(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマーアロイは、(i)(a)ポリオールと;(i)(b)ポリオールおよびジカルボン酸から誘導されたポリエステル中間体と;(ii)少なくとも1つのジイソシアネートと、(iii)少なくとも1つの連鎖延長剤との反応から誘導される、請求項7に記載の衣類。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明の種々の特徴および実施形態を非限定的な説明によって以下に記載する。
【0010】
(冷却効果)
本発明は、ひんやりとした肌触りが優れており、さらに弾性が優れている繊維を提供する。この冷却効果は、一般的に、この繊維から作製された布および/または物品で観察されるが、冷却効果は、繊維の特性に起因するものであり、そのため、関与する布および/または物品の種類および/または構成に依存するものではないが、これらのパラメーターは、もちろん、観察される冷却効果に相対的な影響を及ぼし得ると考えられる。言い換えると、冷却効果は、この繊維によって与えられ、さらに具体的には、特定の特性および/または化学組成を有する繊維によって与えられると考えられる。本出願において、本願発明者らは、この繊維が、皮膚と接触したとき、またはヒトの皮膚に近づいたときにひんやりとした肌触りを与えることができ、本発明の繊維とヒトの皮膚との間にある衣服の1つの層または2つの層の上側でこのことを言うことができることを頻繁に注記している。いくつかの実施形態では、繊維は、ヒトの皮膚と直接接触している。冷却効果の評価は、繊維自体、このような繊維から作製された布、このような繊維および/または布から作製された任意の物品、または種々のこれらの組み合わせを用いて行われてもよいことが理解される。
【0011】
本発明によって与えられる冷却効果の原因であると考えられる鍵となる因子を、主に繊維の章で以下に記載する。
【0012】
(繊維)
本発明は、ひんやりとした肌触りが優れており、さらに弾性が優れている繊維を提供する。この繊維は、皮膚と接触したときに、ひんやりとした肌触りを与えることができる。この効果は、官能試験で感知されるほど十分に強くすることができる。
【0013】
この繊維は、熱可塑性エラストマーを含んでいてもよく、さらに無機フィラーを含んでいてもよいが、特定の実施形態では、組成物は、無機フィラーを含まない。
【0014】
本発明の繊維は、Tgが22℃以下であってもよく、また、この繊維から作製された物品は、並外れて弾性であり、さらに、この繊維を衣服に用いたとき、ひんやりとした肌触りを与えることにも優れている。
【0015】
「弾性な」および「弾性」は、本明細書で使用される場合、繊維が、100%歪み(長さを二倍にした)までの1回目の引っ張りの後および4回目引っ張りの後に、伸びた長さの少なくとも約50%が回復することを意味する。弾性は、繊維の「永久変形」で記載することもできる。「永久変形」は、弾性の逆である。繊維は、特定の点まで、いくつかの実施形態では、その繊維について公知の破壊時の伸び率の50%まで伸ばされ、その後、伸びる前の元々の位置まで解放され、次いで、再び伸ばされる。繊維が負荷を引っ張り始める点は、永久変形率と呼ばれる。「弾性材料」は、当該技術分野で「エラストマー」および「エラストマー性」とも呼ばれる。
【0016】
本発明の繊維は、濡れた状態での、汗などに起因し、したがって、繊維を衣類に使用したときに、着用者に好ましくない感覚を与えることが多いべたつく肌触りまたは悪い肌触りも避けつつ、この利益をバランス良く与えることができる。本発明の繊維は、これらの因子すべてをバランス良く与え、これらの因子のうち、いずれか1つまたは任意の組み合わせで優れた性能を与える。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する繊維の調製で利用する熱可塑性エラストマーは、ポリアミド型エラストマーおよび/またはポリエステル型エラストマーを実質的に含まないか、または含まない。さらに具体的には、本発明は、ポリエーテルブロックアミドコポリマー、ポリエーテルアミドコポリマー、ポリエステルアミドコポリマー、またはこれらの任意の組み合わせを含んでいなくてもよい。さらに具体的には、本発明に含まれる組成物は、Pebax(Arkemaによって製造)を実質的に含まないか、または完全に含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、ポリアミドエラストマー、またはエラストマー内のポリアミドブロックという用語は、その化学的な意味から、ポリウレタンエラストマー、またはエラストマー内のウレタンブロックとは異なり、別個であるとされる。いくつかの実施形態では、ポリアミド連結部および/またはブロックは、エラストマー中の−N(R)−C(O)−R−単位および/または連結を指し、一方でポリウレタン連結部および/またはブロックは、エラストマー中の−N(R)−C(O)−R−単位および/または連結を指す。
【0018】
他の実施形態では、本明細書に記載する繊維の調製に利用される熱可塑性エラストマーは、ポリエーテルブロックアミドコポリマー、ポリエーテルアミドコポリマー、ポリエステルアミドコポリマー、またはこれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。
【0019】
ポリエステル型エラストマーは、特に限定されず、例は、ポリエーテルエステルコポリマーおよびポリエステルエステルコポリマーである。ポリエステル型エラストマーは、単独で使用してもよく、2種類以上のポリエステル型エラストマーを組み合わせて使用してもよい。
【0020】
上のものの中で、商品化されたポリエステル型エラストマーは、Grilux(Dainippon Ink and Chemicals,Inc.によって製造)、Nouvelan(Teijin Chemicals Ltd.によって製造)、Pelprene(Toyobo Co.,Ltd.によって製造)、Hytrel(DuPont−Toray Co.,Ltd.によって製造)、およびPrimalloy(Mitsubishi Chemical Corporationによって製造)である。
【0021】
本発明の繊維に含まれる樹脂要素は、本発明の優れたひんやりとした肌触りを提供し、そのため、熱可塑性エラストマーを単独で使用してもよい。本発明の別の利益は、ここに記載する繊維が、樹脂要素として熱可塑性エラストマーのみを含む場合、一般的に、べたつく感覚はなく、そのため、紡糸が困難にはならないことである。ここに記載する樹脂と組み合わせて、さらなる樹脂を使用してもよいが、べたつきまたは従来の樹脂では伴うことがもっと多いと思われる他の望ましくない感覚に対処する必要はない。いくつかの実施形態では、さらなる樹脂を使用する。ここに記載する樹脂と組み合わせて無機フィラー樹脂を使用してもよいが、べたつきまたは従来の樹脂では伴うことがもっと多いと思われる他の望ましくない感覚に対処する必要はない。
【0022】
いくつかの実施形態では、繊維および/または繊維から調製された樹脂は、無機フィラーを実質的に含まないか、含まない。無機フィラーを使用するとき、無機フィラーは特に限定されないが、例としては、鉱物型顔料、例えば、炭酸カルシウム、例えば、軽質炭酸カルシウムおよび重質炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、例えば、塩基性炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化鉄、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、フェライト粉末、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、サチン白、珪藻土、例えば、焼成珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、例えば、アモルファスシリカ、アモルファス合成シリカ、コロイド状シリカ、コロイド状アルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、水和アルミナ、リトポン(litopon)、ゼオライト、水和ハロイサイト、クレイ、ハイドロタルサイト、アルミノシリケート、タルク、パイロフィライト、スメクタイト、例えば、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、ステベンサイト、モンモリロナイト、バイデライトおよびノントロナイト(nontromite)、バーミキュライト、マイカ、例えば、フロゴパイト、黒雲母(biotie)、チンワルダイト、白雲母、パラゴナイト、セラドナイトおよびグロコナイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、ペナンタイト、須藤石、ドンバサイト(donbasite)、クリントナイト、マーガライト、桃簾石、アンチゴライト、リザーダイト、クリソタイル、アメサイト(mesite)、クロンステダイト、バーチェリン、グリーナライト、ガーニエライト、カオリン、例えば、カオリナイト、ディカイト、ナクライトおよびハロサイト(hallosite)、剥離したカオリン、焼成カオリン、セピオライト、パリゴルスカイト、イモゴライト、アロフェン、ヒシンゲライト、ペンウィス石、活性白土、ベントナイト、セリサイトを挙げることができる。これらを単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。いくつかの実施形態では、フィラーは、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化バリウム、シリカ、またはこれらのいくつかの組み合わせである。無機フィラーの形態は特に限定されず、例は、球状、針状、平板型の形態などのような有形の形態、または無形の形態である。
【0023】
無機フィラーが存在する場合、無機フィラーの含有量の下限は1重量%、2重量%または7重量%であってもよく、上限は30重量%である。
【0024】
本発明の繊維は、1つ以上のさらなる添加剤をさらに含んでいてもよく、いくつかの実施形態では、少なくとも1つ以上のさらなる添加剤を含んでいなければならない(本発明の熱可塑性エラストマーおよび任意の無機フィラー以外)。それに加え、繊維はねじれていてもよく、および/または本発明の意図の程度に含まれる皮膚接触のような下着に要求される因子の向上を阻害しないように、別の繊維で覆われていてもよい。このような別の繊維は特に限定されず、例は、ポリアミド型樹脂、例えば、ナイロン6およびナイロン12;ポリエステル、綿、レーヨンである。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、q
max値によって記載されてもよい。繊維のq
max値の下限値は、0.20、0.21または0.22J/sec/cm
2であってもよい。q
max値が0.20J/sec/cm
2未満であると、官能試験が行われた場合であっても、被験者はなんらひんやりとした肌触りを感じることができない。他の実施形態では、繊維のq
max値は、0.20J/sec/cm
2未満であってもよく、さらに0.22J/sec/cm
2を超えてもよい。
【0026】
この記載において、q
max値は、特定の表面積および特定の重量を有する加熱プレートに所定の熱が蓄えられ、その直後に加熱プレートをサンプル表面と接触させた場合に、低温でサンプルに移動して蓄積された熱の熱流量のピーク値であると定義される。q
max値は、衣服を着用したときにサンプルによって体から取り去られる体熱をシミュレートしていると考えられ、q
max値が大きいほど、衣服を着用したときに、体から取り去られる体熱は大きくなり、ひんやりとした肌触りがさらに優れると考えられる。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維の熱伝導性の下限は、1×10
−3℃/Wm
2であってもよい。熱伝導性は、ひんやりとした肌触りが対応する重要なパラメーターの1つであるとも考えられる。熱伝導性が1×10
−3℃/Wm2未満であると、官能試験が行われた場合であっても、ほとんどの被験者はひんやりとした肌触りを感じることができない。
【0028】
この記載では、熱伝導性は、加熱プレートをサンプルスタンドの上にあるサンプルに層状になるように置き、加熱プレートの温度を所定の温度に安定化した後に熱損失速度を測定し、以下の式(2)によって計算を行うことによって算出することができる。
【0029】
熱伝導性(W/cm/℃)=WD/A/ΔT (2)
ここで、W:熱流量(J/sec)
D:サンプルの厚み(cm)
A:加熱プレートの表面積(cm
2)
ΔT:サンプルスタンドと加熱プレートとの温度差(℃)
本発明の繊維は、熱可塑性エラストマーおよび別の樹脂を含むコンポジット繊維の形態で使用してもよく、コア−シース構造を有していてもよく、着色可能な樹脂を含有するコア部分と、熱可塑性エラストマー樹脂を含有するシース部分とを含み、シース部分の厚みは、20マイクロメートルまたはこれより薄い(以下、ある場合には、コア−シース型コンポジットヤーンと呼ぶ)。本発明のひんやりとした肌触りが優れた繊維は、コア部分にこのような着色可能な樹脂を用い、シース部分にひんやりとした肌触りを有し、可撓性が優れた熱可塑性エラストマーを用いることによって、良好な着色性を有し、ひんやりとした肌触りのような、熱可塑性エラストマーの優れた特性を維持するコア−シース構造を有する繊維であってもよい。
【0030】
コア−シース型コンポジットヤーンの形態は、特に限定されず、繊維の長手方向に垂直に繊維を切断した場合に作られる断面形状は、真円、楕円などであってもよい。さらに、繊維は、コア部分およびシース部分が同心円状に作られた同心円状のコア−シース型構造またはコア部分およびシース部分が偏心状に作られた偏心状のコア−シース型構造を有していてもよい。さらに、繊維は、繊維の長手方向に垂直に繊維を切断した場合に複数のコア部分が存在する構造を有していてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、Tgが22℃以下の弾性冷却繊維である。
【0032】
これらの実施形態のいくつかにおいて、繊維のTgは、22℃以下、15℃以下、10℃以下、0℃以下、−10℃以下、−20℃以下、−30℃以下、またはさらに−40℃以下であってもよい。これらのTg境界値を繊維自体に適用してもよく、繊維から作製された組成物(組成物が紡糸されるか、または他の方法によって繊維へと処理される前)に適用してもよく、組成物が調製される中間体、またはこれらの任意の組み合わせに適用されてもよい。
【0033】
これらの実施形態のいくつかにおいて、繊維によって達成される伸び率は、200%〜300%であってもよい。
【0034】
本発明の繊維は、(i)末端がヒドロキシルの中間体と、(ii)ジイソシアネートと、(iii)直鎖アルキレングリコール連鎖延長剤との反応生成物を含む組成物から調製される。末端がヒドロキシルの中間体は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはこれらの組み合わせを含んでいてもよく、この中間体は、Tgが22℃以下である。いくつかの実施形態では、中間体は、ポリエチレングリコールから誘導される。ジイソシアネートは、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含んでいてもよい。直鎖アルキレングリコールは、1,6−ブタンジオールおよび類似物質を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、本発明で使用される末端がヒドロキシルの中間体は、ポリエーテルブロックアミドコポリマーおよび/またはポリエーテルブロックアミドコポリマーの単位を実質的に含まないか、または含まない。
【0035】
さらに他の実施形態では、本発明の繊維は、(i)ポリエチレングリコール、または1つ以上のアルキレンジオールとアジピン酸とから誘導されたアジペートを含むか、および/またはこれらから誘導された中間体、(ii)メチレンジフェニルジイソシアネートを含むジイソシアネート;および(iii)1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい直鎖アルキレングリコール連鎖延長剤から調製された組成物自体から調製される。これらの実施形態のいくつかにおいて、連鎖延長剤は1,4−ブタンジオールを含み、アジペートは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、またはこれらの組み合わせから調製される。これらの実施形態のいくつかにおいて、アジペートは、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの混合物から調製される。さらに、これらの実施形態のいくつかにおいて、繊維を調製するために使用される組成物は、40〜80、40〜70、50〜60、または55〜58または56〜57重量%の中間体と;20〜50、30〜40、30〜35、またはさらに31〜34または32〜33重量%のジイソシアネートと;4〜25、5〜20、5〜15、またはさらに8〜11、または9〜10重量%の連鎖延長剤である。本発明の繊維は、上述の材料を含み、以下に記載するいずれかのさらなる添加剤を含めてさらに1種類以上のポリマー添加剤を含有していてもよい組成物から作製されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、酸化防止剤、潤滑剤および/または処理助剤をさらに含んでいてもよく、さらに、金属を含有する触媒を含んでいてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、(i)ポリエチレングリコールを含むか、および/またはこれらから誘導された中間体、(ii)メチレンジフェニルジイソシアネートを含むジイソシアネート;および(iii)1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、またはこれらの組み合わせを含む直鎖アルキレングリコール連鎖延長剤から調製された組成物自体から調製される。これらの実施形態のいくつかにおいて、連鎖延長剤は、1,4−ブタンジオールを含む。さらに、これらの実施形態のいくつかにおいて、繊維を調製するために使用される組成物は、40〜80、40〜70、40〜60、またはさらに46〜49または47〜48重量%の中間体と;20〜50、30〜50、35〜45、またはさらに40〜43または41〜42重量%のジイソシアネートと;4〜25、5〜20、5〜15、またはさらに9〜12、または10〜11重量%の連鎖延長剤である。
【0037】
それに加え、繊維が調製される組成物は、(a)ポリマーおよび/またはコポリマーセグメントと、少なくとも1つの他のポリマーおよび/またはコポリマーセグメントとを反応させることによって調製された多相コポリマー;(b)ポリマーおよび/またはコポリマーと少なくとも1つの他のポリマーおよび/またはコポリマーとを混合して調製され、それぞれのポリマーおよび/またはコポリマーは、互いに相溶性および/または混和性であるポリマーブレンド;または(c)これらの組み合わせを含むポリマーアロイであってもよい。ポリマーアロイは、(i)(a)ポリオールと;(i)(b)ポリオールおよびジカルボン酸から誘導されたポリエステル中間体と;(ii)少なくとも1つのジイソシアネートと、(iii)少なくとも1つの連鎖延長剤との反応から誘導されてもよい。
【0038】
一般的に、本発明で使用されるTPUポリマー型は、それ(繊維自体、繊維が作製された組成物、および/または組成物を調製するために用いられた中間体を意味する)が、上述のTg、伸び率、および/または弾性を示す限り、当該技術分野および文献で公知の任意の従来のTPUポリマーであってもよい。理論によって束縛されることを望まないが、出願人は、本明細書に記載される少なくとも1つ以上のさらなるパラメーターを満たすときに、これらの要求事項を満たす組成物が、本明細書に含まれる特定の例によって示される同じ冷却効果またはその代わりとなる効果を与えると考える。
【0039】
適切なTPUポリマーは、一般的に、ポリイソシアネートと、中間体(例えば、末端がヒドロキシルのポリエステル、末端がヒドロキシルのポリエーテル、末端がヒドロキシルのポリカーボネートまたはこれらの混合物)と、1つ以上の連鎖延長剤とを反応させることによって調製され、これらはすべて当業者に周知である。
【0040】
末端がヒドロキシルのポリエステル中間体は、一般的に、数平均分子量(Mn)が約500〜約10,000、約700〜約5,000、または約700〜約4,000であり、酸価が、一般的に1.3未満、好ましくは0.8未満である直鎖ポリエステルである。分子量は、末端官能基のアッセイによって決定され、数平均分子量に関係がある。ポリマーは、(1)1つ以上のグリコールと、1つ以上のジカルボン酸または無水物とのエステル化反応、または(2)エステル交換反応、すなわち、1つ以上のグリコールと、ジカルボン酸エステルとの反応によって製造される。モル比は、末端ヒドロキシル基が優勢である直鎖を得るように、一般的に、酸に対し、1モルより多い過剰なグリコールが好ましい。適切なポリエステル中間体は、さらに、例えば、典型的には、ε−カプロラクトンおよび二官能性開始剤(例えば、ジエチレングリコール)から作製されたポリカプロラクトンのような種々のラクトンを含む。望ましいポリエステルのジカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、またはこれらの組み合わせであってもよい。単独または混合物で使用してもよい適切なジカルボン酸は、一般的に、合計で4〜15個の炭素原子を含み、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。上のジカルボン酸の無水物、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸なども使用することができる。アジピン酸が好ましい酸である。反応して望ましいポリエステル中間体を生成するグリコールは、脂肪族、芳香族、またはこれらの組み合わせであってもよく、合計で2〜12個の炭素原子を含み、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどが挙げられ、1,4−ブタンジオールが好ましいグリコールである。
【0041】
末端がヒドロキシルのポリエーテル中間体は、合計で2〜15個の炭素原子を含むジオールまたはポリオールから誘導されたポリエーテルポリオール、いくつかの実施形態では、2〜6個の炭素原子を含むアルキレンオキシド基、典型的にはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドまたはこれらの混合物を含むエーテル(またはエポキシド)と反応するアルキルジオールまたはグリコールから誘導されたポリエーテルポリオールである。例えば、ヒドロキシル官能性ポリエーテルは、まず、プロピレングリコールとプロピレンオキシドとを反応させた後、エチレンオキシドとのその後の反応によって製造することができる。エチレンオキシドから得られた一級ヒドロキシル基は、二級ヒドロキシル基よりも反応性が高いため好ましい。有用な市販のポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコールと反応したエチレンオキシドを含むポリ(エチレングリコール)、プロピレングリコールと反応したプロピレンオキシドを含むポリ(プロピレングリコール)、テトラヒドロフランと反応した水を含むポリ(テトラメチレングリコール)(PTMEG)が挙げられる。PTMEGは、好ましいポリエーテル中間体である。ポリエーテルポリオールは、さらに、アルキレンオキシドのポリアミド付加物を含み、例えば、エチレンジアミンとプロピレンオキシドの反応生成物を含むエチレンジアミン付加物、ジエチレントリアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含むジエチレントリアミン付加物、および同様のポリアミド型ポリエーテルポリオールを挙げることができる。コポリエーテルも本発明に利用することができる。典型的なコポリエーテルとしては、THFとエチレンオキシドの反応生成物またはTHFとプロピレンオキシドの反応生成物が挙げられる。これらは、BASFからPoly THF B(ブロックコポリマー)、poly THF R(ランダムコポリマー)として入手可能である。種々のポリエーテル中間体は、一般的に、数平均分子量(Mn)が末端官能基のアッセイによって決定される場合、平均分子量が約700より大きく、例えば、約700〜約10,000、約1000〜約5000、または約1000〜約2500である。特に望ましいポリエーテル中間体は、2種類以上の異なる分子量のポリエーテルのブレンドであり、例えば、2000M
nおよび1000M
nのPTMEGのブレンドである。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ポリエチレングリコール(polyethleneglycol)(PEG)から調製される。他の実施形態では、中間体は、アジピン酸と、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールの50/50ブレンドとの反応から作製されたポリエステルである。
【0043】
本発明のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、ジイソシアネートと、末端がヒドロキシルのポリカーボネートおよび連鎖延長剤のブレンドとを反応させることによって調製されてもよい。末端がヒドロキシルのポリカーボネートは、グリコールとカーボネートとを反応させることによって調製することができる。
【0044】
米国特許第4,131,731号は、末端がヒドロキシルのポリカーボネートおよびこれらの調製に関する開示内容について本明細書に参考として組み込まれる。このようなポリカーボネートは、直鎖であり、末端ヒドロキシル基を有し、本質的に他の末端基を含まない。必須反応物は、グリコールおよびカーボネートである。適切なグリコールは、4〜40個、および/またはさらに4〜12個の炭素原子を含む脂環式および脂肪族ジオールから、また、分子あたり2〜20個のアルコキシ基を含み、それぞれのアルコキシ基が2〜4個の炭素原子を含むポリオキシアルキレングリコールから選択される。本発明で使用するのに適切なジオールとしては、4〜12個の炭素原子を含む脂肪族ジオール、例えば、ブタンジオール−1,4、ペンタンジオール−1,4、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール−1,6、2,2,4−トリメチルヘキサンジオール−1,6、デカンジオール−1,10、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール;ならびに脂環式ジオール、例えば、シクロヘキサンジオール−1,3、ジメチロールシクロヘキサン−1,4、シクロヘキサンジオール−1,4、ジメチロールシクロヘキサン−1,3、1,4−エンドメチレン−2−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、およびポリアルキレングリコールが挙げられる。反応で用いられるジオールは、最終生成物に望ましい特性に依存して、1種類のジオールであってもよく、ジオールの混合物であってもよい。末端がヒドロキシルのポリカーボネート中間体は、一般的に、当該技術分野および文献で公知であるものである。適切なカーボネートは、5〜7員環で構成されるアルキレンカーボネートから選択される。本明細書で用いるのに適切なカーボネートとしては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−エチレンカーボネート、1,3−ペンチレンカーボネート、1,4−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、2,4−ペンチレンカーボネートが挙げられる。
【0045】
また、本発明に適切なのは、ジアルキルカーボネート、脂環式カーボネート、およびジアリールカーボネートである。ジアルキルカーボネートは、それぞれのアルキル基に2〜5個の炭素原子を含んでいてもよく、その具体例は、ジエチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートである。脂環式カーボネート、特に、二脂環式カーボネートは、それぞれの環状構造に4〜7個の炭素原子を含んでいてもよく、1個または2個のこのような構造であってもよい。1個の基が脂環式である場合、他の基は、アルキルまたはアリールのいずれかであってもよい。一方、1個の基がアリールである場合、他の基は、アルキルまたは脂環式であってもよい。それぞれのアリール基に6〜20個の炭素原子を含んでいてもよい適切なジアリールカーボネートの例は、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジナフチルカーボネートである。
【0046】
反応は、エステル交換触媒が存在する状態または存在しない状態で、グリコールとカーボネート(例えば、アルキレンカーボネート)とを10:1〜1:10、しかし好ましくは3:1〜1:3のモル比で、100℃〜300℃の温度、0.1〜300mmの水銀圧で反応させることによって行われ、さらに、蒸留によって低沸点グリコールを除去しつつ行ってもよい。
【0047】
さらに具体的には、末端がヒドロキシルのポリカーボネートは、2つの段階で調製される。第1の段階では、グリコールをアルキレンカーボネートと反応させ、低分子量の末端がヒドロキシルのポリカーボネートを生成する。100℃〜300℃、好ましくは150℃〜250℃で、10〜30mmHg、好ましくは50〜200mmHgの減圧下で低沸点グリコールを蒸留によって除去する。分別カラムを用い、反応混合物から副生成物であるグリコールを分離してもよい。副生成物のグリコールをカラムの上部から採取してもよく、未反応のアルキレンカーボネートおよびグリコール反応物を反応容器に還流物として戻してもよい。不活性ガスまたは不活性溶媒の流れを用い、副生成物であるグリコールが生成したら除去してもよい。得られた副生成物グリコールの量が、末端がヒドロキシルのポリカーボネートの重合度が2〜10であることを示す場合、圧力を0.1mmHg〜10mmHgに徐々に下げ、未反応グリコールおよびアルキレンカーボネートを除去する。これは、望ましい分子量の末端がヒドロキシルのポリカーボネートが得られるまで、100℃〜300℃、好ましくは150℃〜250℃、0.1〜10mmHgの圧力で、グリコールが生成したら留去することによって、低分子量の末端がヒドロキシルのポリカーボネートを反応させている間に、反応の第2段階の始まりを示す。末端がヒドロキシルのポリカーボネートの分子量(Mn)は、約500〜約10,000の間でさまざまであってもよいが、好ましい実施形態では、500〜2500の範囲である。
【0048】
本発明のTPUポリマーを作製するための第2の必要な成分は、ポリイソシアネートである。本発明のポリイソシアネートは、一般的に式R(NCO)
nを有し、ここで、nは、一般的に2〜4であり、組成物が熱可塑性である限り、2が非常に好ましい。したがって、3または4個の官能基を有するポリイソシアネートが、架橋する限り、すべてのポリイソシアネートの合計重量を基準として非常に少量、例えば、5重量%未満、望ましくは2重量%未満利用される。Rは、一般的に合計で2〜約20個の炭素原子を含む芳香族、脂環式、および脂肪族、またはこれらの組み合わせであってもよい。適切な芳香族ジイソシアネートの例としては、ジフェニルメタン−4、4’−ジイソシアネート(MDI)、H
12 MDI、m−キシリレンジイソシアネート(XDI)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、フェニレン−1、4−ジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタン−3、3’−ジメトキシ−4、4’−ジイソシアネート(TODI)が挙げられる。適切な脂肪族ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4,4−テトラメチルヘキサン(TMDI)、1,10−デカンジイソシアネート、trans−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)が挙げられる。非常に好ましいジイソシアネートは、約3重量%未満のオルト−パラ(2,4)異性体を含有するMDIである。
【0049】
本発明のTPUポリマーを作製するための第3の必要な成分は、連鎖延長剤である。適切な連鎖延長剤は、約2〜約10個の炭素原子を含む低級脂肪族または短鎖グリコールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキシルジメチロールのcis−trans−異性体、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、ならびに1,5−ペンタンジオールが挙げられる。本発明は、直鎖アルキレングリコール連鎖延長剤を必要とするが、いくつかの実施形態では、さらなる連鎖延長剤を直鎖アルキレングリコール連鎖延長剤と組み合わせて使用してもよい。このような実施形態では、芳香族グリコールを連鎖延長剤として使用してもよい。ベンゼングリコール(HQEE)およびキシリレングリコールは、本発明のTPUの作製に使用するのに適切な連鎖延長剤である。キシリレングリコールは、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンと1,2−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンとの混合物である。ベンゼングリコールは、好ましい芳香族連鎖延長剤であり、具体的には、ヒドロキノン、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても公知のビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル、レゾルシノール、1,3−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゼンとしても公知のビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル、カテコール、すなわち、1,2−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても公知のビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル、およびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい連鎖延長剤は、1,4−ブタンジオールである。
【0050】
上の3種類の必要な成分(末端がヒドロキシルの中間体、ポリイソシアネート、および連鎖延長剤)を触媒存在下で反応させてもよい。
【0051】
一般的に、任意の従来の触媒を利用し、ジイソシアネートと、末端がヒドロキシルの中間体または連鎖延長剤とを反応させてもよく、このことは当該技術分野および文献で周知である。適切な触媒の例としては、ビスマスまたはスズの種々の有機化合物(例えば、カーボネート)が挙げられ、ここで、アルキル部分は、1〜約20個の炭素原子を含み、具体例としては、ビスマスオクトエート、ビスマスラウレートなどが挙げられる。好ましい触媒としては、種々のスズ触媒、例えば、第一スズオクトエート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレートなどが挙げられる。このような触媒の量は、一般的に、ポリウレタンを形成するモノマーの合計重量を基準として、約20〜約200パーツ・パー・ミリオン(ppm)などと少しである。
【0052】
本発明のTPUポリマーは、当該技術分野および文献で周知の任意の従来の重合方法によって作製することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明のポリウレタンは、すべての要素を加熱した押出成形機に同時に、または実質的に同時に一緒に加え、反応させてポリウレタンを形成する「ワンショット」プロセスによって作製される。末端がヒドロキシルの中間体およびジオール連鎖延長剤の合計当量に対するジイソシアネートの当量比は、一般的に、約0.95〜約1.10、望ましくは、約0.97〜約1.03、好ましくは、約0.97〜約1.00である。いくつかの実施形態では、形成したTPUのショアA硬度は、典型的には、80A未満、85A未満、またはさらに95A未満である。ウレタン触媒を利用する反応温度は、約175℃〜約245℃、またはさらに約180℃〜約220℃であってもよい。熱可塑性ポリウレタンの分子量(Mw)は、ポリスチレン標準に対するGPCによって決定した場合、約100,000〜約800,000ダルトン、または約150,000〜約400,000、またはさらに約150,000〜約350,000であってもよい。
【0054】
本明細書に記載するTPU中、有用な添加剤を適切な量で使用することができ、ここで、このような添加剤を、TPUを調製する前、調製している間、または調製した後に加えてもよい。このようなさらなる添加剤としては、不透明化顔料、着色剤、鉱物フィラー、安定剤、潤滑剤、UV吸収剤、処理助剤、および所望な場合、他の添加剤が挙げられる。有用な不透明化顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、およびチタネートイエローが挙げられ、一方、有用な色合いを加える顔料(tinting pigment)としては、カーボンブラック、イエローオキシド、ブラウンオキシド、ローシェンナおよびバーントシェンナまたはローアンバーおよびバーントアンバー、酸化クロムグリーン、カドミウム顔料、クロム顔料、ならびに他の混合金属酸化物および有機顔料が挙げられる。有用なフィラーとしては、珪藻土(スーパーフロス(superfloss))クレイ、シリカ、タルク、マイカ、ワラストナイト、硫酸バリウム、および炭酸カルシウムが挙げられる。所望な場合、有用な安定剤、例えば、酸化防止剤を使用してもよく、フェノール系酸化防止剤が挙げられ、一方、有用な光安定剤としては、有機ホスフェート、および有機スズチオレート(メルカプチド)が挙げられる。有用な酸化防止剤としては、さらに、立体的に嵩高いフェノール系酸化防止剤が挙げられる。有用な潤滑剤としては、金属ステアリン酸塩、パラフィン油、およびアミドワックス、例えば、アルキレンビスステアリン酸アミド、例えば、N,N’エチレンビスステアリン酸アミドおよびノナン酸エステルのエステルが挙げられる。有用なUV吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールおよび2−ヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。典型的なTPU難燃剤も加えることができる。
【0055】
可塑剤添加剤を有利に利用し、少量使用した場合には、特性に影響を与えることなく、硬度を下げることもできる。いくつかの実施形態では、可塑剤を使用しない。
【0056】
いくつかの実施形態では、繊維の冷却効果は、有効冷却力(effective cooling power)という用語であらわしてもよい。本発明によって与えられる冷却効果を測定する種々の手段が存在するが、本願は、この効果を測定する2つの手法の詳細を含んでいる。本明細書に記載する繊維から作製された布によって与えられる最初の冷却効果は、布と、布と接触している「皮膚」領域(この場合には、ヒトの皮膚の場所を利用する試験表面)を両方とも見て、布を通る一定の風を流す。関与する特定の条件は、主に結果を比較する目的にとって重要であると考えられるが、これらの種類の評価は、もちろん、種々の周囲温度、湿度の程度、風速、「皮膚」の開始温度(「皮膚」の熱源が残ったままであるか、取り除かれている)および種々の他の変数で行われてもよい。それに加え、このパラメーターは、もちろん、特定の領域について測定される。別の手法は、上に記載する基本的な試験方法にしたがうが、一連の試験にわたって、汗、「皮膚」からの種々の水分放出率といったさらなる変数が加わる。この種の試験を用い、種々の条件下、または代わりとなる条件で、「皮膚」の温度を維持するようなエネルギー量を測定することができ、熱源が加わらない場合に「皮膚」温度が下がる速度を測定することができ、これによって、関与している布の冷却力の指標を与える。具体的な試験条件および結果を本明細書の実施例の章に与えている。使用する試験手法、および選択する具体的な条件にかかわらず、今日まで行われているあらゆる試験は、本明細書に記載する繊維から作製した布が、顕著に高い冷却力を示し、一緒に試験した比較材料よりもすばやく、また大きく温度を下げることができるのを示すことに注目することが重要である。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維を上に記載した方法によって評価した場合、具体的には、布を試験皮膚表面に置くとき、皮膚表面温度、30%相対湿度、3m/sの風速、および15℃の周囲温度を維持するように有効な熱源を作動させると、629cm
2の試験領域(test are)について、少なくとも31ワットの冷却力を与えるか、またはそれとは別に少なくとも49ワット/平方メートルの冷却力が記載されていた。つまり、皮膚温度を維持するのに少なくとも49ワット/面積平方メートルの力が必要であり、これは、他の材料(ナイロンおよびポリエステルは、例えば、実際に同じ試験条件で31ワットの境界値を超えることができなかった)と比較して、布が皮膚に対して存在している場合の布がヒトに与える冷却効果の指標を与える。この冷却力は、629cm
2の試験領域について少なくとも34ワットであってもよく、少なくとも55ワット/平方メートルであってもよく、ここで繊維は、モノフィラメントであり、セミダルではない。同じ境界値を、50%相対湿度、風速3m/s、ならびに風速5m/sおよび50%相対湿度で行われる試験に適用する。
【0058】
同様の実施形態では、本発明の繊維は、上述の方法によって評価する場合、具体的には、布を試験皮膚表面に置くとき、皮膚表面温度、50%相対湿度、0.3m/sの風速、および15℃の周囲温度を維持するように有効な熱源を作動させると、629cm
2の試験領域について、少なくとも13または14ワット、少なくとも21または22ワット/平方メートルの冷却力を与える。
【0059】
本発明のひんやりとした肌触りが優れた繊維を製造する方法は、特に限定されず、熱可塑性エラストマーおよび無機フィラーを含む樹脂ペレットを製造し、得られた樹脂ペレットを用いて、溶融し、紡糸することによって繊維を製造する方法のような従来の公知の方法を使用してもよい。
【0060】
コア−シース型コンポジットヤーンは、例えば、着色可能な樹脂、熱可塑性エラストマー、および無機フィラーを含む樹脂ペレットをコンポジット紡糸装置にのせ、これを溶融させ、紡糸することによって製造されてもよい。
【0061】
本発明は、(I)内部混合型デバイス中でエラストマー樹脂を調製する工程を含む、繊維を作製する方法を提供する。エラストマー樹脂は、(i)末端がヒドロキシルの中間体と、(ii)ジイソシアネートと、(iii)直鎖アルキレングリコール連鎖延長剤とを反応させることによって調製される。中間体は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはこれらの組み合わせであってもよく、中間体は、Tgが22℃以下である。第2の工程(II)は、エラストマー樹脂を繊維(例えば、モノフィラメントまたはマルチフィラメント繊維)へと溶融紡糸する。いくつかの実施形態では、繊維はモノフィラメント繊維である。繊維および繊維を調製するために使用した組成物について上に記載した種々の特徴および実施形態はすべて、同様にここでも適用される。
【0062】
(布)
本発明の繊維を、編地、テキスタイルおよび不織布(bonded textile)のような布の形態で使用してもよい。得られた布は、繊維の優れた弾性も有しつつ、ひんやりとした肌触りが優れている。
【0063】
本発明のひんやりとした肌触りが優れた布は、単に、本発明のひんやりとした肌触りが優れた繊維を含んでいてもよく、他の実施形態では、具体的な用途で必要な因子を向上させるために繊維および別の繊維をねじった状態で一緒に含んでいてもよい。例えば、皮膚と直接接触している衣類において。このような任意選択の共繊維は、特に制限されず、例としては、ポリアミド型樹脂、例えば、ナイロン6およびナイロン12、ポリエステル、綿、レーヨンが挙げられる。
【0064】
本発明は、織布、不織布、編まれた布、およびこれらの組み合わせを含め、本明細書に記載する任意の繊維から作製された布を含む。いくつかの実施形態では、本発明の布は、織布である。他の実施形態では、本発明の布は、不織布である。さらに他の実施形態では、本発明の布は、編まれた布である。それに加え、本発明は、本発明の繊維以外に、1種類以上のさらなる繊維をさらに含む布を含む。布は、10〜80重量%のこれらのさらなる繊維、または90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、または10%以下のこれらのさらなる繊維を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、さらなる繊維は存在しない。1種類以上のさらなる繊維が布に存在する実施形態では、これらのさらなる繊維は、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、およびこれらの組み合わせであってもよい。
【0065】
本発明は、さらに、(I)内部混合型デバイス中でエラストマー樹脂を調製し、前記エラストマー樹脂が上述のように調製される工程を含む、布を作製する方法を含む。このプロセスは、場合により、架橋剤(例えば、ポリアルキレンエーテルグリコールまたはトリオールとジイソシアネートとの反応生成物)の添加を含んでいてもよい。工程(II)は、上記エラストマー樹脂を繊維(例えば、モノフィラメントまたはマルチフィラメント繊維)へと溶融紡糸することである。いくつかの実施形態では、繊維、または繊維を構成するポリマーは、重量平均分子量が少なくとも700,000である。工程(III)は、場合により1種類以上の他の繊維と組み合わせて、前記繊維を布へと加工することである。
【0066】
本発明のさらなる利益は、本明細書に記載する繊維を含有する布の改良された成型性である。布の中で適切な量を利用するとき、本発明の布は、低温および/または短い時間で首尾良く成型することができ、そのため、首尾良く成型するために、さらに従来の布では必要となる高温および/または低い露出時間によって損傷を受け得る布、布の染料などを保護する能力が高まる。いくつかの実施形態では、150℃以下、またはさらに140℃以下の温度で、および/または成型が20秒未満、15秒未満、またはさらに10秒未満で終了する場合には、本発明の布を成型してもよい。いくつかの実施形態では、これらの利益を与えるために最小量の本発明の繊維が布中に存在しなければならない。いくつかの実施形態では、この下限値は、40%、50%、60%またはさらに80%であり、ここで、パーセントは、本発明の繊維でなければならない布中の繊維の重量%をあらわす。しかし、布中のもっと少量の本発明の繊維が、布の成型能力を高めるということも理解される。Spandex(商標)および同様の材料は、低温で成型可能ではなく、これらの材料の繊維は、Spandex(商標)繊維の弾性が大きすぎることに起因して、高価な装置部品を必要とするポジティブフィーダー(positive feeder)を用いない限り、布内で編むことさえできないことを注記しておく。
【0067】
(物品)
衣服を含む物品を製造するのに、本発明のひんやりとした肌触りが優れた繊維、および本発明のひんやりとした肌触りが優れた布を使用してもよい。皮膚と接触する物品の場合(再び例を挙げると、衣服)、本発明の物品は優れた弾性を示し、着用者にひんやりした感覚を与え、濡れているときであっても、好ましくない感覚および/またはべたつく感覚がない。
【0068】
物品(特に、衣服)が優れたひんやりとした肌触りを与えるため、着用したときにひんやりとした感覚を生じさせ、さわやかな感覚を与えることができる。さらに、本発明は、同様の冷却効果を与え得る衣服で使用される他の繊維のように、濡れているときに衣服にべたつく感覚が生じないように無機フィラーを加える必要がない。したがって、本発明は、下着に非常に適している。
【0069】
本発明のひんやりとした肌触りが優れた衣服は、完全にひんやりとした肌触りが優れた繊維を用いて製造されてもよく、リバーシブル構造を有し、さわやかな感覚が優れている布を含む、ひんやりとした感覚が優れる衣服であることが特に好ましく、糸ループの合計数の30〜70%が、ひんやりとした肌触りが優れた繊維を含み、このひんやりとした肌触りが優れた繊維を含む糸ループが、皮膚に接触する側面に整列する(arrange)(以下、さわやかな衣服(refreshing clothing)とも呼ばれる)。
【0070】
本発明のひんやりとした肌触りが優れた衣服としてリバーシブル構造を有する布を含む衣服に関し、ひんやりとした肌触りが優れた繊維を含むループ糸(loops)の数の比率は、所定の範囲内に制御され、このようなひんやりとした肌触りが優れた繊維を含むループ糸は、皮膚に接触する側面のみに整列し、その結果、その衣服は、かなり多くの汗をかいたことによって生じる望ましくない感覚を防ぐ効果を有することができる。
【0071】
近年、運動、スポーツなどの場合に、夏に汗をかく状況で着用する下着としての優れた機能を有するさまざまな種類の衣服が開発され、提案されており、このような機能性衣服は、例えば、疎水性繊維(例えば、ポリエステル)から製造される衣服を示唆している。さらに、親水性繊維を綿と組み合わせて用いることによって空気透過性を高める方法、および布地にメッシュ構造を作製することによって、または平編みおよびたて編みの派生的な編み地のモス編み(moss knitting)を作製することによって空気透過性を高める方法が調べられ、日本特許公開公報第2003−155669号には、布地を構成する疎水性繊維表面に親水性化学物質を堆積させることによって改質した布地が開示されている。しかし、このような疎水性繊維を含む衣服の場合、発生した熱を効率よく放出することができるが、汗をかいたために皮膚または衣服が濡れている場合には、濡れた感覚に起因して望ましくない感覚が生じるとともに、布が皮膚にはりつき、衣服の移動が制限されるという問題を生じる傾向がある。
【0072】
一方、リバーシブル構造を有する布を含むさわやかな衣服に関し、ひんやりとした肌触りが優れた繊維を含むループ糸の数の比率を所定の範囲内に制御することによって、着用時にひんやりとした感覚を生じさせ、さわやかな感覚を与えることができ、同時に、汗をかいたときに濡れた感覚に起因する望ましくない感覚を防ぐことができ、皮膚からの分離が悪化することに起因して、布が皮膚にはりつくのを防ぐことができる。さらに、ひんやりとした肌触りが優れた繊維を含むループ糸が、皮膚の側にのみ整列し、その結果、ひんやりとした肌触りが優れた繊維を皮膚および衣服と直接接触させることができ、さらに改良されたさわやかな感覚と、ひんやりとした肌触りを作り出すことができる。
【0073】
本発明のさわやかな物品および衣服において、ひんやりとした肌触りが優れた繊維のループ糸の比率の下限値は、ループ糸の合計数の30%であってもよく、上限値は、ループ糸の合計数の70%またはそれより高くてもよく、例えば、75%、80%、90%、または100%であってもよい。30%未満の場合、さわやかな感覚およびひんやりとした肌触りを生じる効果は、ある場合には不十分なものとなり得る。汗をかいたために皮膚または衣服が濡れている場合には、濡れた感覚に起因して望ましくない感覚を生じさせることなく、本発明を用いて高いレベルを得ることができる。
【0074】
上述のように、繊維および布の場合、さわやかな物品(例えば、衣服)は、熱可塑性エラストマーと無機フィラーとを含んでいてもよいが、他の実施形態では、無機フィラーを実質的に含まないか、含まない。
【0075】
本発明の物品(例えば、衣服)において、布の厚みは、可能な限り薄くすべきであり、ひんやりとした肌触りが優れた繊維を別の繊維と組み合わせて用いてもよい。ひんやりとした肌触りが優れた繊維中の熱可塑性エラストマーの含有量の下限値は、50重量%であってもよい。50重量%未満の場合、ある場合には、十分なひんやりとした肌触りが生じないことがある。他の実施形態では、本発明の繊維の含有量は、布および物品中、少なくとも15%、25%、35%、45%、55%、65%、75%、85%、またはさらに95重量%の量で存在する。理論によって束縛されることを望まないが、ここで議論している布および/または物品の中の最低限の繊維含有量は、本発明の繊維について、冷却効果が顕著でなければならないと考えられる。この最低限必要な含有量は、本発明に含まれる種々の配合物によって変わってもよいが、いくつかの実施形態では、種々の配合物にわたってかなり一致していてもよい。この最低限の含有量は、上述のいずれかのパーセントであってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の物品および/または衣服において、ひんやりとした肌触りが優れた繊維を含むループ糸は、皮膚側のみに整列することが好ましい。このような様式で整列させると、ひんやりとした肌触りが優れた繊維を含むループ糸が主に皮膚と接触し、ひんやりとした肌触りおよびさわやかな感覚を生じさせ、後で記載するように、外側に疎水性繊維を含むループ糸が整列することが、皮膚から放出された熱および水を拡散し、蒸発させる特性を向上させる。
【0077】
本発明の物品および/または衣服において、ひんやりとした肌触りが優れた繊維を含むループ糸以外のループ糸は、好ましくは、疎水性繊維を含むループ糸である。ひんやりとした肌触りが優れた繊維を含むループ糸が皮膚側のみに整列するため、疎水性繊維を含むループ糸が、主に外側に整列する。
【0078】
この記載では、疎水性繊維とは、公式の水のパーセントが5.0%以下である化学繊維を意味する。実際に、ポリプロピレン(公式の水のパーセント:0%)、ポリエステル(0.4%)、アクリル樹脂(2.0%)、ナイロン(4.5%)、およびビニロン(5.0%)を含む繊維を例に挙げることができる。これらを単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。この関連で、公式の水のパーセントとは、20℃、65% RHでの水のパーセントを意味する。
【0079】
本発明の物品および/または衣服は、ひんやりとした肌触りが優れた繊維および疎水性繊維以外に、その必要性に応じて、天然繊維(例えば、綿および亜麻)および半合成繊維(例えば、レーヨンおよびアセテート)を含んでいてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明の物品および/または衣服は、さわやかな衣服の空気透過性が、200cm
3/cm
2/secから500cm
3/cm
2/secまでである。200cm
3/cm
2/sec未満の場合、空気透過性は悪い場合があり、皮膚から放出される熱の拡散および汗の蒸発は、場合により抑制されることがあり、500cm
3/cm
2/secより多い場合、熱および水の衣服を介した移動は十分に行われないことがあり、これに反して、外側の空気は透過し得る。空気透過性は、JIS L 1096 Aの方法にしたがって空気透過性試験機を用いて測定することができる。
【0081】
本発明の布、物品および/または衣服において、平方メートルあたりの重量の上限値は、120g/m
2、100g/m
2またはさらに90g/m
2であってもよい。このようなひんやりとした感覚を与える他の手段とは異なり、平方メートルあたりの重量が120g/m
2、100g/m
2またはさらに90g/m
2を超えると、働いている機構が抑えられてしまうことがあり、それにより、ひんやりした感覚は、場合により悪化してしまうことがある。
【0082】
本発明の物品および/または衣服を製造する方法は特に限定されず、例えば、従来から公知の方法(例えば、本発明のひんやりとした肌触りが優れた繊維を織ることによって衣服を製造する方法)を使用してもよい。さらに、これらの材料は、上述の様式で得られたリバーシブル構造を有する布を用い、裁縫、裁断などの従来から公知の方法によって製造されてもよい。
【0083】
ひんやりとした肌触りが優れた下着は、本発明の繊維または本発明の布を用いることによって製造することができる。さらに、本発明のひんやりとした肌触りが優れた衣服を下着として使用することができる。このような実施形態では、本発明は、繊維、布、物品、および/または衣服について上に記載した任意の1つ以上の利益を与えてもよい。
【0084】
下着に加え、本発明は、本発明の繊維または本発明のひんやりとした肌触りが優れた布を用いることによって製造され得るストッキング、手袋、フェイスマスク、マフラーなどを含む。これらは皮膚に直接接触するため、特に優れた効果を生じさせることができる。
【0085】
本発明は、上述の布から作製された物品を含む。例えば、本発明の布を用いて種々の衣類を作製することができる。いくつかの実施形態では、肌着またはぴったりと体に沿う衣類の作製にこの布を使用し、この場合、本発明の布は、繊維によって与えられた快適さおよび冷却効果に起因して、十分に適している。肌着(例えば、ブラおよびTシャツならびにランニング、スキー、サイクリングまたは他のスポーツのような活動で使用するスポーツ衣類)は、これらの繊維の特性から利益を受けるだろう。本発明の弾性および冷却効果は、身体付近で着用される衣類に利益を与える。当業者なら、本発明の布および繊維から任意の衣類を作製することができることを理解するだろう。
【0086】
他の実施形態では、本明細書に記載する繊維を用い、限定されないが、スポーツアパレル、例えば、ショートパンツ(自転車運転、ハイキング、ランニング、圧縮運動、トレーニング、ゴルフ、野球、バスケットボール、チアリーディング、ダンス、サッカーおよび/またはホッケーのショートパンツを含む)、シャツ(上にショートパンツについて列挙した具体的ないずれかの種類を含む)、タイツ(トレーニングタイツおよび圧縮用タイツを含む)、水着(競技用水着およびリゾート用水着を含む)、ボディースーツ(レスリング、ランニング、水着用ボディースーツを含む)および履物などの1つ以上の任意の数の衣類および物品を作製する。さらなる実施形態は、シャツおよびユニフォームのような作業着を含む。さらなる実施形態は、ブラ、パンティ、男性用下着、キャミソール、矯正用下着、ナイトガウン、パンティストッキング、男性用アンダーシャツ、タイツ、靴下およびコルセットを含む肌に直接触れるものを含む。さらなる実施形態は、靴下(例えば、圧縮性靴下、糖尿病用靴下、固定用靴下、および動的な靴下(dynamic socks))、治療用火傷処置帯およびフィルム、創傷治癒用の包帯、医療用衣類のような医療用衣類および物品を含む。さらなる用途は、上述の1つ以上の具体的な物品とよく似た軍事用途を含む。さらなる実施形態は、シーツ、毛布、掛け布団、マットレスパッド、マットレストップ、および枕ケースのような寝具物品を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明の物品は、衣類であり、衣類において布を構成する繊維は、前記衣類の着用者の皮膚と直接接触するように衣類内で整列する。これにより、着用者は、本発明によって提供される冷却効果の完全な利益を得ることができる。
【0088】
本発明は、さらに、(I)請求項1の繊維を含む布を調製する工程と、(II)前記布を含む物品を調製する工程と、(II)前記物品をヒトの皮膚に直接接触させる工程とを含む、ヒトの皮膚と直接接触する物品(例えば衣類)に冷却効果を与える方法も提供する。
【0089】
上述のいくつかの材料が、最終的な配合物中で相互作用してもよく、その結果、最終的な配合物の要素が最初に添加したものと異なっていてもよいことが公知である。例えば、金属イオン(例えば、洗剤の金属イオン)は、他の分子の他の酸性部位またはアニオン性部位に移動することができる。これによって作られた生成物は、本発明の組成物をその意図する用途で使用すると生成する生成物を含め、簡単に記載しにくい場合がある。それでも、このようなあらゆる改変および反応生成物は、本発明の範囲に含まれ、本発明は、上述の要素を混合することによって調製された組成物を包含する。
【実施例】
【0090】
本発明は、特に有益な実施形態を記載する以下の実施例によってさらに説明される。実施例は、本発明を説明するために与えられているが、これらの実施例は、本発明を限定する意図はない。
【0091】
(実施例群)
本発明の利益を説明するために、7種類の材料を評価した。これらの材料を以下の表にまとめている。
【0092】
【表1】
1−それぞれの布サンプルは、口の開いた靴下/スリーブの形態である。直径は、布が作り出すスリーブの直径を指し、一方、長さは、サンプルの実際の長さである。布の重量について、それぞれのサンプルを計量し、次いで、他の報告されている測定を用い、それぞれの布について、グラム/平方メートルの単位で重量を算出した。
2−この繊維は、Invista(商標)から市販されている。
3−繊維Aは、ポリアルキレングリコール、アルキレンジオール、およびMDIから調製される。
4−繊維Bは、アルキレンジオールアジペート、アルキレンジオール、およびMDIから調製される。
5−繊維Cは、繊維Bのマルチフィラメント態様であり、繊維Bと化学的に同一である。
6−繊維Dは、市販のつや消し剤を加えた以外は、繊維Bである。
【0093】
比較例1は、ベースラインであり、繊維および/または布をあらわさない。比較例2および3は、本発明をあらわさない比較材料である。実施例4、5、6および7は、本発明の種々の実施形態をあらわす。
【0094】
試験する布は、異なる直径を有し、試験のために得られた布は、異なる重量を有することを注記すべきである。これらの差を説明するために、試験表面上にかなりの張力および布の密度を与えるような様式で布サンプルを固定するクランプを使用し、材料の妥当な比較を可能にする以下に記載する試験を行った。これらのコントロールによって説明されない差は、試験したパラメーターに顕著な影響を及ぼすとは予想されていない。
【0095】
(試験方法および結果)
上に記載した実施例を試験し、その冷却力を決定した。この試験を、試験表面として汗をかいた熱をもったマネキンを用い、人工気候室で制御された温度および湿度で行った。表面積が公知のマネキンの試験表面に、試験のために、温度を監視するための熱電対と、試験表面を現実的なヒトの皮膚温度に加熱するための加熱要素とを取り付けた。それに加え、加熱要素の電力要求量も監視し、試験表面で特定の皮膚温度に維持するのに必要なエネルギー量を見ることができた。試験表面は、ヒトの皮膚からの汗の放出をシミュレートし、水分を放出することもできる。高出力ファンを風力源として使用した。このすべての試験で使用した試験表面の面積は629cm
2である。
【0096】
この試験のために、汗をかいた熱をもったマネキンを、15℃に設定した人工気候室の中に入れる。30%および50%の相対湿度、風速0.3m/s、3m/sおよび5m/sで試験を行った。風速0.3m/sは、人工気候室の通常の条件であり、そのため、高速ファンは電源を切った状態であることを示す。それぞれの材料の円形に編んだ口の開いた靴下サンプル(スリーブとも呼ばれる)を、汗をかいた熱をもったマネキンの試験表面に、この場合にはマネキンの前腕に置く。試験のためにサンプルを試験表面に置き、次いで、取り除き、次のサンプルと交換する。上述のように、クランプを使用し、各サンプルを、汗をかいた熱をもったマネキンの前腕に固定し、サンプルがかなりの張力度および布の密度を有する状態で置かれていることに注意を払う。
【0097】
各試験の開始時に、人工気候室を望ましい条件にする。試験する布サンプルで覆われた試験表面を、ほぼヒトの皮膚温度になるように選択した31℃または34℃の望ましい開始時の皮膚温度まで加熱し、風が試験条件に含まれる場合には、ファンの電源を入れ、望ましい設定にする。これらの条件すべてを設定したら、加熱エレメントによって試験表面温度の設定を維持するための必要な電力量を監視することによって、試験期間を開始する。この電力量は、ワットで測定され、所与の試験条件で試験される布の冷却力と呼ばれる。報告される冷却力は、所与の試験条件下で安定化されたシステムの出力である。各試験終了時に、サンプル布を異なるサンプルと交換し、試験を繰り返し、必要な場合には条件を変更する。
【0098】
実施例1のベースラインについて、裸の覆われていない試験表面を用いて試験を行い、裸の皮膚から予想され得る影響を得た。この裸の皮膚のベースラインは、比較のための試験に含まれていた。
【0099】
以下の表には、使用した試験条件およびそれぞれの条件セットで試験した実施例をまとめている。
【0100】
【表2】
1−これらの条件セットは、以下の順で試験を実施した。IV、I、V、II、VI、III。条件セットIVおよびVは同じであり、連続して実施せず、そのため、結果の再現性およびサンプル間の相対差を示す2セットのデータセットを与えた。
2−風が5m/sの場合の条件セットを除き、この試験の目標皮膚温度は常に34℃である。これらの条件では、加熱能力に限界があり、望ましい温度に維持することができるシステムを確実にするために31℃の皮膚温度を使用する。
【0101】
この試験の結果を以下の表にまとめている。
【0102】
【表3】
1−この表に報告した結果はすべて、ワット[W]で測定した冷却力である。これは、試験表面(試験布で覆われた前腕(foreman)表面)の温度を特定の条件での設定温度に維持するために必要な、汗をかいた熱をもったマネキンにおける加熱エレメントの電力量である。報告された冷却力が大きいほど、温度を維持するのに多くの電力が必要であり、そのため、布が作り出す冷却効果が大きい。言い換えると、報告された冷却力が大きいほど、試験した布から作られる衣類を着用したときに経験すると予想される冷却効果が大きい。これらの結果はすべて、標準的な試験表面積629cm
2と関係がある。平方メートルあたりの冷却力は、報告された結果を0.629で割ることによって計算され得る。
【0103】
この結果は、本発明の繊維、さらに具体的には、このような繊維から作製された布は、冷却力によって測定した場合、従来の合成繊維(さらに具体的には、従来の合成繊維から作製された布)よりも大きな冷却効果を与えることを示している。それに加え、この結果は、本発明の繊維、さらに具体的には、このような繊維から作製された布が、冷却力によって測定した場合、ベースラインである裸の肌の実施例でみられる冷却力に匹敵する冷却効果を与えることを示している。言い換えると、本発明は、皮膚が物品に接触している着用者に、皮膚が裸である布が皮膚と接触していないときに感じるのと同様のひんやりした感覚を与えるような物品を作製する手段を含め、繊維、布および種々の衣類を与える。
【0104】
試験中の試験表面からの水分放出に関するさらなる変数を加えたさらなる試験セットも含まれている。これらの試験では、汗をかいた熱をもった足モデルを使用し、このモデルに上述のマネキンと同様の制御装置を取り付けた。この試験で使用する水分の放出は、試験布から作られた衣類を着用したとき、例えば、運動時にヒトが経験する異なる汗の速度(sweat rate)をシミュレートし、布の冷却力に対する影響がある場合には、どのようなものかを見るように設計されている。
【0105】
表1に列挙したのと同じ7種類の実施例をここで試験した。この試験で使用した条件は、以下の表にまとめている。それぞれの試験条件について、風または水分の放出を行わずにシステムを30分間安定化させ、その間に布の冷却力を測定した。次いで、水分の放出を開始し、システムを再び30分間安定化させ、その間に冷却力を測定した。最後に、風の条件を加え、システムを再び30分間安定化させ、その間に冷却力を測定した。
【0106】
【表4】
1−これらの条件セットは、以下の順で試験において実施した。VII、VIII、IX、X、XI。
【0107】
この試験の結果を以下の表にまとめている。上述のように、それぞれの試験条件には、冷却力の3種類の別個の測定が含まれていた。風または水分の放出がない場合(A)、水分を放出し、風の放出がない場合(B)、目標の水分放出および風の両方がある場合(C)。それぞれの条件セットについて、測定した冷却力を以下に提示している。
【0108】
【表5A】
1−この表に報告した結果はすべて、ワット[W]単位での冷却力である。表3の脚注1も参照のこと。
【0109】
【表5B】
1−この表に報告した結果はすべて、ワット[W]単位での冷却力である。表3の脚注1も参照のこと。
【0110】
この結果は、本発明の繊維、さらに具体的には、このような繊維から作製された布は、冷却力によって測定した場合、特に、水分放出と風の条件が両方とも存在する場合に、従来の合成繊維(さらに具体的には、従来の合成繊維から作製された布)よりも大きな冷却効果を与えることを示している。これらの条件は共通であり、実際に予想されるため、あるヒトが衣類(特に、スポーツアパレルおよび同様の衣服)を着用するとき、この結果は、本発明の繊維から作製された物品が、前記物品を着用したヒト、または他の方法で前記物品と皮膚が接触したヒトに冷却効果を与えるという結論を強める。
【0111】
(実施例群2)
本発明をさらに説明し得るように、種々の材料を調製する。これらの材料を以下の表にまとめている。
【0112】
【表6】
1−それぞれの布サンプルは、記載した繊維から織られた口の開いた靴下/スリーブの形態である。
2−BDOアジペートは、1,4−ブタンジオールとアジピン酸とから調製されたアジペートである。
3−HDOアジペートは、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とから調製されたアジペートである。
4−BDO/HDOアジペートは、アジピン酸と、114−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールの混合物とから調製されたアジペートである。
【0113】
【表7】
1−それぞれの布サンプルは、記載した繊維から編まれた口の開いた靴下/スリーブの形態である。
2−BDOアジペートは、1,4−ブタンジオールとアジピン酸とから調製されたアジペートである。
3−HDOアジペートは、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とから調製されたアジペートである。
4−BDO/HDOアジペートは、アジピン酸と、114−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールの混合物とから調製されたアジペートである。
【0114】
上に言及したそれぞれの書類は、本明細書に参考として組み込まれる。実施例を除き、または、その他の明示的に示されているものを除き、材料、反応条件、分子量、炭素原子の数などの量を明記する本明細書のすべての数量は、「約」という用語によって修飾されていると理解すべきである。他の意味であると示されていない限り、すべてのパーセント値、ppm値および部の値は、重量基準である。他の意味であると示されていない限り、本発明に対して言及されているそれぞれの化学物質または組成物は、商業グレードの材料であり、異性体、副生成物、誘導体および商業グレードには通常存在すると理解されている他の材料を含んでいてもよいと解釈されるべきである。しかし、それぞれの化学成分の量は、他の意味であると示されていない限り、商業グレードの材料には従来から存在し得る任意の溶媒または希釈油を除いた量であらわされる。本明細書に記載される量、範囲および比率の上限ならびに下限を、独立して組み合わせてもよいことが理解されるべきである。同様に、本発明のそれぞれの要素に関する範囲および量を、他の任意の要素に関する範囲または量と一緒に使用してもよい。本明細書で使用される場合、「〜から本質的になる」という表現は、検討している組成物の基本的な特徴および新規な特徴に重要な影響を及ぼさない物質を含むことを許容する。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
(i)ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはこれらの組み合わせを含み、Tgが22℃以下である末端がヒドロキシルの中間体と、
(ii)ジイソシアネートと、
(iii)直鎖アルキレングリコール連鎖延長剤との反応生成物を含む組成物から調製された繊維。
(項2)
前記繊維が調製される前記組成物のTgは22℃以下である、上記項1に記載の繊維。
(項3)
(i)前記末端がヒドロキシルの中間体が、ポリエーテルブロックアミドコポリマーを実質的に含まない、上記項1〜2のいずれかに記載の繊維。
(項4)
前記繊維が、200%〜300%の伸び率を有する、上記項1〜3のいずれかに記載の繊維。
(項5)
前記繊維は、相対湿度30%、および風速3m/sで測定すると、有効冷却力が少なくとも49ワット/平方メートルである、上記項1〜4のいずれかに記載の繊維。
(項6)
前記繊維が無機フィラーを実質的に含まない、上記項1に記載の繊維。
(項7)
(i)前記末端がヒドロキシルの中間体がポリエチレングリコールを含み、(ii)前記ジイソシアネートがメチレンジフェニルジイソシアネートを含み、(iii)前記直鎖アルキレングリコール連鎖延長剤が、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、またはこれらの組み合わせを含む、上記項1〜6のいずれかに記載の繊維。
(項8)
前記繊維が調製される前記組成物が、
(a)ポリマーおよび/またはコポリマーセグメントと、少なくとも1つの他のポリマーおよび/またはコポリマーセグメントとを反応させることによって調製された多相コポリマー;
(b)ポリマーおよび/またはコポリマーと少なくとも1つの他のポリマーおよび/またはコポリマーとを混合して調製され、それぞれの前記ポリマーおよび/またはコポリマーは、互いに相溶性および/または混和性であるポリマーブレンド;または
(c)これらの組み合わせ
を含むポリマーアロイである、上記項1〜7のいずれかに記載の繊維。
(項9)
前記ポリマーアロイは、(i)(a)ポリオールと;(i)(b)ポリオールおよびジカルボン酸から誘導されたポリエステル中間体と;(ii)少なくとも1つのジイソシアネートと、(iii)少なくとも1つの連鎖延長剤との反応から誘導される、上記項8に記載の繊維。
(項10)
上記項1の繊維を含む布。
(項11)
前記布が、上記項1の繊維以外の1種類以上のさらなる繊維をさらに含み、前記布が、10〜80重量%のこれらのさらなる繊維である、上記項10に記載の布。
(項12)
前記さらなる繊維が、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項11に記載の布。
(項13)
上記項10の布を含む物品。
(項14)
前記物品が衣類であり、前記布の繊維が、前記衣類において、前記衣類の着用者の皮膚と直接接触するように整列している、上記項13に記載の物品。
(項15)
ヒトの皮膚に直接接触する物品に冷却効果を与える方法であって、
I.上記項1の繊維を含む布を調製する工程と、
II.前記布を含む物品を調製する工程と、
III.前記物品をヒトの皮膚に直接接触させる工程とを含む、方法。
(項16)
繊維を作製する方法であって、
I.内部混合型デバイス中でエラストマー樹脂を調製し、前記エラストマー樹脂が、
(i)ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはこれらの組み合わせを含み、Tgが22℃以下である末端がヒドロキシルの中間体と、
(ii)ジイソシアネートと、
(iii)直鎖アルキレングリコール連鎖延長剤とを反応させることによって調製される工程と、
II.前記エラストマー樹脂をモノフィラメントまたはマルチフィラメント繊維へと溶融紡糸する工程とを含む、方法。
(項17)
布を作製する方法であって、
I.内部混合型デバイス中でエラストマー樹脂を調製し、前記エラストマー樹脂が、
(i)ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはこれらの組み合わせを含み、Tgが22℃以下である末端がヒドロキシルの中間体と、
(ii)ジイソシアネートと、
(iii)直鎖アルキレングリコール連鎖延長剤とを反応させることによって調製される工程と、
III.前記エラストマー樹脂をモノフィラメントまたはマルチフィラメント繊維へと溶融紡糸する工程と、
IV.場合により1種類以上の他の繊維と組み合わせて、前記繊維を布へと加工する工程とを含む、方法。