(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、(メタ)アクリル酸を高い生産性で安定して製造することができる(メタ)アクリル酸の製造方法を提供することである。また、本製法で得られた(メタ)アクリル酸を使用して、親水性樹脂の好適な製造方法を提供することである。更に、窒素を含有する化合物の量が低減された、(メタ)アクリル酸や親水性樹脂を含有する組成物を提供することである。
【0007】
(メタ)アクリル酸の製造方法としては、3−ヒドロキシカルボン酸を原料とすることが考えられる。先ず、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として(メタ)アクリル酸を製造する方法についての第1の本発明の課題を説明する。
上記特許文献1、2では、オリゴマーやダイマー等を経由する反応を1つの反応経路として含んでアクリル酸を製造することが開示されている。なお、上記特許文献3、4は、アクリル酸等を水和して3HPを合成することを開示する。
【0008】
上記特許文献5は、アクリル酸及び/又はそのエステル及びその重合体の製法を開示する。上記特許文献6、7は、3HP等の精製に関する文献である。なお、上記特許文献8〜10に記載の発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAとも称す。)というポリマーを原料としてアクリル酸を製造している。モノマーである3HP等を原料として(メタ)アクリル酸を製造することを開示するものではなかった。
【0009】
上記特許文献1〜10に記載の製法では、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として(メタ)アクリル酸を製造する際に、生産性を向上したり、又は、触媒量を削減したりするための工夫の余地があった。また、上記特許文献1〜10に記載の製法では、(メタ)アクリル酸を低コストで安定して製造することにおいて、まだ充分ではなく、工夫の余地があった。
【0010】
そこで第1の本発明の課題は、3−ヒドロキシカルボン酸から(メタ)アクリル酸を製造する際に、生産性を向上し、又は、触媒量を削減し、かつ(メタ)アクリル酸を低コストで安定して製造することができる(メタ)アクリル酸の製造方法を提供することにある。
言い換えれば、第1の本発明の課題は、モノマーである3−ヒドロキシカルボン酸の水溶液は経時的なオリゴマー化が進行し組成が安定しないため、工業的に不向きということであった。また、モノマーである3−ヒドロキシカルボン酸を原料として用いる場合、脱水反応での生産性が不充分であることであった。
【0011】
次いで、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を用いて(メタ)アクリル酸を製造する方法についての第2の本発明の課題及び第3の本発明の課題を説明する。
本発明者は、上記特許文献1、2では、オリゴマー等の重合物が反応器内等に付着し、最終的に反応器等が閉塞してしまい、長期間安定に製造することが困難であるという問題や、付着物が触媒表面を覆うことによって、触媒活性が低下するため、(メタ)アクリル酸の収率が低下するという問題を見出した。
また上記特許文献3〜7に記載の製法は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を原料として(メタ)アクリル酸を製造することを開示するものではなかった。
更に、上記特許文献8〜10で用いられるPHAは、通常は固体であるため取扱いが煩雑で、加熱する際にも熱伝導が悪いため、分解効率が悪い。取扱いを容易にするためには、水に懸濁させてスラリー状で扱う、有機溶媒に溶解させて溶液として扱う等の方法が考えられるが、加熱に必要なエネルギーが過大になる、溶媒の回収工程が必要となる等の問題がある。更に、高分子量のため、分解にある程度の滞留時間が必要で、その間に加熱による変性等が起こりやすく、アクリル酸の収率が低下し、また、変性した重質成分により、反応器内の閉塞や、熱伝導率の低下といった問題があり、長期間安定的に高収率で製造を行うことが困難であるという問題があった。
このように、上記特許文献1〜10に記載の製法では、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を用いて(メタ)アクリル酸を製造する際に、低コストで、かつ、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することにおいて、まだ充分ではなく、工夫の余地があった。
【0012】
一方、上記組成物中で3−ヒドロキシカルボン酸モノマーや2量体の多い(低重合度)組成を維持するためには、組成物中の水の濃度を高くする必要がある。その場合、(メタ)アクリル酸収率は比較的高いものの、気相反応においては、組成物を蒸発させるために、多くのエネルギーを投入する必要がある。また、3−ヒドロキシカルボン酸単位の濃度が低いため、生産性が低く、大きい装置が必要となり、過大な投資が必要であるという問題があった。
【0013】
また第2の本発明の課題は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を用いて(メタ)アクリル酸を製造する際に、低コストで、かつ、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができる(メタ)アクリル酸の製造方法を提供することにある。
言い換えれば、第2の本発明の課題は、(メタ)アクリル酸を製造するための3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物が、組成によって、ユーティリティが大きかったり、(メタ)アクリル酸の収率が低い場合があったりすることであった。
【0014】
第3の本発明の課題は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を用いて(メタ)アクリル酸を製造する際に、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができる(メタ)アクリル酸の製造方法を提供することにある。
言い換えれば、第3の本発明の課題は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物をそのまま脱水反応に使用すると、閉塞、触媒活性の低下がおこる虞があることであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、(メタ)アクリル酸を製造する方法として、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として(メタ)アクリル酸を製造する方法に着目し、第1の本発明の課題を解決すべく種々検討した。その結果、本発明者は、以下の内容を見出した。
【0016】
先ず、3−ヒドロキシカルボン酸のモノマー溶液は経時的にオリゴマー化が進行し、組成が安定せず、(メタ)アクリル酸を得るための反応が安定せず、収率が振れたり、その結果精製工程においても組成が安定せず、品質に振れが生じたりする虞がある。しかし、本発明者は、3−ヒドロキシカルボン酸のオリゴマー化を充分に進行させ、オリゴマー等の重合物組成を特定のものとすることで、本発明に係るオリゴマー溶液の組成が比較的安定であり(平衡状態に近い)、該反応が安定し、工業的に好適なものとなるとともに、反応を安定化させるための操作、設備が不要となり、コストを削減することができることを見出した。また、組成を安定化させることで、製品である(メタ)アクリル酸の組成や品質が安定となり、工業的なメリットが大きいことを見出した。
【0017】
また本発明者は、3−ヒドロキシカルボン酸のオリゴマー化を充分に進行させ、オリゴマー等の重合物組成を特定のものとした後、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる脱水反応を行うことにより、脱水反応の負荷を減らすことができ、生産性を向上し、又は、触媒量を削減する効果を発揮できることを見出した。すなわち、オリゴマー化も脱水反応の一種であるところ、オリゴマー化を充分に進行させておき、その後3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる脱水反応を行うことにより、3−ヒドロキシカルボン酸から1段階の脱水反応のみを経て(メタ)アクリル酸を製造する場合と比較して、脱水反応の負荷を反応全体として減らすことができる。なお、上述した特許文献のいずれにも、オリゴマー等の重合物組成を本発明のように特定することについては、何ら開示されていなかった。
【0018】
ところで、上述したように再生可能資源から(メタ)アクリル酸を製造する場合、例えば、(メタ)アクリル酸の製造方法が、発酵工程を含み、上記発酵工程により、上記原料としての3−ヒドロキシカルボン酸を生成させる場合は、3−ヒドロキシカルボン酸の発酵液が、通常、3−ヒドロキシカルボン酸の濃度が10%程度と低く、菌体・タンパク質・グルコース・塩類等、不純物が多いため、該発酵液をそのまま(メタ)アクリル酸を得るための脱水反応には使用できず、予め精製を行うことが望ましい。
【0019】
3−ヒドロキシカルボン酸は、精製・濃縮工程で加熱されるとオリゴマー化しやすく、高濃度の3−ヒドロキシカルボン酸は、室温でもオリゴマー化が進行する場合がある。
ここで、本発明者は、このような精製・濃縮工程を行う際に、オリゴマー化を充分に進行させ、オリゴマー等の重合物組成を特定のものに調整することにより、(メタ)アクリル酸を高い生産性で安定して製造することができ、好適であることを見出した。
【0020】
更に、本発明者は、原料として再生可能資源を用いる場合に限らず、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程が、原料や生成物の蒸発を伴う反応を行う工程を含む場合は、3−ヒドロキシカルボン酸の濃度が低いと、当該反応では蒸発させるためのコストが高くなることを見出し、3−ヒドロキシカルボン酸の濃度がある程度高いことが好ましいことも見出した。
【0021】
なお、上記特許文献1、2に記載の発明は、本発明とは異なり、3−ヒドロキシカルボン酸を使用して特定のオリゴマーを作製し、これにより(メタ)アクリル酸を好適に製造するという思想にもとづくものでは無かった。また、上記特許文献5に記載の発明は、ヒドロキシプロピオン酸のオリゴマーをできるだけ少なくし、ヒドロキシプロピオン酸を好適に蒸発させるという思想にもとづくものであった。一方、本発明は、特許文献5に記載の発明とは異なり、3−ヒドロキシカルボン酸のオリゴマーを積極的に作製し、これを利用するという思想にもとづく。更に、上記特許文献8〜10に記載の発明は、モノマーである3−ヒドロキシカルボン酸を原料として(メタ)アクリル酸を製造する際に特定のオリゴマーを作製することで(メタ)アクリル酸を好適に製造するという思想にもとづくものでは無く、この点で本発明とは異なるものであった。
【0022】
すなわち、本発明者は、上記第1の本発明の課題を解決すべく種々検討した結果、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として(メタ)アクリル酸を製造するにあたり、3−ヒドロキシカルボン酸のオリゴマー化を充分に進行させ、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3量体以上のものの合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と、その重合物との合計100質量%に対して、3質量%以上とすることを見出した。このような程度に、例えば精製・濃縮工程において、オリゴマー化を進行させておき、その後で3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させることで、原料組成の安定化による反応成績や製品品質の振れを低減したり、脱水反応の負荷を反応全体として減らしたりすることができ、(メタ)アクリル酸の生産性を向上したり、又は、触媒量を削減したりすることができることを見出した。更に、(メタ)アクリル酸を低コストで安定して製造することができることを見出した。
【0023】
本発明者は、上記第2の本発明の課題を解決すべく種々検討した結果、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として(メタ)アクリル酸を製造するにあたり、該3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち特定量の3〜20量体を有する原料組成物を加熱することにより、低コストで、かつ、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができることを見出した。
【0024】
更に本発明者は、上記第3の本発明の課題を解決すべく種々検討した結果、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として(メタ)アクリル酸を製造するにあたり、該重合物の分解物を生成させる分解工程、及び、該分解物を脱水反応の触媒、すなわち脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程を含む条件で、(メタ)アクリル酸の製造を実施することにより、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができることを見出した。
上記各製法は、適宜組み合わせることができ、このように組み合わされた製法もまた本発明の製法の好ましい形態の1つである。
そして、本発明者は、上述した各製法で得られた(メタ)アクリル酸を用いて吸水性樹脂や水溶性樹脂等の親水性樹脂を好適に製造することができることも見出して、本発明を完成した。
【0025】
なお、本発明者は、精製・濃縮工程の技術は色々な可能性があり(例えば、膜分離、蒸留・蒸発、電気透析、抽出等)、更なる検討を行っている。
【0026】
すなわち、本発明は、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、上記製造方法は、3−ヒドロキシカルボン酸を重合して3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を生成させる重合工程と、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程とを含み、上記重合工程で得られる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3量体以上のものの合計が、3−ヒドロキシカルボン酸及びその重合物との合計100質量%に対して、3質量%以上である(メタ)アクリル酸の製造方法である。本明細書中、この製造方法に係る技術的思想を第1の本発明とも記載する。
【0027】
本発明はまた、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、上記製造方法は、3−ヒドロキシカルボン酸を重合して3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を生成させる重合工程と、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程とを含み、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3〜20量体の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と、その重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上であり、該原料組成物を加熱することにより(メタ)アクリル酸を生成させる工程を含む(メタ)アクリル酸の製造方法でもある。本明細書中、この製造方法に係る技術的思想を第2の本発明とも記載する。
【0028】
本発明は更に、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、上記製造方法は、3−ヒドロキシカルボン酸を重合して3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を生成させる重合工程と、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程とを含み、上記(メタ)アクリル酸生成工程は、(a)該重合物の分解物を生成させる分解工程、及び、(b)該分解物を脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程を含む(メタ)アクリル酸の製造方法である。本明細書中、この製造方法に係る技術的思想を第3の本発明とも記載する。
【0029】
また上述した第2の本発明及び第3の本発明における技術的思想は、そもそも3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を用いて(メタ)アクリル酸を製造する方法における課題を解決するものであるから、3−ヒドロキシカルボン酸を重合して3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を生成させる重合工程を行わなくても構わない。
【0030】
すなわち、本発明は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3〜20量体の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上であり、上記原料組成物を加熱することにより(メタ)アクリル酸を生成させる工程を含む(メタ)アクリル酸の製造方法でもある。
本発明はまた、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、(a)該重合物の分解物を生成させる分解工程、及び、(b)該分解物を脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程を含む(メタ)アクリル酸の製造方法でもある。
【0031】
本発明はそして、本発明の製造方法で得られる(メタ)アクリル酸を含有する組成物であって、上記組成物中の窒素を含有する化合物の窒素の量が、(メタ)アクリル酸に対して、80質量ppm以下である(メタ)アクリル酸を含有する組成物でもある。
【0032】
本発明はまた、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として親水性樹脂を製造する方法であって、上記製造方法は、3−ヒドロキシカルボン酸を重合して3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を生成させる第1重合工程と、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程と、上記(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合して親水性樹脂を生成させる第2重合工程とを含み、上記第1重合工程で得られる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3量体以上のものの合計が、3−ヒドロキシカルボン酸及びその重合物の合計100質量%に対して、3質量%以上である親水性樹脂の製造方法である。この製造方法に係る技術的思想は、第1の本発明に相当する。なお、(メタ)アクリル酸を含む単量体成分とは、本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリル酸を含むものであればよく、必要に応じてその他の単量体を更に含むものであってもよい。ここで、該単量体成分は、重合時において、架橋剤、重合開始剤等を含む組成物に含まれるものであってもよい。
【0033】
本発明は更に、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として親水性樹脂を製造する方法であって、上記製造方法は、3−ヒドロキシカルボン酸を重合して3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を生成させる第1重合工程と、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程と、上記(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合して親水性樹脂を生成させる第2重合工程とを含み、上記第1重合工程で得られる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3〜20量体の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸及びその重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上であり、該組成物を加熱することにより(メタ)アクリル酸を生成させる工程を含む親水性樹脂の製造方法でもある。この製造方法に係る技術的思想は、第2の本発明に相当する。
【0034】
本発明はそして、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として親水性樹脂を製造する方法であって、上記製造方法は、3−ヒドロキシカルボン酸を重合して3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を生成させる第1重合工程と、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程と、上記(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合して親水性樹脂を生成させる第2重合工程とを含み、上記(メタ)アクリル酸生成工程は、(a)該重合物の分解物を生成させる分解工程、及び、(b)該分解物を脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程を含む親水性樹脂の製造方法でもある。この製造方法に係る技術的思想は、第3の本発明に相当する。
【0035】
上述したように、第2の本発明及び第3の本発明においては、3−ヒドロキシカルボン酸を重合して3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を生成させる重合工程を行わなくても構わない。
【0036】
すなわち、本発明は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、親水性樹脂を製造する方法であって、上記製造方法は、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程と、上記(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合して親水性樹脂を生成させる重合工程とを含み、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3〜20量体の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸及びその重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上であり、該組成物を加熱することにより(メタ)アクリル酸を生成させる工程を含む親水性樹脂の製造方法でもある。
本発明はまた、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、親水性樹脂を製造する方法であって、上記製造方法は、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程と、上記(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合して親水性樹脂を生成させる重合工程とを含み、上記(メタ)アクリル酸生成工程は、(a)該重合物の分解物を生成させる分解工程、及び、(b)該分解物を脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程を含む親水性樹脂の製造方法でもある。
【0037】
本発明は更に、上記第1〜第3の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法のいずれかにより得られた(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合する親水性樹脂の製造方法でもある。
【0038】
本発明はまた、上記製造方法が、発酵工程を含み、上記発酵工程により、上記原料としての3−ヒドロキシカルボン酸を生成させる上記(メタ)アクリル酸の製造方法又は上記親水性樹脂の製造方法である。
本発明は更に、上記3−ヒドロキシカルボン酸が、3−ヒドロキシプロピオン酸である上記(メタ)アクリル酸の製造方法又は上記親水性樹脂の製造方法である。
【0039】
本発明はそして、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3〜20量体の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸及びその重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上であり、上記(メタ)アクリル酸生成工程は、上記組成物を加熱することにより(メタ)アクリル酸を生成させる上記(メタ)アクリル酸の製造方法又は上記親水性樹脂の製造方法である。
【0040】
本発明はまた、上記(メタ)アクリル酸生成工程が、(a)上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の分解物を生成させる分解工程、及び、(b)該分解物を脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程を含む上記(メタ)アクリル酸の製造方法又は上記親水性樹脂の製造方法である。
本発明は更に、上記分解工程を加熱により行う上記(メタ)アクリル酸の製造方法又は上記親水性樹脂の製造方法である。
本発明はそして、上記親水性樹脂が吸水性樹脂である上記親水性樹脂の製造方法である。
【0041】
本発明は更に、本発明の製造方法で得られる親水性樹脂を含有する組成物であって、上記組成物中の窒素を含有する化合物の窒素の量が、親水性樹脂に対して、80質量ppm以下である樹脂組成物である。
【0042】
第1の本発明を言い換えて纏めると、原料液組成の振れが小さくなることで、安定したプラントの運転が可能となる。また、予めオリゴマー化(エステル化)しておくことで、原料中の水酸基濃度を低減させ、脱水反応の負荷を下げることでアクリル酸の生産性を向上させる。
【0043】
第2の本発明を言い換えて纏めると、原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物において、低分子成分が多い場合は、必然的に含水量が多くなるため、蒸発のコストが大きくなってしまい、高分子成分が多い場合は、原料組成物が懸濁液となり、閉塞しやすくなったり、アクリル酸の収率が低かったりしたところ、3〜20量体が10質量%以上の組成(上記の中間範囲)であれば、ユーティリティもそれほど大きくなく、アクリル酸の収率も高い結果が得られるということである。
【0044】
第3の本発明を言い換えて纏めると、分解工程で、オリゴマーを低分子化してから脱水することで、閉塞や活性低下を抑制できるということである。
【発明の効果】
【0045】
本発明の製造方法によれば、(メタ)アクリル酸を高い生産性で安定して製造することができる(メタ)アクリル酸の製造方法を提供することができる。また、本製法で得られた(メタ)アクリル酸を使用して、親水性樹脂を好適に製造することができる。更に、窒素を含有する化合物の量が低減された、(メタ)アクリル酸や親水性樹脂を含有する組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい特徴を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0048】
以下においては、先ず、第1〜第3の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法について順に記載する。第1〜第3の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、それぞれ、その他の本発明の特徴を好適に適用することができる。
【0049】
(第1の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法)
第1の本発明の製造方法によれば、生産性を向上し、又は、触媒量を削減し、かつ(メタ)アクリル酸を低コストで安定して製造することができる(メタ)アクリル酸の製造方法を提供することができる。また、本製法で得られた(メタ)アクリル酸を使用して、親水性樹脂を好適に製造することができる。なお、本明細書中、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物、又は、単に原料組成物とも言う。
【0050】
第1の本発明における3−ヒドロキシカルボン酸としては、3HP、3−ヒドロキシイソ酪酸等が挙げられる。好ましくは、3HPである。また、(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。好ましくは、アクリル酸である。
上記3−ヒドロキシカルボン酸は、1種でも2種以上でも用いることができる。また、(メタ)アクリル酸は、使用した3−ヒドロキシカルボン酸の種類に応じて得られる。
【0051】
上記3−ヒドロキシカルボン酸を重合して3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を生成させる重合工程は、3−ヒドロキシカルボン酸の精製・濃縮工程であることが好ましい。例えば、3−ヒドロキシカルボン酸の発酵液を精製・濃縮する工程であることが好ましい。なお、精製・濃縮工程は、操作によっては精製と濃縮とを別々に行う場合と、精製と濃縮とが同時に行われる場合とがあるが、いずれの場合であってもよい。
また、精製・濃縮工程で得られた3−ヒドロキシカルボン酸を所定の条件で保管し、その間に重合を進行させることもできる。
【0052】
すなわち、第1の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法に好適に適用できるプロセスの1つとして、例えば、原料としての3−ヒドロキシカルボン酸を生成させる発酵工程、3−ヒドロキシカルボン酸のオリゴマー化を進行させる精製・濃縮工程、該精製・濃縮工程により得られる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程をこの順に行う方法が好ましい。上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程は、上記精製・濃縮工程で得られたオリゴマー等を更に分解・脱水して、(メタ)アクリル酸を得る工程である。このような工程を経ることにより、3−ヒドロキシカルボン酸から1段階の脱水反応を行って(メタ)アクリル酸を得る場合と比べて、複数段階からなる脱水反応を行うことができ、1段階のみの脱水反応を行う場合と比べて、脱水反応の負荷を反応全体として減らすことができ、生産性を向上したり、又は、触媒量を削減したりすることができる。
【0053】
上記重合工程における精製・濃縮工程は、例えば、3−ヒドロキシカルボン酸の溶液を、膜分離、蒸留・蒸発、電気透析及び抽出からなる群より選択される少なくとも1つの操作を含む工程により行うものであることが好ましい。またその際、40℃以上で操作される工程を有していることが好ましい。より好ましくは50℃以上で操作される工程を有することであり、一層好ましくは60℃以上で操作される工程を有することである。これにより、オリゴマー化がより速く進む。これら操作のより具体的な内容は、「不純物が少ない原料組成物を得る方法」として、後で例示して説明する。
【0054】
上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物は、該3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含んでいればよい。また、3−ヒドロキシカルボン酸(単量体)、溶媒や3−ヒドロキシカルボン酸の調製において生成する副生物等を含んでいてもよい。
本発明で用いる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物は、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含み、該3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち3量体以上(後述する式(1)においてaが2以上)のものの合計が、3−ヒドロキシカルボン酸及びその合計100質量%に対して、3質量%以上である。(メタ)アクリル酸の収率向上等の観点から、好ましくは、5質量%以上である。より好ましくは7質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上であり、一層好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは、20質量%以上であり、最も好ましくは25質量%以上である。また、原料組成物の調製にかかるコストや設備の点から、該濃度は、95質量%以下が好ましい。より好ましくは、90質量%以下である。
上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸及びその重合物の総量の濃度は、該組成物100質量%に対して、10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上であり、一層好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは40質量%以上である。また、該濃度は、95質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、93質量%以下であり、更に好ましくは、90質量%以下である。
なお、溶質の濃度を高め(例えば、15質量%以上)、水の濃度を低下させる場合は、これにより(メタ)アクリル酸の生成工程等での加熱や蒸発にかかるコストをも削減することができる。一方、95質量%以下とすることで、高濃度化に必要な過度な加熱や設備が不要となり、コスト的に有利である。
また原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の濃度は、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは15〜93質量%、更に好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは30〜90質量%、最も好ましくは40〜90質量%である。
【0055】
ここで、本明細書において、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物とは、3−ヒドロキシカルボン酸が分子間エステル結合にて連なった多量体を意味する。
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物としては、例えば3HPの重合物を例に挙げると、下式(1)に示すように、3HPの水酸基とカルボキシル基が分子間エステル結合したポリエステルが挙げられる。
式中、aは任意の値を取り得るが、本発明においては、以下のように、特定の範囲のaの値を有する重合物が、特定の割合で原料組成物中に含まれていることにより、生産性を向上し、又は、触媒量を削減し、かつ(メタ)アクリル酸を低コストで安定して製造することができる。
【0057】
3−ヒドロキシカルボン酸は、分子間脱水反応によりエステル結合で連なったオリゴマーやポリマーを形成しやすい。この反応は、濃度、温度や共存化合物等の条件によっては非常に進行しやすい場合があり、室温での保管中でもオリゴマーが生成し、いずれは平衡組成に達する。更に発酵液からの精製や濃縮工程等で加熱されると、より一層オリゴマー生成速度は速くなる。また、オリゴマー化反応は、水が副生する平衡反応であるため、その平衡組成は水の濃度に依存し、水濃度が高いと低分子量オリゴマーが多くなり、水濃度が低いと高分子量オリゴマーが多くなる。
一方、高分子量の3−ヒドロキシカルボン酸の重合物は、3−ヒドロキシカルボン酸から水を除去しながら調製することができる。例えば、加熱によりオリゴマーを形成し、更に減圧下、触媒存在下で、水を除去しながら反応させることで取得できる。この場合も、水の除去程度によって、平均分子量や3量体以上のオリゴマーの含有量は変化する。また、微生物中で高分子量の3−ヒドロキシカルボン酸重合物を形成させることもできる。
【0058】
(メタ)アクリル酸の収率向上という観点から、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物は、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含み、該3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち3量体(式(1)においてa=2)〜9量体(式(1)においてa=8)の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と3−ヒドロキシカルボン酸重合物の合計100質量%に対して、3質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、5質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上であり、更により好ましくは15質量%以上であり、一層好ましくは20質量%以上であり、特に好ましくは30質量%以上であり、最も好ましくは40質量%以上である。また、原料組成物の調製にかかるコストや設備の点から、95質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、90質量%以下である。
【0059】
なお、3−ヒドロキシカルボン酸や2量体〜9量体程度の低分子量の成分は、液体クロマトグラフィーで、10量体以上の成分はサイズ排除クロマトグラフィーで、分析することができる。
原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸単位は、液体クロマトグラフィーやサイズ排除クロマトグラフィーの分析値から求めることができる。また、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含む原料組成物を、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液中で加熱し、加水分解させ、液体クロマトグラフィーで、生成した3−ヒドロキシカルボン酸を定量することにより求めることもできる。
なお、3−ヒドロキシカルボン酸単位とは、−CH
2−CHR−COO−(Rは水素又はメチル基)を意味する。また、3−ヒドロキシカルボン酸1モルは、3−ヒドロキシカルボン酸単位1モル;3−ヒドロキシカルボン酸2量体1モルは、3−ヒドロキシカルボン酸単位2モル;3−ヒドロキシカルボン酸3量体1モルは、3−ヒドロキシカルボン酸単位3モル;・・・というようにカウントする。
本発明においては、上記のような3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を、例えば加熱したり、触媒と接触させる等の方法で反応させることで、(メタ)アクリル酸を生成させることができる。反応時には、重合物のエステル基が分解することで、3−ヒドロキシカルボン酸、重合度が低下した3−ヒドロキシカルボン酸の重合物、アクリル酸やアクリル酸の重合物が生成する反応や、3−ヒドロキシカルボン酸や3―ヒドロキシカルボン酸の重合物の水酸基が脱水することで、アクリル酸やアクリル酸の重合物が生成する反応が起こる。これらの反応が複合的に進行することで、(メタ)アクリル酸を効果的に生成することができる。
【0060】
第1の本発明の(メタ)アクリル酸の製法において、上記特定の原料組成物を用いることにより、生産性を向上し、又は、触媒量を削減し、かつ(メタ)アクリル酸を低コストで安定して製造することができる。
【0061】
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物は、(メタ)アクリル酸を生成する工程において、加熱されることが好ましい。以下に、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物、原料組成物の加熱(分解及び/又は脱水)等について、順に説明する。
【0062】
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物には溶媒が含まれていてもよい。溶媒としては、3−ヒドロキシカルボン酸及びその重合物を溶解できるものであれば、特に限定されないが、例えば、水、アルコール、炭化水素、エーテル、ケトン、エステル、アミン、アミド等が挙げられる。これらは、1種でも2種以上でも用いることができる。溶媒の沸点は、気化が容易になるため3−ヒドロキシカルボン酸の沸点よりも低い方が好ましい。例えば、水が好ましい。
第1の本発明において、原料組成物中に溶媒を含有させる場合、原料組成物100質量%における溶媒の濃度は、好ましくは5〜90質量%であり、より好ましくは7〜85質量%、更に好ましくは10〜80質量%、特に好ましくは10〜70質量%、最も好ましくは10〜60質量%である。溶媒の濃度が5質量%以上であれば、粘度の低下により原料組成物の取り扱いが容易になり、また(メタ)アクリル酸生成工程で原料組成物や生成物の蒸発を伴う場合は、3−ヒドロキシカルボン酸、その重合物、アクリル酸やその重合物の蒸発が促進される効果が期待できる。一方、90質量%以下とすることにより、加熱や蒸発にかかる熱量を抑制し、用役費の低減に寄与できる。
【0063】
原料組成物中に水を含有させる場合、上述のように水が3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の組成分布に影響を与えるため、水の濃度を適切に調整することが好ましい。上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物に含まれる水の濃度は、該組成物100質量%に対して、5質量%以上、90質量%以下であることが好ましい。
また本発明は、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、上記製造方法は、3−ヒドロキシカルボン酸を重合して3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を生成させる重合工程と、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程とを含み、上記重合工程で得られる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物に含まれる水の濃度は、該組成物100質量%に対して、5質量%以上、90質量%以下であることが好ましい。
上記水の濃度は、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。また、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましく、70質量%以下であることが一層好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。
【0064】
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物には、3−ヒドロキシカルボン酸やその重合物以外の成分、例えば、3−ヒドロキシカルボン酸を発酵等により合成する際の副生物等が含まれていてもよい。当該副生物としては、具体的には、発酵において3−ヒドロキシカルボン酸と共に副生される可能性のある、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、フマル酸、ピルビン酸、グリコール酸、乳酸、エタノール、アミノ酸類、1,3−プロパンジオール、グリセリン、ヒドロキシプロピオンアルデヒド、アラニン等が例示される。
【0065】
本発明で用いられる3−ヒドロキシカルボン酸は、種々の源から得ることができるが、地球温暖化の抑制及び環境保護の観点から、炭素源としてリサイクル可能な生物由来資源から得ることが好ましい。具体的には、農作物等から得られる糖類やセルロース等を分解して得られる糖類から、更に発酵により調製されたものを用いることができる。
本発明においては、原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の少なくとも一部又は全部が、発酵により得られる3−ヒドロキシカルボン酸であることが好ましい。
また3−ヒドロキシカルボン酸の原料として、バイオマス等の生物由来資源であることが好ましい。
【0066】
3−ヒドロキシカルボン酸もまた、公知の方法で入手可能であり、例えば、国際公開第2008/027742号に記載されている、Streptomyces griseus ATCC21897由来beta−alanine aminotransferase遺伝子導入大腸菌を用いた、グルコースを炭素源とした発酵により得ることができる。また、国際公開第2001/016346号に記載されている、Klebsiella pneumoniae由来グリセリン脱水酵素及び大腸菌由来アルデヒド酸化酵素導入大腸菌を用いた、グリセリンを炭素源とした発酵によっても得ることができる。
【0067】
3−ヒドロキシカルボン酸の入手方法の例として上記公知文献を記載したが、発酵に用いる細菌又は遺伝子組換え細菌は特に限定されず、3−ヒドロキシカルボン酸生成能を有する生物を用いた発酵により入手した3−ヒドロキシカルボン酸であれば、本発明の製法で利用可能である。また、発酵以外にも、原料とする糖類と生物とを接触させることにより生成した3−ヒドロキシカルボン酸でも、本発明の製法で(メタ)アクリル酸へ変換することができる。
【0068】
本発明に用いる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物としては、発酵工程を経て得られたものであって、より不純物が少ない原料組成物を用いることが好ましい。発酵工程を経て得られる原料組成物中の不純物としては、例えば、発酵液に通常含まれる、菌体、タンパク質、アミノ酸、グルコース、塩類等や上述した発酵副生物が挙げられる。
不純物が少ない原料組成物を得る方法としては、発酵液からの精製工程を経た3−ヒドロキシカルボン酸を用いて、原料組成物を調製する方法が挙げられる。発酵液からの精製工程には、公知の方法が利用可能である。具体的には、発酵により得られた粗製3−ヒドロキシカルボン酸を、カルシウム塩を用いて沈殿させて、3−ヒドロキシカルボン酸のカルシウム塩として回収した後、硫酸等の酸と反応させて、3−ヒドロキシカルボン酸を精製する方法;発酵により得たアンモニウム型の3−ヒドロキシカルボン酸を、電気透析又は陽イオン交換法によって3−ヒドロキシカルボン酸に化学変換させて精製する方法;等が利用できる。
さらに一般的な濾布やMF膜(精密濾過膜)やUF膜(限外濾過膜)を用いた不純物の除去や、RO膜(逆浸透膜)を用いた3−ヒドロキシカルボン酸の濃縮等、膜分離操作を利用することもできる。
また、発酵により得られた3−ヒドロキシカルボン酸やそのアンモニウム塩の水溶液に、水に不混和性のアミン溶媒を添加し必要に応じて加熱することにより、3−ヒドロキシカルボン酸のアミン溶液を抽出にて得ることができる。そこに水を加えて加熱することにより逆抽出して、3−ヒドロキシカルボン酸の水溶液を得ることができる。
また、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸気圧を利用して、蒸発や蒸留にて精製することもできる。しかし、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸気圧は小さいため、高減圧下での操作が好ましい。
更に、3−ヒドロキシカルボン酸をアルコールによってエステル化し、得られた3−ヒドロキシカルボン酸エステルを蒸留にて精製・濃縮した後、3−ヒドロキシカルボン酸エステルを加水分解することで、精製した3−ヒドロキシカルボン酸を得ることもできる。
また、3−ヒドロキシカルボン酸水溶液から、蒸発や蒸留操作によって、水を除去し、濃縮することができる。例えば多重効用缶を使用する方法は好適な例である。
3−ヒドロキシカルボン酸の重合工程の中で、上記のような操作を単独で行ったり、組み合わせて行ったりすることで、3−ヒドロキシカルボン酸を精製・濃縮しつつ、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含む原料組成物を得ることができる。
【0069】
発酵にて3−ヒドロキシカルボン酸を製造する場合、菌体等の微生物由来のタンパク質やアミノ酸、発酵液のpH調整に使用するアンモニア、発酵液の抽出操作を行う場合に使用する溶媒であるアミン類等、窒素を含有する化合物が共存することが多い。上記のような方法で3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含む原料組成物を製造する場合、原料組成物中に含まれる窒素の量が、3−ヒドロキシカルボン酸と3−ヒドロキシカルボン酸重合物の合計100質量%に対して、0.2質量%以下となるように、精製・濃縮工程の条件を設定することが好ましい。より好ましくは0.1質量%以下であり、一層好ましくは0.05質量%以下であり、より一層好ましくは0.01質量%以下である。0.2質量%を超える場合、後工程の(メタ)アクリル酸を製造する工程で、窒素含有化合物が副生することがある。窒素含有化合物としては(メタ)アクリルアミド類、ピリジン環やピロール環を持つ環状窒素化合物、ピロリドン等のラクタム類、アミン類等が例示できる。中でも有害性のある(メタ)アクリルアミド類が生成する場合があり、その除去のために新たな工程が必要となったり、(メタ)アクリル酸の用途範囲が限定されたりする虞がある。(メタ)アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。上記のような窒素量範囲の原料組成物を使用することで、生成した(メタ)アクリル酸に対して窒素含有化合物の窒素の総量が80質量ppm以下とすることができる。好ましくは60質量ppm以下、より好ましくは50質量ppm以下である。また同様に(メタ)アクリルアミド類が(メタ)アクリル酸に対して10質量ppm以下の組成物を得ることができる。好ましくは5質量ppm以下、より好ましくは1質量ppm以下である。また後述するように、上記組成物を精製することで、(メタ)アクリル酸に対して(メタ)アクリルアミド類が10質量ppm以下の(メタ)アクリル酸を得ることができる。
(メタ)アクリル酸の質量に対して窒素含有化合物の窒素の総量として80質量ppm以下であることにより刺激臭の発生を抑制でき、かつ(メタ)アクリルアミド類が10質量ppm以下になることにより毒性や刺激性のない(メタ)アクリル酸となる。また、「窒素の総量」とは窒素含有化合物を構成する元素に含まれる窒素の総量である。尚、組成物中の窒素含有化合物の窒素の総量は、日本工業規格K0102やK2609に準拠して分析することができる。また、(メタ)アクリルアミド類はガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーにより分析することができる。
【0070】
3−ヒドロキシカルボン酸から脱水反応によって直接(メタ)アクリル酸を生成させることは知られているが、上述のように3−ヒドロキシカルボン酸はオリゴマー化(重合)しやすいため、モノマーの状態で存在させるには、非常に薄い溶液で存在させる必要がある。その場合、反応において、反応器が大きくなる、加熱のための熱量が大きくなる等の問題がある。また反応が気相反応等の蒸発を伴う反応の場合、必要な熱量は莫大なものとなる。
また3−ヒドロキシカルボン酸の脱水反応(分子内脱水反応)は、一般的には高温条件が必要で、触媒を用いても、活性の劣化があることが知られている。一方、3−ヒドロキシカルボン酸の重合は、反応機構は異なるものの、脱水反応(分子間脱水反応)の一種であり、3−ヒドロキシカルボン酸の水酸基を減少させる点では同じである。この反応は比較的低温で起こり、3−ヒドロキシカルボン酸が高濃度であれば、室温でも容易に進行し、また無触媒でも進行する。生成した重合物から(メタ)アクリル酸を得るには、さらに重合物の分解が必要であるが、3−ヒドロキシカルボン酸から(メタ)アクリル酸を得るには、脱水反応は必須である。
第1の本発明においては、穏やかな条件で実施できる重合反応(オリゴマー化反応)で、脱水反応を進行させ、3−ヒドロキシカルボン酸の水酸基を減少させておくことで、引き続く(メタ)アクリル酸生成工程で容易に(メタ)アクリル酸を生成させることができる。(メタ)アクリル酸生成工程で、残存している水酸基をさらに分子内脱水反応させることで(メタ)アクリル酸を生成させる場合でも、予め実施している重合反応(オリゴマー化反応)による水酸基の減少により、厳しい条件が必要な分子内脱水反応の負荷が小さくなり、より効率的に(メタ)アクリル酸を生成させることができる。
【0071】
次に、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含む原料組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる方法について説明する。
当該方法は、例えば加熱して行うことができる。加熱工程は、触媒の存在下、非存在下のいずれにおいても行うことができる。
触媒の非存在下で加熱工程を実施する場合、加熱温度は、180〜700℃が好ましく、190〜650℃がより好ましく、200〜600℃が更に好ましい。180℃未満では、加熱が不十分で、(メタ)アクリル酸収率の低下や、未反応の重合物が加熱器内に蓄積し、内部の閉塞、熱伝導度の低下による加熱効率の低下の虞がある。また、700℃を超えると、加熱による副生物の生成が多くなり、(メタ)アクリル酸収率の低下や、得られた(メタ)アクリル酸の純度の低下、(メタ)アクリル酸精製工程の煩雑化等の懸念がある。
触媒の存在下で加熱工程を実施する場合、加熱温度は、150〜600℃が好ましく、160〜550℃がより好ましく、170〜500℃が更に好ましく、180〜450℃が特に好ましい。
加熱工程で用いる触媒は、特に限定されず、例えば酸触媒や塩基触媒が挙げられ、特に固体酸触媒や固体塩基触媒が好ましい。
【0072】
加熱器内の圧力は、原料組成物や生成物の蒸発が起こる場合は、低いほど蒸発が起こりやすくなるため有利であるが、生成物の捕集のしやすさや設備等のコストも合わせて選択する必要がある。加熱器内の圧力としては、好ましくは10kPa〜1000kPaであり、より好ましくは30kPa〜300kPaであり、更に好ましくは50kPa〜250kPaである。
【0073】
加熱器は、液体で供給する原料組成物に効率的に熱を伝える構造が好ましい。例えば、水平管型や垂直管型の自然循環式加熱器、強制循環式加熱器、多管式熱交換器等が挙げられる。
また、加熱器内の原料組成物の流路に、ラシヒリング、ベルルサドル、球状成型物、金網の成型物(ディクソンパッキン、マクマホンパッキン等)、メラパック(スルザーケムテック社製)といった不規則充填物や規則充填物等の、単位充填容積当たりの表面積が大きな充填物を充填し、そこに原料組成物を供給することで、原料組成物(液体)が接する表面積を大きくして反応させる方法も挙げられる。こうすることにより、供給した原料組成物が、表面積の大きな充填物と接触することになり、伝熱面積が増え、効率的に熱が伝わり、短時間で反応が進み、そのため、加熱器内での副反応を抑制することができる。
上記充填物の材料としては、鉄やステンレス等の金属材料や、シリカ、セラミック等の無機材料等が使用できる。
【0074】
また、原料組成物を流動床式の加熱器に供給して、加熱してもよい。例えば、粉末状の不活性固体を不活性ガスで流動化させ、加熱された流動床式加熱器に原料組成物を供給し、反応させてもよい。
さらに、一定量の液相を加熱器内保持し、そこに原料組成物を液体で供給しながら(メタ)アクリル酸を生成する反応を液相で行い、生成した(メタ)アクリル酸類を蒸発させて加熱器内から留去する方法も好ましい形態である。(メタ)アクリル酸の生成に必要な滞留時間は、温度、圧力、加熱量や加熱器内に存在する液体原料の量によって制御することができる。また3−ヒドロキシカルボン酸や、低重合度の3−ヒドロキシカルボン酸の重合物や(メタ)アクリル酸の重合物の留出を抑制するために、加熱器に蒸留塔を設置し還流をかけてもよい。
【0075】
また、加熱生成物の蒸発を容易にするために、不活性気体の存在下に加熱工程を実施してもよい。不活性気体としては、水蒸気、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等が挙げられる。好ましくは、水蒸気、窒素である。
不活性気体の供給量としては、原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸単位のモル数の0.5モル倍〜100モル倍が好ましく、1モル倍〜50モル倍がより好ましい。原料組成物中に水が含まれる場合は、その水が加熱工程で蒸発して生成した水蒸気も、上記不活性気体に含める。
上記のような条件で原料組成物を加熱することで、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物が反応して低分子化(分解)し、効率よく(メタ)アクリル酸を生成させることができる。また原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸や、重合物の分解により生成した3−ヒドロキシカルボン酸が脱水することで、更に(メタ)アクリル酸を生成させることができる。
(メタ)アクリル酸生成工程は、生成した(メタ)アクリル酸やそれらの重合物の二重結合部分が重合するラジカル重合を抑制するために、重合禁止剤の存在下で行っても良い。重合禁止剤としては、メトキノン、酢酸マンガン、ニトロソフェノール、クペロン、N−オキシル化合物、ジブチルチオカルバミン酸銅、フェノチアジン、ハイドロキノン等が例示できる。また、必要に応じて酸素含有ガスを供給してもよい。
【0076】
加熱工程は、原料組成物を触媒と接触させる工程でもよいし、上記のような加熱工程を経た後の生成物を更に脱水触媒と接触させる多段の加熱工程で実施してもよい。これにより、(メタ)アクリル酸の収率をより向上させることができる。特に、多段の加熱工程で実施する場合は、本発明のように予め重合工程を行って3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含む原料組成物を生成させることと相まって、脱水触媒と接触させる工程(脱水工程)の負荷をより小さくすることができ、(メタ)アクリル酸の生産性を向上したり、又は、触媒量を削減したりする効果をより顕著に発揮できる。
上記脱水触媒と接触させる脱水工程で使用する反応器としては、中に固体触媒を保持し、加熱することができればよく、例えば、固定床連続反応器、流動床連続反応器等が使用でき、固定床連続反応器が好ましい。
脱水工程では、一段目の加熱工程から得られた出口ガスを、脱水触媒と接触させる気相反応であることが好ましい。気相反応とすることで、脱水触媒上での重質分の析出やそれに伴う活性劣化を抑制したり、反応管の閉塞等を抑制したりできる。
上記固定床連続反応器を用いる場合は、反応器内に触媒を充填して加熱しておき、そこに原料組成物の蒸気を供給すればよい。原料組成物の蒸気は、上昇流、下降流、水平流、いずれも好適に使用できる。また、熱交換の容易さから、固定床多管式連続反応器が好適に使用できる。
上記流動床連続反応器を用いる場合は、反応器の中に粉末状の触媒を入れ、原料組成物の蒸気や、別途供給する不活性ガス等で触媒を流動させながら、反応させることができる。触媒が流動しているため、重質分による閉塞が起こりにくい。また、触媒の一部を連続的に抜き出して、新しい触媒や再生した触媒を連続的に供給することもできる。
【0077】
上記脱水触媒は、3−ヒドロキシカルボン酸を(メタ)アクリル酸に転化する触媒作用を有するものであれば特に限定されない。
上記脱水触媒としては、ゼオライト等の結晶性メタロシリケート;結晶性メタロシリケートに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等を、イオン交換等の方法によって担持したもの;カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト等の天然又は合成粘土化合物;硫酸、ヘテロポリ酸、リン酸又はリン酸塩(リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、リン酸マンガン、リン酸ジルコニウム等)、アルカリ金属、アルカリ土類金属を、アルミナやシリカ等の担体に担持させた触媒;Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、SnO
2、V
2O
5、SiO
2−Al
2O
3、SiO
2−TiO
2、SiO
2−ZrO
2、TiO
2−WO
3、TiO
2−ZrO
2等の無機酸化物又は無機複合酸化物;MgSO
4、Al
2(SO
4)
3、K
2SO
4、AlPO
4、Zr(SO
4)
2等の金属の硫酸塩、リン酸塩等の固体酸性物質;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト等の固体塩基性物質;等が挙げられる。好適には、Al
2O
3、SiO
2、SiO
2−Al
2O
3、TiO
2、ゼオライト、ゼオライトにアルカリ金属やアルカリ土類金属を担持したもの、リン酸やリン酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属をシリカ等の担体に担持した触媒である。
【0078】
上記脱水触媒は、触媒成型体であってもよい。その成型体形状としては、限定されるものではなく、球状、シリンダー型、リング型、ハニカム型等が挙げられる。
上記脱水触媒の物性としては、触媒活性等の点から、BET法による比表面積は、0.01〜500m
2/gが好ましく、0.1〜400m
2/gがより好ましい。触媒活性、生成物の(メタ)アクリル酸の選択率、触媒寿命等の点から、ハメットの酸度関数H
0は、+4〜−10が好ましく、+2〜−8がより好ましい。また、触媒活性や反応器の圧力損失の点から、脱水触媒の大きさは、長径が0.1mm〜50mmが好ましく、0.5mm〜40mmがより好ましい。
【0079】
触媒層の温度は、150℃〜500℃に保持することが好ましい。より好ましくは200℃〜450℃、更に好ましくは220℃〜430℃、一層好ましくは250℃〜400℃である。この温度範囲(150℃〜500℃)であると、反応速度が速く、副反応も生じにくく、(メタ)アクリル酸の収率が高くなる。
反応圧力は、特に限定されないが、脱水反応の生産性、脱水反応後の捕集効率等を勘案して決定することができる。反応圧力としては、10kPa〜1000kPaが好ましい。より好ましくは、30kPa〜300kPaであり、更に好ましくは、50kPa〜250kPaである。
このように、加熱工程に脱水触媒と接触させる工程を組み合わせる多段の加熱工程とすることで、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の分解により(メタ)アクリル酸を生成させ、更にその生成物と脱水触媒とを接触させることで、原料組成物中に含まれていた3−ヒドロキシカルボン酸や、重合物の分解によって生成した3−ヒドロキシカルボン酸が脱水反応し、更に(メタ)アクリル酸の収率を向上させ、効率よく製造することができる。
また、上記の様に重合物を加熱工程にて低分子化することにより、例えば(メタ)アクリル酸の2量体、3量体や4量体といった低重合度の分解物を脱水触媒と接触させることにより、それらの多量体が分解してアクリル酸を生成したり、また、3−ヒドロキシカルボン酸の2量体、3量体や4量体といった低重合度の分解物を脱水触媒と接触させることにより、3−ヒドロキシカルボン酸と(メタ)アクリル酸が生成し、その3−ヒドロキシカルボン酸から脱水反応によって更に(メタ)アクリル酸が生成したりするといった効果が期待でき、(メタ)アクリル酸の収率がより一層向上することとなる。
例えば、第一の加熱工程(オリゴマーを分解する工程)と、第二の加熱工程(脱水反応器内で脱水する工程)とで、それぞれ加熱を行い、多段の加熱工程とすることができる。
【0080】
上記の加熱工程によって、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の反応を安定に維持することができ、効率よく(メタ)アクリル酸を製造できる。
【0081】
脱水触媒を用いて脱水反応を行うと、触媒上に炭素状物質が蓄積し、触媒活性が低下することがある。その場合、炭素状物質と酸素等の酸化剤を接触させ、炭素状物質を除去することで触媒再生を行い、活性を元に戻すことができる。触媒再生において触媒の加熱温度は、高温であるほど触媒再生時間を短縮できるが、あまり高すぎると触媒の構造変化等によって、触媒の活性や選択率が低下する虞がある。通常好ましい範囲は300〜800℃であり、より好ましくは320〜700℃であり、更に好ましくは350〜600℃である。800℃を超えると、例えばシンタリングによる触媒表面積の低下や、相転移による触媒の結晶構造変化等の、触媒における物理的構造及び化学的性質が変わることになって、触媒活性や選択率が低下する虞がある。温度は、触媒種によっても上限は異なるが、触媒調製の際に触媒を焼成する場合、焼成温度を超えない温度で加熱することが好ましい。
【0082】
上記加熱温度を制御するには、該触媒を加熱するための加熱器の設定温度、酸化剤濃度、及びガス流量等を調整するとよい。この場合、加熱器の設定温度及び/又は酸化剤の濃度が高いほど、触媒を加熱する温度が高くなる。そして、触媒加熱温度を連続的に測定しつつ、加熱器の設定温度及び/又は酸化剤の濃度を調整して触媒加熱温度を制御することも可能である。また、特開平5−192590号公報に開示されている触媒加熱温度の制御方法も挙げられる。
酸化剤濃度としては、温度制御や生産コスト等の点から、好ましくは1〜21体積%である。
処理時間としては、(メタ)アクリル酸の生産性等の点から、好ましくは1〜100時間、より好ましくは2〜50時間である。
【0083】
本発明において、反応器出口から得られる反応生成物を冷却して(メタ)アクリル酸を含む組成物を得る方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、反応生成物が液体の場合は、熱交換器で冷却する、反応生成物が気体の場合は、反応生成ガスを熱交換器に導入し、反応生成ガスの露点以下の温度で凝縮して得る方法や、反応生成ガスを溶剤等の捕集剤に接触させて吸収する方法等により冷却して、(メタ)アクリル酸を含む組成物を得ることができる。
該組成物中の(メタ)アクリル酸濃度は、好ましくは5質量%以上であることが好ましい。より好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上である。また、該濃度は、95質量%以下であることが好ましい。
【0084】
このようにして得られた反応生成物の組成物中には、主な反応生成物である水、(メタ)アクリル酸が含まれており、その他に副生物や原料組成物中の溶媒や不純物が含まれる場合がある。溶媒が水の場合は、(メタ)アクリル酸の水溶液の状態で重合物製造の原料とすることができる。また、精製工程を加えることにより、高純度の(メタ)アクリル酸にすることができる。
精製工程は、膜分離、蒸留、抽出、晶析等の公知の技術により実施でき、それらを組み合わせて実施してもよい。
上記のようにして得られた(メタ)アクリル酸を含む反応生成物は、捕集や精製工程の取扱いを、重合禁止剤の存在下で行うことが好ましい。重合禁止剤としては、メトキノン、酢酸マンガン、ニトロソフェノール、クペロン、N−オキシル化合物、ジブチルチオカルバミン酸銅、フェノチアジン、ハイドロキノン等が例示できる。また、必要に応じて酸素含有ガスを供給してもよい。
【0085】
このように、本発明で得られた(メタ)アクリル酸の組成物を精製することにより、高純度の(メタ)アクリル酸を得ることができる。したがって、本発明の方法は、高純度の(メタ)アクリル酸の製造方法をも提供する。
当該方法としては、具体的には、晶析により(メタ)アクリル酸を精製する工程を含む。
【0086】
上記のガス状の反応生成物を、冷却凝縮や溶剤捕集等により液化し、必要に応じて、この液化物に含まれる水や捕集溶剤を従来公知の方法(例えば、蒸留)により除去したものを、晶析方法によって高純度の(メタ)アクリル酸を得る方法を以下に示す。
ここで、粗(メタ)アクリル酸とは、冷却工程で得られた(メタ)アクリル酸を含む組成物を指し、特に(メタ)アクリル酸の水溶液が好適に用いられる。
晶析工程は、粗(メタ)アクリル酸からプロピオン酸を分離することができる従来公知の方法、例えば、特開平9−227445号公報や特表2002−519402号公報に記載された方法等を用いて行うことができる。
(メタ)アクリル酸生成工程にて得られた生成物から、例えば上記のような精製工程で(メタ)アクリル酸を分離した後、残った不純物は、リサイクルして再利用することができる。例えば3−ヒドロキシカルボン酸、重合度が低下した3−ヒドロキシカルボン酸の重合物や(メタ)アクリル酸の重合物を重合工程や(メタ)アクリル酸生成工程の原料として再利用することで(メタ)アクリル酸の収率を向上させることができる。詳しくは、後述する。
【0087】
前述したように、発酵により製造される3−ヒドロキシカルボン酸を用いる場合、原料組成物中に含まれる窒素の量が、3−ヒドロキシカルボン酸とその重合物との合計100質量%に対して、0.2質量%以下の原料組成物を用いて、上記のような(メタ)アクリル酸生成工程や精製工程を経ることで、窒素や(メタ)アクリルアミド類が非常に低減された(メタ)アクリル酸を製造することができる。(メタ)アクリル酸に対する窒素は、80質量ppm以下が好ましく、60質量ppm以下がより好ましく、50質量ppm以下が一層好ましい。(メタ)アクリル酸に対する(メタ)アクリルアミド類は、10質量ppm以下が好ましく、5質量ppm以下がより好ましく、1質量ppm以下が一層好ましい。従って、本発明は、発酵により得られた3−ヒドロキシカルボン酸から(メタ)アクリル酸を含有する組成物を製造する方法であって、(メタ)アクリル酸に対する窒素が80質量ppm以下の(メタ)アクリル酸を含有する組成物を製造する方法でもある。また本発明は、発酵により得られた3−ヒドロキシカルボン酸から(メタ)アクリル酸を含有する組成物を製造する方法であって、(メタ)アクリル酸に対する(メタ)アクリルアミド類が10質量ppm以下の(メタ)アクリル酸を含有する組成物を製造する方法でもある。また、本発明は、上記のように窒素や(メタ)アクリルアミド類が低減された(メタ)アクリル酸を含有する組成物でもある。
【0088】
更に本発明は、(メタ)アクリル酸を含有する組成物であって、上記組成物中の窒素を含有する化合物の窒素の量が、(メタ)アクリル酸に対して、80質量ppm以下である(メタ)アクリル酸を含有する組成物でもある。本発明の組成物は、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法により得られるものであることが好ましい。上記(メタ)アクリル酸の製造方法としては、本明細書中に記載した好ましい形態を適宜適用することができるが、中でも、上記(メタ)アクリル酸の製造方法が、発酵工程を含み、上記発酵工程により、原料としての3−ヒドロキシカルボン酸を生成させることが特に好ましい。これにより、再生可能資源から、(メタ)アクリルアミド類等の窒素を含有する化合物や窒素の量が非常に低減された、親水性樹脂の原料として好適な(メタ)アクリル酸を製造することが可能となる。これは、従来技術では達成できなかった顕著に優れた効果である。
【0089】
以上の方法により、(メタ)アクリル酸を製造することができる。かくして製造された(メタ)アクリル酸は、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム等の親水性樹脂;等の合成原料として有用である。従って、本発明による(メタ)アクリル酸の製造方法は、(メタ)アクリル酸誘導体や親水性樹脂の製造方法に取り入れることが当然可能である。親水性樹脂は、吸水性樹脂であることが好ましい。
【0090】
なお、上述した第1の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法についての内容は、特に断らない限り、後述する第2の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法、及び、第3の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法についても同様に言える。
上述した、(メタ)アクリル酸を高い生産性で安定して製造することができる効果、得られた(メタ)アクリル酸を使用して、親水性樹脂を好適に製造することができる効果は、第2の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法、又は、第3の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法においても同様である。そして当然、第2の本発明と第3の本発明とを組み合わせて実施することも本発明に含まれる。
以降においては、まず第2の本発明について説明し、続いて第3の本発明について説明する。
【0091】
(第2の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法)
第2の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法によれば、低コストで、かつ、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができる。
【0092】
第2の本発明における3−ヒドロキシカルボン酸の具体例、好ましいもの等は、第1の本発明において上述した通りである。
【0093】
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物は、該3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含んでいればよく、3−ヒドロキシカルボン酸を発酵等により合成する際の副生物等を含んでいてもよい。当該副生物の具体例は、第1の本発明において上述したものと同様である。
原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸及びその重合物の総量の好ましい濃度や、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の好ましい濃度は、それぞれ、第1の本発明において上述したのと同様である。
【0094】
上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物とは、上述したのと同様であり、例えば上記式(1)に示すものが挙げられる。
第2の本発明においては、式中、aは任意の値を取り得るが、本発明においては、以下のように、特定の範囲のaの値を有する重合物が、特定の割合で原料組成物中に含まれていることにより、低コストで、かつ、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができる。
【0095】
第2の本発明で用いる原料組成物は、(メタ)アクリル酸の収率向上等の観点から、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含み、該3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち3量体(式(1)においてa=2)〜20量体(式(1)においてa=19)の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸とその重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上である。好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、上限としては特に限定されないが、原料組成物の調製にかかるコストや設備の点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0096】
(メタ)アクリル酸の収率向上という観点から、より好ましい原料組成物は、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含み、該3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち3量体(式(1)においてa=2)〜15量体(式(1)においてa=14)の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸とその重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上である。更に好ましくは20質量%以上であり、特に好ましくは30質量%以上であり、最も好ましくは40質量%以上である。また、上限としては特に限定されないが、原料組成物の調製にかかるコストや設備の点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0097】
(メタ)アクリル酸の収率向上という観点から、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物は、該3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち3量体〜9量体(式(1)においてa=8)の合計の好ましい量が、3−ヒドロキシカルボン酸とその重合物の合計100質量%に対して、第1の本発明において上述したのと同様である。
また原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち20量体(式(1)においてa=19)以上の重合物の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸とその重合物の合計100質量%に対して、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えると、原料組成物の粘度が高くなり取扱いが煩雑になる、高分子量の重合物が析出して、配管の閉塞や原料組成物の供給組成のふれに起因する(メタ)アクリル酸収率の低下や変動等の虞がある。
【0098】
本発明においては、上記のような3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を加熱することにより、(メタ)アクリル酸を生成させることができる。加熱時には、第1の本発明において上述した反応が複合的に進行することで、(メタ)アクリル酸を効果的に生成することができる。
【0099】
なお、上述のように、3−ヒドロキシカルボン酸や2量体が多い(低重合度)と、生産性やコスト等の工業的な問題があり、3−ヒドロキシカルボン酸ポリマー(高重合度)が多い原料組成物では、取扱いや閉塞の問題、(メタ)アクリル酸収率の低下等があった。
しかし、上記特定の原料組成物を用い、これを加熱するという、第2の本発明の(メタ)アクリル酸の製法によれば、上述した第2の本発明の効果を発揮することができる。
【0100】
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物には溶媒が含まれていてもよい。溶媒の具体例や好ましいもの、水等の溶媒の濃度の好ましい範囲は、第1の本発明において上述したものと同様である。
【0101】
本発明で用いられる3−ヒドロキシカルボン酸は、種々の源から得ることができるが、入手方法、及び、その好適なものは、第1の本発明において上述したものと同様である。また、上述したように公知の方法で入手可能である。また、微生物によって3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を製造することもでき、その重合物を原料組成物として用いてもよい。
【0102】
本発明に用いる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物としては、より不純物が少ない原料組成物を用いることが好ましい。
不純物が少ない原料組成物を得る方法は、第1の本発明において上述したものと同様である。
【0103】
3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含む原料組成物の加熱(以下、加熱工程ともいう)は、触媒の存在下、非存在下のいずれにおいても行うことができる。
触媒の非存在下で加熱工程を実施する場合の好ましい加熱温度や、触媒の存在下で加熱工程を実施する場合の好ましい加熱温度は、それぞれ、第1の本発明において上述したのと同様である。
加熱工程で用いる触媒の具体例及び好ましいものは、第1の本発明において上述したのと同様である。
【0104】
加熱器内の圧力の好ましい範囲は、第1の本発明において上述したのと同様である。
【0105】
加熱器の好ましい構造、具体例、使用方法や、原料組成物の流路に充填される充填物の種類、材料等は、それぞれ、第1の本発明において上述したのと同様である。
【0106】
また、加熱生成物の蒸発を容易にするために、不活性気体の存在下に加熱工程を実施してもよい。不活性気体の具体例や好ましいもの、好ましい供給量は、第1の本発明において上述したものと同様である。
【0107】
加熱工程は、原料組成物を触媒と接触させる工程でもよいし、上記のような加熱工程を経た後の生成物を更に脱水触媒と接触させる多段の加熱工程で実施してもよい。これにより、(メタ)アクリル酸の収率をより向上させることができる。
上記脱水触媒と接触させる脱水工程で使用する反応器、その好ましいもの、その使用方法は、第1の本発明において上述したものと同様である。
【0108】
脱水反応の触媒、つまり脱水触媒の具体例、脱水触媒が触媒成型体である場合のその成型体形状等は、第1の本発明において上述したものと同様である。
また、触媒におけるBET法による比表面積、ハメットの酸度関数H
0、大きさは、それぞれ、第1の本発明において上述したものと同様である。
【0109】
触媒層の温度の好ましい範囲、反応圧力の好ましい範囲は、それぞれ、第1の本発明において上述したものと同様である。
このように、加熱工程に脱水触媒と接触させる工程を組み合わせる多段の加熱工程とすることで、第1の本発明において多段の加熱工程とすることによる上述した効果と同様の効果を発揮することができる。
【0110】
上記の加熱工程によって、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の反応を安定に維持することができ、効率よく(メタ)アクリル酸を製造できるが、それでもなお、加熱器内、反応器内や触媒上に炭素状物質が徐々に付着する場合がある。その場合、加熱器、反応器、配管等の閉塞、加熱器の熱伝導効率の低下による蒸発効率の低下、触媒活性の低下による生産性の低下や選択率の低下等の問題が生じる虞がある。その場合、生成した炭素状物質を除去することによって、正常な状態に戻すことができる。
【0111】
脱水触媒上の炭素状物質を除去するには、脱水触媒に酸化剤を接触させて、上記炭素状物質を除去して、触媒を再生することができる。
酸化剤としては、過酸化水素水、有機過酸化物、硝酸、亜硝酸等が溶解した液状の酸化剤を使用してもよいし、ガス状の酸化剤を使用してもよい。好ましくは、ガス状の酸化剤である。
ガス状の酸化剤は、炭素状物質の酸化分解のために該炭素状物質に酸素元素を供給することが可能な気体分子であり、例えば、酸素(空気中の酸素も酸化剤に該当する)、オゾン、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素等を挙げることができる。これらの酸化剤のうち、一種以上のガス状酸化剤が含まれていれば良く、例えば、空気と酸素との混合ガス、一酸化窒素と酸素との混合ガス等を使用しても良く、また、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム及び水蒸気等の不活性ガスから任意に選択した一種以上のガスと酸化剤との混合ガスを使用してもよい。好ましくは酸素を含んだガスである。
【0112】
触媒再生において触媒の好ましい加熱温度は、第1の本発明において上述したものと同様である。
上記加熱温度を制御する方法や、酸化剤濃度、処理時間も、第1の本発明において上述したものと同様である。
【0113】
本発明において、反応器出口から得られる反応生成物を冷却して(メタ)アクリル酸を含む組成物を得る方法、及び、該組成物中の(メタ)アクリル酸の好ましい濃度は、第1の本発明において上述したものと同様である。
【0114】
このようにして得られた反応生成物の組成物中には、主な反応生成物である水、(メタ)アクリル酸が含まれており、その他に副生物や原料組成物中の溶媒や不純物が含まれる場合がある。溶媒が水の場合は、(メタ)アクリル酸の水溶液の状態で重合物製造の原料とすることができる。また、精製工程を加えることにより、高純度の(メタ)アクリル酸にすることができる。精製工程の具体例、好ましいものは、第1の本発明において上述したものと同様である。
加熱工程を含むプロセスにて得られた生成物からアクリル酸を分離した後、残った不純物は、第1の本発明等において上述したのと同様にリサイクルして再利用することができる。詳しくは、後述する。
【0115】
(第3の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法)
第3の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法によれば、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができる。
【0116】
3−ヒドロキシカルボン酸は、前述のようにして調製することができるが、その際に(例えば、発酵液からの3−ヒドロキシカルボン酸の精製・濃縮工程等において)、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物も生成してしまう場合が多い。そこで、第3の本発明は、3−ヒドロキシカルボン酸だけでなく、その重合物も含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を高収率で製造する方法である。
【0117】
第3の本発明における3−ヒドロキシカルボン酸の具体例、好ましいもの等は、第1の本発明において上述した通りである。
【0118】
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物は、該3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含んでいればよく、3−ヒドロキシカルボン酸を発酵等により合成する際の副生物等を含んでいてもよい。当該副生物の具体例は、第1の本発明において上述したものと同様である。
原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸及びその重合物の総量の好ましい濃度や、該重合物の好ましい濃度は、それぞれ、第1の本発明において上述したのと同様である。
【0119】
上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物とは、上述したのと同様であり、例えば上記式(1)に示すものが挙げられる。
第3の本発明においては、式(1)中、aは1〜100であることが好ましい。アクリル酸の収率を高くする、分解残渣を低減する等の点から、好ましくは1〜80、より好ましくは2〜50、更に好ましくは2〜30である。
【0120】
本発明で用いる原料組成物は、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含む。3−ヒドロキシカルボン酸とその重合物の合計100質量%に対して、該3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち3量体〜20量体の合計の好ましい量は、第2の本発明において上述したのと同様である。
【0121】
(メタ)アクリル酸の収率向上という観点から、3−ヒドロキシカルボン酸とその重合物の合計100質量%に対して、上記3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち3量体〜15量体の合計の好ましい量は、第2の本発明において上述したのと同様である。
【0122】
(メタ)アクリル酸の収率向上という観点から、3−ヒドロキシカルボン酸とその重合物の合計100質量%に対して、上記3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち3量体〜9量体の合計の好ましい量は、第1の本発明において上述したのと同様である。
また3−ヒドロキシカルボン酸とその重合物の合計100質量%に対して、上記3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち20量体以上の重合物の合計は、第2の本発明において上述したのと同様である。
【0123】
また、重合物の分解物とは、上記重合物が加熱によりエステル結合部分が分解して低分子化され、重合度が低下したものを意味する。
例えば3HPの重合物の分解物を例に挙げると、下式(2)に示すように、3HPのポリエステルであって、重合度が原料の重合物よりも小さいものが挙げられる。また、下式(3)に示すように、重合物の分解によって得られた、末端に二重結合を持った、重合度が原料の重合物よりも小さい化合物が挙げられる。
【0125】
ここで重合物及び重合物の分解物は、単一の重合度ではなく分布を持つため、a、b、cはいずれも平均の重合度を表す。重合物の分解物は、原料の重合物より重合度が小さいため、a>b、a>cである。
式(2)、式(3)中、b、cは、それぞれ0〜10である。気化の容易さ、アクリル酸収率の向上、及び、脱水触媒上での重質物の生成や、触媒活性の低下抑制等の点から、好ましくは0〜8であり、より好ましくは0〜5であり、更に好ましくは0〜3であり、特に好ましくは0〜2である。
【0126】
上記重合物を、分解工程にて低分子成分へ分解することにより、3HP(式(2)においてb=0)、3HP2量体(式(2)においてb=1)、3HP3量体(式(2)においてb=2)、3HP4量体(式(2)においてb=3)、アクリル酸(式(3)においてc=0)、アクリル酸2量体(式(3)においてc=1)、アクリル酸3量体(式(3)においてc=2)、アクリル酸4量体(式(3)においてc=3)等が生成する。
また分解工程においては、反応条件によっては3HPや3HPの重合物の水酸基が脱水して、二重結合が生成することもある。例えば3HPからアクリル酸が、3HP2量体からアクリル酸2量体が、3HP3量体からアクリル酸3量体が生成するような反応が進行する場合がある。これらの生成物は、上記の重合物の分解物と同様の化合物であり、目的物であるアクリル酸の生成に寄与できることから、本発明においては重合物の分解物に含まれる。また上記反応ルートにより生成したアクリル酸の多量体のエステル結合が分解して、さらに重合度が低い生成物が生成することもある。
しかし、この段階では、目的成分であるアクリル酸の収率はまだ満足できるレベルではない。そこで、分解工程で得られた生成物を、更に脱水工程にて脱水触媒と接触させることにより、3HPからアクリル酸を生成させる。これにより、脱水工程出口でのアクリル酸収率は非常に高いものとなる。
また、上記の様に重合物を低分子化することにより、脱水工程では3HPが脱水してアクリル酸が生成するのに加え、例えばアクリル酸の2量体、3量体や4量体といった低重合度の分解物を脱水触媒と後述の条件で接触させることにより、それらの多量体が分解してアクリル酸を生成したり、また、3HPの2量体、3量体や4量体といった低重合度の分解物を脱水触媒と後述の条件で接触させることにより、3HPとアクリル酸が生成し、その3HPから脱水反応によって更にアクリル酸を生成したりするといった効果が期待でき、アクリル酸の収率がより一層向上することとなる。
【0127】
以下に、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物、該重合物の分解物を生成させる分解工程、及び、該分解物を脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程について順に説明する。
【0128】
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物には溶媒が含まれていてもよい。溶媒の具体例や好ましいもの、水等の溶媒の好ましい濃度は、第1の本発明において上述したものと同様である。
【0129】
本発明で用いられる3−ヒドロキシカルボン酸は、種々の源から得ることができるが、入手方法、及び、その好適なものは、第1の本発明において上述したものと同様である。また、上述したように公知の方法で入手可能である。
また微生物によって3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を製造することもでき、その重合物を原料組成物として用いてもよい。
【0130】
本発明に用いる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物としては、より不純物が少ない原料組成物を用いることが好ましい。不純物が少ない原料組成物を得る方法は、第1の本発明において上述したものと同様である。
【0131】
前述のように、発酵により3−ヒドロキシカルボン酸を製造する場合、発酵由来の不純物を除去するための精製工程を行うことが望ましい。また発酵液中の3−ヒドロキシカルボン酸濃度は高くないため、そのままの濃度で(メタ)アクリル酸製造工程で使用すると、加熱のためのエネルギーが過大になったり、反応装置が大きくなり、コストが嵩んだりする要因となる。その点から発酵液からの3−ヒドロキシカルボン酸の精製工程や濃縮工程を経た方が好ましいが、それらの工程で加熱されたり、濃縮によって3−ヒドロキシカルボン酸濃度が高くなったりすると、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の生成は避けられない。従って、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含んだ原料組成物からの、高収率での(メタ)アクリル酸の製造法は工業的に非常に重要である。
【0132】
3−ヒドロキシカルボン酸重合物の分解工程は、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含む原料を加熱することにより実施される。
当該加熱は、触媒の存在下、非存在下のいずれにおいても行うことができる。
触媒の非存在下で分解工程を実施する場合の好ましい分解温度や、触媒の存在下で分解工程を実施する場合の好ましい分解温度は、それぞれ、第1の本発明において触媒の非存在下で加熱工程を実施する場合の好ましい加熱温度、触媒の存在下で加熱工程を実施する場合の好ましい加熱温度として上述したのと同様である。
分解工程で用いる触媒(以下、分解触媒ともいう)は、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を分解する効能を有していれば特に限定されず、例えば酸触媒や塩基触媒が挙げられ、特に固体酸触媒や固体塩基触媒が好ましい。
【0133】
分解器内の滞留時間は、分解器の構造にも依るが、5秒〜5時間が好ましい。より好ましくは、10秒〜3時間である。滞留時間が短すぎると分解が不充分になる場合があり、また長すぎると副反応により、最終的な(メタ)アクリル酸の収率が低下する虞がある。
分解器内の圧力は、低いほど分解生成物の蒸発が起こりやすくなるため有利であるが、引き続く脱水反応器の適正な圧力や設備等のコストも合わせて選択する必要がある。分解器内の圧力の好ましい範囲は、第1の本発明において加熱器内の圧力の好ましい範囲として上述したものと同様である。
【0134】
分解器の好ましい構造、具体例、使用方法や、原料組成物の流路に充填される充填物の種類、材料等は、第1の本発明において加熱器におけるものとして上述したものと同様である。但し、「加熱」は、「分解」と言い換える。
このように、分解器にて3−ヒドロキシカルボン酸の重合物から分解して生じた低分子成分は、原料組成物中に含まれている溶媒や3−ヒドロキシカルボン酸といった低分子化合物と共に次工程の脱水工程へと送られる。この際、分解器の出口の3−ヒドロキシカルボン酸の重合物から分解して生じた低分子成分を含む混合物は、分解器の中で蒸発してガスの状態となっていることが好ましい。ガスの状態で脱水触媒と接触させることで、脱水反応器の閉塞等を抑制できる。
【0135】
また、分解生成物の蒸発を容易にするために、不活性気体の存在下に分解工程を実施してもよい。不活性気体の具体例や好ましいもの、好ましい供給量は、第1の本発明の加熱工程において上述したものと同様である。
原料組成物中に水が含まれる場合は、その水が分解工程で蒸発して生成した水蒸気も、上記不活性気体に含める。
【0136】
次に、脱水工程で使用する反応器、その好ましいもの、使用方法は、第1の本発明において上述したものと同様である。なお、供給する原料組成物の蒸気は、分解器の出口ガスを用いることができる。
【0137】
脱水工程は分解工程の後にあれば良く、その間に別の工程があってもよい。例えば、分解器の出口ガスを、所定の温度に加熱/冷却する温度調整工程を経て、反応器で脱水工程を実施してもよい。
また、分解器と反応器を一体化してもよい。例えば、反応管に、分解層として表面積の大きい充填物を充填し、当該分解層の下に触媒を充填することにより、分解層を分解工程、触媒層を脱水工程として連続した運転も、好ましい形態の1つである。
また、1つ乃至は複数の分解層と、触媒を充填した多管式の反応器を連結して運転することも、好ましい形態である。
【0138】
脱水触媒の具体例、脱水触媒が触媒成型体である場合のその成型体形状等は、第1の本発明において上述したものと同様である。
また、触媒におけるBET法による比表面積、ハメットの酸度関数H
0、大きさは、それぞれ、第1の本発明において上述したものと同様である。
【0139】
触媒層の温度の好ましい範囲は、第1の本発明において上述したものと同様である。
反応圧力は、特に限定されないが、原料組成物の分解方法、脱水反応の生産性、脱水反応後の捕集効率等を勘案して決定することができる。反応圧力の好ましい範囲は、第1の本発明において上述したものと同様である。
脱水反応は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物を分解器に通して低分子化することで得られた、3−ヒドロキシカルボン酸や低分子化された3−ヒドロキシカルボン酸の重合物と脱水触媒とを接触させることで実施できるが、その際3−ヒドロキシカルボン酸や3−ヒドロキシカルボン酸の重合物が気体の状態で脱水触媒と接触することが好ましい。3−ヒドロキシカルボン酸やその重合物が液体の状態で脱水触媒と接触すると、重質分の生成による反応器の閉塞や、それに伴う触媒活性の急激な劣化等が起こる場合がある。またそれらの抑制のためにより高温での反応を実施する場合もあるが、その場合は原料や生成物の過分解による(メタ)アクリル酸収率の低下や不純物の増加、触媒上のコーキングの増加による活性低下、触媒の構造変化や触媒の成分飛散による触媒の不可逆的な活性低下等の問題点が生じる虞もある。
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を分解器で低分子化することで、それらの気化を容易にする。また分解器内で3−ヒドロキシカルボン酸やその重合物の水酸基が脱水反応を起こし二重結合が生成することでも、沸点が低下し、気化を容易にする効果が期待できる。上記のような問題を回避して、安定的な脱水反応を長期にわたって実施することが可能となる。
【0140】
上記の分解工程や脱水工程によって、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物からの(メタ)アクリル酸の製造を安定に維持することができるが、それでもなお、分解器内、反応器内や触媒上に炭素状物質が徐々に付着する場合がある。その場合、分解器、反応器、配管等の閉塞、分解器の熱伝導効率の低下による分解効率の低下、触媒活性の低下による生産性の低下や選択率の低下等の問題が生じる虞がある。その場合、生成した炭素状物質を除去することによって、正常な状態に戻すことができる。
【0141】
触媒再生の方法は、第1の本発明、第2の本発明において上述したものと同様である。
【0142】
本発明において、反応器出口から得られる反応生成物を冷却して(メタ)アクリル酸を含む組成物を得る方法、及び、該組成物中の(メタ)アクリル酸の好ましい濃度は、第1の本発明において上述したものと同様である。
【0143】
このようにして得られた反応生成物の組成物中には、主な反応生成物である水、(メタ)アクリル酸が含まれており、その他に副生物や原料組成物中の溶媒や不純物が含まれる場合がある。溶媒が水の場合は、(メタ)アクリル酸の水溶液の状態で重合物製造の原料とすることができる。また、精製工程を加えることにより、高純度の(メタ)アクリル酸にすることができる。精製工程の具体例、好ましいものは、第1の本発明において上述したものと同様である。
【0144】
分解工程及び脱水工程を含むプロセスにて得られた生成物から、例えば上記のような精製工程で(メタ)アクリル酸を分離した後、残った不純物は、リサイクルして再利用することができる。例えば3−ヒドロキシカルボン酸、式(2)で表される3−ヒドロキシカルボン酸の重合物、式(3)で表される(メタ)アクリル酸の重合物を分解工程や脱水工程の原料として再利用することで(メタ)アクリル酸の収率を向上させることができる。詳しくは、後述する。
【0145】
<リサイクル工程>
上述した第1〜第3の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法のいずれにおいても、後述するような不純物を再利用する工程(リサイクル工程)を好適に適用することができる。言い換えれば、上記第1〜第3の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、不純物を再利用する工程を含むことが好ましい。ここで不純物とは、反応生成物に含まれるもののうち、(メタ)アクリル酸の原料となりうるもの、すなわち3−ヒドロキシカルボン酸、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物、(メタ)アクリル酸の重合物を指す。例えば、反応終了後に残存した3−ヒドロキシカルボン酸や上記オリゴマーを上述した各工程の原料として再利用することが好ましい。
【0146】
以下に、第1〜第3の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法に係る反応式を例示する図と、該反応式に更にリサイクル工程を適用した図とを示す。
図1は、第1の本発明の製造方法に係る3HPを原料とする反応式を例示する図である。
図1で示した反応式は、重合工程及びアクリル酸生成工程を含む。
図2は、
図1から更に、不純物を再利用する工程を示す図である。本発明に係る反応工程においては、主生成物としてアクリル酸を生成するとともに、3HPや、(原料より)低分子化されたオリゴマー等の不純物が残存する場合がある。
図2で示した反応式は、アクリル酸生成工程後に残存した不純物を重合工程やアクリル酸生成工程の原料として再利用する。このように不純物を、上記各工程の原料として再利用することが好ましい。以下の反応式においても同様である。
図3は、第2の本発明の製造方法に係る3HPを原料とする反応式を例示する図である。
図3で示した反応式は、重合工程及び加熱工程を含む。
図4は、
図3から更に、不純物を再利用する工程を示す図である。
図4で示した反応式は、加熱工程後に残存した不純物を重合工程や加熱工程の原料として再利用する。
図5は、第3の本発明の製造方法に係る3HPを原料とする反応式を例示する図である。
図5で示した反応式は、重合工程、分解工程、及び、脱水工程を含む。
図6は、
図5から更に、不純物を再利用する工程を示す図である。
図6で示した反応式は、脱水工程後に残存した不純物を重合工程、分解工程や脱水工程の原料として再利用する。なお、
図5及び
図6は、第1、第2の本発明の製造方法に係る3HP原料の反応式の好ましい一例を示す図でもある。上述した
図1〜
図6で示した反応式は、3HPを原料とする。
【0147】
図7は、第2の本発明の製造方法に係る3HPの重合物を原料とする反応式を例示する図である。
図7で示した反応式は、
図3で示した反応式とは異なり、重合工程を含まず、加熱工程を含む。このような反応式であっても、実質的に第2の本発明の効果を発揮することができる。
図8は、
図7から更に、不純物を再利用する工程を示す図である。
図8で示した反応式は、加熱工程後に残存した不純物を加熱工程の原料として再利用する。
図9は、第3の本発明の製造方法に係る3HPの重合物を原料とする反応式を例示する図である。
図9で示した反応式は、
図5で示した反応式とは異なり、重合工程を含まず、分解工程及び脱水工程を含む。このような反応式であっても、実質的に第3の本発明の効果を発揮することができる。
図10は、
図9から更に、不純物を再利用する工程を示す図である。
図10で示した反応式は、脱水工程後に残存した不純物を分解工程や脱水工程の原料として再利用する。
上述した
図7〜
図10で示した反応式は、3HPの重合物(オリゴマー)を含む原料組成物を原料とする。
なお、
図11で示した3HPから1段階の脱水反応でアクリル酸を得る反応工程は、従来公知の反応工程である。
【0148】
中でも、分解工程及び脱水工程の両方を行わない反応式、例えば、
図1で示した反応式のアクリル酸生成工程や、
図3で示した反応式の加熱工程や、
図7で示した反応式の加熱工程が一工程だけで実施される場合は、分解工程及び脱水工程の両方を行う反応式と比較して、通常は反応後の不純物の残存量が多い。このことから、この場合に不純物を再利用する工程を行うことがアクリル酸の収率を向上する効果が顕著になる点で特に好ましい。言い換えれば、分解工程は行うが、脱水反応工程を行わない場合等の、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から1段階の反応のみを経て(メタ)アクリル酸を製造する場合に、反応後の不純物を上記したように再利用することが特に好ましい。
【0149】
<親水性樹脂の製造方法>
上述した第1〜第3の本発明による親水性樹脂の製造方法は、上記のような(メタ)アクリル酸の製造方法により得られる、(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合することを特徴とする。すなわち、本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリル酸は、吸水性樹脂や水溶性樹脂等の親水性樹脂の原料として用いることができる。なお、本明細書中、3−ヒドロキシカルボン酸を重合して3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を生成させる重合工程を第1重合工程と言い、本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合して親水性樹脂を生成させる重合工程を第2重合工程と言うことがある。
【0150】
本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリル酸を、吸水性樹脂や水溶性樹脂等の親水性樹脂を製造するための原料として用いた場合、重合反応を制御しやすく、得られた親水性樹脂の品質が安定し、吸水性能、無機材料の分散性能等の各種性能が改善される。
親水性樹脂としては、吸水性樹脂であることが好ましい。
【0151】
吸水性樹脂を製造する場合には、例えば、本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリル酸、及び/又は、その塩((メタ)アクリル酸を部分中和して得た塩)を単量体成分の主成分(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上)とし、さらに0.001〜5モル%((メタ)アクリル酸に対する値)程度の架橋剤、0.001〜2モル%(単量体成分に対する値)程度のラジカル重合開始剤を用いて、架橋重合させた後、乾燥・粉砕することにより、吸水性樹脂を得ることができる。
【0152】
ここで、吸水性樹脂とは、架橋構造を有する水膨潤性水不溶性のポリ(メタ)アクリル酸であって、自重の3倍以上、好ましくは10〜1000倍の純水又は生理食塩水を吸水することにより、水溶性成分(水可溶分)が好ましくは25質量%以下、より好ましくは10質量%以下である水不溶性ヒドロゲルを生成するポリ(メタ)アクリル酸を意味する。
このような吸水性樹脂の具体例や物性測定法は、例えば、米国特許第6,107,358号、米国特許第6,174,978号、米国特許第6,241,928号等に記載されている。
また、生産性向上の観点から好ましい製造方法は、例えば、米国特許第6,867,269号、米国特許第6,906,159号、米国特許第7,091,253号、国際公開第2001/038402号、国際公開第2006/034806号等に記載されている。
【0153】
(メタ)アクリル酸を出発原料として、中和、重合、乾燥等により、吸水性樹脂を製造する一連の工程は、例えば以下の通りである。
本発明の製造方法により得られる(メタ)アクリル酸の一部は、ラインを介して、吸水性樹脂の製造プロセスに供給される。吸収性樹脂の製造プロセスにおいては、(メタ)アクリル酸を中和工程、重合工程、乾燥工程に導入して、所望の処理を施すことにより、吸水性樹脂を製造する。各種物性の改善を目的として所望の処理を施してもよく、例えば、重合中又は重合後に架橋工程を介在させてもよい。
【0154】
中和工程は、任意の工程であり、例えば、所定量の塩基性物質の粉末又は水溶液と、(メタ)アクリル酸やポリ(メタ)アクリル酸(塩)とを混合する方法が例示されるが、従来公知の方法を採用すればよく、特に限定されるものではない。なお、中和工程は、重合前又は重合後のいずれで行なってもよく、また、重合前後の両方で行なってもよい。
(メタ)アクリル酸やポリ(メタ)アクリル酸(塩)の中和に用いられる塩基性物質としては、例えば、炭酸(水素)塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等、従来公知の塩基性物質を適宜用いればよい。
また、ポリ(メタ)アクリル酸の中和率は、特に限定されるものではなく、任意の中和率(例えば、30〜100モル%の範囲内における任意の値)となるように調整すればよい。
【0155】
重合工程における重合方法は、特に限定されるものではなく、ラジカル重合開始剤による重合、放射線重合、電子線や活性エネルギー線の照射による重合、光増感剤による紫外線重合等、従来公知の重合方法を用いればよい。また、重合開始剤、重合条件等の各種条件については、任意に選択することができる。もちろん、必要に応じて、架橋剤や他の単量体、さらには水溶性連鎖移動剤や親水性高分子等、従来公知の添加剤を添加してもよい。
【0156】
重合後の(メタ)アクリル酸塩系ポリマー(すなわち、吸水性樹脂)は、乾燥工程に付される。乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、熱風乾燥機、流動層乾燥機、ナウター式乾燥機等、従来公知の乾燥手段を用いて、所望の乾燥温度、好ましくは70〜230℃で、適宜乾燥させればよい。乾燥工程を経て得られた吸水性樹脂は、そのまま用いてもよく、さらに所望の形状に造粒・粉砕、表面架橋をしてから用いてもよく、還元剤、香料、バインダー等の従来公知の添加剤を添加する等、用途に応じた後処理を施してから用いてもよい。
【0157】
本発明による親水性樹脂の製造方法における(メタ)アクリル酸を生成させる工程としては、上述した第1〜第3の本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法の好ましい形態等を適宜適用することができる。
【0158】
本発明は、発酵により得られた3−ヒドロキシカルボン酸から親水性樹脂を含有する組成物を製造する方法であって、親水性樹脂に対して(メタ)アクリルアミド類が10質量ppm以下の組成物を製造する方法でもある。また、本発明は、上記のように(メタ)アクリルアミド類が低減された親水性樹脂を含有する組成物でもある。該組成物中の(メタ)アクリルアミド類の好ましい上限値は、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法において上述した(メタ)アクリルアミド類の好ましい上限値と同様である。
【0159】
本発明は、親水性樹脂を含有する組成物であって、上記組成物中の窒素を含有する化合物の窒素の量が、親水性樹脂に対して、80質量ppm以下である樹脂組成物でもある。本発明の樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物の製造方法により得られるものであることが好ましい。上記樹脂組成物の製造方法としては、本明細書中に記載した好ましい形態を適宜適用することができるが、中でも、上記樹脂組成物の製造方法が、発酵工程を含み、上記発酵工程により、原料としての3−ヒドロキシカルボン酸を生成させることが特に好ましい。これにより、再生可能資源から親水性樹脂を製造することができるとともに、該組成物における(メタ)アクリルアミド類等の窒素を含有する化合物の窒素の量を非常に低減させることが可能となり、種々の用途に好適に用いることができるものとなる。これは、従来技術では達成できなかった顕著に優れた効果である。
【実施例】
【0160】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお、以下ことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。また、表1中、「2量体」〜「20量体」は、それぞれ、3HPの「2量体〜20量体」を示す。
【0161】
また、下記調製例、実施例、比較例における液体クロマトグラフィー分析等は、以下の条件により行った。
(液体クロマトグラフィーの分析条件)
使用カラム:Inertsil ODS−4(ジーエルサイエンス株式会社製) 2本
溶離液:アセトニトリル/水/リン酸/リン酸二水素カリウム=35/64/0.7/0.3(重量比)
検出器:UV 205nm
カラム温度:50℃
(サイズ排除クロマトグラフィーの分析条件)
使用カラム:TSKgel Super H200(東ソー株式会社製)
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV 205nm
カラム温度:40℃
(ガスクロマトグラフィーの分析条件)
カラム:DB−WAX(アジレントテクノロジーズ社製)30m
気化器:300℃
検出器:FID、300℃
カラム温度:40℃→300℃
【0162】
下記実施例中のアクリル酸の収率は、次の定義に従って求めた。
アクリル酸の収率(モル%)=100×(生成したアクリル酸のモル数)/(供給した3−ヒドロキシカルボン酸単位のモル数)
3−ヒドロキシカルボン酸単位のモル数=(3−ヒドロキシカルボン酸のモル数+2量体のモル数×2+3量体のモル数×3+4量体のモル数×4+5量体のモル数×5+6量体のモル数×6+7量体のモル数×7+8量体のモル数×8+9量体のモル数×9+10量体以上の多量体の重量(g)/72)
【0163】
(脱水触媒〔破砕触媒〕の調製)
硝酸カリウム1.7gとリン酸水素二アンモニウム1.1gを水100gに溶解し、90℃で加熱撹拌しながら酸化珪素20gを加えた後、濃縮乾固してから空気雰囲気中120℃で20時間乾燥した。得られた固体を粗粉砕し、更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がK
1P
0.5Si
20からなる触媒を得た。得られた触媒を10〜24メッシュに破砕して、脱水反応に用いた。
【0164】
(脱水触媒〔成型触媒〕の調製)
硝酸カリウム17gとリン酸水素二アンモニウム11gを水1000gに溶解し、90℃で加熱撹拌しながら酸化珪素200gを加えた後、水を蒸発させ濃縮を行った。得られた混合物を、押出成型器にてリング状の成型体とした。成型体を空気雰囲気中120℃で20時間乾燥し、更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がK
1P
0.5Si
20からなる成型触媒を得た。リング状成型触媒の大きさは、外径6mm、内径2mm、高さ7mmであった。
【0165】
(原料3HPの調製例1)
3HPの発酵による製造を、特開2012−085635号公報に記載の実施例1の方法に従って行った。得られた発酵液から濾過にて菌体を分離し、得られた濾液700gに、n−ドデカノール100gを添加し、ロータリーエバポレーターで水を留去した。最終的に50℃、2.7kPaで留出がなくなるまで行った。
【0166】
得られた残液を、80℃、10Paの薄膜蒸発器にかけ、3HPとn−ドデカノールの混合物を留分として取得した。得られた留分に等量の水を添加し、混合して水相に3HPを抽出した。油水分離した油相に再度等量の水を添加し、3HPの抽出を行った。油水分離した水相を合わせて濾過を行い、3HP水溶液を得た。3HPの濃度は16質量%であった。
【0167】
(原料3HPの調製例2)
3HPの発酵による製造を、特開2012−085635号公報に記載の実施例1の方法に従って行った。得られた発酵液から濾過にて菌体を分離した。菌体を除去した液に対して、トリデシルアミンを6倍、ドデカノールを等量添加し、減圧下85℃に加熱し水等の軽沸分を留去した。得られた有機相に、1/5容量の水を加えて混合、140℃まで加熱することで、油水分離しさらに濾過することで3−ヒドロキシプロピオン酸を含む水溶液(3HP粗精製液)を得た。
【0168】
(3HPの重合物を含む組成物の調製)
上記(原料3HPの調製例1)で得られた濃度16質量%の3HP水溶液を用いて、表1に示した各方法により、3HPの重合物を含む組成物である原料液(原料1−1〜原料1−3、原料2−1〜原料2−3、原料3−1、原料3−2)を調製した。また、上記濃度16質量%の3HP水溶液の代わりに、上記(原料3HPの調製例2)で得られた3HP粗精製液を用いた以外は原料1−3と同様にして、3HPの重合物を含む組成物である原料液(原料1−4)を調製した。これらの原料液を、3HP及び2量体から9量体までのオリゴマーについては液体クロマトグラフィーを用い、10量体以上の重合物についてはサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、それぞれ分析した。それぞれの原料液の組成を表1に示す。
表1に示したいずれの原料液においても、21量体以上のものは検出されなかった。表1の各原料液では、3HPの重合物のうちの3量体以上のものの合計を示しているが、該合計は、3HPの重合物のうち3〜20量体の合計と同じ値である。
なお、原料1−1は、各オリゴマーを3HPモノマー換算すると、3HPの2量体から9量体までの各オリゴマーが加水分解して3HPモノマーとなったときの、3HPの総質量は80.7質量%である一方、オリゴマーが加水分解すると水が消費されるので、水の量は27質量%から19.7質量%へ減少すると考えられ、3HP80質量%相当の水溶液と計算できる。
原料1−3、原料1−4中の窒素を測定したところ、それぞれ、3HP及び3HPの重合物に対し、150質量ppm、0.25質量%であった。
【0169】
(原料2−4の調製)
調製した原料2−3を、反応器に入れ、触媒として三酸化アンチモンを添加して更に重合を実施した。温度を徐々に上げ、減圧度を上げながら、生成する水を除去した。最終的に260℃、100Paで5時間保持した。得られた重合物を液体クロマトグラフィーで分析したところ、3HP及び2〜9量体のオリゴマーは検出できなかった。サイズ排除クロマトグラフィーで分析すると平均分子量8000のポリマーであった。重合物のうち10〜20量体は2.5質量%であった。得られた重合物を粉砕し、水に懸濁させて50質量%スラリーとし、これを原料2−4とした。従って、3HPの重合物のうちの3〜20量体の合計が、3HPと3HPの重合物の合計に対して2.5質量%であった。
【0170】
【表1】
【0171】
1.第1の本発明の実施例
(実施例1−1)
内径10mmのステンレス管に、ステンレス製の1.5mmディクソンパッキンを充填し、電気炉内に設置し分解器とした。またもう1つの内径10mmのステンレス管に、上記の脱水触媒〔破砕触媒〕を充填し、電気炉内に設置し脱水反応器とした。分解器の出口と脱水反応器の入口をステンレス管で連結し、分解器の出口ガスを直接脱水反応器へ導入できる様にし、連結管でガスが冷えないように、連結管の周囲を電気ヒーターで加熱できるようにした。
【0172】
分解器内の温度を375℃、脱水反応器内の温度を300℃とし、上記の3HPの重合物を含む組成物である原料1−1を毎時16.7gの速度で分解器の上部に供給した。同時に窒素ガスを毎時3Lの速度で供給した。分解器の出口ガスはそのまま脱水反応器へ供給し、4時間継続して反応を実施した。脱水反応器の出口ガスを冷却捕集し、得られた反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、3HP及びその重合物は検出できず、アクリル酸の収率は99モル%であった。
【0173】
(比較例1−1)オリゴマー(重合)化せずに3HPモノマーを使用する例
得られた原料1−2は、組成変化が小さくなるように、5℃に冷却しながら原料組成物として用い、実施例1−1と同様の脱水反応を実施した。得られた反応液中には、3HPが残存しており、アクリル酸の収率は81モル%であった。
【0174】
実施例1−1の方が、比較例1−1よりも、オリゴマー化により水酸基が減少しているため、脱水反応の負荷が小さく、これにより高収率を達成することができる。
【0175】
(
参考例1−2)
原料1−3を用いて、実施例1−1と同様の脱水反応を実施した。アクリル酸の収率は91モル%であった。反応液中の窒素は、アクリル酸に対して18質量ppmであった。また反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、(メタ)アクリルアミド類は検出されず、アクリル酸に対して1質量ppm以下であった。
(
参考例1−3)
原料1−4を用いて、実施例1−1と同様の脱水反応を実施した。アクリル酸の収率は89モル%であった。反応液中の窒素は、アクリル酸に対して240質量ppmであった。また反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、(メタ)アクリルアミド類は、アクリル酸に対して25質量ppmであった。原料中に窒素が多いことで、反応液中の窒素量、(メタ)アクリルアミド類量が増加した。
【0176】
(実施例1−4)
原料及びガスの供給管と、生成した蒸気成分と供給したガスの抜き出し管を有し、抜き出し管に背圧弁を設けて内圧を103kPa(ゲージ圧)になるように調整したステンレス製の反応器に、原料1−1を5g仕込み、オイルバスにつけて内温を250℃に昇温した。原料1−1を毎時18.5gの速度で、また窒素ガスを毎時6Lの速度で反応器に供給した。また同時に、生成した蒸気成分と窒素ガスを反応器からガスの抜き出し管を通じて抜き出した。抜き出した蒸気成分は冷却捕集し反応液を取得した。反応器中に一定量の液が存在し、原料と生成物の収支が安定になるまで連続して反応を行った。安定時に得られた反応液を分析したところ、アクリル酸収率は81モル%であった。
得られた反応液をロータリーエバポレーターで水とアクリル酸を留去した。残存物中には、3HP、3HP2量体、アクリル酸、アクリル酸2量体が含まれていた。この残存物10gを、上記(原料3HPの調製例1)で得られた濃度16質量%の3HP水溶液300gに加え、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。得られた濃縮物の組成を表2に示す。
【0177】
【表2】
【0178】
これを原料として用いて、上記と同じ条件で反応を行った。安定時に得られた反応液を分析したところ、アクリル酸収率は80モル%であった。
【0179】
(実施例1−5)
(アクリル酸の晶析精製)
実施例1−1で得られたアクリル酸の水溶液を蒸留し、塔底より、アクリル酸88.2質量%を含む粗製アクリル酸を得た。この粗製アクリル酸を、母液として、室温(約20℃)〜−5.7℃の温度範囲まで冷却して結晶を析出させ、同温度で保持した後、吸引濾過により結晶を液体から分離する晶析操作を行った。分離した結晶を融解させてから、一部をサンプリングして分析し、残りを母液として室温(約20℃)〜4.9℃の温度範囲まで冷却して結晶を析出させ、同温度で保持した後、吸引濾過により結晶を液体から分離する晶析操作を行った。合計2回の晶析操作により、精製アクリル酸を得た。アクリル酸純度は99.9質量%以上であった。
【0180】
(吸水性樹脂の製造)
上記で得られた精製アクリル酸に重合禁止剤としてp−メトキシフェノールを60質量ppm添加した。別途、鉄を0.2質量ppm含有する苛性ソーダから得られたNaOH水溶液に対して、上記の重合禁止剤を添加したアクリル酸を、冷却下(液温35℃)で添加することにより、75モル%中和を行った。得られた、中和率75モル%、濃度35質量%のアクリル酸ナトリウム水溶液に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.05モル%(アクリル酸ナトリウム水溶液に対する値)を溶解させることにより、単量体成分を得た。この単量体成分300gを容積1Lの円筒容器に入れ、2L/minの割合で窒素ガスを吹き込んで、20分間脱気した。次いで、過硫酸ナトリウム0.10g/モル(単量体成分に対する値)及びL−アスコルビン酸0.004g/モル(単量体成分に対する値)の水溶液をスターラー攪拌下で添加して、重合を開始させた。重合開始後に攪拌を停止し、静置水溶液重合を行った。単量体成分の温度が約15分後(重合ピーク時間)にピーク重合温度106℃を示した。その後、30分間重合を進行させた。その後、重合物を円筒容器から取り出し、含水ゲル状架橋重合体を得た。得られた含水ゲル状架橋重合体は、45℃でミートチョッパー(孔径:8mm)により細分化した後、170℃の熱風乾燥機で20分間加熱乾燥させた。更に、乾燥重合体(固形分:約95%)をロールミルで粉砕し、JIS標準篩で粒径600〜300μmに分級することにより、ポリアクリル酸系吸水性樹脂(中和率:75%)を得た。
【0181】
本発明によるアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸の重合性は、プロピレンを原料とするアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸の重合性と同等であり、得られた吸水性樹脂は、臭気がなく、物性も同等であった。
【0182】
なお、3HP溶液は、経時的に重合が進む場合があり、組成が変化したり、粘度等の物性が変化したりするため、工業的な製法に適用するのは不適当である。また、組成の変化を小さくするためには、3HP溶液を冷却する等の操作、設備が必要であり、コストアップの要因となる。従って、工業的な製造方法に適用する観点から、本発明のように、3HPのモノマー溶液を扱うのでなく、3HPのオリゴマーを扱うことが重要である。
【0183】
このように、3−ヒドロキシカルボン酸を原料として(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、上記製造方法は、3−ヒドロキシカルボン酸を重合して3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物を生成させる重合工程と、上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程とを含み、上記重合工程で得られる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3量体以上のものの合計が、3−ヒドロキシカルボン酸及びその重合物との合計100質量%に対して、3質量%以上である製造方法を用いることによって、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を製造する際に、生産性を向上し、又は、触媒量を削減し、かつ(メタ)アクリル酸を低コストで安定して製造することができるという作用機序は、すべて同様であるものと考えられる。
上記重合工程で得られる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3量体以上のものの合計が、3−ヒドロキシカルボン酸及びその重合物との合計100質量%に対して3質量%以上とすれば、(メタ)アクリル酸を大量に製造するために原料を長期的に安定して反応させるうえでは顕著に優れた効果を発揮することができる。
なお、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む組成物から(メタ)アクリル酸を生成させる工程は、脱水触媒を用いて脱水工程を行う工程を含むことが好ましい。
また脱水触媒を用いる脱水工程を行わず、加熱による(メタ)アクリル酸生成を行う場合や、未反応の3−ヒドロキシカルボン酸、その重合物や(メタ)アクリル酸の重合物が残存している場合は、それらを重合工程や(メタ)アクリル酸を生成させる工程へリサイクルすることが好ましい。
したがって、上記実施例の結果から、第1の本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において第1の本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
【0184】
2.第2の本発明の実施例
(
参考例2−1)
内径10mmのステンレス製反応管に、脱水触媒としてγ−アルミナを充填し、その上にステンレス製の1.5mmのディクソンパッキンを蒸発層として積層した。反応管を電気炉にて350℃に加熱し、上記原料2−2を毎時4.0gの速度で反応管の上部に供給した。同時に、毎時3Lの速度で窒素ガスを流した。
反応管の下部から抜き出した反応ガスを、冷却捕集し反応液を得た。得られた反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、アクリル酸の収率は92モル%であった。また反応液中のアクリル酸の濃度は37質量%であった。
原料2−2に含まれる水の蒸発潜熱は、生成したアクリル酸1g当たり3217Jと計算できる(100℃の水の蒸発潜熱2265J/gの値を使用して計算した。)。
【0185】
(比較例2−1)
参考例2−1において、原料2−2を原料2−1に変え、原料の供給速度を毎時8.4gにした以外は同様に実施した。原料の供給速度は、単位時間当たりの3HP単位の供給モル数が同じになるように設定した。捕集した反応液を分析したところ、アクリル酸収率は92モル%であった。また反応液中のアクリル酸の濃度は18質量%であった。原料2−1に含まれる水の蒸発潜熱は、生成したアクリル酸1g当たり9806Jと計算できる。
参考例2−1に比べて、水の蒸発にかかる熱量が3倍必要となる。気相反応では、製造コストにおけるエネルギーコストの割合が高く、その中でも原料蒸発にかかるエネルギーが非常に大きいため、原料2−1のような3HPの3〜20量体が少なく、低分子量の成分と水が多い原料を用いた場合は、製造コストが非常に高くなる。
【0186】
(比較例2−2)
参考例2−1において、原料2−2を原料2−4に変え、原料の供給速度を毎時3.2gにした以外は同様に実施した。原料2−4の供給速度は、単位時間当たりの3HP単位の供給モル数が同じになるように設定した。捕集した反応液を分析したところ、アクリル酸収率は71モル%であった。このように原料2−4のような3HPの3〜20量体の少ない、高分子量の3HPの重合物を原料とした場合は、アクリル酸収率が大きく低下した。
【0187】
(実施例2−2)
参考例2−1において、原料2−2を原料2−3に変え、原料の供給速度を毎時2.0gにした以外は同様に実施した。原料の供給速度は、単位時間当たりの3HP単位の供給モル数が同じになるように設定した。捕集した反応液を分析したところ、アクリル酸収率は90モル%であった。また反応液中のアクリル酸の濃度は71質量%であった。
【0188】
(実施例2−3)
内径10mmのステンレス製反応管に、ステンレス製の1.5mmのディクソンパッキンのみを充填し、触媒の非存在下で反応を行った。反応管を電気炉にて400℃に加熱し、上記原料2−3を毎時2.0gの速度で反応管の上部に供給した。同時に、毎時3Lの速度で窒素ガスを流した。
反応管の下部から抜き出した反応ガスを、冷却捕集し反応液を得た。得られた反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、反応液中のアクリル酸の濃度は39質量%であった。
【0189】
(比較例2−3)
実施例2−3において、原料2−3を原料2−1に変え、原料の供給速度を毎時8.4gにした以外は同様に実施した。原料の供給速度は、単位時間当たりの3HP単位の供給モル数が同じになるように設定した。捕集した反応液を分析したところ、反応液中のアクリル酸の濃度は9質量%であった。
【0190】
(実施例2−4)
原料及びガスの供給管と、生成した蒸気成分と供給したガスの抜き出し管を備えたステンレス製の反応器に、原料2−3を5g仕込み、オイルバスにつけて内温を250℃に昇温した。原料2−3を毎時25.6gの速度で、また窒素ガスを毎時6Lの速度で反応器に供給した。また同時に、生成した蒸気成分と窒素ガスを反応器からガスの抜き出し管を通じて抜き出した。抜き出した蒸気成分は冷却捕集し反応液を取得した。反応器中に一定量の液が存在し、原料と生成物の収支が安定になるまで連続して反応を行った。安定時に得られた反応液を分析したところ、アクリル酸収率は70モル%であった。
【0191】
(実施例2−5)
(アクリル酸の晶析精製)
実施例2−2で得られたアクリル酸の水溶液を用いて、実施例1−5と同様のアクリル酸の晶析精製を実施し、精製アクリル酸を得た。アクリル酸純度は99.9質量%以上であった。
【0192】
(吸水性樹脂の製造)
上記で得られた精製アクリル酸を用いて、実施例1−5と同様の吸水性樹脂の製造方法を実施し、ポリアクリル酸系吸水性樹脂(中和率:75%)を得た。
【0193】
本発明によるアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸の重合性は、プロピレンを原料とするアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸の重合性と同等であり、得られた吸水性樹脂は、臭気がなく、物性も同等であった。
【0194】
上記結果から、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3〜20量体の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と、その重合物の合計100質量%に対して10質量%以上である原料組成物を用いた
参考例2−1
、実施例2−2〜2−4では、アクリル酸を高収率かつ低コストで得ることができたことがわかる。なお、得られた組成物中に、例えば3−ヒドロキシカルボン酸、式(2)で表される重合物、式(3)で表される重合物が残存している場合は、アクリル酸を精製工程で分離した後、該3−ヒドロキシカルボン酸や該重合物を重合工程や加熱工程の原料として再利用することが好ましい。これにより、アクリル酸の収率を更に向上させることができる。なお、脱水工程を行わなかった実施例2−3、実施例2−4では、アクリル酸の収率は良好であるが、
参考例2−1、実施例2−2と比較して低い。実施例2−3、実施例2−4のように加熱工程だけを行い、脱水触媒を用いた脱水工程を行わない場合に、上記3−ヒドロキシカルボン酸や上記重合物を重合工程や加熱工程の原料として再利用することが特に好ましい。これにより、アクリル酸の収率を向上させる効果が顕著に優れたものとなる。
また、実施例2−5では、実施例2−2で得られたアクリル酸が、プロピレンを原料とするアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸と同等の重合性があり、実施例2−2で得られたアクリル酸を用いて、臭気がなく、物性も充分に優れる吸水性樹脂を得ることができることを確認した。一方、上記条件を満たさない原料組成物を用いた比較例2−1〜2−3では、アクリル酸の収率が低くなったり、製造コストが非常に高くなったりした。
【0195】
このように、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、該3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3〜20量体の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と、その重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上であり、該原料組成物を加熱することにより(メタ)アクリル酸を生成させる工程を含む製造方法を用いることによって、低コストで、かつ、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができるという作用機序は、すべて同様であるものと考えられる。
したがって、上記実施例の結果から、第2の本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において第2の本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
【0196】
3.第3の本発明の実施例
(実施例3−1)
内径10mmのステンレス管に、ステンレス製の外径1.5mmディクソンパッキンを充填し、電気炉内に設置し分解器とした。また内径10mmのステンレス管に、脱水触媒としてγ−アルミナを充填し、電気炉内に設置し脱水反応器とした。分解器の出口と脱水反応器の入口をステンレス管で連結し、分解器の出口ガスを直接脱水反応器へ導入できる様にし、連結管でガスが冷えないように、連結管の周囲を電気ヒーターで加熱できるようにした。
分解器内の温度を375℃とし、脱水反応器内の温度を300℃とし、原料液である原料3−1を毎時2.2gの速度で分解器の上部に供給した。同時に窒素ガスを毎時7Lの速度で供給した。分解器の出口ガスはそのまま脱水反応器へ供給し、8時間継続して反応を実施した。脱水反応器の出口ガスを冷却捕集し、得られた反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、アクリル酸の収率は92モル%であった。反応液中には3量体以上のオリゴマーは検出できなかった。
【0197】
(実施例3−2)
実施例3−1において、分解器出口のガスを、脱水反応器に供給せず、そのまま冷却捕集した。捕集した反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、アクリル酸収率は53モル%であった。またその組成を表3に示す。なお、表3の結果から、原料液の重合物が分解器で分解したことが示されている。
【0198】
【表3】
【0199】
(実施例3−3)
実施例3−1において、原料液を分解器に通さず、直接脱水反応器に供給した。1時間後、脱水反応器の内圧が急上昇したため、反応を停止した。冷却後、脱水反応器の中を確認すると、触媒層に褐色の付着物が多量に存在し、反応管が閉塞していた。閉塞するまでに得られた反応液を分析したところアクリル酸収率は80モル%であった。
【0200】
(実施例3−4)
以下の点を変更した以外は、実施例3−1と同様に分解器による分解工程及び脱水反応器による脱水反応工程を行った。すなわち、分解器とするステンレス管の内径を22mmとし、分解器に充填するディクソンパッキンの外径を3mmとし、脱水反応器に用いる脱水触媒を上記の成型触媒とし、分解器内の温度を300℃とし、原料液として原料3−2を毎時18gの速度で分解器の上部に供給し、同時に窒素ガスを毎時1.8Lの速度で供給した以外は実施例3−1と同様に分解器による分解工程及び脱水反応器による脱水反応工程を行った。
脱水反応器の出口ガスを冷却捕集し、得られた反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、3HP及びその重合物は検出できず、アクリル酸の収率は97モル%であった。
【0201】
本発明によるアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸の重合性は、プロピレンを原料とするアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸の重合性と同等であり、得られた吸水性樹脂は、臭気がなく、物性も同等であった。
【0202】
上記結果から、実施例1−1、
参考例1−2、実施例1−4、実施例3−1〜実施例3−4は、アクリル酸を高い収率で得ることができたことがわかる。中でも、分解工程及び脱水工程の2段階反応を行った実施例1−1、
参考例1−2、実施例3−1、実施例3−4は、アクリル酸を高い収率で好適に得ることができた。なお、
参考例1−3も、分解工程及び脱水工程の2段階反応を行っており、アクリル酸を高い収率で得ることができたが、原料中の窒素が多かったため、反応液中の窒素量、(メタ)アクリルアミド類量が増加した。また、実施例1−4は、脱水触媒を用いる脱水工程を行わず、加熱による(メタ)アクリル酸生成を行ったが、(メタ)アクリル酸の原料となりうる不純物を重合工程の原料としてリサイクルし、該不純物を用いてアクリル酸を好適に得ることができた。なお、得られた組成物中に、例えば3−ヒドロキシカルボン酸、式(2)で表される3−ヒドロキシカルボン酸の重合物、式(3)で表される(メタ)アクリル酸の重合物が残存している場合は、アクリル酸を精製工程で分離した後、該3−ヒドロキシカルボン酸や該重合物を重合工程、分解工程や脱水工程の原料として再利用することが好ましい。これにより、アクリル酸の収率を更に向上させることができる。例えば、脱水工程を行わなかった実施例3−2では、アクリル酸の収率は良好であるが、実施例3−1と比較して低かった。実施例3−2のように分解工程だけを行い、脱水触媒を用いた脱水工程を行わない場合は、上記3−ヒドロキシカルボン酸や上記重合物を重合工程や分解工程の原料として再利用することが特に好ましい。これにより、アクリル酸の収率を向上させる効果が顕著に優れたものとなる。
また、実施例1−5では、実施例1−1で得られたアクリル酸が、プロピレンを原料とするアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸と同等の重合性があり、実施例1−1で得られたアクリル酸を用いて、臭気がなく、物性も充分に優れる吸水性樹脂を得ることができることを確認した。
【0203】
このように、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、(a)該重合物の分解物を生成させる分解工程、及び、(b)該分解物を脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程を含む、(メタ)アクリル酸の製造方法を用いることによって、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができるという作用機序は、すべて同様であるものと考えられる。
したがって、上記実施例の結果から、第3の本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において第3の本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。