特許第6173262号(P6173262)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6173262N−アセチルグルコサミンを含む風味改善方法及び風味改善用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173262
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】N−アセチルグルコサミンを含む風味改善方法及び風味改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20170724BHJP
【FI】
   A23L33/10
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-129074(P2014-129074)
(22)【出願日】2014年6月24日
(62)【分割の表示】特願2013-237269(P2013-237269)の分割
【原出願日】2013年11月15日
(65)【公開番号】特開2015-96059(P2015-96059A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2016年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
(72)【発明者】
【氏名】阪田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏哉
(72)【発明者】
【氏名】永石 聡子
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−281277(JP,A)
【文献】 特開2006−262752(JP,A)
【文献】 特開2011−147379(JP,A)
【文献】 特開2005−080605(JP,A)
【文献】 特開2012−206984(JP,A)
【文献】 特開2012−231796(JP,A)
【文献】 アサヒ緑健 新商品「青汁×グルコV」の商品案内 [オンライン],2009年12月10日,[検索日:2017年2月28日]インターネット:<URL:http://www.asahi-ryokuken.co.jp/info/index.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテオグリカンに対して、N−アセチルグルコサミンを1〜500倍含み、さらに大麦若葉を含むことを特徴とする組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アセチルグルコサミンを含むことを特徴とするプロテオグリカンの風味改善方法に関する。さらに本発明は、N−アセチルグルコサミンを含むことを特徴とするプロテオグリカンの風味改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康や美容に対する意識が高まるにつれて、様々な効果を目的とした医薬品、医薬部外品、化粧品、飲食品などが開発されている。プロテオグリカンは、タンパク質と多糖が結合した物質であり、多様な製品に配合され、様々な美容や効能を訴求する製品がつくられている。
【0003】
しかしながら、プロテオグリカンは、特有の臭いや味(風味)があることから、そのまま食品に配合すると、食品の風味の劣化を引き起こしてしまう。例えば、コラーゲンを使用する食品の風味の改善法としては、従来、ピーチ、オレンジなどのフルーツの風味を利用したりするなどして、マスキングを試みていたが、風味は嗜好性が高いため、特にフルーツの風味のように特定の風味に限定すると、飲食品本来の風味を損なう、商品の対象者が意図せずに絞られやすいなどといった問題が生じてしまう。また、プロテオグリカンそのものについて、風味を改善する方法は未だ見出せておらず、食品の主原料の風味を変えることなく、プロテオグリカンの配合に伴う風味の劣化を改善する方法が望まれていた。
【0004】
たとえば、特許文献1には、トマト風味のフレーバーによる栄養組成物の風味改善に関する記載があるが、プロテオグリカンの風味の改善については記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−34018号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは今般、プロテオグリカンを配合した飲食品組成物を調整する際に、N−アセチルグルコサミンを配合することで、プロテオグリカンの使用に伴う風味の劣化を大幅に改善できることを予想外にも見出した。すなわち、本発明者らは、プロテオグリカンに対して、N−アセチルグルコサミンを使用することで、プロテオグリカンによる風味の劣化を大幅に改善することに成功した。またこのとき、N−アセチルグルコサミンをプロテオグリカンに対して特定の配合比で使用することで、プロテオグリカン特有の臭いが改善できることも見出した。本発明はこれら知見に基づくものである。
【0007】
本発明は、N−アセチルグルコサミンを用いたプロテオグリカンの風味の改善方法およびN−アセチルグルコサミンを用いたプロテオグリカンの風味改善用組成物を提供することをその目的とする。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0009】
<1> N−アセチルグルコサミンを含むことを特徴とする、プロテオグリカンの風味改善方法。
【0010】
<2> 改善される風味が、プロテオグリカン由来の特有の臭いである、<1>の風味改善方法。
【0011】
<3> N−アセチルグルコサミンを含むことを特徴とする、プロテオグリカンの風味改善用組成物。
【0012】
<4> 改善される風味が、プロテオグリカン由来の特有の臭いである、<3>の風味改善用組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フルーツの風味などのような、風味のマスキング剤を使用することなく、プロテオグリカンによる風味の劣化を改善することができる。また、様々な飲食品に用いる際に、主原料の風味を損なわずにプロテオグリカンの風味の劣化を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
<N−アセチルグルコサミン>
N−アセチルグルコサミンは、エビ、カニ等の甲殻類、カブトムシ、コオロギ等の昆虫類の外被や真菌類の細胞壁に含まれているキチンの構成単位(モノマー)であり、単糖類の一種である。N−アセチルグルコサミンは、例えば、カニやエビなどの甲殻類の殻から調製された多糖類キチンを原料として、これを、酸で部分加水分解し、さらにこれにキチナーゼのような酵素を作用させて分解することで、N−アセチルグルコサミンを調製することができる。本発明においては、N−アセチルグルコサミンは、市販品を使用することができる。
【0016】
<プロテオグリカン>
プロテオグリカンは、タンパク質をコアとして、コンドロイチン硫酸やデルマタン硫酸等のグリコサミノグリカンが共有結合した複合多糖であり、動物組織、特に軟骨組織に多く存在する。プロテオグリカンは生体内で、コア蛋白質がさらにヒアルロン酸に結合した構造で存在することも知られており、その分子量は、数万〜数千万と大きい。本発明の風味改善方法で得られる飲食品組成物には、市販品を使用することができる。
【0017】
<風味改善方法>
本発明においては、前記したように、プロテオグリカンを、N−アセチルグルコサミンと共に使用することを特徴とする、プロテオグリカンによる風味劣化を改善する方法を提供する。すなわち、プロテオグリカンを含む飲食品組成物の風味を改善する方法である。本発明において、プロテオグリカンの風味を改善するためには、風味劣化を引き起こす素材であるプロテオグリカンに対し、風味改善の機能を有する素材であるN−アセチルグルコサミンを一定以上配合すれば良い。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、この方法において、N−アセチルグルコサミンは、プロテオグリカンに対して0.1倍以上配合すればよく、好ましくは1〜1000倍、より好ましくは1〜500倍である。N−アセチルグルコサミンを配合することにより、特にプロテオグリカン特有の臭いを、香料等の添加物を使用することなく、効果的に改善することができる。
【0019】
<風味改善用組成物>
本発明の別の態様によれば、N−アセチルグルコサミンを含む、プロテオグリカンの風味改善用組成物が提供される。すなわち、本発明の風味改用組成物によれば、N−アセチルグルコサミンを使用することで、プロテオグリカンによる風味、詳しくは風味の劣化を改善することができる。本発明において、プロテオグリカンの風味改善用組成物は、風味劣化を引き起こす素材であるプロテオグリカンに対し、N−アセチルグルコサミンを一定以上配合すれば良い。
【0020】
ここで好ましくは、本発明の風味改善用組成物において、N−アセチルグルコサミンはプロテオグリカンに対し、0.1倍以上配合すればよく、好ましくは1〜1000倍、より好ましくは1〜500倍である。N−アセチルグルコサミンを配合することにより、特にプロテオグリカン特有の臭いを、香料等の添加物を使用することなく、効果的に改善することができる。
【0021】
本発明の風味改善方法は、任意の飲食品組成物に用いることができる。
【0022】
本発明の風味改善方法により得られた飲食品組成物の形態としては、飲食などの経口摂取に適した形態、例えば、粉末状、粒状、顆粒状、錠剤状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、飴状、ペースト状、クリーム状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、チュアブル状、シロップ状等の各形態が挙げられる。特に、摂取した際に主原料の味がわかりやすい粉末状、粒状、顆粒状、板状、ブロック状、液状、飴状、ペースト状、クリーム状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、チュアブル状、シロップ状等の場合、主原料の風味を損なわずにプロテオグリカンの風味を改善させることができるため、好ましい。食品組成物が固体の形態である場合、これを水と混合した液状とし、該液状体を飲用するなど経口摂取することができるが、摂取する者の好み等に応じて、固体のまま経口摂取してもよい。また水だけでなく、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、ヨーグルト等に配合して使用してもよい。水などと混合し、溶解したり懸濁させたりするなどして使用する場合は、水などへの溶解性の観点から粉末状、粒状、顆粒状であることが好ましく、さらに、飛び散りにくく、ダマになりにくいため、粒状または顆粒状であることがより好ましい。本発明の風味改善方法により得られた飲食品組成物は、栄養機能食品、特定保健用食品、疾病リスク低減表示特定保健用食品として用いても良い。
【0023】
本発明の風味改善方法により得られた飲食品組成物は、そこに含まれるプロテオグリカンによって引き起こされる風味劣化が改善されたものである。ここで風味劣化とは、プロテオグリカン自体が持つ臭いや味によって、飲食品組成物の主成分による本来の風味を損なわれた(劣化した)状態をいう。従って、風味劣化の改善とは、そのようなプロテオグリカンの臭いや味による風味が劣化した状態から、プロテオグリカンの臭いや味が感じられなくなるか、感じられにくくなる(マスキングされる)一方で、飲食品組成物の主成分の風味がより感じられるようになった状態をいう。すなわち、改善には、風味が劣化する前の状態に近づくか、前の状態に回復するか、さらには、風味が需要者に望まれるものに向上した場合も含まれる。
【0024】
本発明の風味改善方法により得られた飲食品組成物には、さらに任意の成分を加えることができる。このような配合可能な成分としては、特段の制限はないが、通常飲食品に配合される成分、甘味料、酸味料、香料、食物繊維、pH調整剤、賦形剤、酸度調整剤、着色料、保存料などを配合することができ、嗜好性及び機能性の更なる向上を目的とする場合には抹茶粉末やビタミンCなどのビタミン類などを配合することができる。
【実施例】
【0025】
以下において、本発明を下記の実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
(1) サンプルの調製
市販のN−アセチルグルコサミン、プロテオグリカンを、表1に示した配合比に従って配合し、サンプルを得た。
【0027】
【表1】
【0028】
(2) 官能評価試験
<試験方法>
前記(1)で得られた各サンプルについて、官能評価を行った。官能評価は、5名の評価者による粉末の試食により行った。
評価は表2に記載の評価項目について実施した。試験に用意した複数のサンプルの内から一つを選択し、そのサンプル(基準サンプル)と他の残りのサンプルを評価者が食べ比べ、前者(基準サンプル)に対して後者が、以下の判定基準の各評価項目についてどのように感じられたかを、Visual Analogue Scale法(VAS)を使って評価した。このとき、基準サンプルの評価点を5点とし、基準サンプルと比べて良い場合の最高値を10点、基準サンプルと比べて悪い場合の最低値を0点とした。得られた結果の平均をとり、各サンプルの結果とした。それぞれの項目を比較し終わった後、サンプルを食しやすい順に並べて順位付けし、それを総合評価とした。尚、評価時のサンプル摂取量は1サンプルにつき耳かき1杯程度であった。
【0029】
【表2】
【0030】
実施例1(プロテオグリカンとN−アセチルグルコサミンの配合量の検討)
プロテオグリカンに対するN−アセチルグルコサミンの配合量を検証するため、上記で得られたサンプルについて官能試験を行った。尚、基準サンプルはNo.1とした。
【0031】
結果は、下記表に示されたとおりであった。基準であるNo.1サンプルに対して、他のサンプルは、甘さ、コク、臭い、のどごしの全ての評価において、プロテオグリカンにN−アセチルグルコサミンを配合すると良好な結果を得られることがわかった。特に、臭いについてはプロテオグリカンに対してN−アセチルグルコサミンを1倍以上配合することで、プロテオグリカンに特有の臭いを効果的に改善できることがわかった。その他の項目(甘さ、コク、のどごし)は、N−アセチルグルコサミンの含有量が増えると良くなる傾向であることがわかった。
【0032】
【表3】
【0033】
(3) 食品組成物の製造
本発明の風味改善によって改善できる食品組成物を、下記の処方に従って製造した。
【0034】
実施例2(青汁用組成物の製造)
下記処方例に記載の配合比に従って原料を調製し、青汁用組成物を製造した。
なお下記処方例では、プロテオグリカンの質量(1質量部)に対するN−アセチルグルコサミンの質量は5.28倍量であった。得られた青汁用組成物1.6gを水100mLに懸濁させ、風味を評価したところ、プロテオグリカン特有の臭いがなく、主原料である大麦若葉の風味を感じられるものであった。
【0035】
【表4】
【0036】
実施例3(青汁用組成物の製造)
下記処方例に記載の配合比に従って原料を調製し、青汁用組成物を製造した。
なお下記処方例では、プロテオグリカンの質量(1質量部)に対するN−アセチルグルコサミンの質量は100倍量であった。得られた青汁用組成物1.6gを水100mLに懸濁させ、風味を評価したところ、プロテオグリカン特有の臭いがなく、主原料である大麦若葉の風味を感じられるものであった。
【0037】
【表5】
【0038】
実施例4(錠剤の製造)
下記処方例に記載の配合比に従って原料を調製したのち、打錠機を用いて錠剤を製造した。
なお下記処方例では、プロテオグリカンの質量(1質量部)に対するN−アセチルグルコサミンの質量は1倍量であった。風味を評価したところ、プロテオグリカン特有の臭いがなく、還元麦芽糖の甘みを感じるものであり、プロテオグリカンによる風味劣化が改善されたものであった。
【0039】
【表6】
【0040】
実施例5(粉末飲料の製造)
下記処方例に記載の配合比に従って原料を調製し、粉末飲料用組成物を製造した。
なお下記処方例では、プロテオグリカンの質量(1質量部)に対するN−アセチルグルコサミンの質量は1倍量であった。得られた粉末飲料用組成物3.0gを水100mLに溶解させ、風味を評価したところ、プロテオグリカン特有の臭いがなく、還元麦芽糖の甘みを感じるものであり、プロテオグリカンによる風味劣化が改善されたものであった。
【0041】
【表7】