニアガイド上を摺動しないという不具合が生じることがある。そこで、針状コロ軸受では十分な回転抵抗が得られない場合は、すべり軸受50のような針状コロ軸受より大きい回転抵抗を生じさせるすべり軸受を使用し、すべり軸受50と軸59との摩擦係数を大きくすることにより、ガイドローラの好適な動作を実現することができる。
【0034】
図7は、ガイドローラのさらなる他の具体例を示す図である。
図8のガイドローラ20a″は、すべり軸受50を付勢するコイルばね52等の付勢手段をさらに具備する点で
図6に記載のガイドローラ20a′と異なり、他は同様でよい。具体的には、コイルばね52をすべり軸受50と軸受ホルダ44との間に配置し、すべり軸受50を軸方向(図示例では鉛直下方)に与圧できるようにすることにより、すべり軸受50の回転抵抗をさらに高めることができる。
図7の例は、すべり軸受を使用してもガイドローラの回転抵抗がなお不十分である場合に有効である。
【0035】
一方、リニアガイドの摺動抵抗が大きい場合の対処として、ガイドローラのすべり軸受の回転抵抗を大きくしていくと、相手側の鋼材とガイドローラとのスリップ限界を超えてしまうこともあり得る。すなわち、ガイドローラはリニアガイド上を想定通りスライドはするが、回転はせずに相手鋼材とスリップすることになり、本来の役目を果たさない。このような場合には、鋼製ガイドローラの外周表面のみ、摩擦係数を大きくすることが有効である。例えば、ローラの外周表面をローレット加工してギザギザ状の凹凸溝を形成すること、或いは外周表面をショットブラスト加工により目荒らし(凹凸を形成)することが挙げられる。なお、このようにして形成した凹凸形状が早期に摩耗しないように、凹凸加工後に高周波焼入れ処理等の表面硬化処理を行っておくことが好ましい。
【0036】
またガイドローラの外周表面のみ、摩擦係数を大きくする他の手段として、鋼製ガイドローラの外周側表層のみ、摩擦係数の大きいゴムとすること、より具体的には、ゴムをリング状に成形した後、鋼製ガイドローラ本体に接着することも可能である。なおゴムの材質としては、種々のゴムの中でも特に摩擦係数の大きいウレタンゴムが好ましい。
【0037】
本発明に係る切断機は、製鋼所等の比較的粉塵の多い環境下で使用されることが多い。このような場合、リニアガイドの摺動部分に塵埃が付着又は進入し、リニアガイドの摺動抵抗が時間とともに変化(通常は増大)する虞がある。そこで
図8に示すように、リニアガイド34aに蛇腹を設け、リニアガイド34aの摺動部分への塵埃の付着・進入を防止することが効果的である。具体的には、ガイドローラ20aの軸ホルダ44におけるリニアガイドの長手方向の両端部の各々と、リニアガイド34aの両端部の各々との間に蛇腹54a及び54bを取付け、ガイドローラ20aが位置している部分を除くリニアガイド34aのスライドベース38の部分を覆うようにする。このようにすれば、リニアガイドの摺動抵抗の経時的変化が防止され、長期に亘り安定した性能の切断機が得られる。
【0038】
図9は、ガイドローラのまたさらなる他の具体例を示す図である。
図8のガイドローラ20a″′は、2つのすべり軸受50a及び50bを有し、コイルばね52の代わりに皿ばね56を使用し、皿ばね56への塵埃の付着又は進入を防止する皿ばね格納キャップ58をさらに具備する点で
図7に記載のガイドローラ20a″と異なり、他は同様でよい。
図9の構造では、皿ばね56を、軸受ホルダ33側のすべり軸受(図示例では上方のすべり軸受50a)と軸受ホルダ44との間に配置し、2つのすべり軸受を鉛直上方に予圧できるようにすることにより、すべり軸受の回転抵抗をさらに高めることができる。またすべり軸受を上下ともつば付きとし、皿ばね56で与圧して上下方向に隙間のない状態にすることで、すべり軸受50a、50bと軸59との間に塵埃が進入することを防止している。
図9のような構造を採用することにより、皿ばねの格納部、すべり軸受への塵埃の進入を最小限にでき、ガイドローラの回転抵抗の経時的変化が防止され、長期に亘り安定した性能の切断機が得られる。
【0039】
なお
図6〜
図9は片方のガイドローラ20a及びリニアガイド34aのみについて説明したが、同様の構成が他方のガイドローラ20b及びリニアガイド34bにも適用できることは明らかである。また
図8の構成(蛇腹)は、ガイドローラが
図3、
図6、
図7及び
図9のいずれの形態であっても使用可能である。
【0040】
本発明では、案内部材を被切断材に当接させながら切断機アセンブリを前進させることにより該案内部材に作用する抵抗(例えばガイドローラの回転抵抗)を利用して、案内部材を直動ガイド上で摺動させ、被切断材の切断中に、切断進行方向について案内部材と切断トーチとの位置関係を逆転させることができるので、案内部材と切断トーチとの位置関係を変更するための駆動手段(エアシリンダやモータ等)を必要としない。一般に駆動手段を設けることは、切断トーチの振動等の原因となり、切断された鋼材の品質に影響し得るが、本発明ではこのような不具合を抑制できる。また、案内部材を使用せずに、非接触式のセンサを用いて、上述のようなラック・ピニオン構造を使用せずに切断トーチの位置を制御する方法も考えられるが、この方法では設備がかなりの高コストとなる。従って本発明によれば、簡易な構成かつ低コストでありながら、切断品質も極めて優れた切断機が提供される。