(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、生物分解性のある有機物を含む排水を処理する方法として、活性汚泥法を代表とした好気性生物処理が知られている。活性汚泥は、安価、かつ処理水質が良好な処理であることから、広く普及している。しかし、BOD容積負荷(処理速度)が0.5〜0.8kgBOD/m
3/day程度と比較的小さい。また、汚泥と処理水を分離するための沈澱槽の設置と、汚泥返送が必須であることから、広い設置スペースが必要となる。
【0003】
有機物含有水を高負荷処理する方法としては、反応槽内に、プラスチック充填材、繊維状充填材等の担体を固定して、生物処理する固定床式生物処理法が知られている。この方法を用いた場合、1kgBOD/m
3/day以上のBOD容積負荷で運転することが可能となる。また、生物処理水を固液分離する沈殿槽からの汚泥の返送が不要となるため、沈殿槽での汚泥管理の手間が省ける。しかし、固定床式生物処理法では、担体に付着する汚泥による槽内の閉塞の防止や槽内汚泥の均一化のために、空気による逆洗等を行う必要があり、維持管理に課題がある。また、固定床式生物処理法では、他の生物処理と比べて、反応槽に掛かる費用が増大する等のコスト面でも課題がある。
【0004】
近年では、有機物含有水を高負荷処理する方法として、微生物を保持する担体を用いた流動床式生物処理法が主流となってきている。なお、流動床式生物処理方法は、担体の流動、接触などにより、菌体剥離などに伴う微細汚泥が発生し、浮遊式の活性汚泥処理の水質に比較して処理水懸濁物質(SS)濃度が高くなるため、流動床式生物処理の後段に、凝集沈澱槽を設置したり、通常の活性汚泥処理を採用したりして、処理水質を向上させている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
例えば、特許文献1、2のような流動床式生物処理の後段に通常の活性汚泥処理を採用した多段処理では、1段目の流動床式生物処理で、有機物含有水を主に分散菌で生物処理すると共に非凝集性の細菌に変換した後、2段目の活性汚泥処理で、原生動物を主体とした生物処理で非凝集性細菌を捕食除去する。これにより、安定した高速処理が可能になる。
【0006】
また、例えば、流動床式生物処理槽に、硝酸(塩) 及び/ 又は亜硝酸(塩) 含有液を添加して高負荷処理を可能とした生物処理装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る生物処理装置の構成の一例を示す模式図である。
図1に示すように、生物処理装置1は、生物処理槽10、鉄塩添加装置12、原水流入ライン14、処理水排出ライン16を備えている。
図1に示す生物処理槽10は、曝気装置18、スクリーン20を備えている。生物処理槽10の流入口には、原水流入ライン14が接続され、生物処理槽10の排出口には、処理水排出ライン16が接続されている。
【0018】
図1に示す鉄塩添加装置12は、生物処理槽10に鉄塩を添加するためのものであり、例えば、鉄塩を収容するタンク、鉄塩を吐出するためのポンプ、鉄塩を生物処理槽10へ送液するための配管等から構成されている。鉄塩の添加効果が得られやすい点から、鉄塩を生物処理槽10へ直接添加することが好ましく、この場合、鉄塩を生物処理槽10へ送液するための配管を生物処理槽10に直接接続させる。但し、生物処理槽10に鉄塩を供給する形態としては、鉄塩を生物処理槽10に直接添加する場合に制限されるものではなく、例えば、鉄塩を生物処理槽10へ送液するための配管を原水流入ライン14に接続し、原水流入ライン14を介して、鉄塩を生物処理槽10に添加する場合等でもよい。
【0019】
生物処理槽10は、微生物を保持するための担体22を収容し、有機物含有水を流動床式生物処理法により処理する流動床式生物処理槽である。流動床式生物処理法とは、槽内の有機物含有水中に担体22を流動させながら、好気条件下で、担体22に付着した微生物等で有機物含有水を生物処理する方法である。本実施形態では、担体22の流動を、曝気装置18から供給される空気等のガスにより行っているが、撹拌装置等によって担体22の流動を行っても良い。担体22は、微生物の付着性、流動性等が得られるものであれば特に制限されるものではないが、例えば、スポンジ状担体、ゲル状担体、中空筒状担体等が挙げられ、具体的には、多孔質のポリウレタン製スポンジ担体等が挙げられる。担体22は、微生物の付着性の点で、多孔質性の担体であることが好ましく、流動性の向上の点で、比重が1に近い担体であることが好ましい。担体22の大きさは、微生物の付着性、流動性の点から、直径が3mm〜20mmの範囲が好ましい。
【0020】
生物処理槽10に設置されるスクリーン20は、生物処理槽10から処理水排出ライン16へ担体22が流出することを防ぐもの(すなわち、生物処理された処理水と担体22とを固液分離するためのもの)であり、例えば、生物処理槽10の排出口を囲むように設置される。スクリーン20は、処理水と担体22とを固液分離することができるものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ウエッジワイヤースクリーン、金網、パンチングメタル等が挙げられる。
【0021】
本実施形態の生物処理装置1の動作の一例について、
図1を用いて説明する。
【0022】
有機物含有水(原水)は、原水流入ライン14から生物処理槽10に導入される。また、曝気装置18により、生物処理槽10内に空気等のガスが供給される。生物処理槽10内の微生物を保持した担体22は、曝気装置18により供給された空気等の流れによって流動すると共に、有機物含有水と接触する。原水中の有機物は、生物処理槽10内の浮遊細菌及び担体22に保持された細菌等により、好気条件で酸化分解される(生物処理される)。所定の滞留時間で生物処理された処理水は、スクリーン20によって、担体22と分離され、処理水排出ライン16から排出される。
【0023】
通常、流動床式生物処理槽において、高負荷処理(例えば1〜10kgBOD/m
3/day)が続くと、糸状性細菌や糸状菌等が、担体へ大量付着し、担体の肥大化が生じる。担体が肥大化すると、前述したように、担体の流動性が低下し、また、担体から剥離した汚泥により、スクリーンの閉塞等が起こり、高負荷処理での連続運転が困難となる場合がる。
【0024】
そこで、本実施形態では、担体22の肥大化が確認された場合に、鉄塩添加装置12から生物処理槽10内に鉄塩が添加される。鉄塩添加によって、担体22の肥大化が改善される。鉄塩添加による担体22の肥大化改善メカニズムとしては、例えば以下のことが考えられる。生物処理槽10内に添加された一部の鉄塩が、肥大化した担体22に付着し、該担体22の比重が増加する。そうすると、生物処理槽10内で流動接触する担体22間のせん断力が向上するため、担体22から肥大化した汚泥の剥離が促進され、担体22の肥大化が改善される。そして、担体22は肥大化前の状態に戻り、担体22の流動性が回復する。また、生物処理槽10内に添加された一部の鉄塩の凝集効果により、担体22から剥離した汚泥の圧密性が向上するため(汚泥が小粒径化されるため)、スクリーン20の閉塞が抑制される。したがって、高負荷処理での連続運転が可能となる。
【0025】
ここで、担体22の肥大化とは、生物汚泥が担体22に付着することにより、担体22が自身の大きさよりも大きくなる現象のことである。担体22が肥大化したか否かの判断は、BOD容積負荷、処理水の有機物濃度、曝気や撹拌による担体へのせん断力等により適宜変更されるものであるが、担体22の流動性の観点から、例えば、担体22に付着する生物汚泥の膜の厚さが、1mm以上になった場合(担体22表面から外側方向に1mm以上厚くなった場合)、担体22が肥大化したと判断することが好ましい。通常、原水の種類・濃度に関係なく、BOD容積負荷を1〜10kgBOD/m
3/dayにすると、すなわち、高負荷処理を実施すると、担体の肥大化が顕著となる。また、担体の肥大化は原水の種類・濃度に関係なく、生物処理槽内に投入した担体のかさ体積あたりのBOD負荷として10kgBOD/m
3/day程度から確認される。しかし、本実施形態では、鉄塩添加により担体22の肥大化が改善されるため、例えば、BOD容積負荷1〜10kgBOD/m
3/day、担体のかさ体積あたりのBOD負荷として10kgBOD/m
3/day以上の高負荷処理で原水の処理が可能となる。BOD容積負荷とは、生物処理槽10の槽容積あたりのBOD負荷であり、担体のかさ体積あたりのBOD負荷とは、生物処理槽10内に投入した担体22のかさ体積あたりのBOD負荷である。
【0026】
担体22の肥大化の確認方法としては、例えば、作業者等が、生物処理槽10内の担体22を30〜100個取り出し、取り出した担体22表面の生物汚泥の膜をノギス等により測定し、膜厚の平均値が、例えば、1mm以上であった場合、担体22の肥大化が確認されたと判断する。また、その他の方法としては、担体22表面の生物汚泥の膜厚と原水BOD濃度に対する処理水の懸濁物質濃度(SS濃度)との関係を表すマップ(テーブル等でもよい)を予め実験等により求めておき、生物処理槽10出口に設置したSS計による値を上記マップに当てはめ、担体22表面の生物汚泥の膜厚を推定し、その膜厚の推定値が、例えば、1mm以上であった場合、担体22の肥大化が確認されたと判断する等でもよい。なお、上記膜厚の推定は作業者等によって行われてもよいが、予め実験等で求めた担体22表面の生物汚泥の膜厚と処理水SS濃度との関係を表すマップを制御装置に記憶させておき、制御装置によって、SS計による値及び上記マップから、担体22表面の生物汚泥の膜厚が推定され、担体22の肥大化が判断されてもよい。いずれにしろ、担体22の肥大化が確認された場合には、作業者又は制御装置によって鉄塩添加装置12が起動され、生物処理槽10に鉄塩が添加される。
【0027】
鉄塩は、生物処理槽10に連続的に添加されてもよいし、生物処理槽10に間欠的に添加(添加する時間を制御)されてもよいが、担体22に付着している生物汚泥のMLVSS/MLSS(%)に基づいて鉄塩の添加を制御することが好ましい。MLVSSは活性汚泥有機性浮遊物質(Mixed Liquor Volatile Suspended Solidであり、MLSSは活性汚泥浮遊物質(Mixed Liquor Suspended Solids)である。MLVSS/MLSS(%)は、担体22に付着した生物汚泥中の有機物の比率を表しており、MLVSS/MLSS(%)が低下していけば、担体22の肥大化が改善されていることを示している。担体に付着している生物汚泥のMLSS、MLVSSの測定方法は、例えば、以下の方法が挙げられる。例えば、生物処理槽10内の担体22を30〜100個取り出し、取り出した担体に付着している生物汚泥を薬さじやガラス棒等で剥離させ、剥離した汚泥のMLSSとMLVSSを下水試験法上巻(日本下水道協会著)に記載の方法に従い測定する方法等である。
【0028】
そこで、本実施形態では、担体22の肥大化確認後の担体22に付着している生物汚泥のMLVSS/MLSS(%)が、20%ポイント以上低下するように、鉄塩を添加することが好ましい。すなわち、担体22の肥大化確認後、鉄塩の添加(連続添加又は間欠添加)を開始し、担体22の肥大化確認後のMLVSS/MLSS(%)が20%ポイント以上低下した際に、鉄塩の添加(連続添加又は間欠添加)を停止することが好ましい。MLVSS/MLSS(%)が、20%ポイント未満の低下で鉄塩の添加を停止させると、担体22の肥大化が十分に改善されず、短時間で担体22の肥大化が確認される場合がある。担体22の肥大化確認後の担体22に付着している生物汚泥のMLVSS/MLSS(%)が20%ポイント以上低下するように鉄塩を添加することにより、鉄塩添加による担体22の肥大化改善効果が長い時間維持される。なお、再び担体22の肥大化が確認された場合には、鉄塩の添加を開始すればよい。また、鉄塩の添加量を多くすれば、MLVSS/MLSS(%)も低下するが、鉄塩の添加量を多くし過ぎると、酸化鉄、炭酸鉄等の微粒子が増加するため、MLVSS/MLSS(%)が20%ポイント以上25%ポイント以下低下するように鉄塩を添加することがより好ましい。
【0029】
添加する鉄塩の濃度は、特に制限されるものではないが、原水流量に対し5〜15mgFe/Lの範囲とすることが望ましい。
【0030】
本実施形態で用いられる鉄塩は、特に制限されるものではなく、塩化第二鉄、塩化第一鉄、ポリ硫酸第二鉄などの鉄塩が挙げられる。これらの鉄塩は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、鉄塩の性状は、粉体、液体のどちらでもよく、凝集性の観点から適宜選択されればよい。なお、鉄塩に代えて、無機凝集剤としてはPACや硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩系の無機凝集剤の添加も考えられるが、アルミニウム塩系の無機凝集剤の単独添加は、鉄塩添加より、担体22の比重が増加し難いため、担体22の肥大化の改善に時間が掛かる。また、鉄塩添加に比べて、微生物の活性に与える影響が大きいため、高負荷処理を維持しながら、担体22の肥大化を改善することは難しい。
【0031】
本実施形態において、BOD容積負荷は、特に制限されるものではないが、1〜10kgBOD/m
3/dayの範囲とすることが好ましく、2〜5kgBOD/m
3/dayの範囲とすることがより好ましい。
【0032】
生物処理槽10内の処理水滞留時間は、特に制限されるものではないが、有機物を効率的に生物処理する観点から、例えば、1〜24時間の範囲に設定されることが好ましい。
【0033】
生物処理槽10内の担体充填率(生物処理槽10の有効容積に対する担体22のかさ堆積)は、特に制限されるものではないが、5〜50%の範囲が好ましく、20〜40%の範囲がより好ましい。
【0034】
生物処理槽10内のpHは、微生物の活性が維持される範囲に設定されていれば、特に制限されるものではないが、pH6〜9の範囲に設定されることが好ましく、pH6.5〜7.5の範囲に設定されることがより好ましい。
【0035】
生物処理槽10内の溶存酸素濃度は、特に制限されるものではないが、槽内の微生物の活性の観点から、0.5mg/L以上が好ましく、1mg/L以上がより好ましい。
【0036】
本実施形態の処理対象である有機物含有水は、例えば、生活廃水、食品工場、化学工場、電子産業工場、紙パルプ工場などの工場から排出される排水等である。本実施形態の生物処理で処理される有機物含有水のBOD濃度は、特に制限されるものではないが、例えば、5000mg/L以下であることが好ましく、2000mg/L以下であることがより好ましい。
【0037】
本実施形態では、これまで、一槽式の生物処理を例に説明してきたが、これに制限されず、多段式の生物処理であってもよい。以下に、多段式の生物処理の形態について説明する。
【0038】
図2は、本実施形態に係る生物処理装置の他の構成の一例を示す模式図である。
図2の生物処理装置2において、
図1に示す生物処理装置1と同様の構成については同一の符号を付している。
図2に示す生物処理装置2は、第1生物処理槽10、第2生物処理槽24、鉄塩添加装置12、原水流入ライン14、1次処理水排出ライン26、処理水排出ライン16を備えている。第1生物処理槽10及び第2生物処理槽24は、微生物を保持するための担体22を収容し、有機物含有水を流動床式生物処理法により処理する流動床式生物処理槽であり、曝気装置18a,18b、スクリーン20a,20bを備えている。
図2に示す第1生物処理槽10は、鉄塩添加装置12により鉄塩が供給される構成となっている。
【0039】
第1生物処理槽10の流入口には、原水流入ライン14が接続されている。また、1次処理水排出ライン26の一端は、第1生物処理槽10の排出口に接続され、他端は、第2生物処理槽24の流入口に接続されている。第2生物処理槽24の排出口には、処理水排出ライン16が接続されている。
【0040】
図2に示す生物処理装置2の動作の一例について説明する。有機物含有水(原水)は、原水流入ライン14から第1生物処理槽10に導入される。また、曝気装置18aにより、第1生物処理槽10内に空気等が供給される。第1生物処理槽10内の微生物を保持した担体22は、曝気装置18aにより供給された空気等の流れによって流動すると共に、有機物含有水と接触する。原水中の有機物は、生物処理槽10内の浮遊細菌及び担体22に保持された細菌等により、好気条件で酸化分解される(生物処理される)。第1生物処理槽10において、所定の滞留時間で生物処理された処理水は、スクリーン20aによって、担体22と分離され、1次処理水として1次処理水排出ライン26から排出され、第2生物処理槽24に供給される。また、1次処理水中の有機物は、第2生物処理槽24内で第1生物処理槽10と同様に生物処理される。第2生物処理槽24において、所定の滞留時間で生物処理された処理水は、スクリーン20bによって、担体22と分離され、最終処理水として処理水排出ライン16から排出される。
【0041】
また、第1生物処理槽10内の担体22の肥大化が確認された場合に、鉄塩添加装置12から第1生物処理槽10内に鉄塩が添加され、第1生物処理槽10内の担体22の肥大化が改善される。その結果、担体の流動性が回復され、スクリーンの閉塞が抑制される。
【0042】
本実施形態のように、複数の流動床式生物処理槽を備える多段式の生物処理装置の場合には、担体の肥大化改善の観点から、少なくとも第1段目の生物処理槽(第1生物処理槽10)に鉄塩を添加する構成とすることが好ましいが、後段の生物処理槽のみ(第2生物処理槽24のみ)に鉄塩を添加する構成を制限するものではない。
【0043】
第1生物処理槽10及び第2生物処理槽24の担体充填率(第2生物処理槽24の有効容積に対する担体22のかさ堆積)は、5〜50%の範囲が好ましく、20〜40%の範囲がより好ましい。
【0044】
図3は、本実施形態に係る生物処理装置の他の構成の一例を示す模式図である。
図3の生物処理装置3において、
図1に示す生物処理装置1と同様の構成については同一の符号を付している。
図3に示す生物処理装置3は、第1生物処理槽10、第2生物処理槽28、沈殿槽30、鉄塩添加装置12、原水流入ライン14、1次処理水排出ライン26、汚泥排出ライン32、汚泥返送ライン34、処理水排出ライン16を備えている。第1生物処理槽10は、微生物を保持するための担体22を収容し、有機物含有水を流動床式生物処理法により処理する流動床式生物処理槽であり、曝気装置18a、スクリーン20aを備えている。第2生物処理槽28は、主に浮遊細菌により有機物含有水を生物処理する活性汚泥式の生物処理槽であり、曝気装置18b、スクリーン20bを備えている。
図3に示す第1生物処理槽10は、鉄塩添加装置12により鉄塩が供給される構成となっている。
【0045】
第1生物処理槽10の流入口には、原水流入ライン14が接続されている。なお、原水流入ライン14を分岐させて、第2生物処理槽28に接続させ、原水の一部を第2生物処理槽28に流入させてもよい。また、1次処理水排出ライン26の一端は、第1生物処理槽10の排出口に接続され、他端は、第2生物処理槽28の流入口に接続されている。また、第2生物処理槽28の排出口と沈殿槽30の流入口とが接続されている。沈殿槽30の処理水排出口には処理水排出ライン16が接続されており、沈殿槽30の汚泥排出口には汚泥排出ライン32が接続されている。また、汚泥返送ライン34の一端は、汚泥排出ライン32に接続され、他端は、第2生物処理槽28の汚泥流入口に接続されている。
【0046】
図3に示す生物処理装置3の動作の一例について説明する。有機物含有水(原水)は、原水流入ライン14から第1生物処理槽10に導入される。また、曝気装置18aにより、第1生物処理槽10内に空気等が供給される。第1生物処理槽10内の微生物を保持した担体22は、曝気装置18aにより供給された空気等の流れによって流動すると共に、有機物含有水と接触する。原水中の有機物は、第1生物処理槽10内の浮遊細菌及び担体22に保持された細菌により、好気条件で酸化分解される(生物処理される)。第1生物処理槽10において、所定の滞留時間で生物処理された処理水は、スクリーン20aによって、担体22と分離され、1次処理水として1次処理水排出ライン26から排出され、第2生物処理槽28に供給される。曝気装置18bにより第2生物処理槽28内に空気等が供給され、1次処理水中の有機物が、槽内の浮遊細菌により生物処理される。第2生物処理槽28において、所定の滞留時間で生物処理された2次処理水は、スクリーン20bを通って、沈殿槽30に供給される。沈殿槽30では、生物汚泥と処理水とに固液分離され、沈殿槽30内の上澄水が最終処理水として、処理水排出ライン16から排出される。また、沈殿槽30の底部に堆積した生物汚泥は、例えば定期的に、汚泥排出ライン32から排出され、生物汚泥の一部は、汚泥返送ライン34から第2生物処理槽28へ返送される。
【0047】
また、第1生物処理槽10内の担体22の肥大化が確認された場合に、鉄塩添加装置12から第1生物処理槽10内に鉄塩が添加され、担体22の肥大化が改善される。その結果、担体の流動性が回復し、スクリーンの閉塞が抑制される。
【0048】
本実施形態のように、流動床式生物処理槽と活性汚泥式の生物処理槽の組み合わせによる多段式の生物処理装置の場合には、担体の肥大化改善の観点から、少なくとも流動床式生物処理槽に鉄塩を添加すればよい。
【0049】
本実施形態の第2生物処理槽28は、担体22を用いていない活性汚泥式の生物処理槽であるが、第1生物処理槽10と同様に、微生物を保持する担体22を投入してもよい。第2生物処理槽28の担体充填率(第2生物処理槽28の有効容積に対する担体22のかさ堆積)は、5〜50%の範囲が好ましく、20〜40%の範囲がより好ましい。
【0050】
図4は、本実施形態に係る生物処理装置の他の構成の一例を示す模式図である。
図4の生物処理装置4において、
図1に示す生物処理装置1と同様の構成については同一の符号を付している。
図4に示す生物処理装置4は、第1生物処理槽10、第2生物処理槽36、鉄塩添加装置12、原水流入ライン14、1次処理水排出ライン26、処理水排出ライン16、汚泥排出ライン32を備えている。第1生物処理槽10は、微生物を保持するための担体22を収容し、有機物含有水を流動床式生物処理法により処理する流動床式生物処理槽であり、曝気装置18a、スクリーン20aを備えている。第2生物処理槽36は、主に浮遊細菌により有機物含有水を生物処理し、浸漬型分離膜により生物処理水を膜ろ過処理する膜分離活性汚泥槽であり、曝気装置18b、浸漬型分離膜モジュール38を備えている。
図4に示す第1生物処理槽10は、鉄塩添加装置12により鉄塩が供給される構成となっている。
【0051】
第2生物処理槽36内に設置された浸漬型分離膜モジュール38内には、浸漬型分離膜が設けられている。浸漬型分離膜は、従来から知られているものが用いられるが、設置面積を小さくすることが可能な点から、中空糸膜エレメントが望ましい。また、浸漬型分離膜の材質についても特に限定はないが、強度や薬品耐性に優れる点からポリフッ化ビニルデン多孔質膜が望ましい。
【0052】
第1生物処理槽10の流入口には、原水流入ライン14が接続されている。なお、原水流入ライン14を分岐させて、第2生物処理槽36に接続させ、原水の一部を第2生物処理槽36に流入させてもよい。また、1次処理水排出ライン26の一端は、第1生物処理槽10の排出口に接続され、他端は、第2生物処理槽36の流入口に接続されている。浸漬型分離膜モジュール38の排出口には、処理水排出ライン16が接続されている。また、第2生物処理槽36の汚泥排出口には、汚泥排出ライン32が接続されている。
【0053】
図4に示す生物処理装置4の動作の一例について説明する。有機物含有水(原水)は、原水流入ライン14から第1生物処理槽10に導入される。また、曝気装置18aにより、第1生物処理槽10内に空気等が供給される。第1生物処理槽10内の微生物を保持した担体22は、曝気装置18aにより供給された空気等の流れによって流動すると共に、有機物含有水と接触する。原水中の有機物は、第1生物処理槽10内の浮遊細菌及び担体22に保持された細菌等により、好気条件で酸化分解される(生物処理される)。第1生物処理槽10において、所定の滞留時間で生物処理された処理水は、スクリーン20aによって、担体22と分離され、1次処理水として1次処理水排出ライン26から排出され、第2生物処理槽36に供給される。曝気装置18bにより第2生物処理槽36内に空気等が供給され、1次処理水中の有機物が、槽内の浮遊細菌により生物処理される。第2生物処理槽36において、所定の滞留時間で生物処理された2次処理水は、浸漬型分離膜モジュール38によって膜ろ過処理される。膜ろ過処理された処理水が最終処理水として、処理水排出ライン16から排出される。また、第2生物処理槽36に堆積した生物汚泥は、例えば、定期的に汚泥排出ライン32から排出される。
【0054】
また、第1生物処理槽10内の担体22の肥大化が確認された場合に、鉄塩添加装置12から第1生物処理槽10内に鉄塩が添加され、担体22の肥大化が改善される。その結果、担体の流動性が回復し、スクリーンの閉塞が抑制される。
【0055】
本実施形態のように、流動床式生物処理槽と膜分離活性汚泥槽の組み合わせによる多段式の生物処理装置の場合には、担体の肥大化改善の観点から、少なくとも流動床式生物処理槽に鉄塩を添加すればよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
図1に示す生物処理装置を用いて試験を行った。容量6.7Lの生物処理槽にスポンジ担体を充填した。下記に示す組成の人工排水を原水とし、BOD濃度を500mg/Lに調整した。生物処理槽に空気を供給しながら、BOD調整後の原水を連続通水させた。そして、担体の肥大化確認後、塩化第一鉄を原水流量に対して、5mgFe/Lとなるように添加した。担体の肥大化は、定期的に槽内の担体を30個取り出し、担体表面に付着した生物汚泥の膜厚をノギスにより測定し、30個の膜厚の平均値が、1mmとなった時点とした。
<原水>
原水は、BOD濃度が500mg/Lとなるように、下記4種類を水道水に溶解して調整したものである。
ペプトン:380mg/L
カツオエキス:250mg/L
塩化ナトリウム:200mg/L
Na
2HPO
4:50mg/L
<試験条件>
試験期間中のBOD容積負荷:5kg/m
3/day
供給空気量:1.4L/min
担体充填率:20%(生物処理槽の有効容積に対する担体のかさ堆積)
【0058】
(比較例1)
担体の肥大化が確認された後も鉄塩を添加しないこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。
【0059】
実施例1及び比較例1では、通水開始から20日目に、担体の肥大化が確認された。実施例1では、担体の肥大化確認後、鉄塩を連続添加することにより、鉄塩添加開始直後から、生物汚泥が担体から剥離していくのが目視により観察され、鉄塩添加開始後15日目には、生物汚泥が担体の表面からほとんど全て剥離しているのが目視により観察された。したがって、担体の肥大化確認後、鉄塩を添加することにより、担体の肥大化が改善されたと言える。なお、鉄塩添加開始後25日目においても、担体の肥大化が確認されず、また、スクリーンの目詰まりや担体が底部に沈み流動しない等のトラブルも起きずに連続運転が可能であった。一方、比較例1では、担体の肥大化が確認されてから25日目までの間に、担体の肥大化が更に進行し、スクリーンの目詰まりや担体が底部に沈み流動しない等のトラブルが頻発した。
【0060】
実施例1において、担体の肥大化前、肥大化確認後、鉄塩添加開始後2日目、8日目、15日目、25日目のMLSS,MLVSS,MLVSS/MLSSを求め、表1にまとめた。また、比較例1においても、担体の肥大化前、肥大化確認後、担体の肥大化確認後から25日目(実施例1における鉄塩添加後25日目に相当)のMLSS,MLVSS,MLVSS/MLSSを求め、表1にまとめた。MLSS及びMLVSSは、槽内に投入した担体を30個取り出し、付着しているSSを剥離させ、下水試験法に記載の方法により測定した値である。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1では、担体の肥大化確認後のMLVSS/MLSSは98%であったが、担体から生物汚泥がほとんど剥離された鉄塩添加後15日目のMLVSS/MLSSは78%となり、担体の肥大化確認後のMLVSS/MLSS(%)から20%ポイント低下した。なお、比較例1では、担体の肥大化確認後から25日目のMLVSS、MLSS濃度は肥大化確認後のMLVSS、MLSSの値より増加していた。このことからも、担体の肥大化が進行していることがわかる。
【0063】
(実施例2)
BOD濃度が500mg/Lとなるように、スクロース、窒素、リンその他微量元素を水道水に溶解して調整した原水を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で試験した。
原水に溶解したスクロース:830mg/L
原水に溶解した窒素:25mg/L
原水に溶解したリン:5mg/L
【0064】
(比較例2)
担体の肥大化が確認された後も鉄塩を添加しないこと以外は、実施例2と同じ条件で試験を行った。
【0065】
図5は、実施例2の肥大化前、肥大化後、鉄塩添加開始後(2日目、8日目、11日目)の担体、比較例2の肥大化後21日目の担体の写真である。実施例2及び比較例2では、通水開始から10日目に、担体の肥大化が確認された。
図5に示すように、実施例2では、担体の肥大化確認後、鉄塩を添加することにより、鉄塩添加開始後11日目で、生物汚泥が担体の表面からほとんど全て剥離しているのが観察された。したがって、担体の肥大化確認後、鉄塩を添加することにより、担体の肥大化が改善されたと言える。なお、鉄塩添加開始後21日目においても、担体の肥大化が確認されず、また、スクリーンの目詰まりや担体が底部に沈み流動しない等のトラブルも起きずに連続運転が可能であった。一方、比較例2では、担体の肥大化が確認されてから21日目までの間に、担体の肥大化が更に進行し、スクリーンの目詰まりや担体が底部に沈み流動しない等のトラブルが頻発した。
【0066】
実施例2において、担体の肥大化前、肥大化確認後、鉄塩添加開始後2日目、8日目、11日目、21日目のMLSS,MLVSS,MLVSS/MLSSを求め、表2にまとめた。また、比較例2においても、担体の肥大化前、肥大化確認後、担体の肥大化確認後から21日目(実施例2における鉄塩添加開始後21日目に相当)のMLSS,MLVSS,MLVSS/MLSSを求め、表2にまとめた。MLSS及びMLVSSは、槽内に投入した担体を30個取り出し、付着しているSSを剥離させ、下水試験法に記載の方法により測定した値である。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例2では、担体の肥大化確認後のMLVSS/MLSSは98%であったが、担体から生物汚泥がほとんど剥離された鉄塩添加開始後11日目のMLVSS/MLSSは80%となった。なお、比較例2では、担体の肥大化確認後から21日目のMLVSS、MLSS濃度は、担体の肥大化確認後のMLVSS、MLSS濃度の値より増加していた。このことからも、担体の肥大化が進行していることがわかる。