(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、車両の意匠性を向上させるために、ヘッドランプの透光性部材が前照灯用光源の前方から後方に延びるように形成されることも増えてきた。しかし、本発明者の検討によると、このようなヘッドランプでは、透光性部材の内側面に発生した結露が解消されるまでの時間が長くなる傾向にある。
【0007】
透光性部材の内面に結露が長時間残っていると、前照灯用光源からの光がほとんど透過しない部位に結露が位置していたとしても、結露の発生によるヘッドランプの外観の低下の継続がヘッドランプの性能の低下を使用者に印象づけることがある。また、前照灯用光源よりも車両後方側に位置する空間にポジションランプ用光源等が設置されているヘッドランプでは、これらの光源からの信号の視認性が結露によって低下するおそれもある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、前照灯用光源と、前照灯用光源の前方から後方に延びる透光性部材とを備えた車両用灯具において、透光性部材の内側面に発生した結露を短時間で解消することが可能な車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
車両の前端部の側端に取り付けられる車両用灯具であって、
ハウジングと、
内部に灯室を形成するように前記ハウジングに装着された透光性部材と、
前記灯室内に配置され、前記透光性部材を通して光を前記車両の前方側へと出射する前照灯用光源と、
第1通気部材及び第2通気部材を備え、
前記前照灯用光源の光軸と直交し、かつ前記前照灯用光源の前記前方側の端部を通る平面を第1基準面、前記光軸を含み、かつ鉛直方向に沿って広がる平面を第2基準面、と定義したとき、
前記灯室は、前記第1基準面より前記前方側に位置し、かつ前記第2基準面より前記車両の車幅方向の内側に位置する第1灯室部と、前記第1基準面より前記車両の後方側に位置し、かつ前記第2基準面より前記車幅方向の外側に位置する第2灯室部と、を有し、
前記透光性部材は、前記第1基準面より前記前方側に位置すると共に前記第1灯室部に面する前方部から、前記第1基準面より前記後方側に位置すると共に前記第2灯室部に面する後方部に延び、
前記第1通気部材は、前記ハウジングにおける前記第1灯室部に面する部分に設けられた第1開口部に装着され、
前記第2通気部材は、前記ハウジングにおける前記第2灯室部に面する部分に設けられた第2開口部に装着され、
前記第1通気部材及び前記第2通気部材は、それぞれ防水通気体を備え、
日本工業規格(JIS) L1096に規定されている通気性測定法のA法(フラジール法)に準拠して測定した前記防水通気体の単位面積当たり通気量に、当該防水通気体における通気面積を乗じて通気量を定めたときに、
前記第1通気部材の前記通気量が前記第2通気部材の前記通気量よりも大きい、
車両用灯具、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前照灯用光源よりも後方に延びた透光性部材の内側面に発生した結露を前照灯用光源を点灯してから短時間で解消できる車両用灯具を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明の実施形態を例示するものであって、本発明を説明の対象に限定する趣旨で記述するものではない。
【0013】
図1に示すように、乗用車である車両100の前端部には、通常、車両用灯具としてヘッドランプ101が取り付けられる。ヘッドランプ101は、車両100の前端部の両側端部に1つずつ配置されている。ヘッドランプ101は、ハイビーム(走行用前照灯)用光源、ロービーム(すれ違い前照灯)用光源、ポジションランプ(車幅灯)用光源等の複数の光源を備えていることが多いが、図示及び説明の簡略化のため、以下では基本的にロービーム用光源のみを図示する。
【0014】
図2A及び
図3に示すように、ヘッドランプ101は、ハウジング102と、内部に灯室110を形成するようにハウジング102に装着された透光性部材103と、灯室110内に配置され、透光性部材103を通して光を車両100の前方側へと出射する前照灯用光源104とを備えている。
図4Aに示すように、灯室110内の空間を区分して記述するために、前照灯用光源104の光軸Lと直交し、かつ前照灯用光源104の先端Tを通る平面を第1基準面P1と定義し、光軸Lを含み、かつ鉛直方向に沿って広がる平面を第2基準面P2と定義する。この定義に基づいて記述すると、灯室110内には、少なくとも、第1基準面P1より車両100の前方側(
図4Aにおける上方)に位置し、かつ第2基準面P2より車両100の車幅方向の内側(
図4Aにおける右方)に位置する第1灯室部110Aと、第1基準面P1より車両100の後方側(
図4Aにおける下方)に位置し、かつ第2基準面P2より車幅方向の外側(
図4Aにおける左方)に位置する第2灯室部110Bとが含まれている。
【0015】
透光性部材103は、第1基準面P1より車両100の前方側に位置すると共に第1灯室部110Aに面する前方部103Aから、第1基準面P1及び第2基準面P2と交差して、第1基準面P1より車両100の後方側に位置すると共に第2灯室部110Bに面する後方部103Bにまで広がっている。
【0016】
ヘッドランプ101は、第1灯室部110Aに面するハウジング102に設けられた第1開口部102Aに装着された第1通気部材105と、第2灯室部110Bに面するハウジング102に設けられた第2開口部102Bに装着された第2通気部材106とを備えている。第1通気部材105及び第2通気部材106は、共に防水通気体を備えている。防水通気体は、典型的には防水通気膜であるが、これに限らず、防水通気機能を有する限り、樹脂の多孔質成形体等の多孔質の構造体であってもよい。図示した形態では、第1通気部材105は、第1灯室部110Aと灯室の外部(典型的にはエンジンルーム)とを当該部材105の防水通気膜を介して導通させ、第2通気部材106は、第2灯室部110Bと灯室の外部とを当該部材106の防水通気膜を介して導通させている。
【0017】
泥の付着その他の要因によって通気部材の通気性が損なわれる可能性を考慮すると、複数の通気部材をハウジングに設置しておくことが望ましい。大型化したヘッドランプでは、灯室の内外の圧力差を迅速に解消するためにも、複数の通気部材の設置が望まれる。しかし、通気部材を設けることができるハウジング102のスペースには限りがある上、ハウジング102の中央部には前照灯用光源104等を取り付ける必要がある。このため、複数の通気部材を配置するべき場合は、ハウジング102の第1灯室部110A及び第2灯室部110Bに面する部分にそれぞれ通気部材を配置することが適切である。
【0018】
第1通気部材105の通気量は、第2通気部材106の通気量より大きい。ここで、通気部材の通気量は、JIS L1096に規定されている通気性測定法のA法(フラジール法)に準拠して測定した防水通気膜の単位面積当たり通気量に、当該防水通気膜の通気面積を乗じて算出する。通気面積は、防水通気膜においてその断面方向に空気が通過できる領域の面積を意味する。なお、通気量が正の値をとらない部材、すなわちフラジール法で用いられる気体である空気が透過できない部材は、本明細書では「通気部材」として扱わない。第1通気部材105及び第2通気部材106は、共に「通気部材」であって、通気量は正の値となる。
【0019】
灯室110内に湿潤な空気が保持された状態で透光性部材103が外気によって冷やされると、透光性部材103の内側面には結露が生じる。この状態で前照灯用光源104が点灯されると、透光性部材103の温度が上昇を始める。この温度上昇に伴って、結露は水蒸気として蒸発し、解消へと向かう。このとき、前照灯用光源104からの光は、透光性部材103の後方部103Bよりも前方部103Aを先行して暖めていく。このため、第2灯室部110Bよりも先に第1灯室部110Aにおいて、結露から生じた水蒸気が発生する。第1灯室部110A内に発生した水蒸気は、温度上昇に伴う灯室110内の圧力の上昇により生じた気流に乗って、外部への通気路、具体的には第1通気部材105又は第2通気部材106を通過して外部へと放出される。
【0020】
第1灯室部110Aで発生した水蒸気のうち、第2通気部材106へと向かう気流に乗った水蒸気は、第2灯室部110Bに流入する。このとき、第2灯室部110Bに面する透光性部材103の後方部103Bの温度が十分に上昇していないと、流入した水蒸気の一部が後方部103Bにおいて再び凝結し、後方部103Bにおける結露の一部となる。後方部103Bにおいて解消するべき結露の量が増加すると、透光性部材103の内側面全体から結露が解消するまでの時間が長くなる。
【0021】
本発明者の検討によると、第1通気部材105の通気量を第2通気部材106の通気量よりも大きく設定し、第1通気部材105から放出される水蒸気の量を増加させることにより、透光性部材103の内側面から結露が解消するまでの時間の長期化を避けることができる。
【0022】
灯室110内で生じた水蒸気を第1通気部材105から放出するためには、第2通気部材106の通気量に対する第1通気部材105の通気量の比は大きいことが好ましい。この比は、好ましくは2倍以上であり、より好ましくは3倍以上であり、さらに好ましくは5倍以上であり、特に好ましくは10倍以上であり、とりわけ好ましくは50倍以上であり、場合によっては80倍以上である。ただし、実際には、第1通気部材105を設置できるハウジング102のスペースには限りがあり、望ましい通気量の総量を達成するためにはその総量を第2通気部材106にも分配するべき場合が多い。これを考慮すると、上記の比は、例えば10000倍以下、さらには5000倍以下、場合によっては3000倍以下であってもよい。
【0023】
意外な結果ではあるが、通気量の総量が相対的に小さい第1通気部材105と第2通気部材106との組み合わせであっても、上記の比を適切に調整することにより、通気量の総量が相対的に大きい第1通気部材105と第2通気部材106との組み合わせよりも迅速に結露を解消することが可能となる。
【0024】
なお、開口部102A、102Bは、
図4Aに矢印で示したように光軸Lに平行な方向にハウジング102を貫通する貫通孔の開口部であるが、開口部102A、102Bの向きはこれに限らない。貫通孔は、例えば光軸Lに直交する方向にハウジング102を貫通するように設けられていてもよい。
【0025】
前照灯用光源104は、ロービーム用光源であって、例えばプロジェクタ式のHID(High Intensity Discharge)バルブである。前照灯用光源104は、前方に突出するようにハウジング102の前面の中央部に装着されている。前照灯用光源104から照射される光の光軸Lは、車両100の車軸方向に平行に設定される。前照灯用光源104の先端Tは、バルブユニットにおいて最も車両前方側に位置する部位である。なお、前照灯用光源104は、HIDバルブに限定されず、白熱電球、ハロゲンバルブ、LED(Light Emitting Diode)バルブ等であってもよい。また、前照灯用光源104は、プロジェクタ式のバルブに限定されず、リフレクタ式のバルブであってもよい。バルブの種類及び方式によらず、バルブの先端Tはバルブユニットにおいて最も車両前方側に位置する部位として定義される。
【0026】
ヘッドランプには複数の前照灯用光源が配置されることがある。複数の前照灯用光源を備えるヘッドランプにおいては、上記で述べた位置及び通気性の関係を満たす第1通気部材及び第2通気部材を有する前照灯用光源が少なくとも1つ存在すればよい。この場合は、その前照灯用光源が点灯したときに、結露が解消するまでの時間の長期化が避けられることになる。もっとも、すべての前照灯用光源について、上記で述べた位置及び通気性の関係を満たす第1通気部材及び第2通気部材が存在することがより好ましい。この場合は、いずれの前照灯用光源を点灯したときにも、結露が解消するまでの時間の長期化が避けられることになる。
【0027】
図4Bに示すヘッドランプ201は、ロービーム用の前照灯用光源104A(第1前照灯用光源)と、ハイビーム用の前照灯用光源104B(第2前照灯用光源)とを備えている。第2前照灯用光源104Bの先端TBは、第1前照灯用光源104Aの先端TAより前方(
図4Bの上方)に位置し、第2前照灯用光源104Bの光軸LBは、第1前照灯用光源104Aの光軸LAより車両100の車幅方向の内側(
図4Bの右側)に位置している。光源LA及び光源LBは互いに平行である。
図4Bに示すように、第1通気部材105及び第2通気部材106は、これらの前照灯用光源104A、104Bのいずれを基準としても、上記の関係を満たしている。
【0028】
具体的には、灯室110内において第1通気部材105が導通している第1灯室部110Aは、第1前照灯用光源104Aについての第1基準面P1Aよりも車両前方側に位置する第2前照灯用光源104Bについての第1基準面P1B、すなわち最も車両前方側に位置する第1基準面、よりもさらに車両前方側に位置し、第1前照灯用光源104Aについての第2基準面P2Aよりも車幅方向の内側に位置する第2前照灯用光源104Bについての第2基準面P2B、すなわち最も車幅方向の内側に位置する第2基準面、よりもさらに車幅方向の内側に位置している。また、灯室110内において第2通気部材106が導通している第2灯室部110Bは、第2前照灯用光源104Bについての第1基準面P1Bよりも車両後方側に位置する第1前照灯用光源104Aについての第1基準面P1A、すなわち最も車両後方側に位置する第1基準面、よりもさらに車両後方側に位置し、第2前照灯用光源104Bについての第2基準面P2Bよりも車幅方向の外側に位置する第1前照灯用光源104Aについての第2基準面P2A、すなわち最も車幅方向の外側に位置する第2基準面、よりもさらに車幅方向の外側に位置している。ヘッドランプ201においても、第1通気部材105の通気量は第2通気部材106の通気量よりも大きく設定されている。
【0029】
なお、ヘッドランプには、前照灯用光源104以外の光源として、図示しないポジションランプ用光源がさらに配置されることが多い。しかし、前照灯用光源以外の光源は、放出されるエネルギーが小さいことから、結露解消の作用に劣る。
【0030】
ハウジング102は、例えばPP(ポリプロピレン)等の合成樹脂により形成することができる。ハウジング102は、通常、不透明な材料により形成すれば足りる。透光性部材103は、ハウジング102の前面を覆うカバー部材である。透光性部材103は、PC(ポリカーボネイト)等の透光性を有する透明な合成樹脂により形成される。ハウジング102と透光性部材103とにより囲まれる灯室110内には、灯室内を部分的に仕切るエクステンションが配置されていてもよい。ただし、エクステンションは、第1灯室部110Aと第2灯室部110Bとが互いに連通するように配置される。
【0031】
第1通気部材105及び第2通気部材106は、それぞれ防水通気膜を備えている。防水通気膜は、通気部材を通過する気体が通過するように配置される。防水通気膜は、気体の透過を許容し、水の透過を阻止する膜であれば、その構造や材料に特段の制限はないが、樹脂多孔質膜が適している。
【0032】
樹脂多孔質膜の材料には、公知の延伸法、抽出法によって製造することができるフッ素樹脂多孔質体やポリオレフィン多孔質体を用いることができる。フッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体を例示できる。ポリオレフィンを構成するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、4−メチルペンテン−1,1ブテン等が挙げられる。ポリオレフィンは、これらのモノマーを単体で重合、又は共重合して得たポリオレフィンであってよい。また、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリ乳酸等を用いたナノファイバーフィルム多孔体等を用いることもできる。樹脂多孔質膜としては、小面積で通気性が確保でき、異物の侵入を阻止する機能の高いPTFE延伸多孔質膜が好ましい。
【0033】
樹脂多孔質膜は、補強層と積層した積層体の状態で防水通気膜として使用してもよい。補強層は、樹脂多孔質膜より通気性に優れていることが好ましい。補強層は、例えば、樹脂又は金属からなる、織布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ、フォーム、多孔体等である。樹脂多孔質膜と補強層との接合は、接着剤ラミネート、熱ラミネート、加熱溶着、超音波溶着、接着剤による接着等により実施できる。
【0034】
第1通気部材105及び第2通気部材106は、防水通気膜と共に、防水通気膜をハウジングに固定するために固定部材を備えていることが好ましい。好ましい固定部材の一例は両面テープである。両面テープを用いた通気部材は、例えば、平面視で円形である防水通気膜と、平面視でリング状の両面テープとをこれらの外周が一致するように互いに接合して得ることができる。
【0035】
好ましい固定部材の別の例は、防水通気膜を支持する支持面を有する樹脂部材である。樹脂部材を用いた通気部材1を
図6及び
図7に例示する。通気部材1は、ハウジング102の背面102Aから円筒状に突出した首部102Cに設けられる。首部102Cの先端には、ハウジング102Aの開口部102Bが形成される。通気部材1は、内側部材2と外側部材3とを備えている。内側部材2は、その内周部が首部102Cの外周部に接するように首部102Cに装着される円筒状の筒状部材であり、その内部にハウジング102の内外の通気経路の一部となる貫通孔2Aを有する。貫通孔2Aは、首部102に装着される第1開口部2Cと、第1開口部2Cと反対側に位置する第2開口部2Dとを有している。第2開口部2Dを囲む内側部材2の端部の端面上には、第2開口部2Dを塞ぐように防水通気膜10が支持されている。外側部材3は、内側部材2の外周部に装着される有底筒状の部材であり、内側部材2に装着された状態で、内側部材2の外周部の一部を覆う側壁部3Bと防水通気膜10を覆う底部3Cとを備えている。外側部材3は、内側部材2の外周部及び防水通気膜10との間に連通経路8、9がそれぞれ形成されるように、内側部材2に装着される。連通経路8、9は、ハウジングの外部へと導通する通気経路4を構成する。
【0036】
内側部材2は、例えば、エラストマー、より具体的には熱可塑性又は熱硬化性のエラストマーにより構成される。内側部材2は、貫通孔2Aを有する円筒状の筒部本体2Bと、筒部本体2Bの外周面の中央部分から周方向に等間隔に突出する4つの突出部2Eとを備えている。突出部2Eを形成した部分の外径は、外側部材3の内径よりもわずかに大きくなっている。このため、外側部材3を内側部材2の外周面に沿って押し込むと、突出部2Eが弾性変形し、連通経路9が確保された状態で外側部材3が内側部材2に固定される。
【0037】
外側部材3は、例えば、樹脂、より具体的にはPP(ポリプロピレン)等のエラストマーではない熱可塑性樹脂により構成される。外側部材3の底部3Cの内周側の周縁部には3つの台部3Dが周方向に等間隔で形成されている。台部3Dは、内側部材2と当接することによって、底部3Cと防水通気膜10との間に連通経路8を確保する。外側部材3の側壁部3Bの開口部3Aの内周側の周縁部には、3つの係合片3Eが内側に突出して等間隔で形成されている。係合片3Eは、内側部材2の端部に係合して外側部材3の脱落を防止する。
【0038】
上述のように、通気面積は、防水通気体である防水通気膜において気体(空気)が通過できる領域(通気領域)の面積である。通気部材1の防水通気膜10の通気面積は、内側部材2の第2開口部2Dの面積(貫通孔2Aの内径により規定される面積)である。言い換えると、防水通気膜10の通気面積は、防水通気膜10の主面(気体流入又は流出面)の面積から、断面方向(防水通気膜10の主面に直交する方向)に沿って空気が通過できない内側部材2に接合された領域の面積を差し引いて求められる。防水通気膜10は、複数に区画された通気領域を有していてもよい。この場合は、各通気領域の面積の合計を通気面積として取り扱う。
【0039】
防水通気膜等の防水通気体の通気量は、特に制限されないが、フラジール法による測定値により表示して0.010〜500cm
3/cm
2/s、特に0.030〜300cm
3/cm
2/sが好ましい。
【0040】
第1通気部材の通気量は、0.5〜220cm
3/s、特に0.5〜133cm
3/sが好ましい。また、第2通気部材の通気量は、0.004〜2.0cm
3/s、特に0.010〜2.0cm
3/sが好ましい。第1通気部材の通気量と第2通気部材の通気量との合計は、0.5cm
3/s以上、より具体的には、0.5〜220cm
3/s、さらには1.0〜150cm
3/sが好ましい。特に2.0〜120cm
3/sが好ましい。上述のように通気部材の通気量は、フラジール法による測定値(cm
3/cm
2/s)に面積(cm
2)を乗じて定める。
【0041】
第1通気部材及び第2通気部材は、それぞれ複数の部材により構成されていてもよい。この場合は、複数の部材(通気サブ部材)のそれぞれについて通気量を算出し、その通気量の合計を第1(第2)通気部材の通気量とする。このように、第1通気部材及び第2通気部材は、少なくとも1つの通気(サブ)部材から構成されている。この場合においても、第1通気部材を構成する第1通気サブ部材の通気量の合計が、第2通気部材を構成する第2通気サブ部材の通気量の合計よりも大きくなるように設定する。
【0042】
再び
図4Aを参照し、ハウジングに配置される通気部材の位置について説明する。ハウジング102には、第1灯室部110A又は第2灯室部110Bに面する部分のみに開口部が形成され、これらの開口部のみに通気部材105、106が装着されていてもよい。
【0043】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0044】
まず、透光性部材の内側面に発生した結露が解消するまでの時間を測定するための試験方法について説明する。
【0045】
試験には、
図1及び
図2Aに示した形状を有するヘッドランプ101を用いた。ヘッドランプ101の灯室110内には、
図2Bに示した位置に、第1温湿度計A、第2温湿度計B及び第3温湿度計Cを設置した。第1温湿度計A及び第3温湿度計Cは、第1通気部材105及び第2通気部材106が装着される第1開口部102B及び第2開口部102Cの近傍の透光性部材103の内側面上、具体的には透光性部材103の前方及び後方の偶角部近傍の内側面上に配置した。第2温湿度計Bは、第1温湿度計Aと第3温湿度計Cとの間、すなわち透光性部材103の中央部の内側面上に配置した。
【0046】
ヘッドランプ101の図示しない開口部から、前照灯用光源(バルブユニット)104及びこれに接続したランプソケットを取り外し、この開口部において灯室110と外部空間とを連通させた。
【0047】
次いで、恒温恒湿槽(温度40℃、相対湿度0%)内でヘッドランプ101を保持した状態で2時間放置し、灯室110を乾燥させた。引き続き、恒温恒湿槽にヘッドランプ101を入れた状態を維持しながら、恒温恒湿槽の温度を40℃、相対湿度を95%に調整し、2時間放置し、灯室110に湿潤な空気を流入させた。放置後、この恒温恒湿槽内でヘッドランプ101の上記開口部にバルブユニットとランプソケットとを取り付けて上記開口部を塞いだ。
【0048】
次いで、ヘッドランプ101を恒温恒湿槽から取り出し、注水試験装置にセットし、注水試験装置を作動することによって、10℃の純水をヘッドランプ101全体に30秒間散水した。散水を受け、透光性部材103の内側面には結露が発生した。
【0049】
散水停止後、ロービーム用光源である前照灯用光源104を点灯した。この状態を維持しながら、第1温湿度計A、第2温湿度計B及び第3温湿度計Cによって灯室110内の温度及び湿度を測定し、前照灯用光源104を点灯してから透光性部材103の内側面に発生した結露が解消するまでの時間を計測した。結露が解消したかの判断は、透光性部材103の外部からの目視により実施した。また、測定された温度及び湿度から水蒸気量を算出した。
【0050】
なお、本実施形態では、防水通気体として防水通気膜を用いた場合について説明したが、上述のように、防水通気体は樹脂の多孔質成形体であってもよい。樹脂の多孔質成形体としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂の成形多孔体が好適である。
【0051】
(実施例1〜2、比較例1〜3)
第1通気部材105及び第2通気部材106として、通気量が表1に示す値であるキャップシール(日東電工株式会社製)を用いた。キャップシールの構造は、
図6及び
図7に示したとおりである。これらの通気部材には、防水通気膜としていずれもPTFE延伸多孔質膜が用いられている。結露が解消するまでの時間は、表1に示したとおりとなった。
【0053】
図5に、比較例2について測定した温度と水蒸気量との関係を示す。
図5に示すように、比較例2では、第3温湿度計Cが設置された位置において、時間と共に水蒸気量が上昇し、
図5に示す△印が飽和水蒸気曲線を上回る位置に長時間とどまった。他方、第1温湿度計Aが設置された位置においては、時間と共に温度が上昇していった。水蒸気は、透光性部材の103の前方部103Aから供給され、これが後方に流れ、後方部103B近傍において飽和水蒸気量を大きく上回る水蒸気が出現したと考えられる。
【0054】
図示は省略するが、比較例1、3においても、第3温湿度計Cが設置された位置において、時間と共に水蒸気量が上昇し、飽和水蒸気量を上回る現象が確認された。比較例1では、第1〜第3温湿度計A〜Cが設置されたすべての位置において、水蒸気量が一時的に飽和水蒸気量を上回った。ただし、比較例3では、第3温湿度計Cが設置された位置における水蒸気量は、比較例1、2と比較して大きく上昇せず、飽和水蒸気量からの水蒸気量の超過は僅かであった。これに対し、実施例1、2では、第3温湿度計Cが設置された位置において、水蒸気量が飽和水蒸気量を上回ることはなかった。