特許第6173305号(P6173305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6173305アクリダン環構造を有する化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173305
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】アクリダン環構造を有する化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 219/02 20060101AFI20170724BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20170724BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   C07D219/02CSP
   C09K11/06 645
   C09K11/06 690
   H05B33/22 D
   H05B33/14 B
【請求項の数】10
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2014-510046(P2014-510046)
(86)(22)【出願日】2013年4月4日
(86)【国際出願番号】JP2013002331
(87)【国際公開番号】WO2013153780
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2016年2月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-88912(P2012-88912)
(32)【優先日】2012年4月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】横山 紀昌
(72)【発明者】
【氏名】長岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】神田 大三
(72)【発明者】
【氏名】樺澤 直朗
(72)【発明者】
【氏名】林 秀一
【審査官】 清水 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−059904(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/029253(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/155169(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/107186(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/088877(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/147319(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/114266(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/083871(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/150001(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/149999(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/163465(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/049828(WO,A1)
【文献】 特表2008−510801(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0109687(KR,A)
【文献】 国際公開第2012/034627(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/083216(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09K 11/06
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、アクリダン環構造を有する化合物。
【化1】
(1)
(式中、Ar置換もしくは無置換のフルオレニル基、Arは置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表し、R〜Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。R、Rは相互に同一でも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表される、請求項1記載のアクリダン環構造を有する化合物。
【化2】
(2)
(式中、Ar置換もしくは無置換のフルオレニル基を表し、Arは置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表し、R〜Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。R、Rは相互に同一でも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。
【請求項3】
前記一般式(1)において、RおよびRがメチル基である、請求項1記載のアクリダン環構造を有する化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)において、Arが置換もしくは無置換の9,9’−ジメチルフルオレニル基である、請求項1記載のアクリダン環構造を有する化合物。
【請求項5】
前記一般式(1)において、Arは無置換のトリフェニレニル基である、請求項1記載のアクリダン環構造を有する化合物。
【請求項6】
一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記請求項1または2に記載のアクリダン環構造を有する化合物が、少なくとも1つの有機層の構成材料として用いられていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記した有機層が正孔輸送層である請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記した有機層が電子阻止層である請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記した有機層が正孔注入層である請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記した有機層が発光層である請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子に適した化合物と該素子に関するものであリ、詳しくはアクリダン環構造を有する化合物と、該化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子は自己発光性素子であるため、液晶素子にくらべて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であるため、活発な研究がなされてきた。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック社のC.W.Tangらは各種の役割を各材料に分担した積層構造素子を開発することにより有機材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を実用的なものにした。彼らは電子を輸送することのできる蛍光体、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(以後、Alqと略称する)と正孔を輸送することのできる芳香族アミン化合物とを積層し、両方の電荷を蛍光体の層の中に注入して発光させることにより、10V以下の電圧で1000cd/m以上の高輝度を得た(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
現在まで、有機エレクトロルミネッセンス素子の実用化のために多くの改良がなされ、各種の役割をさらに細分化して、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極を設けた電界発光素子によって高効率と耐久性が達成されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、発光効率のさらなる向上を目的として三重項励起子の利用が試みられ、燐光発光体の利用が検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
発光層は、一般的にホスト材料と称される電荷輸送性の化合物に、蛍光体や燐光発光体をドープして作製することもできる。上記の講習会予稿集に記載されているように、有機エレクトロルミネッセンス素子における有機材料の選択は、その素子の効率や耐久性など諸特性に大きな影響を与える。
【0007】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、両電極から注入された電荷が発光層で再結合して発光が得られるが、正孔、電子の両電荷を如何に効率よく発光層に受け渡すかが重要であり、正孔注入性を高め、陰極から注入された電子をブロックする電子阻止性を高めることによって、正孔と電子が再結合する確率を向上させ、さらには発光層内で生成した励起子を閉じ込めることによって、高発光効率を得ることができる。そのため、正孔輸送材料の果たす役割は重要であり、正孔注入性が高く、正孔の移動度が大きく、電子阻止性が高く、さらには電子に対する耐久性が高い正孔輸送材料が求められている。
【0008】
また、素子の寿命に関しては材料の耐熱性やアモルファス性も重要である。耐熱性が低い材料では、素子駆動時に生じる熱により、低い温度でも熱分解が起こり、材料が劣化する。アモルファス性が低い材料では、短い時間でも薄膜の結晶化が起こり、素子が劣化してしまう。そのため使用する材料には耐熱性が高く、アモルファス性が良好な性質が求められる。
【0009】
これまで有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられてきた正孔輸送材料としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(α−ナフチル)ベンジジン(以後、NPDと略称する)や種々の芳香族アミン誘導体が知られていた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。NPDは良好な正孔輸送能力を持っているが、耐熱性の指標となるガラス転移点(Tg)が96℃と低く、高温条件下では結晶化による素子特性の低下が起こってしまう(例えば、非特許文献3参照)。また、前記特許文献1や特許文献2に記載の芳香族アミン誘導体の中には、正孔の移動度が10−3cm/Vs以上と優れた移動度を有する化合物が知られているが、電子阻止性が不十分であるため、電子の一部が発光層を通り抜けてしまい、発光効率の向上が期待できないなど、さらなる高効率化のため、より電子阻止性が高く、薄膜がより安定で耐熱性の高い材料が求められていた。
【0010】
耐熱性や正孔注入性、電子阻止性などの特性を改良した化合物として、下記の式で表される置換アクリダン構造を有するアリールアミン化合物(例えば、化合物Aおよび化合物B)が提案されている(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。
【0011】
【化1】
(化合物A)
【0012】
【化2】
(化合物B)
【0013】
しかしながら、これらの化合物を正孔注入層または正孔輸送層に用いた素子では、耐熱性や発光効率などの改良はされているものの、未だ十分とはいえず、また、低駆動電圧化や電流効率も十分とはいえず、アモルファス性にも問題があった。そのため、アモルファス性を高めつつ、さらなる低駆動電圧化や、さらなる高発光効率化が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−48656号公報
【特許文献2】特許第3194657号公報
【特許文献3】WO2006/033563号公報
【特許文献4】WO2007/110228号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】応用物理学会第9回講習会予稿集55〜61ページ(2001)
【非特許文献2】応用物理学会第9回講習会予稿集23〜31ページ(2001)
【非特許文献3】有機EL討論会第三回例会予稿集13〜14ページ(2006)
【非特許文献4】J.Org.Chem.,60,7508(1995)
【非特許文献5】Chem.Rev.,95,2457(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、高効率、高耐久性の有機エレクトロルミネッセンス素子用の材料として、正孔の注入・輸送性能に優れ、電子阻止能力を有し、薄膜状態での安定性が高く、耐熱性に優れた特性を有する有機化合物を提供し、さらにこの化合物を用いて、高効率、高耐久性の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【0017】
本発明が提供しようとする有機化合物が具備すべき物理的な特性としては、(1)正孔の注入特性がよいこと、(2)正孔の移動度が大きいこと、(3)電子阻止能力に優れること、(4)薄膜状態が安定であること、(5)耐熱性に優れていること、をあげることができる。また、本発明が提供しようとする有機エレクトロルミネッセンス素子が具備すべき物理的な特性としては、(1)発光効率および電力効率が高いこと、(2)発光開始電圧が低いこと、(3)実用駆動電圧が低いこと、をあげることができる。
【0018】
そこで本発明者らは上記の目的を達成するために、芳香族三級アミン構造が高い正孔注入・輸送能力を有していることと、アクリダン環構造が電子阻止性を有していること、さらにはこの部分構造が有する耐熱性と薄膜安定性への効果に期待して、アクリダン環構造を有する化合物を設計して化学合成し、該化合物を用いて種々の有機エレクトロルミネッセンス素子を試作し、素子の特性評価を鋭意行った結果、本発明を完成するに至った。
【0019】
1)すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される、アクリダン環構造を有する化合物である。
【0020】
【化3】
(1)
【0021】
(式中、Ar、Arは相互に同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、R〜Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基であって、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。R〜Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基であって、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。R、Rは相互に同一でも異なってもよく、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であって、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0022】
2)また、本発明は、下記一般式(2)で表される、アクリダン環構造を有する化合物である。
【0023】
【化4】
(2)
【0024】
(式中、Ar、Arは相互に同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、R〜Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基であって、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。R〜Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基であって、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。R、Rは相互に同一でも異なってもよく、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であって、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0025】
3)また、本発明は、前記一般式(1)において、RおよびRがメチル基である、アクリダン環構造を有する化合物である。
【0026】
4)また、本発明は、前記一般式(1)において、Arが置換もしくは無置換のビフェニリル基である、アクリダン環構造を有する化合物である。
【0027】
5)また、本発明は、前記一般式(1)において、Arが置換もしくは無置換の9,9’−ジメチルフルオレニル基である、アクリダン環構造を有する化合物である。
【0028】
6)また、本発明は、前記一般式(1)において、Arが置換もしくは無置換のフェニル基である、アクリダン環構造を有する化合物である。
【0029】
7)また、本発明は、前記一般式(1)において、Arが置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基である、アクリダン環構造を有する化合物である。
【0030】
8)また、本発明は、前記一般式(1)において、Arが9位に芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基から選ばれる置換基を有するカルバゾリル基である、アクリダン環構造を有する化合物である。
【0031】
9)また、本発明は、前記一般式(1)において、Arが芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基から選ばれる置換基を有するフェニル基である、アクリダン環構造を有する化合物である。
【0032】
10)また、本発明は、一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記一般式(1)または一般式(2)で表されるアクリダン環構造を有する化合物が、少なくとも1つの有機層の構成材料として用いられていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0033】
11)また、本発明は、前記有機層が正孔輸送層である有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0034】
12)また、本発明は、前記有機層が電子阻止層である有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0035】
13)また、本発明は、前記有機層が正孔注入層である有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0036】
14)また、本発明は、前記有機層が発光層である有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0037】
一般式(1)〜(2)中のR〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基などをあげることができる。また、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0038】
一般式(1)〜(2)中のR〜Rで表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;アリル基などのアルケニル基;フェノキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルコキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基ピラニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基のような基をあげることができ、これらの置換基は、さらに他の置換基によって置換されていてもよい。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0039】
一般式(1)〜(2)中のR〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基および2−アダマンチルオキシ基などをあげることができる。また、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0040】
一般式(1)〜(2)中のR〜Rで表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;アリル基などのアルケニル基;フェノキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルコキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基ピラニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基のような基をあげることができ、これらの置換基は、さらに他の置換基によって置換されていてもよい。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0041】
一般式(1)〜(2)中のR〜Rで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、フリル基、ピラニル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基およびカルボリニル基などをあげることができる。また、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
ここで、一般式(1)〜(2)中のR〜Rで表される「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」における「芳香族複素環基」としては、チエニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾチアゾリル基、ジベンゾチオフェニル基など含硫黄芳香族複素環基が好ましい。
【0042】
一般式(1)〜(2)中のR〜Rで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;アリル基などのアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などのアラルキル基;フェノキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルコキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基ピラニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基などのアリールビニル基;アセチル基、ベンゾイル基などのアシル基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0043】
一般式(1)〜(2)中のR〜Rで表される「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、具体的に、フェノキシ基、トリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ペリレニルオキシ基などをあげることができる。また、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0044】
一般式(1)〜(2)中のR〜Rで表される「置換アリールオキシ基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;アリル基などのアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などのアラルキル基;フェノキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルコキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基ピラニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基などのアリールビニル基;アセチル基、ベンゾイル基などのアシル基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0045】
一般式(1)〜(2)中のAr、Arで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、フリル基、ピラニル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、チエノインドリル基、ベンゾチエノインドリル基、およびカルボリニル基などをあげることができる。
ここで、一般式(1)〜(2)中のAr、Arで表される「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」における「芳香族複素環基」としては、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾチアゾリル基、ジベンゾチオフェニル基など「含硫黄芳香族複素環基」または「硫黄および窒素を含む芳香族複素環基」が好ましい。
【0046】
一般式(1)〜(2)中のAr、Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;アリル基などのアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などのアラルキル基;フェノキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルコキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基ピラニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基などのアリールビニル基;アセチル基、ベンゾイル基などのアシル基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基が置換基同士もしくはAr、Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」と単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0047】
一般式(1)〜(2)中のR、Rとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が特に好ましい。
【0048】
一般式(1)〜(2)中のAr、Arとしては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」、「9位に芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基から選ばれる置換基を有するカルバゾリル基」、「含硫黄芳香族複素環基」または「硫黄および窒素を含む芳香族複素環基」が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニリル基、置換もしくは無置換のターフェニリル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、9,9’−ジメチルフルオレニル基、9−フェニル−9H−カルバゾリル基、置換もしくは無置換のトリフェニレニル基が特に好ましい。
【0049】
本発明の一般式(1)〜(2)で表されるアクリダン環構造を有する化合物は新規な化合物であり、従来の正孔輸送材料より、優れた電子の阻止能力を有し、優れたアモルファス性を有し、かつ薄膜状態が安定である。
【0050】
本発明の一般式(1)〜(2)で表されるアクリダン環構造を有する化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以後、有機EL素子と略称する。)の正孔注入層および/または正孔輸送層の構成材料として使用することができる。従来の材料に比べて正孔の注入性が高く、移動度が大きく、電子阻止性が高く、しかも電子に対する安定性が高い材料を用いることによって、発光層内で生成した励起子を閉じ込めることができ、さらに正孔と電子が再結合する確率を向上させ、高発光効率を得ることができると共に、駆動電圧が低下して、有機EL素子の耐久性が向上するという作用を有する。
【0051】
本発明の一般式(1)〜(2)で表される、アクリダン環構造を有する化合物は、有機EL素子の電子阻止層の構成材料としても使用することができる。優れた電子の阻止能力と共に従来の材料に比べて正孔輸送性に優れ、かつ薄膜状態の安定性の高い材料を用いることにより、高い発光効率を有しながら、駆動電圧が低下し、電流耐性が改善されて、有機EL素子の最大発光輝度が向上するという作用を有する。
【0052】
本発明の一般式(1)〜(2)で表される、アクリダン環構造を有する化合物は、有機EL素子の発光層の構成材料としても使用することができる。従来の材料に比べて正孔輸送性に優れ、かつバンドギャップの広い本発明の材料を発光層のホスト材料として用い、ドーパントと呼ばれている蛍光発光体や燐光発光体を担持させて、発光層として用いることにより、駆動電圧が低下し、発光効率が改善された有機EL素子を実現できるという作用を有する。
【0053】
本発明の有機EL素子は、従来の正孔輸送材料より正孔の移動度が大きく、優れた電子の阻止能力を有し、優れたアモルファス性を有し、かつ薄膜状態が安定な、アクリダン環構造を有する化合物を用いているため、高効率、高耐久性を実現することが可能となった。
【発明の効果】
【0054】
本発明のアクリダン環構造を有する化合物は、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層あるいは発光層の構成材料として有用であり、優れた電子の阻止能力を有し、かつアモルファス性が良好であり、薄膜状態が安定で、耐熱性に優れている。本発明の有機EL素子は発光効率および電力効率が高く、このことにより素子の実用駆動電圧を低くさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明実施例1の化合物(化合物69)のH−NMRチャート図である。
図2】本発明実施例2の化合物(化合物71)のH−NMRチャート図である。
図3】本発明実施例3の化合物(化合物80)のH−NMRチャート図である。
図4】実施例6〜7、比較例1のEL素子構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明のアクリダン環構造を有する化合物は新規な化合物であり、これらの化合物は例えば、以下のように合成できる。まず、相当する10位をアリール基で置換されたアクリダンを臭素やN−ブロモスクシンイミドなどによるブロモ化を行うことによって、2位のブロモ置換体を合成し(例えば、特許文献3参照)、このブロモ体とピナコールボランやビス(ピナコラート)ジボロンなどとの反応で合成されるボロン酸またはボロン酸エステル(例えば、非特許文献4参照)とをSuzukiカップリングなどのクロスカップリング反応(例えば、非特許文献5参照)を行うことによって、アクリダン環構造を有する化合物を合成することができる。
同様に、10位をアリール基で置換されたアクリダンのブロモ化において、ブロモ化の試薬、条件を変更することによって、置換位置の異なるブロモ置換体を得ることができ、同様のクロスカップリング反応を行うことによって置換位置の異なる、アクリダン環構造を有する化合物を合成することができる。
【0057】
一般式(1)で表されるアクリダン環構造を有する化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示すが、本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0058】
【化5】
(化合物3)
【0059】
【化6】
(化合物4)
【0060】
【化7】
(化合物5)
【0061】
【化8】
(化合物6)
【0062】
【化9】
(化合物7)
【0063】
【化10】
(化合物8)
【0064】
【化11】
(化合物9)
【0065】
【化12】
(化合物10)
【0066】
【化13】
(化合物11)
【0067】
【化14】
(化合物12)
【0068】
【化15】
(化合物13)
【0069】
【化16】
(化合物14)
【0070】
【化17】
(化合物15)
【0071】
【化18】
(化合物16)
【0072】
【化19】
(化合物17)
【0073】
【化20】
(化合物18)
【0074】
【化21】
(化合物19)
【0075】
【化22】
(化合物20)
【0076】
【化23】
(化合物21)
【0077】
【化24】
(化合物22)
【0078】
【化25】
(化合物23)
【0079】
【化26】
(化合物24)
【0080】
【化27】
(化合物25)
【0081】
【化28】
(化合物26)
【0082】
【化29】
(化合物27)
【0083】
【化30】
(化合物28)
【0084】
【化31】
(化合物29)
【0085】
【化32】
(化合物30)
【0086】
【化33】
(化合物31)
【0087】
【化34】
(化合物32)
【0088】
【化35】
(化合物33)
【0089】
【化36】
(化合物34)
【0090】
【化37】
(化合物35)
【0091】
【化38】
(化合物36)
【0092】
【化39】
(化合物37)
【0093】
【化40】
(化合物38)
【0094】
【化41】
(化合物39)
【0095】
【化42】
(化合物40)
【0096】
【化43】
(化合物41)
【0097】
【化44】
(化合物42)
【0098】
【化45】
(化合物43)
【0099】
【化46】
(化合物44)
【0100】
【化47】
(化合物45)
【0101】
【化48】
(化合物46)
【0102】
【化49】
(化合物47)
【0103】
【化50】
(化合物48)
【0104】
【化51】
(化合物49)
【0105】
【化52】
(化合物50)
【0106】
【化53】
(化合物51)
【0107】
【化54】
(化合物52)
【0108】
【化55】
(化合物53)
【0109】
【化56】
(化合物54)
【0110】
【化57】
(化合物55)
【0111】
【化58】
(化合物56)
【0112】
【化59】
(化合物57)
【0113】
【化60】
(化合物58)
【0114】
【化61】
(化合物59)
【0115】
【化62】
(化合物60)
【0116】
【化63】
(化合物61)
【0117】
【化64】
(化合物62)
【0118】
【化65】
(化合物63)
【0119】
【化66】
(化合物64)
【0120】
【化67】
(化合物65)
【0121】
【化68】
(化合物66)
【0122】
【化69】
(化合物67)
【0123】
【化70】
(化合物68)
【0124】
【化71】
(化合物69)
【0125】
【化72】
(化合物70)
【0126】
【化73】
(化合物71)
【0127】
【化74】
(化合物72)
【0128】
【化75】
(化合物73)
【0129】
【化76】
(化合物74)
【0130】
【化77】
(化合物75)
【0131】
【化78】
(化合物76)
【0132】
【化79】
(化合物77)
【0133】
【化80】
(化合物78)
【0134】
【化81】
(化合物79)
【0135】
【化82】
(化合物80)
【0136】
【化83】
(化合物81)
【0137】
【化84】
(化合物82)
【0138】
【化85】
(化合物83)
【0139】
これらの化合物の精製はカラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法などによって行った。化合物の同定は、NMR分析によって行った。物性値として、ガラス転移点(Tg)および融点、仕事関数の測定を行った。ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となるものであり、融点は蒸着性の指標となるものであり、仕事関数は正孔輸送性の指標となるものである。
【0140】
ガラス転移点(Tg)および融点は、粉体を用いて高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100S)によって求めた。
【0141】
仕事関数は、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、大気中光電子分光装置(理研計器製、AC−3型)を用いて測定した。
【0142】
本発明の有機EL素子の構造としては、基板上に順次に、陽極、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、電子輸送層、陰極からなるもの、また、陽極と正孔輸送層の間に正孔注入層を有するもの、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を有するものがあげられる。これらの多層構造においては有機層を何層か省略することが可能であり、例えば基板上に順次に、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極を有する構成とすることもできる。
【0143】
本発明の有機EL素子の陽極としては、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。本発明の有機EL素子の正孔注入層として、本発明の一般式(1)で表されるアクリダン環構造を有する化合物のほか、銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、種々のトリフェニルアミン4量体などの材料、ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物や塗布型の高分子材料を用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0144】
本発明の有機EL素子の正孔輸送層として、本発明の一般式(1)で表されるアクリダン環構造を有する化合物のほか、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)ベンジジン(以後、TPDと略称する)やN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(α−ナフチル)ベンジジン(以後、NPDと略称する)、N,N,N’,N’−テトラビフェニリルベンジジンなどのベンジジン誘導体、1,1−ビス[4−(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(以後、TAPCと略称する)、種々のトリフェニルアミン3量体および4量体などを用いることができる。これらは、単独で成膜してもよいが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用してもよく、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としてもよい。また、正孔の注入・輸送層として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以後、PEDOTと略称する)/ポリ(スチレンスルフォネート)(以後、PSSと略称する)などの塗布型の高分子材料を用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0145】
また、正孔注入層あるいは正孔輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモンなどをPドーピングしたものや、TPDの構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いることができる。
【0146】
本発明の有機EL素子の電子阻止層として、本発明の一般式(1)で表されるアクリダン環構造を有する化合物のほか、4,4’,4’’−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(以後、TCTAと略称する)、9,9−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]フルオレン、1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(以後、mCPと略称する)、2,2−ビス(4−カルバゾール−9−イルフェニル)アダマンタン(以後、Ad−Czと略称する)などのカルバゾール誘導体、9−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−9−[4−(トリフェニルシリル)フェニル]−9H−フルオレンに代表されるトリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物などの電子阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらは、単独で成膜してもよいが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用してもよく、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としてもよい。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0147】
本発明の有機EL素子の発光層として、Alqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体の他、各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などを用いることができる。また、発光層をホスト材料とドーパント材料とで構成してもよく、ホスト材料として、本発明の一般式(1)で表されるアクリダン環構造を有する化合物のほか、前記発光材料に加え、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを用いることができる。また、ドーパント材料としては、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレンおよびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜してもよいが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用してもよく、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としてもよい。
【0148】
また、発光材料として燐光発光材料を使用することも可能である。燐光発光体としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。Ir(ppy)などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、BtpIr(acac)などの赤色の燐光発光体などが用いられ、このときのホスト材料としては正孔注入・輸送性のホスト材料として4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(以後、CBPと略称する)やTCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などに加え、本発明の一般式(1)で表されるアクリダン環構造を有する化合物を用いることができる。電子輸送性のホスト材料として、p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(以後、UGH2と略称する)や2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレン)−トリス(1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール)(以後、TPBIと略称する)などを用いることができ、高性能の有機EL素子を作製することができる。
【0149】
燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1〜30重量パーセントの範囲で、共蒸着によってドープすることが好ましい。
【0150】
これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0151】
本発明の有機EL素子の正孔阻止層として、バソクプロイン(以後、BCPと略称する)などのフェナントロリン誘導体や、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナート)−4−フェニルフェノレート(以後、BAlqと略称する)などのキノリノール誘導体の金属錯体の他、各種の希土類錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体など、正孔阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねてもよい。これらは、単独で成膜してもよいが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用してもよく、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としてもよい。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0152】
本発明の有機EL素子の電子輸送層として、Alq、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体のほか、各種金属錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜してもよいが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用してもよく、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としてもよい。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0153】
本発明の有機EL素子の電子注入層として、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、酸化アルミニウムなどの金属酸化物などを用いることができるが、電子輸送層と陰極の好ましい選択においては、これを省略することができる。
【0154】
本発明の有機EL素子の陰極として、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金が電極材料として用いられる。
【0155】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0156】
[実施例1]
<10−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−2,9,9−トリメチル−7−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)アクリダン(化合物69)の合成>
窒素雰囲気下、反応容器に、7−ブロモ−10−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−2,9,9−トリメチルアクリダン5.27g、9−フェニル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール4.70g、トルエン79ml、エタノール20ml、2M炭酸カリウム水溶液8mlを加え、超音波を照射しながら30分間窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.24gを加えて加熱し、67℃で5時間攪拌した。室温まで放冷し、トルエン50mlを加えた後、分液操作によって有機層を採取した。有機層を水50mlによる洗浄操作を行った後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/トルエン)によって精製した。次に、トルエンとジイソプロピルエーテルの混合溶媒による晶析、トルエンとヘキサンの混合溶媒による晶析を繰り返した後、メタノールによる還流洗浄を行うことによって、10−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−2,9,9−トリメチル−7−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)アクリダン(化合物69)の白色粉体2.87g(収率41%)を得た。
【0157】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。H−NMR測定結果を図1に示した。
【0158】
H−NMR(THF−d)で以下の40個の水素のシグナルを検出した。δ(ppm)=8.36(1H)、8.20(1H)、8.05(1H)、7.85(2H)、7.64−7.21(17H)、6.74(1H)、6.41(1H)、6.24(1H)、2.27(3H)、1.77(6H)、1.54(6H)。
【0159】
[実施例2]
<10−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−9,9−ジメチル−2−(トリフェニレン−2−イル)アクリダン(化合物71)の合成>
窒素雰囲気下、反応容器に、2−ブロモ−10−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−9,9−ジメチルアクリダン7.00g、4,4,5,5−テトラメチル−2−(トリフェニレン−2‐イル)−[1,3,2]ジオキサボラン5.16g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.34g、炭酸カリウム4.03g、トルエン40ml、エタノール10ml、水15mlを加えて加熱し還流下、3時間撹拌した。室温まで放冷し、水、トルエンを加え、分液操作によって有機層を採取した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:トルエン/ヘキサン=1/1)によって精製することによって、10−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−9,9−ジメチル−2−(トリフェニレン−2−イル)アクリダン(化合物71)の白色粉体5.40g(収率59%)を得た。
【0160】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。H−NMR測定結果を図2に示した。
【0161】
H−NMR(THF−d)で以下の37個の水素のシグナルを検出した。δ(ppm)=8.93(1H)、8.85(1H)、8.80−8.71(4H)、8.09(1H)、8.01(1H)、7.95(1H)、7.87(1H)、7.69−7.61(4H)、7.59−7.46(4H)、7.42−7.34(3H)、6.98−6.87(2H)、6.51(1H)、6.39(1H)、1.85(6H)、1.57(6H)。
【0162】
[実施例3]
<2−[(ジベンゾフラン−2−イル)ベンゼン−4−イル) −7,9,9−トリメチル−10−フェニルアクリダン(化合物80)の合成>
窒素雰囲気下、反応容器に、1−ブロモ−4−(ジベンゾフラン−2−イル)ベンゼン11.0g、4,4,5,5−テトラメチル−2−(10−フェニル−2,9,9−トリメチルアクリダン−7−イル)−[1,3,2]ジオキサボラン17.3g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.78g、炭酸カリウム7.05g、トルエン110ml、エタノール18ml、水25mlを加えて加熱し還流下、6.5時間撹拌した。室温まで放冷し、水、トルエンを加え、分液操作によって有機層を採取した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:トルエン/ヘプタン=1/4)によって精製することによって、2−[(ジベンゾフラン−2−イル)ベンゼン−4−イル) −7,9,9−トリメチル−10−フェニルアクリダン(化合物80)の白色粉体13.2g(収率71%)を得た。
【0163】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。H−NMR測定結果を図3に示した。
【0164】
H−NMR(THF−d)で以下の31個の水素のシグナルを検出した。δ(ppm)=8.18(1H)、8.02−7.94(3H)、7.84(1H)、7.75−7.72(2H)、7.71−7.62(4H)、7.54(1H)、7.49−7.29(7H)、6.74(1H)、6.32(1H)、6.15(1H)、2.27(3H)、1.78(6H)。
【0165】
[実施例4]
本発明の化合物について、高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100S)によって融点とガラス転移点を求めた。
融点 ガラス転移点
本発明実施例1の化合物 253℃ 134℃
本発明実施例2の化合物 262℃ 139℃
【0166】
本発明の化合物は100℃以上のガラス転移点を有しており、本発明の化合物において薄膜状態が安定であることを示すものである。
【0167】
[実施例5]
本発明の化合物を用いて、ITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製して、大気中光電子分光装置(理研計器製、AC−3型)で仕事関数を測定した。
仕事関数
本発明実施例1の化合物 5.48eV
本発明実施例2の化合物 5.48eV
【0168】
このように本発明の化合物はNPD、TPDなどの一般的な正孔輸送材料がもつ仕事関数5.4eVと比較して、好適なエネルギー準位を示しており、良好な正孔輸送能力を有していることが分かる。
【0169】
[実施例6]
有機EL素子は、図4に示すような、ガラス基板1上に透明陽極2としてITO電極をあらかじめ形成したものの上に、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7、陰極(アルミニウム電極)8の順に蒸着して作製した。
【0170】
具体的には、膜厚150nmのITOを成膜したガラス基板1を有機溶媒で洗浄した後に、酸素プラズマ処理にて表面を洗浄した。その後、このITO電極付きガラス基板を真空蒸着機内に取り付け0.001Pa以下まで減圧した。続いて、透明陽極2を覆うように正孔注入層3として、下記構造式の化合物84を膜厚20nmとなるように形成した。この正孔注入層3の上に、正孔輸送層4として本発明実施例1の化合物(化合物69)を膜厚40nmとなるように形成した。この正孔輸送層4の上に、発光層5として下記構造式の化合物85と下記構造式の化合物86を、蒸着速度比が化合物85:化合物86=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚30nmとなるように形成した。この発光層5の上に、電子輸送層6としてAlqを膜厚30nmとなるように形成した。この電子輸送層6の上に、電子注入層7としてフッ化リチウムを膜厚0.5nmとなるように形成した。最後に、アルミニウムを膜厚150nmとなるように蒸着して陰極8を形成した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。
【0171】
本発明の実施例1の化合物(化合物69)を使用して作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0172】
【化86】
(化合物84)
【0173】
【化87】
(化合物85)
【0174】
【化88】
(化合物86)
【0175】
[実施例7]
実施例6において、正孔輸送層4の材料として本発明実施例1の化合物(化合物69)に代えて本発明実施例2の化合物(化合物71)を膜厚40nmとなるように形成した以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0176】
[比較例1]
比較のために、実施例6において、正孔輸送層4の材料として本発明実施例1の化合物(化合物69)に代えて下記構造式の化合物87を膜厚40nmとなるように形成した以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0177】
【化89】
(化合物87)
【0178】
【表1】
【0179】
表1に示す様に、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧は、化合物87を用いた有機EL素子の5.17Vに対して本発明の実施例1の化合物(化合物69)を用いた有機EL素子では5.30V、本発明の実施例2の化合物(化合物71)を用いた有機EL素子では5.09V、と同等あるいはそれ以上の低電圧駆動が可能であった。そして、電力効率においては、化合物87を用いた有機EL素子の5.49lm/Wに対して本発明の実施例1の化合物(化合物69)を用いた有機EL素子では5.56lm/Wと向上し、本発明の実施例2の化合物(化合物71)を用いた有機EL素子では6.49lm/W、と大幅に向上した。また、輝度、発光効率のいずれにおいても、化合物87に対して本発明の化合物は向上した。
【0180】
以上の結果から明らかなように、本発明のアクリダン環構造を有する化合物を用いた有機EL素子は、前記化合物87を用いた有機EL素子と比較しても、発光効率や電力効率の向上や、実用駆動電圧の低下を達成できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明のアクリダン環構造を有する化合は、正孔輸送能力が高く、アモルファス性に優れており、薄膜状態が安定であるため、有機EL素子用の化合物として優れている。該化合物を用いて有機EL素子を作製することにより、高い発光効率および電力効率を得ることができると共に、実用駆動電圧を低下させることができ、耐久性を改善させることができる。例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能となった。
【符号の説明】
【0182】
1 ガラス基板
2 透明陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
図1
図2
図3
図4