特許第6173166号(P6173166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6173166デジタル放送受信装置およびプリセット切替方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173166
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】デジタル放送受信装置およびプリセット切替方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20170724BHJP
   H04N 21/438 20110101ALI20170724BHJP
   H04N 21/442 20110101ALI20170724BHJP
【FI】
   H04B1/16 Z
   H04N21/438
   H04N21/442
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-220772(P2013-220772)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-82791(P2015-82791A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】小沼 賢悟
【審査官】 木村 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−164675(JP,A)
【文献】 特開2008−278058(JP,A)
【文献】 特開2003−152578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03J 5/00− 5/02、 5/14− 5/30
7/00− 7/32
H04B 1/06、 1/16
H04H20/00−20/46、20/51−20/86
20/91−40/27、40/90−60/98
H04N 5/38− 5/46、 7/10
7/14−7/173、 7/20− 7/56
21/00−21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンネルの受信強度が所定値以下になったか否かを判定する受信強度判定部と、
上記受信強度判定部により上記受信強度が所定値以下になったと判定された場合に、現在受信中のチャンネルのエリアコードと同一のエリアコードのチャンネルを除いて、上記受信強度が所定値を超える受信可能チャンネルをスキャンするスキャン処理部と、
上記スキャン処理部により抽出された受信可能チャンネルをプリセットメモリに記憶させるプリセット更新部とを備えたことを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項2】
上記プリセット更新部は、上記スキャン処理部により抽出された受信可能チャンネルのうち、抽出数が最も多いエリアコードのチャンネルのみを上記プリセットメモリに記憶させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項3】
上記受信強度判定部は、上記現在受信中のチャンネルの受信強度が所定値以下になったか否かを判定し、所定値以下になったと判定した場合に、上記プリセットメモリに現在記憶されているチャンネルのうち、上記現在受信中のチャンネルのエリアコードと同一のエリアコードのチャンネルの受信強度が所定値以下になっているか否かをさらに判定し、
上記スキャン処理部は、上記現在受信中のチャンネルおよび当該チャンネルのエリアコードと同一のエリアコードのチャンネルの所定割合以上について受信強度が所定値以下になっていると上記受信強度判定部により判定された場合に、上記受信可能チャンネルのスキャンを行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項4】
チャンネルの受信強度が所定値以下になったか否かを判定する受信強度判定部と、
上記受信強度判定部により上記受信強度が所定値以下になったと判定された場合に、上記受信強度が所定値を超える受信可能チャンネルをスキャンするスキャン処理部と、
上記スキャン処理部により抽出された受信可能チャンネルのうち、現在受信中のチャンネルのエリアコードと異なるエリアコードのチャンネルをプリセットメモリに記憶させるプリセット更新部とを備えたことを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項5】
デジタル放送受信装置の受信強度判定部が、現在受信中のチャンネルの受信強度が所定値以下になったか否かを判定する第1のステップと、
上記デジタル放送受信装置のスキャン処理部が、上記受信強度判定部により上記受信強度が所定値以下になったと判定された場合に、上記現在受信中のチャンネルのエリアコードと同一のエリアコードのチャンネルを除いて、上記受信強度が所定値を超える受信可能チャンネルをスキャンする第2のステップと、
上記デジタル放送受信装置のプリセット更新部が、上記スキャン処理部により抽出された受信可能チャンネルをプリセットメモリに記憶させる第3のステップとを有することを特徴とするプリセット切替方法。
【請求項6】
デジタル放送受信装置の受信強度判定部が、現在受信中のチャンネルの受信強度が所定値以下になったか否かを判定する第1のステップと、
上記デジタル放送受信装置のスキャン処理部が、上記受信強度判定部により上記受信強度が所定値以下になったと判定された場合に、上記受信強度が所定値を超える受信可能チャンネルをスキャンする第2のステップと、
上記デジタル放送受信装置のプリセット更新部が、上記スキャン処理部により抽出された受信可能チャンネルのうち、上記現在受信中のチャンネルのエリアコードと異なるエリアコードのチャンネルをプリセットメモリに記憶させる第3のステップとを有することを特徴とするプリセット切替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送受信装置およびプリセット切替方法に関し、特に、移動に伴いプリセットメモリの登録チャンネルを適宜更新する機能を備えたデジタル放送受信装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
車載用のデジタル放送受信装置では、車両が異なる放送エリアを跨いで移動すると、それまで視聴していたチャンネルのデジタル放送の受信ができなくなる。この問題に対し、視聴中のチャンネルの受信強度が所定値以下に低下した場合に、バックグラウンドで全周波数のチャンネルスキャンを開始し、プリセットメモリの登録チャンネルを自動的に更新する機能が提供されている。
【0003】
例えば、図4に示すように、福島県の放送エリアから茨城県の放送エリアに移動中の場合、福島県の県境を超えるところ付近でそれまで視聴していたチャンネルの受信強度が所定値以下に低下するため、スキャンが行われてプリセットメモリの登録チャンネルが自動更新される。
【0004】
この場合、県境でスキャンが行われているため、福島県から離れようとしているにもかかわらず、福島県の一部のチャンネルもスキャンされてプリセットされてしまうことがある。しかしながら、プリセットされても、車両は福島県の放送エリアから離れていくので、プリセットされたチャンネルがすぐに受信できなくなってしまうという問題があった。
【0005】
なお、検知された放送局の周波数が特定の周波数(例えば、交通情報の1620kHz)と同一か否かを判定し、同一と判定された場合には、その周波数をプリセットメモリに記憶させないようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、専用のスイッチがある交通情報放送局の周波数がプリセットメモリに無駄に記憶されることを防ぎ、プリセットスイッチによるチャンネル選択の範囲が狭まるのを防止することができる。
【0006】
ところで、放送エリア毎に、受信可能なチャンネルのリストを示すエリアプリセット情報をあらかじめデータベースに記憶しておき、車両の現在位置に応じた放送エリアのエリアプリセット情報を読み出してプリセットメモリに記憶させるようにした「エリアプリセット」と呼ばれる技術も存在する。しかしながら、エリアプリセット情報の精度が悪く、プリセット直後から受信できないチャンネルがあるという問題や、同じ放送エリア内でも車両の移動に伴ってプリセットチャンネルが受信できなくなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−303108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述のような問題を解決するために成されたものであり、視聴中のチャンネルの受信強度の低下に応じてスキャンを行い、プリセットメモリの登録チャンネルを自動更新する際に、すぐに受信できなくなる可能性の高い無用なチャンネルがプリセットされるのを防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明では、チャンネルの受信強度が所定値以下になった場合に、現在受信中のチャンネルのエリアコードと同一のエリアコードのチャンネルを除いて、受信可能チャンネルをスキャンし、これによって抽出された受信可能チャンネルをプリセットメモリに記憶させるようにしている。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した本発明によれば、車両が異なる放送エリアを跨いで移動中に、移動元の放送エリアで受信していたチャンネルの受信強度が低下したためにプリセットメモリの自動更新を行う際、移動元の放送エリアに関するチャンネルはプリセットされず、移動先となる可能性のある放送エリアに関するチャンネルだけがプリセットされることとなる。これにより、車両の移動に伴ってすぐに受信できなくなる可能性の高い無用なチャンネルがプリセットされるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態によるデジタル放送受信装置の構成例を示す図である。
図2】本実施形態によるデジタル放送受信装置の動作例を示す図である。
図3】本実施形態によるデジタル放送受信装置の動作例を示すフローチャートである。
図4】受信強度の低下によりプリセットメモリの自動更新を行う場面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態によるデジタル放送受信装置の構成例を示す図である。図1に示すデジタル放送受信装置の構成において、アンテナ1は、デジタル放送の電波を受信する。チューナ2は、アンテナ1によって受信したデジタル放送の電波から所望のチャンネルに合致した受信周波数の放送波信号を選択的に抽出して出力する。
【0013】
OFDM復調部3は、チューナ2で受信した放送波信号をOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)復調してトランスポートストリーム(Transport Stream:以下、TSと記す)を得る。誤り訂正部4は、OFDM復調部3により復調されたTSに対して、伝送路で発生した誤りの訂正を実行する。
【0014】
デマルチプレクサ部5は、多重化されているTSを分離して音声ストリーム、映像ストリームおよびデータストリームを得る。そして、デマルチプレクサ部5は、音声ストリームをオーディオデコーダ部6に出力し、映像ストリームをビデオデコーダ部7に出力し、データストリームをデータデコーダ部8に出力する。ここで、データストリームには、放送局名、放送局の物理チャンネル(受信周波数)などのチャンネルに関する情報や、そのチャンネルの放送波を受信可能なエリアを示すエリアコードが含まれている。
【0015】
オーディオデコーダ部6は、入力した音声ストリームをデコードして音声信号として出力する。ビデオデコーダ部7は、入力した映像ストリームをデコードして映像信号として出力する。データデコーダ部8は、入力したデータストリームをデコードして制御データとして出力する。
【0016】
チャンネル切替部9は、図示しない操作部に対するユーザの操作に応じて、チューナ2で受信するチャンネルを選択して切り替える。プリセットメモリ10は、複数の受信可能チャンネルに関する情報を複数のプリセット番号に対応して記憶しておくものである。このプリセットメモリ10には、放送局の物理チャンネルおよびエリアコードの情報がプリセット番号ごとに記憶されている。
【0017】
ユーザが操作部のプリセット選択ボタン(図示せず)を操作して何れかのプリセット番号を任意に選択すると、チャンネル切替部9は、その選択されたプリセット番号に対応してプリセットメモリ10に記憶されている物理チャンネルをチューナ2に対して受信チャンネルとして設定する。
【0018】
受信強度判定部11は、チューナ2において現在受信中のチャンネルの受信強度が所定値以下になったか否かを判定する。これは、車両が異なる放送エリアを跨いで移動中か否かを判定するものである。すなわち、図4のように車両が異なる放送エリアを跨いで移動中であると、それまで視聴していたチャンネルの受信強度が低下する。よって、受信強度が所定値以下になった場合、車両が現在の放送エリアから異なる放送エリアへ移動中であると判定することができる。なお、受信強度は、例えばC/N(搬送波対雑音比)、BER(Bit Error Rate)を利用して検出することが可能である。
【0019】
スキャン処理部12は、受信強度判定部11により受信強度が所定値以下になったと判定された場合に、現在受信中のチャンネルのエリアコードと同一のエリアコードのチャンネルを除いて、受信強度が所定値を超える受信可能チャンネルをスキャンする。スキャン処理とは、チューナ2の受信周波数を可変させて、現在位置において受信可能なチャンネルを検出してチャンネルリストを生成する処理である。スキャン処理部12は、このスキャン処理の実行により、現在位置において受信可能な放送局の物理チャンネルおよびエリアコードの情報をデータデコーダ部8より取得する。
【0020】
なお、一般的なスキャン処理では、全周波数(全チャンネル)のスキャンを実行する。これに対して、本実施形態では、現在受信中のチャンネルのエリアコードと同一のエリアコードのチャンネルを除いてスキャンを実行する。現在受信中のチャンネルのエリアコードは、データデコーダ部8から得る。例えば、図4のように福島県の放送エリアから茨城県の放送エリアへ移動中に、現在受信中のチャンネルの受信強度が低下したためにスキャン処理を行う場合、スキャン処理部12は、福島県のエリアコード(以下、福島コードという)が付与されたチャンネルを除いて、他のチャンネルについてのみスキャン処理を実行する。
【0021】
プリセット更新部13は、スキャン処理部12により抽出された受信可能チャンネルをプリセットメモリ10に更新して記憶させる。記憶させる情報は、上述したように、スキャン処理部12により受信可能チャンネルとして抽出された放送局の物理チャンネルおよびエリアコードの情報である。
【0022】
ここで、プリセットメモリ10に登録可能な数よりも多くの受信可能チャンネルがスキャン処理部12により抽出された場合、プリセット更新部13は、例えば、受信強度が強いチャンネルから優先してプリセットメモリ10に記憶させるようにする。この場合、プリセットメモリ10に記憶させる複数の受信可能チャンネルは、複数のエリアコードに対応するものが混在していてもよい。
【0023】
例えば、図4のように福島県の放送エリアから茨城県の放送エリアに向かって移動中の場合、茨城県のエリアコード(以下、茨城コードという)が付与されたチャンネルの他に、栃木県のエリアコード(以下、栃木コードという)が付与されたチャンネルもスキャン処理部12により抽出される可能性がある。この場合、プリセット更新部13は、茨城コードのチャンネルと栃木コードのチャンネルとを受信強度が強いものから優先してプリセットメモリ10に記憶させる。
【0024】
あるいは、プリセット更新部13は、スキャン処理部12により抽出された受信可能チャンネルのうち、抽出数が最も多いエリアコードのチャンネルのみをプリセットメモリ10に記憶させるようにしてもよい。例えば、スキャン処理部12により抽出された受信可能チャンネルの中で、茨城コードのチャンネルの抽出数が最も多くなっていたとする。この場合、プリセット更新部13は、スキャン処理部12により栃木コードのチャンネルが抽出されていてもこれをプリセットメモリ10に記憶させず、茨城コードのチャンネルのみをプリセットメモリ10に記憶させる。
【0025】
ところで、現在受信中のチャンネルの受信強度は、その時々の走行環境に応じて変動する。そのため、車両が異なる放送エリアを跨いで移動中でなくても、受信強度が不定の時間だけ所定値以下になることもあり得る。そこで、受信強度判定部11は、現在受信中のチャンネルの受信強度が所定値以下になった状態が所定時間以上続いたか否かを判定するようにしてもよい。ただし、このようにしても、例えばビルの密集している地域や山間部などを走行しているときは、車両が異なる放送エリアを跨いで移動中でなくても、現在受信中のチャンネルの受信強度が所定値以下になった状態が所定時間以上続くことがあり得る。
【0026】
そこで、受信強度判定部11は、現在受信中のチャンネルの受信強度が所定値以下になったと判定した場合に、プリセットメモリ10に現在記憶されているチャンネルのうち、現在受信中のチャンネルのエリアコードと同一のエリアコードのチャンネルの受信強度が所定値以下になっているか否かをさらに判定するようにしてもよい。現在受信中のチャンネルのエリアコードは、データデコーダ部8から得る。そして、スキャン処理部12は、現在受信中のチャンネルおよび当該チャンネルのエリアコードと同一のエリアコードのチャンネルの所定割合以上について受信強度が所定値以下になっていると受信強度判定部11により判定された場合に、受信可能チャンネルのスキャン処理を行う。
【0027】
このようにすれば、車両が異なる放送エリアを跨いで移動中であることをより正確に検出することができる。すなわち、図4のように福島県の放送エリアから茨城県の放送エリアへ移動中の場合、現在受信中のチャンネルだけでなく、福島県のエリアコードが付与された他のチャンネルも受信強度が所定値以下に低下している可能性が高い。逆に、ビルの谷間や山間部などを走行しているときは、一部のチャンネルについて受信強度は低下するものの、同じエリアコードのチャンネルの所定割合以上について全て受信強度が低下することはない。よって、上述の判定方法を採用することにより、車両が異なる放送エリアを跨いで移動中であることをより正確に検出することが可能である。
【0028】
図2は、以上のように構成した本実施形態によるデジタル放送受信装置の動作例を示す図である。図2(a)は、更新前のプリセットメモリ11の記憶例を示している。図2(a)の例では、プリセットメモリ10に10個の受信可能チャンネルを登録可能であり、福島コードのチャンネルと茨城コードのチャンネルとが混在した状態で記憶されている。このうち、福島コードの“18ch”が現在受信中のチャンネルであるとする。
【0029】
車両が福島県の放送エリアから茨城県の放送エリアへ移動中で、現在受信中のチャンネルの受信強度が所定値以下になったと受信強度判定部11により判定されたとする。この場合、受信強度判定部11は引き続き、図2(b)に示すように、プリセットメモリ10に現在記憶されているチャンネルのうち、現在受信中のチャンネルと同じ福島コードのチャンネルについて受信強度が所定値以下になっているか否かを判定する。
【0030】
そして、プリセットメモリ10に記憶されている9個の福島コードのチャンネルのうち、所定割合以上のチャンネルについて受信強度が所定値以下になっていると受信強度判定部11により判定された場合、スキャン処理部12は、図2(c)に示すように、福島コードのチャンネルを除いてスキャン処理を実行する。最後に、プリセット更新部13は、図2(d)に示すように、スキャン処理部12により抽出された受信可能チャンネルのうち、抽出数が最も多い茨城コードのチャンネルのみをプリセットメモリ10に記憶させる。
【0031】
図3は、以上のように構成した本実施形態によるデジタル放送受信装置の動作例を示すフローチャートである。なお、図3に示すフローチャートは、デジタル放送受信装置の電源がオンとされたときに開始する。
【0032】
まず、受信強度判定部11は、現在受信中のチャンネルの受信強度を検出し(ステップS1)、その検出した受信強度が所定値以下になっているか否かを判定する(ステップS2)。受信強度が所定値以下になっていなければ、処理はステップS1に戻る。
【0033】
一方、受信強度が所定値以下になっている場合、受信強度判定部11は引き続き、プリセットメモリ10に現在記憶されているチャンネルのうち、現在受信中のチャンネルと同じエリアコードのチャンネルを1つ選択する。そして、その選択したチャンネルについて受信強度を検出し(ステップS3)、検出した受信強度が所定値以下になっているか否かを判定する(ステップS4)。
【0034】
ここで、選択したチャンネルの受信強度が所定値以下になっていなければ、処理はステップS1に戻る。一方、選択したチャンネルの受信強度が所定値以下になっている場合、受信強度判定部11は、現在受信中のチャンネルと同じエリアコードのチャンネルを全て選択して受信強度の判定が終わったか否かを判定する(ステップS5)。まだ全てのチャンネルについて受信強度の判定が終わっていなければ、処理はステップS3に戻る。
【0035】
一方、プリセットメモリ10に現在記憶されているチャンネルのうち、現在受信中のチャンネルと同じエリアコードのチャンネルの全てについて受信強度の判定が終わった場合、つまり、受信強度が全て所定値以下になっていると判定された場合、スキャン処理部12は、現在受信中のチャンネルのエリアコードと同一のエリアコードのチャンネルを除いて、受信強度が所定値を超える受信可能チャンネルをスキャンする(ステップS6)。
【0036】
そして、プリセット更新部13は、スキャン処理部12により抽出された受信可能チャンネルをプリセットメモリ10に更新して記憶させる(ステップS7)。その後、デジタル放送受信装置は、電源がオフにされたか否かを判定し(ステップS8)、オフにされていなければ、処理はステップS1に戻る。電源がオフにされた場合は、図3に示すフローチャートの処理を終了する。
【0037】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、現在受信中のチャンネルの受信強度が所定値以下になった場合に、現在受信中のチャンネルのエリアコードと同一のエリアコードのチャンネルを除いて、受信可能チャンネルをスキャンし、これによって抽出された受信可能チャンネルをプリセットメモリ10に更新して記憶させるようにしている。
【0038】
このように構成した本実施形態によれば、車両が異なる放送エリアを跨いで移動中に、移動元の放送エリアで受信していたチャンネルの受信強度が低下したためにプリセットメモリ10の自動更新を行う際、移動元の放送エリア(福島コード)に関するチャンネルはプリセットされず、移動先となる可能性のある放送エリア(茨城コードまたは栃木コード)に関するチャンネルだけがプリセットされることとなる。これにより、車両の移動に伴ってすぐに受信できなくなる可能性の高い無用なチャンネル(移動元の放送エリアのチャンネル)がプリセットされるのを防止することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、現在受信中のチャンネルのエリアコードと同一のエリアコードのチャンネルを除いてスキャン処理を実行するので、スキャン時間を短縮することができるというメリットも有する。
【0040】
なお、上記実施形態では、スキャン処理部12が、現在受信中のチャンネルのエリアコードと同一のエリアコードのチャンネルを除いてスキャン処理を実行し、それによって抽出された受信可能チャンネルをプリセット更新部13がプリセットメモリ10に記憶させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0041】
例えば、スキャン処理部12では、一般的なスキャン処理と同様に全周波数(全チャンネル)のスキャン処理を実行する。そして、プリセット更新部13が、スキャン処理部12により抽出された受信可能チャンネルのうち、現在受信中のチャンネルのエリアコードと異なるエリアコードのチャンネルのみを選択してプリセットメモリ10に記憶させるようにしてもよい。ただし、スキャン時間を短縮できるというメリットを有する点で、上記実施形態の方が好ましい。
【0042】
また、上記実施形態では、プリセットメモリ10に記憶させる複数の受信可能チャンネルに関して、複数のエリアコードに対応するチャンネルが混在する場合と、スキャン処理部12による抽出数が最も多いエリアコードのチャンネルのみとする場合の2通りを説明したが、状況に応じて何れか一方を自動的に選択するようにしてもよい。例えば、ナビゲーション装置をデジタル放送受信装置に接続し、誘導経路の設定状況に応じて何れか一方を自動的に選択するようにすることが可能である。
【0043】
例えば、スキャン処理部12による受信可能チャンネルの抽出数が2番目以下のエリアコードで示される放送エリアをナビゲーション装置に通知し、ナビゲーション装置において設定されている誘導経路が上記放送エリア内に存在するか否かを問い合わせる。そして、抽出数が2番目以下のエリアコードで示される放送エリア内に誘導経路が存在しない場合は、スキャン処理部12による抽出数が最も多いエリアコードのチャンネルのみをプリセットメモリ10に記憶させる。一方、抽出数が2番目以下のエリアコードで示される放送エリア内に誘導経路が存在する場合は、複数のエリアコードの混在を許容してプリセットメモリ10に受信可能チャンネルを記憶させるようにする。このようにすれば、誘導経路に沿って移動する可能性の高い放送エリアに関する有用なチャンネルをプリセットメモリ10に記憶させることができる。
【0044】
なお、プリセット更新部13は、誘導経路の存在する放送エリアが、抽出数が2番目以下のエリアコードで示される放送エリアか否かにかかわらず、スキャン処理部12により抽出された受信可能チャンネルのうち、誘導経路が存在する放送エリアのチャンネルを選択してプリセットメモリ10に記憶させるようにしてもよい。
【0045】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 プリセットメモリ
11 受信強度判定部
12 スキャン処理部
13 プリセット更新部
図1
図2
図3
図4