(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173213
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】高温分解によって消火物質を生成する消火組成物
(51)【国際特許分類】
A62D 1/06 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
A62D1/06
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-528506(P2013-528506)
(86)(22)【出願日】2011年9月7日
(65)【公表番号】特表2013-541363(P2013-541363A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】CN2011079429
(87)【国際公開番号】WO2012034494
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2013年3月18日
【審判番号】不服2015-8433(P2015-8433/J1)
【審判請求日】2015年5月7日
(31)【優先権主張番号】201010285531.1
(32)【優先日】2010年9月16日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】316016427
【氏名又は名称】シーアン ウェストピース ファイヤー テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】クオ ホンパオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ ホンホン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ シアオチン
【合議体】
【審判長】
冨士 良宏
【審判官】
豊永 茂弘
【審判官】
日比野 隆治
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−523493(JP,A)
【文献】
特表2004−508182(JP,A)
【文献】
特表平7−503159(JP,A)
【文献】
米国特許第3972820(US,A)
【文献】
米国特許第6045637(US,A)
【文献】
特開平11−256165(JP,A)
【文献】
特表2007−521111(JP,A)
【文献】
特開2011−78564(JP,A)
【文献】
特開昭60−112489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温分解によって消火物質を生成できる消火組成物と、花火類薬剤とから構成され、
前記消火組成物は、加熱中に分解して消火性能を有する物質を放出する消火材料を含有し、前記消火材料の前記消火組成物における含有量は少なくとも80質量%であって、使用する場合、前記花火類薬剤を熱エネルギーソース及び動力ソースとし、前記花火類薬剤を燃焼させて、前記花火類薬剤が燃焼する際の高温で前記消火材料を分解し、前記消火性能を有する物質を生成させ、前記花火類薬剤の燃焼物と一緒に噴射して消火の目的を実現し、
前記花火類薬剤が花火類エーロゾル消火剤であることを特徴とする消火組成物アセンブリー。
【請求項2】
前記消火材料が、融点が100℃以上で、消火物質に分解できる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の消火組成物アセンブリー。
【請求項3】
前記消火材料が臭素系消火材料、塩素系消火材料、有機リン系消火材料、リン-ハロゲン系消火材料、窒素系及びリン-窒素系消火材料又は無機消火材料であることを特徴とする請求項1或いは2に記載の消火組成物アセンブリー。
【請求項4】
前記臭素系消火材料が、テトラブロモビスフェノ-ルA、テトラブロモビスフェノールAエーテル、1,2-ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、無水テトラブロモフタル酸、1,2-エチレン-ビス-(テトラブロモ-フタルイミド)、デカブロモジフェニルエーテル、テトラデカブロモ-1,4-ジフェノキシベンゼン、1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ブロモトリメチルフェニルヒドロインデン(BTMPI)、ペンタブロモベンジルアクリレート、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモシクロドデカン、N,N’-1,2-ビス(ジブロモノルボルニルジカルボイミド)エタン、臭素化スチレン重合体、テトラブロモビスフェノ-ルA炭酸エステルオリゴマー、ポリペンタブロモベンジルアクリレート又はポリジブロモフェニレンエーテルであることを特徴とする請求項3に記載の消火組成物アセンブリー。
【請求項5】
前記塩素系消火材料が、ドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテン、ヘット酸無水物、マイレックス、テトラクロロビスフェノールA、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビニル塩化ビニリデン共重合体又は塩素化ポリエーテルであることを特徴とする請求項3に記載の消火組成物アセンブリー。
【請求項6】
前記有機リン系消火材料が、1-オクソ-4-ヒドロキシメチル-2,6,7-トリオキサヘテロ-1-ホスファビシクロ[2,2,2]オクタン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレングリコール-ジ(ネオペンチルグリコール)ビスホスファート、9,10-ジヒドロ-9-オキサヘテロ-10-ホスファフェナントレン-10酸化物、ビス(4-カルボキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド又はポリスルホニルジフェニレンフェニルホスホン酸エステルオリゴマーであることを特徴とする請求項3に記載の消火組成物アセンブリー。
【請求項7】
前記リン-ハロゲン系消火材料が、トリ(2,2-ジ(ブロモメチル)-3-ブロモプロピル)リン酸エステル、トリ(ジブロモフェニル)リン酸エステル、3,9-ビス(トリブロモフェノキシ)-2,4,8,10,-テトラオキサヘテロ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]-3,9-ジオキサウンデカン、3,9-ビス(ペンタブロモフェノキシ)-2,4,8,10,-テトラオキサヘテロ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]-3,9-ジオキサウンデカン、1-オクソ-4-トリブロモフェノキシカルボニル-2,6,7-トリオキサヘテロ-1-ホスファビシクロ[2,2,2]オクタン、p-フェニレンテトラ(2,4,6-トリブロモフェニル)ビスホスファート、2,2-ジ(クロロメチル)-1,3-プロピレングリコール-ジ(ネオペンチルグリコール)ビスホスファート又は3,9-ジ(トリブロモネオペンチルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサヘテロ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]-3,9-ジオキサウンデカンであることを特徴とする請求項3に記載の消火組成物アセンブリー。
【請求項8】
前記窒素系及びリン-窒素系消火材料が、シアヌル酸トリポリシアナミド、オルトリン酸トリポリシアナミド、オルトリン酸ジトリポリシアナミド、ポリリン酸トリポリシアナミド、ホウ酸トリポリシアナミド、オクタモリブデン酸トリポリシアナミド、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸エステル、2,4-ジアミノ-6-(3,3,3-トリクロロプロピル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジ(N-ヒドロキシメチルアミノ)-6-(3,3,3-トリクロロプロピル-1,3,5-トリアジン)、リン酸水素二グアニジン、リン酸ジヒドログアニジン、炭酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン、尿素、リン酸ジヒドロ尿素、ビスシアナミド、ビス(2,6,7-トリオキサヘテロ-1-リンヘテロ-ビシクロ[2,2,2]オクタン-1-オクサ-4-メチル)ヒドロキシルリン酸エステルトリポリシアナミド、3,9-ジヒドロキシル-3,9-ジオキシ-2,4,8,10-テトラオキサヘテロ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ヘンデカン-3,9-ジトリポリシアナミド、1,2-ジ(2-オクソ-5,5-ジメチル-1,3-ジオキサオクソ-2-ホスファーシクロヘキシル-2-アミノ)エタン、N,N’-ビス(2-オクソ-5,5-ジメチル-1,3-ジオキサヘテロ-2-ホスファーシクロヘキシル)-2,2’-m−フェニレンジアミン、トリ(2-オクソ-5,5-ジメチル-1,3-ジオキサヘテロ-2-ヘテロシクロヘキシル-2-メチル)アミン又はホスホニトリル酸クロリド三量体であることを特徴とする請求項3に記載の消火組成物アセンブリー。
【請求項9】
前記無機消火材料が、ポリリン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸ジヒドロアンモニウム、リン酸亜鉛、りん酸アルミニウム、リン酸ホウ素、三酸化二アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロマグネサイト、アルカリ性シュウ酸アルミニウム、ほう酸亜鉛、メタほう酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛七水和物、ほう酸アルミニウムホイスカ、オクタモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、スズ酸亜鉛、酸化すず、フェロセン、アセトン鉄、酸化第二鉄、フェロ第二酸化鉄、タングステン酸ナトリウム、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化ジルコン酸カリウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム或硫酸バリウムであることを特徴とする請求項3に記載の消火組成物アセンブリー。
【請求項10】
前記消火材料が、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸コバルト、炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、炭酸マンガン、炭酸鉄、炭酸ストロンチウム、炭酸ナトリウムカリウム六水和物、炭酸カルシウム、ドロマイト、塩基性炭酸銅、炭酸ジルコニウム、炭酸ベリリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸セリウム、炭酸ランタン、炭酸グアニジン、炭酸リチウム、炭酸スカンジウム、炭酸バナジウム、炭酸クロミウム、炭酸ニッケル、炭酸イットリウム、炭酸銀、炭酸プラセオジム、炭酸ネオジム、炭酸サマリウム、炭酸ユ-ロピウム、炭酸ガドリニウム、炭酸テルビウム、炭酸ジスプロシウム、炭酸ホルミウム、炭酸エルビウム、炭酸ツリウム、炭酸イッテルビウム、炭酸ルテチウム、ヒドロキシ酢酸アルミニウム、酢酸カルシウム、酒石酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸亜鉛、酢酸ストロンチウム、酢酸ニッケル、酢酸銅、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸アンモニウム、シュウ酸ニッケル、シュウ酸マンガン二水和物、鉄窒化物、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カリウム、硝酸ジルコニウム、リン酸ジヒドロカルシウム、リン酸ジヒドロナトリウム、リン酸ジヒドロナトリウム二水和物、リン酸ジヒドロカリウム、リン酸ジヒドロアルミニウム、リン酸ジヒドロアンモニウム、リン酸ジヒドロ亜鉛、リン酸ジヒドロマンガン、リン酸ジヒドロマグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムマグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、メタリン酸カリウム、トリポリリン酸カリウム、トリメタリン酸ナトリウム、次亜リン酸アンモニウム、亜リン酸ジヒドロアンモニウム、リン酸マンガン、リン酸水素二亜鉛、リン酸水素二マンガン、リン酸グアニジン、リン酸メラミン塩、リン酸尿素、リン酸水素二メタホウ酸ストロンチウム、リン酸水素二メタホウ酸カリウム、ホウ酸、五ホウ酸アンモニウム、テトラホウ酸カリウム八水和物、メタホウ酸マグネシウム八水和物、テトラホウ酸アンモニウムテトラ水和物、メタホウ酸ストロンチウム、テトラホウ酸ストロンチウム、テトラホウ酸ストロンチウムテトラ水和物、テトラホウ酸ナトリウム十水和物、ホウ酸マンガン、ほう酸亜鉛、弗素ホウ酸アンモニウム、硫酸亜鉄アンモニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化ビスマス、水酸化ストロンチウム、水酸化セリウム、水酸化ランタン、水酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、スズ酸亜鉛、トリ珪酸マグネシウム、テルル酸、タングステン酸マンガン、水マンガン鉱、5-アミノテトラゾール、硝酸グアニジン、アゾジカーボンアミド、ナイロン粉、オキサミド、ビウレット、ペンタエリスリトール、デカブロモジフェニルエーテル、無水テトラブロモフタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸マンガン、クエン酸マグネシウム、クエン酸銅、クエン酸アンモニウム或ニトロ基グアニジンであることも可能であることを特徴とする請求項3に記載の消火組成物アセンブリー。
【請求項11】
20質量%以下の添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の消火組成物アセンブリー。
【請求項12】
前記添加剤が、ステアリン酸塩、グラファイト、水溶性高重合体配合溶液又は他の混合物であることを特徴とする請求項11に記載の消火組成物アセンブリー。
【請求項13】
各成分及びその含有量が、
消火材料:80質量%〜90質量%で、
添加剤:10質量〜20質量%であることを特徴とする請求項11に記載の消火組成物アセンブリー。
【請求項14】
表面被覆処理が施されたことを特徴とする前記請求項1乃至13のいずれかに記載の消火組成物アセンブリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防分野に関し、具体的には、消火組成物、化学消火物質の使用に関し、特に、高温分解によって消火物質を生成することのできる消火組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1987年カナダモントリオ-ル議定書にて各国に対し、HALON消火剤の代わりのものに関する具体的な目標を提出してから、世界各国では新しい消火技術の研究に努力していて、消火効率を向上しつつ、方向を環境汚染に対する影響を低減できる消火技術に向けている。
【0003】
気体消火システム、粉消火システム、水系消火システム等は、環境に無害であるので、HALON消火剤の代わりのものとして汎用されている。二酸化炭素、IG541等の不活性気体消火システムの消火メカニズムは主に、物理消火で、火災発生地の酸素濃度の低減による窒息消火を行い、このような消火方式によると、人員の人身安全を脅す恐れがあって、粉消火システムによると、加圧気体の作用で噴射される粉を火炎に接触させ、物理化学抑制作用による消火を行い、水系消火システムによると、霧の冷却、窒息、熱輻射の隔離の三種作用で火災を抑制して消す目的を実現する。
【0004】
しかし、上記消火システムによると、いずれも高圧貯蔵を行わなければならず、体積が大きいと共に、貯蔵中に物理的に爆発するリスクも存在し、文献「気体消火システムの安全性分析」(消防科学と技術2002 21(5))にて気体消火システムに存在するリスクを分析していて、使用中に発生した貯蔵気体消火システムの安全事故が上げられている。
【0005】
最近、HALONの入れ替え物質を研究していて、そのなか、米国標準と技術研究院の建築と防火研究センタ-の次世代消火技術プロジェクトグル-プ(NGP)は、新しい消火物質の発現のために大量の実験を行って、窒素、二酸化炭素、CF
3H気体をキャリアガスとし、高温の気体で実験物質を加熱し、実験物質は高温で分解し、気体と一緒に火炎に応用し、実験の結果、これらの実験物質が加熱後分解されて発生される物質は窒素、二酸化炭素、CF
3H気体による消火効果を明らかに高めることを発現した(Halon Options Technical Working Conference, April 2001, Albuquerque, NM, Suppression of cup-burner diffusion flames by super-effective chemical inhibitors and inert compounds; Combustion and Flame 129:221-238(2002) Inhibition of Premixed Methane Flame by Manganese and Tin Compounds,Halon Options Technical Working Conference May 2000, flame inhibition by ferrocene, alone and with CO2 and CF3H)。
【0006】
しかし、当該プロジェクトグル-プによる研究は実験室における理論研究に基づくものに過ぎず、実際の消火器に応用されていない。
【0007】
既存のエ-ロゾル消火剤は主に、S型とK型の消火剤で、その性能を総合に分析すると、エ-ロゾル消火剤はいずれも消火剤が酸化還元反応後に大量の気体、活性粒子を発生し、活性粒子の鎖切断反応、大量気体の被覆窒息によって化学と物理の結合による消火目的を実現する。エ-ロゾル消火剤は、燃焼反応によってエ-ロゾルを放出する共に、大量の熱を放出し、装置及びエ-ロゾルの温度を効率的に低下させて二次火災を防止するためには、冷却システムの追加が必要になり、これにより装置の構造が複雑になり、工程が複雑になり、コストが高まり、冷却システムが存在するので、大量の活性粒子が活性を失い、消火性能が大幅に低減される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既存の消火装置に鑑み、特にエ-ロゾル消火システムにおける特有の欠陥に鑑み、本発明は、圧力貯蔵する必要がなく、一層安全で、環境保護に一層効果的な消火組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による消火組成物は、高温分解によって消火物質を生成する消火組成物であって、高温分解によって消火物質を生成できる消火材料を含み、その含有量が80質量%以上である。
【0010】
本発明による消火組成物は、メイン消火材料としての高温分解によって消火物質を生成できる消火材料を含有する以外に、本分野で常用の各種添加剤を適量含有することができる。
【0011】
本発明による高温分解によって消火物質を生成できる消火組成物は、以下の効果を同時に実現することができる。一、高温分解によって消火物質を生成できる消火組成物は、加熱される時刻で消火物質を分解し、消火物質の物理又は化学抑制作用によって、又は物理及び化学の協同抑制作用で消火を行う。二、分解による産物の抑制作用により、火元の再燃焼の可能性を低下すると共に、消火剤の消火効果を一層向上できる。三、消火組成物は高温で加熱されると、すぐに吸熱分解し、花火薬剤が燃焼する際に放出する熱を効率的、且つ高速に低下し、消火装置のノズル及び噴射する物質の温度を大幅に低減し、消火装置の複雑な冷却システムを省略でき、二次火災のリスクもなくすことができる。四、消火組成物を簡単に加工でき、且つ、単独又は物理冷却剤と配合して使用できる。五、性能が安定で、長期貯蔵が容易である。六、無毒又は低毒で、環境にやさしい性能を有する。
【0012】
以下、本発明による高温分解で消火物質を生成する消火組成物を説明する。
【0013】
本発明による消火組成物は、高温分解によって消火物質を生成できる消火材料を含有し、その含有量は80質量%以上である。
【0014】
高温分解によって消火物質を生成する消火組成物の火炎抑制メカニズムは、消火組成物が高温で分解して消火物質を放出し、当該消火物質は、遊離基を介して鎖式燃焼反応に必要なO、OH、H遊離基の中の一つ又は複数と反応して鎖式燃焼反応を切断し、または、物理作用によって酸素分圧を減少して火炎を抑制し、又は物理及び化学抑制作用を同時に発生させて消火効果を実現すると共に、花火薬剤と協同して効果を高める作用を発生し、消火剤の消火効果をさらに向上し、有効消火時間を大幅に短縮できる。
【0015】
消火組成物の常温での性能安定性を保証し、簡単に長期貯蔵するため、上記高温分解によって消火物質を生成する消火組成物の融点が100℃以上であることが好ましく、臭素系消火材料であるテトラブロモビスフェノ-ルA、テトラブロモビスフェノ-ルAエ-テル、1,2-ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、1,2-エチレン-ビス-(テトラブロモ-フタルイミド)、4-ブロモフタル酸ジメチル、テトラブロモフタル酸二ナトリウム、デカブロモジフェニルエ-テル、テトラデカブロモ-1,4-ジフェノキシベンゼン、1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、BTMPI、ペンタブロモベンジルアクリレート、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモシクロドデカン、N,N’-1,2-ビス(ジブロモノルボルニルジカルボイミド)エタン、ペンタブロモクロロヘキサン、臭素化スチレン共重合体、テトラブロモビスフェノ-ルA炭酸エステルオリゴマー、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、ポリジブロモフェニレンエーテル、塩素系消火材料である
ドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテン、ヘット酸無水物、マイレックス、テトラクロロビスフェノールA、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビニル塩化ビニリデン共重合体、塩素化ポリエーテル、有機リン系消火材料である1-オクソ-4-ヒドロキシメチル-2,6,7-トリオキサヘテロ-1-ホスファビシクロ[2,2,2]オクタン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレングリコール-ジ(ネオペンチルグリコール)ビスホスファート、9,10-ジヒドロ-9-オキサヘテロ-10-ホスファフェナントレン-10酸化物、ビス(4-カルボキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ポリスルホニルジフェニレンフェニルホスホン酸エステルオリゴマー、リン-ハロゲン系消火材料であるトリ(2,2-ジ(ブロモメチル)-3-ブロモプロピル)リン酸エステル、トリ(ジブロモフェニル)リン酸エステル、3,9-ビス(トリブロモフェノキシ)-2,4,8,10,-テトラオキサヘテロ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]-3,9-ジオキサウンデカン、3,9-ビス(ペンタブロモフェノキシ)-2,4,8,10,-テトラオキサヘテロ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]-3,9-ジオキサウンデカン、1-オクソ-4-トリブロモフェノキシカルボニル-2,6,7-トリオキサヘテロ-1-ホスファビシクロ[2,2,2]オクタン、p-フェニレンテトラ(2,4,6-トリブロモフェニル)ビスホスファート、2,2-ジ(クロロメチル)-1,3-プロピレングリコール-ジ(ネオペンチルグリコール)ビスホスファート、2,9-ジ(トリブロモネオペンチルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサヘテロ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]-3,9-ジオキサウンデカン、窒素系及びリン-窒素系消火材料であるシアヌル酸トリポリシアナミド、オルトリン酸トリポリシアナミド、オルトリン酸ジトリポリシアナミド、ポリリン酸トリポリシアナミド、ホウ酸トリポリシアナミド、オクタモリブデン酸トリポリシアナミド、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸エステル、2,4-ジアミノ-6-(3,3,3-トリクロロプロピル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジ(N-ヒドロキシメチルアミノ)-6-(3,3,3-トリクロロプロピル-1,3,5-トリアジン)、リン酸水素二グアニジン、リン酸ジヒドログアニジン、炭酸グアニジン、アミノスルファミン酸グアニジン、尿素、リン酸ジヒドロ尿素、ビスシアナミド、ビス(2,6,7-トリオキサヘテロ-1-リンヘテロ-ビシクロ[2,2,2]オクタン-1-オクサ-4-メチル)ヒドロキシルリン酸エステルトリポリシアナミド、3,9-ジヒドロキシル-3,9-ジオキシ-2,4,8,10-テトラオキサヘテロ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ヘンデカン-3,9-ジトリポリシアナミド、1,2-ジ(2-オクソ-5,5-ジメチル-1,3-ジオキサオクソ-2-ホスファーシクロヘキシル-2-アミノ)エタン、N,N’-ビス(2-オクソ-5,5-ジメチル-1,3-ジオキサオクソ-2-ホスファーシクロヘキシル)-2,2’-m−フェニレンジアミン、トリ(2-オクソ-5,5-ジメチル-1,3-ジオキサ-オクソヘテロ-2-ヘテロシクロヘキシル-2-メチル)アミン、ホスホニトリル酸クロリド三量体、無機消火材料であるポリリン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸ジヒドロアンモニウム、リン酸亜鉛、りん酸アルミニウム、リン酸ホウ素、三酸化二アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロマグネサイト、アルカリ性シュウ酸アルミニウム、ほう酸亜鉛、メタほう酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛七水和物、ほう酸アルミニウムホイスカ、オクタモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、スズ酸亜鉛、酸化すず、フェロセン、アセトン鉄、酸化第二鉄、フェロ第二酸化鉄(ferroferric oxide)、タングステン酸ナトリウム、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化ジルコン酸カリウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムであることができる。
【0016】
また、他の分解温度が100°以上である場合に消火物質を分解する化学物質である炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸コバルト、炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、炭酸マンガン、炭酸鉄、炭酸ストロンチウム、炭酸ナトリウムカリウム六水和物、炭酸カルシウム、ドロマイト、塩基性炭酸銅、炭酸ジルコニウム、炭酸ベリリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸セリウム、炭酸ランタン、炭酸グアニジン、炭酸リチウム、炭酸スカンジウム、炭酸バナジウム、炭酸クロミウム、炭酸ニッケル、炭酸イットリウム、炭酸銀、炭酸プラセオジム、炭酸ネオジム、炭酸サマリウム、炭酸ユ-ロピウム、炭酸ガドリニウム、炭酸テルビウム、炭酸ジスプロシウム、炭酸ホルミウム、炭酸エルビウム、炭酸ツリウム、炭酸イッテルビウム、炭酸ルテチウム、ヒドロキシ酢酸アルミニウム、酢酸カルシウム、
酒石酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸亜鉛、酢酸ストロンチウム、酢酸ニッケル、酢酸銅、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸アンモニウム、シュウ酸ニッケル、シュウ酸
マンガン二水和物、鉄窒化物、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カリウム、硝酸ジルコニウム、リン酸ジヒドロカルシウム、リン酸ジヒドロナトリウム、リン酸ジヒドロナトリウム二水和物、リン酸ジヒドロカリウム、リン酸ジヒドロアルミニウム、リン酸ジヒドロアンモニウム、リン酸ジヒドロ亜鉛、リン酸ジヒドロマンガン、リン酸ジヒドロマグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムマグネシウム、ポリリン酸アンモニウム,メタリン酸カリウム,トリポリリン酸カリウム,トリメタリン酸ナトリウム、次亜リン酸アンモニウム、亜リン酸ジヒドロアンモニウム、リン酸マンガン、リン酸水素二亜鉛、リン酸水素二マンガン、リン酸グアニジン、リン酸メラミン塩、リン酸尿素、リン酸水素二メタホウ酸ストロンチウム、リン酸水素二メタホウ酸カリウム、ホウ酸、五ホウ酸アンモニウム、テトラホウ酸カリウム八水和物、メタホウ酸マグネシウム八水和物、テトラホウ酸アンモニウムテトラ水和物、メタホウ酸ストロンチウム、テトラホウ酸ストロンチウム、テトラホウ酸ストロンチウムテトラ水和物、テトラホウ酸ナトリウム十水和物、ホウ酸マンガン、ほう酸亜鉛、弗素ホウ酸アンモニウム、硫酸亜鉄アンモニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム,水酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化ビスマス、水酸化ストロンチウム、水酸化セリウム、水酸化ランタン、水酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、スズ酸亜鉛,トリ珪酸マグネシウム、テルル酸、タングステン酸マンガン、水マンガン鉱、5-アミノテトラゾール、硝酸グアニジン、アゾジカーボンアミド、ナイロン粉、オキサミド、ビウレッ
ト、ペンタエリスリトール、デカブロモジフェニルエーテル、無水テトラブロモフタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸マンガン、クエン酸マグネシウム、クエン酸銅、クエン酸アンモニウム、ニトロ基グアニジンであることもできる。
【0017】
必要に応じて、本発明の消火組成物に、例えばステアリン酸塩、グラファイト、水溶性高重合体配合溶液又は他の混合物などの各種の添加剤を添加することができ、当該添加剤の含有量は20質量%以下である。
【0018】
本発明による消火組成物の各成分及びその含有量が、
消火材料:80質量%〜90質量%、
添加剤:10質量〜20質量%であることが好ましい。
【0019】
本発明による消火組成物を、製丸、型押、押し出し等の工程によって球状、シ-ト状、細長状、塊状、蜂巣状に成型し、また、表面被覆処理を行うことができる。表面被覆処理を行う場合、ヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースを表面被覆剤とすることが好ましい。当該表面被覆剤は、組成物系の表面平滑度を改善でき、また、その強度、耐磨耗性、耐震力も向上でき、運送中の消火組成物が粉化し、くずが落ちて消火装置からあふれることを防止できる。
【0020】
以下、実施例によって本発明による消火組成物を具体的に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
表1の消火材料及び添加剤により製造された消火組成物30gをそれぞれ、20gのK型エーロゾル発生剤が投入されている消火装置に加入し、それぞれ、1.0m
3試験室にて分布型火炎に消火試験を行って、各組のサンプルに対しそれぞれ3回テストし、消火数量及び残留量を記録した。試験結果は表1に示すとおりである。
【0022】
比較例として、それぞれ20gの市販の常用のS型エーロゾル消火剤又はK型エーロゾル消火剤が投入されている消火装置サンプルを、同様の1.0m
3試験室で分布型火炎に消火試験を行って、各組のサンプルに対し3回テストし、消火数量及び残留量を記録した。実験結果は表1に示すとおりである。
【0024】
上記の表に示す消火状況は、3回の試験中の最も少ない消火数を示し、残留量は3回の試験の平均値であって、上記表に示すように、本発明の実施例1-9に係わる消火組成物によると、1.0m
3試験室にて分布型火炎に消火試験を行った場合の消火性能はいずれも比較例1、2に比べ優れていて、残留量も比較例1、2に比べ少ない。
【0025】
実験方法は、GA499-2004の7.13の濃度分布試験方法に従って、1m
3の実験室にて消火試験を行っていて、試験室に合計五つの鋼質の試験タンクが投入されていて、四つの燃料タンクをそれぞれ実験空間の四つの角に置き、二つが上、二つが下で交互に置き、そして、遮断パネル後ろの実験空間の底部に一つの燃料タンクを置いた。燃料タンクにヘプタンを加入し、クッション部として底部に水を入れる。
【0026】
上記の具体的な実施例は例に過ぎず、本発明による上記示唆で、当業者であれば上記実施例を元にさまざまな改善、変形を行うことができるが、このような改善又は変形はいずれも本発明の保護範囲内のものである。上記の説明は本発明を解釈するためのもので、本発明を限定するものではない。