特許第6173196号(P6173196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日揮触媒化成株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173196
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】ナノサイズゼオライトの合成方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/04 20060101AFI20170724BHJP
   C01B 39/24 20060101ALI20170724BHJP
   C01B 39/38 20060101ALI20170724BHJP
   C01B 37/02 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   C01B39/04
   C01B39/24
   C01B39/38
   C01B37/02
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-252939(P2013-252939)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-139124(P2014-139124A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2016年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2012-279211(P2012-279211)
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094341
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 政久
(72)【発明者】
【氏名】脇原 徹
(72)【発明者】
【氏名】多々見 純一
(72)【発明者】
【氏名】黒田 隆三
(72)【発明者】
【氏名】小松 通郎
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−519276(JP,A)
【文献】 特開昭55−167122(JP,A)
【文献】 特表2014−501683(JP,A)
【文献】 特表2005−536437(JP,A)
【文献】 特開平05−221629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(a)〜(f)からなるゼオライトの合成方法であって、
工程(f)で得られるゼオライトの結晶度(C)が50%以上であり、工程(d)後のゼオライトの結晶度(C)との比(C)/(C)が1.2〜5の範囲にあり、工程(d)後のゼオライトの比表面積(S)と工程(f)で得られるゼオライトの比表面積(S)との比(S)/(S)が1.2〜5の範囲にあることを特徴とするゼオライトの合成方法。
(a)(I)構造規制体源、(II)アルミナ源、(III)シリカ系酸化物源および(IV)水源からなるゼオライト合成用スラリーを調製する工程
(b)50〜300℃で水熱処理する工程
(c)ゼオライト粒子と合成母液とを分離する工程
(d)ゼオライト粒子を平均粒子径(D)が0.02〜0.5μmの範囲となるまで微細化する工程
(e)微細化ゼオライト粒子と合成母液とを混合する工程
(f)50〜300℃で水熱処理する工程
【請求項2】
前記工程(a)のゼオライト合成用スラリーの各原料のモル比が酸化物で表して下記の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のゼオライトの合成方法。
O/Al =2〜30
SiO/Al ≧2
O/Al =50〜2000
(但し、Mは(I)構造規制体を表し、アルカリ金属、有機塩基塩および/または水酸化物、界面活性剤から選ばれる少なくとも1種)
【請求項3】
前記ゼオライトがフォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、β−ゼオライト、MFI型ゼオライト、シリカライトゼオライトから選ばれる少なくとも1種の結晶性アルミノシリケートゼオライトまたはシリケートゼオライトであることを特徴とする請求項1または2に記載のゼオライトの合成方法。
【請求項4】
前記工程(b)の水熱処理後のゼオライトの平均粒子径(D)が0.5〜10μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゼオライトの合成方法。
【請求項5】
前記工程(f)の水熱処理後のゼオライトの平均粒子径(D)が0.05〜0.5μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゼオライトの合成方法。
【請求項6】
前記平均粒子径(D)と前記平均粒子径(D)との比(D)/(D)が0.2〜0.8の範囲にあり、前記平均粒子径(D)と平均粒子径(D)との比(D)/(D)が1±0.2の範囲にあることを特徴とする請求項4または5に記載のゼオライトの合成方法。
【請求項7】
前記工程(b)の水熱処理後のゼオライトの結晶度(C)と前記工程(d)の微細化後のゼオライトの結晶度(C)との比(C)/(C)が0.2〜0.8の範囲にあることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のゼオライトの合成方法。
【請求項8】
前記工程(b)の水熱処理後のゼオライトの比表面積(S)と前記工程(d)の微細化後のゼオライトの比表面積(S)との比(S)/(S)が0.2〜0.9範囲にあることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のゼオライトの合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶度および比表面積の高い微細な粒子径のゼオライトの合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライト(結晶性アルミノシリケートということがある。)は、各種触媒、触媒担体あるいは吸着剤などに広く利用されている。
触媒に用いる場合に、反応物質の種類によっては、ゼオライトの外部比表面積が大きいほど高い反応活性を示すことが知られており、この場合、小粒子径で大きい外部比表面積を有するゼオライトが望まれている。しかしながら、小粒子径のゼオライトは熱的な安定性に劣ることも知られている。
【0003】
一方、小粒子径で平板状のゼオライトは膜の形成に有効で、このため平板状の微細なゼ
オライトの合成が試みられている。
粒子径が小さいフォージャサイト型ゼオライトとしては、例えば、特許文献1:特開平2−116614号公報に、サブミクロンY型ゼオライトおよびその製造法が開示され、特許文献2:特開平10−67514号公報には平均粒子径が0.5μm以下で、アスペクト比2以上の板状体であるフォージャサイト型ゼオライトが開示されているが、粒子径分布が不均一で緻密な膜の形成に必ずしも有効ではなかった。
【0004】
そこで、本願特許出願人は特許文献3:特開2004−315338号公報に、粒子径が小さくてアスペクト比の大きい(薄い)平板状のフォージャサイト型ゼオライトの製造方法を開示している。
この製造方法では、シードがゲル状凝集物である為か、平均粒子径が小さい場合は結晶性が不充分となり、吸着性能あるは触媒性能が不充分となることがあった。また、結晶性が高い粒子では粒子径分布が不均一となり、緻密なゼオライト薄膜の形成が難しくなることがあった。
【0005】
そこで、本願出願人は、特許文献4:特開2008−230886号公報に粒子径分布の均一な平板状のゼオライトの合成方法を開示している。
具体的には、核(種あるいはシードということがある。)発生源として透明性を有する特定組成範囲のシリカ、アルミナ、アルカリ、水源からなるスラリーを用いることを提案している。しかしながら、この方法では、得られるゼオライトは平板状であり、平板状以外のゼオライト、例えば、サイコロ状多面体のゼオライト粒子、棒状多面体のゼオライト粒子を得ることはできず、また、スラリーが希薄であるためにゼオライトの生産性が低く、経済性に難があった。
【0006】
また、本願出願人は、特許文献5:特開2010−126397号公報にシリカ源として珪酸アルカリ水溶液あるいはシリカゾルではなく、珪酸アルカリ水溶液を脱アルカリした珪酸液を用いることによって粒子径がサブミクロンのペンタシル型ゼオライトが合成できることを開示している。
しかしながら、この方法では、シリカを主成分とする微粒のペンタシル型ゼオライトは得られるものの、シリカ以外の成分を多く含むフォージャサイト型ゼオライトは得られず、用途に制限があった。
【0007】
また、本願出願人は、特許文献6:特開2009−155187号公報に、特定範囲のシリカ、アルミナ、アルカリ、水源からなるスラリーを調製し、これを熟成した後、ケイ酸ナトリウムを添加し、水熱処理することによってコロイド状フォージャサイト型ゼオライトが合成できることを開示している。
しかしながら、この方法では、平均粒子径が20〜200nm程度で、粒子径分布が比較的均一なコロイド状フォージャサイト型ゼオライトが合成できるものの、結晶度、比表面積が不十分となる場合があった。
【0008】
また、本願出願人は微細ゼオライトの合成法として、あらかじめ合成したゼオライトを、分散剤を含むアルコール溶媒に分散させて粉砕して微粒子化し、このとき、結晶性は低下するものの、乾燥した微粒子粉末を特定組成のアルミノシリケート溶液に分散させ、ついで加熱下、撹拌処理することによって結晶性が向上した非晶質が少ない微粒のゼオライトの合成方法を開示している。(特許文献7:特開2011−246292号公報)
しかしながら、この方法では、アルコール溶媒を用いること、粉砕処理後乾燥工程を必要とすることから工業的に実施するには改良の余地があった。
【0009】
本発明者等は、結晶度および比表面積が高く、且つ、粒子径が小さく均一なゼオライトを得るべく鋭意検討した結果、ゼオライト合成スラリーを調製し、これを水熱処理して粒子径が大きく、結晶度の高い(母)ゼオライトを合成し、これを(合成)母液と分離し、母ゼオライトを粒子径が1/5程度に微細化し、ついで、分離した母液と混合した後、再び水熱処理することによって粒子径が小さく、結晶度の高いゼオライトが再現性良く合成できることを見出して本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平2−116614号公報
【特許文献2】特開平10−67514号公報
【特許文献3】特開2004−315338号公報
【特許文献4】特開2008−230886号公報
【特許文献5】特開2010−126397号公報
【特許文献6】特開2009−155187号公報
【特許文献7】特開2011−246292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、粒子径が均一で小さく、結晶度の高いゼオライトを再現性よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に関するゼオライトの合成方法は、下記の工程(a)〜(f)からなるゼオライトの合成方法であって、
工程(f)で得られるゼオライトの結晶度(C)が50%以上であり、工程(d)後のゼオライトの結晶度(C)との比(C)/(C)が1.2〜5の範囲にあり、工程(d)後のゼオライトの比表面積(S)と工程(f)で得られるゼオライトの比表面積(S)との比(S)/(S)が1.2〜5の範囲にあることを特徴としている。
(a)(I)構造規制体源、(II)アルミナ源、(III)シリカ系酸化物源および(IV)水源からなるゼオライト合成用スラリーを調製する工程
(b)50〜300℃で水熱処理する工程
(c)ゼオライト粒子と合成母液とを分離する工程
(d)ゼオライト粒子を平均粒子径(D)が0.02〜0.5μmの範囲となるまで微細化する工程
(e)微細化ゼオライト粒子と合成母液とを混合する工程
(f)50〜300℃で水熱処理する工程
【0013】
前記工程(a)のゼオライト合成用スラリーの各原料のモル比が酸化物で表して下記の範囲にあることが好ましい。
O/Al =2〜30
SiO/Al ≧2
O/Al =50〜2000
(但し、Mは(I)構造規制体を表し、アルカリ金属、有機塩基塩および/または水酸化物、界面活性剤から選ばれる少なくとも1種)
前記ゼオライトがフォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、β−ゼオライト、MFI型ゼオライト、シリカライトから選ばれる少なくとも1種の結晶性アルミノシリケートゼオライトまたはシリケートゼオライトであることが好ましい。
【0014】
前記工程(b)の水熱処理後のゼオライトの平均粒子径(D)が0.5〜10μmの範囲にあることが好ましい。
前記工程(f)の水熱処理後のゼオライトの平均粒子径(D)が0.05〜0.5μmの範囲にあることが好ましい。
前記平均粒子径(D)と前記平均粒子径(D)との比(D)/(D)が0.2〜0.8の範囲にあり、前記平均粒子径(D)と平均粒子径(D)との比(D)/(D)が1±0.2の範囲にあることが好ましい。
【0015】
前記工程(b)の水熱処理後のゼオライトの結晶度(C)と前記工程(d)の微細化後のゼオライトの結晶度(C)との比(C)/(C)が0.2〜0.8の範囲にあることが好ましい。
前記工程(b)の水熱処理後のゼオライトの比表面積(S)と前記工程(d)の微細化後のゼオライトの比表面積(S)との比(S)/(S)が0.2〜0.9範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、結晶度および比表面積の高い微細な粒子径のゼオライトを合成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
ゼオライトの合成方法
本発明に関するゼオライトの合成方法は、下記の工程(a)〜(f)からなるゼオライトの合成方法であって、
工程(f)で得られるゼオライトの結晶度(C)が50%以上であり、工程(d)後のゼオライトの結晶度(C)との比(C)/(C)が1.2〜5の範囲にあり、工程(d)後のゼオライトの比表面積(S)と工程(f)で得られるゼオライトの比表面積(S)との比(S)/(S)が1.2〜5の範囲にあることを特徴としている。
(a)(I)構造規制体源、(II)アルミナ源、(III)シリカ系酸化物源および(IV)水源からなるゼオライト合成用スラリーを調製する工程
(b)50〜300℃で水熱処理する工程
(c)ゼオライト粒子と合成母液とを分離する工程
(d)ゼオライト粒子を平均粒子径(D)が0.02〜0.5μmの範囲となるまで微細化する工程
(e)微細化ゼオライト粒子と合成母液とを混合する工程
(f)50〜300℃で水熱処理する工程
【0018】
工程(a)
ゼオライト合成用スラリーを調製する。
ゼオライト合成用スラリーは(I)構造規制体源、(II)アルミナ源、(III)シリカ系酸化物源および(IV)水源からなる。
本発明で対象とするゼオライトは、フォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、β−ゼオライト、MFI型ゼオライト、シリカライトから選ばれる少なくとも1種の結晶性アルミノシリケートゼオライトまたはシリケートゼオライトであることが好ましい。
【0019】
(I)構造規制体源
構造規制体源としては、合成するゼオライトの種類によっても異なるが、従来公知のものを用いることができ、アルカリ金属、有機塩基塩および/または水酸化物、界面活性剤等が挙げられる。
アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
有機塩基塩および/また水酸化物としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ジベンジルジメチルアンモニウム等の各種塩(但し、塩化物等、臭化物を除く)、水酸化物およびこれらの混合物が挙げられる。
また、界面活性剤としてはカチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
例えば、カチオン性界面活性剤としてトリメチルセチルアンモニウム、トリメチルステアリルアンモニウム、トリメチルミリスチルアンモニウム、トリエチルセチルアンモニウム、トリエチルステアリルアンモニウム、トリエチルミリスチルアンモニウム、ジメチルジセチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム、ジメチルジミリスチルアンモニウム等のハロゲン化水素酸塩、硫酸塩、カルボン塩および水酸化物等から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
また、非イオン性界面活性剤としては、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーEOPOEO(m=33〜70,n=5〜26)、Tween20、Tween40、Tween60の様なポリエチレンオキシド長鎖脂肪酸エステル、Brij30、Brij35、Brij48の様なポリエチレンオキシド長鎖脂肪エーテル、Dodecyl-B-D-maltopyranosideの様な糖類長鎖アルキルエーテル、Triton x-100の様なポリエチレンオキシドオクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0020】
(II)アルミナ源
アルミナ源としては、合成するゼオライトの種類によっても異なるが、従来公知のものを用いることができ、例えば、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩、アルミニウムイソポロポキシドの様なアルコキシド、アルミニウムアセチルアセトナートの様な錯化合物が挙げられる。なお、ゼオライトの種類によっては、アルミナ源を使用する必要がない場合があり、また、後述する(III)シリカ系酸化物源に必要量のアルミナ源を含む場合もアルミナ源を使用する必要がない場合がある。
なお、アルミナ源としては、ゼオライトの種類によっても異なるが、アルミナ以外にガリウム酸化物、鉄酸化物を含んで意味している。
【0021】
(III)シリカ系酸化物源
シリカ系酸化物源としては、合成するゼオライトの種類によっても異なるが、従来公知のものを用いることができ、例えば、シリカ源としてはシリカゾル、アルコキシドあるいはアエロジルのようなシリカ微粉末を用いることができる。
また、ゼオライトの種類によってはシリカ以外の酸化物を含んでいてもよく、例えば、亜鉛酸化物、ゲルマニウム酸化物、錫酸化物、ジルコニウム酸化物、等が挙げられる。
【0022】
ゼオライト合成用スラリーの前記各原料のモル比は酸化物で表して下記の範囲にあることが好ましい。
O/Alは2〜30、さらには2〜25の範囲にあることが好ましい。(但し、Mは(I)構造規制体を表し、アルカリ金属、有機塩基塩および/または水酸化物、界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である。
なお、本発明ではMO/Alを調整するとき、前記アルカリ金属、有機塩基塩(水酸化物)を中和するために硫酸、硝酸等の酸中和剤を必要に応じて用いた場合は、中和されたMO分を減じたMO/Alを意味している。
O/Alが前記範囲にない場合は、ゼオライトの種類によっては結晶化しない場合があり、結晶化した場合でも結晶性が不充分であったり、結晶化に長時間を要する場合がある。
【0023】
つぎに、SiO/Alは2以上、さらには3〜130の範囲にあることが好ましい。
SiO/Alが2未満の場合は、通常のアルミノシリケートゼオライトは得られず、SiO/Alが130を超えると、実質的にシリカからなるゼオライトとなり、吸着剤、触媒担体としては有用であるが、触媒としての用途に制限がある。
【0024】
つぎに、HO/Alは50〜2000、さらには80〜1500の範囲にあることが好ましい。
O/Alが50未満の場合は、固形分としての濃度が高く、後述する工程(c)で、生成ゼオライトと合成母液の分離が困難な場合があり、分離できても合成母液の回収効率が低下し、後述する工程(e)で微細化ゼオライト粒子と合成母液とを混合しても、組成が大きくかい離し、再結晶化しない場合や、結晶化したとしても結晶性、比表面積の向上効果が充分得られない場合がある。
O/Alが2000を超えると、後述する工程(c)での合成母液の回収率は高くなるものの、結晶化に長時間を要したり、収率が低下し、生産効率、生産性が低下する問題がある。
【0025】
工程(b)
ついで、50〜300℃、好ましくは100〜250℃で水熱処理する。
水熱処理温度範囲はゼオライトの種類によっても異なり、ゼオライトの種類に許容される従来公知の温度を採用することができる。
フォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライトでは概ね50〜100℃の範囲であり、モルデナイト型ゼオライトでは概ね80〜200℃の範囲であり、β−ゼオライト、MFI型ゼオライト、シリカライトゼオライト等では概ね100〜300℃の範囲である。
水熱処理温度が低すぎると、ゼオライトの種類によっては結晶化しない場合や長時間を要する場合があり、結晶化しても結晶性、比表面積が不充分となる場合がある。
水熱処理温度が高すぎると所望のゼオライトが得られない場合や、得られたとしても、不用なゼオライトが副生する場合がある。
【0026】
工程(c)
ついで、ゼオライト粒子と合成母液とを分離する。
分離方法としては、ゼオライト粒子と合成母液を効率的に分離できれば特に制限はなく従来公知の遠心分離、濾過分離等の方法を採用することができる。
このとき、合成母液の回収率は概ね50〜98重量%の範囲にあることが好ましい。
ここで、合成母液の回収率とは、工程(c)で回収した合成母液の重量を、工程(a)の合成スラリーの総重量から工程(c)の生成ゼオライトの固形分重量を減じた計算上の合成母液重量で除した割合(%)である。
合成母液の回収率が50重量%未満の場合は、後述する工程(e)で微細化ゼオライト粒子と合成母液とを混合したときの組成が元の組成と大きくかい離する場合があり、結晶性の向上、比表面積の向上効果が充分得られない場合があり、また、不用なゼオライトが副生する場合がある。
合成母液の回収率が98%を超えることは、前記した通常の分離方法では、ゼオライト粒子が分離できない水を保持しているために困難である。
【0027】
ここで得られる水熱処理後のゼオライト粒子の平均粒子径(D)は、0.5〜10μm、さらには1〜5μmの範囲にあることが好ましい。
水熱処理後のゼオライト粒子の平均粒子径(D)が0.5μm未満のものは、通常の方法では合成することが困難であり、前記した特別な方法で0.5μm未満のものを合成できることは知られているが、ゼオライトの種類、形状が限定されており、用途に制限がある。
水熱処理後のゼオライト粒子の平均粒子径(D)が10μmを超えると、過度な粉砕を必要とするためか、粉砕後のゼオライト粒子の結晶性、比表面積が過度に低下し、最終的に得られるゼオライトの結晶性、比表面積の向上効果が不充分となる場合がある。
【0028】
工程(d)
ついで、ゼオライト粒子を微細化する。
微細化ゼオライトの平均粒子径(D)は、後述する工程(f)で得られるゼオライトの平均粒子径(D)が0.05〜0.5μmの範囲となるように、概ね0.02〜0.5μm、さらには0.05〜0.4μmの範囲にあることが好ましい。
微細化ゼオライトの粒子径が0.02μm未満の場合は、ゼオライトの結晶性、比表面積が低くなり過ぎて、工程(f)で水熱処理しても結晶性、比表面積が高いゼオライトが得られない場合がある。
微細化ゼオライトの粒子径が0.5μmを超える場合は、ゼオライトの種類によっても異なるが、工程(f)で水熱処理する際に微細化ゼオライトが沈降し、不用なゼオライトが副生する場合があり、このため撹拌すると不用なゼオライトの副生を促進する場合があり、そもそも、本発明の方法によらずとも、結晶性、比表面積の高いゼオライトを得ることができる。
【0029】
また、前記平均粒子径(D)と平均粒子径(D)との比(D)/(D)は0.2〜0.8、さらには0.3〜0.6の範囲にあることが好ましい。
前記比(D)/(D)が0.2未満の場合は、過度な粉砕によるためか、粉砕後のゼオライト粒子の結晶性、比表面積が過度に低下し、最終的に得られるゼオライトの結晶性、比表面積のが不充分となる場合がある。
前記比(D)/(D)が0.8を超えると、平均粒子径(D)の大きさによっても異なるが、粉砕による微細化がわずかであり、結晶性、比表面積の低下が少ないものの工程(f)で水熱処理しても結晶性、比表面積の向上もわずかであり、本発明の方法により、微細で結晶性、比表面積の高いゼオライトが得られない場合がある。
【0030】
また、微細化ゼオライトの結晶度(C)は、前記工程(b)の水熱処理後のゼオライトの結晶度(C)との比(C)/(C)が0.2〜0.8、さらには0.3〜0.5の範囲にあることが好ましい。
前記比(C)/(C)が0.2未満の場合は、微細化ゼオライト粒子の結晶性が低下し過ぎて得られるゼオライトの結晶性、比表面積が不充分となる場合がある。
前記比(C)/(C)が0.8を超えるものは、微細化により結晶性が低下し、得ることが困難である。
【0031】
また、微細化ゼオライトの比表面積(S)と前記工程(b)の水熱処理後のゼオライトの比表面積(S)との比(S)/(S)は0.2〜0.9、さらには0.4〜0.8の範囲にあることが好ましい。
前記比(S)/(S)が0.2未満の場合は、微細化ゼオライト粒子の比表面積が低下し過ぎて得られるゼオライトの結晶性、比表面積が不充分となる場合がある。
前記比(S)/(S)が0.9超えるものは、微細化により結晶性とともに比表面積が低下し、得ることが困難である。
【0032】
微細化方法としては、前記粒子径範囲に微細化できれば特に制限は無く従来公知の粉砕方法を採用することができる。例えば、ボールミル法、ビーズミル法、ジェットミル法等が挙げられる。
本発明では、結晶性、比表面積を大きく低下させることなく微細化できるのでボールミル法、ビーズミル法を採用することが好ましい。
【0033】
工程(e)
ついで、微細化ゼオライト粒子と工程(c)で回収した合成母液とを混合する。
混合方法としては、均一に混合できれば特に制限は無く従来公知の方法で混合することができる。
混合後、必要に応じて熟成することができる。熟成する際には、撹拌することなく静置することもでき、また、撹拌することもできるが、ゼオライトの種類によって適宜選択することが好ましい。また、加熱するか否かについてもゼオライトの種類によって適宜選択することが好ましい。
さらに、混合時、あるいは混合後、必要に応じて、工程(a)で調製した組成(酸化物モル比)との間に違い(ギャップ)を生じた場合は、不足成分を追加することもできる。
【0034】
工程(f)
ついで、前記工程(b)と同様に、50〜300℃、好ましくは100〜250℃で水熱処理する。
フォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライトでは概ね50〜100℃の範囲であり、モルデナイト型ゼオライトでは概ね80〜200℃の範囲であり、β−ゼオライト、MFI型ゼオライト、シリカライトゼオライト等では概ね100〜300℃の範囲である。
水熱処理温度が低すぎると、微細化後のゼオライトの結晶度、比表面積の向上効果が充分得られない場合があり、水熱処理温度が高すぎると、不要なゼオライトが副生したり、得られるゼオライト粒子が凝集体となり、粒子径が小さく、結晶度、比表面積が高いゼオライトが得られない場合がある。
【0035】
所定の水熱処理を行った後、必要に応じて冷却後、前記工程(c)と同様にして分離し、さらに、掛け水等従来公知の方法で洗浄することによって微細なゼオライトを得ることができる。
水熱処理後のゼオライトの平均粒子径(D)は、0.05〜0.5μm、さらには0.1〜0.3μmの範囲にあることが好ましい。
水熱処理後のゼオライトの平均粒子径(D)が0.05μm未満の場合は、得られるゼオライトの結晶度が不充分となる場合がある。
水熱処理後のゼオライトの平均粒子径(D)が0.5μmを超えるものは、本発明によらずとも結晶度、比表面積の高いゼオライトを得ることができる。
【0036】
また、水熱処理後のゼオライトの平均粒子径(D)と前記平均粒子径(D)との比(D)/(D)は概ね0.8〜1.2の範囲にある、つまり、大きく変化することはない。
【0037】
つぎに、水熱処理後のゼオライトの結晶度(C)は50%以上、さらには60%以上であることが好ましい。
この工程(f)で得られるゼオライトの結晶度(C)が50%未満の場合は、比表面積も低い傾向にあり、熱的な安定性が不充分で、触媒等としての使用に制限がある。
また、水熱処理後のゼオライトの結晶度(C)と前記工程(d)の微細化後のゼオライトの結晶度(C)との比(C)/(C)は1.2〜5、さらには1.5〜5の範囲にあることが好ましい。
前記比(C)/(C)が1.2未満の場合は、結晶度とともに比表面積も低く、用途に制限があり、前記比(C)/(C)が5を超えるものは得ることが困難である。
同様に、水熱処理後のゼオライトの比表面積(S)と前記比表面積(S)との比(S)/(S)は1.2〜5、さらには1.5〜5の範囲にあることが好ましい。
このようにして、微細で結晶度、比表面積の高いゼオライトを得ることができる。
【0038】
本発明において、前記したゼオライト粒子の各平均粒子径は電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について粒子径を測定して、その平均値として求めることができる。
また、ゼオライト粒子の各比表面積はBET法によって測定した。
さらに、ゼオライト粒子の結晶度は、工程(d)、工程(f)で得られたゼオライトのX線回折による主要ピークの高さの合計値(H)を、本発明の工程(c)で得られたゼオライトの主要ピークの高さの合計値(H)で除して求めた。
結晶度=H/H。X100(%)
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定するものではない。
【0040】
[実施例1]
Na−Y型ゼオライト(1-A)の合成
アルミノシリケート溶液(S1)の調製
Al濃度22重量%、NaO濃度17重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液0.168kgを、NaOH濃度21.65重量%の水酸化ナトリウム水溶液1.35kgに撹拌しながら加えて溶解し、30℃まで冷却した。この溶液を、撹拌しながらSiO濃度24重量%、NaO濃度7.7重量%の珪酸ナトリウム水溶液1.361kgに撹拌しながら添加した。このときの組成は酸化物モル比で、
NaO/Al=16
SiO/Al=15
O/Al=330
であった。ついで、この溶液を30℃で15時間静置してアルミノシリケート溶液(S1)を調製した。
【0041】
混合ヒドロゲルスラリー(M1)の調製
SiO濃度24重量%、NaO濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液22.78kgに水5.66kgとSiO濃度30重量%シリカゾル(日揮触媒化成製:Cataloid SI−30:平均粒子径10nm)18.97kgと、前記アルミノシリケート溶液(S1)2.88kgを加え攪拌混合した。
これに、Al濃度22重量%、NaO濃度17重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液10.03kgを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(M1)を調製した。[工程(a)]このときの組成は酸化物モル比で、
NaO/Al=2.80
SiO/Al=8.70
O/Al=108
であった。
【0042】
混合ヒドロゲルスラリー(M1)60.3kgを結晶化槽にて、95℃で35時間、水熱処理を行った。[工程(b)]
その後、70℃まで冷却し、結晶化スラリーを濾過・分離して合成母液30.8kgと、Na−Y型ゼオライト(1-A)のケーキ29.5kgを採取した。[工程(c)]
Na−Y型ゼオライト(1-A)のケーキの一部を引き続き洗浄し、乾燥してNa−Y型ゼオライト(1-A)を得た。
Na−Y型ゼオライト(1-A)について、X線回折装置により結晶形、結晶度、蛍光X線分析による組成分析、BET法による比表面積、電子顕微鏡写真による平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0043】
Na−Y型ゼオライト(1-B)の合成
上記で合成したNa−Y型ゼオライト(1-A) のケーキ1.50kgを、約1.3mmφのタングステンボール9kgを有する磁性ボールミルに充填し、回転数30rpmで16時間粉砕した。[工程(d)]
ボールミルより微細化されたNa−Y型ゼオライト(1-A)のスラリーの一部を取り出し、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0044】
ついで、微細化されたNa−Y型ゼオライト(1-A)のスラリー1.30kgと前記工程(c)で得られた合成母液1.30kgとを1時間撹拌混合した。[工程(e)]
ついで、結晶化槽にて、95℃で15時間、水熱処理を行った。[工程(f)]
その後、70℃まで冷却し、Na−Y型ゼオライト(1-B)スラリーを取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa−Yゼオライト(1-B)を得た。
得られたNa−Yゼオライト(1-B)について、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。また、微細化されたNa−Y型ゼオライト(1-A)の結晶度、比表面積と対比した結晶度回復率、比表面積回復率を求め、結果を表に示す。
【0045】
[実施例2]
ZSM−5型ゼオライト(2-A)の合成
アルミノシリケート溶液(S2)の調製
Al濃度22重量%、NaO濃度17重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液0.116kgを、NaOH濃度42.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液0.480kgに撹拌しながら加えて溶解し、30℃まで冷却した。この溶液を、撹拌しながらSiO濃度24重量%、NaO濃度7.7重量%の珪酸ナトリウム水溶液0.938kgに撹拌しながら添加した。このときの組成は酸化物モル比で、
NaO/Al=16
SiO/Al=15
O/Al=230
であった。
ついで、この溶液を30℃で15時間静置してアルミノシリケート溶液(S2)を調製した。
【0046】
混合ヒドロゲルスラリー(M2)の調製
SiO濃度24重量%、NaO濃度7.7重量%の珪酸ナトリウム水溶液1.250kgに水0.161kgと、前記アルミノシリケート溶液(S2)1.534kgを加え攪拌混合した。これにHSO濃度25重量%の硫酸水溶液1.922kgを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(M2)を調製した。このときの組成は酸化物モル比で、
NaO/Al=2.60
SiO/Al=35.0
O/Al=950
NaSO/Al=19.6
であった。
【0047】
混合ヒドロゲルスラリー(M2)4.866kgをオートクレーブにて、170℃で50時間、撹拌しながら水熱処理を行った。[工程(b)]
その後、70℃まで冷却し、結晶化スラリーを濾過・分離して合成母液3.46kgと、ZSM−5型ゼオライト(2-A)のケーキ1.40kgを採取した。[工程(c)]
ZSM−5型ゼオライト(2-A)のケーキの一部を引き続き洗浄し、乾燥してZSM−5型ゼオライト(2-A)を得た。
ZSM−5型ゼオライト(2-A)について、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0048】
ZSM−5型ゼオライト(2-B)の合成
上記で合成したZSM−5型ゼオライト(2-A)のケーキ1.20kgを、約1.3mmφのタングステンボール9kgを有する磁性ボールミルに充填し、回転数30rpmで40時間粉砕した。[工程(d)]
ボールミルより微細化されたZSM−5型ゼオライト(2-A)のスラリーの一部を取り出し、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0049】
ついで、微細化(粉砕)されたZSM−5型ゼオライト(2-A)のスラリー1.00kgと前記工程(c)で得られた合成母液2.46kgとを混合し、1時間撹拌混合した。[工程(e)]
ついで、オートクレーブにて、170℃で15時間、撹拌しながら水熱処理を行った。[工程(f)]
【0050】
その後、70℃まで冷却し、ZSM−5型ゼオライト(2-B)スラリーを取り出し濾過、洗浄、乾燥してZSM−5型ゼオライト(2-B)を得た。
得られたZSM−5型ゼオライト(2-B)について、結晶形、結晶度、組成分析(SiO2/Al2O3モル比)、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。また、微細化されたZSM−5型ゼオライト(2-A)の結晶度、比表面積と対比した結晶度回復率、比表面積回復率を求め、結果を表に示す。
【0051】
[実施例3]
ZSM−5型ゼオライト(3-A)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(M3)の調製
SiO濃度20重量%シリカゾル3.528kgに水0.107kgと、濃度40重量%の水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)水溶液0.457kgと、実施例2と同様にして調製したアルミノシリケート溶液(S2)0.736kgを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(M3)を調製した。このときの組成は酸化物モル比で、
NaO/Al=19.8
(TPA)O/Al=7.5
SiO/Al=113.0
O/Al=1700
であった。
【0052】
混合ヒドロゲルスラリー(M3)4.828kgをオートクレーブにて、170℃で50時間、撹拌しながら水熱処理を行った。[工程(b)]
その後、70℃まで冷却し、結晶化スラリーを濾過・分離して合成母液3.42kgと、ZSM−5型ゼオライト(3-A)のケーキ1.40kgを採取した。[工程(c)]
ZSM−5型ゼオライト(3-A)のケーキの一部を引き続き洗浄し、乾燥してZSM−5型ゼオライト(3-A)を得た。
ZSM−5型ゼオライト(3-A)について、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0053】
ZSM−5型ゼオライト(3-B)の合成
上記で合成したZSM−5型ゼオライト(3-A)のケーキ1.20kgを、約1.3mmφのタングステンボール9kgを有する磁性ボールミルに充填し、回転数30rpmで48時間粉砕した。[工程(d)]
ボールミルより微細化されたZSM−5型ゼオライト(3-A)のスラリーの一部を取り出し、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0054】
ついで、微細化されたZSM−5型ゼオライト(3-A)のスラリー1.00kgと前記工程(c)で得られた合成母液2.50kgとを混合し、1時間撹拌混合した。[工程(e)]
ついで、オートクレーブにて、170℃で15時間、撹拌しながら水熱処理を行った。[工程(f)]
【0055】
その後、70℃まで冷却し、ZSM−5型ゼオライト(3-B)スラリーを取り出し濾過、洗浄、乾燥してZSM−5型ゼオライト(3-B)を得た。
得られたZSM−5型ゼオライト(3-B)について、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。また、微細化されたZSM−5型ゼオライト(3-A)の結晶度、比表面積と対比した結晶度回復率、比表面積回復率を求め、結果を表に示す。
【0056】
[実施例4]
Na−Y型ゼオライト(4-B)の合成
実施例1の工程(d)において、Na−Y型ゼオライト(1-A) のケーキ1.50kgを、約1.3mmφのタングステンボール9kgを有する磁性ボールミルに充填し、回転数30rpmで24時間粉砕した以外は同様にして、Na−Y型ゼオライト(1-A)を粉砕した。[工程(d)]
ボールミルより微細化されたNa−Y型ゼオライト(4-A)のスラリーの一部を取り出し、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0057】
ついで、微細化されたNa−Y型ゼオライト(4-A)のスラリー1.30kgと前記工程(c)で得られた合成母液1.25kgとを混合し、1時間撹拌混合した。[工程(e)]
ついで、結晶化槽にて、95℃で15時間、水熱処理を行った。[工程(f)]
【0058】
その後、70℃まで冷却し、Na−Y型ゼオライト(4-B)スラリーを取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa−Yゼオライト(4-B)を得た。
得られたNa−Yゼオライト(4-B)について、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。また、微細化されたNa−Y型ゼオライト(4-A)の結晶度、比表面積と対比した結晶度回復率、比表面積回復率を求め、結果を表に示す。
【0059】
[実施例5]
Na−Y型ゼオライト(5-B)の合成
実施例1の工程(d)において、Na−Y型ゼオライト(1-A) のケーキ1.50kgを、約1.3mmφのタングステンボール9kgを有する磁性ボールミルに充填し(セット)し、回転数30rpmで8時間粉砕した以外は同様にして、Na−Y型ゼオライト(1-A)を粉砕した。[工程(d)]
ボールミルより微細化(粉砕)されたNa−Y型ゼオライト(5-A)のスラリーの一部を取り出し、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0060】
ついで、微細化されたNa−Y型ゼオライト(5-A)のスラリー1.30kgと前記工程(c)で得られた合成母液1.25kgとを混合し、1時間撹拌混合した。[工程(e)]
ついで、結晶化槽にて、95℃で15時間、水熱処理を行った。[工程(f)]
【0061】
その後、70℃まで冷却し、Na−Y型ゼオライト(5-B)スラリーを取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa−Yゼオライト(5-B)を得た。
得られたNa−Yゼオライト(5-B)について、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。また、微細化されたNa−Y型ゼオライト(5-A)の結晶度、比表面積と対比した結晶度回復率、比表面積回復率を求め、結果を表に示す。
【0062】
[実施例6]
シリカライトゼオライト(6-B)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(M6)の調製
SiO濃度20重量%シリカゾル9.235kgに水0.361kgと、濃度40重量%の水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)水溶液0.419kgと、実施例2と同様にして調製したアルミノシリケート溶液(S2)0.007kgを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(M6)を調製した。このときの組成は酸化物モル比で、
NaO/Al=11.0
(TPA)2O/Al=7.5
SiO/Al=280.0
O/Al=4000
であった。
【0063】
混合ヒドロゲルスラリー(M6)10.022kgをオートクレーブにて、120℃で25時間、撹拌しながら水熱処理を行った。[工程(b)]
その後、70℃まで冷却し、結晶化スラリーを濾過・分離して合成母液4.352kgと、シリカライト(6-A)のケーキ5.67kgを採取した。[工程(c)]
シリカライト(6-A)のケーキの一部を引き続き洗浄し、乾燥してシリカライト(6-A)を得た。
シリカライト(6-A)について、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0064】
シリカライト(6-B)の合成
上記で合成したシリカライト(6-A)のケーキ5.60kgを、約1.3mmφのタングステンボール9kgを有する磁性ボールミルに充填し、回転数30rpmで40時間粉砕した。[工程(d)]
ボールミルより微細化されたシリカライト(6-A)のスラリーの一部を取り出し、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0065】
ついで、微細化されたシリカライト(6-A)のスラリー5.50kgと前記工程(c)で得られた合成母液4.350kgとを混合し、1時間撹拌混合した。[工程(e)]
ついで、オートクレーブにて、120℃で15時間、撹拌しながら水熱処理を行った。[工程(f)]
【0066】
その後、70℃まで冷却し、シリカライト(6-B)スラリーを取り出し濾過、洗浄、乾燥してシリカライト(6-B)を得た。
得られたシリカライト(6-B)について、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。また、微細化されたシリカライト(6-B)の結晶度、比表面積と対比した結晶度回復率、比表面積回復率を求め、結果を表に示す。
【0067】
[比較例1]
Na−Y型ゼオライト(R1-B)の合成
実施例1の工程(d)において、Na−Y型ゼオライト(1-A) のケーキ1.50kgを、約1.3mmφのタングステンボール9kgを有する磁性ボールミルに充填し、回転数30rpmで48時間粉砕した以外は同様にして、Na−Y型ゼオライト(1-A)を粉砕した。
ボールミルより微細化されたNa−Y型ゼオライト(R1-A)のスラリーの一部を取り出し、結晶形、結晶度、組成分析(SiO2/Al2O3モル比)、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0068】
ついで、微細化されたNa−Y型ゼオライト(R1-A)のスラリー1.30kgと前記工程(c)で得られた合成母液1.25kgとを混合し、1時間撹拌混合した。[工程(e)]
ついで、結晶化槽にて、95℃で15時間、水熱処理を行った。[工程(f)]
【0069】
その後、70℃まで冷却し、Na−Y型ゼオライト(R1-B)スラリーを取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa−Yゼオライト(R1-B)を得た。
得られたNa−Yゼオライト(R1-B)について、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。また、微細化されたNa−Y型ゼオライト(R1-A)の結晶度、比表面積と対比した結晶度回復率、比表面積回復率を求め、結果を表に示す。
【0070】
[比較例2]
Na−Y型ゼオライト(R2-B)の合成
実施例1の工程(d)において、Na−Y型ゼオライト(1-A) のケーキ1.50kgを、約1.3mmφのタングステンボール9kgを有する磁性ボールミルに充填し、回転数30rpmで4時間粉砕した以外は同様にして、Na−Y型ゼオライト(1-A)を粉砕した。 [工程(d)]
ボールミルより微細化されたNa−Y型ゼオライト(R2-A)のスラリーの一部を取り出し、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0071】
ついで、微細化されたNa−Y型ゼオライト(R2-A)のスラリー1.30kgと前記工程(c)で得られた合成母液1.25kgとを混合し、1時間撹拌混合した。[工程(e)]
ついで、結晶化槽にて、95℃で15時間、水熱処理を行った。[工程(f)]
【0072】
その後、70℃まで冷却し、Na−Y型ゼオライト(R2-B)スラリーを取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa−Yゼオライト(R2-B)を得た。
得られたNa−Yゼオライト(R2-B)について、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。また、微細化されたNa−Y型ゼオライト(R2-A)の結晶度、比表面積と対比した結晶度回復率、比表面積回復率を求め、結果を表に示す。
【0073】
[比較例3]
ZSM−5型ゼオライト(R3-B)の合成
実施例3の工程(d)において、ZSM−5型ゼオライト(3-A)のケーキ0.80kgを、約1.3mmφのタングステンボール9kgを有する磁性ボールミルに充填し、回転数30rpmで96時間粉砕した以外は同様にして、ZSM−5型ゼオライト(R3-A)を粉砕した。[工程(d)]
ボールミルより微細化されたZSM−5型ゼオライト(R3-A)のスラリーの一部を取り出し、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0074】
ついで、微細化されたZSM−5型ゼオライト(R3-A)のスラリー0.80kgと前記工程(c)で得られた合成母液2.50kgとを混合し、1時間撹拌混合した。[工程(e)]
ついで、結晶化槽にて、170℃で15時間、撹拌しながら水熱処理を行った。[工程(f)]
【0075】
その後、70℃まで冷却し、ZSM−5型ゼオライト(R3-B)スラリーを取り出し濾過、洗浄、乾燥してZSM−5型ゼオライト(R3-B)を得た。
得られたZSM−5型ゼオライト(R3-B)について、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。また、微細化されたZSM−5型ゼオライト(R3-A)の結晶度、比表面積と対比した結晶度回復率、比表面積回復率を求め、結果を表に示す。
【0076】
[比較例4]
シリカライトゼオライト(R4-B)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(RM4)の調製
SiO濃度20重量%シリカゾル9.235kgに水0.361kgと、濃度40重量%の水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)水溶液0.419kgと、実施例2と同様にして調製したアルミノシリケート溶液(S2)0.007kgを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(RM4)を調製した。このときの組成は酸化物モル比で、
NaO/Al=11.0
(TPA)2O/Al=7.5
SiO/Al=280.0
O/Al=4000
であった。
【0077】
混合ヒドロゲルスラリー(RM4)10.022kgをオートクレーブにて、120℃で50時間、撹拌しながら水熱処理を行った。[工程(b)]
その後、70℃まで冷却し、結晶化スラリーを濾過・分離して合成母液4.352kgと、シリカライト(R4-A)のケーキ5.67kgを採取した。[工程(c)]
シリカライト(R4-A)のケーキの一部を引き続き洗浄し、乾燥してシリカライト(R4-A)を得た。
シリカライト(R4-A)について、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0078】
シリカライト(R4-B)の合成
上記で合成したシリカライト(R4-A)のケーキ5.60kgを、約1.3mmφのタングステンボール9kgを有する磁性ボールミルに充填し、回転数30rpmで80時間粉砕した。[工程(d)]
ボールミルより微細化されたシリカライト(R4-A)のスラリーの一部を取り出し、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0079】
ついで、微細化されたシリカライト(R4-A)のスラリー5.50kgと前記工程(c)で得られた合成母液4.350kgとを混合し、1時間撹拌混合した。[工程(e)]
ついで、結晶化槽にて、120℃で15時間、撹拌しながら水熱処理を行った。[工程(f)]
【0080】
その後、70℃まで冷却し、シリカライト(R4-B)スラリーを取り出し濾過、洗浄、乾燥してシリカライト(R4-B)を得た。
得られたシリカライト(R4-B)について、結晶形、結晶度、組成分析、比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。また、微細化されたシリカライト(R4-B)の結晶度、比表面積と対比した結晶度回復率、比表面積回復率を求め、結果を表に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】