(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0021】
まず、本実施形態の構成を、
図1および
図2を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、パワーバックドア制御装置10の構成を示した図である。
図2は、バックドア30の一例を示した図である。
【0023】
図1において、パワーバックドア制御装置10は、モータ20とBD(バックドア)開閉機構21とバックドア30とともに、パワーバックドアシステム100に組み込まれている。このパワーバックドアシステム100は、自動四輪車に搭載されている。
【0024】
パワーバックドア制御装置10は、
図2の車体31に設けられている。バックドア30を開閉させるためのBD開閉機構21は、車体31やバックドア30に設けられている。モータ20は、BD開閉機構21の動力源であり、車体31に設けられている。
【0025】
バックドア30は、
図2に示すように、自動四輪車の車体31の後面に設けられた、跳ね上げ式のドアから成る。バックドア30は、上端部にある回転軸32を中心にして、下端部が上方へ揺動することで開いて行き、逆に下端部が下方へ揺動することで閉まって行く。
図2では、全閉位置にあるバックドア30を実線で示し、全開位置にあるバックドア30を1点鎖線で示し、全閉位置と全開位置の間の中間位置にあるバックドア30を2点鎖線で示している。パワーバックドア制御装置10は、モータ20を正転または逆転で駆動して、BD開閉機構21を作動させ、バックドア30を自動で開閉させる(オート開閉機能)。
【0026】
また、バックドア30は、下端部や把持部(図示省略)をつかんで、手動で開閉操作することができる。バックドア30が手動で開閉操作された場合に、パワーバックドア制御装置10は、モータ20により操作補助力を付与して、操作者が小さな力でバックドア30を開閉操作できるようにする(パワーアシスト機能)。
【0027】
パワーバックドア制御装置10は、本発明の「扉開閉制御装置」の一例である。バックドア30は、本発明の「扉」の一例である。モータ20は、本発明の「アクチュエータ」の一例である。
【0028】
パワーバックドア制御装置10には、制御部1、モータ駆動部2、運転席操作部3、後方操作部4、通信部5、遠隔操作機6、パルス発生器7、全閉検出SW(スイッチ)8、および全開検出SW(スイッチ)9が備わっている。
【0029】
制御部1は、マイクロコンピュータから成る。制御部1には、位置検出部1a、速度算出部1b、目標速度算出部1c、速度制御部1d、目標補助力算出部1e、補助力制御部1f、モード判別部1g、および手動開閉検出部1hが設けられている。
【0030】
モータ駆動部2は、モータ20をPWM(パルス幅変調)信号で駆動するためのドライブ回路から成る。モータ駆動部2は、本発明の「駆動部」の一例である。
【0031】
制御部1は、モータ駆動部2によりモータ20の駆動を制御する。モータ駆動部2には、モータ20に流れる電流(以下、「モータ電流」という。)を検出する電流検出部2aが設けられている。電流検出部2aによるモータ電流の検出は、適宜または所定の周期で行われる。
【0032】
運転席操作部3は、自動四輪車の運転席に設けられたスイッチやボタンなどから成る。後方操作部4は、車体31の後方(車外)に設けられたスイッチやボタンなどから成る。運転席操作部3と後方操作部4には、バックドア30の開閉または停止を指示するために操作されるBD開閉SW(スイッチ)3b、4bがそれぞれ設けられている。
【0033】
通信部5は、遠隔操作機6と無線通信(LF(Low Frequency)信号やUHF(Ultra High Frequency)信号の通信など)するためのアンテナや回路から成る。遠隔操作機6は、パッシブエントリーシステムのFOBキーから成り、利用者により携帯される。
【0034】
遠隔操作機6にも、バックドア30の開閉または停止を指示するために操作されるBD開閉SW(スイッチ)6bが設けられている。利用者によりBD開閉SW6bが操作されると、その操作状態を示す操作信号が遠隔操作機6から無線で送信されて、通信部5によりその操作信号が受信される。BD開閉SW3b、4b、6bは、本発明の「操作スイッチ」の一例である。
【0035】
パルス発生器7は、たとえば2相式のロータリエンコーダから成り、モータ20またはBD開閉機構21に設けられている。パルス発生器7は、モータ20の回転状態またはBD開閉機構21の作動状態に応じて、位相がずれた2つのパルス信号を制御部1へ出力する。
【0036】
モータ20の回転状態、BD開閉機構21の作動状態、およびバックドア30の開閉状態は連動している。このため、制御部1の位置検出部1aは、パルス発生器7から出力される2つのパルス信号を検出し、該パルス信号に基づいてバックドア30の開閉位置(以下「ドア位置」という。)を検出する。速度算出部1bは、位置検出部1aが検出したドア位置の時間変化に基づいて、バックドア30の開閉速度(以下「ドア速度」という。)を算出する。位置検出部1aによるドア位置の検出と、速度算出部1bによるドア速度の算出とは、適宜または所定の周期で随時行われる。
【0037】
全閉検出SW(スイッチ)8と全開検出SW(スイッチ)9は、車体31の後部に設けられている。全閉検出SW8は、バックドア30が全閉したことを検出して、検出信号を制御部1へ出力する。全開検出SW9は、バックドア30が全開したことを検出して、検出信号を制御部1へ出力する。位置検出部1aは、全閉検出SW8または全開検出SW9からの出力信号に基づいて、バックドア30が全閉位置または全開位置にあることを検出する。
【0038】
制御部1は、BD開閉SW3b、4b、6bの操作に応じて、モータ駆動部2を介してモータ20の駆動を制御する。具体的には、制御部1は、BD開閉SW3b、4b、6bの開閉操作に応じて、モータ駆動部2によりモータ20を回転させ、BD開閉SW3b、4b、6bの停止操作に応じて、モータ駆動部2によりモータ20を停止する。これにより、バックドア30が自動で開閉したり、停止したりする。
【0039】
BD開閉SW3b、4b、6bの開閉操作に応じてモータ20を駆動する際、位置検出部1aが検出したドア位置に基づいて、目標速度算出部1cがバックドア30を自動で開閉させるための目標速度を算出する。そして、その目標速度と、速度算出部1bが算出したドア速度とに基づいて、速度制御部1dがモータ20を速度制御する。制御部1および速度制御部1dは、本発明の「第1制御部」の一例である。
【0040】
手動開閉検出部1hは、速度算出部1bが算出したドア速度に基づいて、バックドア30が手動で開閉操作されたことを検出する。具体的には、速度制御部1dがモータ20の駆動を制御していないときに、速度算出部1bが算出したドア速度が0でなければ、手動開閉検出部1hは、バックドア30が手動で開閉操作されたと判断する。
【0041】
手動開閉検出部1hによりバックドア30の手動開閉操作が検出されると、制御部1は、バックドア30の手動開閉操作を補助するように、モータ駆動部2を介してモータ20の駆動を制御する。具体的には、位置検出部1aが検出したドア位置と、速度算出部1bが算出したドア速度とに基づいて、目標補助力算出部1eが目標補助力を算出する。そして、その目標補助力と、電流検出部2aが検出したモータ電流とに基づいて、補助力制御部1fがモータ駆動部2を介してモータ20の駆動を制御する。制御部1および補助力制御部1fは、本発明の「第2制御部」の一例である。
【0042】
モード判別部1gは、位置検出部1aが検出したドア位置と、速度算出部1bが算出したドア速度と、BD開閉SW3b、4b、6bの操作状態とに基づいて、モータ20を制御するためのモードを判別する。
【0043】
次に、パワーバックドア制御装置10の動作を、
図3〜
図10を参照しながら説明する。
【0044】
図3は、パワーバックドア制御装置10のメイン処理を示したフローチャートである。制御部1は、位置検出部1aで検出されたドア位置により、バックドア30が全閉位置と全開位置の間にある中間位置にあると判断すると(
図3のステップS1:YES)、モード判別部1gによりモード判別処理を行う(
図3のステップS2)。
【0045】
図4は、モード判別処理の詳細を示したフローチャートである。いずれかのBD開閉SW3b、4b、6bで開操作が行われると(
図4のステップS11:YES、オート開操作)、モード判別部1gは、移行先がオート開モードであると判別する(
図4のステップS12)。また、いずれかのBD開閉SW3b、4b、6bで閉操作が行われると(
図4のステップS11:YES、オート閉操作)、モード判別部1gは、移行先がオート閉モードであると判別する(
図4のステップS13)。
【0046】
また、BD開閉SW3b、4b、6bでオート開閉操作が行われない状態で(
図4のステップS11:NO)、バックドア30が手動で開閉操作されると、速度算出部1bで算出されたドア速度が0以外の値となる(
図4のステップS14:NO)。これにより、手動開閉検出部1hが、バックドア30の手動開閉操作がされたと判断し(
図4のステップS15)、モード判別部1gは、移行先がパワーアシストモードであると判別する(
図4のステップS16)。
【0047】
また、BD開閉SW3b、4b、6bでオート開閉操作が行われない状態で(
図4のステップS11:NO)、バックドア30が手動で開閉操作されずに、静止していると、速度算出部1bで算出されたドア速度が0になる(
図4のステップS14:YES)。これにより、手動開閉検出部1hが、バックドア30の手動開閉操作がされていないと判断し(
図4のステップS17)、モード判別部1gは、移行先が停止モードであると判別する(
図4のステップS18)。
【0048】
また、いずれかのBD開閉SW3b、4b、6bで停止操作が行われた場合も(
図4のステップS11:NO)、ドア速度が0であれば(
図4のステップS14:YES)、モード判別部1gは、移行先が停止モードであると判別する(
図4のステップS18)。
【0049】
図4のモード判別処理での判別結果に従って、
図3のステップS3から停止モードに移行した場合、制御部1は、モータ20を駆動することなく、メイン処理を終了する。これにより、バックドア30は、中間位置で静止したままとなる。
【0050】
また、
図4のモード判別処理での判別結果に従って、
図3のステップS3からオート開モードに移行した場合、制御部1は、オート開処理を実行する(
図3のステップS4)。
【0051】
図5は、オート開処理の詳細を示したフローチャートである。
図7は、オート開処理およびオート閉処理の詳細を示したブロック図である。オート開処理を開始すると、
図7に示すように、目標速度算出部1cが、位置検出部1aで検出されたドア位置に基づいて目標速度を算出する(
図5のステップS21)。次に、速度制御部1dが、速度制御をしながらモータ20を開方向へ(たとえば正転)駆動する(
図5のステップS22)。
【0052】
詳しくは、速度制御部1dが、目標速度算出部1cで算出された目標速度と、速度算出部1bで算出されたドア速度とが一致するように、モータ駆動部2によりモータ20への入力電圧を制御して、モータ20を開方向へ駆動する。これにより、BD開閉機構21が作動して、バックドア30が自動で開いて行く。
【0053】
この後、BD開閉SW3b、4b、6bの操作がなければ(
図5のステップS23:NO)、バックドア30が全開位置に到達するまで(
図5のステップS25:NO)、ステップS21〜S25の処理が繰り返される。
【0054】
また、BD開閉SW3b、4b、6bのいずれかが操作されても(
図5のステップS23:YES)、それが開操作であれば(
図5のステップS24:YES)、バックドア30が全開位置に到達するまで(
図5のステップS25:NO)、ステップS21〜S25の処理が繰り返される。
【0055】
また、BD開閉SW3b、4b、6bのいずれかが操作されて(
図5のステップS23:YES)、それが開操作以外の操作(閉操作または停止操作)であれば(
図5のステップS24:NO)、先に受け付けた開操作が無効になる。このため、制御部1は、モータ20の駆動を停止して(
図5のステップS26)、オート開処理を終了する。この後、再び
図3のメイン処理が実行されて、BD開閉SW3b、4b、6bの操作に応じたモード(オート閉モードまたは停止モード)に移行する。他の例として、
図5のステップS23において、BD開閉SW3b、4b、6bの操作があった場合に、その操作が開操作・閉操作のいずれであっても、一旦モータ20の駆動を停止するか、またはモータ20の回転方向を反転させるようにしてもよい。
【0056】
また、BD開閉SW3b、4b、6bで開操作以外の操作が行われることなく(
図5のステップS23:NO、またはステップS24:YES)、バックドア30が全開位置に到達したとする。すると、制御部1が、位置検出部1aで検出されたドア位置に基づいて、バックドア30が全開位置にあると判断し(
図5のステップS25:YES)、モータ20の駆動を停止して(
図5のステップS26)、オート開処理を終了する。
【0057】
一方、
図4のモード判別処理での判別結果に従って、
図3のステップS3からオート閉モードに移行した場合、制御部1は、オート閉処理を実行する(
図3のステップS5)。
【0058】
図6は、オート閉処理の詳細を示したフローチャートである。オート閉処理を開始すると、
図7に示すように、目標速度算出部1cが位置検出部1aで検出されたドア位置に基づいて、目標速度を算出する(
図6のステップS31)。次に、速度制御部1dが、速度制御をしながらモータ20を閉方向へ(たとえば逆転)駆動する(
図6のステップS32)。
【0059】
詳しくは、速度制御部1dが、目標速度算出部1cで算出された目標速度と、速度算出部1bで算出されたドア速度とが一致するように、モータ駆動部2によりモータ20への入力電圧を制御して、モータ20を閉方向へ駆動する。これにより、BD開閉機構21が作動して、バックドア30が自動で閉じて行く。
【0060】
この後、BD開閉SW3b、4b、6bの操作がなければ(
図6のステップS33:NO)、バックドア30が全閉位置に到達するまで(
図6のステップS35:NO)、ステップS31〜S35の処理が繰り返される。
【0061】
また、BD開閉SW3b、4b、6bのいずれかが操作されても(
図6のステップS33:YES)、それが閉操作であれば(
図6のステップS34:YES)、バックドア30が全閉位置に到達するまで(
図6のステップS35:NO)、ステップS31〜S35の処理が繰り返される。
【0062】
また、BD開閉SW3b、4b、6bのいずれかが操作されて(
図6のステップS33:YES)、それが閉操作以外の操作(開操作または停止操作)であれば(
図6のステップS34:NO)、先に受け付けた閉操作が無効になる。このため、制御部1は、モータ20の駆動を停止して(
図6のステップS36)、オート閉処理を終了する。この後、再び
図3のメイン処理が実行されて、BD開閉SW3b、4b、6bの操作に応じたモード(オート開モードまたは停止モード)に移行する。他の例として、
図6のステップS33において、BD開閉SW3b、4b、6bの操作があった場合に、その操作が開操作・閉操作のいずれであっても、一旦モータ20の駆動を停止するか、またはモータ20の回転方向を反転させるようにしてもよい。
【0063】
また、BD開閉SW3b、4b、6bで閉操作以外の操作が行われることなく(
図6のステップS33:NO、またはステップS34:YES)、バックドア30が全閉位置に到達したとする。すると、制御部1が、位置検出部1aで検出されたドア位置に基づいて、バックドア30が全閉位置にあると判断し(
図6のステップS35:YES)、モータ20の駆動を停止して(
図6のステップS36)、オート閉処理を終了する。
【0064】
一方、
図4のモード判別処理での判別結果に従って、
図3のステップS3からパワーアシストモードに移行した場合、制御部1は、パワーアシストモード処理を実行する(
図3のステップS6)。
【0065】
図8は、パワーアシスト処理の詳細を示したフローチャートである。
図9は、パワーアシスト処理の詳細を示したブロック図である。
図10は、目標補助力算出部1eの詳細を示したブロック図である。パワーアシスト処理を開始すると、まず制御部1は、BD開閉SW3b、4b、6bの操作を無効化する(
図8のステップS40)。これにより、以降は、いずれのBD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、その操作が制御部1で無視される。
【0066】
次に、制御部1は、位置検出部1aで検出されたドア位置の時間変化に基づいて、バックドア30の作動方向(開閉方向)を判断する(
図8のステップS41)。このとき、制御部1により、バックドア30の作動方向が開方向であると判断されると(
図8のステップS41:開)、
図9に示すように、目標補助力算出部1eが位置検出部1aで検出されたドア位置と速度算出部1bで算出されたドア速度とに基づいて、開作動用の目標補助力を算出する(
図8のステップS42)。
【0067】
詳しくは、
図10に示すように、目標補助力算出部1eには、ドア位置に応じた補助力成分を示す位置特性1pと、ドア速度に応じた補助力成分を示す速度特性1vと、乗算器1mとが設けられている。位置検出部1aで検出されたドア位置が入力されると、位置特性1pによりそのドア位置に応じた補助力成分が出力される。また、速度算出部1bで算出されたドア速度が入力されると、速度特性1vによりそのドア速度に応じた補助力成分が出力される。そして、これら2つの補助力成分が乗算器1mで乗算されることで、目標補助力が算出される。
【0068】
目標補助力算出部1eで開作動用の目標補助力が算出されると、
図9に示すように、補助力制御部1fがその目標補助力と、電流検出部2aで検出されたモータ電流とに基づいて、バックドア30の手動開操作を補助するように、モータ20を開方向へ駆動する(
図8のステップS43)。
【0069】
詳しくは、補助力制御部1fが、目標補助力とモータ電流に応じてモータ駆動部2によりモータ20への入力電圧を制御して、モータ20を開方向へ駆動する。これにより、モータ20から出力されるモータトルクが操作補助力となって、操作者がバックドア30を手動で開く際の操作力が軽減される。
【0070】
上記のように、制御部1が補助力制御部1fによって、バックドア30の手動
開操作を補助するように、モータ20の駆動を制御しているときに、BD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、該操作は無効化されている(ステップS40)。このため、制御部1は、BD開閉SW3b、4b、6bの操作に応じて、速度制御部1dによりモータ20の駆動を制御することはなく、補助力制御部1fによるモータ20の開方向への駆動の制御を継続する。
【0071】
その後、操作者がバックドア30の手動開操作を止めると、速度算出部1bで算出されたドア速度が0となる(
図8のステップS44:YES)。このため、手動開閉検出部1hが、バックドア30の手動開操作が停止されたと判断し(
図8のステップS45)、制御部1が、モータ20の駆動を停止する(
図8のステップS50)。これにより、バックドア30は全閉位置と全開位置との間にある中間位置で静止する。そして、制御部1が、BD開閉SW3b、4b、6bの操作の無効化を解除して(
図8のステップS51)、パワーアシスト処理を終了する。これにより、以降は、各BD開閉SW3b、4b、6bの操作が制御部1で受け付けられる。この後は、再び
図3のメイン処理が実行される。
【0072】
また、操作者がバックドア30の手動開操作を継続すると、ドア速度が0以外の値(たとえば+値)になる(
図8のステップS44:NO)。この場合、
図8のステップS41〜S44の処理が繰り返される。その後、バックドア30が全開位置に到達すると、ドア速度が0となる(
図8のステップS44:YES)。このため、手動開閉検出部1hが、バックドア30の手動開操作が停止されたと判断する(
図8のステップS45)。そして、制御部1が、モータ20の駆動を停止して(
図8のステップS50)、BD開閉SW3b、4b、6bの操作の無効化を解除し(
図8のステップS51)、パワーアシスト処理を終了する。
【0073】
また、パワーアシスト処理の開始直後に、制御部1により、バックドア30の作動方向が閉方向であると判断されると(
図8のステップS41:閉)、
図9に示すように、目標補助力算出部1eが、位置検出部1aで検出されたドア位置と、速度算出部1bで算出されたドア速度とに基づいて、閉作動用の目標補助力を算出する(
図8のステップS46)。
【0074】
このときも、目標補助力算出部1eでは、
図10に示すように、位置特性1pによりドア位置に応じた補助力成分が出力され、速度特性1vによりドア速度に応じた補助力成分が出力される。そして、これら2つの補助力成分が乗算器1mで乗算されることで、目標補助力が算出される。なお、閉作動用の位置特性1pおよび速度特性1vは、開作動用の位置特性1pおよび速度特性1vと異なっていてもよいし、同一でもよい。
【0075】
目標補助力算出部1eで閉作動用の目標補助力が算出されると、
図9に示すように、補助力制御部1fが、その目標補助力とモータ電流とに基づいて、バックドア30の手動閉操作を補助するように、モータ20を閉方向へ駆動する(
図8のステップS47)。
【0076】
詳しくは、補助力制御部1fが、目標補助力とモータ電流に応じてモータ駆動部2によりモータ20への入力電圧を制御して、モータ20を閉方向へ駆動する。これにより、モータ20から出力されるモータトルクが操作補助力となって、操作者がバックドア30を手動で閉じる際の操作力が軽減される。
【0077】
上記のように、制御部1が補助力制御部1fによって、バックドア30の手動閉操作を補助するように、モータ20の駆動を制御しているときに、BD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、該操作は無効化されている(ステップS40)。このため、制御部1は、BD開閉SW3b、4b、6bの操作に応じて、速度制御部1dによりモータ20の駆動を制御することはなく、補助力制御部1fによるモータ20の閉方向への駆動の制御を継続する。
【0078】
その後、操作者がバックドア30の手動閉操作を止めると、速度算出部1bで算出されたドア速度が0となる(
図8のステップS48:YES)。このため、手動開閉検出部1hが、バックドア30の手動閉操作が停止されたと判断し(
図8のステップS49)、制御部1が、モータ20の駆動を停止する(
図8のステップS50)。これにより、バックドア30は中間位置で静止する。そして、制御部1が、BD開閉SW3b、4b、6bの操作の無効化を解除して(
図8のステップS51)、パワーアシスト処理を終了する。これにより、以降は、各BD開閉SW3b、4b、6bの操作が制御部1で受け付けられる。この後は、再び
図3のメイン処理が実行される。
【0079】
また、操作者がバックドア30の手動閉操作を継続すると、ドア速度が0以外の値(たとえば−値)になる(
図8のステップS48:NO)。この場合、
図8のステップS41、S46〜S48の処理が繰り返される。その後、バックドア30が全閉位置に到達すると、ドア速度が0となる(
図8のステップS48:YES)。このため、手動開閉検出部1hが、バックドア30の手動閉操作が停止されたと判断する(
図8のステップS49)。そして、制御部1が、モータ20の駆動を停止して(
図8のステップS50)、BD開閉SW3b、4b、6bの操作の無効化を解除し(
図8のステップS51)、パワーアシスト処理を終了する。
【0080】
上記実施形態によると、補助力制御部1fによりバックドア30の手動開閉操作を補助するようにモータ20の駆動を制御するパワーアシスト状態で、BD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、そのパワーアシスト状態が継続される。つまり、BD開閉SW3b、4b、6bの操作に応じて、速度制御部1dによりモータ20の駆動が制御されることはなく、バックドア30が自動で開閉したり停止したりすることもない。このため、バックドア30を手動操作している操作者の意図に反する方向へバックドア30が移動することはなく、挟み込みなどの危険を招くおそれがない。また、バックドア30の手動操作方向と同一方向へバックドア30が自動的に移動することはなく、手動操作している操作者に違和感を与えるおそれもない。
【0081】
以上のことから、パワーアシスト状態でBD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、バックドア30の手動開閉操作を優先させて、バックドア30の使い勝手を向上させることができる。
【0082】
また、上記実施形態では、パワーアシストモードにおいて、バックドア30の手動開閉操作に応じて、目標補助力算出部1eにより目標補助力を算出する。そして、その目標補助力と、電流検出部2aで検出されたモータ電流とに基づいて、補助力制御部1fによりモータ20の駆動を制御するので、バックドア30の手動開閉操作を補助して、操作者の負担を軽減することができる。
【0083】
また、上記実施形態では、オート開閉モードにおいて、BD開閉SW3b、4b、6bの開閉操作に応じて、速度制御部1dによりモータ20の駆動を制御して、バックドア30を速度制御しながら自動開閉することができる。また、このようなバックドア30の自動開閉中に、BD開閉SW3b、4b、6bが再度操作されると、速度制御部1dは、その再度の操作に応じてモータ20の駆動を制御する。このため、BD開閉SW3b、4b、6bでの停止操作に応じて、バックドア30を所望の中間位置に停止させたり、BD開閉SW3b、4b、6bでの反転操作に応じて、バックドア30の作動方向を反転させたりすることができる。以上のことから、オート開閉状態でも、バックドア30の使い勝手を向上させることができる。
【0084】
さらに、上記実施形態では、運転席操作部3や後方操作部4にBD開閉SW3b、4bが設けられているだけでなく、遠隔操作機6にもBD開閉SW6bが設けられている。このため、車両の後方にいる操作者がバックドア30を手動開閉操作している状態で、バックドア30から離れた位置にいる別の利用者が、操作者の存在に気付かずに、遠隔操作機6のBD開閉SW6bを操作する可能性が高くなる。
【0085】
然るに、上記実施形態では、パワーアシスト状態で、BD開閉SW6bが操作されても、該操作に応じて速度制御部1dがモータ20の駆動を制御することはなく、パワーアシスト状態が継続される。このため、操作者の意図に反して、バックドア30が自動的に移動したり停止したりすることはなく、操作者に危険を及ぼしたり違和感を与えたりすることもない。よって、パワーアシスト状態で遠隔操作機6のBD開閉SW6bが操作されても、バックドア30の手動開閉操作を優先させて、バックドア30の使い勝手を向上させることができる。
【0086】
上記実施形態では、車両の走行状態を考慮していないが、下記の他の実施形態のように、車両の走行または停車の状態を考慮して、バックドア30の開閉を制御してもよい。
【0087】
図11は、本発明の他の実施形態によるパワーバックドア制御装置10’の構成を示した図である。パワーバックドア制御装置10’には、前述した構成に加えて、走行状態検出部1iと車両通信部11とが備わっている。
【0088】
パワーバックドア制御装置10’は、車両側ECU(電子制御装置)12とCAN(Controller Area Network)などにより接続されている。車両側ECU12からパワーバックドア制御装置10’には、車両の走行および停車に関する車両情報が随時送信される。その情報には、たとえば車速やアクセルやブレーキの状態などが含まれている。車両側ECU12から送信された情報は、車両通信部11により受信される。車両側ECU12は、本発明の「車両側装置」の一例である。
【0089】
走行状態検出部1iは、制御部1に設けられている。走行状態検出部1iは、車両側ECU12から車両通信部11により取得した車両情報に基づいて、車両が走行中であるか否かを検出する。制御部1のモード判別部1g’は、走行状態検出部1iにより検出した車両の走行または停車状態も考慮して、モード判別処理を行う(
図3のステップS2)。
【0090】
図12は、モード判別部1g’が行うモード判別処理の詳細を示したフローチャートである。たとえば、車両側ECU12から取得した車両の車速が0以外であれば、走行状態検出部1iにより車両が走行中であることが検出される(
図12のステップS10a:YES)。
【0091】
この車両の走行中に、運転席操作部3のBD開閉SW3bで開閉操作が行われなければ(
図12のステップS10b:NO)、モード判別部1g’は、移行先が停止モードであると判別する(
図12のステップS18)。
【0092】
対して、車両の走行中に、運転席操作部3のBD開閉SW3bで開操作が行われると(
図12のステップS10b:YES、オート開操作)、モード判別部1g’は、移行先がオート開モードであると判別する(
図12のステップS12)。また、BD開閉SW3bで閉操作が行われると(
図12のステップS10b:YES、オート閉操作)、モード判別部1g’は、移行先がオート閉モードであると判別する(
図12のステップS13)。このように、車両の走行中に、オート開モードまたはオート閉モードが判別されると、
図5のオート開処理または
図6のオート閉処理が実行されて、速度制御部1dがモータ20の駆動を制御し、バックドア30が自動で開閉される。
【0093】
なお、上記では、車両の走行中に、運転席操作部3のBD開閉SW3bの開閉操作だけを受け付けて、該操作に応じてバックドア30を自動で開閉している。然るに、他の例として、車両の走行中に、遠隔操作機6のBD開閉SW6bの開閉操作も受け付けて、該操作に応じてバックドア30を自動で開閉してもよい。
【0094】
一方、たとえば、車両側ECU12から取得した車両の車速が0であれば、走行状態検出部1iにより車両が走行中でない(停車中である)ことが検出される(
図12のステップS10a:NO)。
【0095】
車両の停車中に、
図8のパワーアシスト処理が実行されて、補助力制御部1fが、バックドア30の手動開閉操作を補助するように、モータ20を開閉駆動していると(
図8のステップS43またはS47)、制御部1は、パワーアシスト中であると判定する(
図12のステップS10c:NO)。そして、制御部1は、パワーアシスト処理を継続する(
図12のステップS10d)。これにより、停車中でかつパワーアシスト中である場合は、いずれのBD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、該操作に応じて速度制御部1dがモータ20の駆動を制御せず、補助力制御部1fがモータ20の駆動制御を継続する。
【0096】
また、車両の停車中に、
図8のパワーアシスト処理が実行されず、補助力制御部1fが、バックドア30の手動開閉操作を補助するように、モータ20を開閉駆動していなければ、制御部1は、パワーアシスト中でないと判定する(
図12のステップS10c:YES)。そして、
図4で説明したように、ステップS11〜S18の処理が実行される。つまり、モード判別部1g’が、BD開閉SW3b、4b、6bの開閉操作やドア速度に基づいて、移行先がオート開モード(
図12のステップS12)、オート閉モード(
図12のステップS13)、パワーアシストモード(
図12のステップS16)、または停止モード(
図12のステップS18)であると判別する。そして、この判別結果に従って、オート開処理、オート閉処理、もしくはパワーアシスト処理が実行され、またはバックドア30の中間位置での静止が維持される。
【0097】
上記他の実施形態によると、車両の停車中でかつパワーアシスト中である場合は、いずれのBD開閉SW3b、4b、6bが開閉操作されても、該パワーアシスト状態が継続される。このため、バックドア30を手動操作している操作者の意図に反してバックドア30が移動することはなく、挟み込みなどの危険を招いたり、操作者に違和感を与えたりするおそれがない。よって、パワーアシスト状態でBD開閉SW3b、4b、6bが操作されても、バックドア30の手動開閉操作を優先させて、バックドア30の使い勝手を向上させることができる。
【0098】
また、上記他の実施形態では、車両の停車中でかつパワーアシスト中でない場合は、いずれかのBD開閉SW3b、4b、6bが開閉操作されると、該操作に応じてバックドア30が自動で開閉される。つまり、BD開閉SW3b、4b、6bの操作により、バックドア30を自動で開閉させるので、バックドア30の使い勝手を向上させることができる。
【0099】
さらに、上記他の実施形態では、車両の走行中に、運転席操作部3のBD開閉SW3bが開閉操作されると、バックドア30が自動で開閉される。このため、たとえばバックドア30が全閉していない状態で、車両を走行させても、該走行中に運転手がBD開閉SW3bを閉操作することで、バックドア30を全閉させることができる。また、車両の走行中に、たとえば中間位置にあるバックドア30を、BD開閉SW3bの操作により所望の位置まで開閉させることができる。
【0100】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、速度算出部1bが算出したバックドア30の開閉速度(ドア速度)に基づいて、手動開閉検出部1hがバックドア30の手動開閉操作を検出した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、位置検出部1aが検出したバックドア30の開閉位置(ドア位置)の時間変化に基づいて、手動開閉検出部1hがバックドア30の手動開閉操作を検出してもよい。また、たとえば、バックドア30の把持部に力覚センサなどの力を検知するセンサを設け、該センサの出力信号に基づいて、手動開閉検出部1hがバックドア30の手動開閉操作を検出してもよい。
【0101】
また、以上の実施形態では、パルス発生器7と全閉検出SW8と全開検出SW9の出力に基づいて、位置検出部1aがバックドア30の開閉位置を検出した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、センサやスイッチからの出力、モータに流れる電流、またはモータに流れる電流に含まれるリップルの周波数などに基づいて、位置検出部がバックドアの開閉位置を検出してもよい。
【0102】
また、以上の実施形態では、跳ね上げ式のバックドア30を例に示したが、本発明はこれのみに限定するものではなく、これ以外の方式のバックドアを用いてもよい。
【0103】
さらに、以上の実施形態では、自動四輪車のパワーバックドア制御装置10に本発明を適用した例を挙げたが、これに限るものではない。たとえばスライドドアを開閉させるパワースライドドア制御装置のような扉開閉制御装置に対しても、本発明を適用することは可能である。また、モータ以外のアクチュエータにより扉を開閉させる扉開閉制御装置に対しても、本発明を適用することは可能である。