特許第6173270号(P6173270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173270
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】扉開閉制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/655 20150101AFI20170724BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20170724BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   E05F15/655
   B60J5/10 K
   B60J5/04 C
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-152719(P2014-152719)
(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公開番号】特開2015-194064(P2015-194064A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-68069(P2014-68069)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】藤本 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】李 相範
(72)【発明者】
【氏名】村田 真章
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−242533(JP,A)
【文献】 特開2007−327265(JP,A)
【文献】 特開平09−328961(JP,A)
【文献】 特開平05−149054(JP,A)
【文献】 特開2008−002130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/603
E05F 15/655
B60J 5/04−5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉を開閉させるアクチュエータを駆動する駆動部と、
前記扉の開閉または停止を指示するために操作される操作スイッチと、
前記操作スイッチの操作に応じて、前記駆動部を介して前記アクチュエータの駆動を制御する第1制御部と、
前記扉が手動で開閉操作されたことを検出する手動開閉検出部と、
前記手動開閉検出部が前記扉の手動開閉操作を検出したときに、該手動開閉操作を補助するように、前記駆動部を介して前記アクチュエータの駆動を制御する第2制御部と、を備えた扉開閉制御装置において、
前記操作スイッチが操作されない状態で、前記手動開閉検出部が前記扉の手動開閉操作を検出した場合は、以降の前記操作スイッチの操作を無効化し、
前記第2制御部が、前記扉の手動開閉操作を補助するように前記アクチュエータの駆動を制御しているときに、前記操作スイッチが操作されても、該操作に応じて前記第1制御部が前記アクチュエータの駆動を制御せずに、前記第2制御部が前記アクチュエータの駆動の制御を継続する、ことを特徴とする扉開閉制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の扉開閉制御装置において、
前記扉の開閉位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部が検出した前記開閉位置の時間変化に基づいて、前記扉の開閉速度を算出する速度算出部と、
前記位置検出部が検出した前記開閉位置に基づいて、目標速度を算出する目標速度算出部と、をさらに備え、
前記第1制御部は、前記速度算出部が算出した前記開閉速度と前記目標速度算出部が算出した前記目標速度とに基づいて、前記アクチュエータの駆動を制御する、ことを特徴とする扉開閉制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の扉開閉制御装置において、
前記位置検出部が検出した前記開閉位置と前記速度算出部が算出した前記開閉速度とに基づいて、目標補助力を算出する目標補助力算出部と、
前記アクチュエータの駆動電流を検出する電流検出部と、をさらに備え、
前記第2制御部は、前記目標補助力算出部が算出した前記目標補助力と前記電流検出部が検出した前記駆動電流とに基づいて、前記アクチュエータの駆動を制御する、ことを特徴とする扉開閉制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の扉開閉制御装置において、
前記操作スイッチの操作に応じて、前記第1制御部が、前記扉を開閉作動させるように前記アクチュエータの駆動を制御しているときに、
前記操作スイッチが再度操作されると、該再度の操作に応じて、前記第1制御部が前記アクチュエータの駆動を制御する、ことを特徴とする扉開閉制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の扉開閉制御装置において、
前記操作スイッチが設けられ、該操作スイッチの操作状態を示す操作信号を無線で送信する遠隔操作機と、
前記遠隔操作機から送信された前記操作信号を受信する通信部と、をさらに備え、
前記遠隔操作機からの前記操作信号を前記通信部により受信したときに、
前記第2制御部が、前記扉の手動開閉操作を補助するように前記アクチュエータの駆動を制御していなければ、
前記第1制御部が、前記操作信号に応じて前記アクチュエータの駆動を制御する、ことを特徴とする扉開閉制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の扉開閉制御装置において、
当該扉開閉制御装置は、車両に設けられた扉の開閉を制御するものであって、
車両側装置より取得した車両の走行および停車に関する情報に基づいて、車両が走行中であるか否かを検出する走行状態検出部をさらに備え、
前記走行状態検出部で車両が走行中でないことが検出され、かつ、前記第2制御部で前記扉の手動開閉操作を補助するように前記アクチュエータの駆動が制御されているときに、前記操作スイッチが操作されても、該操作に応じて前記第1制御部が前記アクチュエータの駆動を制御せずに、前記第2制御部が前記アクチュエータの駆動の制御を継続し、
前記走行状態検出部で車両が走行中でないことが検出され、かつ、前記第2制御部で前記扉の手動開閉操作を補助するように前記アクチュエータの駆動が制御されていないときに、前記操作スイッチが操作されると、該操作に応じて前記第1制御部が前記アクチュエータの駆動を制御し、
前記走行状態検出部で車両が走行中であることが検出されているときに、前記操作スイッチが操作されると、該操作に応じて前記第1制御部が前記アクチュエータの駆動を制御する、ことを特徴とする扉開閉制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の扉開閉制御装置において、
前記操作スイッチは、少なくとも車両の運転席の操作部と遠隔操作機とにそれぞれ設けられ、
前記走行状態検出部で車両が走行中であることが検出されているときは、前記運転席の操作部の前記操作スイッチの操作に応じて前記第1制御部が前記アクチュエータの駆動を制御し、
前記走行状態検出部で車両が走行中でないことが検出され、かつ、前記第2制御部で前記扉の手動開閉操作を補助するように前記アクチュエータの駆動が制御されていないときは、前記運転席の操作部または前記遠隔操作機の前記操作スイッチの操作に応じて前記第1制御部が前記アクチュエータの駆動を制御する、ことを特徴とする扉開閉制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば車両のバックドアやスライドドアのような扉を手動で開閉操作する場合に、操作補助力を付与する扉開閉制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される扉開閉制御装置として、たとえばパワーバックドア(「パワーテイルゲート」ともいう。)制御装置やパワースライドドア制御装置がある。これらの扉開閉制御装置では、バックドアやスライドドアのような扉を開閉させるアクチュエータとして、たとえばモータを使用している。また、車両の運転席や後部や遠隔操作機などには、扉の開閉や停止を指示するために操作される操作スイッチが設けられている。
【0003】
そして、扉開閉制御装置は、操作スイッチの開閉操作に応じて、モータを回転させて、扉開閉機構を作動させ、扉を自動で開閉させる(いわゆる、オート開閉機能)。また、扉が手動で開閉操作された場合に、モータにより操作補助力を付与して、操作者が小さな力で扉を開閉操作できるようにする(いわゆる、パワーアシスト機能)。
【0004】
特許文献1の扉開閉制御装置では、バックドアを全閉位置と全開位置との間の任意の中間位置に停止させるため、操作スイッチの操作回数に基づいて、操作内容を判別し、バックドアの駆動手段と制動手段とを選択的に作動させる。たとえば、操作スイッチの1回目の操作により、駆動手段を作動させて、バックドアを開閉させ、操作スイッチの2回目の操作により、駆動手段を停止して、制動手段を作動させて、バックドアを停止させる。
【0005】
特許文献2の扉開閉制御装置では、スライドドアを手動操作するドアハンドルに、開閉操作力検出部を設けている。そして、モータの駆動によるスライドドアの自動開閉作動中に、ドアハンドルに開閉操作力が付与されると、自動開閉作動に優先して、開閉操作力検出部の出力信号に応じてモータのデューティ比を増加させ、スライドドアの開閉速度を速くする。
【0006】
特許文献3の扉開閉制御装置では、意図に反する位置へバックドアが移動するのを抑制するため、モータの駆動によるバックドアの自動開作動中に、操作スイッチの操作により、移動方向の反転が指示されるのを監視する。そして、バックドアの解放が完了する前に、操作スイッチの操作により、移動方向の反転が指示された場合、バックドアの現在の開度が所定値より大きければ、バックドアの移動方向を反転させ(自動閉作動)、現在の開度が所定値以下であれば、バックドアの自動開作動を継続させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−132326号公報
【特許文献2】特開2002−242533号公報
【特許文献3】特開2006−299603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パワーアシスト状態で、操作スイッチが操作された場合、該操作に応じてアクチュエータの駆動が制御されると、扉を手動操作している操作者の意図に反する方向へ扉が移動して、挟み込みなどの危険を招くおそれがある。また、扉の手動操作方向と同一方向へ扉が自動的に移動して、手動操作している操作者に違和感を与えるおそれもある。
【0009】
本発明の課題は、パワーアシスト状態で操作スイッチが操作されても、扉の手動開閉操作を優先させて、扉の使い勝手を向上させることができる扉開閉制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による扉開閉制御装置は、扉を開閉させるアクチュエータを駆動する駆動部と、扉の開閉または停止を指示するために操作される操作スイッチと、操作スイッチの操作に応じて、駆動部を介してアクチュエータの駆動を制御する第1制御部と、扉が手動で開閉操作されたことを検出する手動開閉検出部と、手動開閉検出部が扉の手動開閉操作を検出したときに、該手動開閉操作を補助するように、駆動部を介してアクチュエータの駆動を制御する第2制御部とを備える。そして、操作スイッチが操作されない状態で、手動開閉検出部が扉の手動開閉操作を検出した場合は、以降の操作スイッチの操作を無効化する。この結果、第2制御部が、扉の手動開閉操作を補助するようにアクチュエータの駆動を制御しているときに、操作スイッチが操作されても、該操作に応じて第1制御部がアクチュエータの駆動を制御せずに、第2制御部がアクチュエータの駆動の制御を継続する。
【0011】
上記によると、第2制御部が扉の手動開閉操作を補助するようにアクチュエータの駆動を制御しているパワーアシスト状態で、操作スイッチが操作されても、該スイッチ操作に応じて第1制御部がアクチュエータの駆動を制御せずに、第2制御部がアクチュエータの駆動の制御を継続する。このため、扉を手動操作している操作者の意図に反する方向へ扉が移動することはなく、挟み込みなどの危険を招くおそれがない。また、扉の手動操作方向と同一方向へ扉が自動的に移動することはなく、手動操作している操作者に違和感を与えるおそれもない。以上のことから、パワーアシスト状態で操作スイッチが操作されても、扉の手動開閉操作を優先させて、扉の使い勝手を向上させることができる。
【0012】
また、本発明では、上記扉開閉制御装置において、扉の開閉位置を検出する位置検出部と、位置検出部が検出した開閉位置の時間変化に基づいて、扉の開閉速度を算出する速度算出部と、位置検出部が検出した開閉位置に基づいて、目標速度を算出する目標速度算出部とをさらに備えてもよい。この場合、第1制御部は、速度算出部が算出した開閉速度と目標速度算出部が算出した目標速度とに基づいて、アクチュエータの駆動を制御する。
【0013】
また、本発明では、上記扉開閉制御装置において、位置検出部が検出した開閉位置と速度算出部が算出した開閉速度とに基づいて、目標補助力を算出する目標補助力算出部と、アクチュエータの駆動電流を検出する電流検出部とをさらに備えてもよい。この場合、第2制御部は、目標補助力算出部が算出した目標補助力と電流検出部が検出した駆動電流とに基づいて、アクチュエータの駆動を制御する。
【0014】
また、本発明では、上記扉開閉制御装置において、操作スイッチの操作に応じて、第1制御部が、扉を開閉作動させるようにアクチュエータの駆動を制御しているときに、操作スイッチが再度操作されると、該再度の操作に応じて、第1制御部がアクチュエータの駆動を制御してもよい。
【0015】
また、本発明では、上記扉開閉制御装置において、操作スイッチが設けられ、該操作スイッチの操作状態を示す操作信号を無線で送信する遠隔操作機と、遠隔操作機から送信された操作信号を受信する通信部とをさらに備えてもよい。この場合、遠隔操作機からの操作信号を通信部により受信したときに、第2制御部が、扉の手動開閉操作を補助するようにアクチュエータの駆動を制御していなければ、第1制御部が、前記操作信号に応じてアクチュエータの駆動を制御してもよい。
【0016】
また、本発明では、上記扉開閉制御装置は、車両に設けられた扉の開閉を制御するものであって、車両側装置より取得した車両の走行および停車に関する情報に基づいて、車両が走行中であるか否かを検出する走行状態検出部をさらに備えてもよい。この場合、走行状態検出部で車両が走行中でないことが検出され、かつ、第2制御部で扉の手動開閉操作を補助するようにアクチュエータの駆動が制御されているときに、操作スイッチが操作されても、該操作に応じて第1制御部がアクチュエータの駆動を制御せずに、第2制御部がアクチュエータの駆動の制御を継続する。また、走行状態検出部で車両が走行中でないことが検出され、かつ、第2制御部で扉の手動開閉操作を補助するようにアクチュエータの駆動が制御されていないときに、操作スイッチが操作されると、該操作に応じて第1制御部がアクチュエータの駆動を制御する。さらに、走行状態検出部で車両が走行中であることが検出されているときに、操作スイッチが操作されると、該操作に応じて第1制御部がアクチュエータの駆動を制御する。
【0017】
さらに、本発明では、上記扉開閉制御装置において、操作スイッチは、少なくとも車両の運転席の操作部と遠隔操作機とにそれぞれ設けられてもよい。この場合、走行状態検出部で車両が走行中であることが検出されているときは、運転席の操作部の操作スイッチの操作に応じて第1制御部がアクチュエータの駆動を制御する。また、走行状態検出部で車両が走行中でないことが検出され、かつ、第2制御部で扉の手動開閉操作を補助するようにアクチュエータの駆動が制御されていないときは、運転席の操作部または遠隔操作機の操作スイッチの操作に応じて第1制御部がアクチュエータの駆動を制御する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、パワーアシスト状態で操作スイッチが操作されても、扉の手動開閉操作を優先させて、扉の使い勝手を向上させることができる扉開閉制御装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態によるパワーバックドア制御装置の構成を示した図である。
図2】バックドアの一例を示した図である。
図3図1のパワーバックドア制御装置のメイン処理を示したフローチャートである。
図4図3のモード判別処理の詳細を示したフローチャートである。
図5図3のオート開処理の詳細を示したフローチャートである。
図6図3のオート閉処理の詳細を示したフローチャートである。
図7図3のオート開処理とオート閉処理の詳細を示したブロック図である。
図8図3のパワーアシスト処理の詳細を示したフローチャートである。
図9図3のパワーアシスト処理の詳細を示したブロック図である。
図10図9の目標補助力算出部の詳細を示した図である。
図11】本発明の他の実施形態によるパワーバックドア制御装置の構成を示した図である。
図12図11のパワーバックドア制御装置の判別処理の詳細を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0021】
まず、本実施形態の構成を、図1および図2を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、パワーバックドア制御装置10の構成を示した図である。図2は、バックドア30の一例を示した図である。
【0023】
図1において、パワーバックドア制御装置10は、モータ20とBD(バックドア)開閉機構21とバックドア30とともに、パワーバックドアシステム100に組み込まれている。このパワーバックドアシステム100は、自動四輪車に搭載されている。
【0024】
パワーバックドア制御装置10は、図2の車体31に設けられている。バックドア30を開閉させるためのBD開閉機構21は、車体31やバックドア30に設けられている。モータ20は、BD開閉機構21の動力源であり、車体31に設けられている。
【0025】
バックドア30は、図2に示すように、自動四輪車の車体31の後面に設けられた、跳ね上げ式のドアから成る。バックドア30は、上端部にある回転軸32を中心にして、下端部が上方へ揺動することで開いて行き、逆に下端部が下方へ揺動することで閉まって行く。図2では、全閉位置にあるバックドア30を実線で示し、全開位置にあるバックドア30を1点鎖線で示し、全閉位置と全開位置の間の中間位置にあるバックドア30を2点鎖線で示している。パワーバックドア制御装置10は、モータ20を正転または逆転で駆動して、BD開閉機構21を作動させ、バックドア30を自動で開閉させる(オート開閉機能)。
【0026】
また、バックドア30は、下端部や把持部(図示省略)をつかんで、手動で開閉操作することができる。バックドア30が手動で開閉操作された場合に、パワーバックドア制御装置10は、モータ20により操作補助力を付与して、操作者が小さな力でバックドア30を開閉操作できるようにする(パワーアシスト機能)。
【0027】
パワーバックドア制御装置10は、本発明の「扉開閉制御装置」の一例である。バックドア30は、本発明の「扉」の一例である。モータ20は、本発明の「アクチュエータ」の一例である。
【0028】
パワーバックドア制御装置10には、制御部1、モータ駆動部2、運転席操作部3、後方操作部4、通信部5、遠隔操作機6、パルス発生器7、全閉検出SW(スイッチ)8、および全開検出SW(スイッチ)9が備わっている。
【0029】
制御部1は、マイクロコンピュータから成る。制御部1には、位置検出部1a、速度算出部1b、目標速度算出部1c、速度制御部1d、目標補助力算出部1e、補助力制御部1f、モード判別部1g、および手動開閉検出部1hが設けられている。
【0030】
モータ駆動部2は、モータ20をPWM(パルス幅変調)信号で駆動するためのドライブ回路から成る。モータ駆動部2は、本発明の「駆動部」の一例である。
【0031】
制御部1は、モータ駆動部2によりモータ20の駆動を制御する。モータ駆動部2には、モータ20に流れる電流(以下、「モータ電流」という。)を検出する電流検出部2aが設けられている。電流検出部2aによるモータ電流の検出は、適宜または所定の周期で行われる。
【0032】
運転席操作部3は、自動四輪車の運転席に設けられたスイッチやボタンなどから成る。後方操作部4は、車体31の後方(車外)に設けられたスイッチやボタンなどから成る。運転席操作部3と後方操作部4には、バックドア30の開閉または停止を指示するために操作されるBD開閉SW(スイッチ)3b、4bがそれぞれ設けられている。
【0033】
通信部5は、遠隔操作機6と無線通信(LF(Low Frequency)信号やUHF(Ultra High Frequency)信号の通信など)するためのアンテナや回路から成る。遠隔操作機6は、パッシブエントリーシステムのFOBキーから成り、利用者により携帯される。
【0034】
遠隔操作機6にも、バックドア30の開閉または停止を指示するために操作されるBD開閉SW(スイッチ)6bが設けられている。利用者によりBD開閉SW6bが操作されると、その操作状態を示す操作信号が遠隔操作機6から無線で送信されて、通信部5によりその操作信号が受信される。BD開閉SW3b、4b、6bは、本発明の「操作スイッチ」の一例である。
【0035】
パルス発生器7は、たとえば2相式のロータリエンコーダから成り、モータ20またはBD開閉機構21に設けられている。パルス発生器7は、モータ20の回転状態またはBD開閉機構21の作動状態に応じて、位相がずれた2つのパルス信号を制御部1へ出力する。
【0036】
モータ20の回転状態、BD開閉機構21の作動状態、およびバックドア30の開閉状態は連動している。このため、制御部1の位置検出部1aは、パルス発生器7から出力される2つのパルス信号を検出し、該パルス信号に基づいてバックドア30の開閉位置(以下「ドア位置」という。)を検出する。速度算出部1bは、位置検出部1aが検出したドア位置の時間変化に基づいて、バックドア30の開閉速度(以下「ドア速度」という。)を算出する。位置検出部1aによるドア位置の検出と、速度算出部1bによるドア速度の算出とは、適宜または所定の周期で随時行われる。
【0037】
全閉検出SW(スイッチ)8と全開検出SW(スイッチ)9は、車体31の後部に設けられている。全閉検出SW8は、バックドア30が全閉したことを検出して、検出信号を制御部1へ出力する。全開検出SW9は、バックドア30が全開したことを検出して、検出信号を制御部1へ出力する。位置検出部1aは、全閉検出SW8または全開検出SW9からの出力信号に基づいて、バックドア30が全閉位置または全開位置にあることを検出する。
【0038】
制御部1は、BD開閉SW3b、4b、6bの操作に応じて、モータ駆動部2を介してモータ20の駆動を制御する。具体的には、制御部1は、BD開閉SW3b、4b、6bの開閉操作に応じて、モータ駆動部2によりモータ20を回転させ、BD開閉SW3b、4b、6bの停止操作に応じて、モータ駆動部2によりモータ20を停止する。これにより、バックドア30が自動で開閉したり、停止したりする。
【0039】
BD開閉SW3b、4b、6bの開閉操作に応じてモータ20を駆動する際、位置検出部1aが検出したドア位置に基づいて、目標速度算出部1cがバックドア30を自動で開閉させるための目標速度を算出する。そして、その目標速度と、速度算出部1bが算出したドア速度とに基づいて、速度制御部1dがモータ20を速度制御する。制御部1および速度制御部1dは、本発明の「第1制御部」の一例である。
【0040】
手動開閉検出部1hは、速度算出部1bが算出したドア速度に基づいて、バックドア30が手動で開閉操作されたことを検出する。具体的には、速度制御部1dがモータ20の駆動を制御していないときに、速度算出部1bが算出したドア速度が0でなければ、手動開閉検出部1hは、バックドア30が手動で開閉操作されたと判断する。
【0041】
手動開閉検出部1hによりバックドア30の手動開閉操作が検出されると、制御部1は、バックドア30の手動開閉操作を補助するように、モータ駆動部2を介してモータ20の駆動を制御する。具体的には、位置検出部1aが検出したドア位置と、速度算出部1bが算出したドア速度とに基づいて、目標補助力算出部1eが目標補助力を算出する。そして、その目標補助力と、電流検出部2aが検出したモータ電流とに基づいて、補助力制御部1fがモータ駆動部2を介してモータ20の駆動を制御する。制御部1および補助力制御部1fは、本発明の「第2制御部」の一例である。
【0042】
モード判別部1gは、位置検出部1aが検出したドア位置と、速度算出部1bが算出したドア速度と、BD開閉SW3b、4b、6bの操作状態とに基づいて、モータ20を制御するためのモードを判別する。
【0043】
次に、パワーバックドア制御装置10の動作を、図3図10を参照しながら説明する。
【0044】
図3は、パワーバックドア制御装置10のメイン処理を示したフローチャートである。制御部1は、位置検出部1aで検出されたドア位置により、バックドア30が全閉位置と全開位置の間にある中間位置にあると判断すると(図3のステップS1:YES)、モード判別部1gによりモード判別処理を行う(図3のステップS2)。
【0045】
図4は、モード判別処理の詳細を示したフローチャートである。いずれかのBD開閉SW3b、4b、6bで開操作が行われると(図4のステップS11:YES、オート開操作)、モード判別部1gは、移行先がオート開モードであると判別する(図4のステップS12)。また、いずれかのBD開閉SW3b、4b、6bで閉操作が行われると(図4のステップS11:YES、オート閉操作)、モード判別部1gは、移行先がオート閉モードであると判別する(図4のステップS13)。
【0046】
また、BD開閉SW3b、4b、6bでオート開閉操作が行われない状態で(図4のステップS11:NO)、バックドア30が手動で開閉操作されると、速度算出部1bで算出されたドア速度が0以外の値となる(図4のステップS14:NO)。これにより、手動開閉検出部1hが、バックドア30の手動開閉操作がされたと判断し(図4のステップS15)、モード判別部1gは、移行先がパワーアシストモードであると判別する(図4のステップS16)。
【0047】
また、BD開閉SW3b、4b、6bでオート開閉操作が行われない状態で(図4のステップS11:NO)、バックドア30が手動で開閉操作されずに、静止していると、速度算出部1bで算出されたドア速度が0になる(図4のステップS14:YES)。これにより、手動開閉検出部1hが、バックドア30の手動開閉操作がされていないと判断し(図4のステップS17)、モード判別部1gは、移行先が停止モードであると判別する(図4のステップS18)。
【0048】
また、いずれかのBD開閉SW3b、4b、6bで停止操作が行われた場合も(図4のステップS11:NO)、ドア速度が0であれば(図4のステップS14:YES)、モード判別部1gは、移行先が停止モードであると判別する(図4のステップS18)。
【0049】
図4のモード判別処理での判別結果に従って、図3のステップS3から停止モードに移行した場合、制御部1は、モータ20を駆動することなく、メイン処理を終了する。これにより、バックドア30は、中間位置で静止したままとなる。
【0050】
また、図4のモード判別処理での判別結果に従って、図3のステップS3からオート開モードに移行した場合、制御部1は、オート開処理を実行する(図3のステップS4)。
【0051】
図5は、オート開処理の詳細を示したフローチャートである。図7は、オート開処理およびオート閉処理の詳細を示したブロック図である。オート開処理を開始すると、図7に示すように、目標速度算出部1cが、位置検出部1aで検出されたドア位置に基づいて目標速度を算出する(図5のステップS21)。次に、速度制御部1dが、速度制御をしながらモータ20を開方向へ(たとえば正転)駆動する(図5のステップS22)。
【0052】
詳しくは、速度制御部1dが、目標速度算出部1cで算出された目標速度と、速度算出部1bで算出されたドア速度とが一致するように、モータ駆動部2によりモータ20への入力電圧を制御して、モータ20を開方向へ駆動する。これにより、BD開閉機構21が作動して、バックドア30が自動で開いて行く。
【0053】
この後、BD開閉SW3b、4b、6bの操作がなければ(図5のステップS23:NO)、バックドア30が全開位置に到達するまで(図5のステップS25:NO)、ステップS21〜S25の処理が繰り返される。
【0054】
また、BD開閉SW3b、4b、6bのいずれかが操作されても(図5のステップS23:YES)、それが開操作であれば(図5のステップS24:YES)、バックドア30が全開位置に到達するまで(図5のステップS25:NO)、ステップS21〜S25の処理が繰り返される。
【0055】
また、BD開閉SW3b、4b、6bのいずれかが操作されて(図5のステップS23:YES)、それが開操作以外の操作(閉操作または停止操作)であれば(図5のステップS24:NO)、先に受け付けた開操作が無効になる。このため、制御部1は、モータ20の駆動を停止して(図5のステップS26)、オート開処理を終了する。この後、再び図3のメイン処理が実行されて、BD開閉SW3b、4b、6bの操作に応じたモード(オート閉モードまたは停止モード)に移行する。他の例として、図5のステップS23において、BD開閉SW3b、4b、6bの操作があった場合に、その操作が開操作・閉操作のいずれであっても、一旦モータ20の駆動を停止するか、またはモータ20の回転方向を反転させるようにしてもよい。
【0056】
また、BD開閉SW3b、4b、6bで開操作以外の操作が行われることなく(図5のステップS23:NO、またはステップS24:YES)、バックドア30が全開位置に到達したとする。すると、制御部1が、位置検出部1aで検出されたドア位置に基づいて、バックドア30が全開位置にあると判断し(図5のステップS25:YES)、モータ20の駆動を停止して(図5のステップS26)、オート開処理を終了する。
【0057】
一方、図4のモード判別処理での判別結果に従って、図3のステップS3からオート閉モードに移行した場合、制御部1は、オート閉処理を実行する(図3のステップS5)。
【0058】
図6は、オート閉処理の詳細を示したフローチャートである。オート閉処理を開始すると、図7に示すように、目標速度算出部1cが位置検出部1aで検出されたドア位置に基づいて、目標速度を算出する(図6のステップS31)。次に、速度制御部1dが、速度制御をしながらモータ20を閉方向へ(たとえば逆転)駆動する(図6のステップS32)。
【0059】
詳しくは、速度制御部1dが、目標速度算出部1cで算出された目標速度と、速度算出部1bで算出されたドア速度とが一致するように、モータ駆動部2によりモータ20への入力電圧を制御して、モータ20を閉方向へ駆動する。これにより、BD開閉機構21が作動して、バックドア30が自動で閉じて行く。
【0060】
この後、BD開閉SW3b、4b、6bの操作がなければ(図6のステップS33:NO)、バックドア30が全閉位置に到達するまで(図6のステップS35:NO)、ステップS31〜S35の処理が繰り返される。
【0061】
また、BD開閉SW3b、4b、6bのいずれかが操作されても(図6のステップS33:YES)、それが閉操作であれば(図6のステップS34:YES)、バックドア30が全閉位置に到達するまで(図6のステップS35:NO)、ステップS31〜S35の処理が繰り返される。
【0062】
また、BD開閉SW3b、4b、6bのいずれかが操作されて(図6のステップS33:YES)、それが閉操作以外の操作(開操作または停止操作)であれば(図6のステップS34:NO)、先に受け付けた閉操作が無効になる。このため、制御部1は、モータ20の駆動を停止して(図6のステップS36)、オート閉処理を終了する。この後、再び図3のメイン処理が実行されて、BD開閉SW3b、4b、6bの操作に応じたモード(オート開モードまたは停止モード)に移行する。他の例として、図6のステップS33において、BD開閉SW3b、4b、6bの操作があった場合に、その操作が開操作・閉操作のいずれであっても、一旦モータ20の駆動を停止するか、またはモータ20の回転方向を反転させるようにしてもよい。
【0063】
また、BD開閉SW3b、4b、6bで閉操作以外の操作が行われることなく(図6のステップS33:NO、またはステップS34:YES)、バックドア30が全閉位置に到達したとする。すると、制御部1が、位置検出部1aで検出されたドア位置に基づいて、バックドア30が全閉位置にあると判断し(図6のステップS35:YES)、モータ20の駆動を停止して(図6のステップS36)、オート閉処理を終了する。
【0064】
一方、図4のモード判別処理での判別結果に従って、図3のステップS3からパワーアシストモードに移行した場合、制御部1は、パワーアシストモード処理を実行する(図3のステップS6)。
【0065】
図8は、パワーアシスト処理の詳細を示したフローチャートである。図9は、パワーアシスト処理の詳細を示したブロック図である。図10は、目標補助力算出部1eの詳細を示したブロック図である。パワーアシスト処理を開始すると、まず制御部1は、BD開閉SW3b、4b、6bの操作を無効化する(図8のステップS40)。これにより、以降は、いずれのBD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、その操作が制御部1で無視される。
【0066】
次に、制御部1は、位置検出部1aで検出されたドア位置の時間変化に基づいて、バックドア30の作動方向(開閉方向)を判断する(図8のステップS41)。このとき、制御部1により、バックドア30の作動方向が開方向であると判断されると(図8のステップS41:開)、図9に示すように、目標補助力算出部1eが位置検出部1aで検出されたドア位置と速度算出部1bで算出されたドア速度とに基づいて、開作動用の目標補助力を算出する(図8のステップS42)。
【0067】
詳しくは、図10に示すように、目標補助力算出部1eには、ドア位置に応じた補助力成分を示す位置特性1pと、ドア速度に応じた補助力成分を示す速度特性1vと、乗算器1mとが設けられている。位置検出部1aで検出されたドア位置が入力されると、位置特性1pによりそのドア位置に応じた補助力成分が出力される。また、速度算出部1bで算出されたドア速度が入力されると、速度特性1vによりそのドア速度に応じた補助力成分が出力される。そして、これら2つの補助力成分が乗算器1mで乗算されることで、目標補助力が算出される。
【0068】
目標補助力算出部1eで開作動用の目標補助力が算出されると、図9に示すように、補助力制御部1fがその目標補助力と、電流検出部2aで検出されたモータ電流とに基づいて、バックドア30の手動開操作を補助するように、モータ20を開方向へ駆動する(図8のステップS43)。
【0069】
詳しくは、補助力制御部1fが、目標補助力とモータ電流に応じてモータ駆動部2によりモータ20への入力電圧を制御して、モータ20を開方向へ駆動する。これにより、モータ20から出力されるモータトルクが操作補助力となって、操作者がバックドア30を手動で開く際の操作力が軽減される。
【0070】
上記のように、制御部1が補助力制御部1fによって、バックドア30の手動開操作を補助するように、モータ20の駆動を制御しているときに、BD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、該操作は無効化されている(ステップS40)。このため、制御部1は、BD開閉SW3b、4b、6bの操作に応じて、速度制御部1dによりモータ20の駆動を制御することはなく、補助力制御部1fによるモータ20の開方向への駆動の制御を継続する。
【0071】
その後、操作者がバックドア30の手動開操作を止めると、速度算出部1bで算出されたドア速度が0となる(図8のステップS44:YES)。このため、手動開閉検出部1hが、バックドア30の手動開操作が停止されたと判断し(図8のステップS45)、制御部1が、モータ20の駆動を停止する(図8のステップS50)。これにより、バックドア30は全閉位置と全開位置との間にある中間位置で静止する。そして、制御部1が、BD開閉SW3b、4b、6bの操作の無効化を解除して(図8のステップS51)、パワーアシスト処理を終了する。これにより、以降は、各BD開閉SW3b、4b、6bの操作が制御部1で受け付けられる。この後は、再び図3のメイン処理が実行される。
【0072】
また、操作者がバックドア30の手動開操作を継続すると、ドア速度が0以外の値(たとえば+値)になる(図8のステップS44:NO)。この場合、図8のステップS41〜S44の処理が繰り返される。その後、バックドア30が全開位置に到達すると、ドア速度が0となる(図8のステップS44:YES)。このため、手動開閉検出部1hが、バックドア30の手動開操作が停止されたと判断する(図8のステップS45)。そして、制御部1が、モータ20の駆動を停止して(図8のステップS50)、BD開閉SW3b、4b、6bの操作の無効化を解除し(図8のステップS51)、パワーアシスト処理を終了する。
【0073】
また、パワーアシスト処理の開始直後に、制御部1により、バックドア30の作動方向が閉方向であると判断されると(図8のステップS41:閉)、図9に示すように、目標補助力算出部1eが、位置検出部1aで検出されたドア位置と、速度算出部1bで算出されたドア速度とに基づいて、閉作動用の目標補助力を算出する(図8のステップS46)。
【0074】
このときも、目標補助力算出部1eでは、図10に示すように、位置特性1pによりドア位置に応じた補助力成分が出力され、速度特性1vによりドア速度に応じた補助力成分が出力される。そして、これら2つの補助力成分が乗算器1mで乗算されることで、目標補助力が算出される。なお、閉作動用の位置特性1pおよび速度特性1vは、開作動用の位置特性1pおよび速度特性1vと異なっていてもよいし、同一でもよい。
【0075】
目標補助力算出部1eで閉作動用の目標補助力が算出されると、図9に示すように、補助力制御部1fが、その目標補助力とモータ電流とに基づいて、バックドア30の手動閉操作を補助するように、モータ20を閉方向へ駆動する(図8のステップS47)。
【0076】
詳しくは、補助力制御部1fが、目標補助力とモータ電流に応じてモータ駆動部2によりモータ20への入力電圧を制御して、モータ20を閉方向へ駆動する。これにより、モータ20から出力されるモータトルクが操作補助力となって、操作者がバックドア30を手動で閉じる際の操作力が軽減される。
【0077】
上記のように、制御部1が補助力制御部1fによって、バックドア30の手動閉操作を補助するように、モータ20の駆動を制御しているときに、BD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、該操作は無効化されている(ステップS40)。このため、制御部1は、BD開閉SW3b、4b、6bの操作に応じて、速度制御部1dによりモータ20の駆動を制御することはなく、補助力制御部1fによるモータ20の閉方向への駆動の制御を継続する。
【0078】
その後、操作者がバックドア30の手動閉操作を止めると、速度算出部1bで算出されたドア速度が0となる(図8のステップS48:YES)。このため、手動開閉検出部1hが、バックドア30の手動閉操作が停止されたと判断し(図8のステップS49)、制御部1が、モータ20の駆動を停止する(図8のステップS50)。これにより、バックドア30は中間位置で静止する。そして、制御部1が、BD開閉SW3b、4b、6bの操作の無効化を解除して(図8のステップS51)、パワーアシスト処理を終了する。これにより、以降は、各BD開閉SW3b、4b、6bの操作が制御部1で受け付けられる。この後は、再び図3のメイン処理が実行される。
【0079】
また、操作者がバックドア30の手動閉操作を継続すると、ドア速度が0以外の値(たとえば−値)になる(図8のステップS48:NO)。この場合、図8のステップS41、S46〜S48の処理が繰り返される。その後、バックドア30が全閉位置に到達すると、ドア速度が0となる(図8のステップS48:YES)。このため、手動開閉検出部1hが、バックドア30の手動閉操作が停止されたと判断する(図8のステップS49)。そして、制御部1が、モータ20の駆動を停止して(図8のステップS50)、BD開閉SW3b、4b、6bの操作の無効化を解除し(図8のステップS51)、パワーアシスト処理を終了する。
【0080】
上記実施形態によると、補助力制御部1fによりバックドア30の手動開閉操作を補助するようにモータ20の駆動を制御するパワーアシスト状態で、BD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、そのパワーアシスト状態が継続される。つまり、BD開閉SW3b、4b、6bの操作に応じて、速度制御部1dによりモータ20の駆動が制御されることはなく、バックドア30が自動で開閉したり停止したりすることもない。このため、バックドア30を手動操作している操作者の意図に反する方向へバックドア30が移動することはなく、挟み込みなどの危険を招くおそれがない。また、バックドア30の手動操作方向と同一方向へバックドア30が自動的に移動することはなく、手動操作している操作者に違和感を与えるおそれもない。
【0081】
以上のことから、パワーアシスト状態でBD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、バックドア30の手動開閉操作を優先させて、バックドア30の使い勝手を向上させることができる。
【0082】
また、上記実施形態では、パワーアシストモードにおいて、バックドア30の手動開閉操作に応じて、目標補助力算出部1eにより目標補助力を算出する。そして、その目標補助力と、電流検出部2aで検出されたモータ電流とに基づいて、補助力制御部1fによりモータ20の駆動を制御するので、バックドア30の手動開閉操作を補助して、操作者の負担を軽減することができる。
【0083】
また、上記実施形態では、オート開閉モードにおいて、BD開閉SW3b、4b、6bの開閉操作に応じて、速度制御部1dによりモータ20の駆動を制御して、バックドア30を速度制御しながら自動開閉することができる。また、このようなバックドア30の自動開閉中に、BD開閉SW3b、4b、6bが再度操作されると、速度制御部1dは、その再度の操作に応じてモータ20の駆動を制御する。このため、BD開閉SW3b、4b、6bでの停止操作に応じて、バックドア30を所望の中間位置に停止させたり、BD開閉SW3b、4b、6bでの反転操作に応じて、バックドア30の作動方向を反転させたりすることができる。以上のことから、オート開閉状態でも、バックドア30の使い勝手を向上させることができる。
【0084】
さらに、上記実施形態では、運転席操作部3や後方操作部4にBD開閉SW3b、4bが設けられているだけでなく、遠隔操作機6にもBD開閉SW6bが設けられている。このため、車両の後方にいる操作者がバックドア30を手動開閉操作している状態で、バックドア30から離れた位置にいる別の利用者が、操作者の存在に気付かずに、遠隔操作機6のBD開閉SW6bを操作する可能性が高くなる。
【0085】
然るに、上記実施形態では、パワーアシスト状態で、BD開閉SW6bが操作されても、該操作に応じて速度制御部1dがモータ20の駆動を制御することはなく、パワーアシスト状態が継続される。このため、操作者の意図に反して、バックドア30が自動的に移動したり停止したりすることはなく、操作者に危険を及ぼしたり違和感を与えたりすることもない。よって、パワーアシスト状態で遠隔操作機6のBD開閉SW6bが操作されても、バックドア30の手動開閉操作を優先させて、バックドア30の使い勝手を向上させることができる。
【0086】
上記実施形態では、車両の走行状態を考慮していないが、下記の他の実施形態のように、車両の走行または停車の状態を考慮して、バックドア30の開閉を制御してもよい。
【0087】
図11は、本発明の他の実施形態によるパワーバックドア制御装置10’の構成を示した図である。パワーバックドア制御装置10’には、前述した構成に加えて、走行状態検出部1iと車両通信部11とが備わっている。
【0088】
パワーバックドア制御装置10’は、車両側ECU(電子制御装置)12とCAN(Controller Area Network)などにより接続されている。車両側ECU12からパワーバックドア制御装置10’には、車両の走行および停車に関する車両情報が随時送信される。その情報には、たとえば車速やアクセルやブレーキの状態などが含まれている。車両側ECU12から送信された情報は、車両通信部11により受信される。車両側ECU12は、本発明の「車両側装置」の一例である。
【0089】
走行状態検出部1iは、制御部1に設けられている。走行状態検出部1iは、車両側ECU12から車両通信部11により取得した車両情報に基づいて、車両が走行中であるか否かを検出する。制御部1のモード判別部1g’は、走行状態検出部1iにより検出した車両の走行または停車状態も考慮して、モード判別処理を行う(図3のステップS2)。
【0090】
図12は、モード判別部1g’が行うモード判別処理の詳細を示したフローチャートである。たとえば、車両側ECU12から取得した車両の車速が0以外であれば、走行状態検出部1iにより車両が走行中であることが検出される(図12のステップS10a:YES)。
【0091】
この車両の走行中に、運転席操作部3のBD開閉SW3bで開閉操作が行われなければ(図12のステップS10b:NO)、モード判別部1g’は、移行先が停止モードであると判別する(図12のステップS18)。
【0092】
対して、車両の走行中に、運転席操作部3のBD開閉SW3bで開操作が行われると(図12のステップS10b:YES、オート開操作)、モード判別部1g’は、移行先がオート開モードであると判別する(図12のステップS12)。また、BD開閉SW3bで閉操作が行われると(図12のステップS10b:YES、オート閉操作)、モード判別部1g’は、移行先がオート閉モードであると判別する(図12のステップS13)。このように、車両の走行中に、オート開モードまたはオート閉モードが判別されると、図5のオート開処理または図6のオート閉処理が実行されて、速度制御部1dがモータ20の駆動を制御し、バックドア30が自動で開閉される。
【0093】
なお、上記では、車両の走行中に、運転席操作部3のBD開閉SW3bの開閉操作だけを受け付けて、該操作に応じてバックドア30を自動で開閉している。然るに、他の例として、車両の走行中に、遠隔操作機6のBD開閉SW6bの開閉操作も受け付けて、該操作に応じてバックドア30を自動で開閉してもよい。
【0094】
一方、たとえば、車両側ECU12から取得した車両の車速が0であれば、走行状態検出部1iにより車両が走行中でない(停車中である)ことが検出される(図12のステップS10a:NO)。
【0095】
車両の停車中に、図8のパワーアシスト処理が実行されて、補助力制御部1fが、バックドア30の手動開閉操作を補助するように、モータ20を開閉駆動していると(図8のステップS43またはS47)、制御部1は、パワーアシスト中であると判定する(図12のステップS10c:NO)。そして、制御部1は、パワーアシスト処理を継続する(図12のステップS10d)。これにより、停車中でかつパワーアシスト中である場合は、いずれのBD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、該操作に応じて速度制御部1dがモータ20の駆動を制御せず、補助力制御部1fがモータ20の駆動制御を継続する。
【0096】
また、車両の停車中に、図8のパワーアシスト処理が実行されず、補助力制御部1fが、バックドア30の手動開閉操作を補助するように、モータ20を開閉駆動していなければ、制御部1は、パワーアシスト中でないと判定する(図12のステップS10c:YES)。そして、図4で説明したように、ステップS11〜S18の処理が実行される。つまり、モード判別部1g’が、BD開閉SW3b、4b、6bの開閉操作やドア速度に基づいて、移行先がオート開モード(図12のステップS12)、オート閉モード(図12のステップS13)、パワーアシストモード(図12のステップS16)、または停止モード(図12のステップS18)であると判別する。そして、この判別結果に従って、オート開処理、オート閉処理、もしくはパワーアシスト処理が実行され、またはバックドア30の中間位置での静止が維持される。
【0097】
上記他の実施形態によると、車両の停車中でかつパワーアシスト中である場合は、いずれのBD開閉SW3b、4b、6bが開閉操作されても、該パワーアシスト状態が継続される。このため、バックドア30を手動操作している操作者の意図に反してバックドア30が移動することはなく、挟み込みなどの危険を招いたり、操作者に違和感を与えたりするおそれがない。よって、パワーアシスト状態でBD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、バックドア30の手動開閉操作を優先させて、バックドア30の使い勝手を向上させることができる。
【0098】
また、上記他の実施形態では、車両の停車中でかつパワーアシスト中でない場合は、いずれかのBD開閉SW3b、4b、6bが開閉操作されると、該操作に応じてバックドア30が自動で開閉される。つまり、BD開閉SW3b、4b、6bの操作により、バックドア30を自動で開閉させるので、バックドア30の使い勝手を向上させることができる。
【0099】
さらに、上記他の実施形態では、車両の走行中に、運転席操作部3のBD開閉SW3bが開閉操作されると、バックドア30が自動で開閉される。このため、たとえばバックドア30が全閉していない状態で、車両を走行させても、該走行中に運転手がBD開閉SW3bを閉操作することで、バックドア30を全閉させることができる。また、車両の走行中に、たとえば中間位置にあるバックドア30を、BD開閉SW3bの操作により所望の位置まで開閉させることができる。
【0100】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、速度算出部1bが算出したバックドア30の開閉速度(ドア速度)に基づいて、手動開閉検出部1hがバックドア30の手動開閉操作を検出した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、位置検出部1aが検出したバックドア30の開閉位置(ドア位置)の時間変化に基づいて、手動開閉検出部1hがバックドア30の手動開閉操作を検出してもよい。また、たとえば、バックドア30の把持部に力覚センサなどの力を検知するセンサを設け、該センサの出力信号に基づいて、手動開閉検出部1hがバックドア30の手動開閉操作を検出してもよい。
【0101】
また、以上の実施形態では、パルス発生器7と全閉検出SW8と全開検出SW9の出力に基づいて、位置検出部1aがバックドア30の開閉位置を検出した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、センサやスイッチからの出力、モータに流れる電流、またはモータに流れる電流に含まれるリップルの周波数などに基づいて、位置検出部がバックドアの開閉位置を検出してもよい。
【0102】
また、以上の実施形態では、跳ね上げ式のバックドア30を例に示したが、本発明はこれのみに限定するものではなく、これ以外の方式のバックドアを用いてもよい。
【0103】
さらに、以上の実施形態では、自動四輪車のパワーバックドア制御装置10に本発明を適用した例を挙げたが、これに限るものではない。たとえばスライドドアを開閉させるパワースライドドア制御装置のような扉開閉制御装置に対しても、本発明を適用することは可能である。また、モータ以外のアクチュエータにより扉を開閉させる扉開閉制御装置に対しても、本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 制御部(第1制御部、第2制御部)
1a 位置検出部
1b 速度算出部
1c 目標速度算出部
1d 速度制御部(第1制御部)
1e 目標補助力算出部
1f 補助力制御部(第2制御部)
1h 手動開閉検出部
1i 走行状態検出部
2 モータ駆動部(駆動部)
2a 電流検出部
3b、4b、6b バックドア開閉スイッチ(操作スイッチ)
5 通信部
6 遠隔操作機
10 パワーバックドア制御装置(扉開閉制御装置)
12 車両側ECU(車両側装置)
20 モータ(アクチュエータ)
30 バックドア(扉)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12