特許第6173175号(P6173175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173175
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】多重配管
(51)【国際特許分類】
   F16L 39/04 20060101AFI20170724BHJP
   F16L 37/32 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   F16L39/04
   F16L37/32
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-233280(P2013-233280)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2015-94407(P2015-94407A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆弘
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−349783(JP,A)
【文献】 特開平11−236990(JP,A)
【文献】 実開昭58−158892(JP,U)
【文献】 実開昭51−161619(JP,U)
【文献】 実開平3−55989(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第2431646(EP,A1)
【文献】 米国特許第7147003(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0289645(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 39/04
F16L 37/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向の内側に第1内回路が設けられた第1内管、および前記第1内管を径方向の外側から囲繞し、前記第1内管との間に第1外回路が設けられた第1外管を有し、配管軸方向の一方側に配置される第1多重管と、
径方向の内側に第2内回路が設けられた第2内管、および前記第2内管を径方向の外側から囲繞し、前記第2内管との間に第2外回路が設けられた第2外管を有し、配管軸方向の他方側に配置される第2多重管と、を備え、
これらの両多重管が配管軸方向に接近移動することで、前記第1内管および前記第1外管それぞれの前記他方側の端部と、前記第2内管および前記第2外管それぞれの前記一方側の端部と、が互いに配管軸方向に摺動可能に嵌合して、前記第1内回路と前記第2内回路とが接続されてなる接続内回路、および前記第1外回路と前記第2外回路とが接続されてなる接続外回路が形成される多重配管であって、
前記第1内管は、前記第1外管に対して前記他方側に向けて付勢された付勢管部と、前記付勢管部の前記他方側の端部に、配管軸方向に摺動可能に嵌合された嵌合管部と、を備え、
前記第2内管と前記第2外管とは、配管軸方向に固定され、
前記第1外管および前記第2外管には、前記両多重管が配管軸方向に接近移動するときに互いに係合することで、前記両多重管の更なる接近移動を規制する規制部が各別に設けられ、
前記両多重管を配管軸方向に接近移動させ、前記嵌合管部および前記第2内管と、前記第1外管および前記第2外管と、を各別に嵌合させるとともに、前記付勢管部と前記第2内管とを配管軸方向に当接させたときに、前記規制部同士が配管軸方向に離間した状態で、前記接続内回路および前記接続外回路が形成されていることを特徴とする多重配管。
【請求項2】
請求項1記載の多重配管であって、
前記嵌合管部は、前記第1外管に対して前記他方側に向けて付勢されることで前記第1外回路を閉鎖し、前記一方側に向けて押し込まれることで前記第1外回路の閉鎖を解除することを特徴とする多重配管。
【請求項3】
請求項2記載の多重配管であって、
前記第2内管と前記第2外管との間には、前記一方側に向けて付勢されることで前記第2外回路を閉鎖し、前記他方側に向けて押し込まれることで前記第2外回路の閉鎖を解除する外閉塞体が設けられ、
前記嵌合管部と前記外閉塞体とは、前記両多重管が配管軸方向に接近移動するときに、配管軸方向に当接して押し込み合うことを特徴とする多重配管。
【請求項4】
請求項2または3に記載の多重配管であって、
前記第1外管には、前記付勢管部および前記嵌合管部それぞれに前記他方側から当接して支持する支持部が設けられていることを特徴とする多重配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重配管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に記載されたような多重配管が知られている。この多重配管は、配管軸方向の一方側に配置される第1多重管と、配管軸方向の他方側に配置される第2多重管と、を備えている。第1多重管は、径方向の内側に第1内回路が設けられた第1内管、および第1内管を径方向の外側から囲繞し、第1内管との間に第1外回路が設けられた第1外管を備えている。第2多重管は、径方向の内側に第2内回路が設けられた第2内管、および第2内管を径方向の外側から囲繞し、第2内管との間に第2外回路が設けられた第2外管を備えている。そしてこの多重配管では、これらの両多重管が配管軸方向に接近移動することで、第1内管および第1外管それぞれの他方側の端部と、第2内管および第2外管それぞれの一方側の端部と、が互いに配管軸方向に摺動可能に嵌合して、第1内回路と第2内回路とが接続されてなる接続内回路、および第1外回路と第2外回路とが接続されてなる接続外回路が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−349783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の多重配管では、接続内回路および接続外回路が形成された状態で、この多重配管の配管軸方向の長さを調整することができなかった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、接続内回路および接続外回路が形成された状態で長さを調整することができる多重配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る多重配管は、径方向の内側に第1内回路が設けられた第1内管、および前記第1内管を径方向の外側から囲繞し、前記第1内管との間に第1外回路が設けられた第1外管を有し、配管軸方向の一方側に配置される第1多重管と、径方向の内側に第2内回路が設けられた第2内管、および前記第2内管を径方向の外側から囲繞し、前記第2内管との間に第2外回路が設けられた第2外管を有し、配管軸方向の他方側に配置される第2多重管と、を備え、これらの両多重管が配管軸方向に接近移動することで、前記第1内管および前記第1外管それぞれの前記他方側の端部と、前記第2内管および前記第2外管それぞれの前記一方側の端部と、が互いに配管軸方向に摺動可能に嵌合して、前記第1内回路と前記第2内回路とが接続されてなる接続内回路、および前記第1外回路と前記第2外回路とが接続されてなる接続外回路が形成される多重配管であって、前記第1内管は、前記第1外管に対して前記他方側に向けて付勢された付勢管部と、前記付勢管部の前記他方側の端部に、配管軸方向に摺動可能に嵌合された嵌合管部と、を備え、前記第2内管と前記第2外管とは、配管軸方向に固定され、前記第1外管および前記第2外管には、前記両多重管が配管軸方向に接近移動するときに互いに係合することで、前記両多重管の更なる接近移動を規制する規制部が各別に設けられ、前記両多重管を配管軸方向に接近移動させ、前記嵌合管部および前記第2内管と、前記第1外管および前記第2外管と、を各別に嵌合させるとともに、前記付勢管部と前記第2内管とを配管軸方向に当接させたときに、前記規制部同士が配管軸方向に離間した状態で、前記接続内回路および前記接続外回路が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この発明では、両多重管を配管軸方向に接近移動させ、嵌合管部および第2内管と、第1外管および第2外管と、を各別に嵌合させるとともに、付勢管部と第2内管とを配管軸方向に当接させたときに、規制部同士が配管軸方向に離間した状態で、接続内回路および接続外回路が形成されている。したがって、その後、両多重管を配管軸方向に更に接近移動させると、第1外管と第2外管とを、規制部が互いに係合するまで配管軸方向に摺動させることが可能になり、この多重配管の長さを短くすることができる。なおこのとき、付勢管部および第2内管は、付勢管部に作用する付勢力に抗しながら、第1外管に対して前記一方側に向けて移動し、嵌合管部と第2内管とは、配管軸方向に摺動する。
この多重配管によれば、接続内回路および接続外回路が形成された状態で、この多重配管の長さを短くすることが可能になり、多重配管の長さを調整することができる。
ところで、この多重配管のような、第1内管が、互いに配管軸方向に摺動可能に嵌合された付勢管部および嵌合管部を有する構成ではなく、例えば第1外管や第2外管が、互いに配管軸方向に摺動可能に嵌合された2つの管状体を有するような構成では、多重配管の外側からこれらの両管状体の間に異物が侵入して固着すること等により、両管状体の配管軸方向の摺動が意図せず規制されるおそれがある。
これに対して、この多重配管では、互いに配管軸方向に摺動可能に嵌合された付勢管部および嵌合管部を有する第1内管が、第1外管により径方向の外側から囲繞されているので、この多重配管の外部から第1内管に異物を到達させ難くすることができる。これにより、第1内管の両管部の配管軸方向の摺動が意図せず規制されるのを抑えて両管部を配管軸方向に確実に摺動させることが可能になり、多重配管の長さを円滑に調整することができる。
なお付勢管部および第2内管が、第1外管に対して前記一方側に向けて移動するときに、付勢管部が、第1外管から前記一方側に向けて突出している場合、この付勢管部の第1外管からの突出量に基づいて、接続内回路および接続外回路が形成された状態であるか否かを判別することができる。
【0008】
また、前記嵌合管部は、前記第1外管に対して前記他方側に向けて付勢されることで前記第1外回路を閉鎖し、前記一方側に向けて押し込まれることで前記第1外回路の閉鎖を解除してもよい。
【0009】
この場合、嵌合管部が、第1外管に対して前記他方側に向けて付勢されることで第1外回路を閉鎖しているので、両多重管を接近移動させる前の状態で、第1外回路を通して第1内管に異物が到達するのを抑制することが可能になり、両管部の配管軸方向の摺動が意図せず規制されるのを確実に抑えることができる。しかも、嵌合管部自体が、第1外回路を閉鎖しているので、第1外回路を閉鎖するために別途部材を設ける必要がなく、この多重配管の部品点数の増加を抑えることができる。
また、嵌合管部が前記一方側に向けて押し込まれることで、第1外回路の閉鎖が解除されるので、両多重管が配管軸方向に接近移動するときに、この嵌合管部を第2多重管によって前記一方側に向けて押し込むことで、第1外回路の閉鎖を確実に解除することができる。
【0010】
また、前記第2内管と前記第2外管との間には、前記一方側に向けて付勢されることで前記第2外回路を閉鎖し、前記他方側に向けて押し込まれることで前記第2外回路の閉鎖を解除する外閉塞体が設けられ、前記嵌合管部と前記外閉塞体とは、前記両多重管が配管軸方向に接近移動するときに、配管軸方向に当接して押し込み合ってもよい。
【0011】
この場合、第2内管と第2外管との間に、外閉塞体が設けられているので、両多重管を接近移動させる前の状態で、第2外回路を閉鎖しておくことが可能になり、例えばこの第2外回路内に異物が入り込むのを抑制すること等ができる。
また、両多重管が配管軸方向に接近移動するときに、嵌合管部と外閉塞体とが、配管軸方向に当接して押し込み合うので、これらの嵌合管部と外閉塞体とを押し込み合わせるときに、嵌合管部と第2内管とを嵌合させておくことが可能になり、接続内回路を確実に形成することができる。
【0012】
また、前記第1外管には、前記付勢管部および前記嵌合管部それぞれに前記他方側から当接して支持する支持部が設けられていてもよい。
【0013】
この場合、第1外管に支持部が設けられているので、付勢管部および嵌合管部に作用する付勢力を支持部で各別に受け止めて、付勢管部および嵌合管部のうちの一方に作用する付勢力が、他方に影響するのを抑制することが可能になり、付勢管部および嵌合管部に作用する付勢力の調整を容易なものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る多重配管によれば、接続内回路および接続外回路が形成された状態で長さを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る多重配管を備える接続構造を示す部分縦断面図である。
図2図1に示す多重配管を構成する第1多重管の半断面図である。
図3図1に示す多重配管を構成する第2多重管の半断面図である。
図4図1に示す多重配管の半断面図であって、両多重管を配管軸方向に接近移動させている状態を示す図である。
図5図1に示す多重配管の半断面図であって、図4に示す状態から更に両多重管を配管軸方向に接近移動させた状態を示す図である。
図6図1に示す多重配管の半断面図であって、図5に示す状態から更に両多重管を配管軸方向に接近移動させた状態を示す図である。
図7図1に示す多重配管の半断面図であって、図6に示す状態から更に両多重管を配管軸方向に接近移動させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る多重配管を備える接続構造を説明する。図1に示すような接続構造10は、例えば、掘削装置においてスクリューを構成するロッド11の端部同士を接続するとき等に採用される。ロッド11は、中空の棒状に形成されていて、ロッド11の端部同士は、互いに嵌合して固定される。
【0017】
各ロッド11の端部には、多重配管20(多重管継手)が設けられている。多重配管20には、互いに独立した複数の回路が同心円状に形成され、図示の例では、回路が二重に形成される二重構造とされている。多重配管20の各回路内には、例えば油圧用の作動油などの流体(液体)が流動する。
【0018】
なお各回路内には、互いに種類が異なる流体を流動させてもよく、互いに流れの向きが異なる流体を流動させてもよい。例えば、図示の例のように回路が二重に形成されている場合、内側の回路と外側の回路とで流れの向きを反対にして、それぞれを往路または復路として用いることで流体を往復させてもよい。
さらに、ロッド11の中空部であって多重配管20の外側には、例えばセメントミルク等の流体(液体)を流動させてもよい。
【0019】
多重配管20は、第1多重管21(ボディ、雌金具)と、第2多重管22(ノーズ、雄金具)と、を備えている。これらの両多重管21、22はそれぞれ、互いに異なるロッド11の各端部内に固定されている。
【0020】
ここで、両多重管21、22の各中心軸は、互いに共通軸上に位置している。以下、この共通軸を配管軸Oといい、配管軸O方向に沿って第1多重管21側を一方側といい、第2多重管22側を他方側といい、配管軸Oに直交する方向を径方向といい、配管軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0021】
図2に示すように、第1多重管21は、第1内管23と、第1外管24と、を備えている。これらの第1内管23および第1外管24は、互いに同軸に配置されていて、第1外管24は、第1内管23を径方向の外側から囲繞している。
【0022】
第1外管24は、一方側に位置する一方管24aと、他方側に位置する他方管24bと、を備えている。これらの両管24a、24bは、例えば螺着や嵌合などにより互いに液密に固定されている。他方管24bの他方側の端部内には、環状の弾性シール材が嵌合されている。
【0023】
第1外管24には、支持部25、26が設けられている。支持部25、26は、配管軸Oと同軸の環状に形成され、配管軸O方向に間隔をあけて複数、図示の例では2つ設けられている。支持部25、26には、一方側に位置する第1支持部25と、他方側に位置する第2支持部26と、が備えられている。第1支持部25は、一方管24aに設けられ、第2支持部26は、他方管24bに設けられている。第1支持部25には、配管軸O方向に貫通する貫通孔が設けられている。
【0024】
第1外管24には、固定リング27が固定されている。固定リング27は、配管軸Oと同軸に配置されるとともに第1外管24内に嵌合され、第1外管24に配管軸O方向に固定されている。固定リング27は、一方管24aにおいて第1支持部25よりも一方側に位置する部分に配置されている。固定リング27には、配管軸O方向に貫通する貫通孔が形成されている。
【0025】
第1内管23は、第1外管24に対して他方側に向けて付勢された付勢管部28と、付勢管部28の他方側の端部に、配管軸O方向に摺動可能に嵌合された嵌合管部29と、を備えている。
付勢管部28は、一方側に位置する一方管28aと、他方側に位置する他方管28bと、を備えている。一方管28aの他方側の端部には、他方管28bの一方側の端部が液密に外嵌され、これらの両管28a、28bは配管軸O方向に固定されている。
【0026】
付勢管部28の一方側の端部は、第1外管24の一方側の開口端縁から一方側に向けて突出している。付勢管部28の他方側の開口端縁は、第1外管24の他方側の開口端縁よりも一方側に、かつ第2支持部26よりも他方側に位置している。付勢管部28は、固定リング27内に、配管軸O方向に摺動可能に嵌合され、各支持部25、26内に配管軸O方向に移動可能に挿通されている。
【0027】
付勢管部28には、係合部30が設けられている。係合部30は、付勢管部28の外周面から径方向の外側に向けて突出し、第1支持部25に一方側から係合している。係合部30は、第1支持部25において貫通孔よりも径方向の内側に位置する部分に、一方側に向けて離間可能に係合している。
【0028】
付勢管部28は、第1外付勢部材31により付勢されている。第1外付勢部材31は、例えばコイルスプリング等のばねにより形成されている。第1外付勢部材31は、固定リング27と係合部30との間に介装されている。第1外付勢部材31から付勢管部28に作用する付勢力は、係合部30を介して第1支持部25に受け止められている。
【0029】
嵌合管部29は、第1外管24の他方管24bと付勢管部28の他方管28bとの間に挿入され、付勢管部28において係合部30よりも他方側に位置する部分に液密に外嵌されている。嵌合管部29の一方側の開口端縁と係合部30とは、配管軸O方向に接近可能に離間し、互いに対向している。嵌合管部29の他方側の開口端縁は、付勢管部28の他方側の開口端縁よりも他方側に位置し、かつ第1外管24の他方側の開口端縁よりも一方側に位置している。嵌合管部29の他方側の端部内には、環状の弾性シール材が嵌合されている。
【0030】
嵌合管部29は、第1外管24の第2支持部26よりも配管軸O方向に大きく形成されるとともに、この第2支持部26に径方向の内側から対向していて、嵌合管部29の外周面と、第2支持部26の内周面と、の間には、配管軸O方向に延びる連通隙間32が設けられている。
【0031】
この第1多重管21には、第1内回路33と、第1外回路34と、が設けられている。第1内回路33および第1外回路34はそれぞれ、配管軸O方向の両側に向けて開口する。第1内回路33は、第1内管23の内部により構成されていて、第1内管23の配管軸O方向の全長にわたって延びている。第1外回路34は、第1外管24と第1内管23との間に設けられている。第1外回路34は、第1外管24の内周面と、第1内管23の外周面と、の間に、配管軸O方向の全長にわたって設けられている。
【0032】
ここで第1内回路33は、第1内閉塞体35により開閉され、第1外回路34は、前記嵌合管部29により開閉される。
第1内閉塞体35は、付勢管部28に対して他方側に向けて付勢されることで第1内回路33を閉鎖し、一方側に向けて押し込まれることで第1内回路33の閉鎖を解除する。第1内閉塞体35は、第1内付勢部材36により一方側に向けて付勢され、第1内管23の他方側の開口部の内面に一方側から当接することでこの開口部を閉塞している。第1内付勢部材36は、付勢管部28の他方管28b内に嵌合された第1支持管部37と、第1内閉塞体35と、の間に介装されている。第1内付勢部材36は、第1支持管部37を介して付勢管部28の一方管28aにより支持されている。
【0033】
嵌合管部29は、第1外管24に対して他方側に向けて付勢されることで第1外回路34を閉鎖し、一方側に向けて押し込まれることで第1外回路34の閉鎖を解除する。嵌合管部29には、閉塞突部38が形成されている。閉塞突部38は、嵌合管部29の外周面から環状に突出している。嵌合管部29は、第2外付勢部材39により他方側に向けて付勢され、閉塞突部38を、第1外管24の第2支持部26に一方側から当接させることで連通隙間32を閉塞している。第2外付勢部材39は、第1外管24の第1支持部25と閉塞突部38との間に介装されている。第2外付勢部材39から嵌合管部29に作用する付勢力は、閉塞突部38を介して第2支持部26に受け止められている。
【0034】
図3に示すように、第2多重管22は、第2内管41と、第2外管42と、を備えている。これらの第2内管41および第2外管42は、互いに同軸に配置されていて、第2外管42は、第2内管41を径方向の外側から囲繞している。
第2内管41は、一方側に位置する一方管41aと、他方側に位置する他方管41bと、を備えていて、これらの両管41a、41bは、例えば螺着や嵌合などにより互いに液密に固定されている。第2外管42は、一方側に位置する一方管42aと、他方側に位置する他方管42bと、を備えていて、これらの両管42a、42bは、例えば螺着や嵌合などにより互いに液密に固定されている。
【0035】
第2内管41と第2外管42とは、配管軸O方向に同等の大きさに形成されている。第2内管41と第2外管42とは、配管軸O方向に固定されていて、第2内管41と第2外管42との間には、両者の配管軸O方向の相対的な移動を規制するストッパ部43が設けられている。ストッパ部43は、第2内管41の外周面に形成されたストッパ凹部43aと、第2外管42の内周面に形成されたストッパ凸部43bと、を備えている。ストッパ凹部43aは、周方向に延びる環状に形成され、ストッパ凸部43bは、径方向の内側の端部がストッパ凹部43a内に嵌合された環状に形成されている。ストッパ凸部43bには、配管軸O方向に貫通する貫通孔が形成されている。
【0036】
この第2多重管22には、第2内回路44と、第2外回路45と、が設けられている。第2内回路44および第2外回路45はそれぞれ、配管軸O方向の両側に向けて開口する。第2内回路44は、第2内管41の内部により構成されていて、第2内管41の配管軸O方向の全長にわたって延びている。第2外回路45は、第2外管42と第2内管41との間に設けられている。第2外回路45は、第2外管42の内周面と、第2内管41の外周面と、の間に、配管軸O方向の全長にわたって設けられている。
【0037】
第2内回路44は、第2内閉塞体46により開閉され、第2外回路45は、外閉塞体47により開閉される。
第2内閉塞体46は、第2内管41に対して一方側に向けて付勢されることで第2内回路44を閉鎖し、他方側に向けて押し込まれることで第2内回路44の閉鎖を解除する。第2内閉塞体46は、第2内付勢部材48により一方側に向けて付勢され、第2内管41の一方側の開口部の内面に他方側から当接することでこの開口部を閉塞している。第2内付勢部材48は、第2内管41の一方管41a内に嵌合された第2支持管部49と、第2内閉塞体46と、の間に介装されている。第2内付勢部材48は、第2支持管部49を介して第2内管41の他方管41bにより支持されている。
【0038】
外閉塞体47は、第2内管41に対して一方側に向けて付勢されることで第2外回路45を閉鎖し、他方側に向けて押し込まれることで第2外回路45の閉鎖を解除する。外閉塞体47は、第3外付勢部材50により一方側に向けて付勢され、第2外管42の一方側の開口部の内面に他方側から当接することでこの開口部を閉塞している。第3外付勢部材50は、第2内管41に設けられた台座部51と、第2内閉塞体46と、の間に介装されている。台座部51は、第2内管41の外周面から環状に突出していて、ストッパ凹部43aに一方側から隣接している。
【0039】
図4から図7に示すように、この多重配管20では、両多重管21、22が配管軸O方向に接近移動することで、第1内管23および第1外管24それぞれの他方側の端部と、第2内管41および第2外管42それぞれの一方側の端部と、が互いに配管軸O方向に摺動可能に嵌合して、図6および図7に示すように、第1内回路33と第2内回路44とが接続されてなる接続内回路52、および第1外回路34と第2外回路45とが接続されてなる接続外回路53が形成される。
【0040】
図1に示すように、両多重管21、22が配管軸O方向に離間した初期状態から、両多重管21、22を配管軸O方向に接近移動させると、まず図4に示すように、第1外管24の他方側の端部が、第2外管42の一方側の端部に外嵌する。また、嵌合管部29の他方側の端部が、外閉塞体47の一方側の端部に当接し、その後、両多重管21、22をさらに接近移動させると、図5および図6に示すように、嵌合管部29と外閉塞体47とが、配管軸O方向に押し込み合う。このとき、まず嵌合管部29が、第2外付勢部材39を圧縮変形させながら、付勢管部28上を配管軸O方向に摺動して第1外回路34の閉鎖を解除した後、外閉塞体47が、第3外付勢部材50を圧縮変形させながら、第2内管41上を配管軸O方向に摺動して第2外回路45の閉鎖を解除する。これにより、第1外回路34と第2外回路45とが接続され、接続外回路53が形成される。
【0041】
また図4に示すような、第1外管24の他方側の端部が、第2外管42の一方側の端部に外嵌した状態から、両多重管21、22をさらに接近移動させると、図5および図6に示すように、第1内閉塞体35と第2内閉塞体46とが、配管軸O方向に当接して押し込み合うとともに、嵌合管部29の他方側の端部が、第2内管41の一方側の端部に外嵌する。このとき図6に示すように、両内閉塞体35、46による第1内回路33および第2内回路44それぞれの閉鎖が解除されることで、第1内回路33と第2内回路44とが接続され、接続内回路52が形成される。
【0042】
ここで図6に示すように、接続内回路52および接続外回路53が形成された状態では、嵌合管部29および第2内管41と、第1外管24および第2外管42と、が各別に嵌合するとともに、付勢管部28と第2内管41とが配管軸O方向に当接する。このとき、第1外管24の第2支持部26と、第2外管42の一方側の開口端縁42cと、は、配管軸O方向に離間している。
【0043】
その後、両多重管21、22を配管軸O方向にさらに接近移動させると、図7に示すように、嵌合管部29と第2内管41とが、配管軸O方向に摺動するとともに、付勢管部28および第2内管41が、第1外付勢部材31を圧縮変形させながら、第1外管24に対して一方側に向けて移動し、付勢管部28の第1外管24からの一方側に向けた突出量が大きくなる。またこのとき、第1外管24の第2支持部26と、第2外管42の一方側の開口端縁42cと、が、配管軸O方向に接近しながら、第1外管24と第2外管42とが配管軸O方向に摺動して、この多重配管20の長さが短くなる。
【0044】
なお第1外管24の第2支持部26と、第2外管42の一方側の開口端縁42cと、が互いに当接して係合すると、両多重管21、22の更なる接近移動が規制される。これらの第1外管24の第2支持部26および第2外管42の一方側の開口端縁42cは、両多重管21、22が配管軸O方向に接近移動するときに互いに係合することで、両多重管21、22の更なる接近移動を規制する規制部54を構成する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る多重配管20によれば、接続内回路52および接続外回路53が形成された状態で、この多重配管20の長さを短くすることが可能になり、多重配管20の長さを調整することができる。
これにより、例えば本実施形態の接続構造10において、ロッド11に配管軸O方向に多少の製造誤差が生じた場合などであっても、多重配管20の長さを調整してこの製造誤差の影響を小さくすることができる。
【0046】
なお本実施形態のように、付勢管部28および第2内管41が、第1外管24に対して一方側に向けて移動するときに、付勢管部28が、第1外管24から一方側に向けて突出している場合、この付勢管部28の第1外管24からの突出量に基づいて、接続内回路52および接続外回路53が形成された状態であるか否かを判別することができる。
【0047】
ところで、この多重配管20のような、第1内管23が、互いに配管軸O方向に摺動可能に嵌合された付勢管部28および嵌合管部29を有する構成ではなく、例えば第1外管24や第2外管42が、互いに配管軸方向に摺動可能に嵌合された2つの管状体を有するような構成では、多重配管20の外側からこれらの両管状体の間に例えばセメントミルク等の異物が侵入して固着すること等により、両管状体の配管軸O方向の摺動が意図せず規制されるおそれがある。
これに対して、この多重配管20では、互いに配管軸方向に摺動可能に嵌合された付勢管部28および嵌合管部29を有する第1内管23が、第1外管24により径方向の外側から囲繞されているので、この多重配管20の外部から第1内管23に異物を到達させ難くすることができる。これにより、第1内管23の両管部28、29の配管軸O方向の摺動が意図せず規制されるのを抑えて両管部28、29を配管軸O方向に確実に摺動させることが可能になり、多重配管20の長さを円滑に調整することができる。
【0048】
また嵌合管部29が、第1外管24に対して他方側に向けて付勢されることで第1外回路34を閉鎖しているので、両多重管21、22を接近移動させる前の状態で、第1外回路34を通して第1内管23に異物が到達するのを抑制することが可能になり、両管部28、29の配管軸O方向の摺動が意図せず規制されるのを確実に抑えることができる。しかも、嵌合管部29自体が、第1外回路34を閉鎖しているので、第1外回路34を閉鎖するために別途部材を設ける必要がなく、この多重配管20の部品点数の増加を抑えることができる。
また、嵌合管部29が一方側に向けて押し込まれることで、第1外回路34の閉鎖が解除されるので、両多重管21、22が配管軸O方向に接近移動するときに、この嵌合管部29を第2多重管22によって一方側に向けて押し込むことで、第1外回路34の閉鎖を確実に解除することができる。
【0049】
また、第2内管41と第2外管42との間に、外閉塞体47が設けられているので、両多重管21、22を接近移動させる前の状態で、第2外回路45を閉鎖しておくことが可能になり、例えばこの第2外回路45内に異物が入り込むのを抑制すること等ができる。
また、両多重管21、22が配管軸O方向に接近移動するときに、嵌合管部29と外閉塞体47とが、配管軸O方向に当接して押し込み合うので、これらの嵌合管部29と外閉塞体47とを押し込み合わせるときに、嵌合管部29と第2内管41とを嵌合させておくことが可能になり、接続内回路52を確実に形成することができる。
【0050】
また、第1外管24に支持部25、26が設けられているので、付勢管部28および嵌合管部29に作用する付勢力を支持部25、26で各別に受け止めて、付勢管部28および嵌合管部29のうちの一方に作用する付勢力が、他方に影響するのを抑制することが可能になり、付勢管部28および嵌合管部29に作用する付勢力の調整を容易なものとすることができる。
【0051】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明の変形例では、第1内閉塞体35、第2内閉塞体46および外閉塞体47がなくてもよい。
【0052】
また前記実施形態では、嵌合管部29が、第1外管24に対して他方側に向けて付勢されることで第1外回路34を閉鎖し、一方側に向けて押し込まれることで第1外回路34の閉鎖を解除するが、本発明はこれに限られない。例えば本発明の変形例では、嵌合管部が、第1外回路を閉鎖しなくてもよい。
【0053】
また前記実施形態では、付勢管部28および第2内管41が、第1外管24に対して一方側に向けて移動するときに、付勢管部28が、第1外管24から一方側に向けて突出しているが、本発明はこれに限られない。例えば本発明の変形例では、付勢管部として、前記実施形態における付勢管部28よりも配管軸方向に短い構成を採用し、付勢管部および第2内管が、第1外管に対して一方側に向けて移動するときに、付勢管部が、第1外管から一方側に向けて突出しなくてもよい。
【0054】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
20 多重配管
21 第1多重管
22 第2多重管
23 第1内管
24 第1外管
25、26 支持部
28 付勢管部
29 嵌合管部
33 第1内回路
34 第1外回路
41 第2内管
42 第2外管
44 第2内回路
45 第2外回路
52 接続内回路
53 接続外回路
54 規制部
O 配管軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7