(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0021】
まず、本発明の実施形態による電力供給装置100とこの周辺部の回路構成を、
図1を参照しながら説明する。なお、
図1において、実線は電力系配線を示し、破線は制御系配線または通信系配線を示している(
図2〜
図7においても同様)。
【0022】
図1に示す、電力供給装置100、バッテリ11、蓄電部12、スタータモータ14、発電機15、被保護負荷16、負荷17、および上位ECU(電子制御装置)18は、車両に搭載されている。その車両は、アイドリングストップ機能と減速回生機能とを有している。
【0023】
バッテリ11は、たとえば満充電電圧が12Vの鉛バッテリから成り、本発明の「直流電源」の一例である。蓄電部12は、たとえば満充電電圧が24Vの電気二重層キャパシタから成る。他の例として、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、またはニッケル水素充電池などから、蓄電部12を構成してもよい。
【0024】
スタータモータ14は、図示しない車両のエンジンを始動するために駆動される。スタータモータ14には、駆動時に大電流が流れる。スタータモータ14は、本発明の「電動機」の一例である。発電機15は、たとえばACジェネレータなどから成り、エンジンによって駆動され、電力を発生する。たとえば、車両の通常走行時に、バッテリ11の電圧が低下した場合は、エンジンの駆動力により、発電機15を駆動して発電を行う。また、アクセルペダルが解放されたときなどの車両の減速時にも、エンジンの駆動力により、発電機15を駆動して発電を行う。この減速時の発電機15が発生した電力を回生電力と呼ぶ。なお、通常走行時に、バッテリ11の電圧が十分である場合には、発電機15による発電は行わない。
【0025】
被保護負荷16は、車両のアイドリングストップ中も電力を供給する必要があり、かつアイドリングストップ後のエンジンの再始動時に、供給電圧が下がらないように保護する必要がある電装品から成る。被保護負荷16には、たとえば、ナビゲーション、オーディオ、エアコン、メータ、トランスミッション、および安全装置などが含まれている。負荷17は、車両のアイドリングストップ中に使用しない電装品から成る。負荷17には、たとえば、ヘッドライトなどが含まれている。
【0026】
上位ECU18は、CAN(Controller Area Network)により、電力供給装置100と接続されている。上位ECU18は、車両の状態を示す情報などを電力供給装置100に対して送信する。
【0027】
電力供給装置100は、電力経路L1〜L3、接続点P、接続端子C1〜C3、制御部4、スイッチング素子5、DC−DCコンバータ6、および電圧測定器7、8を備えている。
【0028】
第1電力経路L1の一端は、第1接続端子C1に接続されている。第1接続端子C1には、蓄電部12の一端が接続されている。蓄電部12の他端は、グランドに接地されている。第2電力経路L2の一端は、第2接続端子C2に接続されている。第2接続端子C2には、被保護負荷16の一端が接続されている。被保護負荷16の他端は、グランドに接地されている。被保護負荷16は、本発明の「第1負荷」の一例である。
【0029】
第3電力経路L3の一端は、第3接続端子C3に接続されている。第3接続端子C3には、バッテリ11、発電機15、および負荷17のそれぞれの一端が接続されているとともに、スタータモータ14の一端がリレースイッチ13を介して接続されている。バッテリ11、発電機15、スタータモータ14、および負荷17のそれぞれの他端は、グランドに接地されている。したがって、発電機15、スタータモータ14、および負荷17は、バッテリ11と並列に接続されている。スタータモータ14と負荷17は、本発明の「第2負荷」の一例である。
【0030】
第1ないし第3電力経路L1〜L3の各他端同士は、接続点Pで接続されている。第1電力経路L1には、DC−DCコンバータ6が設けられている。DC−DCコンバータ6は、双方向の昇降圧機能を有している。
【0031】
第3電力経路L3には、スイッチング素子5が設けられている。スイッチング素子5は、寄生ダイオードが並列に接続されたFET(電界効果トランジスタ)から成る。スイッチング素子5において、ソースは、寄生ダイオードのカソードと接続点Pとに接続され、ドレインは、寄生ダイオードのアノードと第3接続端子C3とに接続されている。スイッチング素子5のゲートには、スイッチ制御部4bから駆動信号が印加される。
【0032】
制御部4は、CPUとメモリから成る。制御部4には、CAN通信部4a、スイッチ制御部4b、およびDC−DC制御部4cが設けられている。
【0033】
CAN通信部4aは、上位ECU18との間でCAN通信を行う。たとえば、CAN通信部4aは、上位ECU18から送信された車両の状態を示す情報、信号、および動作指示などを受信し、上位ECU18に対して種々の情報と信号を送信する。
【0034】
スイッチ制御部4bは、スイッチング素子5のゲートにPWM信号を印加して、スイッチング素子5をスイッチング動作(オン・オフ)させる。具体的には、スイッチング素子5が
図1のようなPチャンネル型のFETの場合、ゲートに印加されるPWM信号のローレベル期間でスイッチング素子5がオンして、第3電力経路L3が閉路される。また、ゲートに印加されるPWM信号のハイレベル期間でスイッチング素子5がオフして、第3電力経路L3が開路される。
【0035】
このように、スイッチング素子5をPWM信号で駆動することで、スイッチング素子5のオフ・オフが繰り返されて、第3電力経路L3に電流が流れる。その際、単位時間におけるスイッチング素子5のオン期間とオフ期間の割合(PWM信号のデューティ比)を変化させることで、第3電力経路L3の電力供給量が可変となる。つまり、スイッチ制御部4bは、スイッチング素子5のスイッチング動作をチョッパ制御する。
【0036】
DC−DC制御部4cは、DC−DCコンバータ6の動作を制御して、蓄電部12を充放電する。また、DC−DC制御部4cは、DC−DCコンバータ6の出力電圧を制御する。
【0037】
第1電力経路L1と第2電力経路L2には、電圧測定器8、7がそれぞれ接続されている。そのうち、供給先用の電圧測定器7は、第2電力経路L2を通して被保護負荷16に供給される電圧Vaを計測する。供給元用の電圧測定器8は、蓄電部12の電圧Vbを計測する。制御部4は、電圧測定器7、8の計測結果に基づいて、スイッチング素子5とDC−DCコンバータ6の動作を制御する。電圧測定器7は、本発明の「第1電圧測定器」に相当し、電圧測定器8は、本発明の「第2電圧測定器」に相当する。
【0038】
次に、電力供給装置100とその周辺部の電力の流れを、
図2〜
図6を参照しながら説明する。
【0039】
運転手がアクセルペダルを解放したり、ブレーキペダルを踏み込んだりして、走行中の車両が減速すると、
図2に示すように、発電機15で回生電力を発生させる。このように回生電力を発生させる際に、スイッチ制御部4bがスイッチング素子5をオンし続け、DC−DC制御部4cがDC−DCコンバータ6の動作を制御して、回生電力により蓄電部12を充電させる(
図2の#1)。詳しくは、発電機15で発生させた回生電力が第3電力経路L3と第1電力経路L1によりDC−DCコンバータ6に導かれ、DC−DCコンバータ6で回生電力の電圧を蓄電部12に対応する電圧に変換(昇圧または降圧)して、該変換後の電力を蓄電部12に蓄える。
【0040】
また、発電機15で発生させた回生電力は、第3電力経路L3と第2電力経路L2により被保護負荷16に供給されたり(
図2の#2)、電力供給装置100を経由せずに負荷17に供給されたりする(
図2の#3)。さらに、バッテリ11の電圧が低下している場合は、回生電力によりバッテリ11が充電される(
図2の#4)。対して、バッテリ11の電圧が低下していない場合は、バッテリ11の電力が第3電力経路L3と第2電力経路L2により被保護負荷16に供給されたり(
図2の#5)、負荷17に供給されたりする(
図2の#6)。つまり、回生電力の発生時は、回生電力やバッテリ11の電力により、被保護負荷16と負荷17が駆動される。
【0041】
一方、車両の停車時(アイドリングストップ中など)は、発電機15で発電がされなくなる。また、車両が減速せずに通常走行している際(加速時や一定走行時)に、バッテリ11の電圧が十分であるような場合は、車両の燃料消費率を向上させるため、発電機15で発電させない。このような発電機15の非発電時(少なくとも回生電力が発生していないとき)は、DC−DC制御部4cがDC−DCコンバータ6により蓄電部12の放電を開始する(
図3〜
図6の#1)。そして、
図3〜
図6に示すように、電圧測定器8で計測された蓄電部12の電圧Vbと、電圧測定器7で計測された被保護負荷16の供給電圧Vaとに基づいて、スイッチング素子5のスイッチング動作が制御され、蓄電部12の電力の供給状態が変化する。以下、これについて詳述する。
【0042】
図3に示すように、蓄電部12の電圧Vbが所定の基準値Vβ以上であり(Vb≧Vβ)、かつ被保護負荷16の供給電圧Vaが所定の基準値Vα以上である(Va≧Vα)場合は、スイッチ制御部4bがスイッチング素子5をオンし続ける。詳しくは、スイッチング素子5のゲートに印加するPWM信号のレベルを、ローレベルに維持する。また、DC−DC制御部4cがDC−DCコンバータ6の動作を制御して、蓄電部12の電力を負荷16、17に供給する。詳しくは、蓄電部12からの直流電圧をDC−DCコンバータ6で負荷16、17に対応する直流電圧に変換(昇圧または降圧)して、該変換後の電力を各電力経路L1、L2、L3により負荷16、17に供給する(
図3の#1、#2、#3)。このとき、蓄電部12から負荷16、17への電力供給量は、それぞれ制限されない。
【0043】
またこのとき、バッテリ11の電圧が低い場合は、蓄電部12の電力によりバッテリ11が充電される(
図3の#4)。対して、バッテリ11の電圧が低くない場合は、バッテリ11の電力も負荷16、17に供給される(
図3の#5と#6)。上記のように、発電機15の非発電時において、蓄電部12の電圧Vbが基準値Vβ以上であり、かつ被保護負荷16の供給電圧Vaが基準値Vα以上である場合は、蓄電部12やバッテリ11の電力により負荷16、17が駆動される。
【0044】
なお、上記において、蓄電部12の電圧Vbと比較する基準値Vβは、たとえば、負荷17やスタータモータ14を駆動するために蓄電部12の電力を使用した場合に、残りの蓄電部12の電力で被保護負荷16を駆動できなくなるときの、蓄電部12の電圧値に設定されている。また、被保護負荷16の供給電圧Vaと比較する基準値Vαは、たとえば、負荷17やスタータモータ14を駆動するために蓄電部12の電力を無制限に使用した場合に、残りの蓄電部12の電力で被保護負荷16を駆動できなくなるときの、DC−DCコンバータ6の出力(接続点P側の出力)の電圧値に設定されている。
図4以降においても同様である。基準値Vαは、本発明の「第1基準値」に相当し、基準値Vβは、本発明の「第2基準値」に相当する。
【0045】
図4に示すように、蓄電部12の電圧Vbが基準値Vβ以上であり(Vb≧Vβ)、かつ被保護負荷16の供給電圧Vaが基準値Vαより低い(Va<Vα)場合は、スイッチ制御部4bが、供給電圧Vaに応じてスイッチング素子5のスイッチング動作をチョッパ制御する。具体的には、供給電圧Vaが下がるに連れて、スイッチング素子5のオン期間を短くし、供給電圧Vaが上がるに連れて、スイッチング素子5のオン期間を長くして、スイッチング素子5のオン・オフを繰り返す。このとき、PWM信号のデューティ比は、0%より大きくて、100%より小さい値に設定される。また、DC−DC制御部4cがDC−DCコンバータ6の動作を制御して、蓄電部12の電力を負荷16、17に供給する(
図4の#1、#2、#3)。これにより、蓄電部12から負荷17への電力供給量が、スイッチング素子5のオフ期間に応じて制限され、被保護負荷16の駆動に必要な電力が被保護負荷16に供給可能となる(
図4の#2)。
【0046】
またこのときも、バッテリ11の電圧が低い場合は、蓄電部12の電力がバッテリ11の充電に使用される(
図4の#4)。対して、バッテリ11の電圧が低くない場合は、バッテリ11の電力も負荷16、17に供給される(
図4の#5、#6)。このバッテリ11から被保護負荷16への電力供給量も、スイッチング素子5のオフ期間に応じて制限される。上記のように、発電機15の非発電時において、蓄電部12の電圧Vbが基準値Vβ以上であり、かつ被保護負荷16の供給電圧Vaが基準値Vαより低い場合も、蓄電部12やバッテリ11の電力により負荷16、17は駆動される。然るに、蓄電部12から負荷17への電力供給量や、バッテリ11から被保護負荷16への電力供給量は、スイッチング素子5のオフ期間に応じて制限される。
【0047】
車両のアイドリングストップ後に、エンジンを再始動する際は、
図5に示すように、リレースイッチ13がオンして、スタータモータ14が駆動される。この際も、蓄電部12の電圧Vbが基準値Vβ以上であり(Vb≧基準値Vβ)、かつ被保護負荷16の供給電圧Vaが基準値Vαより低い(Va<Vα)場合は、スイッチ制御部4bがスイッチング素子5をチョッパ制御して、繰り返しオン・オフさせる。また、DC−DC制御部4cがDC−DCコンバータ6の動作を制御して、蓄電部12の電力を負荷16、17と、さらにスタータモータ14にも供給する(
図5の#1、#2、#3、#4)。
【0048】
スタータモータ14の駆動時には、スタータモータ14に大電流が流れて、被保護負荷16の供給電圧Vaが低下する。これが電圧測定器7により検出されると、スイッチ制御部4bは、スイッチング素子5のオン期間を、
図4の場合よりさらに短くする。これにより、蓄電部12からスタータモータ14と負荷17に供給される電力量がさらに制限されるので(
図5の#3’)、供給電圧Vaが低下しても、被保護負荷16の駆動に必要な電力が被保護負荷16に供給可能となる(
図5の#2)。この結果、被保護負荷16が安定して駆動を継続することが可能となる。
【0049】
そして、
図6に示すように、蓄電部12の電圧Vbが基準値Vβより低くなった場合(Vb<Vβ)は、スイッチ制御部4bがスイッチング素子5をオフし続ける。詳しくは、スイッチング素子5のゲートに印加するPWM信号のレベルを、ハイレベルに維持する。また、DC−DC制御部4cは、DC−DCコンバータ6の動作を制御して、蓄電部12の電力を被保護負荷16にだけ供給する(
図6の#1、#2)。スイッチング素子5がオフのため、蓄電部12の電力は負荷17に供給されない。このため、被保護負荷16の駆動に必要な電力が、被保護負荷16に供給可能となり、被保護負荷16が安定に駆動を継続する。負荷17には、バッテリ11の電力が供給される(
図6の#3)。
【0050】
一方、車両が通常走行している際に、エンジンの駆動力により、
図7に示すように、発電機15で発電されることもある。この場合、スイッチ制御部4bは、スイッチング素子5をオンし続ける。このため、発電機15の発電電力が、第3電力経路L3と第2電力経路L2により、被保護負荷16に供給される(
図7の#1)。また、発電機15の発電電力は、負荷17にも供給される(
図7の#2)。さらに、バッテリ11の電圧が低下している場合は、発電機15の発電電力によりバッテリ11が充電される(
図7の#3)。対して、バッテリ11の電圧が低下していない場合は、バッテリ11の電力が負荷16、17に供給される(
図7の#4、#5)。つまり、回生電力が発生しない発電機15の通常発電時は、発電機15の発電電力やバッテリ11の電力により、負荷16、17が駆動される。
【0051】
次に、電力供給装置100とその周辺部の動作の一例を、
図2〜
図10を参照しながら説明する。
【0052】
運転手により、図示しない車両のアクセサリスイッチやイグニッションスイッチがオン操作されて、車両が起動すると、制御部4は、上位ECU18からの充放電指示を待つ(
図8のステップS1、S3)。
【0053】
発電機15で回生電力を発生させようとする際は、上位ECU18が、蓄電部12を充電するための充電指示を電力供給装置100に対して送信する。この充電指示をCAN通信部4aにより受信すると(
図8のステップS1:YES)、制御部4は充電制御を実行する(
図8のステップS2、
図9)。
【0054】
詳しくは、充電制御が開始されると、まず、スイッチ制御部4bがスイッチング素子5をオンし(
図9のステップS11)、DC−DC制御部4cがDC−DCコンバータ6の動作を開始させて、発電機15の回生電力で蓄電部12を充電する(
図9のステップS12、
図2)。
【0055】
その後、発電機15で回生電力の発生を停止しようとする際は、上位ECU18が、蓄電部12の充電を停止させるための充電停止指示を電力供給装置100に対して送信する。この充電停止指示をCAN通信部4aにより受信すると(
図9のステップS13:YES)、DC−DC制御部4cがDC−DCコンバータ6の動作を停止させ(
図9のステップS14)、スイッチ制御部4bがスイッチング素子5をオフする(
図9のステップS15)。これにより蓄電部12の充電制御が終了する。
【0056】
充電制御が終了した後、車両の駆動が停止されなければ(
図8のステップS5:NO)、制御部4は、再び上位ECU18からの充放電指示を待つ(
図8のステップS1、S3)。
【0057】
一方、発電機15で発電させないときは、上位ECU18が、蓄電部12を放電させるための放電指示を電力供給装置100に対して送信する。この放電指示をCAN通信部4aにより受信すると(
図8のステップS3:YES)、制御部4は放電制御を実行する(
図8のステップS4、
図10)。
【0058】
詳しくは、放電制御が開始されると、まず、DC−DC制御部4cがDC−DCコンバータ6の動作を開始させて、蓄電部12を放電する(
図10のステップS21)。次に、制御部4が、電圧測定器7により被保護負荷16の供給電圧Vaを計測し、かつ電圧測定器8により蓄電部12の電圧Vbを計測する(
図10のステップS22)。
【0059】
そして、蓄電部12の電圧Vbが基準値Vβ以上であり(
図10のステップS23:YES)、かつ、被保護負荷16の供給電圧Vaが基準値Vα以上であれば(
図10のステップS24:YES)、通常モードに入り、スイッチ制御部4bがスイッチング素子5をオンする(
図10のステップS25)。これにより、
図3に示したように、蓄電部12の電力が、スイッチング素子5で制限されることなく負荷16、17に供給される。
【0060】
この後、上位ECU18から放電停止指示がなければ(
図10のステップS28:NO)、再び制御部4は、電圧測定器7、8により被保護負荷16の供給電圧Vaと蓄電部12の電圧Vbを計測する(
図10のステップS22)。
【0061】
一方、蓄電部12の電圧Vbが基準値Vβ以上であり(
図10のステップS23:YES)、かつ、被保護負荷16の供給電圧Vaが基準値Vαより低ければ(
図10のステップS24:NO)、電力制限モードに入る(
図10のステップS26)。この電力制限モードでは、スイッチ制御部4bが、被保護負荷16の供給電圧Vaに応じて、スイッチング素子5のスイッチング動作をチョッパ制御する。
【0062】
詳しくは、スイッチ制御部4bは、被保護負荷16の供給電圧Vaの大きさに応じて、スイッチング素子5のゲートに印加するPWM信号のデューティ比を設定し、このPWM信号によりスイッチング素子5を繰り返しオン・オフする。これにより、
図4および
図5に示したように、蓄電部12の電力が、負荷17やスタータモータ14には制限されながら供給され、被保護負荷16には制限されることなく供給される。
【0063】
他方、蓄電部12の電圧Vbが基準値Vβより低ければ(
図10のステップS23:NO)、供給先限定モードに入り、スイッチ制御部4bが、スイッチング素子5をオフする(
図10のステップS27)。これにより、
図6に示したように、蓄電部12の電力が被保護負荷16のみに供給され、負荷17やスタータモータ14には供給されなくなる。
【0064】
その後、たとえば発電機15で発電させようとする場合、上位ECU18が、放電停止指示を電力供給装置100に対して送信する。この放電停止指示をCAN通信部4aにより受信すると(
図10のステップS28:YES)、DC−DC制御部4cがDC−DCコンバータ6の動作を停止させ(
図10のステップS29)、スイッチ制御部4bがスイッチング素子5をオフする(
図10のステップS30)。これにより蓄電部12の放電制御が終了する。
【0065】
放電制御が終了した後、車両の駆動が停止されなければ(
図8のステップS5:NO)、制御部4は、再び上位ECU18からの充放電指示を待つ(
図8のステップS1、S3)。
【0066】
そして、運転手によりアクセサリスイッチやイグニッションスイッチがオフ操作されて、車両の駆動が停止すると(
図8のステップS5:YES)、制御部4および電力供給装置100の駆動も停止する。
【0067】
上記実施形態によると、蓄電部12の放電時に、スイッチング素子5のスイッチング動作をチョッパ制御することで、蓄電部12の電力を、被保護負荷16に供給しつつ、負荷17やスタータモータ14に制限しながら供給することができる。つまり、負荷17やスタータモータ14に供給する電力を制限した分、被保護負荷16に供給する電力を多く確保することができる。よって、蓄電部12の電力を複数の供給先16、17、14に分配供給しつつ、供給先に応じて電力供給量を変えることが可能となる。この結果、バッテリ11の放電を抑制することができるとともに、被保護負荷16に安定に電力を供給して、被保護負荷16の駆動を継続させることができる。
【0068】
また、上記実施形態では、スタータモータ14の駆動時に、バッテリ11の電力だけでなく、蓄電部12の電力もスタータモータ14に供給するので、バッテリ11の大量放電を抑制することができる。またその際、スイッチング素子5のスイッチング動作をチョッパ制御して、蓄電部12からスタータモータ14に供給する電力を制限するので、被保護負荷16に供給する電力を多く確保することができ、被保護負荷16を安定に駆動し続けることが可能となる。
【0069】
また、上記実施形態では、発電機15で回生電力を発生させようとするときに、スイッチング素子5をオンし、DC−DCコンバータ6により回生電力を蓄電部12に蓄えている。また、発電機15で回生電力が発生しないときに、スイッチング素子5をオンまたはオン・オフして、DC−DCコンバータ6により蓄電部12を放電させて、蓄電部12の電力を負荷16、17やスタータモータ14に供給している。このため、回生電力を有用に活用して、負荷16、17やスタータモータ14を駆動することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、電圧測定器7により被保護負荷16の供給電圧Vaを計測し、該供給電圧Vaに基づいてPWM信号のデューティ比を設定することで、スイッチング素子5のオン期間とオフ期間の割合を変更している。このため、被保護負荷16の供給電圧Vaを所望の大きさに確保し、かつ、蓄電部12から負荷17やスタータモータ14に供給する電力を制限することができる。
【0071】
特に、被保護負荷16の供給電圧Vaが下がるに連れて、スイッチング素子5のオン期間を短くし、供給電圧Vaが上がるに連れて、スイッチング素子5のオン期間を長くしている。このため、被保護負荷16の供給電圧Vaが低いほど、蓄電部12から負荷17やスタータモータ14への電力供給量を減らして、被保護負荷16への電力供給量を多く確保し、被保護負荷16の供給電圧Vaを上げることができる。また、被保護負荷16の供給電圧Vaが高いほど、蓄電部12から負荷17やスタータモータ14への電力供給量を増やして、バッテリ11の放電を抑制し、バッテリ11の寿命を延ばすことができる。
【0072】
また、被保護負荷16の供給電圧Vaが基準値Vα以上である場合に、スイッチング素子5をオンし続け、供給電圧Vaが基準値Vαより低い場合に、スイッチング素子5を繰り返しオン・オフしている。このため、被保護負荷16を安定に駆動できる程度に、蓄電部12の電力を負荷16、17とスタータモータ14に供給しつつ、バッテリ11の放電を抑制することができる。
【0073】
さらに、上記実施形態では、電圧測定器8により蓄電部12の電圧Vbを計測し、該電圧Vbが基準値Vβより下がった場合に、スイッチング素子5をオフしている。このため、蓄電部12の電圧が低下したときに、蓄電部12の電力を負荷17やスタータモータ14に供給せずに、被保護負荷16にだけ供給して、被保護負荷16の駆動を継続させることができる。また、蓄電部12の電圧が高いときは、スイッチング素子5がオフしないので、被保護負荷16だけでなく、負荷17やスタータモータ14にも蓄電部12の電力を供給して、バッテリ11の放電を抑制し、バッテリ11の寿命を延ばすことができる。
【0074】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、電圧測定器7により計測した被保護負荷16の供給電圧Vaに応じて、スイッチング素子5のオン期間とオフ期間の割合を変化させた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、スタータモータ14の駆動(アイドリングストップやエンジンの状態)に関する信号や情報を、上位ECU18から受信したときに、被保護負荷16の供給電圧の変化が想定されるので、それに応じてスイッチング素子5のオン期間とオフ期間の割合を変化させてもよい。
【0075】
また、以上の実施形態では、昇圧と降圧の機能を有するDC−DCコンバータ6を第1電力経路L1に設けた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。バッテリや蓄電部や発電機の容量と電圧によっては、昇圧または降圧のうち一方の機能を有するDC−DCコンバータを第1電力経路に設けたり、DC−DCコンバータを省略したりしてもよい。
【0076】
また、以上の実施形態では、第2電力経路L2の一端(第2接続端子C2)に被保護負荷16が接続され、第3電力経路L3の一端(第3接続端子C3)に他の負荷17が接続された例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。たとえば、負荷17を省略して、車両の電装品を全て被保護負荷16に含めてもよい。
【0077】
さらに、以上の実施形態では、車載用の電力供給装置100に本発明を適用した例を示したが、本発明はその他の用途の電力供給装置に対しても適用することができる。